説明

一段階射出−延伸−ブロー成形における延伸/ブロー条件

【課題】メルトインデックスが1.5〜3dg/分で、エチレン含有量がRCPの重量の6重量%以下であるプロピレンとエチレンとのランダム共重合体(RCP)と、必要に応じて用いられる核剤および/または清澄剤とを含む樹脂を用いて、1段階の射出−延伸−ブロー成形で容器を製造する方法。
【解決手段】プレフォームの射出温度Tinjは200〜270℃で、延伸およびブロー温度Tsbは15℃以下の非常に狭い範囲ΔT内に限定され、延伸/ブロー温度Tsbはプレフォームの射出温度Tinjを用いてTsb=105+0.27×(Tinj−200)で表わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1段階の射出−延伸−ブロー成形(injection-stretch-blow- moulding、ISBM)でポリプロピレン成形品を製造するのに用いられる最適の延伸/ブロー条件に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記文献にはISBMで一段階で物品を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】欧州特許第EP-A-151741号公報(三井)
【0003】
この物品はメルトフローインデックスが4〜50dg/分の核剤を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体から製造される。射出成形温度は200〜260℃で、全ての実施例の射出成形温度は220℃である。
下記文献ではISBMで二段階法で物品を製造している。
【特許文献2】国際特許第WO95/11791号公報(Bekum)
【0004】
好ましい樹脂はポリエチレン-プロピレンで、50重量%以上のプロピレンをみ、メルトインデックスは10〜20dg/分である。射出キャビティーへの充填速度は3〜5グラム/秒で、射出温度は約210℃である。
下記文献ではISBMで二段階法で物品を製造している。
【特許文献3】国際特許第WO05/074428号公報(Milliken)
【0005】
樹脂は公知方法で製造されたメルトフローインデックスが6〜50dg/分、好ましくは13〜35dg/分のポリプロピレン組成物である。金型充填速度は5グラム/秒以上で、側壁の最大厚さが3.5mm以下のプレフォーム物品が作られる。実施例で用いている射出温度は230℃と240℃である。
下記文献にはメタロセン触媒を使用して作ったプロピレンのホモ−またはコポリマーをISBMで使用することが開示されている。
【特許文献4】国際特許第WO99/41293号公報(BASF)
【0006】
溶融指数範囲は0.1〜1000dg/分までと広く定義されており、射出温度は200〜280℃である。メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレンの多分散性指数は非常に狭い。
上記の樹脂では特性が理想的にバランスした物品を作ることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1段階の射出−延伸−ブロー成形(injection-stretch-blow-moulding、ISBM)で品質が優れたポリプロピレン物品を作ることにある。
本発明の他の目的は、2軸延伸後に優れた光学特性を有するポリプロピレン物品を射出−延伸−ブロー成形法で製造するための最適な延伸/ブロー条件を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、厚さ分布の良い物品を製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、積み重ね特性に優れた物品を製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、特に低温での耐落下試験性に優れた物品を製造することにある。
上記目的の少なくとも一つの少なくとも一部は本発明によって達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、メルトインデックスが1.5〜3dg/分で、エチレン含有量がRCPの重量の6重量%以下であるプロピレンとエチレンとのランダム共重合体(RCP)と、必要に応じて用いられる核剤および/または清澄剤(clarifying agent)とを含む樹脂を用いて1段階の射出−延伸−ブロー成形で製造される容器であって、射出温度が200℃以上で、延伸およびブロー温度Tsbが15℃以下の非常に狭い範囲ΔT内に限定され、上記延伸/ブロー温度Tsbが射出温度の関数である容器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
メルトフローインデックスMI2はISO 1133規格のテスト方法に従って2.16kgの荷重下で230℃の温度で測定される。
プレフォームの射出温度は少なくとも200℃、好ましくは210℃以上で、270℃以下であるのが好ましい。
【0010】
延伸/ブロー温度範囲は15℃以下の非常に狭いΔTに限定される。この範囲ΔTはプレフォームの射出温度Tinjの関数である。本発明で使用するプレフォームの射出温度範囲の200〜270℃の温度の場合、延伸/ブロー温度Tsbとプレフォームの射出温度Tinjとの間の関係は下記の式で表される:
Tsb = 105+0.27×(Tinj−200)
【0011】
例えば、メルトフローインデックスが約10dg/分の樹脂で、プレフォームの射出温度が210℃の場合の好ましい延伸/ブロー温度範囲は100〜115℃であり、プレフォーム射出温度が260℃の場合の好ましい延伸/ブロー温度範囲は117〜125℃の間である。
【0012】
最高の機械特性は、延伸/ブロー温度範囲が100〜115℃の間で、この範囲の中央でのメルトフローインデックスが約10dg/分の樹脂の場合に得られる。
メルトフローインデックスが低下する場合、プレフォームの射出温度はそれに応じて増加する。延伸/ブロー温度は増加するが、許される温度範囲は15℃以内のままである。
【0013】
本発明はさらに、容器の製造方法に関するものである。
本発明で使用するポリプロピレン樹脂はチーグラー−ナッタ(ZN)触媒系で製造したものが好ましい。ZN触媒系では本来的に多分散性指数が広いポリマーが作られる。多分散性指数は数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnで定義される。メタロセン触媒およびシングルサイト触媒はZN触媒でないということは明らかである。
【0014】
樹脂はプロピレンのランダム共重合体である。好ましいコモノマーはエチレンで、樹脂中のエチレンの量は4.5重量%以下である。好ましい最小値は1重量%である。
樹脂は当該分野で通常使われる核剤または清澄剤を5000ppm以下の比率で含むことができる。核剤が存在する場合、その量は200〜2500ppmにするのが好ましい。
本発明で使用できる核剤または清澄剤はソルビトール、ナトリウム塩、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、タルク、アルミニウム塩またはこれらの組合せの中から選択ができる。
さらに、この分野で一般的に使用される他の添加剤、例えば抗酸化剤または静電気防止剤を加えられることもできる。
【0015】
原材料の溶融温度および種類が1段階のISBMで製造した最終製品の特性に最も影響を与えるパラメータである。メルトインデックスが低い樹脂の場合には過剰な応力を避けるために射出温度を上げるのが好ましい。射出温度を上げると応力を上げずに射出速度を上げることができる。温度が一定の場合、剪断速度は下記で表される:
剪断速度=(32×射出速度)/(3.14159×ゲート直径3
【0016】
溶融温度と剪断速度との関係は正確には分かっていないが、一般に温度が上がると剪断速度は下がるということは知られている。
一定の射出温度の場合、ゲート直径に対する金型充填速度は10cc/秒/mm以下、好ましくは6cc/秒/mm以下、より好ましくは3cc/秒/mm以下である。この分野で一般に使用されるゲート直径は2〜4mmであり、本発明では2.8〜4mmのゲート直径を使用するのが好ましい。
【0017】
射出−延伸−ブロー成形は2つの別体の機械で行なう二段階法(コールドサイクル)か、単一機械で実行する一段階法(ホットサイクル)のいずれでも実行できる。本発明では1段階法が使われ、全ての階段同一機械で実行される。本発明方法は下記の工程から成る:
(1)多重キャビティー金型で射出成形してプレフォームを作る。
(2)必要に応じて、プレフォームを所定加熱プロフィルを有する赤外線オーブン中か、エアーナイフのような十分な熱源の前で再加熱する。
(3)必要に応じて加熱されたプレフォームを平衡化帯域を通してプレフォーム壁に熱を均一に分散させる。
(4)必要に応じてプレフォームをプレ−ブロー階段でブローする。
(5)中心ロッドでプレフォームを軸線方向に延伸する。
(6)プレフォームを高圧空気によって放射方向に延伸する。
【0018】
上記方法では延伸階段がクリティカルな階段である。プレフォームを均一に加熱し、最適化されたプロセスでプレフォームを製造する必要がある。
プレ・ブロー圧力は一般に4〜10バール、好ましくは6〜8バールである。次に、プレフォームの厚さに応じて一般に5〜40バール、好ましくは8〜30バールのブロー圧力で延伸させる。延伸ロッドの速度は1000〜2000mm/秒、好ましくは1400〜1800mm/秒、さらに好ましくは約1600mm/秒である。延伸ロッドの直径はプレフォームの寸法に依存する。延伸ロッドの直径がプレフォームの約2/3の時に最終物品の材料分布が最高になるという結果が得られる。例えば、25mmの直径のプレフォームの場合、好ましい延伸ロッドの直径は約16mmである。
【0019】
本発明のプレフォームから作られた物品は著しく高い光学特性を有し、その本体全体にわたってまたは少なくとも本体の大部分の透明性に優れている。さらに、肉厚分布が均一で、耐落下試験強度に優れ、頂部荷重および積重ね特性に優れている。また、低水蒸気透過性、深絞り可能性、優れた耐熱性、例えばホット充填、マイクロ波加熱または殺菌可能といった多くの望ましい特性を有している。
以下、ISBM容器の特性を示すが、本発明が下記実施例に示すものに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
チーグラー−ナッタ触媒系を用いて製造した以下特性を有したプロピレンのランダム共重合体をテストした:
C2=2.8重量%
MI2=10dg/分
Tm=146℃
Tc開始時=132.3℃
Tcピーク時=117.3℃
TmおよびTcはそれぞれ融点および結晶化温度を表す。
第1の樹脂が核剤も清澄剤含まない(S03)。第2の樹脂は清澄剤として2000ppmのジベンジリデンソルビトール(DBS)を含み(S01)、第3の樹脂は核剤として250ppmのNa11を含む(S02)。
800mlのコーヒカップを成形した:重量=33g。
【0021】
加工パラメータは以下の通り:
射出パラメータ
ゲート寸法=4mm
射出時間=2.15秒
射出速度=15.4グラム/秒
金型温度=15 ℃
延伸/ブローパラメータ
金型温度=15℃
プレブロー遅延=0.2秒(ロッドがプレフォーム中に挿入される瞬間を0時間とする)
プレブロー圧力=8バール
プレブロー空気流=最大開口
プレブロー持続時間=0.4秒
ブロー開始=0.6秒(プレブロー遅延+プレブロ持続時間)
ブロー圧力=38バール
ブロー持続時間=3.4秒
減圧時間=0.6秒(安全上の理由で、ブロー持続時間後で金型開口前)
【0022】
ヘイズはコーヒカップの高さ中央の約56mmの所で、直径の周り4つの点(45、135、225および315°)でISO 14782の方法で測定した。ヘイズ値の結果は上記4つの測定値の平均値を[図1]に示してある。
予想とおリ、核剤を含む樹脂は添加剤を含まない樹脂よりヘイズがはるかに悪い。また、延伸/ブロー温度の増加はヘイズに負の影響を与えることが分かる。
頂部荷重試験はトップ ウエーブ インターナショナル(Top Wave International)社のAC-002で下記条件下で実行した:
プログラム「Heatset」、モードB
距離=10mm
速度= 5mm/秒。
【0023】
頂部荷重の測定はブロー成形から72時間後に空のカップで実行した。結果は[図2]に示してある。
製造から722時間後のDBSを含む樹脂S01の耐頂部荷重は添加剤を含まない樹脂S03で作ったものおよびNa11を含む樹脂S02よりよりわずかに良い。差が著しくなるのは延伸/ブロー温度が低くなったときである。添加剤を含まない樹脂S03で作ったカップは耐頂部荷重が最も悪い。
【0024】
添加剤を含む樹脂S01とS02では耐頂部荷重が延伸/ブロー温度の影響が著しい。延伸/ブロー温度が高くなると耐頂部荷重が下がる。差は20%に達する。
落下衝撃抵抗性は水を充填したカップで測定した。テスト前にカップをテスト温度条件下に24時間維持した。垂直に対して15°傾けた金属プレート上に落下した。結果は[図3]に示してある。
落下衝撃抵抗性は添加剤の影響を受け、特に延伸/ブロー温度が低くなると大きな影響を受ける。核剤を含む樹脂の耐落下試験性は核剤を含まないものより高かった。
3つの樹脂全てで、耐落下試験性は延伸/ブロー温度の影響を強く受けることが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】3つの樹脂S01〜S03での、延伸/ブロー温度(℃)を関数とするヘイズ(%)を表す図。
【図2】3つの樹脂S01〜S03での、延伸/ブロー温度(℃)を関数とする、ブロー階段後72時間の頂部荷重(ニュートン)を表す図。
【図3】3つの樹脂S01〜S03での、延伸/ブロー温度(℃)を関数とする、落下試験の結果(メートル)を表す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスが1.5〜3dg/分で、エチレン含有量がRCPの重量の6重量%以下であるプロピレンとエチレンとのランダム共重合体(RCP)と、必要に応じて用いられる核剤および/または清澄剤とを含む樹脂を用いて、1段階の射出−延伸−ブロー成形で容器を製造する方法であって、
プレフォームの射出温度Tinjが200〜270℃で、延伸およびブロー温度Tsbが15℃以下の非常に狭い範囲ΔT内に限定され、上記延伸/ブロー温度Tsbがプレフォームの射出温度Tinjを用いてTsb=105+0.27×(Tinj−200)で表わされることを特徴とする方法。
【請求項2】
エチレン含有量が4.5重量%以下である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メルトインデックスが15dg/分以下である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プレフォームの射出温度が約210℃で、延伸/ブロー階段を100〜115℃で行なう請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
下記(1)〜(6)の工程から成る請求項1〜4のいずれか一項に記載の1段階の射出−延伸−ブロー成形方法:
(1)多重キャビティー金型での射出成形でプレフォームを作り、
(2)必要な場合には、得られたプレフォームを反射輻射加熱オーブン中かプレフォームに適した所定の温度プロフィルを有する十分な熱源の前でわずかに再加熱し、
(3)必要な場合には、加熱されたプレフォームを平衡化帯域を通してプレフォーム壁に熱を均一に分散させ、
(4)必要な場合には、プレフォームをプレ−ブロー階段で延伸し、
(5)中心ロッドでプレフォームを軸線方向に延伸し、
(6)延伸されたプレフォームを高圧空気によって放射方向に延伸する。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法で得られる容器。
【請求項7】
メルトフローインデックスが1.5〜35dg/分で、エチレン含有量がRCPの重量の6重量%以下であるプロピレンのランダム共重合体と、必要に応じて用いる核剤および/または清澄剤との、1段階の射出−延伸−ブロー成形で耐落下性および頂部荷重抵抗性に優れた容器の製造での使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−541084(P2009−541084A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515871(P2009−515871)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056133
【国際公開番号】WO2007/147848
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】