説明

三次元隆起構造部を含む繊維強化ポリウレタン成形品

本発明は、リブ、支柱またはドームのような構造部を有する繊維強化ポリウレタン成形品に関し、この構造部も繊維強化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブ、支柱またはドームのような構造部を有する繊維強化ポリウレタン成形品に関し、この構造部も繊維強化されている。
【背景技術】
【0002】
種々のポリマーの繊維強化材は広く使用されている。繊維とポリマーマトリックスを組み合わせることにより、比剛性および比強度は高いがポリマー密度は低い材料が得られる。このため、そのような複合材料は、特に軽量構造物用途において関心が持たれている。この複合材料は、主に、繊維が均一に分布してよい二次元の構造物を製造するのに使用されている。
【0003】
ポリマー構造物における繊維の使用は、例えばUS−A−3,824,201から知られている。マット、不織布、長繊維または連続繊維を、同特許公報に記載されているポリエステル−ポリウレタン組成物で湿潤し、それを硬化する前に切断する。
【0004】
強化ポリマー成形品のために、天然繊維に加えてグラスファイバーを使用することも、定着している。力学的用途のためには、グラスファイバーは多くの場合、ロービング、不織布または織布の形状をとる。グラスファイバーは、高い強度と剛性を有する。
【0005】
グラスファイバーの高い強度は、サイズ剤の影響によるものである。個々のファイバーの破断点伸びは、5%までであり得る。グラスファイバーの引張強さおよび圧縮強さは、ある程度の可撓性を維持しながら、プラスチック材料に特有の剛性をもたらす。
【0006】
グラスファイバーの弾性率は、ガラス固形塊の弾性率とほとんど変わらない。グラスファイバーは、分子配向がランダムな非晶構造を有する。グラスファイバーは、等方性機械的性質を有する。グラスファイバーは、破断するまで理想線形弾性を示す。グラスファイバーは、非常に小さい材料減衰特性しか有さない。ほとんどの場合、有意により軟質なプラスチック材料が使用されるので、グラスファイバー強化プラスチック材料から製造された構成部品の剛性は、弾性率によって、グラスファイバーの方向および体積分率によって、低い程度ではマトリックス材料の性質によって決まる。
【0007】
今日、グラスファイバー強化プラスチック材料は、例えば、航空宇宙工学において、または自動車、輸送機械、建設機械、トレーラハウス、農機具、トラック、セミトレーラーを包含する自動推進構造物、並びに定置式機械または非自走機械およびトラックボックスのためのハウジング部品において極めて重要である。航空宇宙工学では、長繊維含有複合材料が、耐力部品の製造に広く使用されている。自動車産業では、現在、グラスファイバーまたは天然繊維の長繊維が、熱可塑性部品(例えば装備品)の強化に使用されている。
【0008】
長いグラスファイバーをポリマー混合物に混合するならば、長いグラスファイバーは、規則的なパターンで配置されるのではなく、むしろランダムに分布する。ポリマー構造物にランダム配置された長いグラスファイバーは、例えばUS−A−4,791,019から知られている。しかしながら、グラスファイバーを所定の方向に配向する方法もまた知られている。これは例えば、CN 101 314 931 Aに記載されている。
【0009】
更に、二次元要素を繊維強化ポリウレタン層で被覆する方法も知られている。この被覆は、実際の製品の安定性を高める。そのような方法は、例えばWO 2007/075535 A2およびDE 10 2006 046 130 A1に記載されている。
【0010】
繊維強化成形品は、DE 196 149 56 A1およびDE 10 2006 022 846 A1から知られている。ポリマー構造物を強化するために、グラスファイバーに加えてマットも使用されている。そのようなマット、織布または編物はグラスファイバーからなっていてもよい。
【0011】
繊維強化ポリウレタン成形品をRIM(反応射出成形)法により製造する場合、通常、ロボットにより、ポリウレタンと繊維の混合物を開放した型の下型に二次元的に分配する。上型またはパンチで型を閉じることによって、混合物を所望の形状にプレス加工する。圧力により、混合物中に捕捉されていた気泡が放出される。得られる生成物の形状は、型の形状によって決まる。グラスファイバー由来の構造は、圧縮後であっても最終生成物表面に存在することがある。より均一な表面を得るために、種々の長さのグラスファイバーを使用することができる。例えばJP 59−086636 Aは、グラスファイバーが種々の長さを有する、グラスファイバー強化樹脂組成物を記載している。WO 00/40650もまた、ポリウレタン組成物を強化するために長繊維および短繊維を使用している。短繊維は0.635cm(1/4インチ)以下の長さを有し、長繊維は0.635cm(1/4インチ)以上の長さを有する。PUR並びに長繊維および短繊維は、固定質量比で混合する。従って、長繊維がリブに入り込まなければ、リブにおける繊維の総割合は常に、二次元領域における割合より低い。
【0012】
DE 101 20 912 A1は、ポリウレタンから製造された複合材部品、および車体外部品におけるその使用を記載している。対応する複合材部品は2層からなり、1つの層は、彩色適性表面仕上を有する全面短繊維強化ポリウレタンを含む。第二の層は、長繊維強化ポリウレタンを含む。短繊維の使用により、滑らかな、即ち彩色適性の表面が得られる。しかしながら、この層は、長繊維強化層の性質以外の性質(特に機械的性質)を有する。
【0013】
発泡部品の製造方法は、DE 10 2005 034 916 A1から知られている。そのような発泡部品は例えば、繊維強化ポリウレタンからなる。支持材料が、一時的に構造物に挿入される。しかしながら、支持材料はプラスチック材料に結合しないので、対応する支持材料は、硬化後に取り外すことができる。そうすると、得られた発泡部品では、その表面上に構造部が現れる。
【0014】
そのような繊維強化ポリウレタンは、噴霧法によってしばしば製造される。1つのそのような方法は、例えばDE 10 2005 048 874 A1に記載されている。
【0015】
そのような材料の製造は通常、好ましくは圧縮空気により促進して、ポリウレタン(PUR)噴霧混合頭部に固定されたじょうご状適用装置により、強化に使用される長繊維を、ポリウレタン反応混合物噴霧噴流に横方向に導入することによって実施される。ポリウレタン混合物を中央の管付近で製造するデバイスもまた、市販されている。空気流により管内に長繊維を輸送する。管の終端で、新たに混合されたポリウレタン成分の「液体ホース」が、繊維/空気流を湿潤する。材料を長繊維で強化する際、多くの場合、いわゆるロービングを出発材料として使用する。ロービングは、連続した延伸繊維を加撚せずに一束にまとめたものである。まず、ロービングを、PUR噴霧混合頭部に取り付けられているカッターに通し、次いで、切断繊維をポリウレタンで湿潤する。
【0016】
そのような噴霧法では、多くの場合複数の層にわたって、可能な限り均一な繊維−PUR反応混合物の分布が求められる。従って、高い再現性が求められる用途では、ロボットが、シュートを有する噴霧混合頭部をガイドする。
【0017】
主要な利点は、本質的にあらゆる面から、長繊維がポリウレタン反応混合物で湿潤されることである。そのようなPUR湿潤繊維は、単一の構造を有さない。むしろ、不規則に配置された長繊維の間には、空気が混在する。そこで、成形品を製造するための開放型に、PUR湿潤長繊維を導入する。ゆるく積み重なった繊維を、場合により高温で、加圧しながら型を閉じることによって最終的な位置に押し入れる。混在している空気は、この過程で押し出される。そのような方法を用いて、種々の部品、例えば、ダッシュボード支持材、ドア内装品、背もたれ装備品、帽子棚、水平および垂直外装品、例えば、フード、ルーフモジュール、側面装備品を製造することができる。
【0018】
強化のため、相応の部品はしばしば、リブ、支柱、ドームまたは同様の三次元隆起構造部を含む。これらは例えば、後の取り付け、ボルト締および挿入に必要とされる。そのような構造部は、上型やパンチにおける溝および/または円錐形凹部から得られる。しばしば、この凹部のギャップ幅または直径/断面積は非常に小さいので、長繊維は発泡性PURと一緒にキャビティに入り込むことができない。配向がキャビティに一致した長繊維だけが、フォームと一緒にキャビティに入り込むことができる。しかしながら、長繊維のほとんどは傾斜しているので、主にPURが入り込み、繊維は全く入り込まないかまたはほんの僅かしか入り込まない。従って、後に形成されるリブ、支柱および/またはドームが繊維強化されていることを確実にすることができない。
【0019】
繊維を全く含有しないかまたは少ない割合の繊維しか含有しないそのような構造部は、成形品本体の性質以外の性質を有することになる。例えば、少ない繊維が存在するほど、長期熱膨張率は大きくなる。この長期熱膨張率の違いにより、熱負荷をかけると実際の成形品は曲がる。
【0020】
加えて、突出構造部は、低い曲げ弾性率を有する。従って、ドーム、リブおよび/または支柱は十分には強化されていない。従って、力伝達点としてそれらを使用すると、完全に繊維強化されたポリウレタン成形品について可能である負荷より小さい負荷しか保持することができない。いかなる挿入ネジもグリップしないであろう。
【0021】
以下に、噴霧法で成形品に適用される繊維(例えばグラスファイバー)が細長い部品構造部(例えばリブ)に入り込むことができる確率を推定するための、簡単なモデルを記載する。
【0022】
ここでは、以下のことを仮定する:
・個々の繊維は、細長くて硬質であるとする(繊維長>>繊維厚);
・繊維はまず型平面に堆積され、その後、型平面に対して垂直な領域(例えばリブ)に、上昇するマトリックス材料と一緒に輸送される(二次元的に見て);
・繊維配向および繊維長は、繊維がリブに入り込むことができるかどうかの基準としてもっぱら使用される。従って、相当する部品構造部(例えばリブ)の真下に存在する繊維による侵入の確率が推定される。繊維間の相互干渉は、単純化のために除外する。
・リブ幅に突出された繊維長がリブ幅の二倍より小さい場合かつその場合に限り、繊維はリブに入り込むことができる(図1参照)。
・繊維配向(繊維角度)の分布については、全配向の確率が等しい、即ち、繊維配向の優先的な方向付けは存在しないものとする。
【0023】
事象(ここでは、角度0<α繊維<α限界の特定範囲における繊維の適用)発生確率を以下のように定義する:
【数1】

[式中、Pは確率(0〜1の値)、gは好ましい事象数、mは起こり得る事象数である]。
【0024】
起こり得る事象数mは、適用された繊維全ての数に相当する。好ましい事象とは、0°〜α限界の間にある繊維配向の全て、即ち、
【数2】

である。
【0025】
このようにして、上記角度範囲内に繊維が配向する確率として、以下が得られる:
【数3】

【0026】
しかしながら、繊維の完全な360°回転において、リブに入り込むのに好ましい角度範囲は1回だけでなく4回現れる。その角度範囲は、(0<α繊維<α限界)、(180°−α限界<α繊維<180°)、(180°<α繊維<180°+α限界)および(360°−α限界<α繊維<360°)である。従って、リブに繊維が入り込む確率(P)として、以下が得られる:
【数4】

[式中、
【数5】

である]。
【0027】
リブ幅の繊維長に対する比が0.5より大きい場合、繊維配向はもはや重要ではないので、定義によりPは1になる(仮定を参照)。
【0028】
図2は、4つの異なったリブ幅についての、繊維長の関数としての、リブに繊維が入り込む確率(P)を示す。
【0029】
図1は、繊維配向、長さおよびリブ幅の関係を示す。長さがリブ幅の最大二倍である繊維は(繊維角度とは無関係に)常にリブに入り込むことができると仮定する。これは、繊維が1つのリブ縁としか接触せず、リブに引きずり込まれ得る(傾けられる)限界の局面は、繊維とリブ縁との接触点が繊維の中心にある場合であるという考えに基づく。より長い繊維は、角度α繊維が限界角度α限界より小さい場合にのみリブに入り込むことができる。なぜなら、そうでなければ、繊維がリブの両縁上に存在するからである。繊維が1つのリブ縁上にしか存在せず、繊維の中心がリブの外側に存在するならば、そのような繊維はリブに入り込むことができないと考えられる。この仮定により、リブに繊維が入り込む確率が高くなる。なぜなら、繊維が確実に相互に干渉し、実際にはほとんど移動できなくなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】US−A−3,824,201
【特許文献2】US−A−4,791,019
【特許文献3】CN 101 314 931 A
【特許文献4】WO 2007/075535 A2
【特許文献5】DE 10 2006 046 130 A1
【特許文献6】DE 196 149 56 A1
【特許文献7】DE 10 2006 022 846 A1
【特許文献8】JP 59−086636 A
【特許文献9】WO 00/40650
【特許文献10】DE 101 20 912 A1
【特許文献11】DE 10 2005 034 916 A1
【特許文献12】DE 10 2005 048 874 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
従って、本発明の目的は、三次元隆起構造部を有する繊維強化ポリウレタン成形品であって、成形品本体も構造部も繊維で強化されているポリウレタン成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
第一の態様において、この目的は、長繊維に加えて短繊維も含有することを特徴とする、三次元隆起構造部、特にリブ、支柱および/またはドームを有する長繊維強化ポリウレタン成形品であって、リブ、支柱および/またはドームの体積における、短繊維および/または板状充填材の繊維不含有ポリウレタンマトリックスに対する重量比が、隆起構造部以外の二次元領域における、短繊維および/または板状充填材の繊維不含有ポリウレタンマトリックスに対する重量比より大きい、ポリウレタン成形品によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、繊維配向、長さおよびリブ幅の関係を示す。
【図2】図2は、4つの異なったリブ幅についての、繊維長の関数としての、リブに繊維が入り込む確率(P)を示す。
【図3】図3は、ポリウレタン反応混合物と長繊維の混合物を開放した型に導入し、短繊維と一緒にポリウレタンを隆起構造部の対応箇所に局所的に適用し、型を閉じると、短繊維含有ポリウレタン反応混合物がキャビティに自由に流入する工程を示す。
【図4】図4は、短繊維または板状充填材を使用せず、隆起領域が未充填のままである、対応する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
天然繊維または合成繊維を、長繊維として使用することができる。グラスファイバーおよび玄武岩繊維に加えて、炭素繊維、アラミド繊維、天然繊維、例えば麻繊維(サイザル、亜麻)を使用することもできる。グラスファイバーを使用することが好ましい。
【0035】
長繊維は好ましくは、ロービングに由来し、相応に供給されたカッターで切断するので、成形品における繊維は、例えば1〜30cm、好ましくは2.5〜10cmの長さを有する。
【0036】
本発明によれば、三次元隆起構造部、即ち、リブ、支柱および/またはドームは、短繊維強化ポリウレタンを含有する。本発明によれば、用語「短繊維」とは、板状充填材、例えば層状ケイ酸塩、特にマイカを包含する。天然繊維または合成繊維を、短繊維として使用する。短繊維は例えば、ミルドグラスファイバー、玄武岩繊維または炭素繊維であってよい。しかしながら、例えばTremin(登録商標)の商品名で入手可能なウォラストナイト、または同様の鉱物を使用してもよい。本発明によれば、針状結晶であるTremin(登録商標)が好ましい。
【0037】
短繊維/板状充填材の寸法は、その長さ/直径によって定義される。特に、短繊維の長さ/板状充填材の直径は、1μm〜800μm、好ましくは4μm〜600μm、より好ましくは100μm〜500μmである。
【0038】
本発明によれば、図3に示すように、ポリウレタン反応混合物と長繊維の混合物を開放した型に導入する。次いで、ポリウレタンを、短繊維と一緒に隆起構造部の対応箇所に局所的に適用する。短繊維含有ポリウレタン反応混合物を、特にパンチにおけるリブ、支柱および/またはドームのためのキャビティが配置されるこれらの箇所に適用し、型を閉じると、短繊維含有ポリウレタン反応混合物は、キャビティに自由に流入する。
【0039】
リブ、支柱および/またはドームのためのキャビティが型の下型に存在するならば、短繊維含有ポリウレタン反応混合物を、キャビティにまず適用し、次いで、長繊維含有ポリウレタン反応混合物を二次元的に適用することができる。
【0040】
例えば、短繊維は、リブ、支柱および/またはドームのためのキャビティに自由に流入するのに十分なほど短い長さを有する。例えば、短繊維は、場合により発泡してよいPURと一緒にキャビティに流入する。一方、長繊維は傾斜し、PURと一緒にキャビティに入り込むことはできないか、または入り込むとしても困難である。
【0041】
図4に、短繊維または板状充填材を使用せず、隆起領域が未充填のままである、対応する工程を記載する。
【0042】
好ましくは、本発明のポリウレタン成形品は、三次元構造部が存在しない面に結合する付加的な外面層を有する。特に、そのような外面スキン層は、深絞り成形シート、とりわけ、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)からなる深絞り成形シートからなる。
【0043】
成形品は、上記外面スキン層に代えて、いわゆるインモールド塗膜またはゲルコートを含んでなることもできる。インモールド塗装とは、プラスチック成形品の塗装を型内で既に実施する方法である。例えば、反応性が高い二成分塗料を、適当な塗装技術によって型に適用する。その後、本発明に従って、長繊維強化ポリウレタン層を開放型に適用する。続いて、短繊維強化ポリウレタン成分を、上記のように局所的に適用し、型を閉じる。
【0044】
別の態様では、本発明の目的は、繊維強化ポリウレタン成形品の製造方法によって達成される。そのような方法は、長グラスファイバーをポリウレタン反応混合物で湿潤する工程、この混合物を開放した型に導入する工程、短繊維強化PURを局所的に適用する工程、および型を閉じる工程を含む。
【0045】
特に、固体含有気体流を、既に噴霧された反応混合物噴霧噴流には計量添加せずに、なお液体であってまだ噴霧されていない噴流に、混合頭部の混合室において導入する方法が好ましい。
【0046】
本発明では、「PUR反応混合物の液体噴流」とは、とりわけ、気体流に噴霧された反応混合物の微細液滴状態としてはまだ存在していない液体状での、即ち特に粘稠液相での、反応成分を混合するための混合室領域における、PUR材料の流体噴流を意味する。
【0047】
先行技術の方法は本質的に、気体流、またはPUR反応混合物を霧化するための相応のノズルを使用し、固体含有気体流をそのような霧化PUR噴霧噴流に計量添加する。いずれの噴霧噴流についても、この場合、噴霧噴流の主な噴霧方向に対して直角な、隣接した噴霧粒子間の距離は、噴霧ノズルからの距離が増大するとともに増大すると考えられる。固体粒子がポリウレタン液滴または既に湿潤された充填材粒子と衝突し、それによって湿潤される確率は、必然的に急速に減少する。充填材とポリウレタンの混合を本発明の方法に従って混合室内で実施するならば、この状況は変わる。
【0048】
デバイスは、固体を搬送気体流によって混合室へ導入することを特徴としており、固体は、PUR反応混合物の液体噴流に衝突する。固体含有気体流は、2以上の地点から混合室に導入されることによって、混合室内で衝突することができる。隣接する噴霧噴流は互いに大きい角度を形成することができ、円筒形混合室の円周線に対して垂直であってよい。従って、それらは混合室の仮想重心軸において衝突する。しかしながら、それらは、接線方向に導入することもでき、混合室内の流れの主方向に対して直角な円を定義する渦を形成することもある。本発明の方法では、粒子は互いに散逸したり、互いに離れたりすることはできない。なぜなら、混合室壁がそれを妨げるからである。従って、固体は、本発明の方法において混合室内部で損失を伴わずにPUR反応混合物で強制的に湿潤され、均一な気体/固体/PUR材料混合物の一部となる。
【0049】
混合室内の得られた気体/固体/PUR材料混合物の混合の質を、付加的な空気渦によって更に改善することが好ましい。空気渦は、接線方向空気ノズルからの空気によって生成する。空気渦に包囲された円形領域は、混合室内における流れの主方向の軸と直角を成す。
【0050】
本発明によれば、1つの同じPURを、短繊維を使用するためまたは短繊維の割合を高めるために使用してよい。通常の方法では、短繊維をポリオール配合物に添加するので、短繊維の割合は、製造工程を通して変化しない。
【0051】
上型は、後に発泡性PUR反応混合物が入り込むことのできるキャビティを有する。特に、短繊維強化反応混合物が、このキャビティに入り込む。
【0052】
このような本発明の方法によって製造されたポリウレタン成形品は、実際の本体において高い安定性を有するだけではない。短繊維強化ポリウレタン成分が発泡し、上型のキャビティを満たすので、後のドーム、リブおよび/または支柱も繊維強化される。それによって、これらの構造部の高い安定性が達成される。
【符号の説明】
【0053】
参照符号のリスト
1 新たに混合されたポリウレタン
2 長繊維
3 上型
4 リブのための凹部
5 下型
6 新たに混合された短繊維含有ポリウレタン
7 二次元プレス加工された長グラスファイバーを含有する構成要素
8 未強化ポリウレタンで満たされた構成要素からなるリブ
9 短繊維強化ポリウレタンで満たされた構成要素からなるリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維に加えて短繊維も含有することを特徴とする、三次元隆起構造部、特にリブ、支柱および/またはドームを有する長繊維強化ポリウレタン成形品であって、リブ、支柱および/またはドームの体積における、短繊維および/または板状充填材の繊維不含有ポリウレタンマトリックスに対する重量比が、隆起構造部以外の二次元領域における、短繊維および/または板状充填材の繊維不含有ポリウレタンマトリックスに対する重量比より大きい、ポリウレタン成形品。
【請求項2】
長繊維がグラスファイバーを包含することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン成形品。
【請求項3】
長繊維が1〜30cm、特に2.5〜10cmの長さを有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン成形品。
【請求項4】
短繊維が1〜800μm、特に4〜600μmの長さ/直径を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン成形品。
【請求項5】
短繊維がミルドグラスファイバーを包含することを特徴とする、請求項4に記載のポリウレタン成形品。
【請求項6】
短繊維がウォラストナイト繊維を包含することを特徴とする、請求項5に記載のポリウレタン成形品。
【請求項7】
長繊維強化面が外面スキン層を更に含んでなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタン成形品。
【請求項8】
外面スキン層が、深絞り成形シート、特に、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)からなる深絞り成形シートからなることを特徴とする、請求項7に記載のポリウレタン成形品。
【請求項9】
外面スキン層が2層シートを包含することを特徴とする、請求項7に記載のポリウレタン成形品。
【請求項10】
外面スキン層が金属箔、特にアルミニウム箔または鋼箔を包含することを特徴とする、請求項7に記載のポリウレタン成形品。
【請求項11】
外面スキン層がインモールド塗膜またはゲルコートを包含することを特徴とする、請求項7に記載のポリウレタン成形品。
【請求項12】
(a)長繊維をPUR反応混合物で湿潤し、次いで、開放した型に導入する工程、
(b)短繊維強化PUR反応混合物を局所的に適用する工程、および
(c)続いて、型を上型で閉じる工程
を特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のポリウレタン成形品の製造方法。
【請求項13】
工程(a)と(b)を入れ替えることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
i)短繊維含有気体流をポリウレタン反応混合物液体噴流に導入し、短繊維含有ポリウレタン噴流を噴霧し、
ii)場合により、長繊維含有気体流をこの噴霧噴流に導入し、
iii)短繊維および場合により長繊維を含有するPUR噴霧噴流を、開放型内または基材支持体上に噴霧し、
iv)長繊維含有気体流を同時に導入しないのであれば、場合により、i)における短繊維量を増加する
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
リブ、支柱および/またはドームのためのキャビティを有する上型または下型を使用することを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
まず、外面スキン層を開放した型内に配置し、次いで、PUR湿潤長繊維を導入し、その上に、短繊維強化PUR反応混合物を付加的に局所的に適用し、続いて、型を上型で閉じることを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A)】
image rotate

【図4B)】
image rotate

【図4C)】
image rotate


【公表番号】特表2013−503211(P2013−503211A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525908(P2012−525908)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005047
【国際公開番号】WO2011/023322
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】