説明

レーザ装置

【課題】レーザ光のスペクトル形状を高精度に制御する。
【解決手段】レーザ装置は、少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光を出力可能なマスタオシレータと、各波長ピークのエネルギーを制御可能な多波長発振制御機構と、前記レーザ光のスペクトルを検出するスペクトル検出器と、前記スペクトル検出器による検出結果に基づいて前記多波長発振制御機構を制御する制御部と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。一般的に、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられる。たとえば、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線のレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長193nmの紫外線のレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハとの間が液体で満たされる液浸露光が実用化されている。この液浸露光では、露光用レンズとウエハとの間の屈折率が変化するため、露光用光源の見かけの波長が短波長化する。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として液侵露光が行われた場合、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
【0004】
KrFエキシマレーザ装置およびArFエキシマレーザ装置の自然発振幅は、約350〜400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロン、グレーティング等)を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module)が設けられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7088758号明細書
【特許文献2】米国特許第7154928号明細書
【概要】
【0006】
本開示の一態様によるレーザ装置は、少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光を出力可能なマスタオシレータと、各波長ピークのエネルギーを制御可能な多波長発振制御機構と、前記レーザ光のスペクトルを検出するスペクトル検出器と、前記スペクトル検出器による検出結果に基づいて前記多波長発振制御機構を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の他の態様によるレーザ装置は、波長が異なる少なくとも3つのレーザ光を出力可能なマスタオシレータと、前記レーザ光のスペクトルを検出するスペクトル検出器と、前記スペクトル検出器による検出結果に基づいて前記マスタオシレータを制御する制御部と、を備え、前記マスタオシレータは、それぞれ異なる波長で発振可能な少なくとも3つの半導体レーザと、前記少なくとも3つの半導体レーザから出力された前記少なくとも3つのレーザ光の光路を実質的に一致させる光路調整部と、前記少なくとも3つの半導体レーザを制御する発振制御部と、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、実施の形態によるレーザ装置の一例を概略的に示す。
【図2】図2は、スペクトル線幅E95が0.3pmである波形を1つ含むシングルピークのスペクトル形状の一例を示す。
【図3】図3は、それぞれのスペクトル線幅E95が0.3pmである2つの波形を含むダブルピークのスペクトル形状の一例を示す。
【図4】図4は、それぞれのスペクトル線幅E95が0.3pmである3つの波形をトリプルピークのスペクトル形状の一例を示す。
【図5】図5は、スペクトル線幅E95が1.25pmである比較的ブロードな波形を1つ含むシングルピークのスペクトル形状の一例を示す。
【図6】図6は、図2〜図5に示されたスペクトル形状ごとの露光深度(DOF)と露光余裕度(EL)との関係を示す。
【図7】図7は、トリプルピークのスペクトル形状のいくつかの例を示す。
【図8】図8は、図7に示すスペクトル形状ごとの露光深度(DOF)と露光余裕度(EL)との関係を示す。
【図9】図9は、実施の形態によるレーザ装置が実行するレーザ出力制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、図9に示される多波長発振調整サブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、図9に示されるワンパルス制御サブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施の形態によるエキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステムの概略構成例を示す。
【図13】図13は、実施の形態によるウェッジプリズムおよび移動ステージの一例を示す。
【図14】図14は、エキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステムの他の概略構成例を示す。
【図15】図15は、図14に示すマスタオシレータシステムを架台の搭載面と垂直な方向から見た際の上視図を示す。
【図16】図16は、実施の形態によるウェッジプリズムおよび移動ステージの他の一例を示す。
【図17】図17は、実施の形態によるエキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステムの他の概略構成例を示す。
【図18】図18は、実施の形態によるシリンドリカルハーフレンズおよび移動ステージの一例を示す。
【図19】図19は、実施の形態による半導体レーザを用いたマスタオシレータシステムの概略構成例を示す。
【図20】図20は、実施の形態によるLBO結晶部に入射するレーザ光のスペクトルを示す。
【図21】図21は、実施の形態によるLBO結晶部から出射してKBBF結晶部に入射するレーザ光のスペクトルを示す。
【図22】図22は、実施の形態によるKBBF結晶部から出射したレーザ光のスペクトルを示す。
【図23】図23は、実施の形態による半導体レーザを用いたマスタオシレータシステムの他の概略構成例を示す。
【図24】図24は、図23に示されるLBO結晶部の概略構成例を示す。
【図25】図25は、図23に示されるKBBF結晶部の概略構成例を示す。
【図26】図26は、実施の形態によるLBO結晶部に入射するレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図27】図27は、実施の形態によるLBO結晶部から出射してKBBF結晶部に入射するレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図28】図28は、実施の形態によるKBBF結晶部から出射したレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図29】図29は、図23に示されるKBBF結晶部の他の概略構成例を示す。
【図30】図30は、図29に示される構成をレーザ光の光路を軸として90°回転した際の側視図である。
【図31】図31は、実施の形態によるレーザ光を時間的に分離させる場合のタイミングチャートを示す。
【図32】図32は、実施の形態によるLBO結晶部に入射するレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図33】図33は、実施の形態によるLBO結晶部から出射してKBBF結晶部に入射するレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図34】図34は、実施の形態によるKBBF結晶部から出射したレーザ光の他のスペクトルを示す。
【図35】図35は、実施の形態によるレーザ光の一部が空間的に重複する場合のKBBF結晶部の概略構成例を示す。
【図36】図36は、実施の形態によるレーザ光の一部を時間的に重複させる場合のタイミングチャートを示す。
【図37】図37は、実施の形態による減衰部およびマスタオシレータシステムの概略構成を示す。
【図38】図38は、図37に示される構成をレーザ光の光路を軸として90°回転した際の側視図である。
【図39】図39は、実施の形態による減衰板および移動ステージの一例を示す。
【図40】図40は、実施の形態による減衰板一例を示す。
【図41】図41は、実施の形態によるパワー増幅器として構成された増幅装置の概略構成を模式的に示す。
【図42】図42は、実施の形態によるファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置の概略構成を模式的に示す。
【図43】図43は、実施の形態によるリング共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置の概略構成を模式的に示す。
【図44】図44は、図43に示す構成をレーザ光の光路を軸として90°回転した際の断面図である。
【図45】図45は、実施の形態によるスペクトル検出器の概略構成を模式的に示す。
【図46】図46は、実施の形態によるスペクトル検出器の他の概略構成を模式的に示す。
【図47】図47は、実施の形態によるハーフミラーを用いた光路調節器の概略構成を模式的に示す。
【図48】図48は、実施の形態によるグレーティングを用いた光路調節器の一例を示す。
【図49】図49は、実施の形態によるハーフミラーを用いた光路調節器の他の概略構成を模式的に示す。
【図50】図50は、実施の形態によるグレーティングを用いた光路調節器の他の一例を示す。
【図51】図51は、実施の形態による再生増幅器の概略構成を模式的に示す。
【図52】図52は、実施の形態によるマルチパス型のパワー増幅器として構成された増幅器の概略構成を模式的に示す。
【図53】図53は、実施の形態によるファブリペロ型パワーオシレータの増幅器の概略構成を模式的に示す。
【図54】図54は、実施の形態によるリング型のパワーオシレータとして構成された増幅器の概略構成を模式的に示す。
【実施の形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0010】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.多波長発振レーザ装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 スペクトル形状とDOFの関係
3.4 3波長発振スペクトル形状とDOFの関係
3.5 作用
4.動作フローチャート
4.1 レーザ出力制御動作
4.2 多波長発振調整サブルーチン
4.3 ワンパルス制御サブルーチン
5.マスタオシレータシステム
5.1 エキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステム
5.1.1 ウェッジプリズムを用いたシステム構成例1
5.1.2 ウェッジプリズムを用いたシステム構成例2
5.1.3 シリンドリカルレンズを用いたシステム構成例3
5.2 固体レーザ装置を用いたマスタオシレータシステム
5.2.1 複数のレーザ光が空間的および時間的に重複するシステム構成例1
5.2.2 複数のレーザ光が空間的に分離したシステム構成例2
5.2.3 複数のレーザ光が空間的に分離したシステム構成例3
5.2.4 複数のレーザ光が時間的に分離したシステム構成例4
5.2.5 複数のレーザ光の一部が空間的に重複するシステム構成例5
5.2.6 複数のレーザ光の一部が時間的に重複するシステム構成例6
5.3 減衰部を備えたレーザ装置
6.増幅装置
6.1 エキシマガスをゲイン媒質とするパワー増幅器
6.2 エキシマガスをゲイン媒質とするパワーオシレータ
6.2.1 ファブリペロ共振器を含む構成例1
6.2.2 リング共振器を含む構成例2
7.スペクトル検出器
7.1 モニタエタロン分光器
7.2 グレーティング型分光器
8.光路調節器
8.1 光路を一致させる場合
8.1.1 ハーフミラーを含む光路調節器
8.1.2 グレーティングを含む光路調節器
8.2 光路をずらす場合
8.2.1 ハーフミラーを含む光路調節器
8.2.2 グレーティングを含む光路調節器
9. チタンサファイヤ増幅器
9.1 再生増幅器
9.2 マルチパス増幅器
9.3 パワーオシレータ
9.3.1 ファブリペロ型パワーオシレータ
9.3.2 リング型パワーオシレータ
【0011】
1.概要
以下で例示する実施の形態では、レーザ光のスペクトルが少なくとも3つのピークを含ように、波長および/もしくは光強度高精度に制御し得る。
【0012】
2.用語の説明
KBBF結晶とは、化学式KBeBOで表される非線形光学結晶である。LBO結晶とは、化学式LiBで表される非線形光学結晶である。バースト発振とは、所定の期間に、所定の繰返し周波数で、パルス状のレーザ光を出力することである。光路とは、レーザ光が伝搬する経路のことである。上流とは、レーザ光の光路に沿って光源に近い側をいう。また、下流とは、レーザ光の光路に沿って露光装置に近い側をいう。
【0013】
3.多波長発振レーザ装置
本開示の一実施の形態によるレーザ装置の一例を、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
3.1 構成
図1は、本開示の一実施の形態によるレーザ装置の一例を概略的に示す。レーザ装置100は、コントローラ10と、マスタオシレータシステム20と、増幅装置50と、スペクトル検出部60と、を備えてもよい。レーザ装置100は、高反射ミラー41および42などの光学系と、シャッタ機構70とをさらに備えてもよい。
【0015】
コントローラ10は、レーザ装置100全体を制御してもよい。コントローラ10は、マスタオシレータシステム20および、マスタオシレータシステム20内の多波長発振制御機構30に接続されてもよい。また、コントローラ10は、スペクトル検出部60、シャッタ機構70に接続されてもよい。さらに、コントローラ10は、露光装置80のコントローラ81に接続されてもよい。
【0016】
高反射ミラー41および42などの光学系は、マスタオシレータシステム20と増幅装置50との間の光路上に配置されてもよい。増幅装置50は、光学系を介して入射したレーザ光L1を増幅してもよい。増幅装置50は、エキシマガスなどをゲイン媒質として内部に含んでもよい。増幅装置50は、コントローラ10からの制御の下で動作してもよい。
【0017】
スペクトル検出部60は、増幅装置50より下流の光路上に配置されてもよい。スペクトル検出部60は、ビームスプリッタ61と、集光レンズ62と、スペクトル検出器63とを含んでもよい。ビームスプリッタ61は、増幅装置50から出力されたレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。集光レンズ62は、ビームスプリッタ61によって分岐されたレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。スペクトル検出器63の入力部は、集光レンズ62の集光位置または集光位置付近に配置されてもよい。スペクトル検出器63は、入力されたレーザ光L1のスペクトルを検出してもよい。スペクトル検出器63は、検出したレーザ光L1のスペクトルデータをコントローラ10へ出力してもよい。
【0018】
シャッタ機構70は、スペクトル検出部60より下流の光路上に配置されてもよい。シャッタ機構70は、シャッタ71と、駆動機構72とを含んでもよい。駆動機構72は、コントローラ10からの制御の下で動作し、レーザ光L1の光路に対してシャッタ71を出し入れしてもよい。シャッタ機構70を通過したレーザ光L1は、露光装置80に導かれてもよい。
【0019】
3.2 動作
つづいて、図1に示されるレーザ装置100の概略動作を説明する。コントローラ10は、たとえば露光装置80のコントローラ81からの露光命令に応じて、レーザ出力制御動作を開始してもよい。この露光命令は、たとえばコンタクトホール露光などの特定の露光を要求する命令であってもよい。レーザ出力制御動作を開始すると、コントローラ10は、まず、シャッタ機構70を制御して、レーザ光L1の光路を遮断してもよい。つぎに、コントローラ10は、マスタオシレータシステム20を制御してもよい。マスタオシレータシステム20は、この制御に応じて、少なくとも3つのピークを含むスペクトルを持つレーザ光を出力してもよい。
【0020】
また、コントローラ10は、マスタオシレータシステム20の多波長発振に同期するように、増幅装置50を制御してもよい。増幅装置50は、コントローラ10からの制御に従って、レーザ光L1と同期するように、内部のゲイン媒質を励起してもよい。増幅装置50に入射したレーザ光L1は、励起したゲイン媒質を通過する際に増幅されてもよい。
【0021】
増幅装置50から出射した増幅後のレーザ光L1は、スペクトル検出部60に入射してもよい。スペクトル検出部60に入射したレーザ光L1は、まず、ビームスプリッタ61によって分岐されてもよい。分岐されたレーザ光L1は、集光レンズ62によって、スペクトル検出器63の入力部に集光してもよい。
【0022】
スペクトル検出器63は、受光面に集光したレーザ光L1のスペクトルを検出してもよい。スペクトル検出器63は、検出したスペクトルデータをコントローラ10へ出力してもよい。コントローラ10は、入力されたスペクトルデータに基づいて、マスタオシレータシステム20の多波長発振制御機構30を制御してもよい。これにより、レーザ光L1の光強度および中心波長のうち少なくとも1つが制御されてもよい。
【0023】
3.3 スペクトル形状とDOFの関係
ここで、露光装置80での露光に用いられるレーザ光のスペクトル形状と焦点深度(DOF)との関係を、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図2は、スペクトル線幅E95が0.3pmである波形S0.3を1つ含むシングルピークのスペクトル形状の一例を示す。図3は、それぞれのスペクトル線幅E95が0.3pmである2つの波形S21およびS22を含むダブルピークのスペクトル形状の一例を示す。図4は、それぞれのスペクトル線幅E95が0.3pmである3つの波形S31〜S33をトリプルピークのスペクトル形状の一例を示す。図5は、スペクトル線幅E95が1.25pmである比較的ブロードな波形S1.25を1つ含むシングルピークのスペクトル形状の一例を示す。
【0025】
図6は、図2〜図5に示されたスペクトル形状ごとの露光深度(DOF)と露光余裕度(Exposure Latitude:EL)との関係を示す。図6において、C0.3は、図2に示されるスペクトル形状を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C2は、図3に示されるスペクトル形状を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C3は、図4に示されるスペクトル形状を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C1.25は、図5に示されるスペクトル形状を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。
【0026】
ここで、図3では、2つの波形S21およびS22のピーク強度は略等しい。また、2つの波形S21およびS22のピーク間の波長差は、0.9pmである。図4では、3つの波形S31〜S33のピーク間の波長差は、それぞれ0.9pmである。また、3つの波形S31〜S33のうち、両サイドに位置する波形S31およびS33のピーク強度は略等しい。ただし、これらの間に位置する波形S32のピーク強度は、両サイドの波形S31およびS33のピーク強度に対して強度比0.95である。なお、図2〜図5に示されたスペクトル波形それぞれの中心波長は、実質的に193.350nmである。
【0027】
図6に示されるように、C0.3、C2、C3およびC1.25のなかでは、C3が最も深い露光深度DOFに到達している。これは、図4に示されるトリプルピークのスペクトル形状を持つレーザ光を用いた場合が最も深い露光深度DOFを得られ得ることを示している。このことから、少なくとも3つのピークを含むスペクトル形状を持つレーザ光を用いることで、より深い露光深度DOFを得られることが推測され得る。
【0028】
3.4 3波長発振スペクトル形状とDOFの関係
つぎに、3波長発振で得られるトリプルピークのスペクトル形状における中央に位置する波形のピーク強度を変更した場合のスペクトル波形とDOFとの関係を、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
図7は、トリプルピークのスペクトル形状のいくつかの例を示す。図7において、S80は、両サイドの波形のピーク強度に対する中央の波形のピーク強度が強度比0.8であるスペクトル形状を示す。S90は、両サイドの波形のピーク強度に対する中央の波形のピーク強度が強度比0.9であるスペクトル形状を示す。S95は、両サイドの波形のピーク強度に対する中央の波形のピーク強度が強度比0.95であるスペクトル形状を示す。S100は、両サイドの波形のピーク強度と中央の波形のピーク強度が等しい(強度比1.00)スペクトル形状を示す。なお、図7では、両サイドの波形のピーク強度は略等しい。また、各スペクトル形状S80、S90、S95およびS100における3つの波形のピーク間の波長差は、それぞれ0.9pmである。
【0030】
図8は、図7に示すスペクトル形状ごとの露光深度(DOF)と露光余裕度(EL)との関係を示す。図8において、C80は、スペクトル形状S80を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C90は、スペクトル形状S90を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C95は、スペクトル形状S95を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。C100は、スペクトル形状S100を持つレーザ光を用いた場合のDOFとELとの関係を示す。
【0031】
図8に示されるように、C80、C90、C95およびC100のなかでは、C95が最も安定した関係曲線を示している。特に露光余裕度(EL)が5%程度の範囲では、C95が最も深い露光深度DOFに到達している。これは、両サイドの波形のピーク強度に対する中央の波形のピーク強度が強度比0.95である場合が最も深い露光深度DOFを安定して得られ得ることを示している。このことから、両サイドの波形の間に位置する波形のピーク強度は、両サイドの波形のピーク強度よりも若干弱い方が好ましいことが分かる。また、トリプルピークのスペクトル波形では、その強度比が0.95程度であることが好ましいことが分かる。
【0032】
3.5 作用
以上のように、少なくとも3つのピークを含むスペクトルを持つレーザ光を用いることで、より深い露光深度DOFを得られ得る。その際、両サイドの波形の間に位置する波形のピーク強度を両サイドの波形のピーク強度よりも若干弱くすることで、より深い露光深度DOFを安定して得られ得る。たとえばトリプルピークのスペクトル波形では、その強度比が0.95程度であることが好ましい。
【0033】
4.動作フローチャート
つぎに、図1に示されるレーザ装置100の動作を、図面を用いて詳細に説明する。図9は、レーザ装置100が実行するレーザ出力制御動作の一例を示すフローチャートである。図10は、図9のステップS105に示される多波長発振調整サブルーチンの一例を示すフローチャートである。図11は、図9のステップS108に示されるワンパルス制御サブルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、本説明では、レーザ装置100の動作をコントローラ10の動作を用いて説明する。
【0034】
4.1 レーザ出力制御動作
図9に示されるように、コントローラ10は、まず、露光装置80が備えるコントローラ81などの外部装置から露光命令を受信するまで待機してもよい(ステップS101;NO)。露光命令を受信すると(ステップS101;YES)、コントローラ10は、シャッタ機構70を制御して、レーザ光L1の光路を遮断してもよい(ステップS102)。つぎに、コントローラ10は、レーザ光L1に要求される目標波長λ1t〜λ3tと、目標強度P1t〜P3tとを取得してもよい(ステップS103)。これらの目標波長λ1t〜λ3tと目標強度P1t〜P3tとは、予め不図示のメモリ等に保存されていてもよいし、ステップS101において外部装置から受信した露光命令に含まれていてもよい。
【0035】
つぎに、コントローラ10は、マスタオシレータシステム20およびその多波長発振制御機構30へ制御信号を送信することで、マスタオシレータシステム20による多波長発振を準備してもよい(ステップS104)。これにより、マスタオシレータシステム20は、所定波長のレーザ光を所定の励起エネルギーで多波長発振可能な状態となってもよい。所定波長および所定の励起エネルギーは、初期値として設定されていてもよい。
【0036】
つぎに、コントローラ10は、多波長発振によって出力されるレーザ光L1の中心波長およびピーク強度を目標波長および目標強度に調整する多波長発振調整サブルーチンを実行してもよい(ステップS105)。レーザ光L1に対する中心波長およびピーク強度の調整が完了すると、つぎにコントローラ10は、露光準備が完了したことを要求元であるコントローラ81に通知してもよい(ステップS106)。
【0037】
つぎに、コントローラ10は、シャッタ機構70を制御して、レーザ光L1の光路を開放してもよい(ステップS107)。つぎに、コントローラ10は、レーザ光L1を1つずつ出力するワンパルス制御サブルーチンを実行してもよい(ステップS108)。なお、ワンパルス制御サブルーチンでは、露光の継続の可否が判定されてもよい。
【0038】
つぎに、コントローラ10は、露光を継続するか否かを判定してもよい(ステップS109)。この判定は、ワンパルス制御サブルーチンで実行された露光継続の可否判定結果に基づいて行われてもよい。露光の継続が不可の場合(ステップS109;NO)、コントローラ10は、露光を中断することを要求元であるコントローラ81へ通知してもよい(ステップS110)。その後、コントローラ10は、ステップS102へリターンし、以降の動作をくり返してもよい。一方、露光の継続が可の場合(ステップS109;YES)、つぎにコントローラ10は、たとえば露光装置80のコントローラ81などの外部装置から、露光の中止を要求する露光中止命令を受信したか否かを判定してもよい(ステップS111)。露光中止命令を受信していた場合(ステップS111;YES)、コントローラ10は、レーザ出力制御動作を終了してもよい。一方、露光中止命令を受信していなかった場合(ステップS111;NO)、コントローラ10は、ステップS108へリターンし、以降の動作を実行してくり返してもよい。
【0039】
4.2 多波長発振調整サブルーチン
つぎに、図9のステップS105に示される多波長発振調整サブルーチンについて説明する。図10に示されるように、多波長発振調整サブルーチンでは、コントローラ10は、まず、所定繰返し周波数でレーザ光L1を出力する多波長発振を開始してもよい(ステップS121)。つぎに、コントローラ10は、スペクトル検出部60からレーザ光L1のスペクトルデータを受信するまで待機してもよい(ステップS122;NO)。スペクトルデータを受信すると(ステップS122;YES)、コントローラ10は、スペクトルデータから、各レーザ光L1の中心波長λ1〜λ3と、レーザ光L1のピーク強度P1〜P3とを検出してもよい(ステップS123)。
【0040】
つぎに、コントローラ10は、検出した中心波長λ1〜λ3と目標波長λ1t〜λ3tとの差Δλ1〜Δλ3、および、検出したピーク強度P1〜P3と目標強度P1t〜P3tとの差ΔP1〜ΔP3を算出してもよい(ステップS124)。つぎに、コントローラ10は、算出した差Δλ1〜Δλ3およびΔP1〜ΔP3が許容範囲内であるか否かを判定してもよい(ステップS125)。この判定では、差Δλ1〜Δλ3およびΔP1〜ΔP3の絶対値が閾値Δλ1r〜Δλ3rおよびΔP1r〜ΔP3r以下であるか否かが判定されてもよい。閾値Δλ1r〜Δλ3rおよびΔP1r〜ΔP3rは、不図示のメモリ等に予め格納されていてもよいし、予め不図示のメモリ等に保存されていてもよいし、ステップS101において外部装置から受信した露光命令に含まれていてもよい。
【0041】
つぎに、コントローラ10は、全ての差が許容範囲内であるか否かを判定してもよい(ステップS126)。1つでも許容範囲内でない差が存在する場合(ステップS126;NO)、コントローラ10は、少なくとも許容範囲外と判定された差が小さくなるように、多波長発振制御機構30を制御してもよい(ステップS127)。なお、多波長発振制御機構30へ与える制御量は、算出された差に基づいてコントローラ10が都度算出してもよいし、予め差と対応づけられていてもよい。あるいは、差の種類と符号とに応じて、予め定められた値の制御量が多波長発振制御機構30へ与えられてもよい。その後、コントローラ10は、ステップS122へリターンし、以降の動作をくり返してもよい。一方、全ての差が許容範囲内である場合(ステップS126;YES)、コントローラ10は、多波長発振を停止してもよい(ステップS128)。その後、コントローラ10は、図9に示すレーザ出力制御動作へリターンしてもよい。
【0042】
以上の多波長発振調整サブルーチンを実行することで、レーザ光L1の中心波長とピーク強度とが目標波長および目標強度に対する許容範囲内に収まるように調整され得る。
【0043】
4.3 ワンパルス制御サブルーチン
つぎに、図9のステップS108に示すワンパルス制御サブルーチンについて説明する。図11に示されるように、ワンパルス制御サブルーチンでは、コントローラ10は、まず、多波長発振のタイミングを指示するトリガ信号を受信するまで待機してもよい(ステップS131;NO)。このトリガ信号は、たとえば露光装置80のコントローラ81などの外部装置から送信されてもよい。または、クロック発生器などが発生したクロック信号またはその分周された信号をトリガ信号としてもよい。
【0044】
トリガ信号を受信すると(ステップS131;YES)、コントローラ10は、ワンパルスを出力する多波長発振を実行してもよい(ステップS132)。つぎに、コントローラ10は、スペクトル検出部60からレーザ光L1のスペクトルデータを受信するまで待機してもよい(ステップS133;NO)。スペクトルデータを受信すると(ステップS133;YES)、コントローラ10は、スペクトルデータから、レーザ光L1の中心波長λ1〜λ3と、各レーザ光L1〜L3のピーク強度P1〜P3とを検出してもよい(ステップS134)。
【0045】
つぎに、コントローラ10は、検出した中心波長λ1〜λ3と目標波長λ1t〜λ3tとの差Δλ1〜Δλ3、および、検出したピーク強度P1〜P3と目標強度P1t〜P3tとの差ΔP1〜ΔP3を算出してもよい(ステップS135)。つぎに、コントローラ10は、算出した差Δλ1〜Δλ3およびΔP1〜ΔP3が許容範囲内であるか否かを判定してもよい(ステップS136)。この判定では、差Δλ1〜Δλ3およびΔP1〜ΔP3の絶対値が閾値Δλ1r〜Δλ3rおよびΔP1r〜ΔP3r以下であるか否かが判定されてもよい。閾値Δλ1r〜Δλ3rおよびΔP1r〜ΔP3rは、不図示のメモリ等に予め格納されていてもよいし、予め不図示のメモリ等に保存されていてもよいし、ステップS101において外部装置から受信した露光命令に含まれていてもよい。
【0046】
つぎに、コントローラ10は、全ての差が許容範囲内であるか否かを判定してもよい(ステップS137)。1つでも許容範囲内でない差が存在する場合(ステップS137;NO)、コントローラ10は、レーザ出力の継続を不可と判定してもよい(ステップS138)。その後、コントローラ10は、図9に示すレーザ出力制御動作へリターンしてもよい。一方、全ての差が許容範囲内である場合(ステップS137;YES)、コントローラ10は、レーザ出力の継続を可と判定してもよい(ステップS139)。つぎに、コントローラ10は、少なくとも許容範囲外と判定された差が小さくなるように、多波長発振制御機構30を制御してもよい(ステップS140)。なお、多波長発振制御機構30へ与える制御量は、算出された差に基づいてコントローラ10が都度算出してもよいし、予め差と対応づけられていてもよい。あるいは、差の種類と符号とに応じて、予め定められた値の制御量が多波長発振制御機構30へ与えられてもよい。その後、コントローラ10は、図9に示すレーザ出力制御動作へリターンしてもよい。
【0047】
以上のワンパルス制御サブルーチンを実行することで、ワンパルスごとに多波長発振制御機構30を調整することが可能であるため、より安定したレーザ光L1の出力が可能となる。
【0048】
この実施形態では、ワンパルス制御の場合を示した。しかしながら、この実施形態に限定されることなく、複数のレーザパルスの中心波長、ピーク強度を平均化処理して、判断や多波長発振制御機構30に制御信号を送ってもよい。
【0049】
5.マスタオシレータシステム
つぎに、図1に示されるマスタオシレータシステム20のいくつかの具体例を、図面を参照して詳細に説明する。
【0050】
5.1 エキシマレーザ装置を用いたマスターオシレータシステム
エキシマレーザ装置を用いた場合、多波長発振制御機構30によりレーザ光L1の中心波長および/もしくは光強度が調節され、マスターオシレータシステム20から少なくとも3つのピークを含むスペクトルを持つレーザ光L1が出力されてもよい。
【0051】
5.1.1 ウェッジプリズムを用いたシステム構成例1
図12は、エキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステム20の概略構成例を示す。図12に示されるように、マスタオシレータシステム20は、出力結合ミラー21と、レーザチャンバ22と、多波長発振制御機構30とを含んでもよい。レーザチャンバ22は、ウィンドウ23および25と、ウィンドウホルダ24および26と、一対の放電電極27(27a、27b)とを備えてもよい。また、レーザチャンバ22の内部は、レーザ媒質としてのエキシマガスで満たされていてもよい。多波長発振制御機構30は、コントローラ31と、グレーティング33と、1つ以上のプリズム35〜37と、2つの光学素子、例えばウェッジプリズム38および39とを備えてもよい。
【0052】
出力結合ミラー21とグレーティング33とは、光共振器を構成してもよい。出力結合ミラー21は、マスタオシレータシステム20のレーザ出力端として機能してもよい。グレーティング33は、光共振器中に存在し得るレーザ光の波長を選択する波長フィルタとして機能してもよい。レーザチャンバ22は、光共振器中を進行するレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。
【0053】
プリズム35〜37は、光共振器内を往復するレーザ光の光路およびグレーティング33への入射角度を決定してもよい。プリズム35〜37は、架台32上に設置されていてもよい。グレーティング33は、回転ステージ34によって回転可能に保持されていてもよい。回転ステージ34は、架台32に設置されてもよい。
【0054】
図13は、ウェッジプリズム39および移動ステージ39aの一例を示す。移動ステージ39は、水平方向へ出し入れ可能なアーム部39bを備えてもよい。ウェッジプリズム39は、アーム部39bの先端に取り付けられてもよい。ウェッジプリズム38および移動ステージ38aは、ウェッジプリズム39および移動ステージ39aと同様であってもよい。
【0055】
回転ステージ34と、移動ステージ38aおよび39aと、回転ステージ38cおよび39cとは、それぞれコントローラ31によって制御されてもよい。コントローラ31は、コントローラ10からの指示に従って、これらを制御してもよい。
【0056】
つづいて、図12に示されるマスタオシレータシステム20の動作を説明する。レーザチャンバ22内の一対の放電電極27には、たとえばコントローラ10からの制御の下、不図示の電源から励起エネルギーが与えられてもよい。コントローラ31は、コントローラ10から多波長発振の指示を受信すると、移動ステージ38aおよび39aを駆動して、ウェッジプリズム38および39を光共振器中の光路の一部にそれぞれ挿入してもよい。たとえば図12では、ウェッジプリズム38が図面中、上方から下方へ向けて光路内の一部に挿入されてもよい。一方、ウェッジプリズム39は、ウェッジプリズム38と対向する位置で、図面中、下方から上方へ向けて光路内の一部に挿入されてもよい。挿入されたウェッジプリズム38および39の間には、レーザ光L1がそのまま通過する隙間が存在してもよい。これにより、グレーティング33へ向かうレーザ光L1の一部の領域はウェッジプリズム38または39を透過する。ウェッジプリズム38および39を通過したレーザ光は、それらのウェッジプリズムを通過しないレーザ光とは異なる入射角度でグレーティング33に入射する。このように、レーザ光L1の一部のグレーティング33への入射角度を調節することにより、マスターオシレータ20より、3つのピークを含むスペクトルを持つレーザ光が出力されてもよい。
【0057】
また、コントローラ31は、たとえばコントローラ10からの制御の下、回転ステージ38cを駆動して、ウェッジプリズム38を移動ステージ38aごと回転させてもよい。ウェッジプリズム39を移動させる動作もこれと同様であってよい。これにより、レーザ光L1の中心波長およびピーク強度のうち少なくとも1つが調整され得る。
【0058】
さらに、コントローラ31は、たとえばコントローラ10からの制御の下、回転ステージ34を駆動して、グレーティング33を回転させてもよい。これにより、レーザ光L1の中心波長が調整され得る。
【0059】
5.1.2 ウェッジプリズムを用いたシステム構成例2
図14および図15は、エキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステム20の他の概略構成例を示す。図14は、架台32の搭載面と平行な方向であってレーザ光の光路と実質的に垂直な方向からマスタオシレータシステム120を見た際の側視図を示す。図15は、架台32の搭載面と垂直な方向からマスタオシレータシステム120を見た際の上視図を示す。以下の説明において、上述と同様の構成には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0060】
図14および図15に示されるように、マスタオシレータシステム120は、図12に示すマスタオシレータシステム20と同様の構成を備えてもよい。ただし、マスタオシレータシステム120は、移動ステージ38aおよび39aが移動ステージ138aおよび139aに置き換えられた多波長発振制御機構130を備えてもよい。
【0061】
図16は、ウェッジプリズム39および移動ステージ139aの一例を示す。ウェッジプリズム39は、移動ステージ139aの側面に取り付けられてもよい。移動ステージ139aは、上下移動可能であってもよい。ウェッジプリズム38および移動ステージ138aは、ウェッジプリズム39および移動ステージ139aと同様の機構であってもよい。移動ステージ138aおよび139aは、それぞれ回転ステージ38cおよび39cによって回転可能に保持されていてもよい。
【0062】
コントローラ31は、コントローラ10から多波長発振の指示を受信すると、移動ステージ138aおよび139aを駆動して、ウェッジプリズム38および39を光共振器中の光路の一部にそれぞれ挿入してもよい。本例では、図14および図15に示されるように、ウェッジプリズム38は、光共振器中の光路における上部の領域に出し入れされてもよい。一方、ウェッジプリズム39は、ウェッジプリズム38と対向する側から、光共振器中の光路における下部の領域に出し入れされてもよい。挿入されたウェッジプリズム38および39の間には、レーザ光がそのまま通過する隙間が存在してもよい。
また、コントローラ31は、たとえばコントローラ10からの制御の下、回転ステージ38cを駆動して、ウェッジプリズム38を移動ステージ138aごと回転させてもよい。ウェッジプリズム39を移動させる動作もこれと同様であってよい。これにより、レーザ光L1の中心波長およびピーク強度のうち少なくとも1つが調整され得る。
【0063】
その他の構成および動作は、図12に示すマスタオシレータシステム20と同様であってもよい。
【0064】
5.1.3 シリンドリカルレンズを用いたシステム構成例3
図17は、エキシマレーザ装置を用いたマスタオシレータシステム20の他の概略構成例を示す。図17は、架台32の搭載面と垂直な方向からマスタオシレータシステム220を見た際の上視図を示す。なお、本例では、図14および図15に示されるマスタオシレータシステム120をベースにするが、これに限らず、たとえば図12に示されるマスタオシレータシステム20をベースとしてもよい。以下の説明において、上述と同様の構成には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0065】
図17に示されるように、マスタオシレータシステム220は、図14および図15に示すマスタオシレータシステム120と同様の構成を備えてもよい。ただし、ウェッジプリズム38および39がシリンドリカルハーフレンズ238および239に置き換えられた多波長発振制御機構230を備えてもよい。また、多波長発振制御機構230では、回転ステージ38cおよび39cが省略されてもよい。
【0066】
図18は、シリンドリカルハーフレンズ239および移動ステージ139aの一例を示す。シリンドリカルハーフレンズ239は、移動ステージ139aのアーム部39b先端に取り付けられてもよい。シリンドリカルハーフレンズ238および移動ステージ38aは、シリンドリカルハーフレンズ239および移動ステージ139aと同様であってもよい。シリンドリカルハーフレンズ238または239に入射したレーザ光の出射角度は、アーム部38bまたは39bの移動方向に沿った位置に依存して変化してもよい。
【0067】
コントローラ31は、コントローラ10から多波長発振の指示を受信すると、移動ステージ138aおよび139aを駆動して、シリンドリカルハーフレンズ238および239を光共振器中のレーザ光の光路の一部にそれぞれ挿入してもよい。本例では、図17に示されるように、シリンドリカルハーフレンズ238は、光共振器中の光路における上部の領域に出し入れされてもよい。一方、シリンドリカルハーフレンズ239は、シリンドリカルハーフレンズ238と対向する側から、光共振器中の光路における下部の領域に出し入れされてもよい。挿入されたシリンドリカルハーフレンズ238および239の間には、レーザ光がそのまま通過する隙間が存在してもよい。
また、コントローラ31は、たとえばコントローラ10からの制御の下、移動ステージ138aおよび139aを駆動して、アーム部38bおよびは39bの突出量を制御してもよい。これにより、シリンドリカルハーフレンズ238および239を通過するレーザ光L1の領域が変化するため、レーザ光L1の中心波長が調整され得る。一方、ステージ138aとステージ139aの位置を調節することで、ピーク強度を調節してもよい。
【0068】
その他の構成および動作は、図12に示すマスタオシレータシステム20または図14および図15に示すマスタオシレータシステム120と同様であってもよい。
【0069】
5.2 固体レーザ装置を用いたマスタオシレータシステム
つぎに、半導体レーザなどの固体レーザ装置を用いたマスタオシレータシステム20の概略構成を、以下にいくつか例を挙げて説明する。
【0070】
5.2.1 複数のレーザ光が空間的および時間的に重複するシステム構成例1
図19は、半導体レーザを用いたマスタオシレータシステム20の概略構成例を示す。図19に示されるように、マスタオシレータシステム500は、コントローラ510と、シード光源520と、光路調節器530と、増幅器540と、波長変換器550とを含んでもよい。
【0071】
シード光源520は、少なくとも3つの半導体レーザ520a〜520cを含んでもよい。各半導体レーザ520a〜520cは、シングル縦モードで発振しても、マルチ縦モードで発振してもよい。
【0072】
コントローラ510は、コントローラ10からの制御の下、半導体レーザ520a〜520cを発振させてもよい。コントローラ510は、半導体レーザ520a〜520cの発振タイミング、発振波長および出力強度を制御してもよい。
【0073】
光路調節器530は、シード光源520から異なる光路で出力されたレーザ光L1r〜L3rの光路を、実質的に一致させてもよい。増幅器540は、レーザ光L1r〜L3rを増幅してもよい。増幅器540は、チタンサファイア結晶などの固体をゲイン媒質として含んでもよい。
【0074】
波長変換器550は、たとえば2つの非線形光学結晶を含んでもよい。たとえば、波長変換器550は、LBO結晶部560と、KBBF結晶部570とを含んでもよい。LBO結晶部560は、レーザ光L1r〜L3rを、これらの第2高調波光に変換してもよい。KBBF結晶部570は、LBO結晶部560から出力された第2高調波光を、これらの第2高調波光(以下、これを第4高調波光という)に変換してもよい。第4高調波光は、3つのレーザ光L1〜L3とみなしてもよいし、3つのレーザ光L1〜L3が重複した1つのレーザ光とみなしてもよい。
【0075】
コントローラ510には、たとえばコントローラ10から所定繰返し周波数のトリガ信号が入力されてもよい。コントローラ510は、入力されたトリガ信号に従って、半導体レーザ520a〜520cを所定繰返し周波数でレーザ発振させてもよい。その結果、シード光源520からは、波長の異なるレーザ光L1r〜L3rが所定繰返し周波数で出力され得る。レーザ光L1r〜L3rの出力タイミングは、同じであってもよい。その場合、レーザ光L1r〜L3rは、時間的に重複し得る。
【0076】
レーザ光L1r〜L3rの光路が光路調節器530によって実質的に一致させられた場合、レーザ光L1r〜L3rは、空間的にも重複し得る。時間的および空間的に重複するレーザ光L1r〜L3rは、増幅器540で増幅されてもよい。増幅されたレーザ光L1r〜L3rは、波長変換器550を通過することで、レーザ光L1〜L3またはレーザ光L1〜L3を含むレーザ光に変換されてもよい。
【0077】
ここで、図20〜図22に、波長変換器550を通過するレーザ光のスペクトルを示す。
【0078】
図20に示されるように、LBO結晶部560に入射するレーザ光L1r〜L3rのうち、レーザ光L1rおよびL3rの間に位置するレーザ光L2rのピーク強度が、両サイドのレーザ光L1rおよびL3rのピーク強度よりも小さい場合、図21に示されるように、LBO結晶部560からは、両サイドのレーザ光L1rrおよびL3rrのピーク強度がそれらの間に位置するレーザ光L2rrおよびL2hのピーク強度よりも大きいスペクトルの第2高調波光が出射し得る。さらに、図22に示されるように、KBBF結晶部570からは、両サイドのレーザ光L1およびL3のピーク強度がそれらの間に位置するレーザ光L2およびL4hのピーク強度よりも大きいスペクトルの第4高調波光が出射し得る。
【0079】
なお、波長変換器550から出射するレーザ光L1〜L3のピーク強度は、コントローラ510が半導体レーザ520a〜520cへ与える励起エネルギー(電流値)を調節することで制御可能である。波長に関しては、半導体レーザの図示しない波長選択素子(たとえばグレーティング)の波長選択特性(たとえば半導体の温度)を調節することで制御可能である。コントローラ510は、コントローラ10からの指示に従って、半導体レーザ520a〜520cへ与える励起エネルギーを調節してもよい。
【0080】
5.2.2 複数のレーザ光が空間的に分離したシステム構成例2
図23は、半導体レーザを用いたマスタオシレータシステム20の他の概略構成例を示す。図24は、図23に示されるLBO結晶部560の概略構成例を示す。図25は、図23に示されるKBBF結晶部570の概略構成例を示す。以下の説明において、上述と同様の構成には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0081】
図23に示されるように、マスタオシレータシステム600は、図19に示されるマスタオシレータシステム500と同様の構成を備えてもよい。ただし、マスタオシレータシステム600は、光路調節器530に代えて、レーザ光L1r〜L3rを異なる角度で出射し得る光路調節器630を備えてもよい。
【0082】
光路調節器630から異なる角度で出射したレーザ光L1r〜L3rは、増幅器540で増幅されてもよい。増幅されたレーザ光L1r〜L3rは、波長変換器550に入射してもよい。
【0083】
図24に示されるように、波長変換器550のLBO結晶部560は、集光レンズ561と、LBO結晶562と、コリメートレンズ563と、ビームスプリッタ564とを含んでもよい。波長変換器550に入射したレーザ光L1r〜L3rは、集光レンズ561によって、LBO結晶562の異なる位置に集光されてもよい。これにより、レーザ光L1r〜L3rを基本波光とした差周波光や和周波光などの発生を低減し得る。
【0084】
LBO結晶562から出射したレーザ光L1rr〜L3rrは、コリメートレンズ563によって平行光に変換されてもよい。平行光化されたレーザ光L1rr〜L3rrは、ビームスプリッタ564で反射して、KBBF結晶部570に入射してもよい。ビームスプリッタ564は、LBO結晶部560から出射したレーザ光のうち、基本波光(レーザ光L1r〜L3r)と第2高調波光(レーザ光L1rr〜L3rr)とを分離してもよい。分離されたレーザ光L1r〜L3rは、モニタされてもよいし、ダンパなどで吸収されてもよい。
【0085】
図25に示されるように、波長変換器550のKBBF結晶部570は、集光レンズ571a〜571cと、KBBF結晶組立体572と、コリメートレンズ573a〜573cと、ビームスプリッタ574とを含んでもよい。KBBF結晶組立体572は、KBBF結晶572bと、KBBF結晶572bをサンドウィッチする2つのプリズム572aおよび572cを含んでもよい。KBBF結晶572bと2つのプリズム572aおよび572cとは、オプティカルコンタクトを形成してもよい。
【0086】
LBO結晶部560から出射したレーザ光L1rr〜L3rrは、集光レンズ571a〜571cによって、KBBF結晶572bの異なる位置に集光されてもよい。これにより、レーザ光L1rr〜L3rrを基本波光とした差周波光や和周波光などの発生を低減し得る。
【0087】
KBBF結晶組立体572から出射したレーザ光L1〜L3は、コリメートレンズ573a〜573cによってそれぞれ平行光に変換されてもよい。平行光化されたレーザ光L1〜L3は、ビームスプリッタ574で反射されてもよい。ビームスプリッタ574は、KBBF結晶組立体572から出射したレーザ光のうち、基本波光(レーザ光L1rr〜L3rr)と第4高調波光(レーザ光L1〜L3)とを分離してもよい。分離されたレーザ光L1rr〜L3rrは、モニタされてもよいし、ダンパなどで吸収されてもよい。
【0088】
ここで、図26〜図28に、波長変換器550を通過するレーザ光のスペクトルを示す。図26は、LBO結晶部560に入射するレーザ光L1r〜L3rのスペクトルを示す。図27は、LBO結晶部560から出射してKBBF結晶部570に入射するレーザ光L1rr〜L3rrのスペクトルを示す。図28は、KBBF結晶部570から出射したレーザ光L1〜L3のスペクトルを示す。
【0089】
図26に示されるレーザ光L1r〜L3rをLBO結晶562の異なる位置に集光することで、図27に示されるように、レーザ光L1r〜L3rを基本波光とした差周波光や和周波光などの発生が低減され得る。また、図27に示されるレーザ光L1rr〜L3rrをKBBF結晶572bの異なる位置に集光することで、図28に示されるように、レーザ光L1rr〜L3rrを基本波光とした差周波光や和周波光などの発生が低減され得る。このように、差周波光や和周波光などの発生を低減することで、レーザ光L1〜L3の中心波長およびピーク強度の制御が容易となり得る。
【0090】
その他の構成および動作は、図19に示されるマスタオシレータシステム500と同様であってもよい。
【0091】
5.2.3 複数のレーザ光が空間的に分離したシステム構成例3
図25に示されるKBBF結晶572bのレーザ光L1rr〜L3rrに対する配置は、図29および図30に示されるようにも変更可能である。図30は、図29に示される構成を、レーザ光L2rrの光路を軸として90°回転した際の側視図である。
【0092】
図29および図30に示されるように、KBBF結晶572bのレーザ光L1rr〜L3rに対する配置は、図25に示される配置に対し、たとえばレーザ光L2rrの光路を軸として90°回転された配置であってもよい。この場合、光路に沿ったレーザ光L1rr〜L3rの焦点位置を変化させる必要がないため、集光レンズ571a〜571cおよびコリメートレンズ573a〜573cをそれぞれ1つの集光レンズ571およびコリメートレンズ573に置き換えることができる。
【0093】
その他の構成および動作は、図23に示されるマスタオシレータシステム600と同様であってもよい。
【0094】
5.2.4 複数のレーザ光が時間的に分離したシステム構成例4
図19〜図30では、レーザ光L1〜L3が時間的に重複し得る場合を例示した。ただし、これらに限られるものではない。図31は、レーザ光L1〜L3を時間的に分離させる場合のタイミングチャートを示す。
【0095】
図31(a−1)〜(a−3)は、それぞれ半導体レーザ520a〜520cに与えられるトリガ信号T1〜T3を示す。トリガ信号T1〜T3は、それぞれレーザ光L1〜L3を時間的に分離するのに十分な時間Tずつずれていてもよい。その結果、図31(b)に示されるように、光路調節器530からは、レーザ光L1r〜L3rがそれぞれ時間差Gを挟んで出力されてもよい。時間差Gは、図31(c)および(d)に示されるように、レーザ光L1r〜L3rが増幅器540およびLBO結晶部560を通過する際にも存在し得る。その結果、図31(e)に示されるように、KBBF結晶部570からは、レーザ光L1〜L3が時間差Gを挟んで出力されてもよい。
【0096】
その他の構成および動作は、図19〜図30を用いて説明した構成および動作のいずれかと同様であってもよい。なお、上述したレーザ光の空間的な分離と時間的な分離とは、組み合わされてもよい。
【0097】
5.2.5 複数のレーザ光の一部が空間的に重複するシステム構成例5
図23〜図30では、レーザ光L1〜L3が空間的に分離された場合を例示した。ただし、これに限られるものではない。たとえば、レーザ光L1〜L3の一部が空間的に重複していてもよい。
【0098】
図32〜図34に、レーザ光L1〜L3の一部を重複させた場合の波長変換器550を通過するレーザ光のスペクトルを示す。図32は、LBO結晶部560に入射するレーザ光L1r〜L3rのスペクトルを示す。図33は、LBO結晶部560から出射してKBBF結晶部570に入射するレーザ光L1rr〜L3rrおよびL2iのスペクトルを示す。図34は、KBBF結晶部570から出射したレーザ光L1〜L3およびL4iのスペクトルを示す。
【0099】
図32に示されるレーザ光L1r〜L3rをそれらの一部が重複するようにLBO結晶562に集光することで、図33に示されるように、第2高調波光であるレーザ光L1rr〜L3rrの他、差周波光や和周波光であるレーザ光L2iが出力され得る。そのレーザ光L2iのピーク強度は、他のレーザ光L1rr〜L3rrと比較して小さくてもよい。また、図33に示されるレーザ光L1rr〜L3rrおよびL2iをそれらの一部が重複するようにKBBF結晶572bに集光することで、図34に示されるように、第4高調波光であるL1〜L3の他、差周波光や和周波光であるレーザ光L4iが出力され得る。そのレーザ光L4iのピーク強度は、他のレーザ光L1〜L3と比較して小さくてもよい。このように、最終的にマスタオシレータシステム20が出力するレーザ光には、レーザ光L1〜L3の他、差周波光や和周波光であるレーザ光L4iを含んでもよい。
【0100】
また、図35に、レーザ光L1〜L3の一部が空間的に重複する場合のKBBF結晶部570の概略構成例を示す。図32に示されるように、レーザ光L1〜L3の一部が空間的に重複する場合、レーザ光L1〜L3の一部が光路に沿ったレーザ光L1rr〜L3rの焦点位置でオーバラップしてもよい。その場合、集光レンズ571a〜571cおよびコリメートレンズ573a〜573cをそれぞれ1つの集光レンズ571およびコリメートレンズ573に置き換えることができる。
【0101】
その他の構成および動作は、図19〜図30を用いて説明した構成および動作のいずれかと同様であってもよい。
【0102】
5.2.6 複数のレーザ光の一部が時間的に重複するシステム構成例6
また、レーザ光L1〜L3は、それらの一部が時間的に重複してもよい。その場合、図36(a−1)〜(a−3)に示されるように、半導体レーザ520a〜520cに与えるトリガ信号T1〜T3の時間的ずれを、必要十分に小さい時間Tsとしてもよい。それにより、図36(b)に示されるように、光路調節器530からは、レーザ光L1r〜L3rが、それらの一部が時間的に重複しつつ出力され得る。その結果、KBBF結晶部570からは、レーザ光L1〜L3が、それらの一部が時間的に重複しつつ出力され得る。
【0103】
その他の構成および動作は、図19〜図30を用いて説明した構成および動作のいずれかと同様であってもよい。なお、波長変換器550を通過するレーザ光のスペクトルは、図32〜図34に示したスペクトルと同様であってもよい。
【0104】
5.3 減衰部を備えたレーザ装置。
マスタオシレータシステム20が出力するレーザ光L1のピーク強度は、減衰部を用いて調節されてもよい。図37および図38は、減衰部430およびマスタオシレータシステム20の概略構成を示す。図38は、図37に示される構成を、レーザ光L2rの光路を軸として90°回転した際の側視図である。なお、マスタオシレータシステム20の代わりに、上述において例示した他のマスタオシレータシステム120または220が用いられてもよい。また、減衰部430は、マスタオシレータシステム20の一部であってもよい。
【0105】
図37および図38に示されるように、減衰部430は、コントローラ431と、減衰板432〜434と、移動ステージ432a〜434aとを含んでもよい。
【0106】
図39は、減衰板432および移動ステージ432aの一例を示す。図40は、減衰板432の一例を示す。移動ステージ432aは、水平方向へ出し入れ可能なアーム部432bを備えてもよい。減衰板432は、アーム部432bの先端に取り付けられてもよい。減衰板432は、平板状の透明基板であってもよい。減衰板432におけるレーザ光L1が通過する少なくとも1つの面には、アーム部432bの移動方向に沿って透過率が変化する半透過膜が形成されていてもよい。それにより、減衰板432の透過率は、アーム部432bの移動方向に沿って変化してもよい。減衰板433および移動ステージ433aと、減衰板434および移動ステージ434aとは、減衰板432および移動ステージ432aと同様であってもよい。
【0107】
コントローラ431は、コントローラ10からレーザ光L1のピーク強度についての指示を受信すると、移動ステージ432a〜434aを駆動して、減衰板432〜434をレーザ光L1の光路に挿入してもよい。これにより、減衰板432〜434を透過する位置に応じてレーザ光L1のピーク強度が調整され得る。その他の構成および動作は、上述と同様であってもよい。
【0108】
6.増幅装置
つぎに、図1に示す増幅装置50について、図面を用いて詳細に説明する。増幅装置50は、パワーオシレータやパワー増幅器や再生増幅器など、種々の増幅装置であってよい。また、増幅装置50は、1つの増幅装置であってもよいし、複数の増幅装置を含んでいてもよい。
【0109】
6.1 エキシマガスをゲイン媒質とするパワー増幅器
図41は、パワー増幅器として構成された増幅装置50の概略構成を模式的に示す。図41に示されるように、増幅装置50は、チャンバ53を備えてもよい。増幅装置50は、レーザ光L1のビームプロファイルを調整するスリット52をさらに備えてもよい。チャンバ53には、ウィンドウ54および57が設けられてもよい。ウィンドウ54および57は、チャンバ53の機密性を保持しつつ、レーザ光L1を透過させてもよい。このチャンバ53内には、エキシマガスなどのゲイン媒質が封入されていてもよい。ゲイン媒体は、例えばKrガス、Arガス、Fガス、Neガス、およびXeガスのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに、チャンバ53内には、一対の放電電極55および56が設けられてもよい。放電電極55および56は、レーザ光L1が通過する領域(増幅領域)を挟むように配置されていてもよい。放電電極55および56間には、不図示の電源からパルス状の高電圧が印加されてもよい。高電圧は、レーザ光L1が増幅領域を通過するタイミングに合わせて、放電電極55および56間に印加されてもよい。放電電極55および56間に高電圧が印加されると、放電電極55および56間に、活性化されたゲイン媒質を含む増幅領域が形成され得る。レーザ光L1は、この増幅領域を通過する際に増幅され得る。
【0110】
6.2 エキシマガスをゲイン媒質とするパワーオシレータ
つづいて、パワーオシレータを増幅装置50として用いた場合を以下に例を挙げて説明する。
【0111】
6.2.1 ファブリペロ共振器を含む構成例1
まず、ファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを増幅装置50として用いた場合を例に挙げる。図42は、ファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置50Aの概略構成を模式的に示す。図42に示されるように、増幅装置50Aは、図41に示される増幅装置50と同様の構成に加え、レーザ光の一部を反射し、一部を透過するリアミラー51と、レーザ光の一部を反射し、一部を透過する出力カプラ58とを備えてもよい。リアミラー51と出力カプラ58とは、光共振器を形成してもよい。ここで、リアミラー51の反射率は出力カプラ58の反射率よりも高いことが好ましい。出力カプラ58は、増幅後のレーザ光L1の出力端であってもよい。
【0112】
6.2.2 リング共振器を含む構成例2
つぎに、リング共振器を備えたパワーオシレータを増幅装置50として用いた場合を例に挙げる。図43および図44は、リング共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置90の概略構成を模式的に示す。増幅装置90の出力段には、増幅装置90から出力されたレーザ光L1を遮断するシャッタ98がさらに設けられてもよい。さらに、図1に示される高反射ミラー42の代わりに、ビームスプリッタ43が用いられてもよい。
【0113】
図43および図44に示されるように、増幅装置90は、高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと、出力カプラ91と、チャンバ92とを備えてもよい。高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと出力カプラ91とは、チャンバ92内の増幅領域を複数回通過するマルチパスを形成してもよい。出力カプラ91は、部分反射ミラーであってもよい。チャンバ92は、高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと出力カプラ91とが形成する光路上に配置されてもよい。なお、増幅装置90は、内部を進行するレーザ光L1のビームプロファイルを調整する不図示のスリットをさらに備えていてもよい。チャンバ92内には、増幅領域を満たすようにエキシマガスなどのゲイン媒質が封入されていてもよい。ゲイン媒体は、例えばKrガス、Arガス、Fガス、Neガス、およびXeガスのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0114】
7.スペクトル検出器
つぎに、図1に示されるスペクトル検出器63について説明する。
【0115】
7.1 モニタエタロン分光器
まず、モニタエタロンを用いたスペクトル検出器63を、図面を用いて詳細に説明する。図45は、スペクトル検出器63の概略構成を模式的に示す。図45に示されるように、スペクトル検出器63は、拡散板631と、モニタエタロン632と、集光レンズ633と、イメージセンサ635(またはフォトダイオードアレイでもよい)とを備えてもよい。
【0116】
集光レンズ62を通過したレーザ光L1は、まず、拡散板631に入射してもよい。拡散板631は、入射したレーザ光L1を散乱させてもよい。この散乱光は、モニタエタロン632に入射してもよい。このモニタエタロン632は、レーザ光L1を透過する基板の表面に部分反射膜がコーティングされた2枚のミラーが所定の間隔となるようにスペーサを介して張り合わされたエアギャップエタロンであってもよい。モニタエタロン632は、入射した散乱光のうち所定の波長の光を透過してもよい。この透過光は、集光レンズ633に入射してもよい。イメージセンサ635は、集光レンズ633の焦点面に配置されてもよい。集光レンズ633によって集光された透過光は、イメージセンサ635に干渉縞を発生させ得る。イメージセンサ635は、発生した干渉縞を検出してもよい。この干渉縞の半径の2乗は、レーザ光L1の波長と比例関係にあり得る。そのため、検出した干渉縞からレーザ光L1全体のスペクトルを検出し得る。各々のスペクトル線幅、ピーク強度及び波長は、検出したスペクトルから図示せぬ情報処理装置によって求められてもよいし、コントローラ10で算出されてもよい。
【0117】
なお、集光レンズ633とイメージセンサ635との間に、遮光板634を設けてもよい。これにより、迷光を低減し、高精度に干渉縞を検出し得る。
【0118】
7.2 グレーティング型分光器
つぎに、グレーティング型分光器を用いたスペクトル検出器63Aを、図面を用いて詳細に説明する。図46は、スペクトル検出器63Aの概略構成を模式的に示す。図46に示されるように、スペクトル検出器63Aは、図示しない拡散板と、分光器633aとを備えてもよい。分光器633aは、凹面ミラー635aと、グレーティング636aと、凹面ミラー637aと、イメージセンサ(ラインセンサ)638aとを備えてもよい。
【0119】
集光レンズ62を通過したレーザ光L1は、まず、拡散板に入射してもよい。拡散板は、入射したレーザ光L1を散乱してもよい。この散乱光は、集光レンズ62に入射してもよい。集光レンズ62の焦点面付近には、分光器633aの入射スリット634aが配置されてもよい。入射スリット634aは、集光レンズ632aの焦点面より多少手前側に位置していてもよい。集光レンズ632aで集光された散乱光は、入射スリット634aを介して凹面ミラー635aに入射してもよい。凹面ミラー635aは、入射した散乱光を平行光に変換して反射してもよい。この反射光は、グレーティング636aに入射してもよい。グレーティング636aは、入射した平行光を回折してもよい。この回折光は、凹面ミラー637aに入射してもよい。凹面ミラー637aは、入射した回折光を集光するように反射してもよい。凹面ミラー637aの焦点面には、イメージセンサ638aが配置されていてもよい。その場合、凹面ミラー637aによって集光された反射光は、イメージセンサ638aに結像され得る。イメージセンサ638aは、各結像位置(チャネル)の光の強度分布を検出してもよい。反射光の結像位置は、レーザ光L1の波長と比例関係にあり得る。そのため、検出された結像位置からレーザ光L1全体のスペクトルを検出し得る。各々のスペクトル線幅、ピーク強度及び波長は、検出したスペクトルから図示せぬ情報処理装置によって求められてもよいし、コントローラ10で算出されてもよい。
【0120】
8.光路調節器
また、上述における光路調節器530を、以下に例を挙げて説明する。
【0121】
8.1 光路を一致させる場合
まず、半導体レーザ520a〜520cから出力されたレーザ光L1r〜L3rの光路を実施的に一致させる場合の光路調節器530の例を、以下に説明する。
【0122】
8.1.1 ハーフミラーを含む光路調節器
図47は、ハーフミラーを用いた光路調節器530の概略構成を模式的に示す。図47に示す構成において、半導体レーザ520bから出力されたレーザ光L2rは、ハーフミラー533および532を透過してもよい。半導体レーザ520aから出力されたレーザ光L1rは、高反射ミラー531で反射し、ハーフミラー532で反射してもよい。これにより、レーザ光L1rおよびL2rの光路が実質的に一致し得る。半導体レーザ520cから出力されたレーザ光L3rは、高反射ミラー534で反射し、ハーフミラー533で反射し、ハーフミラー532を透過してもよい。これにより、レーザ光L1r〜L3rの光路が実質的に一致し得る。
【0123】
8.1.2 グレーティングを含む光路調節器
つぎに、グレーティング535を用いた光路調節器530Aを、図面を用いて詳細に説明する。図48は、グレーティング535を用いた光路調節器530Aの一例を示す。図48に示されるように、レーザ光L2rは、グレーティング535に対してたとえば垂直方向から入射してもよい。レーザ光L1rは、レーザ光L2rに対してたとえば角度+αの傾きを持ってグレーティング535に入射してもよい。また、レーザ光L3rは、レーザ光L2rに対してたとえば角度−αの傾きを持ってグレーティング535に入射してもよい。角度±αは、レーザ光L1rおよびL3rのたとえば+1次及び−1次の回折光の光路がレーザ光L2rの0次回折光(透過光)の光路と実質的に一致する角度に設定されるとよい。これにより、グレーティング535を用いてレーザ光L1r〜L3rの光路を実質的に一致させ得る。なお、図48では、透過型のグレーティング535を用いたが、反射型のグレーティングが用いられてもよい。
【0124】
8.2. 光路をずらす場合
つぎに、半導体レーザ520a〜520cから出力されたレーザ光L1r〜L3rの光路を微小にずらしつつ略一致させる場合の光路調節器630の例を、以下に説明する。
【0125】
8.2.1 ハーフミラーを含む光路調節器
図49は、ハーフミラーを用いた光路調節器630の概略構成を模式的に示す。図49に示す構成において、半導体レーザ520bから出力されたレーザ光L2rは、ハーフミラー633および632を透過してもよい。半導体レーザ520aから出力されたレーザ光L1rは、高反射ミラー631で反射し、ハーフミラー632で反射してもよい。ハーフミラー632は、高反射ミラー631に対して微小に傾いていてもよい。これにより、レーザ光L1rおよびL2rの光路を微小にずらしつつ略一致させることができる。半導体レーザ520cから出力されたレーザ光L3rは、高反射ミラー634で反射し、ハーフミラー633で反射し、ハーフミラー632を透過してもよい。ハーフミラー633は、高反射ミラー634に対して微小に傾いていてもよい。これにより、レーザ光L1r〜L3rの光路を微小にずらしつつ略一致させることができる。
【0126】
8.2.2 グレーティングを含む光路調節器
つぎに、グレーティング635を用いた光路調節器630Aを、図面を用いて詳細に説明する。図50は、グレーティング635を用いた光路調節器630Aの一例を示す。図50に示されるように、レーザ光L2rは、グレーティング635に対してたとえば垂直方向から入射してもよい。レーザ光L1rは、レーザ光L2rに対してたとえば角度+αの傾きを持ってグレーティング635に入射してもよい。また、レーザ光L3rは、レーザ光L2rに対してたとえば角度−αの傾きを持ってグレーティング635に入射してもよい。角度±αは、レーザ光L1rおよびL3rの回折光の光路がレーザ光L2rの0次回折光(透過光)の光路に対して微小に回折光の光路の角度がずれるように設定されるとよい。これにより、グレーティング635を用いてレーザ光L1r〜L3rの光路の角度を互いに微小にずれさせることができる。なお、図50では、透過型のグレーティング635を用いたが、反射型のグレーティングが用いられてもよい。
【0127】
9. チタンサファイア増幅器
つぎに、マスタオシレータシステム500または600における増幅器540について説明する。ここでは、チタンサファイア結晶をゲイン媒質として用いた増幅器540を例に挙げて説明する。
【0128】
9.1 再生増幅器
増幅器540としては、再生増幅器800が用いられてもよい。図51は、再生増幅器800の概略構成を模式的に示す。図51に示されるように、再生増幅器800は、高反射ミラー801および806と、ポッケルスセル802と、ゲイン媒質としてのチタンサファイア結晶803と、偏光ビームスプリッタ804と、ポッケルスセル805と、ポンピングレーザ809とを備えてもよい。
【0129】
高反射ミラー801および806は、光共振器を形成してもよい。ポッケルスセル802、チタンサファイア結晶803、偏光ビームスプリッタ804およびポッケルスセル805は、高反射ミラー801および806が形成する光共振器内の光路上に配置されてもよい。ポッケルスセル802および805は、例えば電圧が印加されている期間、λ/4板として機能してもよい。ポンピングレーザ809は、チタンサファイア結晶803へ励起光809aを供給してもよい。
【0130】
9.2 マルチパス増幅器
また、増幅器540は、マルチパス型のパワー増幅器であってもよい。図52は、マルチパス型のパワー増幅器として構成された増幅器810の概略構成を模式的に示す。図52に示されるように、増幅器810は、複数の高反射ミラー811〜817と、ゲイン媒質としてのチタンサファイア結晶818と、ポンピングレーザ809とを備えてもよい。
【0131】
複数の高反射ミラー811〜817は、例えば、マスタオシレータシステム20から入力したレーザ光L1r〜L3rがチタンサファイア結晶818を複数回(本例では4回)通過するマルチパスを形成してもよい。チタンサファイア結晶818には、ポンピングレーザ809からの励起光809aが、高反射ミラー817を介して入射してもよい。すなわち、高反射ミラー817は、励起光809aを透過し、チタンサファイア結晶818からのレーザ光L1r〜L3rを反射してもよい。その場合、チタンサファイア結晶818を複数回通過する際に、レーザ光L1r〜L3rがマルチパス増幅され得る。
【0132】
9.3 パワーオシレータ
9.3.1 ファブリペロ型パワーオシレータ
また、増幅器540は、ファブリペロ型のパワーオシレータであってもよい。図53は、ファブリペロ型パワーオシレータの増幅器820の概略構成を模式的に示す。図53に示されるように、増幅器820は、部分反射ミラー822と、出力カプラ824と、ゲイン媒質としてのチタンサファイア結晶823と、高反射ミラー821と、ポンピングレーザ809とを備えてもよい。
【0133】
部分反射ミラー822および出力カプラ824は、光共振器を形成してもよい。チタンサファイア結晶823は、部分反射ミラー822および出力カプラ824が形成する光共振器内の光路上に配置されてもよい。高反射ミラー821は、マスタオシレータシステム20から入射したレーザ光L1r〜L3rおよびポンピングレーザ809から入射した励起光809aを光共振器内に導いてもよい。
【0134】
9.3.2 リング型パワーオシレータ
また、増幅器540は、リング型のパワーオシレータであってもよい。図54は、リング型のパワーオシレータとして構成された増幅器830の概略構成を模式的に示す。図54に示されるように、増幅器830は、入出力カプラ831と、高反射ミラー832〜834と、ゲイン媒質としてのチタンサファイア結晶835と、ポンピングレーザ809とを備えてもよい。
【0135】
入出力カプラ831および高反射ミラー832〜834は、リング状の光路Pを備えた光共振器を形成してもよい。チタンサファイア結晶835は、入出力カプラ831および高反射ミラー832〜834が形成する光共振器内の光路P上に配置されてもよい。
【0136】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0137】
また、上記の説明では、各レーザ光のスペクトル波形におけるピーク強度を制御した。ただし、本開示はこれに限定されるものではない。たとえば、本開示は、スペクトル波形の面積値や積分値などで表される各レーザ光のエネルギーを制御する構成を備えてもよい。その構成には、各レーザ光のスペクトル線幅を制御する構成が含まれていてもよい。また、たとえばエネルギー変化に対してスペクトル線幅が変化しない場合では、上述したように、エネルギーの代わりにピーク強度を制御する構成であってもよい。
【0138】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0139】
上述の実施形態においては、増幅器540が1つである例を示したが、増幅器540を複数使用してもよい。また、波長変換器550は、本開示の構成に限定されるものではなく、波長変換器550に入射される光を増幅装置50の増幅波長帯域の波長、例えば略193nmの波長の光に変換するものであればよい。例えば、波長変換器550に含まれる非線形光学結晶としては、LBO結晶の代わりにCLBO結晶を使用してもよい。
【符号の説明】
【0140】
100 レーザ装置
10 コントローラ
20、120、220 マスタオシレータシステム
21 出力結合ミラー
22 レーザチャンバ
23、25 ウィンドウ
24、26 ウィンドウホルダ
27、27a、27b 放電電極
30、130、230 多波長発振制御機構
31 コントローラ
32 架台
33 グレーティング
34 回転ステージ
35、36、37 プリズム
38、39 ウェッジプリズム
38a、39a、138a、139a 移動ステージ
38b、39b アーム部
38c、39c 回転ステージ
238、239 シリンドリカルハーフレンズ
41、42 高反射ミラー
50 増幅装置
60 スペクトル検出部
61 ビームスプリッタ
62 集光レンズ
63 スペクトル検出器
70 シャッタ機構
71 シャッタ
72 駆動機構
80 露光装置
81 コントローラ
430 減衰部
431 コントローラ
432〜434 減衰板
432a〜434a 移動ステージ
432b アーム部
500 マスタオシレータシステム
510 コントローラ
520 シード光源
520a〜520c 半導体レーザ
530、630 光路調節器
540 増幅器
550 波長変換器
560 LBO結晶部
561 集光レンズ
562 LBO結晶
563 コリメートレンズ
564 ビームスプリッタ
570 KBBF結晶部
571、571a〜571c 集光レンズ
572 KBBF結晶組立体
572a、572c プリズム
572b KBBF結晶
573、573a〜573c コリメートレンズ
574 ビームスプリッタ
L1〜L3、L1r〜L3r、L1rr〜L3rr、L2h、L2i、L4h、L4i レーザ光
S0.3、S21、S22、S31〜S33、S1.25 波形
S80、S90、S95、S100 スペクトル形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光を出力可能なマスタオシレータと、
各波長ピークのエネルギーを制御可能な多波長発振制御機構と、
前記レーザ光のスペクトルを検出するスペクトル検出器と、
前記スペクトル検出器による検出結果に基づいて前記多波長発振制御機構を制御する制御部と、
を備えるレーザ装置。
【請求項2】
前記少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光を増幅する増幅装置をさらに備え、
増幅された前記少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光のうち最も波長の短い波長ピークのエネルギーと最も波長が長い波長ピークのエネルギーとは、他の増幅された波長ピークのエネルギーよりも大きい、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記スペクトル検出器は、前記少なくとも3つの増幅された波長ピークのスペクトルを検出し、
前記制御部は、前記少なくとも3つの増幅された波長ピークのうち最も波長の短い波長ピークのエネルギーと最も波長が長い波長ピークのエネルギーとが他の増幅された波長ピークのエネルギーよりも大きくなるように、前記多波長発振制御機構を制御する、請求項2記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記多波長発振制御機構は、各波長ピークのピーク強度およびスペクトル線幅のうち少なくとも1つを制御する、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記マスタオシレータは、
共振器の一方の端に位置された出力結合ミラーと、
前記共振器の他方の端に位置されたグレーティングと、
前記共振器中に位置され、内部にレーザ媒体を含むチャンバと、
を含み、
前記多波長発振制御機構は、
前記少なくとも3つの波長ピークのうち少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射角度を変更可能な少なくとも1つの光学素子と、
前記少なくとも1つの光学素子を前記少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の光路に対して入出する移動機構と、
を含む、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記マスタオシレータは、前記共振器中に配置され、前記少なくとも3つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射光路を分離するプリズムをさらに含み、
前記移動機構は、分離された前記入射光路に対して前記少なくとも1つの光学素子を入出する、請求項5記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記多波長発振制御機構は前記少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光の各波長ピークの中心波長を制御可能である、
請求項1記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記マスタオシレータは、
共振器の一方の端に位置された出力結合ミラーと、
前記共振器の他方の端に位置されたグレーティングと、
前記共振器中に位置され、内部にレーザ媒体を含むチャンバと、
を含み、
前記多波長発振制御機構は、
前記少なくとも3つのレーザ光のうち少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射光路上に位置され、該少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射角度を変更可能な少なくとも1つの光学素子と、
前記少なくとも1つの光学素子を前記入射光路以外の軸を回転軸として回転可能な回転機構と、
をさらに含む、請求項7記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記マスタオシレータは、前記共振器中に配置され、前記少なくとも3つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射光路を分離するプリズムをさらに含み、
前記少なくとも1つの光学素子は、分離された前記入射光路上に位置される、請求項8記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記光学要素は、ウェッジプリズムである、請求項8記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記マスタオシレータは、
共振器の一方の端に位置された出力結合ミラーと、
前記共振器の他方の端に位置されたグレーティングと、
前記共振器中に位置され、内部にレーザ媒体を含むチャンバと、
を含み、
前記多波長発振制御機構は、
前記少なくとも3つの波長ピークを含むレーザ光のうち少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射角度を変更可能な少なくとも1つの光学素子と、
前記少なくとも1つの光学素子を前記少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の光路に対して入出する移動機構と、
を含む、請求項7記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記マスタオシレータは、前記共振器中に配置され、前記少なくとも3つの波長ピークを含むレーザ光の前記グレーティングへの入射光路を分離するプリズムをさらに含み、
前記移動機構は、分離された前記入射光路に対して前記少なくとも1つの光学素子を入出する、請求項11記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記光学要素は、シリンドリカルレンズである、請求項11記載のレーザ装置。
【請求項14】
前記少なくとも3つの波長ピークを含むスペクトルを持つレーザ光の各波長ピークを含むレーザ光路はそれぞれ異なり、
前記多波長発振制御機構は、前記少なくとも3つの波長ピークを含むレーザ光のうち少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の光路上に配置され、
該少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光のエネルギーを減衰させる少なくとも1つの減衰部と、
前記少なくとも1つの減衰部を前記少なくとも1つの波長ピークを含むレーザ光の光路に対して垂直な方向に移動させる移動機構と、
を含み、
前記減衰部の透過率は、位置に依存して変化する、
請求項1記載のレーザ装置。
【請求項15】
波長が異なる少なくとも3つのレーザ光を出力可能なマスタオシレータと、
前記レーザ光のスペクトルを検出するスペクトル検出器と、
前記スペクトル検出器による検出結果に基づいて前記マスタオシレータを制御する制御部と、
を備え、
前記マスタオシレータは、
それぞれ異なる波長で発振可能な少なくとも3つの半導体レーザと、
前記少なくとも3つの半導体レーザから出力された前記少なくとも3つのレーザ光の光路を実質的に一致させる光路調整部と、
前記少なくとも3つの半導体レーザを制御する発振制御部と、
を含む、
レーザ装置。
【請求項16】
前記少なくとも3つのレーザ光を増幅する増幅部と、
増幅された前記少なくとも3つのレーザ光の波長を変換する波長変換部と、
をさらに備える、請求項15記載のレーザ装置。
【請求項17】
前記波長変換部は、少なくとも1つの非線形光学結晶を含む、請求項15記載のレーザ装置。
【請求項18】
前記非線形光学結晶は、LBO結晶およびKBBF結晶のうち少なくとも1つを含む、請求項17記載のレーザ装置。
【請求項19】
前記波長変換部は、前記非線形光学結晶中の実質的に同じ領域に前記少なくとも3つのレーザ光を集光する少なくとも1つの集光レンズをさらに含む、請求項17記載のレーザ装置。
【請求項20】
前記波長変換部は、前記非線形光学結晶中の異なる領域に前記少なくとも3つのレーザ光を集光する少なくとも1つの集光レンズをさらに含む、請求項17記載のレーザ装置。
【請求項21】
前記波長変換部は、前記非線形光学結晶中における一部が互いに重複する領域に前記少なくとも3つのレーザ光を集光する少なくとも1つの集光レンズをさらに含む、請求項17記載のレーザ装置。
【請求項22】
前記発振制御部は、実質的に同一のタイミングで前記少なくとも3つの半導体レーザを発振させる、請求項15記載のレーザ装置。
【請求項23】
前記発振制御部は、時間的に分離されたタイミングで前記少なくとも3つの半導体レーザを発振させる、請求項15記載のレーザ装置。
【請求項24】
前記発振制御部は、時間的に一部が重複するタイミングで前記少なくとも3つの半導体レーザを発振させる、請求項15記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2013−62484(P2013−62484A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149633(P2012−149633)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】