説明

ロール状光学フィルム及びロール状光学フィルムの製造方法

【課題】リターデーションムラが良好で、光学性能を均一に確保することができ、かつ、皺やブラックバンドの発生を防止することのできるロール状光学フィルム及びロール状光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ロール状光学フィルムは、膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上であって、幅方向中央部に巻き取り方向に沿ってナーリング加工が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステル樹脂から成るロール状の光学フィルム及び、その製造方法に関し、特に長期または高温時のロール状光学フィルム保管においても液晶表示装置に求められる光学品質を維持できるロール状光学フィルム及び、その製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置はその普及に伴い、さらなる薄型化、大型化、また高性能化がすすみ、それに伴って、保護フィルムであるセルロースエステルフィルムにおいても、高い性能が求められている。
更に一方で、品質が安定であり且つ大量生産可能な生産形態の開発手段も模索されている。従来より、セルロースエステルフィルムはロール状のフィルムとして一旦製造され、その後の偏光板を作製する工程で一部材として利用されることが一般的である。即ち、セルロースエステルフィルム製造と偏光板の加工とは同一ラインで行われることは無いことから、ロール状のフィルムは多かれ少なかれ、一旦保存する期間が必要となる。特許文献1には、溶液製膜法で製造されるセルロースエステルから成るフィルムをロール状に製造した際のブラックバンドと呼ばれるロールフィルムの変質について、フィルムにナーリング加工を施すことで改良する技術について開示してある。
一方、近年の積極的な環境保全への取り組みから残留溶媒を削減する製膜方法としては溶融流延製膜法が知られており、例えば特許文献2にはこの方法を用いて弾性率を1.5〜2.95kN/mとすることでセルロースエステルフィルムの湿度カールを改良する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、本発明者らの検討によればセルロースエステルフィルムのロールを保管する際に、ブラックバンドの異常が無い状態でも、液晶画像に影響を及ぼす画像ムラが生じてしまう課題の存在を突きとめた。特に、フィルムの製膜時にフィルムの製膜方向(MD方向)と製膜方向と直行方向(TD方向)の何れも延伸することで大きなレターデーションを形成した場合に問題が大きいことが分かった。更に、MD方向の延伸に起因する皺が保存中に目立つことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−99245号公報
【特許文献2】特開2007−2216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保存時に光学特性のムラが生じ難く、且つ延伸時での皺の発生によるフィルム面質の低下を抑制したロール状の光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上であって、幅方向中央部に巻き取り方向に沿ってナーリング加工が施されていることを特徴とするロール状光学フィルム。
2.膜厚が20μm〜60μmであることを特徴とする請求項1に記載のロール状光学フィルム。
3.弾性率が3.0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール状光学フィルム。
4.セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度あるいはブチリル基置換度をYとした時に、下記式(A)及び式(B)を満たすセルロースエステルからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロール状光学フィルム。
2.0≦X+Y≦3.0・・・式(A)
1.0≦Y≦2.5・・・式(B)
5.少なくとも1種以上のリン系劣化防止剤を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロール状光学フィルム。
6.延伸工程を含み膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上であって、幅方向中央部で巻き取り方向に沿ってナーリング加工を施したことを特徴とするロール状光学フィルムの製造方法。
7.溶融流延法によって製造することを特徴とする請求項6に記載のロール状光学フィルムの製造方法。
8.光学フィルム材料を溶融してフィルム状に押し出し冷却した後、前記ナーリング加工を行い、次いで延伸することを特徴とする請求項6又は7に記載のロール状光学フィルムの製造方法。
9.前記ナーリング加工を施した光学フィルムの表面に塗布によりハードコート層を形成し、その後、前記ナーリング加工を施した箇所に沿って前記光学フィルムを断裁することを特徴とする請求項6ないし8に記載のロール状光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、保存時に光学特性のムラが生じ難く、且つ延伸時での皺の発生によるフィルム面質の低下を抑制したロール状の光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のロール状光学フィルムを製造するための製造装置の一例を示した図である。
【図2】本発明のロール状光学フィルムの外観を示した斜視図である。
【図3】本発明のロール状光学フィルムの側断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明に係るロール状光学フィルムは、膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上で、位相差をコントロールした高機能フィルムであって、幅方向の中央部に巻き取り方向に沿ってナーリング加工が施されている。
本発明に係るロール状光学フィルムの弾性率は3.0以上であることが好ましい。弾性率を3.0以上とすることによって、フィルムの腰の強さが増す。このことで、ロール状に保管した状態で、特に巻きの芯側で大きくなるフィルムの寸法の変化等に伴い発生する力に対し光学特性を維持できることでより広範囲な保存条件での安定性が向上する。弾性率を3.0未満とした場合は、ロール状の保管した状態での外圧に対し微小な領域で塑性変形に伴う光学特性が変化し結果リターデーション値が変化してしまう。
【0010】
本発明に係るロール状光学フィルムは、主原料としてセルロースエステル、粒子状物質、可塑剤及びその他の添加剤が含まれている。以下、各材料について説明する。
《セルロースエステル》
本発明に用いるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであ
り、芳香族カルボン酸のエステルでもよく、特にセルロースの低級脂肪酸エステルである
ことが好ましい。
セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸
を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環
を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。
同じ置換度である場合、前記炭素数が多いとフィルムの腰がなくなるため、炭素数とし
ては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
本発明のセルロースエステルとしては、前記(A)および(B)を同時に満足するものが必要となるが、Yがプロピオニル基またはブチリル基であって、1.0≦Y≦2.5が好ましく、さらに1.1≦Y≦1.5が特にMD方向の延伸することで発生するロールの保存中で発生する皺を抑制することができ好ましい。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができ
る。
【0011】
セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で60000〜300000のも
のが好ましく、70000〜200000のものがさらに好ましい。本さらに用いられる
セルロースエステルは重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が4.0以下で
あることが好ましく、さらに好ましくは1.4〜2.3である。
セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマト
グラフィー(GPC)を用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量
平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3
本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株
)製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。
13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0012】
本発明のセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜45pp
mの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸
含有量が45ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加する傾向がある。
また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなる傾向がある。従
って1〜30ppmの範囲がより好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM D817−9
6に規定の方法により測定することができる。
本発明のセルロースエステル中の遊離酸含有量は、1〜500ppmであることが好ま
しい。上記の範囲であると、ダイリップ部の付着物の増加がなく、また破断しにくい。
さらに、本発明については、1〜100ppmの範囲であることが好ましく、さらに破
断しにくくなる。特に1〜70ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM D8
17−96に規定の方法により測定することができる。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、さらに
十分に行うことによって、残留アルカリ土類金属含有量、残留硫酸含有量、および残留酸
含有量を上記の範囲とすることができ好ましい。
また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧
溶媒、あるいは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることができ
、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することができる。
【0013】
また、本発明のセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものである
ことが好ましい。輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、さらに100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であるこ
とが好ましく、さらに100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
【0014】
《粒子状物質》
微粒子としては、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、2酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる2酸化珪素が特に好ましく用いられる。2酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50、シーホスターKE−P100(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。
粒子の大きさは、0.05μmから3.0μmの範囲であることが好ましい。
これらの粒子状物質は、単独でも二種以上併用しても使用できる。粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらの粒子状物質は光学フィルム全体の0.01〜5質量%含有させることができる。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
【0015】
《可塑剤》
本発明の光学フィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、本発明の効果を得る以外にも、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において好ましい。また、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステルよりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下できる点で好ましい。
【0016】
ここで、本発明において、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において、材料が加熱された温度を意味する。
セルロースエステル単独では、ガラス転移温度よりも低いとフィルム化するための流動性は発現されない。しかしながらセルロースエステルは、ガラス転移温度以上において、熱の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。フィルム構成材料を溶融させるためには、添加する可塑剤がセルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度を持つことが上記目的を満たすために好ましい。
【0017】
可塑剤としては、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマー等も好ましく用いられる。
【0018】
リン酸エステル誘導体としては、例えば、可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ジグリセリンエステル系可塑剤(脂肪酸エステル)、多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。この中でも多価アルコールエステル系可塑剤、ジカルボン酸エステル系可塑剤及び多価カルボン酸エステル系可塑剤が好ましい。また、可塑剤は液体であっても固体であってもよく、組成物の制約上無色であることが好ましい。熱的にはより高温において安定であることが好ましく、分解開始温度が150℃以上、さらに200℃以上が好ましい。添加量は前記のセルロースエステルフィルムに求められる諸性能のために調整でき、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択され、セルロースエステル樹脂100質量部に対して好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜30質量%である。特に5〜15質量%が好ましい。
【0019】
以下、本発明に用いられる可塑剤についてさらに説明する。具体例はこれらに限定されるものではない。
多価アルコールエステル系の可塑剤:具体的には、特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらに多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0020】
ジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0021】
多価カルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0022】
ポリマー可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は、1000〜500000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステル誘導体組成物の機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよく、他の可塑剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤、滑り剤及び滑り剤等を含有させてもよい。
【0023】
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが一般的には好ましい。具体的には特表平6−501040号に記載されている不揮発性リン酸エステルが挙げられ、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルや上記例示化合物の中ではトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。揮発成分が上記可塑剤の熱分解によるとき、上記可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、フィルム形成材料の溶融温度よりも高いことが求められる。可塑剤は、上記目的のために、セルロースエステルに対する添加量が他のフィルム構成材料よりも多く、揮発成分の存在は得られるフィルムの品質に与える劣位となる影響が大きいためである。熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することができる。
【0024】
《アクリル系重合体》
本発明の光学フィルムは、アクリル系重合体を含有しても良い。なお、ここでアクリル系重合体にはメタクリル系重合体も含まれる。光学フィルムにおける樹脂のうち全量をアクリル系重合体としても良いし、他の樹脂と併用してもよく、その含有率は0〜100%の範囲で任意に選択できる。本発明ではセルロースエステルと併用することが最も好ましい。
【0025】
本発明に用いられるアクリル系重合体としては、セルロースエステルフィルムと併用した場合、機能として延伸方向に対して負の複屈折性を示すことが好ましく、特に構造が限定されるものではないが、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られた重量平均分子量が500以上1000000以下である重合体を、適宜選択したものであることが好ましい。
アクリル系重合体の適正な分子量範囲が上記の通りであるが、30質量%以上含有させる場合は、セルロースエステルとの相溶性の点から重量平均分子量が80000〜1000000であることが好ましい。
本発明のアクリル系重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0026】
アクリル系重合体は、後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒にあらかじめ溶解した後ドープ液に添加することができる。
〈ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物〉
本発明の光学フィルムがセルロースエステルフィルムの場合は、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことを特徴とする。
エステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
本発明においては、エステル化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
【0027】
本発明のエステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクローあるいはトース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。
具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエートがより好ましく、サッカロースオクタベンゾエートが特に好ましい。
市販品としてはモノペットSB(第一工業製薬(株)製)等を使用することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、位相差値の変動を抑制して、表示品位を安定化するために、本発明のエステル化合物を、セルロースエステルフィルムの1〜30質量%含むことが好ましく、特には、5〜30質量%含むことが好ましい。
【0028】
《高分子材料》
本発明の光学フィルムは、セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この場合は、上述のその他添加剤として含むことができる。
【0029】
《光安定剤》
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、下記一般式(4)で表される化合物が含まれる。
【化4】

上記一般式(4)中、R1及びR2は、Hまたは置換基である。ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン光安定剤の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれる。
【化5】

【0030】
これらのヒンダードアミン系耐光安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、またこれらヒンダードアミン系耐光安定剤と可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用しても、添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、セルロースエステル樹脂100質量部に対して好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。
【0031】
《紫外線吸収剤》
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0032】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0033】
さらに、本発明の光学フィルムには、帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
本発明の光学フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0034】
本発明の光学フィルムの膜厚は、20μm以上60μm以下の薄膜であることが好ましい。
厚さの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚さは用途により適宜選定することができる。
本発明の光学フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
本発明の光学フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板保護フィルムとして特に好ましく用いることができる。
【0035】
《酸捕捉剤》
酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等の組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び下記一般式(6)で表される他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
【化6】

上記一般式(6)中、nは0〜12である。用いることができるさらに可能な酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
【0036】
《酸化防止剤》
本発明においては、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために、セルロースエステル等の樹脂混合物が酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明において、好ましい酸化防止剤は、リン系又はフェノール系酸化防止剤であり、少なくとも1種以上のリン系酸化防止剤(りん系劣化防止剤)を含有することが好ましい。特にリン系とフェノール系酸化防止剤を同時に組み合わせるとより好ましい。
【0037】
以下、本発明において好適に用いることができる酸化防止剤について説明する。
〈フェノール系酸化防止剤〉
本発明においては、下記一般式(AO1)で表されるフェノール系の酸化防止剤を使用することができる。
【化7】

一般式(AO1)中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているか又は置換されて
いないアルキル置換基を表す。フェノール系酸化防止剤の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール系化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、“Irganox1076”及び“Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0038】
〈リン系酸化防止剤〉
本発明において用いることができるリン系酸化防止剤としては、ホスファイト(phosphite)、ホスホナイト(phosphonite)、又は、ホスフィナイト(phosphinite)等のリン系化合物を使用することができる。
リン系酸化防止剤としては、従来既知の化合物を用いることができる。例えば、特開2002−138188号、特開2005−344044号段落番号0022〜0027、特開2004−182979号段落番号0023〜0039、特開平10−306175号、特開平1−254744号、特開平2−270892号、特開平5−202078号、特開平5−178870号、特表2004−504435号、特表2004−530759号、および特願2005−353229号公報の明細書中に記載されているものが好ましい。
好ましいリン系化合物としては、特許公報特開2008−257220の21項に記載のようなものが好ましく使用されるがこれらに限定されない。
【0039】
上記に加えて、本発明において用いることができるリン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト等のホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイト等のホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン系化合物;等が挙げられる。
上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”及び“ADK STAB 3010”、“ ADK STAB 2112”、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、 “IRGAFOS 168”、堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されている。
【0040】
〈その他の酸化防止剤〉
また、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等の耐熱加工安定剤、特公平08−27508号記載の3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン系化合物、3,3′−スピロジクロマン系化合物、1,1−スピロインダン系化合物、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンオキシド、チオモルホリンジオキシド、ピペラジン骨格を部分構造に有する化合物、特開平03−174150号記載のジアルコキシベンゼン系化合物等の酸素スカベンジャー等が挙げられる。これら酸化防止剤の部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0041】
次に、本発明のロール状光学フィルムの製造方法として溶融流延法について説明する。
《溶融流延法》
光学フィルムの製造方法は、例えば図1に示す製造装置によって製造することができる。製造装置は、少なくともセルロースエステル、粒子状物質、可塑剤及びその他の添加剤を混合溶融した溶融ペレットを加熱溶融した状態で押し出す押出機1と、押し出した溶融ペレットを濾過して異物除去を行う濾過装置2と、再度混合するスタティックミキサー3と、流延ダイ4と、冷却固化してフィルムとする第1〜第3冷却ロール5、7、8と、フィルムを剥離する剥離ロール9と、剥離したフィルムを延伸する延伸装置12と、延伸後のフィルムにナーリングを施すナーリング装置14,15と、フィルムを巻取る巻取り装置16等、を備える。
【0042】
第1冷却ロール5上には、流延ダイ4から溶融状態で押し出されて冷却固化され、第2冷却ロール7及び第3冷却ロール8上でさらに冷却固化される。また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5上面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。
また、剥離ロール9によって剥離され冷却固化された未延伸のフィルム10はダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て延伸装置12に導かれる。延伸装置12では、フィルムの両端部を把持して幅方向に延伸することで、フィルム中の分子が配向される。延伸後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナーリング加工(エンボス加工)をフィルム両端部に施して、巻取り装置16で巻取られる。巻取り装置16によって巻取ることで、光学フィルム(元巻き)中のハリツキや擦り傷の発生を防止できる。ナーリング加工の方法は、凹凸のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用できないので、切除されて辺材として再利用される。
【0043】
以下、溶融流延法について詳細に説明する。
〈溶融ペレット製造工程〉
溶融押出に用いるセルロースエステル、粒子状物質、可塑剤及びその他の添加剤の混合物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥光学フィルムを形成するポリマーや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特に光学フィルムを形成するポリマーは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で1時間以上乾燥し、水分率を500ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、光学フィルムを形成するポリマーに含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
真空ナウターミキサなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿した窒素ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0044】
〈溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程〉
上述のように作製したペレットを1軸や2軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、濾過装置により濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体または冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度をあげたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0045】
〈延伸工程〉
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、さらに少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することが好ましい。延伸によりスジの鋭さが緩やかになり高度に矯正することができるのである。
好ましくは縦(フィルム搬送方向、MD方向とも呼ぶ)、横(巾方向、TD方向とも呼ぶ)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが好ましい。
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。特に光学フィルムが、偏光板保護フィルムを兼ねる位相差フィルムの場合は、延伸方向を巾方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。
巾方向に延伸することで光学フィルムの遅相軸は巾方向になる。一方、偏光フィルムの透過軸も通常巾方向である。偏光フィルムの透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、良好な視野角が得られるのである。
【0046】
本発明の光学フィルムを光学補償機能を有するフィルムとして用いる場合は、所望のリターデーション特性が得られるように温度、倍率を選ぶことができる。
通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.3〜2.0倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg−10℃〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行なわれる。
延伸は、幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
【0047】
上記の方法で作製した光学フィルムのリターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、または横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
本発明の光学フィルムの面内リターデーション(Ro)、厚み方向リターデーション(Rt)は適宜調整することができ、Roは0〜300nm、Rtは40nm〜350nmとすることが好ましい。
【0048】
なお、フィルムの遅相軸方向の屈折率Nx、進相軸方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nz、フィルムの膜厚をd(nm)とすると、
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt={(Nx+Ny)/2−Nz}×d
として表される。(測定波長590nm)
リターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±2nm以下である。
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
【0049】
本発明の光学フィルムは、隣接する山の頂点から谷の底点までの高さが300nm以上であり、傾きが300nm/mm以上の長手方向に連続するスジがないことが好ましい。
スジの形状は、表面粗さ計を用いて測定したもので、具体的には、ミツトヨ製SV−3
100S4を使用して、先端形状が円錐60°、先端曲率半径2μmの触針(ダイヤモンド針)に測定力0.75mNの加重をかけながら、測定速度1.0mm/secでフィルムの巾方向に走査し、Z軸(厚み方向)分解能0.001μmとして断面曲線を測定する。
この曲線から、スジの高さは、山の頂点から谷の底点までの垂直距離(H)を読み取る。スジの傾きは、山の頂点から谷の底点までの水平距離(L)を読み取り、垂直距離(H)を水平距離(L)で除して求める。
【0050】
〈ナーリング加工工程〉
本発明では、ロール状フィルムの保存時の光学品質を効果的に防止する観点から、請求項1で示すように、フィルムの中央部にナーリング部を形成することを特徴としている。
ナーリング加工は、図2及び図3に示すように、長尺状フィルムを巻き取る前に、巻き取られたフィルム101,101同士の裏面と表面が完全に面同士密着するのを防止するために、フィルム101の少なくとも幅方向中央部に(エンボス加工により)微小の連続した凹凸からなる一定の幅に文様102をつけるものである。これにより、巻き取ったフィルム同士が完全に接着して、あるいは、部分的に接着してフィルムの表面の状態に影響を与え、故障を引き起こすのを防ぐ役割を果たす。また、特に本発明では、延伸工程を活用し大きなリターデーションを発生させたフィルムがロール状で保存された場合に発生するRtムラが良好で、光学性能の均一化を図ることができる。
ここで、フィルムの幅方向中央部とは、図2に示すように、幅方向の全体の長さを「100」とした場合に、中心位置「50」から「25」ずつ離れた範囲内を言う。より好ましくは「50」の位置にナーリング加工を施す。また、ナーリング加工は中央部に1カ所のみではなく、幅方向の全体の長さを3等分した箇所にそれぞれ形成しても良い。さらに、中央部のみではなく、幅方向両端部にもそれぞれ形成しても良い。また、1カ所に加工するエンボスの条数は、1条でも2条でもそれ以上であっても良い。
【0051】
エンボスの幅は5〜50mmが好ましく、より好ましくは10〜25mmである。
また、エンボスの高さは、下記のように定義される。
エンボス高さ(a:μm)のフィルム膜厚(d:μm)に対する比率X(%)=(a/d)×100
本発明においては、X=1〜35%の範囲であることが好ましく、5%〜25%が更に好ましく、10%〜15%が特に好ましい。
具体的には、エンボス加工の凹凸の高さは1〜40μmであることが好ましく、更に2〜35μmであることが好ましく、7〜30μmであることが特に好ましい。
【0052】
エンボス加工は高すぎると巻き乱れや、ロール端部の盛り上がりなど、フィルム端部にひずみを与えてしまうため好ましくない。又、低すぎると配向の乱れを抑制する効果に乏しくなる。樹脂フィルム厚みの1〜35%の範囲で高さを調節することが好ましい。
【0053】
エンボス加工の各条の突起として観察される部分のエンボス加工部全体に対する面積の割合が、15〜50%程度が好ましく、これらの各条に含まれる突起が不連続なものである場合にはその数は1cm2あたり10〜30個程度であるのが好ましい。
【0054】
エンボス加工は、通常、金属やゴムなどのバックロール上でフィルムに刻印の刻まれたエンボスリングを押し当てることで、加工できる。加工は常温でも可能であるが、Tg+20℃以上、融点(Tm)+30℃以下で加工するのが好ましい。また別の方法として、特開2009−12429で記載されるようにレーザー光の照射によりエンボス部を形成しても良い。
以上のナーリング加工後、例えば、幅方向中央部のナーリング加工を施した箇所に沿ってフィルムを断裁して分割し、分割したフィルム毎に巻取り装置で巻取る。ここで、2カ所にナーリング加工を施した場合には、各箇所に沿ってフィルムを断裁して3分割し、それぞれロール状に巻取るようにすれば良い。
【0055】
なお、ナーリング加工は、延伸工程後に行うとしたが、冷却ロールで冷却した後、延伸工程前に行っても良い。延伸工程前にナーリング加工を行うことによって、延伸工程後にナーリング加工を行う場合に比して、リターデーションムラがより良好となる点で好ましい。
【0056】
〈清掃設備〉
本発明で使用する製造装置には、ベルトおよびロールを自動的に清掃する装置を付加させることが好ましい。清掃装置については特に限定はないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール、粘着ロール、ふき取りロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、レーザーによる焼却装置、あるいはこれらの組み合わせなどがある。
清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0057】
《光学フィルムの用途》
なお、本発明の光学フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の各種ディスプレイ、特に液晶ディスプレイに用いられる機能フィルムとして使用することができ、具体的には、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムに使用することができる。
【0058】
偏光板保護フィルムとして使用する場合には、偏光子の両面を本発明の光学フィルムで挟んだ構造とする。このような構造をなす偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムをアルカリ鹸化処理し、処理したフィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。本発明の偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光子であって、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光子の面上に、本発明のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
本発明の製造方法により製造される長尺状光学フィルムは、長尺状の偏光子(偏光フィルム)とアルカリケン化処理を施して貼合することができるため、1500m、2500m、5000mとより長尺化する程偏光板製造の生産的効果が高まる。
【0059】
また、偏光板保護フィルム製造に際し、フィルムの延伸後でナーリング加工を施した後に塗布により、帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を形成しても良い。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことができる。各層を形成した後、ナーリング加工を施した箇所に沿ってフィルムを断裁して、分割したフィルム毎に巻取り装置で巻取る。
【0060】
〈液晶表示装置〉
上記偏光板は、MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPS(In−Plane Switching)モード等に用いることができる。
液晶表示装置はカラー化および動画表示用の装置として応用され、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
《セルロースエステルの合成》
特表平6−501040号公報の例Bを参考にして、プロピオン酸、酪酸、酢酸の添加量を調整して、アセチル基置換度、プロピオニル基置換度、ブチリル基置換度を表1のように変化させた7種類のセルロースエステルを合成した。
【表1】

得られたセルロースエステルの置換度は、ASTM−D817−96に基づいて算出した。
【0062】
《溶融法によるセルローステステルフィルム(試料101)の作製》
80℃で6時間乾燥済み(水分率200ppm)のセルロースエステルCE−1、100質量部、添加剤としてC−1を10質量部、紫外線吸収剤LA−31(ADEKA(株)製)1.2質量部、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.5質量部、アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製)0.08質量部、SumilizerGS(住友化学(株)製)0.2質量部、二酸化珪素微粒子(AEROSIL−R972V)0.4質量部を真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながらさらに乾燥した。更に、得られた混合物を、二軸式押出機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
なお、添加剤のC−1とはOT化合物(特開2008−15413号公報の[化70]54を使用)であり、その他、下記表2に記載のC−2とはトリアジン(特開2006−2026の[化4](1−2)を使用)、C−3はグリセリンテトラカプリレートである。
【0063】
セルロースエステルフィルムの製膜、延伸は図1に示す製造装置で行った。
ペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから表面温度が100℃の第1冷却ロール上に溶融温度245℃でフィルム状に溶融押し出し、初期膜厚80μm、幅1.36mのキャストフィルムを毎分30mの長さで3000m得た。尚、この際に第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
得られたフィルムは、先ずロール周速差を利用した延伸機によって195℃で製膜方向に25%の倍率で延伸速度1500%/minで延伸した。次に、予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターにて横方向へ145℃で68%の倍率で延伸速度400%/minで延伸を行い、その後30℃まで冷却し、クリップから開放し、両端部を各々100mmスリット加工により切除した。その後、両端部とフィルムの中央部に温度270℃押し圧0.04MPaで幅15mmでナーリング加工を施し凹凸部を形成し、フィルム厚38μmで巾2.08m、長さ4000mのセルロースエステルフィルムロールの原反を得た。この時、ナーリング高さはフィルム厚に対し両端部のナーリングで15%、中央部のナーリングで25%とした。
【0064】
次に、セルロースエステル、製膜時のフィルム巾と厚さ、更に延伸倍率、中央部のナーリング加工の有無を表2のように変更した以外は、上記セルロースエステルフィルム(試料101)と同様にして、セルロースエステルフィルムの元巻き(試料102)〜(試料112)を得た。更に、比較として特開2007−2216の実施例1に試料18に近い条件によりセルロールエステルフィルムの元巻きを(試料113)として得た。なお、試料108は、冷却してフィルムを得た後、延伸工程前にナーリング加工を施した。
【0065】
《評価》
得られたフィルム(試料101〜試料113)について、以下の評価方法を用いて各項目について評価を行った。また、以下の評価は全て作製元巻きを45℃50%の環境で4週間保管した後に行った。
〈リターデーション〉
ロール状のフィルムの外側から50mの場所のフィルムを採取し、幅手方向に対し中央部から端部に向けて3cm毎にリターデーションを測定した。この時、測定部がナーリング部と重なる時は測定は行わなかった。得られたリターデーションの平均をそれぞれR0、Rtとした。
次に、ロール状フィルムの巻き芯より巻き外に向けて20mから1000mまで50m毎の場所のフィルムを採取し同様な測定を行い、得られたリターデーションの平均を求めた。尚、測定の前に採取した試料は、25℃55%RHに5時間以上調湿した。
〈R0、Rt〉
上記測定により求められたR0、Rtを表2に示した。
【0066】
〈Rtムラ〉
幅手方向のムラは、幅手方向に測定したRtの最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で数値化した。長手方向のムラは、各々の試料の平均のRtに対し最大値と最小値の差を平均値で割り百分率で数値化した。結果を表2に示した。
【0067】
〈MD延伸皺〉
ロール状のフィルムを全長にわたり目視検査し、MD方向に観察される皺の数をカウントし、下記基準で評価した。
◎:皺の発生がない
○:皺が1本〜2本観察された
△:皺が3本〜5本観察された
×:皺が10本以上観察された
MD延伸皺は、△以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0068】
〈ナーリング部変形〉
ロール状のフィルムを全長にわたり目視検査し、中央部のナーリング部を目視観察し、凹凸部でのフィルムの変形をカウントし、下記基準で評価した。
3:変形がない
2:皺が1箇所〜3箇所観察された
1:皺が3箇所〜10箇所以上観察された
0:皺が10箇所以上観察された
【0069】
〈ブラックバンド〉
ロール状のフィルムを観察し、巻きの状態からブラックバンドの発生を下記基準で評価した。
○:ブラックバンドが見えない
△:ブラックバンドがハンドランプで照らし僅かに見える
×:ブラックバンドがはっきり見える
ブラックバンドは、△以上の評価であれば、実用上問題ない。
【0070】
【表2】

表2に記載の通り、本発明に関わる試料では、リターデーションのムラが小さく、MD延伸で発生する皺も小さく、かつ、ロールのブラックバンドも良好であることが判る。
また、本発明の中においても試料105を比較することで、延伸後の膜厚が60μm以下のロールフィルムでは特に長手方向のリターデーションのムラが良好であることが判る。
更に、中央ナーリングを延伸前に加工した試料108では、延伸後にナーリング加工を施したその他の試料に比べてリターデーションのムラが極めて良好であることが示されている。また、試料109、試料110、試料101及び試料111からセルロースエステルの置換度を本発明の好ましいセルロースエステルの置換度にすることで、MDリターデーションのムラに加えて、特にMD延伸が原因で発生する皺と、ブラックバンドに優れているが示されている。
一方、中央ナーリング加工を施されていない試料102では、試料113で観察されるロールフィルムのブラックバンドは観察されないが、リターデーションムラが大きく劣化していることが判った。
更に、比較として特開2007−2216の実施例1に試料18に近い条件により作製した試料113では、リターデーションムラ、MD延伸が原因で発生する皺、及びブラックバンドの全てで品質が劣っていた。
【0071】
[実施例2]
試料101に対し、下記表3に記載する内容を変更する以外は同様にしてロールフィルム試料201〜206を作製した。その後、試料201〜206を45℃50%の環境で4週間保管した。
【0072】
《ハードコート層・反射防止層フィルムの作製》
4週間保存した試料を用いて、その一方の面にハードコート層および反射防止層を形成し、ハードコート付き反射防止フィルムロール試料201〜試料206を作製した。
〈ハードコート層〉
下記ハードコート層組成物を乾燥膜厚3μmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥した。次に高圧水銀ランプ(80W)にて150mJ/cmの条件で硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層の屈折率は1.50であった。
〈ハードコート層組成物(HC−1)〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(2量体以上の成分を2割程度含む)
108質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 180質量部
酢酸エチル 120質量部
【0073】
〈中屈折率層〉
前記ハードコートフィルムのハードコート層の上に、下記中屈折率層組成物を押し出しコーターで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。
この時、指触乾燥終了(塗布面を指で触って乾燥していると感じる状態)までは非接触フローターを使用した。非接触フローターとしては、ベルマッティク社製の水平フロータータイプのエアータンバーを使用した。
フローター内静圧は9.8kPaとし、約2mm幅手方向に均一に浮上させて搬送した。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を、130mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層を有する中屈折率層フィルムを作製した。
この中屈折率層フィルムの中屈折率層の厚さは84nmで、屈折率は1.66であった。
【0074】
〈中屈折率層組成物〉
20%ITO微粒子分散物(平均粒径70nm、イソプロピルアルコール溶液)
100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 6.4質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1.6質量部
テトラブトキシチタン 4.0質量部
10%FZ−2207(日本ユニカー社製、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液) 3.0質量部
イソプロピルアルコール 530質量部
メチルエチルケトン 90質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 265質量部
【0075】
〈高屈折率層〉
前記中屈折率層の上に、下記高屈折率層組成物を押し出しコーターで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。この時、指触乾燥終了(塗布面を指で触って乾燥していると感じる状態)までは非接触フローターを使用した。
非接触フローターは中屈折率層形成と同じ条件とした。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を130mJ/cm照射して硬化させ、高屈折率層を有する高屈折率層フィルムを作製した。
【0076】
〈高屈折率層組成物〉
テトラ(n)ブトキシチタン 95質量部
ジメチルポリシロキサン(信越化学社製 KF−96−1000CS) 1質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン(信越化学社製 KBM503)
5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1750質量部
イソプロピルアルコール 3450質量部
メチルエチルケトン 600質量部
尚、この高屈折率層フィルムの高屈折率層の厚さ30μm、屈折率は1.82であった。
【0077】
〈低屈折率層〉
最初にシリカ系微粒子(空洞粒子)の調製を行った。
(シリカ系微粒子P−1の調製)
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量部のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量部のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02質量部のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。
その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。
添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量部のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量部)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量部になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。
上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温したあと、エチルシリケート(SiO228質量部)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。
次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量部のシリカ系微粒子の分散液を調製した。
このシリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さ、平均粒径、MOx/SiO2(モル比)、及び屈折率を下記表3に示す。
【表3】

【0078】
ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定し、屈折率は標準屈折液としてCARGILL製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定した。
〈粒子の屈折率の測定方法〉
(1)粒子分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率をコロイド粒子の屈折率とする。
【0079】
〈低屈折率層の形成〉
Si(OC254を95mol%、C37−(OC3624−O−(CF22−C24−O−CH2Si(OCH33を5mol%で混合したマトリックスに対して、平均粒径60nmの上記シリカ系微粒子P−1を35質量部添加し、1.0N−HClを触媒に用いて、さらに溶媒で希釈した低屈折率コーティング剤を作製した。
上記活性線硬化樹脂層または高屈折率層上にダイコーター法を用いてコーティング溶液を膜厚100nmで塗布し、120℃で1分間乾燥したあと、紫外線照射を行うことにより、屈折率1.37の低屈折率層を形成した。
【0080】
《評価》
作製した試料201〜試料206について、40℃50%の環境での保管をせずに実施例1と同様の項目について評価した。また、硬度ムラについて新たに評価を加えた。
〈硬度ムラ〉
ハードコート層、反射防止層を作製する前の40℃50%の環境での保管していた状態での巻き芯から50mの箇所でのフィルムを採取した。次に、異なる硬度の鉛筆を用い、1kg荷重下でJIS K5400で示される試験法に基づき硬度試験を行った。各々の偏光板の反射防止フィルムの幅手方向に10分割し、各位置での鉛筆硬度を測定し、下記の評価基準で評価した。
◎:各位置での表面硬度にムラが全く認められない
○:各位置での表面硬度にムラが僅かに認められる
×:各位置での表面硬度にムラが認められる
硬度ムラは○以上の評価であれば、実用上問題ない。
結果を下記表4に示す。
【0081】
【表4】

表4に記載の通り、本発明に関わる試料では、リターデーションムラが小さくMD延伸で発生する皺も小さく、更に硬度ムラが良好であることが判る。しかし、中央ナーリング加工を施されていない試料202では、リターデーションムラに加え硬度ムラが劣化していることが判る。
【符号の説明】
【0082】
1 押出機
2 濾過装置
3 スタティックミキサー
4 流延ダイ
5 第1冷却ロール
6 タッチロール
7 第2冷却ロール
8 第3冷却ロール
9 剥離ロール
10 未延伸のフィルム
11 ダンサーロール
12 延伸装置
13 スリッター
14 エンボスリング
15 バックロール
16 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上であって、幅方向中央部に巻き取り方向に沿ってナーリング加工が施されていることを特徴とするロール状光学フィルム。
【請求項2】
膜厚が20μm〜60μmであることを特徴とする請求項1に記載のロール状光学フィルム。
【請求項3】
弾性率が3.0以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール状光学フィルム。
【請求項4】
セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度あるいはブチリル基置換度をYとした時に、下記式(A)及び式(B)を満たすセルロースエステルからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロール状光学フィルム。
2.0≦X+Y≦3.0・・・式(A)
1.0≦Y≦2.5・・・式(B)
【請求項5】
少なくとも1種以上のリン系劣化防止剤を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロール状光学フィルム。
【請求項6】
延伸工程を含み膜厚方向のリターデーション値(Rt値)が40以上であって、幅方向中央部で巻き取り方向に沿ってナーリング加工を施したことを特徴とするロール状光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
溶融流延法によって製造することを特徴とする請求項6に記載のロール状光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
光学フィルム材料を溶融してフィルム状に押し出し冷却した後、前記ナーリング加工を行い、次いで延伸することを特徴とする請求項6又は7に記載のロール状光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ナーリング加工を施した光学フィルムの表面に塗布によりハードコート層を形成し、その後、前記ナーリング加工を施した箇所に沿って前記光学フィルムを断裁することを特徴とする請求項6ないし8に記載のロール状光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−237526(P2010−237526A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86538(P2009−86538)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】