説明

レーダー装置

【課題】低い演算負荷で測定範囲の対象物との相対速度や相対距離などを測定することができるレーダー装置を提供する。
【解決手段】測定範囲内に存在する対象物で反射した反射波のレベルを予め定めた閾値と比較する。そして、予め定めた閾値以上となる反射波のみに基づいて対象物との相対距離として測定し、当該反射波をフーリエ変換処理することによってドップラー周波数を算出し、算出したドップラー周波数に基づいて対象物との相対速度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダー装置に関し、より特定的には自動車等の移動体に搭載されるレーダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両によって引き起こされる事故などを防止するために、車両の周囲の対象物を測定するレーダー装置が開発され、実用化されている。このようなレーダー装置として、例えば、特許文献1に記載されるようなパルスドップラー方式を採用したレーダー装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、パルスドップラー方式を採用したレーダー装置において、対象物で反射した反射波をN個のフィルタを介して受信し、フィルタを介した反射波をM個のFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算手段を備えるパルスドップラーレーダー装置である。これにより、特許文献1に記載の技術では、隣り合うフィルタの境界で生じる特性の劣化を低減し、対象物の相対速度が変化したときでも検出確率を一定に保つことができる。
【特許文献1】特開昭61−200488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、以下のような課題を有している。すなわち、特許文献1に記載の技術では、測定範囲内を全て測定するために、複数のFFT演算手段を用いて演算処理をしなければならない。つまり、特許文献1に記載の技術では、複数のFFT演算手段を用いるため、FFT演算の負荷が高くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、低い演算負荷で対象物との相対速度や相対距離などを測定することができるレーダー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に示すような特徴を有する。
第1の発明は、放射手段によって放射された電磁波と受信手段によって受信された反射波とに基づき対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ測定するレーダー装置であって、反射波が予め定めた閾値以上となるか否かに基づいて対象物との相対距離を測定する距離測定手段と、反射波が閾値以上のレベルとなったとき、当該反射波に対してフーリエ変換処理をすることにより、対象物との相対速度を測定する速度測定手段とを備える。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、放射手段は、予め定められた間隔で電磁波を放射し、受信手段は、マッチドフィルター方式を用いて、探索対象とする探索深度を測定範囲の一端から他端まで切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応し、対象物で反射された反射波を受信する。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、相対距離が測定された対象物にそれぞれ対応し、当該相対距離をそれぞれ中心とする予め定められた長さの距離範囲を設定する距離範囲設定手段をさらに備え、受信手段は、距離範囲設定手段によって設定されたそれぞれの距離範囲の一端から他端まで、探索対象とする探索深度を切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応する反射波を受信し、距離測定手段は、受信手段によって受信され、閾値以上となる反射波にそれぞれ対応する探索深度を相対距離として測定し、測定した相対距離と、当該相対距離を含む距離範囲に対応する対象物とをそれぞれ対応付けることにより、対象物の相対距離を更新する。
【0009】
第4の発明は、第3の発明において、相対速度が測定された対象物にそれぞれ対応し、当該相対速度をそれぞれ中心とする予め定められた速度範囲を設定する速度範囲設定手段と、受信手段によって受信され、閾値以上となる反射波を全て加算した加算信号を生成する信号生成手段と、信号生成手段によって生成された加算信号に対してフーリエ変換処理をすることによって得られたドップラー周波数に基づき、加算信号に含まれる反射波を反射した全ての対象物の相対速度を算出し、速度範囲に含まれる当該相対速度を当該速度範囲に対応する対象物の相対速度として測定する速度再測定手段とをさらに備える。
【0010】
第5の発明は、第3乃至第4のいずれか1つの発明において、受信手段は、さらに、測定範囲の遠方側の一端から予め定められた長さの検知範囲まで探索対象とする探索深度を切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応する反射波を受信し、距離測定手段は、受信手段によって受信され、閾値以上のレベルとなる反射波にそれぞれ対応する探索深度の内、検知範囲に含まれる探索深度を、測定範囲内に現れた新たな対象物との相対距離として測定し、受信手段によって受信され、閾値以上となる反射波の内、検知範囲に含まれる探索深度に対応する反射波に対してフーリエ変換処理することによって得られるドップラー周波数に基づき、新たな対象物の相対速度を測定する新規速度測定手段をさらに備える。
【0011】
第6の発明は、第4の発明において、速度再測定手段により対象物の少なくともいずれか1つに複数の相対速度が対応付けられたとき、複数の相対速度が対応付けられた当該対象物で反射された反射波をそれぞれ個別にフーリエ変換処理することにより、当該対象物の相対速度をそれぞれ測定する速度分割手段と、複数の相対速度が対応付けられた対象物の相対速度を、速度分割手段によって測定された相対速度に更新する速度更新手段とをさらに備える。
【0012】
第7の発明は、第1、3及び5のいずれか1つの発明において、距離測定手段により、前回測定された相対距離と次に測定された相対距離とを比較することにより、対象物との相対速度の符号を判別する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低い演算負荷で測定範囲の対象物との相対速度や相対距離などを測定することができるレーダー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るレーダー装置1の概略構成を示すブロック図である。レーダー装置1は、基準信号発生部101、分岐部102、第1の開閉部103、放射部104、受信部105、第2の開閉部106、混合部107、フィルタ部108及び制御処理部109を備える。
【0015】
基準信号発生部101は、予め定められた周波数の第1の基準信号Rf1を生成する。
【0016】
分岐部102は、基準信号発生部101によって生成された第1の基準信号Rf1を第1の開閉部103及び第2の開閉部106へそれぞれ分岐する。尚、分岐部102から第1の開閉部103へ分岐される信号を第2の基準信号Rf2とし、分岐部102から第2の開閉部106へ分岐される信号を第3の基準信号Rf3とする。
【0017】
第1の開閉部103は、分岐部102と放射部104とを結ぶ回路の開閉状態を制御処理部109から与えられる指示のタイミングで切り換える。そして、第1の開閉部103は、回路の開閉状態を切り換えることによって第2の基準信号Rf2の波形を間欠的にした波形の信号をそれぞれ送信信号Ssとして生成する。
【0018】
放射部104は、第1の開閉部103によって生成された送信信号Ssを電磁波として放射する。
【0019】
受信部105は、放射部104から放射された電磁波が、対象物で反射した反射波Hsを受信する。
【0020】
第2の開閉部106は、分岐部102と混合部107とを結ぶ回路の開閉状態を制御処理部109から与えられる指示のタイミングで切り換える。そして、第2の開閉部106は、回路の開閉状態を切り換えることによって第3の基準信号Rf3の波形を間欠的にしたそれぞれの波形の信号をそれぞれ被混合信号Hkとして生成する。
【0021】
混合部107は、受信部105によって受信された反射波Hsと、第2の開閉部106によって生成された被混合信号Hkとを混合して混合信号Ksを生成する。
【0022】
フィルタ部108は、混合部107によって生成された混合信号Ksの内、予め定められた帯域幅の信号のみを通過信号Tsとして通過させる。
【0023】
制御処理部109は、第1の開閉部103及び第2の開閉部106に対して、それぞれが必要なタイミングで回路の開閉状態を切り換えるように指示を与える。また、制御処理部109は、フィルタ部108を通過した通過信号Tsに対してフーリエ変換処理をする。そして、制御処理部109は、フィルタ部108を通過した通過信号Tsに基づき、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ測定する。制御処理部109の詳細な動作の説明については後述する。
【0024】
以上が、本実施形態に係るレーダー装置1の各構成要素の説明である。次に、制御処理部109の詳細な動作について説明をする。始めに、レーダー装置1が対象物との相対距離を測定する方法について説明をする。
【0025】
図2A及び図2Bのそれぞれは、本実施形態において、それぞれの信号が生成又は受信されるタイミングを示すタイミングチャートである。より具体的には、図2Aに示す(a)は、第1の開閉部103によって送信信号Ssがそれぞれ生成されるタイミングを示す。放射部104から電磁波がそれぞれ放射されるタイミングは、図2Aの(a)に示されるタイミングと同じである。また、図2Aに示す(b)は、第2の開閉部106によって被混合信号Hkがそれぞれ生成されるタイミングを示す。また、図2Aに示す(c)は、受信部105によって反射波Hsが受信されるタイミングを示す。また、図2Aに示す(d)は、混合信号Ksのレベル、すなわち、被混合信号Hkと反射波Hsとの相関を示す。また、図2Bに示す(e)は、図2Aに示す(c)に示すタイミングと後述するレンジビンとの対応を示す図である。
【0026】
レーダー装置1は、図2Aの(a)に示すように放射間隔Hkの開始タイミングが到来する度に持続時間Phの電磁波を放射部104から放射する。より詳細には、制御処理部109は、放射間隔Hkの開始タイミングが到来する度に、第1の開閉部103に対して持続時間Phだけ回路を閉状態にする指示を与える。そして、制御処理部109は、第1の開閉部103によって回路が閉状態にされてから持続時間Phが経過すると、第1の開閉部103に対して回路を開状態にする指示を与える。これによって、分岐部102によって分岐された第2の基準信号Rf2の波形を図2Aの(a)に示すように間欠的にした波形の送信信号Ssが生成される。
【0027】
また、制御処理部109は、第1の開閉部103に対して回路を閉状態にする指示を与えてから予め定められた遅延時間が経過する度に、持続時間Bhだけ回路を閉状態にする指示を第2の開閉部106に対して与える。この遅延時間は、放射部104から電磁波が放射される度に図2Aの(b)に示すように遅延時間td1〜td4まで変化する。
【0028】
遅延時間の変化を図2Aに示す(b)を参照しながら具体的に説明すると、始めに放射部104から電磁波が放射されたときの遅延時間はtd1となる。そして、放射部104から2度目の電磁波が放射されたときの遅延時間はtd1の2倍の長さのtd2となる。また、放射部104から3度目の電磁波が放射されたときの遅延時間はtd1の3倍の長さのtd3となる。また、放射部104から4度目の電磁波が放射されたときの遅延時間はtd1の4倍の長さのtd4となる。そして、本実施形態では、放射部104から4度目の電磁波が放射されると遅延時間がtd1の長さに戻る。尚、遅延時間がtd4からtd1に戻るタイミングは、1度目の電磁波の放射を開始してから周期Tが経過したときでもある。以下、1つの周期Tのことを1フレームと称する。
【0029】
ここで、例えば、放射部104から2度目の電磁波が放射されてから、遅延時間td2が経過したときに、2度目の電磁波に対する反射波Hsを受信する距離に対象物が存在すると仮定する。上述したように、混合部107は、第2の開閉部106によって生成された被混合信号Hkと受信部105によって受信された反射波Hsとを混合する。このため、上記仮定の下では、図2Aの(d)に示すように、2度目に放射部104から電磁波が放射されてから遅延時間td2が経過したときの混合信号Ksのレベルが高くなる。これに対して、対象物で反射した反射波Hsを受信しない他の遅延時間では、混合信号Ksのレベルは低くなる。尚、図2に示す(d)では、低いレベルの混合信号Ksの図示は省略している。
【0030】
したがって、混合信号Ksのレベルと予め定められた閾値とを比較すれば、制御処理部109は、閾値以上のレベルの反射波Hsを受信したことと、当該反射波Hsを受信したときの遅延時間とを検知することができる。図2Aから明らかなように、遅延時間td2は、放射部104から2度目の電磁波が放射されてから受信部105が当該電磁波の反射波Hsを受信するまでの時間と同一である。つまり、閾値以上のレベルの反射波Hsを受信したときの遅延時間は、電磁波が放射されてから、当該電磁波が対象物で反射した反射波Hsを受信するまでの時間とみなすことができる。このため、制御処理部109は反射波Hsを受信したときに対応する遅延時間と電磁波の伝搬速度とに基づき、当該反射波Hsを反射した対象物との相対距離を算出して測定することができる。
【0031】
本実施形態では、上述したように遅延時間に基づいて相対距離を算出して測定する。つまり、本実施形態では遅延時間と相対距離とをそれぞれ対応付けることができる。そして、遅延時間td1〜td4の内、遅延時間td1は、レーダー装置1の測定範囲の内、最も近い相対距離に対応する。一方、遅延時間td4は、レーダー装置1の測定範囲の内、最も遠い相対距離に対応する。遅延時間td1〜td4と相対距離との対応関係を図2Bの(e)に示す。図2Bの(e)に示すように、遅延時間td1〜td4は、測定範囲に含まれるそれぞれの区間と対応することとなる。以下、遅延時間とそれぞれ対応する区間をレンジビン(探索深度)と称する。
【0032】
本実施形態に係るレーダー装置1は、放射部104から電磁波を放射しながら遅延時間をtd1〜td4まで変化させる。そして、遅延時間を変化させながら、すなわち、レンジビンを変化させながら反射波Hsを受信し、受信した反射波Hsのレベルを上記閾値とそれぞれ比較する。そして、レベルが上記閾値以上となる反射波Hsに対応するレンジビンに対象物が存在すると判断する。レーダー装置1が、遅延時間をtd1〜td4まで変化させ、測定範囲の一端から他端まで変化するレンジビンに対応する反射波Hsを受信して予め定められた閾値と比較することにより、測定範囲内に存在する対象物との相対距離をそれぞれ測定することができる。
【0033】
以上が、本実施形態に係る制御処理部109が、対象物との相対距離を測定する方法の一例の説明である。尚、図2A及び図2Bを用いた説明では、一例として、測定範囲を4つのレンジビンに区切って測定をするものとしたが、1つの測定範囲におけるレンジビンの数は、必ずしも4つに限られるものではなく、3以下であってもよいし5以上であってもよい。図2Bに示す(e)から明らかなように、ある測定範囲におけるレンジビンの数が増えるにしたがって、相対距離の分解能が高くなる。
【0034】
また、複数のレンジビンにまたがる大きさの対象物が存在するときは、一例として図3に示すように、当該対象物に対応するレンジビンの内、レーダー装置1に最も近いレンジビンに対応する反射波Hsに基づいて算出して測定した相対距離を当該対象物との相対距離としてもよい。以下、本実施形態の説明では、一例として、測定の対象となる対象物の大きさは、複数のレンジビンにまたがる大きさであるものとして説明をする。
【0035】
また、本実施形態では、1フレーム毎に対象物との相対距離を測定してもよいし、1以上のフレームのそれぞれにおいて測定された相対距離の平均値を算出して、算出した平均値をより正確な対象物との相対距離としてそれぞれ測定してもよい。
【0036】
また、上述した相対距離の測定方法は、一般的にマッチドフィルター方式と呼ばれることもある。本発明に係るレーダー装置では、極めて短期間でレベルが変化する電磁波(例えば、ミリ波など)を放射して反射波を受信してもよい。このため、高いサンプリングレートのA/D変換器を制御処理部109に設けなければ、制御処理部109が取得した信号と、上述した閾値との比較結果が正確でなくなるときがある。しかしながら、本発明に係るレーダー装置において、マッチドフィルター方式を採用することにより、上述した遅延時間の開始タイミングが到来する度にA/D変換器を起動すれば、低速なサンプリングレートのA/D変換器であっても正確な比較結果を得ることができる。また、低速なサンプリングレートのA/D変換器は、高速なサンプリングレートのA/D変換器と比較してコストが低いため、マッチドフィルター方式を採用することにより本発明に係るレーダー装置を低コストで提供することができる。
【0037】
また、上述した相対距離の測定方法の説明では、送信信号Ssとして基準信号の波形を間欠的にした1つの波形の信号を用いる場合を一例として説明した。しかしながら、本発明における送信信号Ssとして用いることのできる信号は、基準信号の波形を間欠的にした1つの波形の信号に限られるものではない。本発明における送信信号Ssとして用いることのできる信号の他の一例としては、PSK方式などで変調された信号が挙げられる。PSK方式などで変調された信号を送信信号Ssとして用いることにより、他のレーダー装置との電磁波の干渉を回避でき、さらに、送信信号Ssに通信をするための情報を含ませることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るレーダー装置1の相対速度の測定方法について説明する。制御処理部109は、対象物が存在すると判断したレンジビンに対応する反射波Hsに基づく信号に対してフーリエ変換処理をすることによって得られるドップラー周波数に基づき、対象物との相対速度を測定する。
【0039】
本実施形態における対象物との相対速度の測定方法を図4を参照しながらより詳細に説明する。図4は、測定範囲に含まれる全てのレンジビンに対応する反射波Hsのレベルの一例を1フレーム分について示す図である。尚、本実施形態では、図4に示すように測定範囲内に4つの対象物ts1〜ts4が存在する場合を一例として説明する。
【0040】
制御処理部109は、上述した方法で対象物ts1〜ts4の相対距離をそれぞれ測定しながら、それぞれのレンジビンに対応する反射波Hsを受信する度に、受信した反射波HsをA/D変換し、図示しない記憶部にそれぞれ記憶する。そして、制御処理部109は、図4に示すようなレベルの反射波Hsを予め定められた数のフレーム分(複数フレーム分)だけ記憶すると、記憶したフレーム分の反射波の内、予め定められた閾値以上のレベルとなる反射波Hsに対してフーリエ変換処理をすることによりドップラー周波数を算出する。
【0041】
このことを図4を参照しながらより詳細に説明する。図4には、測定範囲内に存在する4つの対象物ts1〜ts4にそれぞれ対応するフーリエ変換処理の対象となる反射波Hsが示されている。制御処理部109は、1フレーム分の反射波Hsの内、フーリエ変換処理の対象となる反射波Hsを対象物毎にそれぞれ加算処理する。そして、制御処理部109は、加算処理をした複数フレーム分の反射波の内、それぞれの対象物に対応する反射波を個別にフーリエ変換処理する。図4に示す例では、制御処理部109は、4つの対象物の相対速度を算出して測定するために、4度のフーリエ変換処理をしてそれぞれの対象物に対応するドップラー周波数を算出する。
【0042】
尚、制御処理部109は、1フレーム分の反射波Hsの記憶を完了する度に上述した加算処理をしてもよいし、予め定められた数のフレーム分の反射波Hsの記憶を完了したときに上述した加算処理をしてもよいし、対象物毎の反射波Hsの記憶を完了していればどのようなときに加算処理をしてもよい。
【0043】
フーリエ変換処理をした制御処理部109は、算出したドップラー周波数に基づいて相対速度を算出し、算出した相対速度を、当該相対速度の元となるドップラー周波数に対応する反射波Hsを反射した対象物の相対速度とする。これにより、制御処理部109は、対象物との相対速度を測定する。
【0044】
以上が、本実施形態に係る制御処理部109が、対象物との相対速度を測定する方法の説明である。本実施形態に係るレーダー装置1では、上述したように予め定めた閾値以上となる反射波だけに基づいて対象物との相対距離を測定し、当該反射波だけに基づいてフーリエ変換処理をする。これにより、本実施形態に係るレーダー装置1によれば、フーリエ変換処理の対象となる反射波は上述した閾値以上のレベルの反射波のみになるため、フーリエ変換処理の演算負荷を低減することができる。
【0045】
以下では説明の便宜のため、必要に応じて上述した対象物との相対速度及び相対距離を測定するそれぞれの処理の総称を対象物測定処理と称する。尚、制御処理部109が、1度の相対速度の測定において、ドップラー周波数を算出するためのフーリエ変換処理の対象として、図示しない記憶部に記憶するデータは、2の階乗の数のフレーム分のデータとするのが好ましい。ただし、2の階乗の数のフレーム分のデータを測定することが困難なときには、仮想的なフレームのデータを予め用意しておき、実際に測定したフレームのデータに、仮想的なフレームのデータを合わせることにより、フレームの数を2の階乗の数にするゼロパッドなどの手法を用いてもよい。
【0046】
また、制御処理部109が、ドップラー周波数を算出するためのフーリエ変換処理の対象として図示しない記憶部に記憶する反射波は、図4に示すようにそれぞれの対象物に対応するレンジビンの内、レーダー装置1に対して最も近いレンジビンから遠方に向かって予め定められた数Rkのレンジビンに対応するそれぞれの反射波Hsを対象物毎に加算処理した反射波としてもよい。そして、測定範囲内に存在する全ての対象物毎に加算処理した反射波を記憶して1フレーム分のデータとしてもよい。図4には、一例として、Rkが2の場合を示している。
【0047】
また、制御処理部109が、ドップラー周波数を算出するためのフーリエ変換処理の対象として図示しない記憶部に記憶する反射波Hsは、それぞれの対象物に対応するレンジビンの内、ピーク値の反射波Hsに対応するレンジビンを含む予め定められた数のレンジビンに対応するそれぞれの反射波Hsを対象物毎に加算処理した反射波としてもよい。そして、測定範囲内に存在する全ての対象物毎に加算処理した反射波を記憶して1フレーム分のデータとしてもよい。
【0048】
また、図4において、バンパーに対応する反射波Hsは、常に検出される反射波Hsであり、相対速度を測定する必要がないため、フーリエ変換処理の対象とする必要はない。
【0049】
また、図4に示される閾値は、一例として、測定対象となるレンジビンが遠くなるにしたがって小さくなるように設定されている。空間を伝搬する電磁波(放射部104から放射される電磁波及び受信部105によって受信される反射波Hs)は、伝搬する距離の長さに応じてレベルが減衰する。したがって、図4に一例として示すように、本発明における上述した閾値を測定対象となるレンジビンが遠くなるにしたがって、小さくなるように設定することにより、レーダー装置1に対して遠方に存在する対象物の相対距離や相対速度などを正確に測定することができる。
【0050】
また、本発明における上述した閾値を測定対象となるレンジビンに拘わらずに一定の値としてもよい。本発明において上述した閾値としてレンジビンに拘わらずに一定の値を用いるときには、STC(Sensitivity Time Control)等の手法を用いて、近距離のレンジビンに対応する反射波Hsを受信するときには利得を小さくし、遠距離のレンジビンに対応する反射波Hsを受信するときには利得を大きくするとよい。これにより、一定の値の閾値を用いることができると共に反射波Hsを受信するときのダイナミックレンジを拡大することができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る制御処理部109が、対象物との相対距離を1度測定した後の相対距離を測定する方法の一例について図5を参照しながら説明する。
【0052】
図5において、対象物ts1〜ts4は、それぞれ制御処理部109によって1度相対距離を測定した対象物を示す。また、図5において、相対距離Rb1〜Rb4は、それぞれ対象物ts1〜ts4との既に1度測定した相対距離を示す。制御処理部109は、測定範囲内に存在する対象物ts1〜ts4との相対距離をそれぞれ相対距離Rb1〜Rb4として1度測定すると、次に相対距離を測定するときに、1度測定した相対距離Rb1〜Rb4を用いて相対距離の測定を続ける。より詳細には、制御処理部109は、図5に示すように、対象物との相対距離を測定すると、測定した相対距離をそれぞれ中心とし、相対距離を測定した対象物とそれぞれ対応する予め定められた広さHkの距離範囲Khを設定する。尚、図5には、一例として、対象物ts1〜ts4と対応する距離範囲Khをそれぞれ距離範囲Kh1〜Kh4として示している。また、以下では説明の便宜のため必要に応じて距離範囲Khを設定する処理を距離範囲設定処理と称する。
【0053】
そして、制御処理部109は、図5に示すように距離範囲Khをそれぞれ設定すると、設定した距離範囲Khに含まれるレンジビンのみについて相対距離の測定をする。このことを図6を用いてより詳細に説明する。図6(a)は、対象物ts1〜ts4との相対距離を1度測定し、測定結果に基づいて上述したように設定された距離範囲Khを示す図である。図6(b)は、距離範囲Khに含まれるレンジビンのみについて相対距離を再度測定したときの測定結果の一例を示す図である。図6(a)は、測定範囲を50のレンジビンに区切った場合を一例として示している。そして、図6(a)に示すレンジビンをそれぞれR1〜R50とする。また、レンジビンR1〜R50にそれぞれ対応する遅延時間をt1〜t50とする。そして、図6(a)において、距離範囲Kh1〜Kh4に対応するそれぞれのレンジビンを、レンジビンR5〜8、レンジビンR16〜19、レンジビンR32〜R35及びレンジビンR43〜46とする。
【0054】
図6(a)に示すように距離範囲Kh1〜Kh4がそれぞれ設定されたときには、制御処理部109は、遅延時間をt1〜t50まで順番に変化させるのではなく、距離範囲Kh1〜Kh4に対応するレンジビンに相当する遅延時間のみの間で変化させる。より詳細には、制御処理部109は、始めに、遅延時間を遅延時間t1〜t4の間で順番に変化させる過程を経ることなく、遅延時間t5〜t8間で変化させて反射波Hsをそれぞれ受信する。そして、次に、制御処理部109は、遅延時間を遅延時間t9〜t15の間で順番に変化させる過程を経ることなく、遅延時間t16〜t19の間で変化させて反射波Hsをそれぞれ受信する。次に、制御処理部109は、遅延時間を遅延時間t20〜t31の間で順番に変化させる過程を経ることなく、遅延時間t32〜t35の間で変化させて反射波Hsをそれぞれ受信する。最後に、制御処理部109は、遅延時間を遅延時間t36〜t42の間で順番に変化させる過程を経ることなく、遅延時間t43〜t46の間で変化させて反射波Hsをそれぞれ受信する。
【0055】
このように、制御処理部109は、対象物との相対距離を1度測定して上述したように距離範囲を設定すると、設定した距離範囲Kh1〜Kh4にそれぞれ対応する遅延時間のみの間で順番に遅延時間を変化させる。制御処理部109は、このように遅延時間を変化させることにより、設定した距離範囲Kh1〜Kh4のそれぞれの一端から他端までレンジビンを変化させて、それぞれのレンジビンに対応する反射波Hsを受信する。
【0056】
制御処理部109は、距離範囲Kh1〜Kh4に含まれるレンジビンにそれぞれ対応する反射波Hsのレベルを上述した閾値とそれぞれ比較し、レベルが閾値以上となる反射波Hsに対応するレンジビンに対象物が存在すると判断し、当該レンジビンに対応する相対距離をそれぞれの対象物との相対距離として測定する。図6(b)に示すように、このときの相対距離をそれぞれ相対距離Kr1〜Kr4とする。図6(b)は、前回の相対距離の測定時と比較して対象物ts1〜ts4との相対距離が変化したときの位置関係の一例を示す図である。
【0057】
次に制御処理部109は、相対距離Kr1〜Kr4と対象物ts1〜ts4とをそれぞれ対応付ける。制御処理部109は、この対応付けをするために、相対距離Kr1〜Kr4をそれぞれ測定すると、測定した相対距離を含む距離範囲を距離範囲Kh1〜Kh4の中から特定する。そして、制御処理部109は、測定した相対距離Kr1〜Kr4と、特定した距離範囲Kh1〜Kh4に対応する対象物ts1〜ts4とをそれぞれ図6に示すように対応付ける。制御処理部109は、測定した相対距離Kr1〜Kr4と、対象物ts1〜ts4とをそれぞれ対応付けて、対象物ts1〜ts4の相対距離をそれぞれ更新することにより、測定範囲内に存在する対象物の相対距離の測定を継続することができる。
【0058】
以上が、対象物との相対距離を1度測定した後の相対距離を測定する方法の説明である。本実施形態に係るレーダー装置1では、上述したように対象物との相対距離を1度測定した後は、設定した距離範囲のみを対象として測定をするため、1フレームの測定時間を短縮することができる。
【0059】
以下では、上述した距離範囲設定処理以降に説明した相対距離を測定する方法で説明した処理を説明の便宜のため必要に応じて距離更新処理と称する。次に、制御処理部109が、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後の相対速度を測定する方法について図7を参照しながら説明する。
【0060】
図7において、相対速度V1〜V4は、測定範囲内に存在する対象物ts1〜ts4の1度測定された相対速度をそれぞれ示す。制御処理部109は、測定範囲内に存在する対象物の相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定すると、次に相対速度を測定するときに、設定した距離範囲Khと測定した相対速度V1〜V4とに基づいて相対速度の測定を続ける。より詳細には、制御処理部109は、対象物との相対速度を1度測定すると、測定した相対速度V1〜V4をそれぞれ中心とし、相対速度を測定した対象物ts1〜ts4にそれぞれ対応する予め定められた広さHsの速度範囲Shを図7に示すように設定する。図7には、一例として、対象物ts1〜ts4にそれぞれ対応する速度範囲Shが、速度範囲Sh1〜速度範囲Sh4として示されている。以下では説明の便宜のため必要に応じて速度範囲Shを設定する処理を速度範囲設定処理と称する。
【0061】
そして、制御処理部109は、相対距離を1度測定した後、上述したように設定した距離範囲Khに含まれるレンジビンに対応する反射波Hsを受信して相対距離の測定をしながら、受信した反射波Hsを図示しない記憶部に記憶する。図8は、上述した距離範囲Kh1〜Kh4にそれぞれ対応する反射波Hsのレベルを示す図である。制御処理部109は、図8に示すような1フレーム分の反射波Hsの内、上記閾値以上のレベルの反射波Hsに対応するレンジビンの反射波Hsを加算した加算信号を生成する。そして、制御処理部109は、加算信号を上述したフレーム分(予め定められた数、又は、2の階乗の数分)だけ生成すると、生成したフレーム分の加算信号に基づいてフーリエ変換処理をする。尚、図8において、受信した反射波Hsと閾値以上のレベルの反射波Hsとに差異がある理由は、前回の相対距離の測定時と当該測定時の次の測定時との間で対象物との相対距離が変化する場合を一例として示しているためである。
【0062】
尚、本発明において加算信号を生成する方法は、必ずしも図8に示すように上記閾値以上のレベルの反射波Hsに対応するレンジビンの反射波Hsを加算する方法に限られるものではない。本発明において加算信号を生成する他の方法の一例としては、図8に示すそれぞれの距離範囲Khに含まれるレンジビンに対応する反射波Hsの内、ピーク値の反射波Hsに対応するレンジビンを含む予め定められた数のレンジビンに対応する反射波Hsのみを加算する方法が挙げられる。また、本発明において加算信号を生成する他の方法の一例としては、図8に示すそれぞれの距離範囲Khに含まれるレンジビンに対応する反射波Hsの内、レーダー装置1に対して最も近いレンジビンから遠方に向かって予め定められた数のレンジビンに対応するそれぞれの反射波Hsのみを加算する方法が挙げられる。
【0063】
図9は、制御処理部109が加算信号に基づいてフーリエ変換処理をすることにより得られたドップラー周波数のスペクトラムの一例を示す図である。制御処理部109は、図9に示すドップラー周波数のスペクトラムの内、ピーク値を生じるドップラー周波数に基づいて相対速度をそれぞれ算出して測定する。制御処理部109が、加算信号に基づいてフーリエ変換処理をすることにより算出して測定した相対速度は、対象物毎に算出して測定した相対速度ではないため、測定範囲内に存在する対象物との対応付けをしなければならない。制御処理部109によって測定され、対応付けができておらずにどの対象物の相対速度なのかが明らかでない測定範囲内に存在する対象物の数の相対速度をそれぞれ相対速度Kv1〜Kv4とする。尚、図9において、ドップラー周波数がゼロでピーク値が生じている理由は、一例として、本実施形態に係るレーダー装置1を搭載した車両のバンパーで反射した反射波Hs等の常に受信してしまう反射波Hsを受信するためである。また、ドップラー周波数がゼロでピーク値が生ずる場合としては、他の一例として、レーダー装置1を搭載した車両と等しい相対速度の対象物で反射した反射波Hsを受信する場合が挙げられる。上述したバンパーなどもレーダー装置1を搭載した車両と相対速度が等しい対象物の一例と考えることができる。
【0064】
図10は、制御処理部109が測定した相対速度Kv1〜Kv4と測定範囲内に存在する対象物とを対応付けるための方法を説明する図である。より具体的には、図10(a)は図7の速度範囲Shを説明する図であり、図10(b)は測定した相対速度Kv1〜Kv4を示す。つまり、図10は、相対速度Kv1〜Kv4と速度範囲Sh1〜Sh4との対応関係を示している。
【0065】
制御処理部109は、相対速度Kv1〜Kv4と対象物ts1〜ts4とをそれぞれ対応付けるために、相対速度Kv1〜Kv4をそれぞれ測定すると、測定した相対速度を含む速度範囲を速度範囲Sh1〜Sh4の中からそれぞれ特定する。そして、制御処理部109は、測定した相対速度Kv1〜Kv4と、特定した速度範囲Sh1〜Sh4に対応する対象物ts1〜ts4とをそれぞれ図10に示すように対応付ける。制御処理部109は、測定した相対速度Kv1〜Kv4と、対象物ts1〜ts4とをそれぞれ対応付けて、対象物ts1〜ts4の相対速度をそれぞれ更新(再測定)することにより、測定範囲内に存在する対象物の相対速度の測定を継続することができる。
【0066】
以上が、本実施形態に係る制御処理部109が、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後の相対速度を測定する方法の説明である。本実施形態に係るレーダー装置1は、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後は、上述した加算信号に対して1度だけフーリエ変換処理をして、1度測定をした全ての対象物との相対速度をそれぞれ測定するため、フーリエ変換処理の演算負荷をさらに低減することができる。
【0067】
以下では、上述した速度範囲設定処理以降に説明した相対速度を測定する方法で説明した処理を説明の便宜のため必要に応じて速度更新処理と称する。次に、本実施形態に係る制御処理部109が、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後に、測定範囲内に新たな対象物が現れたときの測定方法について説明をする。
【0068】
制御処理部109が、対象物との相対速度及び相対速度をそれぞれ1度測定した後に上述した方法で対象物との相対距離及び相対速度の測定を継続しているときにおいて、図11に示すように測定範囲内に測定範囲外から新たな対象物At1が現れるときがある。このときには、制御処理部109は、上述したように加算信号を生成して相対速度を算出したとしても、新たな対象物At1のみの相対速度は1度も測定しておらず、当該対象物At1に対応付けるための速度範囲Shを設定していないため、相対速度を対応付けることができない。したがって、このようなときには、図11に示すように測定範囲の遠方側の一端から予め定められた広さAkの検知範囲Ahを設定してもよい。
【0069】
このとき、制御処理部109は上述したように対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ更新(1度目の測定も含む)しながら、図11に示す検知範囲Ahのレンジビンに対応する反射波Hsについては、上記閾値以上のレベルとなったか否かを常に判断する。そして、制御処理部109は、検知範囲Ahのレンジビンに対応する反射波Hsが上記閾値以上となったときに測定範囲外から測定範囲内に新たな対象物At1が現れたと判断する。制御処理部109は、新たな対象物At1が現れたと判断すると、当該対象物に対応する反射波Hsに基づいて上述した方法で相対距離を測定し、当該反射波を上述した加算信号に含めることなく個別にフーリエ変換処理をする。そして、制御処理部109は、加算信号に含めない反射波をフーリエ変換処理することによって得られたドップラー周波数に基づき新たな対象物At1の相対速度を算出して測定する。
【0070】
このようにして、新たな対象物At1の相対距離及び相対速度をそれぞれ測定した後の制御処理部109の動作は、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後の相対速度を測定する上述した説明の動作と同様の動作をする。これにより、制御処理部109は、相対速度の測定を1度もしていない新たな対象物At1が測定範囲外から測定範囲内に現れたときでも、当該対象物の相対速度を測定することができ、当該対象物の相対速度を1度測定した後は、上述したように加算信号に基づいて算出して測定した相対速度を対応付けることができる。
【0071】
以上が、本実施形態に係る制御処理部109が、相対距離及び相対速度を測定をしているときにおいて、測定範囲内に新たな対象物At1が現れたときの測定方法の説明である。本実施形態に係るレーダー装置1は、測定範囲内に新たな対象物が現れたときは、当該対象物で反射した反射波に対してのみフーリエ変換処理をし、他の対象物で反射した反射波に対しては上述した加算信号に対してフーリエ変換処理をする。したがって、本実施形態に係るレーダー装置1によれば、測定範囲内に新たな対象物が現れたときでも、低いフーリエ変換処理の演算負荷で、相対速度及び相対距離の測定を続けることができる。
【0072】
次に、相対速度の略等しい2以上の対象物が測定範囲内に存在し、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後に、これらの対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したときの本実施形態に係る制御処理部109の動作について説明する。
【0073】
制御処理部109が、相対速度の略等しい2以上の対象物の少なくともいずれか一方の相対速度が変化する前後の加算信号に対してそれぞれフーリエ変換処理をしたときのドップラー周波数のスペクトラムを図12に示す。より具体的には、図12(a)は、相対速度の略等しい2以上の対象物を含む複数の対象物が測定範囲内に存在し、等しい相対速度が互いに異なる相対速度へ変化する前のドップラー周波数のスペクトラムを示す。また、図12(b)は、相対速度の等しい2以上の対象物を含む複数の対象物が測定範囲内に存在し、等しい相対速度が互いに異なる相対速度へ変化した直後のドップラー周波数のスペクトラムを示す。
【0074】
図12(a)に示すスペクトラムと図12(b)に示すスペクトラムとを比較すると、図12(b)に示すスペクトラムでは、ピーク値を生じるドップラー周波数の数が増加する。すなわち、相対速度の略等しい2以上の対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したときには、フーリエ変換処理をすることによって得られるスペクトラムにおいて、ピーク値を生ずるドップラー周波数の数が増加する。より具体的には、図12(a)ではピーク値を生じるドップラー周波数の数が4(f1〜f4)であるのに対して、図12(b)ではピーク値を生じるドップラー周波数(f1〜f5)の数が5となっている。
【0075】
制御処理部109は、ピーク値を生ずるドップラー周波数が増加したとしても、上述した方法で相対速度の対応付けをする。ただし、上述した方法で相対速度の対応付けをすると、相対速度の略等しかった2つの対象物のそれぞれの変化後の相対速度は、それぞれ同一の速度範囲Sh内に含まれると考えられる。このため、相対速度の略等しかった2つの対象物にはそれぞれ変化後の2つの相対速度が対応付けられる。
【0076】
したがって、制御処理部109は、ピーク値を生ずるドップラー周波数が増加して、2以上の相対速度が1つの対象物に対応付けられたとき、2以上の相対速度が対応付けられた対象物に対応する反射波Hsについては、上記加算信号に含めることなく個別にフーリエ変換処理をする。図12では、一例として、ドップラー周波数f1のピーク値を生ずる反射波Hs及びドップラー周波数f5のピーク値を生ずる反射波Hsに対してそれぞれ個別にフーリエ変換処理がされる。そして、制御処理部109は、加算信号に含めない反射波Hsをフーリエ変換処理することによって得られたドップラー周波数に基づき、2以上の相対速度が対応付けられた対象物の相対速度を個別に算出して測定する。
【0077】
このようにして、2以上の相対速度が対応付けられた対象物の相対速度を測定した後の制御処理部109の動作は、対象物との相対速度を1度測定した後の相対速度を測定する上述した方法の説明における動作と同様の動作をする。これにより、制御処理部109は、互いに略等しい相対速度の2以上の対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したとしても、当該対象物の相対速度をそれぞれ測定することができ、当該対象物の相対速度を1度測定した後は、上述したように加算信号に基づいて算出して測定した相対速度を対応付けることができる。
【0078】
以上が、対象物との相対速度を1度測定した後に、互いに略等しい相対速度の対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したときの本実施形態に係る制御処理部109の動作の説明である。本実施形態に係るレーダー装置1は、対象物との相対速度を1度測定した後、互いに略等しい相対速度の対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したときは、互いに略等しい相対速度であった対象物に対応する反射波に対してのみ個別にフーリエ変換処理をし、他の対象物については上述した加算信号に基づいてフーリエ変換処理をする。したがって、本実施形態に係るレーダー装置1によれば、対象物との相対速度を1度測定した後、互いに略等しい相対速度の対象物の少なくともいずれか1つの相対速度が変化したときでも、低いフーリエ変換処理の演算負荷で、相対速度及び相対距離の測定を続けることができる。
【0079】
次に、上述した制御処理部109の動作をフローチャートを用いて説明する。図13は、本実施形態に係る制御処理部109の処理を示すフローチャートである。
【0080】
ステップS101において、制御処理部109は、上述した対象物測定処理をして測定範囲内に存在する対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ測定する。制御処理部109は、ステップS101の処理を完了すると、ステップS102へ処理を進める。
【0081】
ステップS102において、制御処理部109は、ステップS101で測定した結果に基づき、上述した距離範囲設定処理をして距離範囲Khをそれぞれ設定する。制御処理部109は、ステップS102の処理を完了するとステップS103へ処理を進める。
【0082】
ステップS103において、制御処理部109は、ステップS101で測定した結果に基づき、上述した速度範囲設定処理をして速度範囲Shをそれぞれ設定する。制御処理部109は、ステップS103の処理を完了するとステップS104へ処理を進める。
【0083】
ステップS104において、制御処理部109は、ステップS102において設定した距離範囲Khに基づき上述した距離更新処理をする。制御処理部109は、ステップS104の処理を完了すると、ステップS105へ処理を進める。
【0084】
ステップS105において、制御処理部109は、ステップS103において設定した速度範囲Shに基づき上述した速度更新処理をする。制御処理部109は、ステップS105の処理を完了するとステップS106へ処理を進める。
【0085】
ステップS106において、制御処理部109は、上述したように検出範囲Khの検出結果に基づき、上述した方法で新たな対象物を検出したか否かを判断する。制御処理部109は、ステップS106において、新たな対象物を検出したと判断したとき、ステップS109へ処理を進める。一方、制御処理部109は、ステップS106において、新たな対象物を検出しなかったと判断したとき、ステップS107へ処理を進める。
【0086】
ステップS107において、制御処理部109は、上述した方法で2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上だけ存在するか否かを判断する。制御処理部109は、ステップS107において、2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上存在すると判断したとき、ステップS108に処理を進める。一方、制御処理部109は、ステップS107において、2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上存在しないと判断したとき、ステップS104へ処理を戻す。
【0087】
ステップS108において、制御処理部109は、ステップS107において2以上の相対速度が対応付けられたと判断した対象物に対して、上述した方法で個別にフーリエ変換処理をし、このフーリエ変換処理によって得られた結果に基づいて当該対象物の相対速度を個別に測定する。制御処理部109は、ステップS108の処理を完了すると、ステップS104へ処理を戻す。
【0088】
ステップS109において、制御処理部109は、上述した方法で2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上だけ存在するか否かを判断する。制御処理部109は、ステップS109において、2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上だけ存在すると判断したとき、ステップS110に処理を進める。一方、制御処理部109は、ステップS109において、2以上の相対速度が対応付けられた対象物が1以上だけ存在しないと判断したとき、ステップS111へ処理を進める。
【0089】
ステップS110において、制御処理部109は、2以上の相対速度が対応付けられた対象物及び新たな対象物のそれぞれに対応する反射波Hsに対してそれぞれ個別にフーリエ変換処理をし、これらの対象物の相対速度を個別に測定する。制御処理部109は、ステップS110の処理を完了すると、ステップS104へ処理を戻す。
【0090】
ステップS111において、制御処理部109は、ステップS106において判断した新たな対象物の相対距離及び相対速度を上述した方法で個別に測定する。制御処理部109は、ステップS111の処理を完了すると、ステップS104へ処理を戻す。
【0091】
以上が、本実施形態に係る制御処理部109の処理の一例の説明である。尚、図13のフローチャートに示す処理は、一例として、本実施形態に係るレーダー装置1を搭載する車両のイグニッションキーがOnとなっているときに実行され、当該イグニッションキーがOffとなったときに即座に停止されるものとしてもよい。
【0092】
以上が、本実施形態に係るレーダー装置1の説明である。尚、本発明では、図1に示すレーダー装置1の構成を図14に示すように変形してもよい。図14に示すレーダー装置2の構成は、図1に示す構成に対して混合部110、90度移相部111及びフィルタ部112をそれぞれ追加した構成である。本発明に係るレーダー装置の構成として、図14に示す構成を採用することにより、制御処理部109は、受信部105によって受信された反射波に対して従来から知られている直交検波をすることができる。図1に示す構成のレーダー装置1では、制御処理部109が反射波Hsに対してフーリエ変換処理をしたとしても、得られたスペクトラムはドップラー周波数がゼロの点を中心として対称なスペクトラム、すなわち、ピーク値を生ずるドップラー周波数の正負の符号の判別をすることのできないスペクトラムしか得ることができない。これに対して、図14に示すレーダー装置2では、制御処理部109は、受信した反射波Hsを直交検波をした後、フーリエ変換処理することにより、図15に示すようにピーク値を生ずるドップラー周波数の正負の符号を判別することのできるスペクトラムを得ることができる。つまり、本発明に係るレーダー装置の構成として図14に示すような直交検波をするための構成要素を追加した構成を採用することにより、制御処理部109は対象物の相対速度の符号をさらに判別することができ、測定範囲内に存在する対象物がそれぞれ本発明に係るレーダー装置に近づいているか、又は、遠ざかっているかの判断をすることができる。
【0093】
また、本発明に係るレーダー装置の構成として図1に示す構成を採用したとしても、制御処理部109は、測定した相対距離を時間で微分(前回測定した相対距離及び次に測定した相対距離とを比較(差分を演算)する)することによって対象物が近づいているか、又は、遠ざかっているかの判断をすることができることは言うまでもない。
【0094】
また、本発明に係るレーダー装置の構成として図16に示す構成を採用してもよい。図16に示す構成は、図1に示す構成と比較して、積算部113をさらに備えている。積算部113は、フィルタ部108を通過した間欠的な1つの波形の通過信号Tsを予め定めた回数(個数)だけ積算する。より詳細には、受信部105は、繰り返し放射される電磁波が対象物で反射した間欠的な波形のそれぞれを1つの反射波Hsとして繰り返し受信する。図16に示す積算部113は、受信部105によって1つずつ受信される反射波Hsを、混合部107及びフィルタ部108を介して取得し、予め定められた回数(個数)だけ積算する。そして、積算部113は、積算した信号を積算信号Isとして生成する。上述したように空間を伝搬する電磁波は、伝搬する距離の長さに応じてレベルが減衰する。積算部113は、取得した信号を積算することにより、図1に示す構成と比較して、制御処理部109は、同一の相対距離に存在する対象物で反射した反射波Hsを積算信号Isとして、より高いレベルで取得できる。つまり、本発明に係るレーダー装置は、図16に示すように積算部113を備えることにより、同一の相対距離で反射した反射波Hsの感度を高めたり、最大測定範囲を長くすることができる。ただし、本発明に係るレーダー装置の構成として図16に示す構成を採用するときは、同一の相対距離で反射した反射波Hsを積算部113に予め定められた回数だけ受信しなければならないため、制御処理部109は、上述した遅延時間を積算部113に定められた回数と同じ回数だけ放射部104から電磁波が放射され、当該回数だけ反射波Hsを受信してから、次の遅延時間に変化させるようにしなければならない。
【0095】
また、本発明に係るレーダー装置の構成として図17に示す構成を採用してもよい。図17に示す構成は、図1に示す構成と比較して、受信部を1つ追加して2つの受信部を備えている。この構成により、本発明に係るレーダー装置は従来から知られている位相比較モノパルス方式や振幅比較モノパルス方式を用いて対象物の存在する方向を測定することができる。したがって、本発明に係るレーダー装置として図17の構成を採用すると、相対距離だけでなく対象物の存在する角度にも基づいて、上述した距離範囲Khと同様の2次元の領域範囲を設定して、相対距離、対象物の存在する方向及び相対速度の2度目以降の測定において、設定した領域のみの測定をすることができる。尚、図17の構成は、90度移相部の配置が図14に示す構成に対して異なるが、図17の構成でも制御処理部は図14の説明で述べたように直交検波及びフーリエ変換処理することにより図15に一例として示す測定結果と同様の結果を得ることができる。
【0096】
また、本発明に係る制御処理部109は、上述したフーリエ変換処理の代わりに、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)処理を用いることができることは言うまでもない。
【0097】
また、本発明において説明した少なくともいずれか1つの測定方法と、他の測定方法とを組み合わせて、対象物の測定をしてもよい。この組み合わせ方の一例としては、本発明に係る測定方法よりも分解能が低く測定範囲の長い第1の測定方式を用いて測定をし、第1の測定結果に基づいて本発明で説明した測定方法で測定をするなどの組み合わせ方が挙げられる。
【0098】
また、上述した本発明の説明では、本発明に係るレーダー装置を車両に搭載した場合を一例として説明したが、本発明に係るレーダー装置を搭載することが好ましいと考えられる場合には、航空機や重機など他の移動体や機器に搭載してもよいことは言うまでもない。
【0099】
また、本発明の説明では、反射波Hsを受信するための方法として、上述したマッチドフィルター方式を用いる場合を一例として説明した。しかしながら、本発明において反射波Hsを受信するための方法はマッチドフィルター方式に限られるものではない。本発明において反射波Hsを受信するための方法の他の一例としては、制御処理部109の内部に含まれるA/D変換器として高速なサンプリングレートのA/D変換器を採用し、受信部105によって受信され、混合部などを介して取得した信号のレベルの変化を常に上述した閾値と比較する方法が挙げられる。そして、制御処理部109は、取得した信号のレベルが予め定めた閾値以上となるか否かに基づいて(電磁波を放射してから、反射波のレベルが閾値以上となった時の時間に基づいて)相対距離を測定し、取得した信号が閾値以上となったとき、当該信号に対してフーリエ変換処理をすることにより相対速度を算出して測定してもよい。
【0100】
また、本発明の説明では、図2Aの(a)に示すように基準信号の波形を間欠的にした波形の信号を生成するために開閉部を用いた場合を一例として説明した。しかしながら、図2Aの(a)に示すような基準信号の波形を間欠的にした波形の信号を生成するために、他のどのような方法を用いてもよいことは言うまでもない。図2Aの(a)に示すような基準信号の波形を間欠的にした波形の信号を生成するための他の方法の一例としては、開閉部の代わりにLVDS(Low Voltage Differential Signaling:低電圧差動信号)を基準信号と混合することによって基準信号の波形を間欠的にした波形の信号を生成する変調部を用いる方法が挙げられる。
【0101】
また、図1、図14、図16及び図17に示すフィルタ部や積算部をデジタル回路としてもよいことは言うまでもない。これらの構成要素をデジタル回路とするときは、これらの構成要素の前段にA/D変換器をそれぞれ設けるとよい。また、フィルタ部や積算部をデジタル回路で構成し、制御処理部109に一体化してもよい。これにより、本発明に係るレーダー装置をより小さくして省スペース化することができる。
【0102】
また、本発明において、制御処理部109は、対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ1度測定した後の相対速度を測定した後に、さらに、相対速度の測定を続ける。そして、制御処理部109が、相対速度の測定を続けていると、対象物毎の相対速度の内、少なくともいずれか2つの相対速度の差が予め定められた値以下となる場合がある。このとき、制御処理部109は、予め定められた値以下の差となる相対速度の対象物についてのみ個別に相対速度を測定してもよい。すなわち、制御処理部109は、相対速度の測定を続けているときにおいて、予め定められた閾値以下の差となる相対速度の対象物に対応する反射波Hsを上述した加算信号に含めることなく個別にフーリエ変換処理をしてもよい。そして、制御処理部109は、加算信号に含めない反射波Hsをフーリエ変換処理することによって得られたドップラー周波数に基づき、予め定められた閾値以下の差となる相対速度の対象物の相対速度を個別に算出して測定してもよい。
【0103】
本発明に係る制御処理部109が、予め定められた閾値以下の差となる相対速度の対象物に対応する反射波Hsを上述した加算信号に含めることなく個別にフーリエ変換処理をしてもよい理由について説明をする。予め定められた閾値以下の差となる相対速度の対象物、すなわち、相対速度がある程度近い対象物に対応する反射波Hsを加算信号に含めた上でフーリエ変換処理をすると、これらの対象物の相対速度を測定するための、ピーク値を生ずるドップラー周波数が略同じ周波数となり、それぞれが異なる相対速度を有する対象物であっても、これらの対象物の相対速度を同一の相対速度として測定してしまうときがある。したがって、これらの対象物の相対速度については、個別にフーリエ変換処理をしてドップラー周波数を算出することにより、より正確な測定をすることができる。ただし、本発明に係る制御処理部109は、このような処理をせずとも、相対速度がある程度近い対象物の相対速度を実用的な範囲で個別に正確に測定できる。
【0104】
また、本発明の説明において一例として挙げた全ての構成をそれぞれ可能な範囲でどのように組み合わせてもよいことは、言うまでもない。
【0105】
また、上述した本発明の説明は、一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や改良をしてもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、低い演算負荷で対象物との相対速度や相対距離などを測定でき、例えば、車両に搭載されるレーダー装置などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1の実施形態に係るレーダー装置の構成を示すブロック図
【図2A】レーダー装置が信号を生成及び受信するそれぞれのタイミングを示すタイミングチャート
【図2B】遅延時間とレンジビンとの対応関係の一例を示す図
【図3】測定する相対距離の一例を示す図
【図4】受信した反射波のレベルの一例を示す図
【図5】設定した距離範囲の一例を示す図
【図6】測定した相対距離と距離範囲との対応付けの一例を示す図
【図7】設定した速度範囲の一例を示す図
【図8】加算処理の対象となる反射波の一例を示す図
【図9】加算信号に対してフーリエ変換処理をしたときのスペクトラムの一例を示す図
【図10】測定した相対速度と速度範囲との対応付けの一例を示す図
【図11】検知範囲の一例を示す図
【図12】ピーク値を生ずるドップラー周波数の数が増加したときのスペクトラムの一例を示す図
【図13】第1の実施形態に係る制御処理部のフローチャートの一例を示す図
【図14】本発明に係るレーダー装置の他の構成の一例を示す図
【図15】直交検波した反射波に対してフーリエ変換処理をしたときのスペクトラムの一例を示す図
【図16】本発明に係るレーダー装置の他の構成の一例を示す図
【図17】本発明に係るレーダー装置の他の構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0108】
1 レーダー装置
2 レーダー装置
3 レーダー装置
4 レーダー装置
101 基準信号発生部
102 分岐部
103 第1の開閉部
104 放射部
105 受信部
106 第2の開閉部
107 混合部
108 フィルタ部
109 制御処理部
110 混合部
111 90度移相部
112 フィルタ部
113 積算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射手段によって放射された電磁波と受信手段によって受信された反射波とに基づき対象物との相対距離及び相対速度をそれぞれ測定するレーダー装置であって、
前記反射波が予め定めた閾値以上となるか否かに基づいて前記対象物との相対距離を測定する距離測定手段と、
前記反射波が前記閾値以上のレベルとなったとき、当該反射波に対してフーリエ変換処理をすることにより、前記対象物との相対速度を測定する速度測定手段とを備える、レーダー装置。
【請求項2】
前記放射手段は、予め定められた間隔で前記電磁波を放射し、
前記受信手段は、マッチドフィルター方式を用いて、探索対象とする探索深度を測定範囲の一端から他端まで切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応し、前記対象物で反射された反射波を受信する、請求項1に記載のレーダー装置。
【請求項3】
相対距離が測定された前記対象物にそれぞれ対応し、当該相対距離をそれぞれ中心とする予め定められた長さの距離範囲を設定する距離範囲設定手段をさらに備え、
前記受信手段は、前記距離範囲設定手段によって設定されたそれぞれの距離範囲の一端から他端まで、探索対象とする探索深度を切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応する前記反射波を受信し、
前記距離測定手段は、前記受信手段によって受信され、前記閾値以上となる前記反射波にそれぞれ対応する探索深度を相対距離として測定し、測定した相対距離と、当該相対距離を含む前記距離範囲に対応する前記対象物とをそれぞれ対応付けることにより、前記対象物の相対距離を更新する、請求項2に記載のレーダー装置。
【請求項4】
相対速度が測定された前記対象物にそれぞれ対応し、当該相対速度をそれぞれ中心とする予め定められた速度範囲を設定する速度範囲設定手段と、
前記受信手段によって受信され、前記閾値以上となる反射波を全て加算した加算信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段によって生成された前記加算信号に対してフーリエ変換処理をすることによって得られたドップラー周波数に基づき、前記加算信号に含まれる反射波を反射した全ての対象物の相対速度を算出し、前記速度範囲に含まれる当該相対速度を当該速度範囲に対応する前記対象物の相対速度として測定する速度再測定手段とをさらに備える、請求項3に記載のレーダー装置。
【請求項5】
前記受信手段は、さらに、前記測定範囲の遠方側の一端から予め定められた長さの検知範囲まで探索対象とする探索深度を切り換え、切り換えた探索深度にそれぞれ対応する前記反射波を受信し、
前記距離測定手段は、前記受信手段によって受信され、前記閾値以上のレベルとなる反射波にそれぞれ対応する探索深度の内、前記検知範囲に含まれる探索深度を、前記測定範囲内に現れた新たな対象物との相対距離として測定し、
前記受信手段によって受信され、前記閾値以上となる前記反射波の内、前記検知範囲に含まれる探索深度に対応する反射波に対してフーリエ変換処理することによって得られるドップラー周波数に基づき、前記新たな対象物の相対速度を測定する新規速度測定手段をさらに備える、請求項3乃至4のいずれか1つに記載のレーダー装置。
【請求項6】
前記速度再測定手段により前記対象物の少なくともいずれか1つに複数の相対速度が対応付けられたとき、複数の相対速度が対応付けられた当該対象物で反射された反射波をそれぞれ個別にフーリエ変換処理することにより、当該対象物の相対速度をそれぞれ測定する速度分割手段と、
前記複数の相対速度が対応付けられた対象物の相対速度を、前記速度分割手段によって測定された相対速度に更新する速度更新手段とをさらに備える、請求項4に記載のレーダー装置。
【請求項7】
前記距離測定手段により、前回測定された相対距離と次に測定された相対距離とを比較することにより、前記対象物との相対速度の符号を判別する請求項1、3及び5のいずれか1つに記載のレーダー装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−192427(P2009−192427A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35017(P2008−35017)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】