説明

ロボットハンド、該ロボットハンドを用いた液体被覆装置および液体被覆方法

【課題】 軽量で液体被覆に使用可能なロボットハンドを提供する。
【解決手段】 ロボット取付け部1の下端には支持板2が固定され、支持板2の下部には、支持板2を挟むように対向する連結板3が第1の軸4で回転可能に吊り下げられている。各々の連結板3の下部の外側面にはワーク接触板6が連結板3と直角になるよう固定されている。対向するワーク接触板6の間には、先端付近に永久磁石7が固定されたアーム8が配置され、かつワーク接触板6と第2の軸9で回転可能に連結されている。アーム8の後端は、対向するワーク接触板6の間より飛び出ていて、アクチュエータ10の可動部先端に連結されている。アクチュエータ10はその駆動方向がアーム8の長手方向と直角になるよう配置されている。そして、アクチュエータ10の可動端と反対側の端部が、ロボット取付け部1の上端部と固定部材11を介して固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体で形成されたワークに塗料、潤滑剤および油などの液体を被覆する際に該ワークを磁力で吸着して保持するロボットハンドに関する。さらに、本発明はロボットハンドを使用してワークに液体を被覆するための液体被覆装置および、これを用いた液体被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁力を利用するロボットハンドとして電磁石を使用するものと永久磁石を使用するものが知られている。電磁石を使用するものとしては特許文献1に開示されたロボットハンドがある。これは、一対の爪のうち一方の爪に電磁石を設け、該電磁石で吸着した鉄製ワークを、電磁石と他方の爪とで保持する構成のロボットハンドである。
【0003】
また、永久磁石を使用するものとしては特許文献2及び3に記載の発明がある。特許文献2に記載の発明は、固定フィンガとこれに対して回動自在に支持された可動フィンガとを有し、この可動フィンガの内側面に永久磁石を固定し、可動フィンガを永久磁石と一緒に固定フィンガに対して回動させることで、ワークの着脱と離脱を行なうものである。さらに、特許文献3に記載の発明は、非磁性体で形成されたワーク当接部材と、このワーク当接部材に対して進退可能に配設された永久磁石とを備え、ワーク当接部材をワークに当接した状態でワーク当接部材に永久磁石を接触させることでワークを吸着し、ワーク当接部材から永久磁石を遠ざけることでワークを離脱させるものである。
【特許文献1】特開2000−317874号公報
【特許文献2】特開平7−266276号公報
【特許文献3】特開平8−155874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたロボットハンドのようにワーク吸着のために電磁石を使用するものでは、電磁石の構造上コイルを巻いた鉄心により構成されるためロボットハンドが大型化し重くなる。この問題を解決するため、電磁石に代えて永久磁石を使用することが考えられる。
【0005】
しかし、特許文献2に開示された従来例では、永久磁石が可動フィンガに固定されているので可動フィンガと一緒に永久磁石も動く。このため、可動フィンガと固定フィンガとで把持したワークを両フィンガの開動作で台の上に離脱させる際、ワークは可動フィンガ側に磁力で引き寄せられ、姿勢が変化しやすい。その結果、ワークが台の上に転倒した状態に置かれる場合がある。また、特許文献3に開示された従来例のように、非磁性体を通して直接磁石の磁力でワークを吸着するものは、ワークの吸着を解除するために磁石をワークから離す場合に大きな力が必要である。そして、この力を発揮できる大型のアクチュエータが必要になり、ロボットハンドが大型化し重くなる。
【0006】
さらに、ワークを吸着する際に吸着を確実なものとするにはワーク吸着部をワークに接触させる必要があるが、このようなワーク吸着部を例えばロボットに設ける場合、接触による衝撃を吸収する機構が必要である。また、吸着したワークを任意の角度に傾ける必要がある場合、ワークを着脱するための可動部分とは別に角度を変化させるためのアクチュエータやモータが必要である。さらに、ワークの表面に液体を被覆するためにロボットを使用する場合、ロボットハンドとワークとの接触面積を最小限にする事で液体が被覆されない部分を最小限にしなければならない。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、軽量で液体被覆に使用可能なロボットハンド、該ロボットハンドを用いた液体被覆装置および液体被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のロボットハンドは、対向する板部分を有し、該板部分が磁性体からなっていて端面がワークと接触するワーク接触部と、前記対向する板部分に移動可能に支持され、一端が前記対向する板部分の間に在るアームと、前記アームの一端に固定された永久磁石とを備えていることを特徴とする。
【0009】
上記のように構成された発明では、ワーク接触部の対向する板部分の間に、アームの一端の永久磁石を配置することで、ワーク接触部の対向する板部分が磁化する。磁化された対向する板部分をワークに近づけるとワークはその対向する板部分に吸着される。対向する板部分は間隔をおいて配置されていることにより、両方の板部分に同時にワーク上面が吸着されるため、吸着されたワークは安定した姿勢を保てる。また、ワーク接触部の対向する板部分とワーク上面とは線接触となるため、ワークを液体に浸漬した際、ワーク表面に液体が被覆されない面積が最小限になる。
【0010】
また、対向する板部分を動かない状態にし、磁化された対向する板部分にワークが吸着されている状態からアームを動かした場合、対向する板部分の間からアームとともに永久磁石が動き、対向する板部分を磁化しない距離まで永久磁石が遠ざかることで、ワーク接触部からワークが離脱する。このとき、対向する板部分を水平状態してワークの離脱を行うことで、安定した姿勢でワークを所定の載置場所に置くことができる。
【0011】
一方、対向する板部材を固定しないで、磁化された対向する板部分にワークが吸着されている状態からアームを動かすと、対向する板部分は磁化しているためアームと一緒に動く。このとき、磁化された板部分に吸着されたワークも一緒に動く。このように本発明ではワークの着脱操作とワークの傾け操作を同じ機構でまかなえる。また、液体にワークを傾けた状態で浸漬し引き上げれば、ワーク表面に付着した液体の切れが良いため、ワーク表面に均一な被膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、ワークの吸着に永久磁石を使用しているのでロボットハンドが軽量で小型なものとなる。また、ワーク表面に液体を被覆する際、複雑な機構を用いずにワークの吸着、傾けおよび離脱を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
近年、冷間鍛造でたとえば歯車を作る場合、鍛造前のビレット(円筒状または四角柱状の金属)の表面に高潤滑性の冷間鍛造用薬剤の被膜を形成することになる。このような歯車は非常に過酷なプレスで形成するので、ビレット表面の被膜が非常に均一であることが要求されている。また、高潤滑性の薬剤は高価な場合も多く、必要最少量での被膜処理が要求されてきている。以下に開示するロボットハンド及びこれを用いた液体被覆方法等は、上記のようなビレット(以下、ワークという)の表面に必要最小限の量で均一に薬剤を被覆するのに好適な例である。なお、「液体」とは、鍛造される前のワークと成型金型との間の潤滑性と離型性を維持するために被覆される通常の水系固体潤滑剤の以外に、例えばペンキ塗料のような被覆剤を広く含むものとする。また「均一」とは、ワークの表面に液体を被覆し乾燥した後の被膜の厚みが、ワークに対して全体的に均等に付着していることをいう。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の一形態によるロボットハンドの全体図である。図2は図1のロボットハンドの可動部分の詳細図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は左側面図である。
【0016】
図1及び図2に示すロボットハンドは、ロボット(不図示)の可動部先端に取り付けられるロボット取付け部1を有する。ロボット取付け部1の下端には支持板2が固定されている。支持板2の下部には、支持板2を挟むように対向する連結板3が第1の軸4で回転可能に吊り下げられている。第1の軸4は支持板2とこれを挟むように対向する連結板3を貫通しているが、連結板3に形成された貫通穴が長穴になっていることにより、連結板3は支持板2に対して一定の範囲で上下方向に移動自在である。また、対向する連結板3は、その間に配置されたスペーサ5により一体化されている。
【0017】
各々の連結板3の下部の外側面には、細長い肉薄の軟鉄からなるワーク接触板6が連結板3と直角になるよう固定されている。これにより、細長い肉薄のワーク接触板6は所定の間隔を空けて対向している。
【0018】
支持板2には回転規制部としてのストッパーピン13が設けられ、これにより、対向する連結板3に直角をなすよう固定されたワーク支持板6が水平状態から時計周りに回動することを規制する。
【0019】
対向するワーク接触板6の間には、先端付近に永久磁石7が固定された細長いアーム8が配置され、かつワーク接触板6と第2の軸9で回転可能に連結されている。このとき、対向するワーク接触板6の間に配置されたアーム8の底面がワーク接触板6の下端から飛び出ないようになっている。換言すると、対向するワーク接触板6の下端部のみがワークと接触できるように構成されている。なお、本例のように永久磁石7が固定されたアーム8とワーク接触板6との間に隙間を有する場合、図示していないが、少なくとも永久磁石7とワーク接触板6の間の部分の隙間を埋めるために例えば樹脂やチタンなどの非磁性材料をアーム8に固着しておいてもよい。さらに前記非磁性材料の表面が潤滑性を有しているとなお良い。
【0020】
アーム8の後端は、対向するワーク接触板6の間より飛び出ていて、直線駆動を行うエアシリンダ等のアクチュエータ10の可動部先端に連結されている。この可動部先端とアーム8の後端の連結は第3の軸11で行われている。第3の軸11はアクチュエータ10の可動部先端とアーム8の後端とを貫通しており、アーム8の後端に形成された貫通穴が長穴になっていることにより、アーム8の後端はアクチュエータ10の可動部先端に対し一定の範囲で上下方向に移動自在である。
【0021】
アクチュエータ10はその駆動方向がアーム8の長手方向と直角になるよう配置されている。そして、アクチュエータ10の可動端と反対側の端部が、ロボット取付け部1の上端部と固定部材11を介して固定されている。
【0022】
上述のように構成されたロボットハンドによれば、ワークの吸着、離脱、傾けを行うことができる。これらの動作原理について、本実施形態のロボットハンドの一部を簡略化した図面(図3〜図5)に基づいて説明する。
【0023】
図3に示すように、対向するワーク接触板6の間に永久磁石7が入ることでワーク接触板6が磁化する。磁化された対向するワーク接触板6をワークに近づけるとワークは対向するワーク接触板6に吸着される。対向するワーク接触板6は間隔をおいて配置されていることにより、対向するワーク接触板6の両方でワーク上面が吸着されるため、吸着されたワークは安定した姿勢を保てる。
【0024】
図4(a)は、永久磁石7が対向するワーク接触板6を磁化し、ワーク14を吸着している状態である。この状態から、図4(b)に示すように、対向するワーク接触板6を動かない状態にし、アーム8を時計周りに揺動して、対向するワーク接触板6の間からアーム8を引き上げ、対向するワーク接触板6のワーク14との吸着部分が磁化されない距離まで永久磁石7を遠ざけることで、ワーク接触板6からワーク14を離脱させることができる。このとき、永久磁石7が固定されたアーム8とワーク接触板6との間に隙間を有していると、ワーク接触板6からの永久磁石の離脱をスムーズに行うことができる。この結果、永久磁石の離脱時にワーク接触板6に衝撃を与えることがなく、ワークを安定して所定の位置に解放することができる。
【0025】
なお、図4(b)のように本実施形態では磁石7を揺動させることでワーク14を離脱させているが、例えば図4(c)に示すように、磁石7をワーク接触板6と平行な方向に移動することでワーク14を離脱させてもよい。
【0026】
図5は磁石7を揺動することで、対向するワーク接触板6とこれに吸着したワーク14とを同時に揺動する機構の模式図である。
【0027】
図5(a)の状態からアーム8の後端をアクチュエータ10により上昇させて磁石7を揺動させると、図5(b)に示すように、対向するワーク接触板6は磁石7により磁化しているため磁石7を動かすと一緒に揺動する。このとき、磁化されたワーク接触板6に吸着されたワーク14も一緒に揺動する。
【0028】
次に、本実施形態のロボットアームを用いてワーク表面に液体を被覆させる方法について説明する。
【0029】
図6は図1のロボットハンドを用いたワークへの液体被覆方法を説明するための図である。図6(a)はワークを吸着するときの状態を示している。この状態では、対向するワーク接触板6の間に永久磁石7が位置しているため、対向する接触板6は永久磁石7により磁化されている。そして、ワーク接触板6が水平状態のままで、ワーク接触板6の、永久磁石7で磁化されている先端部がワーク14の真上に位置するようにロボットハンドを移動させた後、該ロボットハンドを下降させ、ワーク接触板6の下端部をワーク14の上面に接触させる。これにより、ワーク接触板6にワーク14が磁力により吸着される。
【0030】
次に、ワーク接触板6が水平状態のままで、ワーク接触板6に吸着されているワーク14が処理液槽15の真上に位置するようにロボットハンドを移動させる。そして、図6(b)に示すように、アクチュエータ(不図示)を駆動してアーム8の後端の第3の軸11を引き上げると、アーム8が第1の軸4を支点として永久磁石7が下方向に揺動するのに伴い、対向するワーク接触板6とこれに吸着されたワーク14も一緒に揺動する。これにより、ワーク14を斜めの状態に傾けることができる。このようにワーク14を斜めに傾けた状態でロボットハンドを下降させ、処理液槽15の処理液にワーク14全体を漬けた後、ワーク14を斜めに傾けた状態でロボットハンドを上昇させる。すなわち、処理液にワーク14を斜めの状態で漬けて、この状態のままワーク14を引き上げる。その後、ワーク14およびこれを吸着したワーク接触板6を斜めに傾いたままでロボットハンドを移動し、ワーク14を所定の載置面に接近させる。このような一連の動作において、ワーク14の表面に均一に処理液を被覆することができる。また、ワーク接触板6は細長い肉薄の部材であるため、ワーク接触板6とワーク上面とは線接触となり、ワーク表面に液体が被覆されない面積を最小限にすることができる。このように液体が被覆されない部分を最小面積にする事ができると、その後のワーク離脱時に、その液体が被覆されない部分が液体の表面張力で自然に覆われるという効果がある。なお、本例ではワーク接触板とワーク表面との接触状態を線接触としたが、液体が被覆されない部分を最小面積にするには、ワーク接触板の下端部に針状の突起を設けて両者の接触状態を点接触とするとより好ましい。
【0031】
次に、ワーク14およびこれを吸着したワーク接触板6を斜めに傾けた状態からアクチュエータ(不図示)を駆動してアーム8の後端の第3の軸11を下に下げると、アーム8が時計周りに動くと同時に、磁化されたワーク接触板1とこれに吸着されているワーク14も第1の軸4を支点として、図6(a)のような水平状態になるよう揺動する。そして、図6(a)に示した位置まで揺動すると、対向するワーク接触板6を固定している連結板3がストッパーピン13と接触する。そこから更にアクチュエータ(不図示)を動かし、第3の軸11を下に下げるとアーム8が動くが、対向するワーク接触板6は、これを固定している連結板3がストッパーピン13と接触しているため、動かずに水平状態のままである。そのため、図6(c)に示すようにアーム8は第2の軸9を支点として磁石7を上方に動かす事になる。すると、磁石7は、対向するワーク接触板6の間から外に揺動する。そして、磁石7が、ワーク接触板6を磁化しない距離まで揺動すると、対向するワーク接触板6に磁力で吸着されていたワーク14が離脱する。このようにワーク14が離脱する瞬間まで、対向するワーク接触板6は水平状態を保っているため、ワーク14を安定した姿勢で所定の載置面に置くことができる。
【0032】
ここで、上記のロボットハンドに備わる当該ロボットハンドの損傷を防ぐ機構を説明する。ワーク14を吸着するためまたは何らかのトラブルによりロボットハンドに対し垂直方向(図1や図6等の紙面上下方向)に力がかかった場合、支持板2に対して連結板3が上下方向に動くため、力を受け流し、ロボットハンドの損傷を防止する。さらに、図6(c)に示したようなワーク離脱時には第3の軸11が下に移動してアーム8の後端に力がかかり連結板3が動くときは連結板3とストッパーピン13が接触して連結板3の時計回りの可動を規制するが、このとき、アクチュエータ10の可動部先端がアーム8の後端に対して動くので力を受け流すことができる。
【0033】
また、ワーク離脱動作ではワーク接触板6から磁石7がワーク接触板6を磁化しない位置まで離れた時、それまで磁石7にワーク接触板6が引き寄せられていた力が急に無くなることによる反動が、ワーク接触板6に対して磁石7の移動方向とは逆向きに生じる。本例のロボットアームはこのような反動を吸収できる機構となっている。すなわち、本例では対向するワーク接触板6およびこれに吸着されたワーク14を揺動するときに第1の軸4を回動支点としているが、磁石7をワーク接触板6が磁化しない位置まで揺動させる軸(第2の軸9)をワーク接触板6の回動支点である第1の軸4と異なる場所に設け、なおかつ、その第2の軸9を、第1の軸4を支点として揺動する部位に配置する事で、磁石7が外れる際に生じる反動を吸収することができる。
【0034】
このとき、アーム8の後端と連結板3との間にこの間隔を縮めるような引っ張り力を付加しておくと、上記のような反動によるワーク接触板6の、磁石7の移動方向とは逆向きの移動量を軽減することができ、ワーク離脱後に、離脱したワークにワーク接触板6が下がりすぎて干渉する心配がなくなる。この引っ張り力は例えばばねを用いて発生させることができる。
【0035】
図7はワーク14に液体被覆処理を行なっている際の模式図である。本発明では、対向するワーク接触板6に吸着したワーク14をワーク形状に最適な角度で被覆する液体に浸漬し引き上げることでワーク14の表面に液体を均一に被覆する。また、ワーク14の形状がカップ型であったり一部に窪みがある場合、ワーク14を引き上げるだけでなく、図7のようにロボットによりワーク14を3次元方向に傾けることでワーク表面の被膜を均一にすることができる。
【0036】
図8はロボットハンドを複数取り付けることで同時に複数のワークの搬送及び液体被覆処理を行う装置の模式図である。この図のような液体被覆装置では前述のロボットハンド16を並列に並べこれらをロボットに取り付けることで一度に複数のワークを搬送すると共に液体被覆処理を行うことが可能である。並列に並べるロボットハンド16の数はロボットの搬送能力とその他処理する場所の大きさによって任意に決めることができる。
【0037】
図9は本発明の他の実施の形態によるロボットハンドの可動部分を示す模式図である。この図では図1のロボットハンドの構成部品と同一の部品には同一符号を付してある。この図のロボットハンドでは、図1に示したロボットハンドのワーク接触板とアームの形状が異なっている。
【0038】
詳述すると、支持板2の下部には、支持板2を挟むように対向するワーク接触板26が第1の軸4で回転可能に吊り下げられている。第1の軸4は支持板2とこれを挟むように対向するワーク接触板26を貫通しているが、ワーク接触板26に形成された貫通穴が長穴になっていることにより、ワーク接触板26は支持板2に対して一定の範囲で上下方向に移動自在である。また、対向するワーク接触板26は、その間に配置されたスペーサ(不図示)により一体化されている。これにより、ワーク接触板6は所定の間隔を空けて対向している。
【0039】
ワーク接触板6は細長い肉薄の軟鉄からなり、支持板2に対して水平に配置される。支持板2にはストッパーピン13が設けられ、これにより、ワーク支持板6が水平状態から時計周りに回動することを規制する。
【0040】
対向するワーク接触板6の間には、先端付近に永久磁石7が固定された細長いアーム28が配置され、かつワーク接触板6と第2の軸9で回転可能に連結されている。このとき、対向するワーク接触板6の下端部のみがワークと接触できるように構成されている。
【0041】
アーム28の後端は、対向するワーク接触板6の間から支持板2の下端部を迂回するように延びていて、直線駆動を行うエアシリンダ等の可動部先端(不図示)に連結される。
【0042】
このような形態においても、前述した図1の形態と同様にワークの吸着、離脱、傾けを行うことができる。なお、これらの動作原理は図1の形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の一形態によるロボットハンドの全体図である。
【図2】図1のロボットハンドの可動部分の詳細図であり、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は左側面図である。
【図3】図1のロボットハンドのワーク接触部を簡略化した図である。
【図4】図1のロボットハンドによるワークの吸着および離脱の原理を説明するためにロボットハンドの一部を簡略化した図である。
【図5】図1のロボットハンドによるワークの傾け動作を説明するためにロボットハンドの一部を簡略化した図である。
【図6】図1のロボットハンドを用いた液体被覆方法を説明するための図である。
【図7】図1のロボットハンドでワークに液体被覆処理を行っている時の様子を示す模式図である。
【図8】図1のロボットハンドをロボットに並列に複数個取り付けた構成の液体被覆装置を示す模式図である。
【図9】本発明の他の実施の形態によるロボットハンドの可動部分を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ロボット取付け部
2 支持板
3 連結板
4 第1の軸
5 スペーサ
6、26 ワーク接触板
7 永久磁石
8、28 アーム
9 第2の軸
10 アクチュエータ
11 第3の軸
12 固定部材
13 ストッパーピン
14 ワーク
15 処理液槽
16 ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する板部分を有し、該板部分が磁性体からなっていて端面がワークと接触するワーク接触部と、
前記対向する板部分に移動可能に支持され、一端が前記対向する板部分の間に在るアームと、
前記アームの一端に固定された永久磁石とを備えたロボットハンド。
【請求項2】
前記ワーク接触部を軸で回転可能に支持する支持部と、
前記支持部をロボットの可動部先端に取り付けるためのロボット取付け部と、
前記ロボット取付け部に保持され、前記アームの他端を駆動するアクチュエータと、
前記ワーク接触部の一方向の回転を規制する回転規制部とをさらに備えた請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記ワーク接触部をワークに接触するときの移動方向に長い長穴が前記ワーク接触部に設けられ、該長穴に前記支持部の前記軸が挿入されている請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記アームの他端に長穴が設けられ、該長穴に前記アクチュエータの可動部先端が軸で連結されている、請求項2または3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記アームの他端と前記支持部との間にこの間隔を縮める方向の張力が付与されている、請求項2から4のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記アームと前記ワーク接触部の前記対向する板部分との間に隙間が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のロボットハンドを備え、該ロボットハンドによってワークを吸着して液体に浸漬し、引き上げることでワーク表面に液体を被覆する液体被覆装置であって、
ロボットの可動部先端に前記ロボットハンドを複数個取り付けてなる液体被覆装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載のロボットハンドを備え、該ロボットハンドによってワークを吸着して液体に浸漬し、引き上げることでワーク表面に液体を被覆する液体被覆装置であって、
前記ロボットハンドを3次元に動かせるように構成されている液体被覆装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載のロボットハンドを用い、該ロボットハンドによってワークを吸着して液体に浸漬し、引き上げることでワーク表面に液体を被覆する液体被覆方法であって、
前記アームとともに前記ワーク接触部の前記対向する板部分を水平状態にして前記ワークを前記磁化された対向する板部分に吸着する段階と、
前記アームとともに前記ワーク接触部の前記対向する板部分を傾けることで前記ワークを傾け、この状態で液体に浸漬し引き上げる段階と、
前記アームとともに前記ワーク接触部の前記対向する板部分を水平状態に戻すとともに当該水平状態で前記ワーク接触部を固定したまま、前記アームとともに前記磁石を前記対向する板部分の間から遠ざけることで前記ワークを前記ワーク接触部から離脱させる段階とを有する液体被覆方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−110658(P2006−110658A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299223(P2004−299223)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】