説明

ロイシンに富む組成物

本発明は、インスリン抵抗性の治療の為の医薬の製造における、タンパク性物質を含む組成物の使用に関係し、ここで該タンパク性物質は、該組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)を与えかつ、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与える。本発明はタンパク質画分、炭水化物画分及び脂質画分を含む、哺乳類への投与に適当な組成物に関係し、ここで該タンパク質画分は少なくとも24.0%(en%)を与え、該炭水化物画分は最大で46en%を与え、該脂質画分は最大で30en%を与え、かつ、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%がロイシンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン抵抗性を患う対象の処置及びそのような目的又は関連する目的に適当な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリン抵抗性(IR)は、インスリンに対する、体の感受性の欠損である。
【0003】
IRは、外傷又は病気の結果でありうる。例えば、重度の火傷の発生はIRを引き起こすと報告されている。手術は他の原因であり得る。種々の病気を患う患者、例えば、末期症状の癌患者、AIDS患者、慢性肺疾患又は重度の炎症を患う患者などにおいて、IRは観察されている。メタボリックシンドローム、糖尿病の結果として、又は肥満の間にもIRは発生しうる。IRは加齢の結果として進展しうる。
【0004】
インスリンの効果の減少は、筋肉、肝臓及び膵臓におけるグルコース代謝に対して影響を有する。インスリンが、ヒトのタンパク質代謝、特に筋肉の同化又は筋肉の異化の回避において重要な役割も果たすとの結論に、本発明者らは至った。重度の病気、例えば、AIDS、慢性閉塞性肺疾患又は癌、を患う患者において特に、生存の見込み又は余命に関して、IRはより悪い予後を引き起こしうる。また、それは生活の質を害しうる。
【0005】
さらに、代謝疾患を患う患者において特に、IRの結果としての阻害されたタンパク質代謝が、除脂肪体重の減少をもたらしうると、本発明者らは結論した。これは、運動が少なすぎることの結果として、より悪化されうる。例えば、固定された患者は、筋肉量に関して、重度に異化的であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IR又はIRに関連する症候を処置するのに適した調製物を提供することが、本発明の目的である。特に、そのような目的の為の医薬組成物又は食品組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
好ましくは、該組成物は、IRを患う患者において、筋肉の異化のような異化を処置するのに適当であるべきである。
【0008】
好ましくは、官能特性は、消費が一般に心地よいものとして認められるようなものであるべきである。
【0009】
好ましくは、該組成物は胃を容易に通過すべきである。
【0010】
好ましくは、該組成物の可消化成分は、製品の摂取後に容易に利用可能となるべきである。
【0011】
本発明の1つの局面においては、対象のインスリン感受性を増加すること、及び、好ましくは同時に筋肉の異化を減じることが更なる目的である。
【0012】
更なる局面において、本発明は、該組成物により処置された患者の予後及び/又は生活の質を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
タンパク性物質を含む特定の組成物により、IRの対象を処置することが可能であることが、今発見された。
【0014】
従って、本発明は、インスリン抵抗性を患う対象の処置の為、特にインスリン抵抗性を患う患者における異化状態の処置の為の医薬の製造において、タンパク性物質を含む組成物を使用する方法に関係し、該タンパク性物質は、該組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)、及び、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与える。上記異化状態は好ましくは筋肉の異化である。
【0015】
特に、該対象は以下の状態の少なくとも1を患う対象であってよい;代謝疾患、特にメタボリックシンドローム、肥満、及び/又は、I型糖尿病及びII型糖尿病を含む糖尿病;癌;AIDS;アルツハイマー病;心不全;及び重度の炎症疾患、特に慢性肺疾患;関節炎、特に関節リウマチ;炎症性腸疾患。
【0016】
本発明はさらに、タンパク質画分、炭水化物画分及び脂質画分を含む、哺乳類に投与するのに適した組成物に関係し、ここで該タンパク質画分は少なくとも24.0%(en%)を与え、該炭水化物は最大で46en%を与え、該脂質画分は最大で30en%を与え、かつ、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%がロイシンである。
【0017】
本発明は、インスリン抵抗性に関連する症状の少なくとも1の減少を許す。特に、タンパク質異化、より特には筋肉の異化が減少されうる。加えて、筋肉同化のようなタンパク質同化が増加されうる。例えば、本発明において定められるように医薬/組成物を投与した後少なくとも1時間に、正の正味タンパク質平衡が起りうる。1の実施態様では、これは、体重の望ましくない損失(3ヶ月で5%以上)に悩む対象について起りえて、または、そのような損失に直面する重大な危険を冒している対象;外傷に直面する対象;手術若しくは(化学的治療又は放射線治療のような)大きな影響を伴う外科的又は医学的処置を受けた対象又は重度の病気を患う対象;慢性的に固定された対象について起りえ;ここで該対象はIRを進展させている。
【0018】
本発明は、延びた余命及び/又は生活のより良い質の点における、より良い予後を与える。生活の質を改善する要因は特に、疲労がより少ないこと、スタミナがより多いこと、(特に口、喉、腸、傷及び肺における)ウィルス性及び/又は微生物性の感染症のような合併症がより少ないこと、視覚能力及び/又は聴力の損失が減じられること、全身状態がより良いこと、並びに憂鬱な気持の期間がより短いことである。
【0019】
IRを患う対象は、(例えば、夜の睡眠後の朝における)絶食後に、増加した血漿グルコースレベルを有する傾向にある。特に、IRはHOMA比 グルコース/インスリンにより決定可能である。HOMAモデリングは、Wallaceらにより、Diabetes Care, Volume 27, Number 6, June 2004, p 1487-1495に記載されている。
【0020】
タンパク性物質はアミノ酸から作られる部分である。本明細書において用いられる語アミノ酸は、(例えばペプチド中の)アミノ酸残基を包含する。特に、タンパク性物質は、遊離アミノ酸、アミノ酸塩、結合性分子に結合したアミノ酸残基、及びペプチドを包含する。該ペプチドは、オリゴペプチドならびにタンパク質及び他のポリペプチドを包含する。同様に、特定のアミノ酸、例えばロイシンに言及がなされた場合、これは、塩として、結合された形で存在する該特定アミノ酸(残基)、及び、遊離の特定アミノ酸を包含することが意味される。
【0021】
化合物のエネルギー値(en%)は、該化合物の(特にはヒト又は他の哺乳類における)可消化部分により与えられるエネルギーに基づく。特に、該エネルギー値は、以下の計算因子:可消化の炭水化物及びタンパク性物質について4 kcal/g、及び、脂質について9 kcal/g、を用いた、タンパク性物質、脂質及び可消化炭水化物の寄与に基づく。
【0022】
ゆっくりと消化可能な炭水化物は、マルトデキストロース、マルトース及びグルコースより速くなく消化される。特に、Enquist法により決定可能である標準的な消化酵素を用いた分析設定において、20〜120分間の範囲内で10%超の糖が放出される場合、炭水化物はゆっくりと消化可能であると考えられる。
【0023】
速やかに消化される炭水化物は、マルトデキストロース、マルトース又はグルコース(速やかに消化可能な炭水化物)を包含する。特に、20分間以内で、速やかに消化可能な炭水化物の90%超はEnquist法に従い消化される。
【0024】
低い血糖性の二糖とは特に、60未満の血糖指数(グルコース=100)を有する二糖である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
1の実施態様では、該タンパク性物質の少なくとも一部は、遊離のアミノ酸の形態で、その塩の形態で、又は、タンパク質若しくはペプチド以外の結合性分子との結合物として存在し、該結合物は、十二指腸及び/又は回腸において胆汁成分及び/又は腎臓排出物の影響下で、遊離アミノ酸(又はその塩)及び結合性化合物に開裂されうる。1の実施態様では、そのような形態にあるアミノ酸、特に塩の形態又は遊離形態にあるアミノ酸の量は、該タンパク性物質に基づき、最大で15重量%であり、好ましくは0.5〜14重量%である。
【0026】
ペプチド(オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質)の形態、好ましくは、ポリペプチド及び/又は(完全な)タンパク質の形態にあるロイシンは、ロイシンの全重量に基づき、好ましくは35〜100重量%であり、より好ましくは40〜80重量%である。すなわち、体によるロイシンの摂取はよりゆっくりであると考えられ、これは、IRの処置の観点において、特にIRを患う患者における(筋肉の)異化の処置の観点において有利である。
【0027】
好ましい実施態様では、本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物は更に、十二指腸及び/又は回腸においてアミノ酸を放出するために有効な徐放性調製物を含み、該調製物は、遊離酸の形態にあるアミノ酸、塩の形態にあるアミノ酸、及び、十二指腸及び/又は回腸中で胆汁成分及び/又は腎臓排泄物の影響下で遊離アミノ酸(又はその塩)および結合性化合物と開裂されうる結合物である、タンパク質以外の結合性化合物との結合物の形態にあるアミノ酸から成る群から選ばれる少なくとも1の成分を含む。
【0028】
このように、これら遊離のアミノ酸及びそれぞれの塩は、ポリペプチド(タンパク質を含む)の形態で提供されるアミノ酸と、実質的に同時に、又は、より遅く、十二指腸又は回腸での吸収のために利用可能となりうることが、本発明者らは分かった。必須アミノ酸については特に、IRの処置の観点において、特にIR患者のタンパク質(筋肉)異化の処置に関して、これは有利であると考えられる。
【0029】
徐放性形態中のアミノ酸は好ましくは、流体、半流体又は固体の製品中に懸濁される。
【0030】
該徐放性調製物は慣用の技術に基づき作成されてよい。十二指腸/回腸において存在するpH(約pH7)で溶解するが胃(強い酸性)では溶解しないpH感受性材料により、該アミノ酸は被覆されうる。そのような被覆は当技術分野において一般に知られている。結合性分子の例は、ペプシンにより開裂されず、又は、生理的条件下では少なくとも効率的には開裂されない、該アミノ酸を有する特定のペプチドを形成する分子である。例はコリン、ベタイン、ジメチルグリシン及びサルコシンである。他の適当な結合性分子は、ホスホリピッド、リソ−ホスホリピッド及びグリセロールを包含する。
【0031】
該徐放性調製物中に好ましくは存在するアミノ酸は、好ましくは、ロイシン及び他の必須アミノ酸、特にメチオニン、アルギニン、トリプトファン、フェニルアラニン及びリシンから選ばれ、このうちロイシンが特に好ましい。
【0032】
本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物中において、重量比ロイシン/(バリン+イソロイシン)は一般に1.0以上、好ましくは1.05以上である。
【0033】
製品中のイソロイシンの全量(重量)がバリンの全量(重量)を超えることが望ましい。完全なタンパク質、通常には該組成物中に存在する完全なタンパク質が、1を越すイソロイシン対バリンの重量比を与えない場合、イソロイシンに富みかつ相対的にバリンに乏しいペプチドのような1以上の追加の化合物、又は、イソロイシン若しくは塩基若しくは塩としてのイソロイシン(好ましくはL−イソロイシン)さえに相対的に富む他の化合物が、イソロイシン/バリン比に影響するために含まれてよい。
【0034】
製品全体において、必須アミノ酸の含有量は通常は、必須アミノ酸により形成されるタンパク性物質の、少なくとも49重量%、好ましくは49〜80重量%、より好ましくは52〜70重量%である。
【0035】
リシン含有量は通常は、7.0〜15g/100gタンパク性物質、好ましくは7.5から14g/100gタンパク性物質である。
【0036】
1の実施態様では、本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物は、タンパク性物質に基づき特には少なくとも10重量%で、好ましくはタンパク性物質に基づき少なくとも15重量%で、ホエータンパク質画分を含む。通常は、該ホエータンパク質画分は、タンパク性物質に基づき50重量%以下である。流体の組成物の場合には特に、変性したホエータンパク質の濃度は好ましくは、タンパク性物質に基づき35重量%を超えない。これは、貯蔵の間のゲル化の危険を回避することに関して有利である。
【0037】
ホエータンパク質の存在は多くの利点を提供する。該ホエータンパク質は、放出速度、及び、必須アミノ酸を体による摂取のために利用可能とする傾向、の両方の点において有利な放出挙動を、実質的に同時に示す。これは、該組成物による処置の結果としての、筋肉同化の度合いを許す。
【0038】
そのような効果は、ホエータンパク質の少なくとも一部を、通常は該タンパク質の最大で20%が遊離アミノ酸へと加水分解される程度まで、好ましくは該タンパク質の最大で10%が遊離アミノ酸へと加水分解される程度まで、(わずかに)加水分解することにより、さらに増強されうる。
【0039】
該増強された効果の為に通常は、該ホエータンパク質の50重量%以下、特には10〜50重量%が(わずかに)加水分解される。
【0040】
もし望まれるならば、該遊離アミノ酸又はその一部が、該加水分解物から取り除かれてよい。適当な手法、例えば、ろ過、クロマトグラフィー又は吸着が知られている。
【0041】
ホエータンパク質のための源として、好ましくは20重量%未満のカゼイングリコマクロペプチド(GMP)、より好ましくは10g/100gタンパク質未満のカゼイングリコマクロペプチド(GMP)を含むホエー画分が選ばれる。
【0042】
β−ラクトグロブリン含有量は、好ましくは40重量%より多く、より好ましくは46〜80重量%である。
【0043】
カゼインはタンパク性物質として存在してよい。完全なタンパク質として用いられるときは、該カゼインは好ましくは高い濃度、特には36g超/100gカゼインの、より特には、38〜70g/100gカゼインのβカゼインを含む。
【0044】
本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物において、脂質含有量は好ましくは最大で30en%、より好ましくは5〜30en%、さらにより好ましくは5〜29.0en%である。
【0045】
高い品質の組成物のために、それが十分な必須脂肪酸を与えることが好ましい。その目的の為に、ポリ不飽和脂肪酸のn−3系対n−6系の比は好ましくは、少なくとも0.2:1から10:1、より好ましくは0.4:1から3:1の範囲内である。特定の実施態様では、該比は少なくとも1.0である。
【0046】
該脂質、特にはn−3系とn−6系のポリ不飽和脂肪酸の夫々は、典型的にはC18からC26の脂肪酸を含む。その好ましい例は、αリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、リノール酸及びアラキドン酸である。
【0047】
n−3系ポリ不飽和脂肪酸は好ましくは、αリノレン酸、エイコサペンタエン酸及びドコヘキサエン酸からなる群から少なくとも主に選ばれる。n−6系ポリ不飽和脂肪酸は好ましくは、リノール酸及びアラキドン酸から成る群から少なくとも主に選ばれる。
【0048】
炭水化物画分は好ましくは、該組成物の相対的に低い量のエネルギー値を与え、通常は46en%以下である。IRを処置する観点において、これは有利と考えられる。何故なら、食後のアミノ酸応答(該組成物の摂取後における血中の測定可能なアミノ酸濃度)が増加されてよく、これは特にIRの結果としての筋肉異化のような、IRの症候を減少するのを助ける。
【0049】
上の観点において、炭水化物画分の含有量は好ましくは、全組成物の4〜45.0en%、より好ましくは8〜44.0en%、さらにより好ましくは10〜30en%を与える。
【0050】
本発明者らはさらに、該組成物の摂取後の非常に穏やかなインスリン応答を達成することが望ましいことを意図した。該組成物中に存在するアミノ酸(特には遊離アミノ酸又はその塩)の選択は、役割を果たす。特にアルギニン及びリシンは、インスリンの放出を刺激する効果を有し、そしてそれ故に、免疫応答を穏やかにする為に、好ましくは(遊離の形態で又はその塩として)添加されないか、又は、相対的に低い含有量で添加される。特に、該炭水化物画分の組成は、好ましい炭水化物摂取と、従って摂取後の所望のインスリン放出とを達成する為に選ばれて良い。従って、特に、炭水化物含有量に関する以下の基準の1以上を満たす組成物が有利であると考えられる。
【0051】
1の実施態様では、該炭水化物の75重量%未満が、スクロース含有量及びマルトデキストリン含有量の合計により形成される。
【0052】
1の実施態様では、炭水化物の全重量に基づき少なくとも40重量%が、ゆっくりと消化可能な炭水化物、すなわち特に、マルトデキストロース、マルトール及びグルコースよりも速くなく消化される炭水化物により形成される。
【0053】
1の実施態様では、本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物は、炭水化物の全重量に基づき60重量%未満、好ましくは20〜50重量%の速やかに消化可能な炭水化物、特にマルトデキストロース、マルトース、グルコース及び少なくとも同じ速さで消化される他の炭水化物を含む。
【0054】
1の実施態様では、炭水化物の全重量に基づき20重量%超、好ましくは22〜60重量%が、少なくとも1の二糖により形成される。そのような実施態様においては特に、該二糖は好ましくは、スクロース、トレハロース、パラチノース、ラクトース、及び、他の低い血糖性の二糖(low glycemic disaccharides)から成る群から、より好ましくはトレハロース及びパラチノースから選ばれる。
【0055】
1の実施態様では、グルコース以外の少なくとも1の単糖が存在する。好ましくは、該単糖は、ガラクトース、マンノース及びリボースから成る群から選ばれる。好ましくは、該単糖の全量は、炭水化物の全重量に基づき、0.5〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
【0056】
特に、リボースの存在、好ましくは(内因性の)葉酸との組み合わせにおけるリボースの存在が、タンパク質合成を増加するために有利である。これら2つの化合物の組み合わせは、対象、特に栄養失調の患者における、グアノシントリホスフェートの生産の増加を許し、真核生物開始因子2Bの刺激を経由したタンパク質合成の増加を結果することが意図される。
【0057】
該葉酸は以下の形態の1以上で与えられうる:
遊離葉酸、フォリン酸、ホルミル化葉酸、メチル化葉酸、好ましくは還元型の又はモノグルタメート結合型誘導体若しくはポリグルタメート結合型誘導体としての、遊離葉酸、フォリン酸、ホルミル化葉酸、メチル化葉酸。
【0058】
該葉酸が存在する場合、該葉酸含有量は通常は、100kcal炭水化物当たり少なくとも95μg、好ましくは100kcal炭水化物当たり110〜400μg、より好ましくは100kcal炭水化物当たり125〜300μgである。
【0059】
葉酸に加えて、無機物、微量元素及びビタミンから成る群から選ばれる少なくとも1の成分、好ましくはビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ビオチン、リポ酸、ビタミンB12及び亜鉛から選ばれる少なくとも1の成分のような1以上の他の追加の成分。
【0060】
そのような成分は、日毎の一人分当たりの日毎の推奨される分量までの濃度で存在しうる。
【0061】
亜鉛は好ましくは、100kcal炭水化物当たり少なくとも2.8mgの濃度で、より好ましくは100kcal炭水化物当たり5.6〜20mgの濃度で、さらにより好ましくは100kcal炭水化物当たり6〜15mgの濃度で存在する。
【0062】
有利な実施態様では、本発明に従う組成物は、投薬計画において投与される。特に、抗癌剤、抗レトロウィルス剤、抗高血圧剤、抗血栓剤、抗抑うつ剤及び抗糖尿病剤からなる群から選ばれる薬剤のような薬剤のアジュバントとして、該組成物は用いられうる。特に、メトホルミン又は他の抗糖尿病薬剤と一緒に該製品使うことが有利である。これらの薬剤は特に、本発明に従う組成物中で安定であり、かつ非常に有効である、と考えられる。該薬剤は、本発明に従う組成物中に存在してよく、或いは、別個に投与されても良い。
【0063】
本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物の全エネルギー値は、広い範囲内で選ばれうる。通常は、それは少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.4、さらにより好ましくは少なくとも0.5kcal/mlである。一般に、該値は、最大で2.0、例えば1.58〜2.0kcal/mlである。しかしながら、好ましくは該エネルギー密度は、最大で1.7の値、特には最大で0.9kcal/mlの値を有する。所望のエネルギー値の決定において役立つ要因は、一方では、より高いen%のタンパク性物質を達成することの容易さを、そして他方では(同化応答を増加する)胃を速やかに空にすることを含む。
【0064】
この点において、0.5〜0.9kcal/mlの範囲内のエネルギー値を有する製品が特に有利であると分かった。さらに、そのような製品は、消費者による高い許容水準を有する。
【0065】
本発明は更に、インスリン抵抗性を処置する為の方法、特にIRを患う患者における異化の症候を処置するための方法であって、組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)、及び、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与えるタンパク質画分を含む組成物を対象に投与することを含む上記方法に関係する。
【0066】
本発明は更に、インスリン抵抗性の結果としての筋肉の異化を処置するための方法であって、組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)、及び、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与えるタンパク質画分を含む組成物を対象に投与することを含む上記方法に関係する。
【0067】
本発明は更に、生活の質を改善する為に、特に動けない人及び/又は年配の人のについての生活の質を改善する為に、本明細書中で定義される組成物を使用する方法に関係する。
【0068】
該対象は好ましくはヒトである。
【0069】
本発明の方法/組成物は特に、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、癌、AIDS、慢性肺疾患及び重度の炎症性疾患から成る群から選ばれる少なくとも1の疾患を患う対象を処置する為に用いられうる。
【0070】
該組成物は好ましくは流体の形態にある。
【0071】
本発明に従う(本発明に従い用いられる)組成物の一回用量は好ましくは、50〜500g、より好ましくは75〜400g、さらにより好ましくは100〜250gである。該組成物は、1日あたり1回又は1日あたり数回投与されうる。
【0072】
該組成物は、経腸的に投与されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性を患う対象の処置の為の医薬の製造において、タンパク性物質を含む組成物を使用する方法であって、該タンパク性物質が該組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)を与え、かつ、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与える、上記方法。
【請求項2】
該処置が、インスリン抵抗性の結果としての筋肉異化を防ぐこと又は減少することに向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該対象が、アルツハイマー病、心不全、及び、重度の炎症性疾患、特に慢性肺疾患、関節炎、特に関節リウマチ、炎症性腸疾患、HIV及び手術を患う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該対象がII型糖尿病を患う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質画分、炭水化物画分及び脂質画分を含む、哺乳類に投与するのに適した組成物であって、該タンパク質画分が少なくとも24.0%(en%)を与え、該炭水化物画分が最大で46en%を与え、該脂質画分が最大で30en%を与え、かつ、タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%がロイシンである、上記組成物。
【請求項6】
該組成物がさらに、十二指腸及び/又は回腸においてアミノ酸を放出するのに効果的な徐放性調製物を含み、該調製物は、遊離酸の形態のアミノ酸、塩の形態のアミノ酸、及び、十二指腸及び/又は回腸において胆汁成分及び/又は腎臓排泄物の影響下で遊離アミノ酸(又はその塩)と結合性化合物とに分裂されうる、タンパク質以外の結合性化合物との結合物の形態にあるアミノ酸、から成る群から選ばれる少なくとも1の化合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該調製物が、ロイシン、メチオニン、アルギニン、トリプトファン、フェニルアラニン及びリシンから成る群、好ましくはロイシン、メチオニン、トリプトファン及びフェニルアラニンから成る群から選ばれる少なくとも1のアミノ酸、より好ましくはロイシン、を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該タンパク質画分内容物が、全組成物の24.0〜70en%、好ましくは25.0〜50en%を与える、請求項5〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
該タンパク質画分が、ホエータンパク質、大豆タンパク質及びカゼインから選ばれる少なくとも1のタンパク質、好ましくは少なくとも1のホエータンパク質、より好ましくはβ−ラクトグロブリンを含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ホエータンパク質の全量が、該タンパク性物質の全重量の少なくとも10重量%、好ましくは該タンパク性物質の全重量の15〜35重量%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
該脂質画分内容物が、全組成物の5〜29en%を与える、請求項5〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
該脂質画分が、少なくとも1のn−3系ポリ不飽和脂肪酸及び少なくとも1のn−6系ポリ不飽和脂肪酸を含み、好ましくはn−3系ポリ不飽和脂肪酸対n−6系ポリ不飽和脂肪酸の比(重量対重量)が0.2:1から10:1の範囲、より好ましくは0.4:1から3:1の範囲にある、請求項5〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
18〜26炭素酸を有する少なくとも1のポリ不飽和脂肪酸、好ましくはαリノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸及びアラキドン酸から成る群から選ばれる少なくとも1のポリ不飽和脂肪酸を含む、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
該炭水化物画分内容物が、全組成物の4〜45en%、好ましくは8〜44en%、より好ましくは10〜30en%を与える、請求項5〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該炭水化物の全重量に基づき少なくとも40重量%が、ゆっくりと消化可能な炭水化物、すなわち特に、マルトデキストロース、マルトース及びグルコースより速くなく消化される炭水化物により形成される、請求項5〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
炭水化物の全重量に基づき20〜50重量%の、速やかに消化可能な炭水化物、特にマルトデキストロース、マルトース、グルコース及び少なくとも同じ速さで消化される他の炭水化物を含む、請求項5〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
炭水化物の全重量に基づき20重量%超の、好ましくは22〜60重量%の、少なくとも1の二糖を含む、請求項5〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
該二糖が、スクロース、トレハロース、パラチノース、ラクトース及び他の低い血糖性の二糖から成る群から選ばれる、好ましくはトレハロース及びパラチノースから選ばれる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ガラクトース、マンノース及びリボースから成る群から選ばれる少なくとも1の単糖のような、少なくとも1のグルコース以外の単糖を含む、請求項5〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
該単糖の全量が、該炭水化物の全重量に基づき0.5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
該タンパク性物質の少なくとも49重量%、好ましくは49〜80重量%、より好ましくは52〜70重量%が、必須アミノ酸により形成される、請求項5〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
該組成物のエネルギー値が、0.3〜2.0kcal/ml、好ましくは0.4〜1.7kcal/ml、より好ましくは0.4〜1.2kcal/ml、さらにより好ましくは0.5〜0.9kcal/mlの範囲内にある、請求項5〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
重量比ロイシン/(バリン+イソロイシン)が、1.0以上、好ましくは1.05以上である、請求項5〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
リシン含有量が7.0〜15g/100gタンパク性物質、好ましくは7.5〜14g/100gタンパク性物質である、請求項5〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
無機物、微量元素及びビタミンから成る群から選ばれる、好ましくはビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ビオチン、リポ酸、ビタミンB12及び亜鉛から成る群から選ばれる、少なくとも1の成分を含む、請求項5〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
葉酸、好ましくは遊離葉酸、フォリン酸、ホルミル化葉酸、メチル化葉酸の形態にある葉酸、より好ましくは還元型の葉酸又はモノグルタメート若しくはポリグルタメートの結合した誘導体としての葉酸を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
該葉酸含有量が、100kcal炭水化物当たり少なくとも95μg、好ましくは100kcal炭水化物当たり少なくとも110〜400μg、より好ましくは100kcal炭水化物当たり少なくとも125〜300μgである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
亜鉛、好ましくは100kcal炭水化物当たり少なくとも2.8mgの濃度の亜鉛、より好ましくは100kcal炭水化物当たり5.6〜20mgの濃度の亜鉛、さらにより好ましくは100kcal炭水化物当たり6〜15mgの濃度の亜鉛を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
インスリン抵抗性を患う対象を処置する方法であって、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む上記方法。
【請求項30】
該処置が、インスリン抵抗性の結果としての筋肉異化を処置することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
インスリン抵抗性の結果としての筋肉異化を処置する方法であって、該組成物のエネルギー値の少なくとも24.0%(en%)を与え、かつ、該タンパク性物質に基づき少なくとも12重量%のロイシンを与えるタンパク質画分を含む組成物を、対象に投与することを含む上記方法。
【請求項32】
該組成物が、請求項5〜28のいずれか1項に記載の組成物である、請求項29、30又は31に記載の方法。
【請求項33】
該対象がヒトである、請求項29〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
メタボリックシンドローム特に糖尿病及び/又は肥満;癌;AIDS;アルツハイマー病;心不全;及び重度の炎症性疾患特に慢性肺疾患;関節炎特に関節リウマチ;炎症性腸疾患から成る群から選ばれる少なくとも1の疾患を患う対象を処置するための、請求項29〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
該対象がII型糖尿病を患う、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
該組成物が、流体の形態で投与される、請求項29〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
該組成物が、一人分の量が50〜500g、好ましくは75〜400g、より好ましくは100〜250gで投与される、請求項29〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
該組成物が経腸的に投与される、請求億29〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
生活の質を改善する為に、特に動けない人及び/又は年配の人の生活の質を改善する為に、請求項1〜28のいずれか1項に定められる組成物を使用する方法。

【公表番号】特表2009−511576(P2009−511576A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535476(P2008−535476)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000515
【国際公開番号】WO2007/043870
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508111969)エヌ.ヴィー.ヌトリシア (1)
【Fターム(参考)】