説明

ロボットの関節駆動装置

【課題】ロボットの関節を駆動するのに最適な、特に軸方向長を短縮できる装置を得る。
【解決手段】扁平モータ40と減速機38とを備え、ロボットの第1部材34と第2部材36とを相対的に回転駆動するロボットの関節駆動装置30であって、減速機38の出力フランジ(出力軸)44が、前記第1部材34に固定され、減速機ケーシング42が、(モータケーシング43を介して)第2部材36に固定され、減速機38の入力軸52が、片持ち状態で減速機ケーシング42から突出された片持突出部52Aを有し、この片持ち突出部52Aに扁平モータ40のロータ80が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと減速機とを備え、ロボットの第1部材と第2部材とを相対的に回転駆動するロボットの関節駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業においては、例えば「双腕ロボット」のように、人の作業に限りなく近い動きをするロボットの開発が活発になってきている。ロボットの場合、1軸廻りの回転を実現するには、当該軸毎に1個の関節が必要になる。したがって、人の作業をロボットに置き換えて人と同様の動きをさせるには、人の関節よりも多くの関節を構成してやらなければならない。そのため、1つ1つの関節をできるだけコンパクトに収めないと、腕の有効長さ(可動範囲)に対して相対的に関節部分の占有容積が大きくなって、外観が人の腕とはほど遠いものとなり、当然に人に近い動きをするのがそれだけ困難になる。
【0003】
従来の双腕ロボットは、駆動部をモータと減速機とその間の動力伝達装置で構成していたため、構成部品が多くなる上に、小型化するのが極めて困難であった。そこで、特許文献1においては、図7、図8に示されるような、モータと減速機とを一体化して1個のアクチュエータR1A〜R6A、L1A〜L6A(このうちR1A、及びR3A〜R6Aのみ符号付きで図示)として構成し、該アクチュエータR1A〜R6A、L1A〜L16Aを腕12、14の回転軸R1J〜R6J、L1J〜L6J(このうちR1J〜R6Jのみ符号付きで図示)に一致するように配置した双腕ロボット16を提案している。
【0004】
この構成は、アクチュエータR1A〜R6A、L1A〜L16Aが腕12、14の回転軸R1J〜R6J、L1J〜L6Jを直接駆動できるので腕12、14の構成部品を最小限に抑えることができ、該腕12、14を小型化できるという効果がある。そのため、従来のロボットに比べると人の腕の外観により近づけることができている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−118177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7、図8を一見して明らかなように、それぞれの腕12、14は、未だ、途中でさまざまな方向に大きく湾曲した形状となっており、腕12、14の有効長さLと比較してその投影太さdが極めて太くなっている。また、人の腕のようなまっすぐに伸びた外観からも大きく外れている。これは、現状では、関節部でのモータと減速機の具体的な設計が未だ詰められていないからであると推察される。現に、特許文献1では、例えば、モータと減速機とをよりコンパクトに収めるための具体的技術については、特に開示していない。
【0007】
本発明は、このような従来のロボットの関節駆動装置における小型化、特に、できる限り「人の関節に近い外観と動きを実現可能とする小型化」が可能なロボットの関節駆動装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータと減速機とを備え、ロボットの第1部材と第2部材とを相対的に回転駆動するロボットの関節駆動装置であって、前記減速機のケーシングが、前記第1部材に固定され、前記減速機の出力軸が、前記第2部材に固定され、前記減速機の入力軸が、前記減速機のケーシングから片持ち状態で突出された片持ち突出部を有し、この片持ち突出部に前記モータのロータが固定される構成を採用することにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
発明者らは、さまざまな関節部の構成を比較検討した結果、人の腕にできるだけ近い外観を実現するには、「モータ及び減速機のトータルの軸方向長さ」を極力短縮するのが有効である、という知見を得た。逆に言うならば、モータ及び減速機のトータルの軸方向長さを短縮することができれば、結果としてそれだけ関節の占有容積が小さく、且つ人の腕に極めて近い外観を形成することができる。
【0010】
本発明によれば、減速機のケーシングから該減速機の入力軸が片持ち状態で突出され、この片持ち突出部にモータのロータが固定される。この結果、モータ側に軸受やオイルシールが不要となる分、モータ及び減速機のトータルの軸方向長さを短縮することができる。また、少なくとも減速機の側は、「単体の減速機」として存在できるため、在庫や取り扱いの管理が容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータ及び減速機のトータルの軸方向長さの短縮されたロボットの関節駆動装置を得ることができるようになり、それだけ関節部の占有容積が小さく、人の腕により近い外観を有し、且つ人の腕により近い動きをすることのできるロボットを設計することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
先ず、図4を参照して、全体の概略構成から説明する。図4は、本発明の実施形態の一例に係るロボット関節駆動装置がロボットの腕に適用されている様子を示す概略平面図及び側面図である。
【0014】
このロボット関節駆動装置30は、減速機38及び扁平モータ40を備え、ロボット(全体は図示略)の腕32の第1部材34と、第2部材36とを相対的に回転駆動させる。第1部材34は減速機38の出力フランジ(出力軸)44に固定されている。減速機ケーシング42はモータケーシング43を介して第2部材36に固定されている。減速機38の出力フランジ44は、減速機ケーシング42に対して回転軸R1の周りで相対回転可能である。したがって、結局、減速機38の出力フランジ44に固定された第1部材34は、減速機ケーシング42が固定された第2部材36に対して回転軸R1の周りで相対回転可能である。
【0015】
このロボット関節駆動装置30は、第1部材及び第2部材の相対回転を利用してさまざまな回転軸に対する関節駆動を行うことができる。例えば、図4の例で言うならば、当該ロボット関節駆動装置30と全く同様の構成に係るロボット関節駆動装置46を、先の第2部材36を第1部材48、符号50に係る部材を第2部材と捉えた位置に配置することにより、第1部材48、第2部材50を回転軸R2の周りで相対的に回転駆動させるためのロボット関節駆動装置として適用することができる。
【0016】
次に、図1〜図3を参照して、ロボット関節駆動装置30の具体的な構成を説明する。
【0017】
図1は、該ロボット関節駆動装置30の全体断面図、図2は、図1の主要部を示す拡大断面図、図3は、図1のIII−III線に沿う(縮小)断面図である。なお、前述したように、ロボット関節駆動装置46も、全く同様の構成である。
【0018】
前記減速機38は、減速機ケーシング42内に収容されている。減速機ケーシング42は、第1、第2減速機ケーシング体42A、42Bからなる。この実施形態に係る減速機38は、入力軸52及び第1、第2偏心体54A、54Bを備えた偏心揺動型の減速機である。以下詳述する。
【0019】
入力軸52は、減速機ケーシング42内において、一対の第1、第2スラスト軸受56A、56Bによって支持されている。入力軸52は、片持ち状態で減速機ケーシング42(具体的にはその第2減速機ケーシング体42B)から突出された片持ち突出部52Aを有し、この片持ち突出部52Aに前記扁平モータ40のロータ80が固定されている。
【0020】
入力軸52の外周には、前記第1、第2偏心体54A、54Bが一体的に形成されている。第1、第2偏心体54A、54Bの半径方向外側には、第1、第2ころ55A、55Bを介して第1、第2外歯歯車58A、58Bが揺動回転自在に組み込まれている。第1、第2外歯歯車58A、58Bはそれぞれ内歯歯車60に内接噛合している。
【0021】
内歯歯車60の内歯は外ピン60Aで構成されている。図3(A)では略示表記されているが、図3(B)で部分拡大図示されているように、内歯歯車60の本体60B側には外ピン溝60Cが形成されており、外ピン60Aは、この外ピン溝60Cに1個おきに組み込まれている。第1、第2外歯歯車58A、58Bの外歯58A1、58B1(図2では第1外歯歯車58Aの外歯58A1のみが図示されている)の歯数は、外ピン溝60Cの数(の実質的な内歯の数に相当)に対して僅かだけ(図示の例では1だけ)少ない。外ピン60Aは、全ての外ピン溝60Cに組み込むのが好ましいが、この例では、コストと組付け工数の低減を意図して、半数のみ組み込むようにしている。
【0022】
第1、第2外歯歯車58A、58Bは、第1、第2偏心体54A、54Bにより、偏心方向が互いに円周方向に180°ずらされている。これにより、入力軸52の回転に伴って第1、第2外歯歯車58A、58Bはそれぞれ180°の位相差を保ちながら偏心揺動可能である。
【0023】
この減速機38においては、第1減速機ケーシング体42Aと内歯歯車60との間に、オイルシール64とクロスローラ66が配置されている。また、第1減速機ケーシング体42Aと隣接して配置されている第2減速機ケーシング体42Bには、内ピン68が一体的に突出形成されている。内ピン68は、第1、第2外歯歯車58A、58Bの第1、第2内ピン孔58A2、58B2を軸方向に貫通し、第1、第2外歯歯車58A、58Bの自転を拘束している。内ピン68の外周には、内ローラ70が装着されている。内ローラ70は、該内ピン68と第1、第2外歯歯車58A、58Bの内ピン孔58A2、58B2との間の摺動抵抗を軽減する。
【0024】
内歯歯車60の反扁平モータ側には、前記出力フランジ(出力軸)44が配置されている。出力フランジ44は、ボルト62、或いは、ボルト孔65に螺合されるボルト(図示略)によって、前記ロボットの第1部材34と共に該内歯歯車60と一体化されている。即ち、第1部材34は出力フランジ44と一体化されており、該出力フランジ44と共に回転可能である。
【0025】
また、この実施形態においては、図2に示されるように、内歯歯車60の外ピン60Aの反扁平モータ側端面60Aa、第1外歯歯車58Aの反扁平モータ側端面58Aa、及び内ローラ70の反扁平モータ側端面70aがほぼ同一平面上に配置されている。また、これら3つの端面60Aa、58Aa、70aと出力フランジ44との間に平面状の滑りプレート73が着脱可能に配置されている。滑りプレート73は、前記外ピン60A、第1、第2外歯歯車58A、58B、及び内ローラ70の軸方向の移動を規制している。
【0026】
減速機38と扁平モータ40は、減速機ケーシング42及びモータケーシング43が前記ロボットの腕32の第2部材36ごとボルト72(図1)によって連結されることによって連結されている。この構成により、結局、減速機ケーシング42は、第2部材36と固定されることになり、出力フランジ44側に固定されている第1部材34が第2部材36に対して回転軸R1周りで相対回転が可能となる。
【0027】
ここで、減速機38と扁平モータ40との連結・収まりについて詳細に説明する。
【0028】
減速機38の入力軸52は、前記減速機ケーシング42の第2減速機ケーシング体42Bから片持ち状態で突出された片持ち突出部52Aを有する。そして、この片持ち突出部52Aにおいて、キー76を介して扁平モータ40のロータ80が直接連結されている。すなわち、入力軸52は扁平モータ40のモータ軸を兼用している。
【0029】
入力軸52は、減速機38側で一対の第1、第2スラスト軸受56A、56Bにて両持ち支持されている。回転軸R1の周りで回転する入力軸52を「スラスト軸受」にて支持しているというのが、この実施形態での大きな特徴の一つである。
【0030】
具体的には、第1スラスト軸受56Aは、出力フランジ44の半径方向中央部に配置されている。第1スラスト軸受56Aの外輪56A1は該出力フランジ44に固定されており、内輪56A2は入力軸52に固定されている。第1スラスト軸受56Aにおける入力軸52と出力フランジ44との相対回転は、外輪56A1と内輪56A2との間に配置されたボール56A3の転動によって許容される。なお、第1スラスト軸受56Aの外輪56A1は、入力軸52とは接触しておらず、また、内輪56A2は、出力フランジ44とは接触していない。
【0031】
一方、第2スラスト軸受56Bは、第2減速機ケーシング42Bの半径方向中央部に配置されている。第2スラスト軸受56Bの外輪56B1は該第2減速機ケーシング42Bに固定されており、内輪56B2は入力軸52にそれぞれ固定されている。第2スラスト軸受56Bにおける入力軸52と第2減速機ケーシング42Bとの相対回転は、外輪56B1と内輪56B2との間に配置されたボール56B3の転動によって許容される。なお、第2スラスト軸受56Bの外輪56B1は、入力軸52とは接触しておらず、また、内輪56B2は、第2減速機ケーシング42Bとは接触していない。
【0032】
扁平モータ40は、モータケーシング43内に収容されている。モータケーシング43は第1、第2モータケーシング体43A、43Bからなる。この扁平モータ40は、入力軸52に固定された前記ロータ80及び磁石81のほか、第1モータケーシング体43Aに固定されたステータ82及びコイルエンド84を備える。前述したように、減速機ケーシング42を構成する第1、第2減速機ケーシング体42A、42B、モータケーシング43を構成する第1、第2モータケーシング体43A、43B及びロボットの腕32の第2部材36は、ボルト72により一体化されている。
【0033】
このうち第2減速機ケーシング体42Bは、減速機フロントカバーとモータエンドカバーの機能を兼ねる。扁平モータ40のコイルエンド84は軸方向にスペースを多く占有するため、この第2減速機ケーシング体42Bの扁平モータ40が接続される側の側面には、扁平モータ40が接続されたときに該コイルエンド84を収容可能な凹部42B1が形成されている。
【0034】
なお、図1の符号63は、減速機を単体で構成するときに使用するボルト、符号88A、88Bは、減速機38の内部に収容された潤滑剤の漏れを防止するオイルシール、符号90は、ボルト72を挿通するための貫通孔、符号92は、扁平モータ40の回転を検出するためのエンコーダである。
【0035】
次に、このロボットの関節駆動装置30の作用を説明する。
【0036】
扁平モータ40の通電によってロータ80が回転すると、キー76を介して(モータ軸でもある)減速機38の入力軸52が回転する。入力軸52が回転すると該入力軸52と一体的に形成されている第1、第2偏心体54A、54Bがそれぞれ180度の位相差を持って回転する。第1、第2偏心体54A、54Bが回転すると、第1、第2外歯歯車58A、58Bが円周方向に当該180度の位相差を維持しながら偏心回転する。
【0037】
この位相差の存在のために入力軸52に掛かるラジアル方向のトルクが相殺され、トルクの作用点の軸方向位置のずれによって発生するモーメントのみが第1、第2スラスト軸受56A、56Bに掛かることになる。そのため、スラスト軸受でありながら、入力軸52の回転を支障なく支持することができる。
【0038】
第1、第2外歯歯車58A、58Bの第1、第2内ピン孔58A1、58B1には、内ピン68が貫通されており、且つこの内ピン68は、第2減速機ケーシング体42Bと一体である。そのため、第1、第2外歯歯車58A、58Bは、該内ピン68によってその自転が拘束されるため、(回転することなく)揺動のみを行う。この揺動によって内歯歯車60と第1、第2外歯歯車58A、58Bとの噛合位置が順次ずれる現象が起こる。内歯歯車60の歯数(外ピン溝40Cの数に相当)と第1、第2外歯歯車58A、58Bの歯数は「1」だけ異なっているため、内歯歯車60と第1、第2外歯歯車58A、58Bの噛合位置が順次ずれて1周するごとに(入力軸52が1回転するごとに)内歯歯車60は第1、第2外歯歯車58A、58Bとの歯数差に相当する角度だけ自転することになる。この結果、結局、入力軸52の1回転に対して、内歯歯車60は1/(内歯歯車60の歯数)だけ回転する。
【0039】
このときの内歯歯車60の回転は、クロスローラ66を介して減速機ケーシング42によって支持される。内歯歯車60の回転は、該内歯歯車60とボルト62等を介して一体化されている出力フランジ44に伝達され、該出力フランジ44に固定されているロボットの腕32の第1部材34の回転として出力される。
【0040】
この実施形態に係る関節駆動装置30は、扁平モータ40側に軸受やオイルシールがない分、軸方向長Xを短くすることができ、第2減速機ケーシング体42Bがいわゆる減速機カバー及びモータカバーの機能を兼用するため、この点でも軸方向長が短くすることができる。
【0041】
ここで、各部材の支持構造について着目すると、この実施形態においては、第1、第2外歯歯車58A、58Bの軸方向反扁平モータ側において、半径方向中央に存在する入力軸52から第1減速機ケーシング体42Aの最外周に至るまでの間に、第1スラスト軸受56A、出力フランジ44、内歯歯車60、クロスローラ66、及び第1減速機ケーシング体42Aから構成される剛部材が配置され、第1の剛支持系統が形成されている。
【0042】
また、第1、第2外歯歯車58A、58Bの軸方向偏平モータ側において、半径方向中央に存在する入力軸52から第2減速機ケーシング体42Bの最外周に至るまでの間に、第2スラスト軸受56B及び当該第2減速機ケーシング体42Bから構成される剛部材が配置され、第2の剛支持系統が形成されている。
【0043】
更に、扁平モータ40の反減速機側には、第2モータケーシング体43Bが配置され、第3の剛支持系統が形成されている。
【0044】
一方、第1、第2減速機ケーシング体42A、42B、第1、第2モータケーシング体43A、43Bは、ボルト72によって強固に固定されている。
【0045】
このため、結局、最外周部が完全連結された剛体で形成され、且つ、半径方向に合計3系統の剛支持系統が形成されることになるため、全体の剛性を非常に高く維持することができる。したがって、第1、第2スラスト軸受56A、56Bの支持剛性が高く、入力軸52は、軸受スパンが短いにも拘わらず、安定回転することができる。また、入力軸52の片持ち突出部側(即ち扁平モータ40のロータ側)でも、高い回転安定性を維持することができる。
【0046】
なお、ロボットの関節駆動に用いられる扁平モータ40には、回転制御用にエンコーダ92やブレーキ(上記例では図示略)が付設されることが多いが、このエンコーダ92やブレーキは、グリースを嫌うため、第2モータケーシング体43B付近に軸受を配置する場合には隣接して1または2以上のオイルシールが必要になり、これが軸方向長を長くしてしまうという付加的不具合を誘引する。しかし、上記実施形態のように片持ち突出部52Aに扁平モータ40を組み込む構造は、減速機38が独立して存在できるため、設計、製造、在庫管理が容易であり、また、扁平モータ40内はオイルレスに維持できるため、オイルシールを付設する必要がなく、当然にオイル漏れの心配もない。
【0047】
この実施形態に係るロボットの関節駆動装置30は、モータとして扁平モータ40が採用され、元々軸方向長を短縮できるような構成とされている。更に、第2減速機ケーシング体42Bの扁平モータ40が接続される側の側面に、該扁平モータ40のコイルエンド84を収容するための凹部42B1が形成されている。そのため、軸方向の短縮を図っていながら、コイルエンド84と第2減速機ケーシング体42Bとの干渉が防止されている。しかも、この第2減速機ケーシング体42Bは、第1減速機ケーシング体42Aと第1モータケーシング体43Aとによって強固に挟持され、且つ第2スラスト軸受56Bを介して半径方向中央の入力軸52の位置にまで延在されることによって前記第2の剛支持系統を形成しているため、凹部42B1、或いは内ピン68等が形成されていても高い剛性が維持できている。
【0048】
ここで、入力軸52にスラスト軸受を配置する構成が、寿命及びコスト面で優れる点について少し説明する。本発明では、軸受の種類が特に特定されるものではないが、例えば寿命を維持するには、後述する実施形態のように、アンギュラ玉軸受やテーパローラ軸受を用いた上で予圧を掛ければよい。また、スラスト軸受を用いれば、(予圧無しの玉軸受に比べて)がたをより小さくでき、支持剛性を高められる上に、寿命、コスト面でも有利である。特に、本実施形態の場合、ラジアル方向のトルクは、偏心位相の180度ずらしによって相殺できるため、入力軸52には、トルクの作用点の軸方向位置のずれによるモーメントのラジアル成分しか掛からないため、第1、第2スラスト軸受56A、56Bでも対応できるようになっている。この点は発明者らによって実際に確認されている。
【0049】
こうした工夫が相乗された結果、この実施形態に係るロボットの関節駆動装置30は、その軸方向のコンパクト性から、図4に示されるように、ロボットの腕32に組み込んだときに、当該腕32の投影太さd1を細くすることができる。この結果、第1、第2部材34、36の形状の任意性が高まって、人の腕により近い腕32を形成することができるようになる。
【0050】
次に、図5を用いて本発明の他の実施形態の一例について説明する。
【0051】
この実施形態では、先の実施形態の第1、第2スラスト軸受56A、56Bに代え、第1、第2アンギュラ玉軸受96A、96Bを「正面合わせ」で軸方向に予圧して組み込んでいる。アンギュラ玉軸受96A、96Bは、単純な玉軸受と比較して、もともとスラスト方向の力を受け得るように設計されているため、予圧を掛けて組み込んでも高い耐久性を維持できる。また、大きなラジアル方向の力も受けられるので、例えば外歯歯車を一枚しか持たないような減速機のように、入力軸に掛かるラジアル方向のトルクが機構上相殺できないような減速機を採用した場合でも適用可能である。
【0052】
その他の構成については、先の実施形態と共通であるため、図中で同一または実質的に同一の部分に同一の符号を付すにとどめ、重複説明を省略する。
【0053】
なお、入力軸52を支持する軸受として、このように第1、第2アンギュラ玉軸受96A、96Bを用いる場合には、図6に示されるように、「背面合わせ」で予圧を掛けて組み込むようにしてもよい。背面合わせで組み込んだ場合、正面合わせで組み込む場合に較べて、作用点距離を大きく取れるため、強いモーメント荷重にも十分対応できるというメリットが得られる。又、同じモーメント荷重ならばより長寿命となる。なお、アンギュラ玉軸受の代わりにテーパローラ軸受を用いれば更なる高容量にも耐えることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では軸方向長を極力短縮するため、いずれもモータとして扁平モータが採用されていたが、本発明は、モータの種類を特に限定するものではなく、それぞれのモータで同様の効果を等しく得ることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、減速機として、偏心揺動型の減速機が採用されていたが、本発明では減速機の構成も、特に偏心揺動型に限定されるものではない。ただ、偏心揺動型の減速機は、上述したように、以下のa)、b)の効果が「同時に得られる」ため最適である。
【0056】
a)偏心体及び外歯歯車を複数用いてそれぞれの偏心位相を変えることによってトルクの相殺ができるので、「スラスト軸受」を使用できるようになる。
b)一段でロボットの関節駆動に必要な(例えば1/200を越えるような)高減速比が得られるため、(多段にする必要がないことから)軸方向長を最短にできる。
【0057】
なお、上記a)の利点のみに着目するならば、例えば、単純遊星減速機でも実現できるし、上記b)の利点のみに着目するならば、例えば、外歯歯車が撓みながら内歯歯車の内側で回転する所謂撓み噛み合い式の減速機でも実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ロボットの関節駆動装置として有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態の一例に係るロボットの関節駆動装置の断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】図1の矢示III−III線に沿う(縮小)断面図
【図4】上記関節駆動装置がロボットの腕に適用されている様子を示す概略平面図
【図5】本発明の他の実施形態の一例を示す減速機部分の断面図
【図6】図5の実施形態の変形例を示す断面図
【図7】従来のロボットの関節駆動装置の一例を示す斜視図
【図8】同部分の右腕平断面図
【符号の説明】
【0060】
30、46…ロボット関節駆動装置
32…腕
34…第1部材
36…第2部材
38…減速機
40…扁平モータ
42…減速機ケーシング
42A…第1減速機ケーシング体
42B…第2減速機ケーシング体
44…出力フランジ(出力軸)
48…第1部材
50…第2部材
R1、R2…回転軸
52…入力軸
52A…片持ち突出部
54A、54B…第1、第2偏心体
56A、56B…第1、第2スラスト軸受
58A,58B…第1、第2外歯歯車
60…内歯歯車
62…ボルト
64…オイルシール
66…クロスローラ
68…内ピン
70…内ローラ
72…ボルト
76…キー
80…ロータ
81…磁石
82…ステータ
84…コイルエンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと減速機とを備え、ロボットの第1部材と第2部材とを相対的に回転駆動するロボットの関節駆動装置であって、
前記減速機の出力軸が、前記第1部材に固定され、
前記減速機のケーシングが、前記第2部材に固定され、
前記減速機の入力軸が、前記減速機のケーシングから片持ち状態で突出された片持ち突出部を有し、
この片持ち突出部に前記モータのロータが固定される
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記減速機が、前記入力軸の外周に偏心体を備え、その半径方向外側に外歯歯車が揺動回転自在に組み込まれ、該外歯歯車が更にその半径方向外側に配置された内歯歯車に内接噛合する構成の偏心揺動型の減速機であって、且つ
前記偏心体が、入力軸の軸方向に位相を変えて複数備えられている
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記入力軸が、前記減速機のケーシング内において、正面合わせで予圧を掛けた一対の軸受にて支持されている
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記入力軸が、前記減速機のケーシング内において、背面合わせで予圧を掛けた一対のアンギュラ軸受にて支持されている
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記入力軸が、前記減速機のケーシング内において、スラスト軸受の内輪を前記入力軸に、外輪を前記減速機のケースに固定した一対のスラスト軸受にて支持されている
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記減速機のケーシングの一部を構成するケーシング体が、前記モータのケーシングの一部を構成するケーシング体を兼ね、かつこの兼ねられたケーシング体のモータ側に、該モータのコイルエンドを収容するための凹部が形成されている
ことを特徴とするロボットの関節駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−166168(P2009−166168A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6111(P2008−6111)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】