説明

三次元形状測定装置

【課題】本発明は、測定時間を短くして三次元測定を行える技術を提供する。
【解決手段】光路形成部5が、広帯域光源1からの広帯域光を受けて、参照光路と測定光路とに分岐して入射させ、参照鏡からの反射光と被測定物からの反射光とを合波して撮像手段10へ出力する。一方、光路長可変手段8が測定光路の光路長を変化させる。撮像手段は、その光路長の変化に対して、エイリアシングが生じるタイミングで光路形成部からの出力を撮像することによって、干渉縞を含む干渉縞データを取得する。光路長検出手段20は、撮像手段により取得された干渉縞データからエイリアシングによって生じた周波数成分を除き、干渉縞の特徴値を示す特定光路長を求める構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスペクトラム(以下、波長で説明する。)を有する広帯域光(例えば、白色光)による干渉現象を用いて被測定物の形状を立体的に測定する三次元形状測定装置に関する。特に、広帯域光の一方を遠端に参照鏡を有する参照光路に入射し、広帯域光の他方を遠端に被測定物を有する測定光路へ入射し、参照鏡(反射鏡)及び被測定物からの各戻り光による干渉を生じさせる干渉部(干渉計)において、参照光路又は測定光路のいずれかの光路長を変化して得られた干渉縞が生ずる光路長を基に、被測定物の形状を測定する三次元形状測定装置であって、その干渉縞が生ずる光路長を求める時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、上記の干渉現象を用いた形状測定装置においては、参照光路と測定光路の双方の光路長が等しくなったときに、干渉縞が最大の輝度を示すことを利用している。つまり、参照光路又は測定光路のいずれかの光路長を変化させ(以下、参照光路の光路長を固定とし、測定光路の光路長を変化させるとして説明する。)、そのとき生じる干渉縞が最大の輝度を示す位置の光路長(光路長の変化量:以下「特定光路長」と言う。)を、光路長の変化方向における被測定物の変位として測定している(特許文献1)。
【0003】
特許文献1においては、時間変化とともに光路長を変化させて得られた干渉光を基に、B成分(ブルー色の帯域成分)、G成分(グリーン色の帯域成分)及びR成分(レッド色の帯域成分)に分波して、それぞれ光路長の変化に対する干渉縞の位相の変化を検出して、三者の位相が一致するところの光路長を干渉縞が最大の輝度を示す位置の特定光路長と認定している。認定された特定光路長から形状測定を行っている。
【0004】
【特許文献1】特願2006−371632号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、形状測定装置は、多くの数の被測定物の測定を実施することから、幾らかでも測定時間の短縮を望まれている。短縮するにあたって、改善の対象要素としては、光路長の可変時間(或いは速度)、カメラの撮像時間、撮像回数等があるが、撮像時間は、カメラの撮像素子の固有の最小露光時間の制約を受ける。
【0006】
そこで、以下、測定時間と言う観点から従来技術を考察する。特許文献1の場合は、干渉光のデータを基に干渉縞の位相を特定し、特定光路長を求めているが、このとき、干渉光のアナログデータから、干渉光を表すデジタルデータに変換して、時間領域(光路長領域)のデータをFFT変換して、周波数領域上で各帯域成分に分離し、再び時間領域で各帯域成分の干渉縞を得て、その位相の一致点を求める。このとき、取得したデジタルデータから干渉縞を再現するためには、一般的にはサンプリング定理等からして、その再現しようとする干渉縞の1周期当たり少なくとも3ポイントのデータが取得できる繰り返しの取得タイミングでデジタルデータに変換する必要がある。
【0007】
一般に、形状測定装置において干渉法により測定された干渉縞は、そのデジタルデータによりモデル的には図7(A)のように変化した光路長に対する輝度の変化で表され、そのスペクトラム分布は図7(B)のように周波数対振幅の座標上で表される。このとき図7(A)の干渉縞の包絡線幅Δt(例えば、半値幅:ピークの輝度値が1/2になったところの横軸の幅)は、図7(B)の周波数の帯域幅ΔF(例えば、半値幅:ピークの振幅が1/2になったところの横軸の幅)と相関を有することが知られている。したがって、包絡線幅Δtによっては、図7(B)のように帯域幅ΔFは狭くなり、下部の周波数帯域にΔFcのスペースのある条件が得られる。つまり、帯域幅ΔFが図7(B)の二点鎖線で示されるように周波数が0に(直流成分)近づくまでの広帯域にならないという条件が得られる。
【0008】
サンプリングの定理からすると、サンプリング周波数Fsが、干渉縞に含まれる最高周波数成分より十分に高い周波数であれば、図7(B)のように本来の干渉縞が有する周波数成分を再現できるが、そのサンプリング周波数Fsを低くするに連れ、エイリアシングが生じる。つまり、図7(C)に示すように、本来の所望の周波数成分(実線部分)とエイリアシングによる折返し周波数成分(点線部分)が、再現される周波数が下がる(分周されているのと同様になる。)とともに、図7(D)のように互いに近づき、そして図(E)のように高低がひっくり変える状態になる。
【0009】
そこで、本発明者は、次のことに着眼した。つまり、図7(B)に示すように干渉縞自身の帯域特性にΔFcのスペースがあるため、サンプリング周波数Fsを選ぶことにより、図7(E)に示すように所望の周波数成分と折返し周波数成分とが周波数的に分離した状態にすることができる。したがって、図7(F)のように折返し周波数成分をフィルタで除くとともに、さらにサンプリング周波数を下げたことにより周波数を低くなった分だけ、周波数軸を伸長することにより、再現が可能である。
【0010】
そうすれば、サンプリング定理を満足する周波数より低い周波数でも干渉縞の所望の周波数成分を得ることができる。つまりは、サンプリング周波数Fsを下げた分、データ取得回数を減らすことにより、測定時間の短縮が図れることに着眼した。
【0011】
本発明は、測定時間を短くして三次元測定を行える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的と達成するためには、干渉縞の包絡線幅Δt、帯域幅ΔF、及びその最高周波数Fhとの関係を考察する必要があるが、一般には、干渉縞の周期は、元々の干渉を発生させる源になる広帯域光源の光源の中心波長の周期λの約1/2である。そのときの干渉縞の包絡線幅Δtは、上記したようにその広帯域光源の帯域幅ΔFに依存する。一般には、ΔF≪[1/(λ/2)]<Fhを満足するので、十分に図7(B)のように下部の周波数帯域にスペースΔFc(=Fh−ΔF)を有することができる。
【0013】
具体的には、請求項1に記載の発明は、複数スペクトラムを有する広帯域光を出力する広帯域光源(1)と、該広帯域を、光参照鏡を有する参照光路と被測定物を配置した測定光路とに分岐して入射させ、前記参照鏡からの反射光と照射された前記被測定物の照射範囲の照射位置からの各反射光とを合波して出力する光路形成部(5)と、前記参照光路又は前記測定光路のいずれか一方の光路長を変化させる光路長可変手段(8)と、該光路長可変手段による該光路長の変化に対して、エイリアシングが生じるタイミングで前記光路形成部からの出力を撮像することによって、干渉縞を含む干渉縞データを取得する撮像手段(10)と、前記撮像手段から出力される該干渉縞データから前記エイリアシングによって生じた周波数成分を除き、前記干渉縞の特徴値を示すときの特定光路長を求める光路長検出手段(14)とを備え、求めた該特定光路長を基に、前記被測定物の形状を測定する構成とした。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記光路長可変手段による前記光路長の変化に対して、前記エイリアシングが生じるタイミングとは、該光路長可変手段による該光路長の変化が、前記広帯域光のほぼ中心波長をλとしたとき、λ/6よりを越える間隔である構成とした。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記撮像手段は、固有の最小露光時間で撮像し、かつ前記光路長可変手段が前記光路長を変化させる速度をvとしたとき、前記光路長の変化がλ/(6v)を越える時間間隔を前記タイミングとして撮像する構成とした。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の発明において、前記光路長検出手段は、前記撮像手段から出力される前記干渉縞データを周波数領域のデータに変換して、該撮像手段が前記データを取得における前記エイリアシングによる不要成分を除外して新たな干渉縞データを選択する干渉縞データ選択部(14a)と、該新たな干渉縞データを基に、前記特徴値を表す前記特定光路長を求める光路長算出部(14c)とを備えた。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記光路長検出手段は、前記干渉縞データ選択部で選択された前記新たな干渉縞データから少なくとも2つの波長成分を抽出する波長選択部(14d)を有し、前記光路長算出部は、前記抽出された少なくとも2つの波長成分の位相差がほぼゼロになる前記光路長を前記特定光路長として求める、構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エイリアシングが生じるタイミングで干渉縞データを取得(サンプリング)し、そのエイリアシングに起因して生じた不要周波数成分を除去して、変位を測定する構成であるから、エイリアシングが生じるようにデータ取得タイミングの期間を長くし、つまりデータ取得回数を減らし、その分の光学的処理時間を減らすことができ、測定時間を短縮できる。つまり、主たる測定時間として、[光路長可変時間+データ取得回数×(露光時間+取得処理時間)]で表されるとすると、データ取得回数が減る分だけ、測定時間が短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る実施形態を、図を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の機能構成を示す図である。図2は、干渉縞を説明するための図である。図3は、図1の光路長検出手段を変えた第2の実施形態を示す図である。図4は、図3の干渉縞データ選択部の動作を説明するための図である。図5、図6は、図3の光路長可変手段の動作を説明するための図で、図5は、各周波数成分の干渉縞を示し、図6は、その位相特性を示す。図7は、図1の実施形態においてエイシアリングの影響を除いて干渉縞を求める動作を説明するための図である。なお、図7は、「発明が解決しようとする課題」の欄で本発明の背景を説明するための図でもある。
【0020】
[1.第1の実施形態の全体構成]
第1の実施形態は、上記したように、サンプリング定理を満足するタイミングより遅いタイミング、つまりエイリアシングが生じるタイミングで撮像手段としてのカメラ10により撮像して得られるそれぞれのデータから、エイリアシングにより生じた不要成分を除き、本来のサンプリング定理を満足するタイミングで得られる干渉縞と同等のデータを抽出する。そして、その抽出された干渉縞の強度のピーク値の生ずる光路長(光路長を干渉縞が生ずるまでに光路長を変化させたときの変化量でも良い。)を特定光路長(変位)を求める構成である。
以下の説明で、測定光路の光路長を変化させたときに、干渉縞が生ずる光路長(光路長を干渉縞が生ずるまでに光路長を変化させたときの変化量)を「特定光路長」と言うことがあり、これがその被測定物の形状の変位を示す。
【0021】
図1で、光源1は、干渉を起こさせるために広帯域に亘る多数の波長成分を有する、コヒーレンシーの低い光を出射する白色光源を用いる。コリメータレンズ2は、光源1からの白色光(広帯域光)を集光してビームスプリッター3へ送る。ビームスプリッター3は、白色光の方向を変換して対物レンズ4へ送る。対物レンズ4は、白色光を平行光にしてビームスプリッター5(光路形成部)へ送る。ビームスプリッター5は、対物レンズ4から受けた白色光を2方向へ分岐し、一つは測定光として被測定物7へ送り(ビームスプリッター5から被測定物7への光路を測定光路とする。)、他の一つは参照光として参照鏡6へ送る(ビームスプリッター5から参照鏡6への光路を参照光路とする。)。この例では、ビームスプリッター5と参照鏡6との間は固定、つまり参照光路の光路長は一定の固定長さとされている。
ビームスプリッター5の代わりに、ハーフミラーで構成することもできる。
【0022】
測定光路は、被測定物7の表面上の測定したい所望の照射範囲を同時に白色光で照射される構成にされている。
【0023】
被測定物7は、光路長可変手段としてのピエゾ8の上に搭載されている。ピエゾ8は、圧電素子で構成され、光路長制御手段16からの指示により、連続的に、被測定物7をXY平面(図1の紙面に直交する面)に対してZ軸方向(図1の紙面の上下方向)へ変位(移動)させることにより測定光路の光路長を所定速度で可変制御する。
【0024】
なお、ここでは、本発明における光路長を変化させる可変方法としては、連続的な可変であり、可変速度を一定として、説明するが、後記するカメラ等によるデータ取得タイミングに比べ細かいステップ状に可変しても良い。
【0025】
ピエゾ8は、光路長制御手段16の制御によって、ビームスプリッター5の固定位置に対して測定光路の光路長を変化させる手段(光路長可変手段)である。なお、ここでは、参照光路の光路長を固定、測定光路の光路長を変化させることで説明するが、干渉縞を生成するには、ピエゾ8を参照鏡6へ取り付け、測定光路を固定とし、参照光路の光路長を可変する構成にしても可能である。
【0026】
参照鏡6及び被測定物7のそれぞれから反射されてきた白色光(以下、「戻り光」と言うことがある。)は、ビームスプリッター5で合波(合成)され、さらに対物レンズ4で集光される。戻り光は、ビームスプリッター3を通過して結像レンズ9により平行光にされてカメラ10へ入力される。
【0027】
このとき、光路長制御手段16からの指示で、ピエゾ8が測定光路の光路長を変化させる距離(或いは変化させるときの時間間隔)に応じて、カメラ10が戻り光を撮像することにより、戻り光による干渉縞が撮像される(実際は、撮像は、戻り光を撮像しているだけであるが、中には後に撮像データを展開したときに現れる戻り光による干渉縞を含むので、「干渉縞を撮像」と表現している。)。撮像された干渉縞は、メモリ13に記憶される。このとき、測定光路は、上記のように被測定物7の所望の照射範囲全体を白色光により同時に照射する構成にされているので、照射範囲の各照射位置、つまり測定したい位置(以下、「測定位置」と言う。)からの戻り光に対応する干渉縞が撮像される。
【0028】
なお、図1の光学系の変形としては、対物レンズ4の位置を図1の位置の代わりに、測定光路と参照光路のそれぞれに対物レンズを配置する光学系を構成することもできるので、本発明は、図1の光学系に限らない。ただし、以下の説明は、図1に沿って説明する。
【0029】
カメラ10による撮影のタイミング及びメモリ13による記憶のタイミングは、本発明のデータの取得タイミングであり、いずれも光路長制御手段16により同期して出力される。つまり、光路長制御手段16が所定速度でピエゾ8へ光路長を可変指示する一方で、所定時間間隔のタイミング信号を生成してカメラ10及びメモリ13に送り、そのタイミングでデータの取得を行わせる。つまり、カメラ10及びメモリ13は、そのタイミング信号のタイミングで戻り光の撮像データ(戻り光の輝度を示す輝度データになる。)を取り込み、記憶する。
【0030】
一般に、広帯域光による干渉縞は、広帯域光の中心波長λの半分の繰り返し周期を有する。このλ/2周期の波形を取得して再現するには、エイリアシングの発生を防止するため、通常であれば、その周期に3つのデータが要求されるので、λ/(2×3)より早い繰り返しのタイミングでデータ取得をする必要がある。
【0031】
本発明ではエイリアシングが生じるタイミングでデータを取得しているので、カメラ10による撮影のタイミング及びメモリ13の記憶タイミングは、λ/6より遅い(長い)繰り返し周期(以下、「サンプリングタイミングFs」ということがある。)である。具体的には、光路長制御手段16がピエゾ8を駆動して光路長を可変する速度をvとすれば、光路長制御手段16はλ/6vより遅い時間間隔の制御信号をカメラ10及びメモリ13へ送り、その制御信号のタイミングでデータを取得させる。光路長制御手段16がピエゾ8をアナログではなくステップで駆動させるときは、λ/6vに比べ早い時間間隔のタイミング信号を生成してピエゾ8へ光路長の可変指示をする。
【0032】
結局、メモリ13は、そのタイミング信号の時間間隔をアドレスとして撮像データを記憶する。これらのタイミング進行方向(つまりアドレス方向)が、光路長方向(Z軸方向)を表すことになる。そのとき、その撮像データを測定位置(Xm、Yp)と合わせて記憶する。測定位置(Xm、Yp)の情報は、カメラ10の撮像素子の位置に対応したXY方向の画素の位置である。図2に、メモリ13に記憶されたデータから次に説明する信号処理手段20の処理によって得られた干渉縞の例を示す。
【0033】
信号処理手段20は、光路長検出手段14と変位演算手段15とを備えている。
光路長検出手段14は、図1のように、干渉縞データ選択部14a、光路長算出部14cで構成される。干渉縞データ選択部14aは、メモリ13からの撮像データ、例えば、測定位置(Xm、Yp)のデータを受けて、FFTにより周波数領域のデータに変換する。そうすると、図7(E)に示すようにエイリアシングによる周波数成分(図7(E)点線部分)と本来の干渉縞の周波数成分の各データが存在するので、フィルタにより分離して、エイリアシングによる周波数成分を除き、干渉縞の成分(図7(E)実線部分)を分離して取り出す。
【0034】
その後、干渉縞データ選択部14aは、周波数軸を本来の周波数軸、つまり、エイリアシングを生じないようにデータ取得のときのサンプリングタイミングでサンプリングリングしたときの周波数領域の周波数軸に縮尺を戻して(本来のサンプリング周波数より低い周波数でアンプリングしているため、いわば周波数軸が分周された形で表されるので、それを戻す。)、時間領域のデータに再変換して、つまり干渉縞データとして光路長算出部14cへ送る(図2は、そのときの干渉縞のデータである。)。
【0035】
なお、図2の干渉縞の波形で、干渉縞の特徴値である干渉縞のほぼ中央のピーク位置は、参照光路の光路長と測定光路の光路長が同一になった場合である。また、白色光による干渉縞の波長は、広帯域光の要素となる各波長の合成で作られ、それらの帯域のほぼ中央の波長λの1/2になる。また、図2の白色光による干渉縞の光路長方向への広がり、つまり干渉縞の包絡線の幅Δtは、白色光のコヒーレンシーの程度、言い換えると周波数領域における周波数成分の幅ΔFによる。コヒーレンシーが低いほど、つまりΔFが小さいほど、幅Δは狭くなる(図7(A)、(B)を参照)。干渉縞の周波数成分の最高周波数をFhとすれば、周波数成分の幅ΔFは、ΔF≪[1/(λ/2)]<Fhを満たし、そして、幅ΔFを小さくすると(コヒーレンシーを良くすると)、干渉縞の振幅がほぼ一定になりピークがなくなるので、干渉縞のピーク値を把握できる程度の干渉縞の幅Δtなるように幅ΔFを決定する。例えば、モデル的な説明ながら、幅ΔFを最高周波数Fh/2を下回るように、光源1の帯域幅を決定すれば、図7(E)に示すように、サンプリング後の周波数帯域中の右半分に干渉縞の実周波数成分、左半分にエイリアシングによる周波数成分に振り分けられ、かつFh/2をカットとするハイパスフィルターにより干渉縞の実周波数成分のみを抽出することができる。
【0036】
光路長検出手段14は、干渉縞のピーク位置を求めて、その位置の光路長を決定する(特定光路長)。「ピーク位置」(或いは、「ピークの位置」)とは、白色光による干渉縞の輝度(振幅)が最大(以下、「ピーク」と言う。)となる横軸上の位置であって、図2で、横軸は、測定光路の光路長方向(Z軸方向:図1の紙面の上下方向)であり、また光路長可変するときの時間軸方向(カメラ10により所定時間間隔で撮像されるときの時間軸方向)である。
【0037】
一方、メモリ13に記憶される撮像データは、メモリ13に記憶されたタイミング(サンプリングタイミング)で記憶される(図2は、それらを結んで連続的に表現したものである。)ので、光路長検出手段14は、干渉縞データ選択部14aからは、干渉縞についての離散的なデータを受け取る。このように離散的なため、振幅の極大点と包絡線のピーク位置が一致しないことがあるが、滑らかな特性であるから前後の振幅の極大点から補間演算により、包絡線のピーク位置を求めても良い。例えば、離散的な撮像データから干渉縞のピークを求める方法としては、光路長を段階的に変化させ、その変化した所定の光路長毎に撮像した離散的な撮像データを基に次の処理を行う技術がある。撮像データから得られる干渉縞のデータからデジタル・ハイパスフィルタにより直流成分を除外する。交流成分となったデータを二乗して整流する。整流された繰り返し成分に比べ低い繰り返し成分を通過させるデジタル・ローパスフィルタを通して積分し、干渉縞の包絡線データを算出する。このとき、ピーク位置の細かさの要求に応じて、整流された繰り返し成分の間を例えば二乗特性で補間し、補間された繰り返し成分を積分して包絡線データを求める。この包絡線データのピークとなる位置を求める。なお、撮像データのタイミング(時間間隔)と干渉縞の周期に関わらず、信号処理手段20は、特開平9−318329号公報に記載のように、離散的処理でピーク位置を求めてもよい。
【0038】
変位演算手段15は、被測定物7の測定範囲の各測定位置における干渉縞のピーク位置の光路長、つまり各特定光路長であって、図2の例えば測定位置(Xm、Yp)における特定波長t1と、同様にして求めた、基準測定位置(Xs、Ys)における特定波長t0との差t0−t1から、基準測定位置に対する測定値における被測定物の形状の変位を求める。
【0039】
[第2の実施形態]
図3、図4及び図5を基に説明する(但し、図4は、動作原理を説明するための図でもある。)。第2の実施形態は、図1の第1の実施形態が干渉縞のピーク位置を振幅から求めていたのに対して、複数周波数成分、例えば、レッドの成分の波長における位相とグリーン成分の波長の位相が一致した光路長を特定光路長として求める形態である。図1の信号処理手段20を図3の信号処理手段20aに置き代え、さらに図5のカメラ10をカラーカメラにしたものである。したがって、図1で、光源1は、広帯域に亘る多数の波長成分に少なくとも2波の波長帯域の成分を含む光源であって、ここでは、例えば、レッド、グリーンの各色の波長帯を含む光源を用いる。レッド、グリーンの各色の波長の光を合成して用いても良い。信号処理手段20a以外の他の構成、動作、タイミング等は、図1と同じである。以下、信号処理手段20aについて説明する。
【0040】
図3で干渉縞データ選択部14eは、図1の干渉縞データ選択部14aと基本的に同じであるが、本発明のメインの構成の一つでもあるので、図4を用いて説明する。干渉縞データ選択部14eは、カメラ10やメモリ13が、上記のようにエイリアシングを起こすタイミング(λ/6より長い期間のタイミング)でデータを取得しているので、メモリ13からの時間領域データをFFTで周波数領域データに変換して、そのエイリアシングによる不要成分をフィルタリングして、干渉縞の周波数成分を取得して、かつ周波数軸を元に戻して波長選択部14dへ送る。
【0041】
干渉縞データ選択部14eは、FFTによって、得られた図4(D)のデータのうち、右半分のデータ(図4(D)で薄い灰色で示すデータ)を所望のデータとしてフィルタで選択して残し、その前の周波数帯にある不要成分を除去する。そして図4(D)の周波数軸を伸長して(図4(E)の灰色の領域で示す右半分)元に戻して波長選択部14dへ送る。
【0042】
ここで、図4を用いて、全般的な原理的な説明をしておく。図4(A)は、レッド、グリーンの各波長成分による干渉縞であり、正常なサンプリングタイミングT0(上記λ/6vより早いタイミング)で測定した場合での例である。図4(B)は、図4(A)の周波数領域に変換したデータである。そして、この場合は、フィルタにより左半分のデータが選択され、そして利用される。本発明ように、例えば、正常なサンプリングタイミングのT0の半分で、かつエイリアシングが発生するタイミングでデータ取得(サンプリング)すると、図4(A)に代わって図(C)のような時間領域のデータに得られる。周波数領域のデータとしては、図4(B)のデータに代わって、図4(D)のように図4(B)周波数成分の分布にくらべ、左右の分布が入れ替わったデータが得られる。つまり図4(B)の右側の不要な成分がエイリアシングにより図4(D)の左側の周波数位置に現れ、図4(B)の左側の本来の干渉縞の成分が図4(D)の右側の周波数位置に現れる。そして、図4(D)の周波数軸は、図4(B)周波数軸に比べ、サンプリング周波数の関係で半分にされている。したがって、図4(B)の左の成分波形と図4(D)の右の成分波形が同じなので、これをフィルタで分離し、かつ図4(E)のように縮尺を変えれば、本来得たい図4(B)の左半分の周波数成分のデータを得ることができる。
【0043】
図3で、波長選択部14dは、干渉縞データ選択部14eから送られてきた周波数領域のデータを受けてフィルタにより、例えば、周波数が、ブルー(B)成分、グリーン(G)成分、レッド(R)成分の3つに分類し、それぞれの成分を光路長出部14fへ送る。光路長算出部14f内では、B位相算出部14f1、G位相算出部14f2、R位相算出部14f1mのそれぞれが、時間領域において該当する成分の位相変化を求める(例えば、直交復調して位相を求める。)。図5が光路長の変化(横軸)に対するそれらの各位相変化(縦軸)を示す。そして、光路長決定手段14f4が、図6に示すように、3成分の位相が一致した光路長をその測定位置における特定光路長として決定する。このとき、データが離散的であることから、位相の一致点の光路長を特定しにくい場合は、上記のように補間する等の方法を用いる。
【0044】
上記構成のうち、信号処理手段20,20a及び光路長制御手段16は,CPU及びメモリで構成することができる。
【0045】
以上のように、エイリアシングが生じるタイミングでデータを取得して測定できるので、データ取得回数を減らすことができる。したがって、主たる測定時間として、[光路長可変時間+データ取得回数×(露光時間+取得処理時間)]で表されるとすると、データ取得回数が減る分だけ、測定時間が短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態の機能構成を示す図である。
【図2】干渉縞を説明するための図である。
【図3】図1の光路長検出手段を変えた第2の実施形態を示す図である。
【図4】図3の干渉縞データ選択部の動作を説明するための図である。
【図5】図3の光路長可変手段の動作を説明するための図で、各周波数成分の干渉縞を示す。
【図6】図3の光路長可変手段の動作を説明するための図で、各周波数成分の位相特性を示す。
【図7】第1の実施形態においてエイリアシングの影響を除いて干渉縞を求める動作を説明するための図である。また、「発明が解決しようとする課題」の欄で本発明の背景を説明するための図でもある。
【符号の説明】
【0047】
1 光源
2 コリメータレンズ
3 ビームスプリッター
4 対物レンズ
5 ビームスプリッター
6 参照鏡
7 被測定物
8 ピエゾ
9 結像レンズ
10 カメラ
13 メモリ
14 光路長検出手段
14a、14e 干渉縞データ選択部
14d 波長選択部
14、14f 光路長算出部
15 変位演算手段
16 光路長制御手段
18 ユーザインタフェース
20、20a 信号処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数スペクトラムを有する広帯域光を出力する広帯域光源(1)と、該広帯域光を、参照鏡を有する参照光路と被測定物を配置した測定光路とに分岐して入射させ、前記参照鏡からの反射光と照射された前記被測定物の照射範囲の照射位置からの各反射光とを合波して出力する光路形成部(5)と、前記参照光路又は前記測定光路のいずれか一方の光路長を変化させる光路長可変手段(8)と、該光路長可変手段による該光路長の変化に対して、エイリアシングが生じるタイミングで前記光路形成部からの出力を撮像することによって、干渉縞を含む干渉縞データを取得する撮像手段(10)と、前記撮像手段から出力される該干渉縞データから前記エイリヤシングによって生じた周波数成分を除き、前記干渉縞の特徴値を示すときの特定光路長を求める光路長検出手段(14)とを備え、求めた該特定光路長を基に、前記被測定物の形状を測定することを特徴とする三次元形状測定装置。
【請求項2】
前記光路長可変手段による前記光路長の変化に対して、前記エイリアシングが生じるタイミングとは、該光路長可変手段による該光路長の変化が、前記広帯域光のほぼ中心波長をλとしたとき、λ/6よりを越える間隔であることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状測定装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、固有の最小露光時間で撮像し、かつ前記光路長可変手段が前記光路長を変化させる速度をvとしたとき、前記光路長の変化がλ/(6v)を越える時間間隔を前記タイミングとして撮像することを特徴とする請求項2に記載の三次元形状測定装置。
【請求項4】
前記光路長検出手段は、前記撮像手段から出力される前記干渉縞データを周波数領域のデータに変換して、該撮像手段が前記データを取得における前記エイリアシングによる不要成分を除外して新たな干渉縞データを選択する干渉縞データ選択部(14a)と、該新たな干渉縞データを基に、前記特徴値を表す前記特定光路長を求める光路長算出部(14c)とを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の三次元形状測定装置。
【請求項5】
前記光路長検出手段は、前記干渉縞データ選択部で選択された前記新たな干渉縞データから少なくとも2つの波長成分を抽出する波長選択部(14d)を有し、
前記光路長算出部は、前記抽出された少なくとも2つの波長成分の位相差がほぼゼロになる前記光路長を前記特定光路長として求める、ことを特徴とする請求項4に記載の三次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−74837(P2009−74837A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242193(P2007−242193)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】