説明

上下定盤面平行度測定用ボード、上下定盤面平行度測定システムおよび上下定盤面間距離調整方法

【課題】
上下定盤面平行度を高精度で簡易に、かつ高精度で測定する。
【解決手段】
上下定盤面平行度測定用ボード3は、ボード本体31には測定ユニット32の装着部が複数形成され、測定ユニット32は、上定盤21面と下定盤22面との距離に応じて変位する上方付勢された変位子を備えた変位機構部と、変位機構部における変位子の、上定盤21面と下定盤22面との距離が最小となったときの当該距離に相当する変位値Aをデジタル計測する上下定盤面間距離計測部と、上下定盤面間距離計測部122の計測結果を出力する計測結果出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材料に穿孔する、型抜き装置の上定盤と下定盤の平行度を測定するための上下定盤面平行度測定用ボード、上下定盤面平行度測定システムおよび上下定盤面間距離調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、板紙(厚紙),合成樹脂板からなる包装箱、液晶画面等に使用される合成樹脂シート/フィルム等のほとんどの板材製品、シート/フィルム材製品は、原材(板材製品、シート/フィルム材)を、型抜き装置(プレス機)により打ち抜くことで形成される。通常、図14に示すように、この種の型抜き装置90は、型抜き刃ボード80を下定盤902に載置して、型抜き刃ボード80上に原材F(図14ではフィルム)を載せて、上定盤901を型抜き刃ボード80に形成した抜刃(トムソン刃)801の高さまで押し下げて、原材Fの型抜きを行っている。この型抜きにより原材Fは抜き製品Gと抜きカスHに分離される。
この場合、上定盤901と下定盤902の平行度が悪いと、抜き製品Gの寸法精度が低下したり切断部がシャープでなくなり、場合によっては型の破損が生じる。
このように、抜き加工を完全に行えない場合においては、図15に示すように、型抜きの結果を参照しながら、型抜き刃ボード80の底面(上下定盤間の間隔が大きい領域Rに対応する領域)に金属箔Hを貼着することで平行度補償を行っている。この補償作業は相当にやっかいであり、熟練者といえども長時間を要する。しかも、この作業は抜き型の配置を変更したり、抜き型を交換するごとに行わなければならない。
型抜き装置90には、上定盤901の傾斜を補正できるものもあるが、この種の型抜き装置90でも、上下定盤面の平行度が低い(悪い)ときには、当該平行度の調整する必要があるが、平行度自体を測定することはできず、やはり補償作業が相当にやっかいであり、熟練者といえども長時間を要するし、この調整は抜き型の配置を変更したり、抜き型を交換するごとに行わなければならないし、上定盤901や下定盤902の表面に凹凸があるような場合には、上述した金属箔Hを貼着する作業をする必要がある。
【特許文献1】実開平1−139933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上下定盤面の平行度を簡便に測定する技術は提案されていない。たとえば上定盤の周縁部に、高さ測定用センサを設けて、前記平行度を測定する機能を備えた型抜き装置もあるが価格が高価となる(特許文献1)。
実際の現場では、上定盤901と下定盤902の平行度は、対象となる型抜き装置の取り扱いに熟知している作業員が感覚で評価するに過ぎず、定量的な評価ができない。このため、従来の型抜き装置では、上下定盤面の平行度が低い(悪い)ときには、上述した型抜き刃ボード80の底面に金属箔Hを貼着する作業において試行錯誤を繰り返しながら当該平行度の補正を行っているのが現状である。
【0004】
本発明は、プレス機等の型抜き装置の上定盤と下定盤の平行度を簡単に、かつ高精度で測定できる上下定盤面平行度測定用ボード、上下定盤面平行度測定システムおよび上下定盤面間距離調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上下定盤面平行度測定用ボードは、(1)〜(5)を要旨とする。
(1)「 上定盤と下定盤とを備えた型抜きプレス機の、前記上定盤と前記下定盤との平行度を測定するために、前記下定盤に載置されて使用される、ボード本体と少なくとも1つの測定ユニットとを備えた上下定盤面平行度測定用ボードであって、
前記ボード本体には前記測定ユニットの装着部が複数形成され、
前記測定ユニットは、
前記上定盤面と前記下定盤面との距離に応じて変位する上方付勢された変位子を備えた変位機構部と、
前記変位機構部における前記変位子の、前記上定盤面と前記下定盤面との距離Lが最小となったときの当該距離に相当する変位値をデジタル計測する上下定盤面間距離計測部と、
前記上下定盤面間距離計測部の計測結果を出力する計測結果出力部と、
を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0006】
(2)「 前記ボード本体に形成された複数の装着部には前記測定ユニットがそれぞれ設けられていることを特徴とする(1)に記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0007】
(3)「 前記ボード本体に形成された複数の装着部は、前記計測結果出力部からの信号の端子を備えるとともに、前記測定ユニットは前記ボード本体に着脱自在に構成され、
前記ボード本体には、少なくとも1つの前記測定ユニットが装着されることを特徴とする(1)に記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0008】
(4)「 前記測定ユニットは複数で一つのユニットパックを構成し、
前記ボード本体に形成された複数の装着部は、前記ユニットパックが装着できる複数のユニットパック装着部を構成することを特徴とする(3)に記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0009】
(5)「 前記ボード本体の表面には、高さが型抜きプレス機における型抜き高さよりも高いバネ(スプリング)または弾性体(ゴム)が設けられていることを特徴とする(1)から(4)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0010】
(6)「 前記各変位機構部は、前記変位子の上下方向の変位を横方向の変位に変換する機構を備え、前記変位量計測部は、当該横方向の変位を計測することを特徴とする(1)から(5)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0011】
(7)「 前記ボード本体には、計測結果出力部からの計測結果を、記憶装置に転送する端子が形成されていることを特徴とする(1)から(6)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
【0012】
(8)「 前記ボード本体には、計測結果出力部からの計測結果を、コンピュータに転送するポートが形成されていることを特徴とする(1)から(6)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。」
本発明の上下定盤面平行度測定システムは(9),(10)を要旨とする。
【0013】
(9)「 (7)に記載の上下定盤面平行度測定用ボードと、
前記記憶装置が前記ポートを介して前記上下定盤面間距離計測部から取得した前記各変位値に基づき、前記上下定盤面平行度を測定するコンピュータと、を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定システム。」
【0014】
(10)「 (8)に記載の上下定盤面平行度測定用ボードと、
前記ポートを介して前記上下定盤面間距離計測部から取得した前記各変位値に基づき、前記上下定盤面平行度を測定する前記コンピュータと、
を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定システム。」
(11)「 上下定盤面平行度測定用ボードが、下定盤または上定盤が複数領域に分割されて高さ調整がされる型抜きプレス機に使用されることを特徴とする(9)または(10)に記載の上下定盤面平行度測定システム。」
本発明の上下定盤面間距離調整方法は、(12)および(13)を要旨とする。
(12)「 (9)から(11)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定システムを用いた上下定盤面平行度測定方法であって、上定盤および/または下定盤の距離が大きい領域の所定部位に、上下定盤面間距離が等しくなるように金属箔を貼着することを特徴とする上下定盤面間距離調整方法。」
(13)「 (9)から(11)の何れかに記載の上下定盤面平行度測定システムを用いた上下定盤面平行度測定方法であって、上定盤および/または下定盤の距離が小さい領域の所定部位を、上下定盤面間距離が等しくなるように削り取ることを特徴とする上下定盤面間距離調整方法。」
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上下定盤面平行度を高精度で簡易に、かつ高精度で測定することができる。また、本発明の上下定盤面平行度測定システムでは、従来、上下定盤面平行度を、数値で表示できるので、上下定盤面平行度が悪い場合の対処が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を図面を参照して説明する。図1から図4は本発明の上下定盤面平行度測定用ボードの第1実施形態を示す説明図である。図1は型抜きプレス機2の説明図、図2は上下定盤面平行度測定用ボード1を示す説明図((A)は側面説明図、(B)は平面説明図)、図3は測定ユニットの拡大説明図((A)は側面説明図、(B)は平面説明図)、図4は測定ユニットの動作説明図((A)は変位子が変位する前,(B)は変位子が変位した後を示す図)である。
上下定盤面平行度測定用ボード1は、上定盤21と下定盤22とを備えた型抜きプレス機2の、上定盤21と下定盤22との平行度を測定するために使用されるもので、下定盤22の盤面(下定盤面)に載置されるボード本体11と、4つの測定ユニット12(U1,U2,U3,U4)とを備えている。図1では下定盤22は複数の下定盤要素221,222,223,224上に金属板225が載置されて構成されている。
【0017】
ボード本体11には測定ユニット12の装着部111が4つ(S1,S2,S3,S4)形成されている。ボード本体11は、合板、合成樹脂、あるいは合板の厚み内に合成樹脂が充填された板材(本実施形態では平面視四角形であるが本発明はこれには限定されない)からなる。本実施形態では、ボード本体11の縁に近い部分には、型抜きプレス機2における打ち抜き高さ(上定盤21と下定盤22とが最短となる距離であり、たとえば2.3mm)とほぼ同じ幅の型抜き刃112が設けられている。型抜き刃112は、本実施形態では平面視がループ状に形成した帯状刃であるが、ブロックダイ(前記打ち抜き高さとほぼ同じ高さの上部に刃を備えたブロック)であってもよい。型抜き刃112をブロックダイとする場合には、当該ブロックダイは通常ボード本体11の縁に沿った複数箇所に設けられる。また、型抜き刃112は、先端が切断刃として実質機能する(実際に切断できる)ように形成されていてもよいが、本実施形態では切断刃としては実質機能しないように形成されている。
【0018】
特に図4(A),(B)の側面動作説明図にも示すように、測定ユニット12は、変位機構部121と、上下定盤面間距離計測部122と、計測結果出力部123とを備えている。変位機構部121は、装着部111(S1,S2,S3,S4)に装着されており、上定盤21面と下定盤22面との距離に応じて変位する上方付勢された変位子1211を備えている。
【0019】
本実施形態では変位機構部121は、変位子1211の上下方向(垂直方向)の変位を横方向(水平方向)の変位に変換する機構を備えている。具体的には、変位子1211には、補助子1212に接触しており、補助子1212はほぼL字形をなしている。補助子1212のL字の角部は、ピン1213により、垂直円筒部1214に支持され、変位子1211の上下方向の変位が、補助子1212を介して横方向に変位に変換される。補助子1212は、水平円筒部1215に収容されている水平ロッド1216の一端に接触しており、補助子1212の変位が水平ロッド1216に伝えられる。本実施形態では、水平ロッド1216はスプリングにより、補助子1212を押すように付勢されており、これにより変位子1211は上方に付勢される。
【0020】
上下定盤面間距離計測部122は、可動リニヤスケール1222を含むリニヤエンコーダユニット1221を搭載しており、変位子1211の上下方向の変位を測定することができる。すなわち、変位子1211の上下方向の変位は、補助子1212を介して横方向の変位として水平ロッド1216に伝えられ、水平ロッド1216の他端は可動リニヤスケール1222を移動させる。リニヤエンコーダユニット1221は、上定盤21面と下定盤22面との距離Lが最小となったときの当該距離に相当する変位値A(変位量または、基準位置からの変位子の上端までの距離)をデジタル計測してデジタル値として出力する。本実施形態では、距離Lが最小となったときの値を変位値Aとしており、4つの上下定盤面間距離計測部122は、この変位値Aを計測している。以下、図面に表さないが、この変位値AをAmin1,Amin2,Amin3,Amin4とする。
【0021】
このように、変位値Aは、通常は、変位子1211の、基準位置(下定盤22の盤面)から変位子1211の最上端までの距離の最小値(Amin1,Amin2,Amin3,Amin4)である。たとえば、上下定盤面間距離計測部122は、たとえば数十μsごとに、各変位値Aをサンプリングして、時系列的な変位値A(t)を計測し、A(t)のうちの最小値を変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4とすることができる。変位値Aを、変位子1211の上下変位量の最大値とすることもできる、この場合には、変位子1211が上定盤21に接触する前の、下定盤22の盤面から変位子1211上端までの距離を予め測定しておくか、各測定ユニット12における変位子1211として、下定盤22の盤面から上端までの距離が同じものを用いる。そして、コンピュータ(後述する図5(A)の符号4参照)により、このときの変位値(上下変位量の最大値)を上述した変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4(下定盤22の盤面から変位子1211の最上端までの距離の最小値)に変換する。
【0022】
計測結果出力部123は、上下定盤面間距離計測部122の計測結果(変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4)を出力することができる。ここで、計測結果出力部123は、本実施形態ではコンピュータが接続される通信ポートであるが、記憶装置(メモリ)や印刷装置(プリンタ)のポートとすることもできる。本実施形態では、計測結果出力部123からの計測結果は、上下定盤面平行度測定用ボード1の側部に設けられた端子113を介してコンピュータ(あるいは記憶装置や印刷装置)に送出される。
【0023】
図5(A)は、上記の上下定盤面平行度測定用ボード1を用いた本発明の上下定盤面平行度測定システムの第1実施形態を示す説明図である。図5(A)において、型抜きプレス機2の下定盤22は、4つの領域221,222,223,224に分割されて高さ調整ができるように構成され、上下定盤面平行度測定システム3は、上下定盤面平行度測定用ボード1とコンピュータ4とを備えている。
コンピュータ4は、上下定盤面平行度測定用ボード1の4つの計測結果出力部123、端子113を介して各計測結果出力部123から取得した変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4に基づき、上下定盤面平行度を測定することができる。
コンピュータ4は、変位子1211の位置(4箇所)における変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を受け取り、数値表示することができる。また、併せて、ディスプレイ41に、上定盤21と下定盤22を表す模式図を表示することもできる。
【0024】
なお、端子113をメモリスティック等の記憶装置が接続されるスロットとしたときは、上下定盤面間距離計測部122は各変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4をファイルとして記憶装置に転送する。そして、コンピュータ4は、記憶装置から各変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を取得して、上下定盤面平行度を測定することができる。
この測定結果を参照して作業員は、下定盤要素221,222,223,224の何れか(少なくとも1つ)について高さ調整を行うことができる。図5(B)に金属箔Hを下定盤要素の適宜箇所に貼着して上下定盤面間距離を調整する様子を示す。また、金属箔Hを貼着せずに、または金属箔Hを貼着することに併せて、金属板225の表面(または裏面)をミクロン単位で削り取ることもできる。これによっても下定盤要素221,222,223,224の何れか(少なくとも1つ)について高さ調整を行うことができる。
図5(A)の実施形態では、下定盤22が4つの領域221,222,223,224に分割される型抜きプレス機2に、各領域に対応する4箇所の変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を測定できるボードを適用した場合を示した。下定盤が4つよりも多い領域に分割される型抜きプレス機では、下定盤の分割領域に応じて、各領域に対応する箇所の変位値を測定できるボードを用いることが好ましい。
【0025】
図6から図8は本発明の上下定盤面平行度測定用ボードの第2実施形態を示す説明図である。図6において、上下定盤面平行度測定用ボード6は、前述した上下定盤面平行度測定用ボード1と同様、上定盤21と下定盤22とを備えた型抜きプレス機2の、上定盤21と下定盤22との平行度を測定するために使用されるもので、下定盤22の盤面(下定盤面)に載置されるボード本体61と、2つの測定ユニット62(U1,U2)からなるユニットパック620を備えている。
【0026】
ボード本体61には、ユニットパック620が装着されるユニットパック装着部610が2組(G1,G2)形成されている。ユニットパック装着部610は、ボード本体61に形成された4つの装着部S1,S2,S3,S4のうち、S1,S2がG1を構成し、S3,S4がG2を構成する。
ボード本体61は、前述したボード本体61と同様、下定盤22の盤面にセットされるもので、合板、合成樹脂、あるいは合板の厚み内に合成樹脂が充填された板体からなる。本実施形態でも、ボード本体61には、前述した型抜き刃112と同様の型抜き刃612が設けられている。
【0027】
本実施形態では、ユニットパック620は、2つのユニットパック装着部610(G1,G2)に順次装着されるもので、ユニットパック620を構成する2つの測定ユニット62(U1,U2)は、前述した測定ユニット12と同様、変位機構部621と、上下定盤面間距離計測部622と、計測結果出力部623とを備えている。本実施形態では、計測結果出力部623は接触端子6231を含んでおり、ユニットパック装着部610(G1,G2)に形成された接触端子614に接触することができる。本実施形態では、計測結果出力部623からの計測結果は、上下定盤面平行度測定用ボード6の側部に設けられた端子613を介してコンピュータ(あるいは記憶装置や印刷装置)に送出される。
【0028】
変位機構部621は、前述した変位機構部121における変位子1211、補助子1212、ピン1213、垂直円筒部1214,水平円筒部1215,水平ロッド1216と同様の、変位子6211、補助子5212、ピン6213、垂直円筒部6214、水平円筒部6215および水平ロッド6216を備えている。
また、上下定盤面間距離計測部622は、前述した上下定盤面間距離計測部122における可動リニヤスケール1222を有するリニヤエンコーダユニット1221と同様の可動リニヤスケール6222を有するリニヤエンコーダユニット6221を備えている。
ユニットパック620を、2つのユニットパック装着部610(G1,G2)に交互に装着する(2回のプレス動作を行う)ことで、4箇所の変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4が得られる。
【0029】
図9(A)は、図6から図8の上下定盤面平行度測定用ボード6を用いた本発明の上下定盤面平行度測定システムの第2実施形態を示す説明図である。図9(A)において、上下定盤面平行度測定システム7は、図6から図8の上下定盤面平行度測定用ボード6とコンピュータ4とを備えている。
【0030】
図9(A)において、型抜きプレス機2の下定盤22は、4つの領域221,222,223,224に分割されて高さ調整ができるように構成され、コンピュータ4は、上下定盤面平行度測定用ボード6の2つの計測結果出力部623、端子613を介して各計測結果出力部123から取得した4箇所の変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4に基づき、上下定盤面平行度を測定することができる。
コンピュータ4は、図5(A)のコンピュータ4と同様、変位子6211の位置(4箇所)における変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を受け取り、数値表示することができるし、併せて、ディスプレイ81に、上定盤21と下定盤22を表す模式図を表示することもできる。また、端子613をメモリスティック等の記憶装置が接続されるスロットとしたときは、上下定盤面間距離計測部622は各変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4をファイルとして記憶装置に転送する。そして、コンピュータ4は、記憶装置から各変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を取得して、上下定盤面平行度を測定することができる。
この測定結果を参照して作業員は、上下定盤面間距離調整方法により、下定盤22の下定盤要素221,22,223,224の何れか(少なくとも1つ)について高さ調整を行うことができる。
図9(B)に金属箔Hを下定盤要素221,222,223,224の適宜箇所に貼着して上下定盤面間距離を調整した様子を示す。
【0031】
図9(A)の実施形態では、2つの測定ユニット62(U1,U2)からなるユニットパック620を使用したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の測定ユニット62(U1,U2,・・・,Uk)(kは3以上の整数)からなるユニットパック620を使用することもできる。下定盤が4つよりも多い領域に分割される型抜きプレス機では、下定盤の分割領域に応じて、各領域に対応する箇所の変位値を測定できるボードを用いることが好ましい。
【0032】
また、上下定盤面平行度測定用ボード9に複数の装着部S1〜Sm(mは2以上の整数)を形成しておき、1つの測定ユニット91(U1)が装着できるように構成することができる。この場合には、m回のプレス動作によりm箇所の変位値Amin1,Amin2,Amin3,Amin4を測定することができる。図1から図4で説明した上下定盤面平行度測定用ボード1の測定ユニット12(U1,U2,U3,U4)、および図6から図8で説明した上下定盤面平行度測定用ボード6の測定ユニット62(U1,U2)では相互間の校正が必要であるが、上下定盤面平行度測定用ボード9では測定ユニット91(U1)は1つなので相互校正の必要はない。
上記した実施形態では、上下定盤面平行度測定用ボード1,6に型抜き刃112、612を設けた例を説明したが、高さが型抜きプレス機における型抜き高さよりも高いバネ(スプリング等)または弾性体(ゴム等)を、上定盤21と下定盤22とを乖離させるように設けることもできる。
【0033】
図10は本発明の上下定盤面平行度測定用ボードおよび上下定盤面平行度測定システムの第3実施形態を示す説明図である。図10において、上下定盤面平行度測定用ボード3は、上定盤21と下定盤22とを備えた型抜きプレス機2の、上定盤21と下定盤22との平行度を測定するために使用されるもので、下定盤22の盤面(下定盤面)に載置されるボード本体31と、5つの測定ユニット32(U1,U2,U3,U4,U5)とを備えている。図10では図1と同様、下定盤22は複数の図示しない下定盤要素(図1の符号221,222,223,224参照)上に金属板225が載置されて構成されている。
【0034】
ボード本体31は、合板、合成樹脂、あるいは合板の厚み内に合成樹脂が充填された板材(本実施形態では平面視四角形であるが本発明はこれには限定されない)からなる。本実施形態では、ボード本体31上には、高さ(厚み)が型抜きプレス機2における打ち抜き高さ(上定盤21と下定盤22とが最短となる距離であり、たとえば2.3mm)よりも高い弾性体(ゴム板33)が設けられている。このゴム板33により、実際のプレス時に上定盤21と下定盤22との間に作用する力を模擬することができる。
【0035】
測定ユニット32は、図示しない変位機構部と、上下定盤面間距離計測部と、計測結果出力部とを備えており、変位機構部は、上定盤21面と下定盤22面との距離に応じて変位する上方付勢された変位子(たとえば金属板材)を備えている。
【0036】
本実施形態では、変位機構部は変位子を上方向に付勢する機構を備えている。測定ユニット32として、電磁測定型、静電容量測定型等の距離センサを用いることができ、上定盤21面と下定盤22面との距離Lが最小となったときの当該距離に相当する変位値(変位量または、基準位置からの変位子の上端までの距離)をデジタル計測してデジタル値として出力することができる。本実施形態では、距離Lが最小となったときの値を変位値Aとしており、5つの測定ユニット32(U1,U2,U3,U4,U5)の各変位子は、この変位値Aを計測している。
図10では、測定ユニット32からの信号は、インタフェース回路42に入力され、インタフェース回路44は、測定ユニット32からの応答信号をデジタル信号に変換してコンピュータ4に出力する。なお、図10では、有線により測定ユニット32からの信号をインタフェース回路42を介してコンピュータ4に出力しているが、ワイヤレス(無線通信,赤外線通信)により測定ユニット32からの信号をコンピュータ4に出力するようにもできる。
【0037】
図11(A),(B)は電磁測定型距離センサを用いた測定ユニット32の一例を示す側面説明図および平面図である。図11(A)に示すように変位子181は4本の摺動ピンP1〜P4を備えており(P3,4は図示されてない)、これらのピンP1〜P4は基台182に設けられた穴に摺動自在に挿着されている。基台182の上には電磁測定型距離センサ183が設けられており、センサ183は、変位子181との距離をうず電流変化(インピーダンス変化)としてコンピュータ45(図9(A)参照)に出力する。
上記の電磁測定型距離センサは、図12(A),(B)に示すような器具185により校正することができる。この器具185は、上部186と下部187とからなり、図12(A)に示すように測定ユニット32が下部187にセットされる。図12(B)に示すように上部186を下部187に結合することで、各測定ユニット32の校正ができる。
【0038】
変位値Aは、通常は、各変位子の、基準位置(下定盤22の盤面)から変位子の最上端までの距離の最小値であり、たとえば、測定ユニット32(U1,U2,U3,U4,U5)はリアルタイムで、この値を検出することができる。そして、測定結果はデータ出力端子34を介してコンピュータ4に送出される。コンピュータ4は、測定ユニット32(U1,U2,U3,U4,U5)の変位子の位置(5箇所)における変位値を受け取り、数値表示することができる。また、併せて、ディスプレイ41に、上定盤21と下定盤22を表す模式図を表示することもできる。
【0039】
なお、図1の場合と同様、データ出力端子34をメモリスティック等の記憶装置が接続されるスロットとすることもできる。
この測定結果を参照して作業員は、上下定盤面間距離調整方法の実施をすること、すなわち、図13に示すように、金属箔Hを下定盤要素の適宜箇所に貼着して上下定盤面間距離を調整することができる。この場合、金属箔Hを貼着せずに、または金属箔Hを貼着することに併せて、金属板225の表面(または裏面)をミクロン単位で削り取ることもできる。
なお、下定盤22が複数の領域に分割されていない型抜きプレス機にも図1および図10の実施形態が適用できることが言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態における上下定盤面平行度測定用ボードが載置された型抜きプレス機の説明図である。
【図2】第1実施形態の上下定盤面平行度測定用ボードを示す図であり、(A)は側面説明図、(B)は平面説明図である。
【図3】第1実施形態の上下定盤面平行度測定用ボードの測定ユニットの拡大図であり、(A)は側面説明図、(B)は平面説明図である。
【図4】第1実施形態の上下定盤面平行度測定用ボードの測定ユニットの動作説明図、(A)は変位子が変位する前,(B)は変位子が変位した後を示す図である。
【図5】(A)は図1から図4の上下定盤面平行度測定用ボードを用いた本発明の上下定盤面平行度測定システムの第1実施形態を示す説明図、(B)は本発明の上下定盤面間距離調整方法により下定盤に金属箔を貼着して上下定盤面間距離を調整した例を示す図である。
【図6】本発明の上下定盤面平行度測定用ボードの第2実施形態における上下定盤面平行度測定用ボードが載置された型抜きプレス機の説明図である。
【図7】第2実施形態の上下定盤面平行度測定用ボードを示す図であり、(A)は側面説明図、(B)は平面説明図である。
【図8】(A)は第2実施形態の上下定盤面平行度測定用ボードにおける測定ユニットの拡大図であり、(A)は側面説明図、(B)は平面説明図、(B)は本発明の上下定盤面間距離調整方法により下定盤に金属箔を貼着して上下定盤面間距離を調整した例を示す図である。
【図9】図6から図8の上下定盤面平行度測定用ボードを用いた本発明の上下定盤面平行度測定システムの愛2実施形態を示す説明図である。
【図10】本発明の上下定盤面平行度測定用ボードおよび上下定盤面平行度測定システムの第3実施形態を示す説明図である。
【図11】(A)は電磁測定型距離センサを用いた測定ユニットの一例を示す側面図、(B)は同じく測定ユニットの校正器具を示す平面図である。
【図12】(A),(B)は校正器具の使用の様子を示す図である。
【図13】本発明の上下定盤面平行度測定方法の一例を示す説明図である。
【図14】従来の型抜き装置における型抜きを示す説明図である。
【図15】型抜きの結果を参照しながら、型抜き刃ボードの底面に金属箔を貼着することで平行度補償を行う従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1,3,6,9 上下定盤面平行度測定用ボード
2 型抜きプレス機
4,8 コンピュータ
5 記憶装置
7 上下定盤面平行度測定システム
11,31 ボード本体
12,32,62,91,U1,U2,U3,U4,U5 測定ユニット
21 上定盤
22 下定盤
32 ゴム板
41,81 ディスプレイ
61 ボード本体
111,S1,S2,S3,S4 装着部
112,612 型抜き刃
113,613 端子
121,621 変位機構部
122,622 上下定盤面間距離計測部
123,623 計測結果出力部
221,222,223,224 下定盤要素
225 金属板
610,G1,G2 ユニットパック装着部
614,6231 接触端子
620 ユニットパック
1211,6211 変位子
1212,5212 補助子
1213,6213 ピン
1214,6214 垂直円筒部
1215,6215 水平円筒部
1216,6216 水平ロッド
1221,6221 リニヤエンコーダユニット
1222,6222 可動リニヤスケール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤と下定盤とを備えた型抜きプレス機の、前記上定盤と前記下定盤との平行度を測定するために、前記下定盤に載置されて使用される、ボード本体と少なくとも1つの測定ユニットとを備えた上下定盤面平行度測定用ボードであって、
前記ボード本体には前記測定ユニットの装着部が複数形成され、
前記測定ユニットは、
前記上定盤面と前記下定盤面との距離に応じて変位する上方付勢された変位子を備えた変位機構部と、
前記変位機構部における前記変位子の、前記上定盤面と前記下定盤面との距離が最小となったときの当該距離に相当する変位値をデジタル計測する上下定盤面間距離計測部と、
前記上下定盤面間距離計測部の計測結果を出力する計測結果出力部と、
を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項2】
前記ボード本体に形成された複数の装着部には前記測定ユニットがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項3】
前記ボード本体に形成された複数の装着部は、前記計測結果出力部からの信号の端子を備えるとともに、前記測定ユニットは前記ボード本体に着脱自在に構成され、
前記ボード本体には、少なくとも1つの前記測定ユニットが装着されることを特徴とする請求項1に記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項4】
前記測定ユニットは電磁測定型または静電容量測定型の距離センサを有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項5】
前記ボード本体の表面には、高さが型抜きプレス機における型抜き高さよりも高いバネまたは弾性体が設けられ、または、
前記ボード本体には、高さが型抜きプレス機における型抜き高さを有する型抜き刃が設けられている
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項6】
前記ボード本体には、計測結果出力部からの計測結果を、記憶装置に転送する端子が形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項7】
前記ボード本体には、計測結果出力部からの計測結果を、コンピュータに転送するポートが形成されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の上下定盤面平行度測定用ボード。
【請求項8】
請求項7に記載の上下定盤面平行度測定用ボードと、
前記記憶装置が前記ポートを介して前記上下定盤面間距離計測部から取得した前記各変位値に基づき、前記上下定盤面平行度を測定するコンピュータと、
を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定システム。
【請求項9】
請求項7に記載の上下定盤面平行度測定用ボードと、
前記ポートを介して前記上下定盤面間距離計測部から取得した前記各変位値に基づき、前記上下定盤面平行度を測定する前記コンピュータと、
を備えたことを特徴とする上下定盤面平行度測定システム。
【請求項10】
上下定盤面平行度測定用ボードが、下定盤または上定盤が複数領域に分割されて高さ調整がされる型抜きプレス機に使用されることを特徴とする請求項8または9に記載の上下定盤面平行度測定システム。
【請求項11】
請求項8から10の何れかに記載の上下定盤面平行度測定システムを用いた上下定盤面平行度測定方法であって、上定盤および/または下定盤の距離が大きい領域の所定部位に、上下定盤面間距離が等しくなるように金属箔を貼着することを特徴とする上下定盤面間距離調整方法。
【請求項12】
請求項8から10の何れかに記載の上下定盤面平行度測定システムを用いた上下定盤面平行度測定方法であって、上定盤および/または下定盤の距離が小さい領域の所定部位を、上下定盤面間距離が等しくなるように削り取ることを特徴とする上下定盤面間距離調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−14925(P2008−14925A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274521(P2006−274521)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(598056733)株式会社▲高▼橋型精 (31)
【Fターム(参考)】