説明

ロータセンタリング計測装置およびロータセンタリング方法

【課題】測定面を探しながらの計測を行う必要がなく計測が簡単で短時間に行い得るようにして、かつロータ回転時の測定面の軸方向移動量の派生の影響を排除し、計測精度を向上させる。
【解決手段】4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録する記録手段を設ける。記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0とする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行う演算処理手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータセンタリング計測装置およびロータセンタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータの変位量を計測する場合、ロータの複数の測定部位に変位検出用のセンサをそれぞれ取り付け、各測定部位での測定データを表示装置に表示したり、コンピュータ(パソコン)で測定データを解析してロータセンタリング計測することが行われ、得られた計測値をロータセンタリングに使用することが行われている。
【0003】
特許文献1には、被測定体の測定部位に設けられ、且つ測定部位の変位を計測する変位センサが組込まれ、その測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、この計測用無線データ通信手段から送信されてくる測定データを受信してリアルタイムで読取るデータ送受信切替手段と、このデータ送受信切替手段により読取られた測定データを演算処理して前記被測定体の変位量を求める演算処理手段とを備えたことを特徴とする無線式変位計測システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2にもロータのセンタリング計測装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−5646号公報
【特許文献2】特開平4−190107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上述のように、計測用無線データ通信手段から送信されてくる測定データを受信し、演算処理手段によって被測定体、すなわちロータの変位量を演算処理によって求めることが行われて来た。このロータセンタリング計測時に、シリンダゲージを計測体でロータの上下左右4箇所にシリンダケージを係合させ、上下左右4点についてロータの90°(度)回転毎に計測していた。このために、4点×4回の合計16回の計測を要していた。また、上下左右の4点間には測定面としての面間に軸方向に変位があり、ロータの回転に伴って基準面に対して、あるいは相対的に軸方向移動量差が派生し、この派生した軸方向移動量差を原因とする計測誤差が含まれていた。従来、この計測誤差を軽減するために4回分の計測結果を平均化して平均値をロータセンタリング計測に採用していた。
【0007】
このように、従来方法によれば、測定面についての面間が最小値になる測定面を探しながらの計測となって計測が面倒であるばかりでなく、計測に時間を要し、ロータの回転時の測定面の軸方向移動量差の派生による計測誤差を避け得ないものであった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑み測定面を探しながらの計測を行う必要がなく、計測が簡単で、計測を短時間に行い得るようにして、かつロータ回転時の測定面の軸方向移動量の派生の影響を排除し、以って計測精度を向上することのできるロータセンタリング計測装置およびロータセンタリング計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ダイヤルゲージをロータに一体的に設けたカップリングの上下左右4箇所に係合させ、ロータの例えば90°毎の回転毎に、例えば4点を同時に測定して計測データを得、演算処理手段によって基準位置による基準位置で得られた測定データについて0補正を行い、これに伴って同一補正を他の位置で得られた測定データに適用して、ロータの回転に伴う軸方向移動量差の影響を相殺して、この軸方向移動量派生による計測誤差を排除したロータセンタリング計測装置およびロータセンタリング計測方法を提供する。
【0010】
本発明は、具体的には、ロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置において、
前記変位計測センサは、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して所定角度、例えば90°(以下同じ)の間隔を置いて多箇所、例えば4箇所(以下同じ)配設され、該4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測し、
4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録する記録手段を設け、
前記演算処理手段は、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行うこと
を特徴とするロータセンタリング計測装置を提供する。
【0011】
前記記録手段は、前記4点90°毎の初期値および回転角度測定値を、4点と90°毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で記録することを特徴とする。
【0012】
本発明は、またロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、該4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測し、4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として画面表示する画面表示手段を設け、該画面表示手段は、前記画面表示に、前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行った結果をも表示することを特徴とするロータセンタリング計測装置を提供する。
【0013】
前記画面表示手段は、前記4点90°毎の初期値および回転角度測定値を、4点と90°毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で画面表示することを特徴とする。
【0014】
本発明は、またロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置によるロータセンタリング計測方法において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、該4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測し、
4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録手段に記録し、
前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行うこと
を特徴とするロータセンタリング計測方法を提供する。
【0015】
前記記録手段に、前記4点90°毎の初期値および回転角度測定値を、4点と90°毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で記録することを特徴とする。
【0016】
本発明は、またロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置によるロータセンタリング計測方法において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、該4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測し、4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として画面表示手段に画面表示し、
前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行った結果を前記画面表示に表示すること
を特徴とするロータセンタリング計測方法を提供する。
【0017】
前記4点90°毎の初期値および回転角度測定値を、4点と90°毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で画面表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述したロータセンタリング計測装置あるいはロータセンタリング方法とすることによって、本発明によれば、測定面を探しながらの計測を行う必要がなく計測が簡単で、計測を短時間に行い得るようにして、かつロータ回転時の測定面の軸方向移動量の派生の影響を排除し、似って計測精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は本発明の実施例のロータセンタリング計測装置の機能をブロックで示す図であり、図2は変位計測センサの配置を示す図、図3は面間隙が生ずる現象を説明する図である。
【0021】
図1において、ロータセンタリング計測装置100は、多点同時計測装置処理部1,
PC(パソコン)側処理部2および変位計測センサ3を備える。
【0022】
図1に示す構成を説明する前に図2を使用して図1に示す変位計測センサ3の配置について説明する。
【0023】
図2において、変位計測センサ3は、出力機能付、すなわち無線送信機能付ダイヤルゲージ(以下、ダイヤルゲージという)で構成される。多点同時計測のために、本実施例にあっては、多箇所にすなわち4つのダイヤルゲージ3A,3B,3C,3Dが配設してあるが、5つ以上のダイヤルゲージを設けて多点計測を行い得るようにしても良いが4つのダイヤルゲージが最適であり、以下の4つのダイヤルゲージを配列した例について説明する。従って4つのダイヤルゲージと記載した場合には、少なくとも4つのダイヤルゲージということである。また、本実施例で90°,180°,270°と記載した場合には実質的に90°,180°,270°ということであり、“0”とした場合にも同様である。
【0024】
図2において、回転体であるロータ4には軸方向に軸6が設けてあり、この軸6に円盤状のカップリング5が取り付けられ、カップリング5の前面すなわちロータ4の実施例
(紙面の左側)に円滑な表面を有するプレート7がカップリング5と同径にして取り付けてある。カップリング7に対向し、かつ垂直方向に並行に配設した他方のカップリング8が軸9に支持されて固定される。他方のカップリング8には軸方向に、上下左右部にそれぞれ貫通孔14が設けてあり、それぞれの貫通孔14を貫通するようにしてダイヤルゲージ3の一部となる測定棒(ロッド)10が設けてあり、測定棒10の一方端はダイヤルゲージの本体に接続され、他方端はプレート7の前面にそれぞれ接触、すなわち係合している。
【0025】
他方のカップリング8の前面にはダイヤルゲージ3を支持する支持装置11がそれぞれのダイヤルゲージ3に対応して設けてある。従って、ダイヤルゲージ3A,3C,3D,3Bはロータ4に軸方向に対向する形で、かつプレート7の前面に係合する形で上下左右の4箇所で固定してあり、それぞれのダイヤルゲージ3A,3C,3D,3Bはプレート7の前面の4点における変位量を検出することができる。ここで重要なことは、ダイヤルゲージ3はロータ4の軸方向に指向して、プレート7の前面の4点における変位量を測定するように配設されていることである。この例にあっては、上下左右の4点の固定点で変位量を測定しているが、各点は他の点に対して測定面は軸方向において変位しており、ロータ回転に伴ったこの変位量は各点における変位量としてダイヤルゲージ3に出力される。従って、ダイヤルゲージ3によって変位量を測定した場合、ロータの偏心に伴う変位量と回転に伴う測定面間の回転方向の変位量の差、すなわち回転に伴う軸方向移動量差による変位量がダイヤルゲージ3に出力される。図3にこの軸方向移動量差が生ずる現象を示す。図3に示すようにフランジ構成としてのカップリングを垂直方向に設定してもロータの軸方向に対して面間隙が生じて、回転に伴って各被計測部位間で軸方向移動差による影響が測定値に生ずることになる。ここで、前述と同様に、垂直方向とは実質的に垂直方向であるという意味で用いる。例えば、ダイヤルゲージ3Aについて、回転角度0°において点PAで測定値に軸方向移動量が0であっても、点PBで測定される測定値には所定の回転角度としての90°回転された位置にあることによって点PAと点PB間における測定面間の回転方向の変位量による影響がダイヤルゲージ3Bには出力されることになる。点PC,点PDについても同様である。そして、ロータ4が90°回転するとプレート7上のPAに相当する位置はPBに移行する。従って、ダイヤルゲージ3Bによっては回転方向の移動量は0となる。このように基準点となる点を中心として各点に対しては定まった回転方向の移動量差による影響が出力されることなる。
【0026】
本実施例にあっては、角度0°における軸方向移動量差の影響を含まない測定値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動差,180°回転した時の軸方向移動量差,
270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度測定値と定義して使用する。従って、回転角度測定値には、角度0°である特定の点からの回転方向移動量差の影響による変位量を実際のロータ偏心によって発生する変位量が重なって測定され値が現れることになる。各ダイヤルゲージ3で測定値、すなわち回転角度測定値(回転角度0°を含む。)は、ダイヤルゲージ3に付属させた電波によって送信する計測用無線データ通信手段によってパソコン機能のある多点同時計測装置12にアンテナ13を備えた無線データ通信手段を介して取り込まれる。
【0027】
なお、3Aは上点に取り付けたダイヤルゲージ、3Bは右点に取り付けたダイヤルゲージ、3Cは下点に取り付けたダイヤルゲージ、3Dは左点に取り付けたダイヤルゲージである。プレート7を設けることなく、カップリング5の前面に各ダイヤルゲージ3を係合するようにしてもよい。これらのダイヤルゲージ3は、特定点が回転角度0°,90°,180°および270°の時に4回同時に変位量を計測する。前述したように計測点を多点とすることが可能である。
【0028】
図1に戻って、ロータセンタリング計測装置100は多点同時計測処理部1を備え、この多点同時計測処理部1は、各種の処理制御プログラム21を備え、計測データ演算処理部22,通信処理部23,入出力処理部24,出力処理部25,記憶処理部26を操作し、データ表示27および演算処理結果表示28を行う。計測スイッチ29によって入出力処理部24が働き、処理制御プログラム21を使用し、通信処理部23を介して入力されたダイヤルゲージ(変位計測センサ)3の各測定値について、計測データ演算処理部22は各処理を行って出力値を演算処理結果表示28を行い、出力処理部25によってプリンタ30によって印字される。測定データはデータ表示され、計測データ演算処理部22によって生成された演算結果を基に記憶処理26の記憶手段に格納される。記憶処理部26の記憶手段に格納されたデータは外部メモリ(USB)31にPCでのデータ展開用として格納され、またPC側処理部2に入力される。
【0029】
PC側処理部2は各種の処理プログラム41を備え、処理プログラム41によって、データ取込記憶処理部42,計測値/設計値比較演算処理部43,設計値入力設定処理部
44,演算処理部45,演算結果記憶処理部46を操作し、演算処理結果表示47および帳票作成印刷処理48を行い、プリンタ49にデータを送信する。
【0030】
変位計測センサすなわちダイヤルゲージ3は、被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するプレート7に係合し、かつカップリングの被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測し、通信処理部23のデータ要求に応じて計測データを送出する。
【0031】
多点同時計測装置処理部1は、4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差、180°回転した時の軸方向移動量差、270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として形成し、記録手段に記載すると共に、画面表示手段に表示を行う。
【0032】
演算処理手段である演算処理部45は、記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行う。画面表示手段に回転角度毎測定値と共に補正0処理状況および軸方向移動差を消去して得た演算結果を表示する。以下詳述する。
【0033】
図4は、ダイヤルゲージ3によるカップリング上4点計測方法および計測されたデータ整理方法を示す。
・ロータ4に対して、図3に示す方法によってダイヤルゲージ3A,3B,3C,3Dを設定する。ここでは、設定されたダイヤルゲージ3A,3B,3C,3Dについて、それぞれ、A,B,C,Dで示すこととする。
・ロータ4を回転させ、90°ピッチで同時にA,B,C,Dについての測定データを取得する。
・A,B,C,Dの4つのダイヤルゲージと上点T,右点R,下点B,左点LについてX−Y座標を作成する。
・90°回転した時の軸方向移動量差による影響をδ1,180°の場合をδ2,270°の場合をδ3とする。
・ダイヤルゲージA,B,C,Dについて測定された回転角度毎測定値を項目T,R,B,Lについて順次書き込んでいく。
・図5にX−Y座標の各項目への書き込み方法を示す。
【0034】
(1)初期値をX−Y座標の1T,2R,3B,4Lに示す位置(項目)に表示する。
【0035】
(2)カップリングを90°回転した時に得られた計測データ、すなわち回転角度測定値を1T,2R,3B,4Lに示す位置に表示する。
【0036】
(3)更にカップリングを90°回転した時に得られた回転角度測定値を1B,2L,3T,4Rに示す位置に表示する。
【0037】
(4)更にカップリングを90°回転した時に得られた回転角度測定値を1L,2T,3R,4Bに示す位置に表示する。
・以上のように各々の読み値を整理すると、図5に示すデータ表ができる。
・図5の(5)において、項目T,R,B,L各々の平均値を算出する。
【0038】
avT=(d1T+d2T+d3T+d4T)/4
avR=(d1R+d2R+d3R+d4R)/4
avB=(d1B+d2B+d3B+d4B)/4
avL=(d1L+d2L+d3L+d4L)/4
図4において、項目T,R,B,Lの値は次の通りとなる。
【0039】
T:(At+Bt+Ct+Dt+δ1+δ2+δ3)/4
R:(Ar+Br+Cr+Dr+δ1+δ2+δ3)/4
B:(Ab+Bb+Cb+Db+δ1+δ2+δ3)/4
L:(Al+Bl+Cl+Dl+δ1+δ2+δ3)/4
・図5(6)において、T位置を基準「0」として補正値を算出する。
【0040】
(T)=0
(R)=avR−avT
(B)=avB−avT
(L)=avL−avT
図4にT位置基準で補正した時の計算式を示す。
【0041】
T:0
R:(Ar+Br+Cr+Dr+δ1+δ2+δ3)/4−(At+Bt+Ct
+Dt+δ1+δ2+δ3)/4
B:(Ab+Bb+Cb+Db+δ1+δ2+δ3)/4−(At+Bt+Ct
+Dt+δ1+δ2+δ3)/4
L:(Al+Bl+Cl+Dl+δ1+δ2+δ3)/4−(At+Bt+Ct
+Dt+δ1+δ2+δ3)/4
上式を整理すると下式になる。
【0042】
T:0
R:(Ar+Br+Cr+Dr−At−Bt−Ct−Dt)/4
B:(Ab+Bb+Cb+Db−At−Bt−Ct−Dt)/4
L:(Al+Bl+Cl+Dl−At−Bt−Ct−Dt)/4
・T位置基準補正を行うことによってδ1,δ2,δ3の消去が可能になる。
【0043】
よって図4のデータ表に示すように、最終段のとおり4箇所平均後の測定面の値を算出され、この値には回転に伴う回転移動量の差による影響が消去される。
【0044】
図6に4点変位計測によるカップリング面状態計算ブロック線図を示す。上述したように、初期状態、90°回転時,180°回転時,270°回転時の計測と表示,平均処理,T位置基準補正を示す。各ステップについては図6内に詳述した。
【0045】
図7および図8に計測方法を示す。
【0046】
図9にセンタリング計測処理フローを示す。
【0047】
計測画面表示を行い(S1)、面4点同時計測するかを判定する。測定する場合には、ステップS4−S19に従って計測および所定の項目への表示を行い、面データ平均値およびT基準算出表示を行う(S20)。
【0048】
データ表示を行い(S39)、調整手順の表示を行う(S40)。データ表示は同データ表示(S41),面データ表示(S42)によって行い、調整手順表示は修正目標偏差計算(S43),調整量計算(S44)および修正後予想値表示(S45)によって行う。
【0049】
以上のステップによって、変位計測センサによって、カップリング5の被測定部位がロータ4の軸方向に対して垂直方向の側面に形成されたロータ4と一体回転するプレート7に係合し、かつカップリング5の被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、該4箇所の4点について90°毎に同時に変位を計測するステップ、
4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差,180°回転した時の軸方向移動量差,270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録手段に記録するステップ、
演算処理手段によって、記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行うステップから構成されるロータセンタリング計測方法が提供される。
【0050】
この場合において、記録手段に、4点90°毎の初期値および回転角度測定値を、4点と90°毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で記録することができる。
【0051】
また、変位計測センサによって、被測定部位がロータ4の軸方向に対して垂直方向の側面に形成されたロータ4と一体回転するカップリング5に係合し、かつ該カップリング5の被測定部位に対して90°の間隔を置いて4箇所配設され、該4箇所の4点について
90°毎に同時に変位を計測し、4点について90°毎に計測された変位を、4点と90°毎に、回転する特定の点で測定される4箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、90°回転した時の軸方向移動量差、180°回転した時の軸方向移動量差、270°回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として画面表示手段に画面表示するステップ、
演算処理手段によって、記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行った結果を前記画面表示に表示するステップから構成されるロータセンタリング計測方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例であるロータセンタリング計測装置の構成を示すブロック図。
【図2】ダイヤルゲージの配設状態を示す図。
【図3】回転によって面間隙が発生し、これに伴って軸方向移動量差が発生することを説明する図。
【図4】4点ダイヤルゲージによる計測方法,表示方法および演算処理方法を示し、各種データを示す図。
【図5】4点ダイヤルゲージによる計測ステップおよび演算処理ステップを示す図。
【図6】4点ダイヤルゲージによるカップリング面状態計算ブロック線図。
【図7】画面上において計測ステップ(その1)を示す図。
【図8】画面上において計測ステップ(その2)を示す図。
【図9】センタリング計測処理フローチャート図。
【符号の説明】
【0053】
1 多点同時計測処理部
2 PC側処理部
3,3A,3B,3C,3D ダイヤルゲージ
4 ロータ
5 カップリング
6,9 軸
7 プレート
8 他方のカップリング
10 測定棒
11 支持装置
12 多点同時計測装置
21 処理制御プログラム
22 計測データ演算処理部
23 通信処理部
26 記憶処理部
41 処理プログラム
45 演算処理部
46 演算結果記憶処理部
47 演算処理結果表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置において、
前記変位計測センサは、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して所定の角度の間隔を置いて所定の多箇所配設され、該所定の多箇所の各点について所定角度毎に同時に変位を計測し、
多点について所定角度毎に計測された変位を、多点と所定角度毎に、回転する特定の点で測定される多箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、第1の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第2の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第3の所定角度回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録する記録手段を設け、
前記演算処理手段は、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行うこと
を特徴とするロータセンタリング計測装置。
【請求項2】
請求項1において、前記記録手段は、前記多点所定角度毎の初期値および回転角度測定値を、多点と所定角度毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で記録することを特徴とするロータセンタリング計測装置。
【請求項3】
ロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して所定の角度の間隔を置いて所定の多点箇所配設され、該所定の多箇所の多点について所定角度毎に同時に変位を計測し、
多点について所定角度毎に計測された変位を、多点と所定角度毎に、回転する特定の点で測定される多箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、第1の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第2の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第3の所定角度回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として画面表示する画面表示手段を設け、該画面表示手段は、前記画面表示に、前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行った結果をも表示すること
を特徴とするロータセンタリング計測装置。
【請求項4】
請求項3において、前記画面表示手段は、前記多点所定角度毎の初期値および回転角度測定値を、多点と所定角度毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で画面表示することを特徴とするロータセンタリング計測装置。
【請求項5】
ロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置によるロータセンタリング計測方法において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して所定の角度の間隔を置いて所定の複数箇所配設され、該所定の多箇所の多点について所定角度毎に同時に変位を計測し、
多点について所定角度毎に計測された変位を、多点と所定角度毎に、回転する特定の点で測定される多箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、第1の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第2の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第3の所定角度回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として記録手段に記録し、
前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行うこと
を特徴とするロータセンタリング計測方法。
【請求項6】
請求項5において、前記記録手段に、前記多点所定角度毎の初期値および回転角度測定値を、多点と所定角度毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で記録することを特徴とするロータセンタリング計測方法。
【請求項7】
ロータの被測定部位の変位を計測する変位計測センサと、該変位計測センサで検出された測定データを電波にて送信する計測用無線データ通信手段と、送信された測定データを演算処理して前記ロータの変位量を求める演算処理手段を備えたロータセンタリング計測装置によるロータセンタリング計測方法において、
前記変位計測センサによって、前記被測定部位が前記ロータの軸方向に対して垂直方向の側面に形成された前記ロータと一体回転するカップリングに係合し、かつ該カップリングの前記被測定部位に対して所定の角度の間隔を置いて所定の複数箇所配設され、該所定の多箇所の多点について所定角度毎に同時に変位を計測し、
多点について所定角度毎に計測された変位を、多点と所定角度毎に、回転する特定の点で測定される多箇所測定値であって、軸方向移動量差の影響を含まない値を初期値とし、第1の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第2の所定角度回転した時の軸方向移動量差,第3の所定角度回転した時の軸方向移動量差の影響を含む測定値をそれぞれ回転角度毎測定値として画面表示手段に画面表示し、
前記演算処理手段によって、前記記録手段に記録された測定値を用いて各点における測定値について平均処理を行って平均処理値を求め、各点の内の1つを基準点として平均処理値を0にする補正を行い、基準点について適用した0補正を他の各点にも適用して各点における平均値から軸方向移動量差を消去する演算を行った結果を前記画面表示に表示すること
を特徴とするロータセンタリング計測方法。
【請求項8】
請求項7において、前記多点所定角度毎の初期値および回転角度測定値を、多点と所定角度毎のX−Y座標に、初期値および回転角度毎測定値を回転角度に従って順次書き込む形式で画面表示することを特徴とするロータセンタリング計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261677(P2008−261677A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103392(P2007−103392)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】