説明

ワッシャ、発泡成形体、並びに発泡成形体の製造方法及び取付構造

【課題】部材に設けられる発泡成形体取付用の突起の突出高さを比較的小さくすることが可能であり、且つ、発泡成形体との結合強度を簡易な構成にて十分に高くすることが可能なワッシャと、このワッシャを備えた発泡成形体と、この発泡成形体の製造方法と、この発泡成形体の部材への取付構造とを提供する。
【解決手段】ワッシャ1は、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体10に埋設される、該発泡成形体10を部材20に取り付けるためのものである。ワッシャ1は、全体として板状のものである。ワッシャ1は、部材20に設けられた突起21が挿通される突起挿通孔3を有している。突起挿通孔3は、ワッシャ1を厚さ方向に貫通している。ワッシャ1は、突起挿通孔3の周縁部よりも外周側が発泡合成樹脂中に埋没するように発泡成形体10に埋設される。ワッシャ1の外周側に、該ワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtが該ワッシャ1の突起挿通孔3の周縁部における厚さよりも大きくなっている、高さ増大部4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体に埋設され、該発泡成形体を部材に取り付けるのに用いられるワッシャと、このワッシャを備えた発泡成形体と、この発泡成形体の製造方法と、この発泡成形体の部材への取付構造とに関する。
【0002】
なお、本発明において、発泡成形体が取り付けられる部材の前面とは、該発泡成形体との対向面をいい、裏面とは、該発泡成形体と反対側の面をいう。また、発泡成形体及びワッシャの前面とは、該発泡成形体が部材に取り付けられた状態における該部材と反対側の面をいい、裏面とは、該部材側の面という。
【背景技術】
【0003】
自動車のドアトリムには、側面衝突(側突)時の衝撃エネルギー吸収(Energy Absorption:EA)のために、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなる衝撃吸収材(以下、EA材と略すことがある。)が取り付けられている。このドアトリムに対し発泡合成樹脂製EA材を取り付ける方法として、特許文献1(特開2011−51162号公報)には、第9,10図に示す構造が記載されている。第9図は、特許文献1の図6に記載されたEA材の斜視図であり、第10図は、特許文献1の図7に記載されたEA材取付構造の断面図である。
【0004】
この従来例では、発泡合成樹脂製EA材100にワッシャ110が一体に設けられている。このワッシャ110は、第9,10図の通り、内孔111aを有する円筒状の筒部111と、該筒部111の筒軸心線方向の両端側にそれぞれ設けられたフランジ部112,112とを備えている。EA材100は、本体部101と、ワッシャ110が配設された取付部102とを有している。取付部102は、本体部101の裏面(ドアトリム120側の面)に沿って該本体部101の側面から側方へ延出した、該本体部101よりも厚さが小さい延出部、又は、該本体部101の前面(ドアトリム120と反対側の面)から裏面側へ凹陥した凹所等よりなる。
【0005】
EA材100の発泡成形時に、成形用金型(図示略)内にワッシャ110を取り付けておき、該金型内で発泡合成樹脂原液を発泡させることにより、ワッシャ110が該発泡合成樹脂中に埋没し、EA材100と一体化される。
【0006】
第10図の通り、ドアトリム120からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる突起121が突設されている。EA材100をドアトリム120に取り付ける場合、この突起121をワッシャ110の筒部111の内孔111aに挿入し、その先端を該内孔111aから突出させる。次いで、この突起121の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、第10図の通り突起121の先端を拡径させて(かしめて)フランジ状の拡大部121aを形成する。これにより、突起121が内孔111aから抜け出し不能となり、EA材100がドアトリム120に固定される。
【0007】
特許文献2(特開2005−207524号公報)には、EA材の取付部に平板状のワッシャ(特許文献2では補強片と称されている。)を設けることが記載されている。特許文献2では、EA材の取付部に、ドアトリムの突起が挿通される取付孔が設けられている。平板状ワッシャにも、突起挿通用の孔(突起挿通孔)が設けられている。この突起挿通孔は、平板状ワッシャを厚さ方向に貫通している。平板状ワッシャは、この突起挿通孔が取付孔と同軸状に重なるように、EA材の取付部に埋設されている。特許文献2では、この平板状ワッシャは、EA材の取付部の内部から本体部の内部まで延在している。
【0008】
特許文献2には、この平板状ワッシャのうちEA材の発泡合成樹脂中に埋没する部分に、該平板状ワッシャを厚さ方向に貫通する貫通孔を設けておき、EA材との一体成形時にこの貫通孔に発泡合成樹脂を入り込ませることにより、該平板状ワッシャとEA材との一体性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−51162号公報
【特許文献2】特開2005−207524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、ワッシャ110は、筒部111を有しており、厚さが大きなものとなっている。そのため、この筒部111の内孔111aに挿通されるドアトリム120の突起121も、この筒部111の筒軸心線方向の長さ分だけ、突出高さを大きくする必要がある。しかしながら、突起121の突出高さが大きくなるほど、ドアトリム120の成形時に、この突起121の裏側において該ドアトリム120にヒケが生じる可能性が高くなる。
【0011】
特許文献2では、ワッシャは平板状であり、厚さが小さなものとなっているため、この平板状ワッシャの突起挿通孔に挿通されるドアトリムの突起の突出高さを比較的小さくすることができる。これにより、ドアトリムの成形時に、この突起の裏側において該ドアトリムにヒケが生じることを防止ないし抑制することができる。
【0012】
しかしながら、平板状ワッシャは、その厚さ方向におけるEA材との接触面積が小さくなりがちであるため、該EA材との結合強度を向上させるのが難しいことがある。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決し、部材に設けられる発泡成形体取付用の突起の突出高さを比較的小さくすることが可能であり、且つ、発泡成形体との結合強度を簡易な構成にて十分に高くすることが可能なワッシャを提供することを目的とする。また、本発明は、このワッシャを備えた発泡成形体と、この発泡成形体の製造方法と、この発泡成形体の部材への取付構造とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)のワッシャは、発泡合成樹脂よりなる発泡成形体に埋設される、該発泡成形体を部材に取り付けるためのワッシャであって、該ワッシャは、全体として板状のものであり、該ワッシャは、該部材に設けられた突起が挿通される突起挿通孔を有しており、該突起挿通孔は、該ワッシャを厚さ方向に貫通しており、該ワッシャのうち該突起挿通孔の周縁部よりも外周側が前記発泡合成樹脂中に埋没するように該発泡成形体に埋設されるワッシャにおいて、該ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さが該ワッシャの該突起挿通孔の周縁部における厚さよりも大きくなっている、高さ増大部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2のワッシャは、請求項1において、前記高さ増大部における前記ワッシャの裏面側から前面側までの高さは、該ワッシャの前記突起挿通孔の周縁部における厚さ+2〜30mmであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3のワッシャは、請求項1又は2において、前記ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さを増大させるように該ワッシャの板面から張り出す張出部が設けられており、該張出部により前記高さ増大部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4のワッシャは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ワッシャの外周側に、部分的に前記高さ増大部が不存在となっている非高さ増大部が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5のワッシャは、請求項4において、前記ワッシャの外周縁部のうち前記非高さ増大部となっている部分は、前記高さ増大部となっている部分よりも該ワッシャの中央側に凹んだ凹部となっていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項6の発泡成形体は、発泡合成樹脂よりなる成形体本体と、該成形体本体に埋設された、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のワッシャとを備えてなるものである。
【0020】
請求項7の発泡成形体は、請求項6において、該発泡成形体は、衝撃吸収材であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項8の発泡成形体の製造方法は、発泡成形用金型を用いて請求項6又は7の発泡成形体を製造する方法であって、該発泡成形用金型の内面に前記ワッシャを取り付けるワッシャ取付工程と、該ワッシャ取付工程の後、該発泡成形用金型内において発泡合成樹脂を発泡させて前記成形体本体を成形する発泡成形工程とを行うことを特徴とするものである。
【0022】
請求項9の発泡成形体の取付構造は、請求項6又は7に記載の発泡成形体を部材に取り付けた構造であって、該部材に設けられた突起が前記ワッシャの突起挿通孔に挿通され、該突起の先端側に、該突起挿通孔よりも大径の拡大部が形成されることにより、該ワッシャを介して発泡成形体が部材に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0023】
請求項10の発泡成形体の取付構造は、請求項9において、前記拡大部は、前記突起の先端をかしめることにより形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明(請求項1)のワッシャは、全体として板状のものであり、特許文献1のワッシャ110と比べて厚さを小さくすることができるので、このワッシャを発泡成形体に埋設するに当り、該発泡成形体の裏面からワッシャの前面までの距離を比較的小さくすることができる。これにより、発泡成形体を部材に取り付ける際に該ワッシャの突起挿通孔に挿通される突起の該部材からの突出高さも比較的小さくすることができる。その結果、該部材の成形時に、この突起の裏側において該部材にヒケが生じることを防止ないし抑制することができる。
【0025】
このワッシャにあっては、発泡成形体に埋設される該ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さが該ワッシャの突起挿通孔の周縁部における厚さよりも大きくなっている、高さ増大部が形成されているので、特許文献2のワッシャと比べて、該ワッシャの厚さ方向における発泡合成樹脂との接触面積を大きくすることができる。これにより、簡易な構成にて、ワッシャと発泡成形体との結合強度を向上させることが可能である。
【0026】
請求項2の通り、この高さ増大部におけるワッシャの裏面側から前面側までの高さを、該ワッシャの突起挿通孔の周縁部における厚さ+2〜30mmとすることにより、ワッシャと発泡成形体との結合強度を十分に向上させることができる。
【0027】
請求項3の通り、ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さを増大させるように該ワッシャの板面から張り出す張出部を設けることにより、高さ増大部を容易に形成することができる。また、このようにワッシャの板面から張り出す張出部を設けることにより、ワッシャの板面方向にワッシャがずれ動くことを効果的に防止することができる。
【0028】
請求項4の通り、ワッシャの外周側に、部分的に高さ増大部が不存在となっている非高さ増大部を設けることにより、発泡成形体の発泡成形時には、発泡合成樹脂がこの非高さ増大部を通って高さ増大部よりもワッシャの中央側に進入することができる。これにより、高さ増大部よりもワッシャの中央側に欠肉等の成形不良が生じることを効果的に防止することができる。
【0029】
請求項5の通り、この非高さ増大部において、ワッシャの外周縁部を該ワッシャの中央側に凹ませて凹部を形成することにより、発泡成形体の発泡成形時には、発泡合成樹脂は、この凹部を通って高さ増大部よりもワッシャの中央側に進入することができるので、高さ増大部よりもワッシャの中央側に欠肉等の成形不良が生じることを一層効果的に防止することができる。また、この凹部に発泡合成樹脂が入り込むことにより、突起挿通孔の軸心線回りにワッシャが回転しようとすることも効果的に防止することができる。
【0030】
本発明(請求項6)の発泡成形体は、成形体本体に、かかる本発明のワッシャが埋設されてなる。かかる本発明の発泡成形体にあっては、簡易な構成にて、成形体本体とワッシャとの結合強度を向上させることができる。
【0031】
請求項7の通り、本発明の発泡成形体は、衝撃吸収材に好適である。
【0032】
本発明(請求項8)の発泡成形体の製造方法によれば、簡易な構成にて、成形体本体とワッシャとの結合強度が向上した発泡成形体を製造することができる。
【0033】
本発明(請求項9)の発泡成形体の取付構造によれば、ワッシャの突起挿通孔に挿通される部材の突起の高さを比較的小さくすることができるため、該部材の成形時に、この突起の裏側において該部材にヒケが生じることを防止ないし抑制することができる。
【0034】
請求項10の通り、この突起の先端に拡大部を形成するには、該突起の先端をかしめるのが簡便であり、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態に係るワッシャの平面図及び断面図である。
【図2】図1のワッシャを備えた発泡成形体の製造工程を示す断面図である。
【図3】図1のワッシャを備えた発泡成形体の部材への取付構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態に係るワッシャの平面図及び断面図である。
【図5】実施の形態に係るワッシャの平面図及び断面図である。
【図6】実施の形態に係るワッシャの平面図及び断面図である。
【図7】実施の形態に係るワッシャの平面図及び断面図である。
【図8】実施の形態に係るワッシャの斜視図及び断面図である。
【図9】従来例に係るワッシャを備えた衝撃吸収材の斜視図である。
【図10】図9の衝撃吸収材のドアトリムへの取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、発泡成形体として、車両のドアトリムに取り付けられる衝撃吸収材(以下、EA材と略すことがある。)を例示しているが、本発明は、これ以外の発泡成形体及びその製造方法、並びにドアトリム以外の部材への発泡成形体の取付構造にも適用可能である。
【0037】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係るワッシャの平面図、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図、第1図(c)は第1図(a)のC−C線に沿う断面図である。第2図(a),(b)は、このワッシャを備えた発泡成形体としてのEA材の製造方法を示す、発泡成形用金型の縦断面図であり、第2図(a)は発泡合成樹脂原液の発泡前の状態を示し、第2図(b)は発泡が完了した状態を示している。第3図(a)は、このEA材を部材としてのドアトリムに取り付けた取付構造を示す縦断面図であり、第3図(b)は第3図(a)のB−B線に沿う断面図である。以下の説明において、EA材及びワッシャの前面とは、該EA材がドアトリムに取り付けられた状態における該ドアトリムと反対側の面をいい、裏面とは、該ドアトリム側の面という。
【0038】
この実施の形態では、ワッシャ1は、発泡成形体としてのEA材10に一体に設けられるものである。このEA材10は、硬質ウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなる。このEA材10は、車両のドアトリム20に取り付けられるものである。ドアトリム20のEA材取付面からは、EA材10を固定するための突起21が突設されている。この実施の形態では、突起21は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる。この実施の形態では、突起21は、ドアトリム20と共通の材料により一体に形成されている。なお、ドアトリム20の構成はこれに限定されない。例えば、突起21は、かしめ加工が施されるのに好適な材料により構成され、ドアトリム20の突起21以外の部分は、突起21と異なる材料により構成されてもよい。
【0039】
第1図(a)〜(c)の通り、ワッシャ1は、全体として板状のものである。この実施の形態では、ワッシャ1は、全体として比較的厚さが小さい平板状の主板部2と、該主板部2を厚さ方向に貫通した、ドアトリム20の突起21が挿通される突起挿通孔3と、該主板部2の外周側において、ワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHt(第1図(b))を増大させるように該主板部2の前面及び裏面からそれぞれ張り出した複数個の張出部4等を備えている。即ち、この実施の形態では、該張出部4により、ワッシャ1の外周側の高さ増大部が形成されている。なお、ワッシャ1の外周側の高さ増大部の形成方法はこれに限定されない。
【0040】
第1図(a)の通り、この実施の形態では、該張出部4は、主板部2の外周縁の延在方向に間隔をおいて複数個設けられている。即ち、この実施の形態では、該主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4同士の間は、高さ増大部が不存在となっている非高さ増大部となっている。この実施の形態では、突起挿通孔3は主板部2の中央に配置されており、各張出部4は、該突起挿通孔3の中心から略等距離に配置されている。主板部2のうち各張出部4と突起挿通孔3との間の部分は、厚さTmが略一定となっている。
【0041】
主板部2の前面側と裏面側とには、それぞれ同数個(この実施の形態では8個)の張出部4が設けられている。第1図(b),(c)の通り、主板部2の前面側及び裏面側の張出部4同士は、突起挿通孔3の軸心線回りに同一位相上に位置するように配設されている。この実施の形態では、各張出部4は、主板部2の外周縁に沿って延在した壁状となっており、且つこの壁状の張出部4同士は、突起挿通孔3の軸心線回りに同心円弧状に湾曲したものとなっている。
【0042】
なお、張出部4の形状や、個数及び配置等の構成はこれに限定されない。例えば、主板部2の前面側及び裏面側にそれぞれ張出部4が7個以下又は9個以上設けられてもよい。なお、張出部4は、主板部2の前面側及び裏面側にそれぞれ3個以上設けられていることが好ましい。このように構成することにより、EA材10に埋設されたワッシャ1がその板面方向にずれ動くことを、これらの張出部4によって、より効果的に防止することが可能となる。主板部2の前面側の張出部4と裏面側の張出部4とは、突起挿通孔3の軸心線回りに位相をずらして配置されていてもよい。主板部2の前面側と裏面側とで張出部4の個数が異なっていてもよい。なお、ワッシャ1を表裏対称の形状とすることにより、例えば後述のようにワッシャ1をEA材成形用金型30内に設置するときに、ワッシャ1を表裏に関係なく設置することができるので、EA材10の製造作業が容易化される。
【0043】
この実施の形態では、第1図(a)の通り、張出部4の外周面同士を包絡した包絡線Eは、略円形となる。以下、この包絡線Eの形状をワッシャ1の概略的な平面視形状という。ワッシャ1の概略的な平面視形状は、成形が容易であること、及び、ワッシャ1を金型30内に設置するときに向きに関係なく設置可能であることから、この実施の形態のように円形であることが好ましいが、これに限定されない。
【0044】
この実施の形態では、主板部2の外周縁のうち、その延在方向に隣り合う張出部4同士の間の部分(非高さ増大部)には、それぞれ、該主板部2の中央側へ凹んだ切欠状の凹部5が形成されている。各凹部5は、各張出部4よりも主板部2の中央側まで凹んでいる。第1図(a)の通り、各凹部5は、入口側ほど幅(包絡線Eの径方向と直交方向における幅。以下、同様。)が狭くなる略C字形の平面視形状となっている。なお、凹部5の形状はこれに限定されない。
【0045】
突起挿通孔3と各張出部4及び凹部5との間における主板部2の厚さTmは0.5〜3mm特に1〜2mmであることが好ましい。突起挿通孔3の内径は4〜10mm特に6〜8mmであることが好ましい。包絡線Eの外径は8〜40mm特に15〜25mmであることが好ましい。主板部2の前面及び裏面からの各張出部4の張り出し高さHp(第1図(b))はそれぞれ1〜15mm特に3〜5mmであることが好ましい。即ち、ワッシャ1の高さ増大部における該ワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtは、突起挿通孔3の周縁部における主板部2の厚さTm+2〜30mm特に主板部2の厚さTm+6〜10mmであることが好ましい。なお、この実施の形態では、ワッシャ1の前面及び裏面にそれぞれ張出部4が設けられているので、高さ増大部におけるワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtとは、該前面側の張出部4の高さHpと、裏面側の張出部4の高さHpと、主板部2の厚さTmとの合計値である。仮に、ワッシャ1の一方の板面にのみ張出部4が設けられている場合には、高さHtとは、この一方の板面の張出部4の高さHpと、主板部2の厚さTmとの合計値となる。
【0046】
包絡線Eの径方向における各張出部4の厚みT(第1図(b))は0.5〜3mm特に1〜2mmであることが好ましい。主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4同士の間隔S(第1図(a))は3〜20mm特に5〜10mmであることが好ましい。各凹部5の最大幅W(第1図(a))は5〜25mm特に8〜15mmであることが好ましい。包絡線Eから各凹部5の最奥部までの距離D(第1図(a))は2〜15mm特に3〜10mmであることが好ましい。
【0047】
ワッシャ1を構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等が好適であるが、これに限定されない。ワッシャ1の製造方法としては、これらの樹脂による射出成形が好適であるが、これに限定されない。この実施の形態では、主板部2と各張出部4とは、共通の材料により一体に形成されているが、これに限定されない。
【0048】
このワッシャ1が一体に設けられたEA材10は、第3図(a),(b)の通り、本体部11と、該ワッシャ1が配置された取付部12とを有している。取付部12には、ドアトリム20の突起21が挿通される取付孔13が設けられている。この実施の形態では、取付部12は、本体部11の裏面に沿って該本体部11の側面から側方へ延出した、該本体部11よりも厚さが小さい延出部よりなる。ワッシャ1は、主板部2の板面(前面及び裏面)を取付部12の裏面と略平行方向とし、且つ突起挿通孔3を取付孔13と略同軸状として、該取付部12の厚さ方向の途中部に埋設されている。取付孔13の内径は、ワッシャ1の突起挿通孔3の内径よりも大きく、且つ該突起挿通孔3から各凹部5の最奥部までの距離よりも小さなものとなっている。これにより、ワッシャ1は、主板部2の該突起挿通孔3の周縁部(各凹部5の最奥部よりも突起挿通孔3側の部分)が取付孔13内に露出し、それよりも外周側(各張出部4及び凹部5)が取付部12内に埋没している。
【0049】
なお、EA材10の構成はこれに限定されない。例えば、取付部12は、本体部11の前面から裏面側へ凹陥した凹所等により形成されてもよい。
【0050】
このEA材10においては、取付部12の裏面から、該取付部12に埋設されたワッシャ1の主板部2の前面までの距離K(第3図(a))は、5〜20mm特に5〜10mmであることが好ましい。該取付部12の厚さは、この距離K+10〜100mm特に距離K+10〜50mmであることが好ましい。
【0051】
次に、EA材10を発泡成形するための金型30について説明する。第2図(a),(b)の通り、この実施の形態では、金型30は、下型31と、上型32とを有している。この実施の形態では、EA材10は、金型30内において、その前面を下向きにした姿勢で成形される。即ち、下型31によりEA材10の前面側が成形され、上型32によりEA材10の後面側が成形される。金型30内には、EA材10の本体部11を成形するための第1のキャビティ空間Rと、取付部12を成形するための第2のキャビティ空間Rとが設けられている。該第1のキャビティ空間Rと第2のキャビティ空間Rとは、上型32のキャビティ天井面に沿って連続しており、下型31における第2のキャビティ空間Rの深さは、第1のキャビティ空間Rよりも浅くなっている。
【0052】
第2のキャビティ空間Rに臨む下型31のキャビティ底面及び上型32のキャビティ天井面からは、それぞれ、EA材10の取付部12に取付孔13を形成するための取付孔形成用凸部33,34が突設されている。これらの取付孔形成用凸部33,34は、互いに同軸状に第2のキャビティ空間R内へ突出している。金型30は、下型31と上型32とを型締めした状態において、該取付孔形成用凸部33,34の突出方向の先端面同士の間に、ワッシャ1の主板部2が介在する隙間が空くように構成されている。下型31側の取付孔形成用凸部33の先端面からは、ワッシャ1の突起挿通孔3に係合する突起部35が突設されている。この突起部35は、取付孔形成用凸部33と同軸状に配置されている。
【0053】
この金型30を用いてEA材10を成形する場合、まず、下型31と上型32とを型開きし、下型31側の取付孔形成用凸部33の上にワッシャ1を載せ、該ワッシャ1の突起挿通孔3に突起部35を係合させる。そして、下型31内に発泡合成樹脂原液を注入し、下型31と上型32とを型締めする。これにより、第2図(a)の通り、取付孔形成用凸部33,34同士の間にワッシャ10が保持される。その後、該発泡合成樹脂原液を加熱・発泡させる。
【0054】
この発泡合成樹脂は、第1のキャビティ空間Rから第2のキャビティ空間Rに流入し、ワッシャ1及び取付孔形成用凸部33,34の周囲を充填していく。これにより、ワッシャ1のうち主板部2の突起挿通孔3の周縁部よりも外周側(各張出部4及び凹部5)が発泡合成樹脂中に埋没し、ワッシャ1がEA材10と一体化される。この際、発泡合成樹脂の一部は、ワッシャ1の各張出部4同士の間及び各凹部5を通って各張出部4と取付孔形成用凸部33,34との間に回り込む。これにより、各張出部4と取付孔形成用凸部33,34にも十分に発泡合成樹脂が充填されるようになる。
【0055】
発泡合成樹脂が硬化した後、型開きしてEA材10を脱型する。その後、必要に応じてEA材10の表面の仕上げ処理を行うことにより、EA材10が完成する。
【0056】
このワッシャ1付きEA材10をドアトリム20に取り付ける場合には、第3図(a),(b)の通り、該ドアトリム20の突起21をEA材10の取付部12の取付孔13を介してワッシャ1の突起挿通孔3に挿通し、該突起21の先端をワッシャ1の前面側に突出させる。次いで、この突起21の先端に溶着治具(図示略)を押し当て、該突起21の先端を拡径させて(かしめて)、突起挿通孔3よりも大径のフランジ状の拡大部22を形成する。これにより、突起21が突起挿通孔3から抜け出し不能となり、EA材10がドアトリム20に固定される。
【0057】
この突起21の先端をかしめて拡大部22を形成する方法としては、USかしめが好適であるが、これに限定されない。
【0058】
このワッシャ1により奏される作用効果は次の通りである。
【0059】
このワッシャ1は、全体として板状のものであり、特許文献1のワッシャ110と比べて厚さを小さくすることができるので、このワッシャ1をEA材10の取付部12に埋設するに当り、該取付部12の裏面からワッシャ1の主板部2の前面までの距離Kを比較的小さくすることができる。これにより、EA材10をドアトリム20に取り付ける際に該ワッシャ1の突起挿通孔3に挿通される突起21のドアトリム20からの突出高さも比較的小さくすることができる。その結果、ドアトリム20の成形時に、この突起21の裏側において該ドアトリム20にヒケが生じることを防止ないし抑制することができる。
【0060】
このワッシャ1にあっては、EA材10に埋設される主板部2の外周側に、ワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtが該主板部2の突起挿通孔3の周縁部における厚さTmよりも大きくなっている、高さ増大部(この実施の形態では各張出部4)が形成されているので、特許文献2のワッシャと比べて、該ワッシャ1の厚さ方向における発泡合成樹脂との接触面積を大きくすることができる。これにより、簡易な構成にて、ワッシャ1とEA材10との結合強度を向上させることが可能である。
【0061】
上記の通り、この高さ増大部におけるワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtを、突起挿通孔3の周縁部における主板部2の厚さTm+2〜30mmとすることにより、ワッシャ1とEA材10との結合強度を十分に向上させることができる。
【0062】
この実施の形態のように、主板部2の外周側に、ワッシャ1の裏面側から前面側までの高さHtを増大させるように該主板部2の前面及び裏面からそれぞれ張り出す張出部4を設けることにより、高さ増大部を容易に形成することができる。また、このように主板部2の前面及び裏面からそれぞれ張り出す張出部4を設けることにより、主板部2の板面方向にワッシャ1がずれ動くことを効果的に防止することができる。
【0063】
この実施の形態では、張出部4を、主板部2の外周縁の延在方向に間隔をおいて複数個設けている。即ち、該主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4同士の間は、高さ増大部が不存在の非高さ増大部となっている。そのため、EA材10の発泡成形時には、発泡合成樹脂がこの非高さ増大部を通って各張出部4よりも主板部2の中央側に進入することができる。これにより、各張出部4よりも主板部2の中央側に欠肉等の成形不良が生じることを効果的に防止することができる。
【0064】
この実施の形態では、主板部2の外周縁のうち、該主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4同士の間の部分(非高さ増大部)に、それぞれ、各張出部4よりも主板部2の中央側へ凹んだ切欠状の凹部5が形成されている。これにより、EA材10の発泡成形時には、発泡合成樹脂は、凹部5を通って各張出部4よりも主板部2の中央側に進入することができるので、各張出部4よりも主板部2の中央側に欠肉等の成形不良が生じることを一層効果的に防止することができる。また、各凹部5に発泡合成樹脂が入り込むことにより、突起挿通孔3の軸心線回りにワッシャ1が回転しようとすることも効果的に防止することができる。
【0065】
[ワッシャの他の構成例]
第4図(a)は、第2の実施の形態に係るワッシャの平面図であり、第4図(b)は第4図(a)のB−B線に沿う断面図である。第5図(a)は、第3の実施の形態に係るワッシャの平面図であり、第5図(b)は第5図(a)のB−B線に沿う断面図である。第6図(a)は、第4の実施の形態に係るワッシャの平面図であり、第6図(b)は第6図(a)のB−B線に沿う断面図である。第7図(a)は、第5の実施の形態に係るワッシャの平面図であり、第7図(b)は第7図(a)のB−B線に沿う断面図である。第8図(a)は、第6の実施の形態に係るワッシャの斜視図であり、第8図(b)は第8図(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0066】
上記の実施の形態では、張出部4は、主板部2の外周縁に沿って延在した壁状となっているが、張出部の形状はこれに限定されない。例えば、第4図(a),(b)のワッシャ1Aにおける張出部4Aのように円柱状であってもよく、第5図(a),(b)のワッシャ1Bにおける張出部4Bのように円錐状であってもよく、第6図(a),(b)のワッシャ1Cにおける張出部4Cのように三角錐状であってもよい。もちろん、張出部は、これら以外の形状であってもよい。
【0067】
なお、第6図(a),(b)のワッシャ1Cにおいては、該ワッシャ1Cの前面側及び裏面側に、それぞれ、主板部2の外周縁の延在方向に間隔をおいて張出部4Cが3個設けられており、該主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4C,4C同士の間にそれぞれ凹部5が形成されている(即ち、この実施の形態では、凹部5も、主板部2の外周縁の延在方向に間隔をおいて3個設けられている。)。このように、ワッシャの前面側及び裏面側にそれぞれ張出部を少なくとも3個設ければ、EA材に埋設されたワッシャがその板面方向にずれ動くことを効果的に防止することが可能である。
【0068】
上記の実施の形態では、主板部2の外周縁のうち、主板部2の外周縁の延在方向に隣り合う張出部4同士の間の部分(非高さ増大部)には、それぞれ、該主板部2の中央側へ凹んだ切欠状の凹部5が形成されているが、第7図(a),(b)のワッシャ1Dのように、この凹部5は省略されてもよい。
【0069】
上記の実施の形態では、主板部2の外周側に、ワッシャの裏面側から前面側までの高さHtを増大させるように該主板部2の前面及び裏面からそれぞれ張り出す張出部4を設けることにより、高さ増大部を形成しているが、高さ増大部の形成方法はこれに限定されない。例えば、第8図のワッシャ1Eは、略円形の平面視形状の主板部2’を有しており、該主板部2’は、前面及び裏面が、それぞれ、該主板部2の中央側ほど相互に接近するように擂鉢状に湾曲したものとなっている。これにより、該主板部2’の外周側は、ワッシャ1Eの裏面側から前面側までの高さHtが該主板部2’の突起挿通孔3の周縁部における厚さTmよりも大きい、高さ増大部6となっている。なお、主板部2’の前面及び裏面の形状は擂鉢状に限定されるものではなく、例えば該主体部2’の突起挿通孔3の周縁部から外周側に向かって階段状に厚さが大きくなる形状であってもよい。
【0070】
なお、上記の構成は、いずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成をもとりうる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A〜1E ワッシャ
2,2’ 主板部
3 突起挿通孔
4,4A〜4C 張出部
5 凹部
6 高さ増大部
10 EA材
11 本体部
12 取付部
13 取付孔
20 ドアトリム
21 突起
22 拡大部
30 発泡成形用金型
31 下型
32 上型
33,34 取付孔形成用凸部
35 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなる発泡成形体に埋設される、該発泡成形体を部材に取り付けるためのワッシャであって、
該ワッシャは、全体として板状のものであり、
該ワッシャは、該部材に設けられた突起が挿通される突起挿通孔を有しており、
該突起挿通孔は、該ワッシャを厚さ方向に貫通しており、
該ワッシャのうち該突起挿通孔の周縁部よりも外周側が前記発泡合成樹脂中に埋没するように該発泡成形体に埋設されるワッシャにおいて、
該ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さが該ワッシャの該突起挿通孔の周縁部における厚さよりも大きくなっている、高さ増大部が設けられていることを特徴とするワッシャ。
【請求項2】
請求項1において、前記高さ増大部における前記ワッシャの裏面側から前面側までの高さは、該ワッシャの前記突起挿通孔の周縁部における厚さ+2〜30mmであることを特徴とするワッシャ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ワッシャの外周側に、該ワッシャの裏面側から前面側までの高さを増大させるように該ワッシャの板面から張り出す張出部が設けられており、
該張出部により前記高さ増大部が形成されていることを特徴とするワッシャ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記ワッシャの外周側に、部分的に前記高さ増大部が不存在となっている非高さ増大部が設けられていることを特徴とするワッシャ。
【請求項5】
請求項4において、前記ワッシャの外周縁部のうち前記非高さ増大部となっている部分は、前記高さ増大部となっている部分よりも該ワッシャの中央側に凹んだ凹部となっていることを特徴とするワッシャ。
【請求項6】
発泡合成樹脂よりなる成形体本体と、
該成形体本体に埋設された、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のワッシャと
を備えてなる発泡成形体。
【請求項7】
請求項6において、該発泡成形体は、衝撃吸収材であることを特徴とする発泡成形体。
【請求項8】
発泡成形用金型を用いて請求項6又は7の発泡成形体を製造する方法であって、
該発泡成形用金型の内面に前記ワッシャを取り付けるワッシャ取付工程と、
該ワッシャ取付工程の後、該発泡成形用金型内において発泡合成樹脂を発泡させて前記成形体本体を成形する発泡成形工程と
を行うことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の発泡成形体を部材に取り付けた構造であって、
該部材に設けられた突起が前記ワッシャの突起挿通孔に挿通され、該突起の先端側に、該突起挿通孔よりも大径の拡大部が形成されることにより、該ワッシャを介して発泡成形体が部材に取り付けられていることを特徴とする発泡成形体の取付構造。
【請求項10】
請求項9において、前記拡大部は、前記突起の先端をかしめることにより形成されていることを特徴とする発泡成形体の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−241860(P2012−241860A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114939(P2011−114939)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】