説明

ワークの把持方法

【課題】バラ積み状態のワークを多フィンガのハンドで把持する場合に他のワークが対象ワークの上に重なっている状態であっても、ワークの把持を可能にし、ワークの把持成功率を向上させるワークの把持方法を提供する。
【解決手段】2つの把持装置(第1乃至第4フィンガF1乃至F4)を用いてワーク(リンフォースメントW)を把持するとき、把持しようとする把持対象ワーク(把持対象リンフォースメントT)に対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所(領域A)に他のワークとの干渉がない状態で、一方の把持装置挿入箇所に第1の把持装置(第1フィンガF1及び第2フィンガF2)を挿入して把持対象ワークを把持して持ち上げる片持ち把持工程と、第1の把持装置によって持ち上げられた把持対象ワークのまわり(領域D)に第2の把持装置(第3フィンガF3及び第4フィンガF4)を挿入して把持する両持ち把持工程と、を含むワークの把持方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの把持方法に係り、特に、多数のバラ積み状態のワークを2つの把持装置を用いて把持するワークの把持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車などの機械製品は、多数の部品を組み合わせることで製造される。具体的には、例えば、製造ラインに複数のロボットを配置し、製造ラインに沿って自動車ボディなどを搬送すると共に、この自動車などに取り付けるワーク(組み付け部品)を箱状のバケット(パレット)に収容して、このバケットを各ロボットに供給する。各ロボットは、その先端に設けられたハンド部のフィンガにより、バケット内のワークを把持して製造ラインを搬送される自動車ボディなどに対して取り付ける、または、複数のバケット内のそれぞれのワークを把持して次の自動車ボディなどに対する組み付け工程に備えてそれらのワークをワーク供給手段の所定の位置に並べる(以下、「配膳」または「配膳する」という)などの作業を行う。
【0003】
ワークとしては、例えば、サッシュ、モール、ガーニッシュ、リンフォースメントなど所定方向に長い形状のものがあり、その形状や重心の位置によっては、このようなワークの把持は容易でない。このような長い形状のワークをロボットで把持するために、多数のフィンガを有するロボットハンドの1つの組のフィンガでワークの1箇所を把持し、別の組のフィンガでワークの別の箇所を把持する技術が提案されている。この技術によれば、形状や重心位置が異なるワークであっても長い形状のワークを安定して把持できる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260110号公報(特願2007−106219号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロボットに供給するワークは、バケットに多数個のワークがバラ積み状態で収容される場合がある。このようなバラ積み状態のワークを多フィンガのハンドで把持しようとする場合、把持しようとする対象ワークに他のワークが重なっていない状態では安定的に把持することができるが、把持しようとする対象ワークの上に他のワークが重なっている状態では、1つの組のフィンガでワークを把持できても、別の組のフィンガが他のワークに干渉して対象ワークを把持することができず、結果的に対象ワークを落下させることがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決し、バラ積み状態のワークを多数のフィンガを有するハンドで把持しようとする場合に他のワークが対象ワークの上に重なっている状態であっても、ワークの把持を可能にし、バラ積み状態のワークの把持成功率を向上させるワークの把持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 2つの把持装置(例えば、後述の第1フィンガF1及び第2フィンガF2、及び第3フィンガF3及び第4フィンガF4)を用いてワーク(例えば、後述のリンフォースメントW)を把持するとき、把持しようとする把持対象ワーク(例えば、後述の把持対象リンフォースメントT)に対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所(例えば、後述の領域A)に他のワークとの干渉がない状態での把持方法であって、
前記一方の把持装置挿入箇所に第1の把持装置(例えば、後述の第1フィンガF1及び第2フィンガF2)を挿入して前記把持対象ワークを把持して持ち上げる片持ち把持工程と、
前記第1の把持装置によって持ち上げられた前記把持対象ワークのまわり(例えば、後述の領域D)に第2の把持装置(例えば、後述の第3フィンガF3及び第4フィンガF4)を挿入して把持する両持ち把持工程と、を含む把持方法。
【0008】
(1)の発明によれば、2つの把持装置を用いてワークを把持するとき、多数のワークの中の把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がない状態において、先ず一方の把持装置挿入箇所に第1の把持装置を挿入して把持対象ワークを把持し、把持対象ワークの一方を持ち上げる(片持ち把持工程)。
【0009】
把持対象ワークの一方を持ち上げることにより、把持対象ワークの中間部分は、把持対象ワークの他方端を支点として応分の距離持ち上げられる。これによって、持ち上げ前に把持対象ワークの他方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉が存在していてもその干渉は解消され、把持対象ワークのまわりに第2の把持装置を挿入することを阻害する他のワークは存在しない。この状態では、把持対象ワークのまわりに第2の把持装置を挿入して把持対象ワーク全体を把持することができる(両持ち把持工程)。
【0010】
従って、バラ積み状態のワークを多数のフィンガを有するハンドで把持しようとする場合に、他のワークが対象ワークの上に重なっている状態であって把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がない状態において、持ち上げ前に把持対象ワークの他方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉が存在していても把持対象ワークを把持することができるため、バラ積み状態のワークからの取り出しパターンを増加させることができ、バラ積み状態のワークの把持成功率を向上させることができる。
【0011】
(2) (1)に記載のワークの把持方法であって、把持対象ワークに対して杷持装置を挿入する他方の把持装置挿入箇所(例えば、後述の領域C)に他のワークとの干渉があるワークの把持方法。
【0012】
(2)の発明によれば、2つの把持装置を用いてワークを把持するとき、多数のワークの中の把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がなく、他方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がある状態において、先ず一方の把持装置挿入箇所に第1の把持装置を挿入して把持対象ワークを把持し、把持対象ワークの一方を持ち上げる(片持ち把持工程)。
【0013】
把持対象ワークの一方を持ち上げることにより、把持対象ワークの中間部分は、把持対象ワークの他方端を支点として応分の距離持ち上げられる。これによって、持ち上げ前に把持対象ワークの他方の把持装置挿入箇所に存在していた他のワークとの干渉が解消され、把持対象ワークのまわりに第2の把持装置を挿入することを阻害していた他のワークは存在しない。この状態では、把持対象ワークのまわりに第2の把持装置を挿入して把持対象ワーク全体を把持することができる(両持ち把持工程)。
【0014】
従って、バラ積み状態のワークを多数のフィンガを有するハンドで把持しようとする場合に、他のワークが対象ワークの上に重なっている状態であって把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がなく、他方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がある状態においても、把持対象ワークを把持することができるため、バラ積み状態のワークからの取り出しパターンを増加させることができ、バラ積み状態のワークの把持成功率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バラ積み状態のワークを多フィンガのハンドで把持しようとする場合に他のワークが対象ワークの上に重なっている状態であっても、ワークの把持を可能にし、バラ積み状態のワークの把持成功率を向上させるワークの把持方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るワークの把持方法で用いるワーク配膳システムの概略図である。
【図2】前記ワーク配膳システムのハンドの構成を示す斜視図である。
【図3】前記ワーク配膳システムの制御手段の構成を示すブロック図である。
【図4】前記ワーク配膳システムの第1フィンガ制御部、及び第1フィンガの構成を示す概要図である。
【図5】前記ワーク配膳システムのワーク把持処理のフローチャートである。
【図6】図5のワーク把持処理のフローチャートの一部であり、前記ワーク配膳システムのワーク2段階把持に関するフローチャートである。
【図7】(a)は、前記実施形態に係るワークの把持方法のワークを仮想的に持ち上げる前の状態を示す模式図であり、(b)は、前記実施形態に係るワークの把持方法のワークを仮想的に持ち上げた状態を示す模式図である。
【図8】前記実施形態に係るワークの把持方法の一連の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るワークの把持方法で用いるワーク配膳システムとしてのワーク配膳システム1の概略構成を示す図である。
ワーク配膳システム1は、自動車の組み付けを行う組み立てラインにあらかじめ所定の複数のワーク(組み付け部品)をワーク供給手段の所定の位置に並べた状態(配膳された状態)でワークを供給するサブラインに設けられている。このワーク配膳システム1には、バケット60内に収容された状態でワークであるリンフォースメントWが供給される。また、同様にバケット601に収容されたワーク602、バケット603に収容されたワーク604、及びバケット605内に収容されたワーク606が供給される。
リンフォースメントWは、所定方向に長い形状であり、バケット60にはバラ積み状態で収容される。
【0019】
キット台15は、所定の個数のリンフォースメントW、ワーク602、604及び606を所定の位置に並べる配膳面151を有する。ワーク配膳システム1は、バケット60内に収容されたリンフォースメントWを把持して、この把持したリンフォースメントWを、配膳面151の所定の配膳位置Waに配置する。ここでは、2個のリンフォースメントWを所定の方向で配置するように設定されているため、リンフォースメントWの把持・配膳の処理を2回繰り返す。ワーク602、604及び606も同様に、所定の個数を、それぞれ所定の配膳位置602a、604a及び606aに配置する。すなわち、ワーク配膳システム1は、リンフォースメントW、ワーク602、604及び606の4種類のワークをバケット60、601、603及び605から把持して、それぞれ所定個数をキット台15に配膳する。配膳が完了すると、キット台15は、所定のタイミングで組み立てラインに搬送される。
【0020】
ワーク配膳システム1は、具体的には、キット台15の近傍に配置された双腕ロボット10と、この双腕ロボット10の作業エリア全体をセンシングする全体画像センサ4と、これらを制御する制御手段としての制御部70と、を備える。また、ワーク配膳システム1は、バケット60に接続され必要に応じてバケット60を振動させる加振機61を備える。
【0021】
双腕ロボット10は、ロボット本体11と、このロボット本体11に設けられた第1のマニピュレータ12およびセンシング手段としての第2のマニピュレータ13と、を備える。ロボット本体11は、その作業エリアを拡大するため、レール14の上を直動軸SLに沿って平行移動できるように構成されていてよい。
これら第1のマニピュレータ12と第2のマニピュレータ13とは、互いに独立して動作するようになっている。
第1のマニピュレータ12は、リンフォースメントWを把持する把持手段としてのハンド121と、ロボット本体11に軸支されてハンド121の姿勢や3次元空間における位置を変化させる搬送手段としてのアーム122と、を備える。
第2のマニピュレータ13は、バケット内ワーク画像センサ131と、このバケット内ワーク画像センサ131の姿勢や3次元空間における位置を変化させるアーム132と、を備える。
【0022】
バケット内ワーク画像センサ131は、リンフォースメントWの把持に備えて、供給されたバケット60に収容されたバラ積み状態のリンフォースメントWを撮影し、この撮影した画像を構成する各ピクセルについて3次元の座標データを取得し、センシングデータとして出力することにより、バケット60内のバラ積み状態で重なり合う各リンフォースメントWの3次元姿勢を求めることができる。
バケット内ワーク画像センサ131は、レーザ光を各リンフォースメントWに照射し、レーザ光の反射によって各リンフォースメントW表面とバケット内ワーク画像センサ131の間の正確な距離を決定し、各リンフォースメントWの表面形状を点群データとして測定するレーザ三角測量に基づくものであってよい。バケット内ワーク画像センサ131は、これに限定されるものでなく、例えば、カメラを2台用いた3Dビジョンシステムを用いるものであってもよい。
バケット内ワーク画像センサ131は、ワーク602、604及び606の把持に備えて、適宜アーム132によって移動され、ワーク602、604及び606に関しても同様にそれらの3次元姿勢を求めることができる。
このような構成によって、第1のマニピュレータ12で、例えば、リンフォースメントWを把持して配膳しながら、バケット内ワーク画像センサ131で、次に把持するリンフォースメントW、ワーク602、604または606を認識することが可能となり、サイクルタイムを短縮できる。
【0023】
全体画像センサ4は、双腕ロボット10の作業エリア全体を俯瞰できる位置に設けられ、双腕ロボット10、配膳しようとするキット台15、バケット60、601、603及び605を撮影し、この撮影した画像を構成する各ピクセルについて3次元の座標データを取得し、センシングデータとして出力する。
【0024】
図2は、ハンド121の構成を示す斜視図である。
ハンド121は、ハンド本体部Nと、その下面に配置された4本の指部である第1フィンガF1、第2フィンガF2、第3フィンガF3、及び第4フィンガF4と、を備える。
【0025】
第1フィンガF1及び第2フィンガF2は、人間の親指と示指のような組になっていて、第1フィンガF1の指先腹面に相当する面F15と、第2フィンガF2の指先腹面に相当する面F25がそれぞれ向かい合うように配置されている。隣の第3フィンガF3及び第4フィンガF4は、同様に組になっていて、第3フィンガF3の指先腹面に相当する面F35と、第4フィンガF4の指先腹面に相当する面F45がそれぞれ向かい合うように配置されている。
第1フィンガF1、第2フィンガF2、第3フィンガF3、及び第4フィンガF4は、それぞれ、第1関節乃至第4関節の4つの関節を有し、それにより4自由度の運動が可能に構成されている。
各関節の駆動部は、駆動源であるサーボモータ(図4参照)により動作する。また各サーボモータの出力段にはエンコーダ(図4参照)が接続されている。このような複数のフィンガが協調して動作することによって把持対象物を把持したり、対象物を把持した状態のまま対象物の姿勢を変更したりすることができる。
【0026】
第1フィンガF1の各関節は、各関節の回転軸が、駆動部F11乃至F14により駆動されることにより運動する。第1フィンガF1の第1関節(根元の関節)は、駆動部F11によりピッチ軸CL11を中心に回転する。第2関節は、駆動部F12によりロール軸CL12を中心に回転し、第3関節は、駆動部F13によりロール軸CL13を中心に回転し、第4関節(先端の関節)は、駆動部F14によりロール軸CL14を中心に回転する。従って、第1フィンガF1は、その指先部F15(すなわち第1フィンガF1の指先に相当する部分)を、向かい合う第2フィンガF2に対向する側またはその反対側に曲げることができるとともに、第1フィンガF1全体を隣の第3フィンガF3が位置する側またはその反対側に傾けることができるように構成されている。
【0027】
第2フィンガF2は、第1フィンガF1と同一構成を有している。すなわち、第2フィンガF2の各関節は、各関節の回転軸が、駆動部F21乃至F24により駆動されることにより運動する。第2フィンガF2の第1関節(根元の関節)は、駆動部F21によりピッチ軸CL21を中心に回転する。第2関節は、駆動部F22によりロール軸CL22を中心に回転し、第3関節は、駆動部F23によりロール軸CL23を中心に回転し、第4関節(先端の関節)は、駆動部F24によりロール軸CL24を中心に回転する。従って、第2フィンガF2は、その指先部F25(すなわち第2フィンガF2の指先に相当する部分)を、向かい合う第1フィンガF1に対向する側またはその反対側に曲げることができるとともに、第2フィンガF2全体を隣の第4フィンガF4が位置する側またはその反対側に傾けることができるように構成されている。
【0028】
第3フィンガF3は、同様に第1フィンガF1と同一構成を有している。すなわち、第3フィンガF3の各関節は、各関節の回転軸が、駆動部F31乃至F34により駆動されることにより運動する。第3フィンガF3の第1関節(根元の関節)は、駆動部F31によりピッチ軸CL31を中心に回転する。第2関節は、駆動部F32によりロール軸CL32を中心に回転し、第3関節は、駆動部F33によりロール軸CL33を中心に回転し、第4関節(先端の関節)は、駆動部F34によりロール軸CL34を中心に回転する。従って、第3フィンガF3は、その指先部F35(すなわち第3フィンガF3の指先に相当する部分)を、向かい合う第4フィンガF4に対向する側またはその反対側に曲げることができるとともに、第3フィンガF3全体を隣の第1フィンガF1が位置する側またはその反対側に傾けることができるように構成されている。
【0029】
第4フィンガF4は、同様に第1フィンガF1と同一構成を有している。すなわち、第4フィンガF4の各関節は、各関節の回転軸が、駆動部F41乃至F44により駆動されることにより運動する。第4フィンガF4の第1関節(根元の関節)は、駆動部F41によりピッチ軸CL41を中心に回転する。第2関節は、駆動部F42によりロール軸CL42を中心に回転し、第3関節は、駆動部F43によりロール軸CL43を中心に回転し、第4関節(先端の関節)は、駆動部F44によりロール軸CL44を中心に回転する。従って、第4フィンガF4は、その指先部F45(すなわち第4フィンガF4の指先に相当する部分)を、向かい合う第3フィンガF3に対向する側またはその反対側に曲げることができるとともに、第4フィンガF4全体を隣の第2フィンガF2が位置する側またはその反対側に傾けることができるように構成されている。
【0030】
これらの構成により、ハンド121は、第1フィンガF1及び第2フィンガF2を1つの組にして、リンフォースメントWのような所定方向に長い形状の対象物の一箇所を把持し、第3フィンガF3及び第4フィンガF4を別の組にして対象物の別の箇所を把持することにより対象物を2箇所で把持することができる。
また、ハンド121は、最初に第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組によって把持し、次に第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組によって把持するように2段階で対象物を把持することができる。また、把持する2箇所の高さを変えることもできる。
更に、第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組を、第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組に対して傾けることにより、及び/または第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組を第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組に対して傾けることにより、把持する2箇所の間隔を変えることができる。
各フィンガの指先腹面F15、F25、F35、F45は、その内部にそれぞれ力センサF16、F26、F36、F46を備え、指先腹面F15、F25、F35、F45に発生するそれぞれの押圧力をセンシングすることができる。また、指先腹面F15、F25、F35、F45は、ワークとの滑りを防ぎ安定的な把持を行うために粘弾性体によって覆われていてもよい。
【0031】
図3は、制御部70の構成を示すブロック図である。
制御部70は、ティーチングデータ記憶部71、ワーク形状記憶部72、取付部認識部73、実測データ生成部74、及びワーク把持部75を備える。
【0032】
ティーチングデータ記憶部71は、ワークを把持してから所定の配膳位置に到達するまで経路に亘って、ティーチングされたワークの位置、姿勢、および時間を、ティーチングデータとして記憶する。ここでは、リンフォースメントWのバケット60内からキット台15の所定の配膳位置Waに至るまでの経路をティーチングデータとして記憶する。また、ワーク602、604及び606に関してもバケット601、603及び605から配膳位置602a、604a及び606aに到着するまでの経路に亘って、ティーチングされたワークの位置、姿勢、および時間を、ティーチングデータとして記憶する。
【0033】
ワーク形状記憶部72は、把持・配膳を行う対象ワークの3次元形状を記憶する。配膳位置認識部73は、全体画像センサ4から出力されたセンシングデータに基づいて、ワークの配膳位置を認識する。ここでは、キット台15の配膳面151の位置や姿勢からワークの配膳位置を認識する。
【0034】
実測データ生成部74は、第2のマニピュレータ13を制御して、バケット内ワーク画像センサ131により供給されたバケット60に収容されたバラ積み状態のリンフォースメントWを撮影させ、バケット60内にバラ積み状態で重なり合う各リンフォースメントWの3次元姿勢を求める。また、ワーク602、604及び606に関しても同様に撮影してそれぞれの3次元姿勢を求めることができる。
【0035】
また、実測データ生成部74は、全体画像センサ4を制御し、第1のマニピュレータ12のハンド121がワークであるリンフォースメントWを把持しようとするときから追跡し、リンフォースメントWが配膳位置Waに搬送される間、常にリンフォースメントWをセンシングさせ、そのセンシングデータと、ワーク形状記憶部72に記憶されたワーク形状についてのデータと、を照合することで、ワークの単位時間毎の位置および姿勢を実測データとして生成する。
【0036】
ワーク把持部75は、後述するように、先ず実測データ生成部74で生成されたバケット60内にバラ積み状態で重なり合う各リンフォースメントWの3次元姿勢に関する実測データに基づいて、各リンフォースメントWに対してどの把持方法が実行可能かを検討し、どのリンフォースメントWにどの把持方法を実行できるかを判断する。
【0037】
また、ワーク把持部75は、第1フィンガF1を制御する第1フィンガ制御部751、第2フィンガF2を制御する第2フィンガ制御部752、第3フィンガF3を制御する第3フィンガ制御部753、及び第4フィンガF4を制御する第4フィンガ制御部754を備え、第1フィンガF1、第2フィンガF2、第3フィンガF3及び第4フィンガF4を協調して制御し、ワークを把持する動作を行う。
具体的には、各フィンガの指先の力センサF16、F26、F36、F46及び各フィンガのエンコーダ(図4参照)からの出力値、及び選択された把持方法に基づいて各フィンガの駆動手段(図4参照)をフィードバック制御することによって第1フィンガF1、第2フィンガF2、第3フィンガF3及び第4フィンガF4を協調して制御する。
また、ワーク把持部75は、必要に応じて加振機61を駆動させる。
【0038】
図4は、第1フィンガ制御部751及び第1フィンガF1の構成を示す概要図である。
位置制御部26は追従目標位置29と第1フィンガF1のサーボモータM11、M12、M13及びM14に設けられた位置検出器であるエンコーダE11、E12、E13及びE14から得られるフィードバック位置28に基づきサーボモータM11、M12、M13及びM14への指令を生成して位置制御を行う。
一方、力制御部25は第1フィンガの指先に設けられた力センサF16が検出した力情報(力の大きさ、向き)27と第1フィンガ目標力指令20に基づき位置補正量21を生成し、これを第1フィンガ目標位置指令22に加算して前述の追従目標位置29とすることで、力制御を構成している。尚、第1フィンガ目標力指令20と第1フィンガ目標位置指令22は、マニピュレータの動作を決定する上位装置の動作プログラム等(図示せず)からワーク把持部75に送られてくる指令であってよい。
ここで、制御モード切替スイッチ23を閉じて力制御部25から出力される位置補正量21を目標位置指令22に加算するようにすれば力制御によって第1フィンガが動作する。また制御モード切替スイッチ23を開けば第1フィンガは位置制御によって動作する。
第1フィンガ制御モード指令は、制御モード切替スイッチ23の開閉を制御することで第1フィンガについて位置制御と力制御との切り替えを行う。
【0039】
第2フィンガ制御部752及び第2フィンガF2、第3フィンガ制御部753及び第3フィンガF3、及び第4フィンガ制御部754及び第4フィンガF4は、第1フィンガ制御部751及び第1フィンガF1と同様の構成となっており、同様に、フィンガ毎に位置制御と力制御との制御モードの切り替えを行うことができる。
【0040】
ワーク配膳システム1のワーク把持動作につき、図5を参照しながら説明する。図5は、ワーク配膳システムのワーク把持動作を行うためのワーク把持処理のフローチャートである。
尚、ここで設定されているリンフォースメントWに対する把持処理は、「把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1を第1フィンガF1及び第2フィンガF2によって把持し、第2把持部T2(フランジ部T1と反対端部T3の中間)を第3フィンガF3及び第4フィンガF4によって把持する。」ものである。
尚、把持対象リンフォースメントTは、判別対象ワーク(ドメイン番号iに対応するリンフォースメントW)をそれ以外のリンフォースメントWと区別する目的で指定されたものである。従って、ドメイン番号がインクリメントされると、把持対象リンフォースメントTは、更新されたドメイン番号に対応するリンフォースメントWに指定し直される。
【0041】
ST1では、ワーク把持部75は、先ず、バケット内ワーク画像センサ131の出力に基づき実測データ生成部74で生成されたN個(>0)のリンフォースメントW(バケット60内にバラ積み状態で重なり合う複数のリンフォースメントWのうちバケット内ワーク画像センサ3によってデータ取得可能であったN個)の3次元位置・姿勢を認識する。ここでは、設定されたドメインの総数はNになる。
【0042】
ST2では、ドメイン番号iを1に初期設定する(i=1)。
【0043】
ST3では、ドメイン番号iに対応する判別対象ワークにつき1段階把持可能かの判別を行う。この判別は、ST1で認識したN個のリンフォースメントWの3次元位置・姿勢データに基づき「把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所、及び他方の把持装置挿入箇所の2箇所とも他のワークとの干渉がないか否か」により行う。
この判別は、具体的には、「フランジ部T1を挟む領域である領域A、及び第2把持部T2を挟む領域である領域Cにおいて他のリンフォースメントWと干渉するかどうか」により行う(図7参照)。
この判別で、YESであれば判別を終了してST7に進み、NOであれば判別を継続してST4に進む。
【0044】
ST4では、ドメイン番号iに対応する判別対象ワークにつき2段階把持可能かの判別を行う。この判別は、同様にST1で認識したN個のリンフォースメントWの3次元位置・姿勢データに基づき行うものであり、具体的な判別内容については後述する。
この判別で、YESであれば判別を終了してST8に進み、NOであれば判別を継続してST5に進む。
【0045】
ST5では、ドメイン番号iはi<Nかどうかの判別を行う。
ST5の判別でNOすなわちi=Nであれば、データ取得可能であったN個の中に把持可能なリンフォースメントWは存在しないとして判別を終了し、ST9に進む。
ST5の判別でYESすなわちi<Nであれば、ST6によってドメイン番号iを1だけインクリメントし(i=i+1)、ドメイン番号i+1に対応する判別対象ワークに対して次回の判別を行うためにST3に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
【0046】
ST7では、ハンド121及びアーム122を用いて1段階把持・配膳を行う。
具体的には、ST3の判別においてYESと判別されたドメイン番号iに対応する把持対象リンフォースメントTを、第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組、及び第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組によって2箇所を把持する1段階把持によってバケット60より把持し、キット台15の配膳面151の配膳位置Waに向けて搬送する。
ST7を実行した結果、バケット60には把持、及び配膳された把持対象リンフォースメントTを除いたリンフォースメントWがバラ積み状態で重なり合うように残されており、これらに対して次回のワーク把持処理が行われる。
【0047】
ST8では、ハンド121及びアーム122を用いて2段階把持・配膳を行う。具体的には、ST4の判別においてYESと判別されたドメイン番号iに対応する把持対象リンフォースメントTを、同様に第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組、及び第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組を用いて「2段階把持」によってバケット60から把持し、キット台15の配膳面151の配膳位置Waに向けて搬送する。「2段階把持」の具体的な処理については後述する。
ST8を実行した結果、同様に、バケット60には把持、及び配膳された把持対象リンフォースメントTを除いたリンフォースメントWがバラ積み状態で重なり合うように残されており、これらに対して次回のワーク把持処理が行われる。
【0048】
ST9では、加振機61を用いてバケット60を振動させ、バケット60に収容されたバラ積み状態のリンフォースメントWを攪拌する。
この攪拌によって、バラ積み状態のリンフォースメントWのそれぞれの3次元姿勢が変更され、この状態に対して次回のワーク把持処理が行われる。
【0049】
次に、ワーク配膳システム1のワーク把持動作のうち「2段階把持」に関して、図6、図7及び図8を参照しながら説明する。図6は、図5のワーク把持処理のフローチャートの一部であり、ワークの「2段階把持」に関する処理のフローチャートである。図7は、「2段階把持」に関して(a)がワークを仮想的に持ち上げる前の状態を、(b)がワークを仮想的に持ち上げた状態を、それぞれ示す模式図である。図8は、「2段階把持」に関する一連の動作を示す模式図である。
【0050】
図5のST4は、より具体的には、図6に示すST41の「第1フィンガF1及び第2フィンガF2に関してフランジ部で把持可能か(領域Aで干渉ないか)」、及びST42の「第3フィンガF3及び第4フィンガF4に関して、フランジ部を仮想的に持ち上げた場合に把持可能か(領域Bで干渉ないか)」の各判別により行う。
このST41の判別及びST42の判別の結果が、両方とも把持可能(干渉しない)の場合、ST4はYESであるとされ判別を終了しST8に進む。ST41の判別及びST42の判別の結果の少なくとも1方が把持不可能(干渉する)の場合、ST4はNOであるとされ判別を継続してST5に進む。
【0051】
以下、ST41及びST42の各判別の内容につき、図7を参照して説明する。
図7は、前述の通り「2段階把持」に関して(a)がワークを仮想的に持ち上げる前の状態を、(b)がワークを仮想的に持ち上げた状態を、それぞれ示す模式図である。
前述の通り、把持対象リンフォースメントTは、判定対象ワーク(ドメイン番号iに対応するリンフォースメントW)をそれ以外のリンフォースメントWと区別する目的で指定されたものである。従って、ドメイン番号がインクリメントされると、把持対象リンフォースメントTは、更新されたドメイン番号に対応するリンフォースメントWに指定し直される。
【0052】
ここにおいて、以下のように定義する。
P:把持対象リンフォースメントTの所定方向に長い形状部分を含む仮想平面
:把持対象リンフォースメントTの反対端部T3(回転中心)
:第2把持部T2(第3フィンガF3及び第4フィンガF4によって把持する位置)
:把持対象リンフォースメントTの所定方向に長い形状部分においてフランジ部T1(第1フィンガF1及び第2フィンガF2によって把持する位置)に対応する所定方向に長い形状部分の位置
02:PとPの距離
12:PとPの距離
θ:把持対象リンフォースメントTと仮想平面Pのなす角度
:把持対象リンフォースメントTを持ち上げたときのPの高さ
:把持対象リンフォースメントTを持ち上げたときのPの高さ
Ha:仮想平面Pからのフランジ部T1の高さ
:第3フィンガF3及び第4フィンガF4における初期姿勢(第1フィンガF1及び第2フィンガF2によって把持するときの第1フィンガF1及び第2フィンガF2の姿勢と同じ高さの姿勢)から伸ばせる最大距離
【0053】
ここで、ワークである把持対象リンフォースメントTを仮想位置に持ち上げたとき、
+Ha=H+L‐‐‐‐(1)
となっていれば第2把持部T2を把持可能である。
また、幾何学的な関係により、
=(L02−L12)〔H/L02〕‐‐‐‐(2)
(2)を(1)式に代入して
=(L02−L12)〔H/L02〕+L−Ha
よって
=〔L02/L12〕(L−Ha)
これを(2)式に代入して、
=[〔L02−L12〕/L12](L−Ha)
【0054】
従って、
領域Aの高さ:Ha
領域Bの高さ:[〔L02−L12〕/L12](L−Ha)
ハンドを上昇させる距離(フランジ部T1における持ち上げ量)
:〔L02/L12〕(L−Ha)
【0055】
以上の計算結果に基づき、ST41の判別及びST42の判別の内容を説明する。
先ず、ST41に関して、ワーク配膳システム1は、把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1をハンド121の第1フィンガF1及び第2フィンガF2によって把持するように設定されている。すなわち、ST41の判別は、前述の通り「第1フィンガF1及び第2フィンガF2に関してフランジ部で把持可能か(領域Aで干渉ないか)」であり、言い換えると、個々のリンフォースメントWの3次元位置・姿勢データに基づき「フランジ部T1を挟む領域である領域Aにおいて他のリンフォースメントWと干渉するかどうか」を判別する。領域Aの仮想平面Pからの高さは、仮想平面Pからのフランジ部T1の高さHaである。
ここで判別結果が把持可能(干渉しない)であれば、次のST42に進む。判別結果が把持不可能(干渉する)であればST5に進む。
【0056】
次にST42に関して、ワーク配膳システム1は、把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1と反対端部T3の中間にある第2把持部T2を、第3フィンガF3及び第4フィンガF4によって把持するように設定されている。すなわち、ST42の判別は、前述の通り「第3フィンガF3及び第4フィンガF4に関して、フランジ部を仮想的に持ち上げた場合に把持可能か(領域Bで干渉ないか)」であり、言い換えると個々のリンフォースメントWの3次元位置・姿勢データに基づき「フランジ部T1を所定量(H)だけ仮想的に持ち上げた場合第2把持部T2を挟む領域である領域Bにおいて他のリンフォースメントWと干渉するかどうか」を判別する。
【0057】
ここで、領域Bの仮想平面Pからの高さは、フランジ部T1(第1フィンガF1及び第2フィンガF2の把持する位置)を仮想的に持ち上げる高さHを用いると以下になる。
=(L02−L12)〔H/L02
また、第3フィンガF3及び第4フィンガF4における初期姿勢から伸ばせる最大距離Lを用いると、以下になる。
=[〔L02−L12〕/L12](L−Ha)である。
【0058】
ここで、判別対象ワークである把持対象リンフォースメントTを仮想的に持ち上げた状態において、把持可能か(領域Bで干渉ないか)の判別に用いる把持対象リンフォースメントT以外の他のリンフォースメントWの3次元位置・姿勢データは、把持対象リンフォースメントTの持ち上げ前のデータを用いる。
【0059】
この判別結果が把持可能(領域Bで干渉しない)であれば、「判別対象ワークであった把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1を実際に高さHだけ持ち上げた場合、把持対象リンフォースメントTの第2把持部T2を挟む領域である領域D(図8(d)参照)において、他のリンフォースメントWと干渉しない。」と推定し、「2段階把持」可能としてST8に進む。
判別結果が把持不可能(領域Bで干渉する)であれば、ST5に進む。
【0060】
図5のST8の処理は、より具体的には、図6に示すST81、ST82、ST83及びST84の一連の処理によって行う。
【0061】
ST81では、ワーク配膳システム1は、先ずアーム122によってハンド121を、把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1が第1フィンガF1及び第2フィンガF2の作動範囲内になるような位置に移動(降下)させた後(図8(a)及び(b)参照)、第1フィンガF1及び第2フィンガF2によって把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1を力制御によって把持する(図8(b)参照)。
力制御は、前述の通り、第1フィンガF1及び第2フィンガF2の指先に設けられた力センサF16、F26が検出した力情報(力の大きさ、向き)とそれぞれのフィンガの目標力指令に基づき位置補正量を生成し、それぞれのフィンガの目標位置指令に加算して追従目標位置とすることによって実行され、例えば第1フィンガF1の力センサF16の検出した力が目標力指令より小さい場合は、第1フィンガF1がより大きな力を発生して力センサF16の検出する力が目標力指令になるような応分の位置補正量を生成し、この位置補正量を加算した追従目標位置に対して第1フィンガF1のサーボモータM11、M12、M13及びM14のフィードバック制御を行うことにより実行する。
【0062】
このとき、ワーク配膳システム1は、第3フィンガF3及び第4フィンガF4を、位置制御によって第3フィンガF3及び第4フィンガF4が把持対象リンフォースメントT及びリンフォースメントWと干渉しないように退避(上昇)させる。
【0063】
ST82では、ワーク配膳システム1は、第1フィンガF1及び第2フィンガF2が把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1を力制御によって把持し、第3フィンガF3及び第4フィンガF4が退避している状態で、アーム122によってハンド121をHだけ上昇させる(図8(c)参照)。この結果、把持対象リンフォースメントTは、フランジ部T1の位置でHだけ持ち上げられる(片持ち把持工程)。
把持対象リンフォースメントTと干渉していたリンフォースメントWは、把持対象リンフォースメントTの一方が持ち上げられることにより、把持対象リンフォースメントTから滑り落とされ、または把持対象リンフォースメントTによって押し除けられ、前述の仮想平面Pからの高さHに上昇した第2把持部T2(第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組によって把持する箇所)は、他のリンフォースメントWと干渉しない状態になる。
【0064】
更に、ワーク配膳システム1は、第3フィンガF3及び第4フィンガF4を位置制御によって、第2把持部T2を挟む領域である領域Dに向けて移動させる(図8(d)参照)。
【0065】
ST83では、ワーク配膳システム1は、第3フィンガF3及び第4フィンガF4によって把持対象リンフォースメントTの第2把持部T2を力制御によって把持する(両持ち把持工程)。
力制御は、同様に、第3フィンガF3及び第4フィンガF4の指先に設けられた力センサF36、F46が検出した力情報(力の大きさ、向き)とそれぞれのフィンガの目標力指令に基づき位置補正量を生成し、それぞれのフィンガの目標位置指令に加算して追従目標位置とすることによって実行される。
ST83では、第1フィンガF1及び第2フィンガF2は既に把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1を力制御によって把持しているため、この段階では全てのフィンガF1乃至F4が力制御によってワークを把持することになる(図8(e)参照)。
【0066】
ST84では、ワーク配膳システム1は、第3フィンガF3及び第4フィンガF4の伸ばし量を調整しながら、把持対象リンフォースメントTをそのキット台15の配膳面151の配膳位置Waに向けて搬送する。
【0067】
ここで、高さH(把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1の持ち上げ高さ)は、前述のH+Ha=H+L‐‐‐‐(1)
を満たすように適宜設定することができるが、高さHを大きく設定するほど高さH(第2把持部T2(第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組によって把持する箇所)の仮想平面Pからの高さ)も大きくなり把持成功率をより高くすることができる。従って、把持不可能の場合における加振機によるワーク攪拌、ワーク把持処理再開のためのワーク配膳システム1の空走時間の削減が可能になる。
の設定は、例えば、最初に大きな値に設定しておき、その値による把持成功率が目標値以上であればHを所定値だけ小さい値に修正し(それを繰り返し)、逆に把持成功率が目標値以下であればHを所定値だけ大きい値に修正する(それを繰り返す)という手法であってよい。
【0068】
しかし、ST8の「2段階把持」処理(具体的にはST81乃至ST84の処理)の処理時間は、逆にHを小さく設定するほど短くなる。従って、高さHの設定は、把持成功率の向上度合い(空走時間の削減度合い)だけでなく、「2段階把持」処理の処理時間の観点を含め、ワーク配膳システム1の全体最適を考慮して設定することが好ましい。
【0069】
以上、配膳しようとする対象ワークであるリンフォースメントW、ワーク602、604及び606の中でリンフォースメントWの「2段階把持」について説明したが、「2段階把持」を行うことができるのは、配膳しようとする対象ワーク(ここでは4種類)の中で1種類には限定されず、他のワーク(例えばワーク602及び604)も同様に「2段階把持」を行うことができる。また、配膳しようとする対象ワークの種類(数、及び所定方向に長い形状のワークであるかどうかのタイプ)は、ティーチングデータを調整することによって任意に設定することができる。
【0070】
本実施形態のワークの把持方法によれば、以下の効果を奏する。
(1) バラ積み状態のワークを多フィンガのハンドで把持しようとする場合に、1段階把持処理では把持不可能であった「他のワークが対象ワークの上に重なって干渉している状態」であっても、「2段階把持」処理によってワークの把持を行うことができ、ワークを把持できるパターンを増加させ、バラ積み状態のワークの把持成功率を向上できる。
(2) (1)の結果、把持不可能の場合に必要であった加振機によるワーク攪拌、その後のワーク把持処理再開のために要するワーク配膳システム1の空走時間を削減することができ、製造工程の効率を向上できる。
(3) 「2段階把持」処理の特性に影響を与える変数である高さH(把持対象リンフォースメントTのフランジ部T1の持ち上げ高さ)は、前述の
+Ha=H+L‐‐‐‐(1)
を満たすように適宜設定することができるため、把持成功率の向上度合い(ワーク配膳システム1の空走時間の削減度合い)、「2段階把持」処理の処理時間の観点を含め、ワーク配膳システム1の全体最適を考慮して設定できる。従って、制御パラメータである高さHの設定によってワーク配膳システム1の全体最適を図ることができる。
(4) 第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組を、第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組に対して傾けることにより、及び/または第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組を第1フィンガF1及び第2フィンガF2の組に対して傾けることにより、把持する2箇所の間隔(L12)を変えることができる。従って、多様なワークに対して「2段階把持」処理を適用することができる。
(5) (4)の通り、把持する2箇所の間隔(L12)を変えることができるため、同じ高さHであっても、前述の
=(L02−L12)〔H/L02〕‐‐‐‐(2)
の関係から高さH(第2把持部T2(第3フィンガF3及び第4フィンガF4の組によって把持する箇所)の仮想平面Pからの高さ)を変えることができる。すなわち、把持する2箇所の間隔(L12)を制御パラメータとして適宜設定することによりワーク配膳システム1の全体最適を図ることができる。
【0071】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、本発明は、自動車のボディ組み付けラインに配置された組み立てシステムにおける所定方向に長い形状のワークの把持・組み付けにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
F1 第1フィンガ(第1の把持装置、把持装置)
F2 第2フィンガ(第1の把持装置、把持装置)
F3 第3フィンガ(第2の把持装置、把持装置)
F4 第4フィンガ(第2の把持装置、把持装置)
T 把持対象リンフォースメント(把持対象ワーク)
W リンフォースメント(ワーク)
A 領域(一方の把持装置挿入箇所)
C 領域(他方の把持装置挿入箇所)
D 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの把持装置を用いてワークを把持するとき、把持しようとする把持対象ワークに対して把持装置を挿入する一方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉がない状態でのワークの把持方法であって、
前記一方の把持装置挿入箇所に第1の把持装置を挿入して前記把持対象ワークを把持して持ち上げる片持ち把持工程と、
前記第1の把持装置によって持ち上げられた前記把持対象ワークのまわりに第2の把持装置を挿入して把持する両持ち把持工程と、を含むワークの把持方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの把持方法であって、前記把持対象ワークに対して前記杷持装置を挿入する他方の把持装置挿入箇所に他のワークとの干渉があるワークの把持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230239(P2011−230239A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103102(P2010−103102)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】