説明

ローラー洗浄装置

【課題】表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーに付着した異物等をコンパクトで安易な装置で良好に洗浄できるローラー洗浄装置を提供することことを目的とする。
【解決手段】
ローラー表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーを洗浄するローラー洗浄装置であって、前記ローラーの下面にローラーと微小隙間を有し、ローラーの下面の一部を覆う洗浄槽と、前記洗浄槽の内方に、洗浄液または圧縮空気のいずれかを噴出する少なくとも1個以上のスプレーノズルと、前記洗浄液を貯蔵する洗浄タンクと、前記洗浄タンクから洗浄槽へ洗浄液を送る搬送手段と、前記洗浄槽から洗浄済みの洗浄液を回収するドレン機構と、
を具備していることを特徴とするローラー洗浄装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラー表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーを洗浄する無駆動ローラーのローラー洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンバーティング業界等において、塗工液をフィルム等に塗工し、付加価値を高めた商品が数多く生産されている。この商品を生産する装置のローラーは、基材によって連れ回りをするローラー(以後フリーローラーと呼ぶ)が多く使用されている。
【0003】
このフリーローラーは、基材を搬送する上で、基材に傷をつけない様にローラーの表面粗さを細かくする必要がある。このローラーの表面粗さが細かい場合、基材の搬送速度を上げると、ローラー表面の粗さの粗いローラーと比べ、スリップが発生しやすいことが知られている。
【0004】
このスリップを防止する方法として、ローラーの表面にガラスビーズ等を高圧で吹きつけ、ディンプル状の凹部を形成したり、ローラー回転方向に溝を設けた溝付きローラーが使用されている。
【0005】
このような、ローラー表面にディンプル状の凹部や溝を有する場合、その凹部に異物が入り込むことがある。
【0006】
また、ローラー表面にディンプル状の凹部や溝が無い平坦なローラーでは、ローラー表面に異物が付着した場合、溶剤を含浸させたウエスにより容易に除去が可能であった。
【0007】
前記ディンプル状の凹部や溝を有するローラーの凹部に入り込んだ異物は、平坦なローラーの様に容易に除去することが出来ない。
【0008】
この異物が基材に転写され、異物欠陥となったり、ディンプル状の凹部や溝を塞がれる。そして、ディンプル状の凹部や溝を有するローラーの機能が失われてしまうことがある。
【0009】
このようなローラーの凹部や溝に入り込んだ異物を洗浄する方法として、ローラーを洗浄槽に浸し、超音波洗浄装置を用いてローラーを洗浄もするローラーの洗浄装置(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0010】
このローラーの洗浄装置は、グラビアロール等の中に入り込んだインキを洗浄する。また、洗浄するロールが単一ロール、且つ、装置が多少大きくても問題は発生しない。
【0011】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2001−286837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、フリーローラーの洗浄は、本数が多数あり、且つ、装置のスペースが制約されるという問題がある。さらに、スペースが制約されるため、煩雑な装置が使用できないと言う問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーに付着した異物等をコンパクトで安易な装置で良好に洗浄できるローラー洗浄装置を提供することことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、
ローラー表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーを洗浄するローラー洗浄装置であって、
前記ローラーの下面にローラーと微小隙間を有し、ローラーの下面の一部を覆う洗浄槽と、
前記洗浄槽の内方に、洗浄液または圧縮空気のいずれかを噴出する少なくとも1個以上のスプレーノズルと、
前記洗浄液を貯蔵する洗浄タンクと、
前記洗浄タンクから洗浄槽へ洗浄液を送る搬送手段と、
前記洗浄槽から洗浄済みの洗浄液を回収するドレン機構と、
を具備していることを特徴とするローラー洗浄装置である。
【0015】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、
前記洗浄槽に、ローラー軸方向に移動する機構が具備されていることを特徴とする請求項1記載のローラー洗浄装置である。
【0016】
次に、本発明の請求項3に係る発明は、
前記スプレーノズルから洗浄液または圧縮空気のいずれかを噴出させる切り替え機構が具備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラー洗浄装置である。
【0017】
次に、本発明の請求項4に係る発明は、
前記洗浄槽に、洗浄槽の内側から外側へ排気手段が具備されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のローラー洗浄装置である。
【0018】
次に、本発明の請求項5に係る発明は、
前記ローラーとの間に、ローラーに接触し、ローラー表面を拭き取る機構を具備されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のローラー洗浄装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のローラー洗浄装置は以上の構成からなるのでディンプル状の凹部や溝に入り込んだ異物を洗浄液で容易に掻き落すことができる。さらに、洗浄した洗浄液が洗浄装置の外部に漏れる量を抑えることができる。
【0020】
また、洗浄するローラー全体を短い時間で、洗浄超音波発生装置等の高価で煩雑な装置等を用いることなく、安価で、広いスペースを必要としない安易な装置でできる。
【0021】
さらに、洗浄液と圧縮エアーを切り替える機構を設けてあるため、洗浄液によりローラー表面を洗浄後、スプレーノズルより圧縮エアーをローラー表面に噴きかけることで、洗浄液を吹き落とし、ローラー表面を乾燥させることができる。
【0022】
また、ローラー表面を拭き取る機構が具備されているため、ローラー表面に残留した洗浄液や、異物を完全にふき取ることをできる。
【0023】
ローラー表面に残留した洗浄液が拭き取られるため、作業場等の雰囲気を汚染すること
がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のローラー洗浄装置を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図1〜図7は本発明の一実施例を示す。
【0025】
図1は、本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の一実施例の概略を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、本発明のローラー洗浄装置の、洗浄槽の形状はV字形の断面形状に形成されている。また、洗浄槽の長手方向端面下部には、ドレン3が設けられている。そして、洗浄済みの洗浄液はドレン3から排出される。
【0027】
前記洗浄槽の形状をV字形の断面形状とすることで、洗浄液をドレン3へと導きやすくなる。また、洗浄槽1の長手方向中央位置にスプレーノズル2が設けられている。
【0028】
次に、図2は、本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の一実施例の断面を示す断面概略図である。
【0029】
図2に示すように、ローラー8と洗浄槽1は均等な隙間1mmを持つように形成される。また、スプレーノズル2は、ローラー8の中心方向を向き、洗浄能力が高くなるように設けられている。さらに、洗浄槽1は、洗浄槽1の下部に取り付けられたスライドガイド4により、ローラー8と等間隔を保って移動することができる。
【0030】
次に、図3は、本発明のローラー洗浄装置の概略を説明する概略図で、(a)はローラー洗浄装置の側面を示す概略図であり、(b)はローラー洗浄装置の正面も示す概略図である。図3(a)(b)に示すようにベースの長手方向の両端にすべり軸受け7が設けられているガイド固定治具6が形成されている。また、ベースの横幅方向の中央位置にスライドガイド4をガイドするガイドレールが設けられている。
【0031】
前記ガイド固定治具6に設けられているすべり軸受け7は、上方部分と下方部分に分割可能となっている。このため、ローラー8をガイド固定治具6に載置する際には、すべり軸受け7の下方部分にローラー8の軸部を載置した後、すべり軸受け7の上方部分がローラー8の軸部の上方に載置され、固定される。このような構成とすることで、ローラー8は洗浄装置が洗浄中でも、容易に回転させることができる。
【0032】
次に、図4は本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の他の一実施例の概略を示す斜視図である。
【0033】
図4に示すように、この洗浄槽1は洗浄槽1の長手方向側面の略中央位置に排気口5が設けられている。このため、洗浄槽内を負圧に保つことが出来る。
【0034】
次に、図5は本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の断面を示す概略断面図である。図5に示すように圧送された洗浄液9または圧縮空気は洗浄槽内に設けられているスプレーノズル2により幅広に拡散される。また、スプレーされる範囲は、洗浄槽1の幅をカバー出来るように、ローラー8との距離、スプレーノズル2の数が適宜選定される。
【0035】
次に、図6は、本発明のローラー洗浄装置の概略を示す概略説明図である。図6に示すように、本発明のローラー洗浄装置は洗浄液タンク13に圧縮空気15を送り、洗浄液9を加圧する。加圧された洗浄液9は切替弁20を通り、洗浄槽1に取り付けられたスプレーノズル2よりローラー8に向かって放出される。洗浄済みの洗浄液は、洗浄槽1に取り付けられたドレン3より回収され、フィルタ12を介し、再度洗浄液タンク13に戻される。
【0036】
また、洗浄したローラーを乾燥させる場合は、切替弁20を切替え、圧縮空気15をスプレーノズル2に送り、ローラー8に噴きつける。洗浄槽1内が陽圧となるよう、排気口5より排気を行う。洗浄液9が溶剤の場合、排気口5からブロワ10を介してVOC処理装置へと接続される。洗浄液9の加圧圧力と、乾燥用圧縮空気圧力は、共に0.5MPa程度が、洗浄性が良い。
【0037】
また、洗浄槽1の長手方向もしくは、端面にある隙間部分に発塵性の無いウェスを挟むことで、洗浄槽1を回転もしくは、ローラー軸方向へ動かすことで、洗浄液による洗浄と同時に拭き取り洗浄も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の一実施例の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の一実施例の断面を示す断面概略図である。
【図3】本発明のローラー洗浄装置の概略を説明する概略図で、(a)はローラー洗浄装置の側面を示す概略図であり、(b)はローラー洗浄装置の正面も示す概略図である。
【図4】本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の他の一実施例の概略を示す斜視図である。
【図5】本発明のローラー洗浄装置の洗浄槽の断面を示す概略断面図である。
【図6】本発明のローラー洗浄装置の概略を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…洗浄槽
2…スプレーノズル
3…ドレン
4…スライドガイド
5…排気口
6…ガイド固定治具
7…すべり軸受け
8…ローラー
9…洗浄液
10…ブロワ
11…VOC処理装置
12…フィルター
13…洗浄液タンク
15…圧縮空気
17…圧縮空気源
19…圧縮空気長孔
20…切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー表面にディンプル状の凹部や溝を有するローラーを洗浄するローラー洗浄装置であって、
前記ローラーの下面にローラーと微小隙間を有し、ローラーの下面の一部を覆う洗浄槽と、
前記洗浄槽の内方に、洗浄液または圧縮空気のいずれかを噴出する少なくとも1個以上のスプレーノズルと、
前記洗浄液を貯蔵する洗浄タンクと、
前記洗浄タンクから洗浄槽へ洗浄液を送る搬送手段と、
前記洗浄槽から洗浄済みの洗浄液を回収するドレン機構と、
を具備していることを特徴とするローラー洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄槽に、ローラー軸方向に移動する機構が具備されていることを特徴とする請求項1記載のローラー洗浄装置。
【請求項3】
前記スプレーノズルから洗浄液または圧縮空気のいずれかを噴出させる切り替え機構が具備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラー洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽に、洗浄槽の内側から外側へ排気手段が具備されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のローラー洗浄装置。
【請求項5】
前記ローラーとの間に、ローラーに接触し、ローラー表面を拭き取る機構を具備されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のローラー洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−66524(P2009−66524A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237678(P2007−237678)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】