説明

ワーククランプ装置

【課題】外気の流入を抑えることができるワーククランプ装置を提供する。
【解決手段】搬送レール2の側面31にアーム挿入穴41を開設し、アーム挿入穴41にクランプアーム32を挿入する。クランプアーム32にシャッター51を設け、シャッター51を搬送レール2の側面31に密接する。クランプアーム32にワーククランプ81を固定し、ワーククランプ81を搬送部13内配置する。このワーククランプ81をプロセス用開口部21の下方領域83まで延出し、搬送部13内のリードフレームRを押さえられるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上のワークを押さえるワーククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークとしてのリードフレームのパッド上にチップをボンディングするダイボンダにおいては、搬送されるリードフレームを押さえるワーククランプ装置が設けられている。
【0003】
図6は、ワーククランプ装置801を備えた搬送レール802を示す断面図であり、該搬送レール802は、下部を構成するレール部803と、該レール部803上に設けられたカバー804とによって構成されており、前記レール部803に形成された搬送部805は、前記カバー804で閉鎖されている。前記搬送部805には、還元ガスが充満されており、当該搬送部805を搬送されるリードフレーム(図示省略)の酸化を防止できるように構成されている。
【0004】
前記カバー804には、内部に連通する開口部811が設けられており、チップを吸着した図外のボンディングヘッドを前記開口部811から挿入できるように構成されている。これにより、前記ボンディングヘッドで移送されたチップを、前記搬送部805のリードフレームにボンディングできるように構成されている。
【0005】
前記開口部811は、前記ボンディングヘッドより大きめに形成されており、クランプアーム821に設けられたワーククランプ822,822を挿入できるように構成されている。これにより、前記クランプアーム821を上下作動することにより、前記搬送部805上のリードフレームを前記ワーククランプ822,822で押さえた状態で、当該リードフレームにチップをボンディングできるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のワーククランプ装置801にあっては、ワーククランプ822の挿入を可能とする為に、リードフレームの上方に開口した前記開口部811の開口面積を大きくしなければならなかった。
【0007】
また、前記リードフレームが搬送される前記搬送部805に前記ワーククランプ822,822が出入りするため、前記搬送部805内の容積が変動してしまう。
【0008】
これらから、前記開口部811より外気が流入し易く、還元ガスによるリードフレームの酸化防止効果が低下する恐れがあった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、外気の流入を抑えることができるワーククランプ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のワーククランプ装置にあっては、搬送レール内に設けられた搬送部のワークを、クランプアームのワーククランプを下降して押さえるワーククランプ装置において、前記クランプアームを、前記搬送レールの側面に設けられたアーム挿入穴より前記搬送部内に挿入し、前記ワーククランプを前記搬送部内に配置した。
【0011】
すなわち、搬送部のワークを押さえる際には、クランプアームを作動してワーククランプを下降する。このとき、前記クランプアームは、前記搬送レールの側面に設けられたアーム挿入穴より前記搬送部内に挿入されており、前記ワーククランプは、前記搬送部内に配置されている。
【0012】
このため、前記ワーククランプの上下動による前記搬送部内の容積変化が防止される。
【0013】
また、請求項2のワーククランプ装置においては、前記搬送レールの前記側面に摺接して前記アーム挿入穴を閉鎖さするシャッターを前記クランプアームに設けた。
【0014】
すなわち、前記搬送レールの前記側面には、前記クランプアームを挿通するためのアーム挿入穴が開設されている一方、前記クランプアームには、前記搬送レールの前記側面に摺接して前記アーム挿入穴を閉鎖さするシャッターが設けられている。
【0015】
このため、前記アーム挿入穴は、前記シャッターで閉鎖される。
【0016】
さらに、請求項3のワーククランプ装置では、前記搬送レールの上面に設けられた開口部の下方領域と、前記クランプアームが配置されたアーム配置領域との間に、前記搬送部の天面より下方へ向けて延出する壁を設けた。
【0017】
すなわち、前記クランプアームが配置された前記アーム配置領域では、前記クランプアームの作動に伴って脈動が発生する。
【0018】
しかし、前記搬送レールの上面に設けられた開口部の下方領域と、前記クランプアームが配置された前記アーム配置領域との間には、前記搬送部の天面より下方へ向けて延出する壁が設けられており、前記脈動の前記開口部の下方領域への伝達が防止される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明の請求項1のワーククランプ装置にあっては、クランプアームは、搬送レールの側面に設けられたアーム挿入穴より搬送部内に挿入されている。
【0020】
このため、搬送レール上面の開口部の開口面積を前記ワーククランプを挿入できる大きさまで広げなければならなかった従来と比較して、リードフレーム上方に開口する前記開口部の開口面積を小さくすることができる。これにより、前記開口部からの外気の流入を抑えることができる。
【0021】
また、前記クランプアームに設けられたワーククランプは、搬送部内に配置されており、前記搬送部のワークを押さえる為にワーククランプを上下作動した場合であっても、この押さえ動作による前記搬送部内の容積変化を防止することができる。
【0022】
このため、前記搬送部のワークを押さえる際に前記ワーククランプを前記開口部から前記搬送部へ出し入れする度に該搬送部が容積変化する従来と比較して、容積変化に起因した前記開口部からの外気の流入を防止することができる。
【0023】
したがって、前記搬送部内への外気の流入を抑えることができ、前記搬送部内の還元ガスが乱れ前記ワークが酸化を引き起こすといった不具合を解消することができる。
【0024】
また、請求項2のワーククランプ装置においては、前記搬送レールの側面に開設されたアーム挿通穴を、前記クランプアームに設けられたシャッターで閉鎖することができる。
【0025】
このため、前記アーム挿通穴からの外気の流入も防止することができる。
【0026】
さらに、請求項3のワーククランプ装置では、前記搬送レールの上面に設けられた開口部の下方領域と、前記クランプアームが配置された前記アーム配置領域との間に、前記搬送部の天面より下方へ向けて延出する壁を設けることによって、前記脈動の前記開口部の下方領域への伝達を防止することができる。
【0027】
このため、前記クランプアームの作動に伴う脈動が前記開口部の下方領域に伝達される場合と比較して、前記脈動による前記開口部からの外気の巻き込みを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるワーククランプ装置1を示す図であり、該ワーククランプ装置1は、ワークとしてのリードフレームR(図4参照)のパッド上にチップをボンディングするダイボンダの搬送レール2に設けられている。
【0029】
この搬送レール2では、前記リードフレームRが上流から下流へ向けて搬送されるように構成されており、当該搬送レール2は、下部を構成する長尺状のレール部11と、該レール部11上に並設された複数のカバー12とによって構成されている(一つのカバー12のみ図示)。前記レール部11には、前記リードフレームRが搬送される搬送部13が凹設されており、該搬送部13は、前記カバー12で閉鎖されている。この搬送部13には、還元ガスが充満されるように構成されており、当該搬送部13内を搬送されるリードフレームRの酸化を防止できるように構成されている。
【0030】
前記カバー12には、内部に連通するプロセス用開口部21,・・・が三カ所に設けられており、上流側のプロセス用開口部21から半田供給ヘッドを挿入して前記搬送部13内のリードフレームRのボンディングポイントに半田を塗布できるように構成されている。また、中央のプロセス用開口部21からスパンカツールを挿入することにより、前記リードフレームRに塗布された半田を成型できるよう構成されている。そして、下流のプロセス用開口部21からボンディングヘッドを挿入することにより、該ボンディングヘッドで移送したチップを前記半田上に載置してボンディングできるうように構成されている。
【0031】
この搬送レール2の側面31からは、図2及び図3にも示すように、前記ワーククランプ装置1を構成するクランプアーム32が延出している。
【0032】
すなわち、前記カバー12の裏面には、図3及び図4に示すように、当該カバー12の幅方向に延在するアーム挿入穴41が凹設されており、該アーム挿入穴41は、当該カバー12のカバー側面42に開口している。これにより、該カバー側面42及び前記レール部11のレール側面43からなる前記搬送レール2の前記側面31には、前記アーム挿入穴41が開口しており、該アーム挿入穴41には、前記クランプアーム32が挿入されている。
【0033】
前記アーム挿入穴41の高さ寸法は、前記クランプアーム32の高さより大きく設定されており、該クランプアーム32が上下作動した際に、当該クランプアーム32が前記搬送レール2と干渉しないように構成されている。
【0034】
このアーム挿入穴41より外部に延出した前記クランプアーム32の部位には、図2に示したように、矩形ブロック状のシャッター51が設けられている。このシャッター51は、図4の(b)に示したように、当該シャッター51に設けられた矩形穴52に前記クランプアーム32が挿入されており、当該シャッター51は、前記搬送レール2の前記側面31に密接して配置されている。また、前記シャッター51には、ストッパーネジ53が側部から挿通されており、該ストッパーネジ53のネジ部は、前記クランプアーム32の側面に螺入されている。
【0035】
また、前記シャッター51には、スプリング保持部61が凹設されており、該スプリング保持部61には、コイルスプリング62の一端が挿入された状態で固定されている。該コイルスプリング62は、その他端が前記ストパーネジ53の側面に当接されており、当該シャッター51は、このコイルスプリング62からのバネ力によって前記側面31に付勢されている。
【0036】
そして、前記側面31に摺接する前記シャッター51の摺接面51aは、前記クランプアーム32を上下作動した際に、前記カバー側面42及び前記レール側面43に常に摺接するように構成されている。これにより、前記搬送レール2の前記側面31に設けられた前記アーム挿入穴41は、前記シャッター51によって閉鎖されるように構成されている。
【0037】
このアーム挿入穴41の奥側には、図3及び図5に示すように、手前側より幅広の幅広部71が形成されており、該幅広部71は、前記プロセス用開口部21の側部に設けられている。この幅広部71には、前記クランプアーム32の先端部が挿入されており、当該幅広部71内には、前記クランプアーム32が配置されたアーム配置領域72が設定されている。
【0038】
この幅広部71に挿入された前記クランプアーム32の先端部には、一対のワーククランプ81,81がボルト82で固定されており、両ワーククランプ81,81は、図4の(a)及び図5に示したように、前記搬送部13内であって、前記プロセス用開口部21下部の下方領域83まで延出している。各ワーククランプ81,81は、前記クランプアーム32の側面に固定される固定部84と、該固定部84の下端より側方へ延出する延出部85とによってL字状に形成されており、前記固定部84が上方へ向けて延出した状態で固定されている。これにより、前記延出部85の高さ位置が低くなるように構成されている。
【0039】
この延出部85の先端部には、下方へ突出した突出部91が形成されており、該突出部91の下面は、前記リードフレームRを押圧する押圧面92を構成している。これにより、前記クランプアーム32を上下駆動する図外の駆動装置で下降した際に、前記延出部85に設けられた前記突出部91の前記押圧面92で前記搬送部13内の前記リードフレームRに押圧し、該リードフレームRを押さえられるように構成されている(図4参照)。
【0040】
前記下方領域83と前記アーム配置領域72との間には、図4の(a)及び図5に示したように、前記搬送部13の天面101より下方へ向けて延出する区画壁102が設けられており、前記クランプアーム32作動時に前記アーム配置領域72で発生する脈動が前記下方領域83側に伝達されないように構成されている。この区画壁102の下縁には、図3及び図5に示したように、前記各ワーククランプ81,81を挿通する為の切欠部103,103が設けられており、前記各ワーククランプ81,81は、この切欠部103,103を介して前記下方領域83に延出するように構成されている(図5参照)。
【0041】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記搬送レール2に設けられた搬送部13のリードフレームRを押さえる際には、図外の駆動装置によって前記クランプアーム32を作動してワーククランプ81,81を下降する。このとき、前記クランプアーム32は、前記搬送レール2の側面31に設けられたアーム挿入穴41より前記搬送部13内に挿入されており、前記ワーククランプ81,81は、前記搬送部13を構成する前記アーム挿入穴41内に配置されている。
【0042】
このため、前記搬送レール2上面のプロセス用開口部21の開口面積を前記ワーククランプ81,81を挿入できる大きさまで広げなければならなかった従来と比較して、リードフレームR上方に開口する前記プロセス用開口部21の開口面積を小さくすることができる。これにより、前記プロセス用開口部21からの外気の流入を抑えることができる。
【0043】
また、前記クランプアーム32に設けられた前記ワーククランプ81,81は、前記搬送部13内に配置されており、該搬送部13のリードフレームRを押さえる為に前記ワーククランプ81,81を上下作動した場合であっても、この押さえ動作による前記搬送部13内の容積変化を防止することができる。
【0044】
このため、前記搬送部13のリードフレームRを押さえる際に前記ワーククランプ81,81を前記プロセス用開口部21から前記搬送部13へ出し入れする度に該搬送部13が容積変化する従来と比較して、容積変化に起因した前記プロセス用開口部21からの外気の流入を防止することができる。
【0045】
これらによって、前記搬送部13内への外気の流入を抑えることができ、前記搬送部13内の還元ガスが乱れ前記リードフレームRが酸化を引き起こすといった不具合を解消することができる。
【0046】
また、前記搬送レール2の前記側面31には、前記クランプアーム32を挿通するためのアーム挿入穴41が開設される一方、前記クランプアーム32には、前記搬送レール2の前記側面31に摺接して前記アーム挿入穴41を閉鎖さするシャッター51が設けられている。
【0047】
これにより、前記搬送レール2の前記側面31に開口した前記アーム挿通穴41を、前記クランプアーム32に設けられた前記シャッター51で閉鎖することができる。このため、前記アーム挿通穴41からの外気の流入も防止することができる。
【0048】
さらに、前記クランプアーム32が配置された前記アーム配置領域72では、前記クランプアーム32の作動に伴って脈動が発生する。
【0049】
しかし、前記搬送レール2の上面に設けられた前記プロセス用開口部21の下方領域83と、前記クランプアーム32が配置された前記アーム配置領域72との間には、前記搬送部13の101天面より下方へ向けて延出する区画壁102が設けられており、前記脈動の前記プロセス用開口部21の下方領域83への伝達を防止することができる。
【0050】
このため、前記クランプアーム32の作動に伴う脈動が前記プロセス用開口部21の下方領域83に伝達される場合と比較して、前記脈動による前記プロセス用開口部21からの外気の巻き込みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同実施の形態の要部を示す斜視図である。
【図3】同実施の形態のカバーの裏面を示す斜視図である。
【図4】(a)は同実施の形態の横断面を示す図であり、(b)はシャッター部分を示す断面図である。
【図5】同実施の形態の搬送レールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ワーククランプ装置
2 搬送レール
13 搬送部
21 プロセス用開口部
31 側面
32 クランプアーム
41 アーム挿入穴
42 カバー側面
43 レール部側面
51 シャッター
72 アーム配置領域
81 ワーククランプ
83 下方領域
101 天面
102 区画壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送レール内に設けられた搬送部のワークを、クランプアームのワーククランプを下降して押さえるワーククランプ装置において、
前記クランプアームを、前記搬送レールの側面に設けられたアーム挿入穴より前記搬送部内に挿入し、前記ワーククランプを前記搬送部内に配置したことを特徴とするワーククランプ装置。
【請求項2】
前記搬送レールの前記側面に摺接して前記アーム挿入穴を閉鎖さするシャッターを前記クランプアームに設けたことを特徴とする請求項1記載のワーククランプ装置。
【請求項3】
前記搬送レールの上面に設けられた開口部の下方領域と、前記クランプアームが配置されたアーム配置領域との間に、前記搬送部の天面より下方へ向けて延出する壁を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のワーククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−214394(P2007−214394A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33171(P2006−33171)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】