説明

不活性閉塞基を有する重合体

【課題】 高い規定度のアルカリ現像液を用いて、ミクロ橋かけを生ぜず、優れた解像力と感光速度を有するホトレジスト、およびそれに適する新規な重合体を提供する。
【解決手段】 フェノール単位および場合によってはシクロヘキサノール単位を含む(共)重合体において、上記の単位の環上のヒドルキシル基の一部を、不活性な閉塞基で置換した共重合体;およびそれを高分子結合剤として用いたネガ型ホトレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合体に関し、またサブミクロンの大きさの高分解能の微細像を形成する能力をもつ、遠紫外線への暴露に特に適したホトレジストの配合のための該新規な重合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ホトレジストとは、基板への像の転写に用いられる感光性被膜である。ネガ型またはポジ型の像を形成する。基板上にホトレジストを被覆した後、被膜は、パターン形成されたホトマスクを通して、紫外線のような活性化エネルギー源に暴露されて、潜像をホトレジスト被膜上に形成する。ホトマスクは、活性化照射線に対して不透明な領域と透明な領域を有する。ホトマスクにおける不透明なおよび透明な領域のパターンが、基板上への像の転写に使用されうる所望の像を決定する。浮き出した像は、レジスト被膜の潜像パターンの現像によって得られる。ホトレジストの使用は、たとえば、Deforest著「Photoresist Materials and Process」Mcgraw Hill Book Company、ニューヨーク(1975)、およびMoreau著「 Semiconductor Lithography, Principles, Practice and Materials」Plenum Press、ニューヨーク(1988)によって概説されている。
【0003】
既知のホトレジストは、現存する多くの工業的応用に十分な解像度およびサイズを有する微細像を提供する。しかし他の多くの応用に対して、サブミクロンの大きさの高い解像度の像を提供する新しいホトレジストの必要性が存在する。
【0004】
高度に有用なホトレジスト組成物は、Thackerayらの米国特許第5,128,232号明細書に開示されている。該特許は、とりわけ、非芳香族環状アルコール単位とフェノール単位の共重合体を含むレジスト樹脂結合剤の使用について開示している。この開示されたホトレジストは、特に遠紫外線(DUV)照射への暴露に適している。これらの先行技術において認められるように、DUV照射は、約350nmかそれ以下の領域に波長をもつ照射線、さらに特徴的には300nmかそれ以下の領域の照射線にホトレジストを暴露することに関わる。
【0005】
非芳香族環状アルコールとフェノール単位とのコポリマーが特に適しているホトレジスト類は、樹脂結合剤、光酸発生剤または光塩基発生剤、および活性化照射線への暴露と、硬化を完全にするのに必要な加熱において、組成物の化成、架橋または硬化をもたらす1種またはそれ以上の他の物質を含む組成物である。好ましい組成物は、光酸発生剤、非芳香族環状アルコール単位とフェノール単位とを含む樹脂結合剤、およびAmerican Cyanamid Co.から得られるCymel樹脂に例示されるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂のような、アミノ基をベースとした架橋剤を含む酸硬化ホトレジストである。これらの酸硬化レジストは、ここに従来のDUV活性化、酸硬化ホトレジスト組成物と、それらを使用する工程が、参考文献として示す欧州特許第0164248号、同0232972号および米国特許第5,128,232号公報を包含する数多くの刊行物に記載されている。
【特許文献1】欧州特許第0164248号明細書
【特許文献2】欧州特許第0232972号明細書
【特許文献3】米国特許第5,128,232号明細書
【非特許文献1】Deforest著 「Photoresist Materials and Process」Mcgraw Hill Book Company,ニューヨーク(1975)
【非特許文献2】Moreau著「Semiconductor Lithography, Principles, Practice and Materials」Plenum Press,ニューヨーク(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホトレジストの重要な性質は、解像度である。幅が1μmを越えない線を有し、さらに垂直の側壁を有する現像されたホトレジスト像は、下部の基板に微細な線像の転写を可能とするため、切実に求められている。数多くの因子が高解像度の形成に関わっている。そのひとつの因子が、ホトレジスト被覆像の現像で使う現像液の強さである。現像工程で迅速にホトレジスト被膜に浸透し、また、現像した像から迅速に残留成分を除去するために、強く、規定度の高い現像液の使用が望まれている。結果として現像液は、暴露したホトレジスト被膜の現像を望まない部分に影響を及ぼすような強さより、ほんのいくらか低い強さで使用される。
【0007】
実施においては、強い現像剤が先に述べたような酸硬化ホトレジストの現像に使用された場合、特に、使用した樹脂結合剤が、芳香族環状アルコールとフェノールのコポリマーである場合に、現像の問題が生じている。その問題は、現像された微細像の間のミクロ橋かけに関わる。ここに使われるミクロ橋かけという言葉は、現像されたホトレジスト被膜において、隣り合うホトレジスト微細像の間に架かる微細なテンドリルまたはストランドの列を意味する。例証の目的に、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)現像液の使用により、ミクロ橋かけは、0.20NのTMAHを越えた現像液の強さで生ずる。しかし、最良の結果のためには、TMAH現像液は、約0.26NのTMAHの強さで用いることが望まれる。以上のことから、ミクロ橋かけの問題により、使用可能なTMAH現像液の強さ、約0.15NのTMAHまでに制約される。このTMAH現像液の強さの減少は、解像度、鮮明な現像および現像時間を犠牲にしてもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに記載する本発明は、酸または塩基発生剤、酸または塩基により活性化される架橋剤、および不活性閉塞基によってヒドロキシル基の一部が閉塞されている、ヒドロキシル基で置換されている環を有するアルカリ可溶性樹脂を含むホトレジスト組成物を含む。閉塞基に関連して使用される不活性という言葉は、ホトレジスト組成物の暴露および焼付けの過程で発生する酸または塩基の存在下で、化学的に反応性がないとして定義される。
【0009】
強い現像剤の使用によるミクロ橋かけの原因はわかっていない。樹脂結合剤上の不活性閉塞基の使用によるミクロ橋かけの排除は、同様にわかっていない。実際に、ホトレジスト組成物の硬化の際に、反応のために得られる架橋サイトの数を不活性閉塞基が減少させることから、不活性閉塞基の使用により、高い分解度の像が得られるにもかかわらず、ミクロ橋かけは実質的に排除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において酸硬化型ホトレジストに使用する高分子結合剤は、ヒドロキシル基で置換された環を含有するアルカリ可溶性樹脂であり、少量の割合のヒドロキシル基は、ホトレジスト塗布における暴露および焼付けの間に発生した酸または塩基に不活性な基で置換されている。代表的なアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂、ポリ(ビニルフェノール)類、ポリスチレン類、ビニルフェノールとメタアクリル酸メチルのような各種のアクリレート単量体とのコポリマーなどが例示される。本発明のホトレジストに使用される好ましい樹脂は、フェノール樹脂であり、好ましいフェノール樹脂は、米国特許第5,128,232号明細書に開示されているような、少量の割合のヒドロキシル基が、さらに不活性基によって閉塞されることにより改質された環状アルコール類とフェノール類との共重合体である。
【0011】
ホトレジスト架橋剤として用いられる通常のノボラック樹脂またはポリ(ビニルフェノール)樹脂の製造の手順は、周知の技術であり、先に述べたものを含めて数多くの刊行物に開示されている。ノボラック樹脂は、フェノールとアルデヒドの熱可塑性の縮合反応生成物である。ノボラック樹脂の生成のためのアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの重合に適したフェノール類の例としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールおよびチモールが包含される。酸触媒による縮合反応は、結果として500〜10,000Daの分子量の適切なノボラック樹脂を与える。ホトレジストの形成に通常用いられる好ましいノボラック樹脂は、クレゾールとホルムアルデヒドの縮合反応生成物である。
【0012】
ポリ(ビニルフェノール)樹脂は、カチオン触媒の存在下において、対応する単量体のブロック重合、乳化重合または溶液重合により形成されうる熱可塑性の重合体である。ポリ(ビニルフェノール)樹脂の製造に有用なビニルフェノール類は、たとえば、工業的に入手できるクマリンまたは置換クマリンの加水分解と、それに続く、得られた水酸化ケイ皮酸の脱炭酸により製造することができる。有用なビニルフェノール類はまた、対応する水酸化アルキルフェノール類の脱水素、またはマロン酸と置換もしくは非置換の水酸化ベンゾアルデヒドとの反応により得られる水酸化ケイ皮酸の脱炭酸により製造することができる。このようなビニルフェノールから製造されたポリ(ビニルフェノール)樹脂は、2,000〜100,000Daの分子量を有する。
【0013】
先に述べたように、本発明の目的に望ましい樹脂は、フェノール類と非芳香族環状アルコール類の、ノボラック樹脂およびポリ(ビニルフェノール)樹脂に構造的に類似した重合体である。これらの重合体は、さまざまな手段で形成することができる。たとえば、ポリ(ビニルフェノール)樹脂の通常の製造において、環状アルコールが、重合反応の過程でコモノマーとして反応混合物に添加され、その後、反応は通常に実施される。該環状アルコールは、脂肪族であることが好ましいが、1個または2個の二重結合を含有してもよい。また、該環状アルコールは、フェノール反応体に最も近い構造のものが好ましい。たとえば、樹脂がポリ(ビニルフェノール)樹脂であるならば、対応する共単量体は、ビニルシクロヘキサノールとなるだろう。
【0014】
上記の重合体の好ましい形成法は、あらかじめ形成されたノボラック樹脂、またはあらかじめ形成されたポリ(ビニルフェノール)樹脂の部分水素化を含む。水素化は、既知の水素化手段の技術を用いて行ってよい。たとえば、高温、高圧下において、白金またはパラジウムを担持した炭素基質、または、好ましくはラネーニッケルのような還元触媒上にフェノール樹脂溶液を通して行う。特定された条件は、水素化する重合体による。より詳しくは、重合体を、エチルアルコールまたは酢酸のような適切な溶媒に溶解し、ついで、この溶液を、微粉末ラネーニッケルと接触させ、約100〜300℃の温度、50〜300atmまたはそれ以上の圧力で反応させる。その微粉末ラネーニッケル触媒は、水素化される樹脂によって、ニッケル担持シリカ、ニッケル担持アルミナ、またはニッケル担持炭素触媒でよい。水素化反応は、使用された反応条件に割合のフェノール単位の二重結合のいくつかを還元して、結果としてフェノール単位および環状アルコール単位のランダムコポリマーを生ずると考えられる。
【0015】
好ましい高分子結合剤は、以下の2つの一般式からなる群より選ばれる構造の単位を含むポリ(ビニルフェノール)樹脂またはノボラック樹脂から形成される。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
(式中、単位(I)は、フェノール単位を、また、単位(II)は、環状アルコール単位をそれぞれ表し;Zは、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン架橋を表し;Aは、1〜3この炭素原子を有する低級アルキル基、塩素または臭素のようなハロゲン原子、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基などのような、芳香族環上の水素原子を置換する置換基を表し;aは、0〜4の整数であり;Bは、水素原子、1〜3個の炭素原子を有する低級アルキル基、塩素または臭素のようなハロゲン原子、1〜3個の炭素原子を有するアルコキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基などのような環状アルコール環上の置換基を表し、少なくとも3個の置換基Bは水素原子であり;bは6〜10の整数であり;xは、重合体中の単位(I)のモル分率で0.50〜0.99、好ましくは0.70〜0.90の数であり;yは重合体中の単位(II)のモル分率で、0.01〜0.50、好ましくは0.10〜0.30の数である)。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記のように示された重合体に置換されたヒドロキシル基の一部は、適切な不活性閉塞基で閉塞されている。末端基を有する重合体は、次の2個の構造式のうちの1個で示されるであろう。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
(式中、A、a、B、b、Z、xおよびyは前述のとおりであり、xおよびyは不活性な末端基を有する単位のモル分率を表して、それぞれ0.01〜0.20であり、xとyの合計は0.20を越えず、好ましくは0.02〜0.10であり;−OGはフェノール性水酸基から形成される不活性な末端基である)。ホトレジストを焼付けるのに用いられる高温で発生する酸または塩基に不活性で、光リソグラフィー反応を妨害しない、どのような末端基も好適である。好適な末端基の代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどのようなアルコキシ基;RCOO−(式中、Rは好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどのような1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)で示されるアルキルエステル基;メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニルなどのようなスルホニル酸エステル基を包含する。
【0023】
上記の式に関しては、本発明が、シクロヘキサノール単位とのコポリマーではないノボラック重合体およびポリ(ビニルフェノール)重合体についても適用できることに注意されたい。本発明のこの実施態様では、前述の一般式(III)および(IV)において、それぞれyおよびyは0となるだろう。
【0024】
本発明の好ましいコポリマーを製造するのに使われる方法は、不可欠ではなく、本発明の一部分を構成するものではない。好ましい方法は、あらかじめ形成されたコポリマーと、閉塞基を形成するヒドロキシル基とを結合する化合物とのアルカリ縮合反応を含む。たとえば、閉塞基が好ましいスルホン酸エステル基であるとき、スルホン酸ハロゲン化物を重合体と適切な塩基との溶液に添加し、混合物を典型的には加熱下に撹拌する。水酸化ナトリウムのような水酸化物を含めた各種の塩基が、縮合反応に用いられるであろう。縮合反応は、典型的には有機溶媒中で実施される。当業者に明白なように、さまざまな有機溶媒が好適である。ジエチルエーテルやテトラヒドラフランのようなエーテル類;およびメチルエチルケトンやアセトンのようなケトン類が好ましい。縮合反応に適した条件は、使用される成分に基づいて決定される。たとえば、水酸化ナトリウム、メタンスルホン酸クロリドおよび部分的に水素化されたポリ(ビニルフェノール)の混合物を、約15から20時間の間、約70℃で撹拌する。閉塞基をもつ高分子結合剤の置換の割合は、重合体とともに縮合した閉塞基前駆体の量により、制御することができる。高分子結合剤のヒドロキシルサイトにおける置換の割合は、プロトンおよび13C NMRにより、容易に確認することができる。
【0025】
水酸化ナトリウムのような水酸化物の塩基が、縮合反応触媒として利用される場合、閉塞基は、先に述べた高分子結合剤の環状アルコール基よりも、より反応性に富むフェノール性ヒドロキシル基に支配的に置換することが見出された。このことは、ほとんどの場合において、結合剤のうちフェノール基のみが、先に定義した閉塞基に結合し、環状アルコール基には、閉塞基が実質的に存在しない。閉塞基は、アルキルリチウム試薬のような強塩基を用いることにより、架橋剤のフェノール基と環状アルコール基の両方に置換しうると考えられる。
【0026】
先に述べた高分子結合剤は、追加の成分として、酸発生剤または塩基発生剤および架橋剤を含む、酸硬化または塩基硬化ホトレジスト系において用いられる。その組合せに用いられる酸発生剤化合物は、活性化照射線への暴露により酸または塩基を形成すると知られている、広範囲の化合物から選ばれるであろう。本発明のひとつの好ましい感照射線組成物の類は、酸に不安定な基をもつ環状アルコールとフェノールの重合体を結合剤とし、また、o−キノンジアジドスルホン酸エステルを感照射線成分とした組成物である。このような組成物に最もよく用いられる増感剤は、ここに参考文献として示すKosar著「Light Sensitive Systems」John Wiley & Sons,1965,p343 〜352に開示されているような、ナフトキノンジアジドスルホン酸である。これらの増感剤は、可視光からX線の範囲に入る異なった波長の照射線に応じて酸を形成する。すなわち、増感剤の選択は、部分的に、暴露に用いる波長に依存するであろう。適切な増感剤を選択することにより、ホトレジストは、遠紫外線、電子線、レーザーまたはホトレジストの像形成に通常使用される他のどのような活性化照射線によっても像を形成できる。好ましい増感剤には、2,1,4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類および2,1,5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類が包含される。
【0027】
他の有用な酸発生剤としては、ニトロベンジルエステル類およびs−トリアジン誘導体が包含される。有用なs−トリアジン酸発生剤は、たとえば、ここに参考として示す米国特許第4,189,323号明細書に開示されている。
【0028】
非イオン性光酸発生剤は、たとえば、1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2,2−トリクロロエタン(DDT)、1,1−ビス〔p−メトキシフェニル〕−2,2,2−トリクロロエタン、1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン、1,10−ジブロモデカン、1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2−ジクロロエタン、4,4−ジクロロ−2−(トリクロロメチル)ベンゾヒドロ−ル(Kelthane)、ヘキサクロロジメチルスルホン、2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジン、o,o−ジエチル−o−(3,5,6−トリクロロ−2−ピリジル)ホスホルチオ酸エステル、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン、N−(1,1−ビス〔p−クロロフェニル〕−2,2,2−トリクロロエチル)アセトアミド、トリス〔2,3−ジブロモプロピル〕イソシアヌル酸エステル、2,2−ビス〔p−クロロフェニル〕−1,1−ジクロロエチレン、トリス〔トリクロロメチル〕−s−トリアジン;およびこれらの異性体、類似体、同族体、およびその他の同様な化合物のような、ハロゲン化された非イオン性光酸発生剤などが適している。好適な光酸発生剤はまた、前述のヨーロッパ出願特許第0164248号および同0232972号の両方にも開示されている。
【0029】
遠紫外線への暴露に特に好ましい酸発生剤は、1,1−ビス(p−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン(DDT)、1,1−ビス(p−メトキシフェノール)−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス(クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール、トリス(1,2,3−メタンスルホニル)ベンゼンおよびトリス(クロロメチル)トリアジンである。
【0030】
オニウム塩もまた酸発生剤に好適である。弱求核性のアニオンをもつオニウム塩が、特に好適であることが見出された。このようなアニオンの例としては、B、PおよびAsだけではなく、Sb、Sn、Fe、Bi、Al、Ga、In、Ti、Zr、Sc、D、Cr、HfおよびCuの例のような、2価から7価の金属または非金属のハロゲン錯アニオンが例示される。好適なオニウム塩の例は、ジアリルジアゾニウム塩;ならびに周期律表のV族、VI族およびVII族の元素を含有するオニウム塩、たとえばハロニウム塩、第四級アンモニウム、ホスホニウムおよびアルソニウム塩、芳香スルホニウム塩およびスルホキソニウム塩またはセレニウム塩である。適切であり、好ましいオニウム塩の例は、ここに参考文献として示す米国特許第4,442,107号明細書、同4,603,101号明細書および同4,624,912号明細書にも開示されている。
【0031】
他の好適な酸発生剤の群は、スルホニルオキシケトン類を包含するスルホン化エステル類である。好適なスルホン化エステル類は、トルエンスルホン酸ベンゾイン、tert−ブチルフェニル−α−(p−トルエンスルホニルオキシ)酢酸エステルおよびtert−ブチル−α−(p−トルエンスルホニルオキシ)酢酸エステルを包含し、ここに参考文献として示すJ.of Photopolymer Science and Technology,vol.4,No.3,P337〜340(1991)に報告されている。
【0032】
本発明におけるホトレジストに使用される架橋剤は、活性化照射線への暴露における酸または塩基の発生によって活性化されるものである。代表的な架橋剤は、酸触媒および熱の存在下で架橋する重合体を包含する。複数のヒドロキシル基、カルボニル基、アミド基、およびイミド基を含有する化合物または低分子量重合体と、アミノプラストまたはフェノプラストとの、どのような組合せの種類も使用できる。好適なアミノプラストは、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、およびこれらの組合せを包含する。組合せは、フェノプラストと潜在的なホルムアルデヒド発生化合物を含むものでもよい。これらの潜在的なホルムアルデヒド発生化合物は、s−トリオキサジン、N−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンおよびメタクリル酸オキサゾリジニルエチルを包含する。好適な物質の追加的な例示は、先に参考としたヨーロッパ出願特許第016428号および同0232972号、ならびに米国特許第5,128,232号明細書に開示されている。
【0033】
好ましい架橋剤は、商品名CymelというAmerican Cyanamid社から入手できるものをはじめとするメラミン−ホルムアルデヒド樹脂のような、アミンベースの架橋剤である。
【0034】
本発明の組成物は、一般的には、このようなホトレジストの処方に使用される通常の樹脂の少なくとも一部が置換された、ここに述べる閉塞基をもつ高分子結合剤を例外として、ホトレジスト組成の製造のための先行技術の手順に沿って製造される。本発明の組成物は、たとえば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステルのようなエチレングリコールモノアルキルエーテルエステル類;トルエンまたはキシレンのような芳香族炭化水素、またはメチルエチルケトンのようなケトンのような適切な溶媒に、構成成分を溶解することにより、被覆組成物として処方される。代表的には、組成中の固形分含有量は、感照射線組成物の全重量の5〜35重量%である。
【0035】
暴露および現像の条件は、現像液中の感光速度の改良および溶解性の変化の結果として異なるが、本発明の組成物は、一般的によく知られた手順に従って使用される。本発明の液体被覆組成物は、スピンコート、浸漬、ロール塗布法または他の従来からの被覆技術のような方法により、基板に適用される。スピンコートの場合、被覆溶液のうちの固形分含有量は、使用する特定のスピンコート装置、溶液の粘度、回転速度、回転させる時間に応じて目的とする膜厚が得られるように調整する。
【0036】
該組成物は、ホトレジストの被覆を含む工程に従来から使用される基板に適用される。たとえば、該組成物は、マイクロプロセッサーおよび他の集積回路素子の製造のために、シリコンまたは二酸化ケイ素ウェファー上に塗布される。アルミニウム−酸化アルミニウムおよび窒化ケイ素ウェファーもまた、平担化する層として、または多重層の形成のために、製造業者に知られている技術によって、本発明の光硬化性組成物で被覆することができる。
【0037】
表面のホトレジスト被覆に続いて、好ましくはホトレジスト被膜が非粘着になるまで、溶媒を除去するために加熱乾燥される。その後、従来の手段により、マスクを介して像を与えられる。暴露は、レジスト被膜層にパターン形成した像を得るためにホトレジスト系の光活性成分を効果的に活性化するので十分であり、さらに詳細には、暴露のための器具、およびホトレジスト組成物の成分に応じて、暴露エネルギーは、代表的には約10〜300mJ/cmの範囲である。
【0038】
240〜700nmのどの波長の放射線を包含する広範囲の活性化照射線が、光により酸または塩基を発生する本発明の組成物の暴露に好適なように用いることができる。上記のように、本発明の組成物は、遠紫外線への暴露に特に適している。本発明の組成物のスペクトル応答性は、当業者に明白であるように、適切な照射線化合物を組成物に添加することにより、拡張することができる。
【0039】
暴露に続いて、組成物の被膜層は、約70〜約140℃の温度で焼付けられるのが好ましい。その後、被膜は現像される。暴露したレジスト被膜は、極性現像液の採用により、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムのような無機アルカリの水性現像液;テトラアルキル水酸化アンモニウムのような第四級水酸化アンモニウム溶液;エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミンまたはメチルジエチルアミンのような各種のアミン溶液;ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアルコールアミン;ピロール、ピリジンのような環状アミンなどを用いて、ネガ型の機能を示す。現像液の強さは、先行技術におけるような組成物を使用した樹脂に比べ、本発明による改質樹脂を使うことにより、高めることができる。典型的には、現像液の強さは、0.2N TMAHを越えることが可能であり、代表的には0.3N TMAHまで高めることができ、0.26N TMAHが好ましい。
【0040】
基板のホトレジスト被膜の現像に続いて、現像された基板は、レジストの露出領域の基板を、既知の手順に従い、たとえば化学的エッチングまたはメッキによって、レジストの露出領域上を選択的に加工してもよい。たとえば、二酸化ケイ素ウェファーの製造に示されるようなマイクロエレクトロニック基板の製造では、好適なエッチング剤には、プラズマガスエッチングおよびフッ化水素酸エッチング溶液が包含される。本発明の組成物は、このようなエッチング剤に高い抵抗性があり、それにより、サブミクロン幅の線を含む高度な分解能の微細像の製造が可能となる。このような工程の後、レジストは、加工された基板から、既知の除去手段を用いて除去される。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の説明のためのものである。
【0042】
実施例中、水素化ポリ(ビニルフェノール)樹脂は、丸善石油株式会社から得られたPHM−Cを使用した。これらのポリ(ビニルフェノール)の水素化の度合は、芳香族の二重結合が一重結合に転換した割合により表現され、または、それに相当して、ヒドロキシフェニル基がヒドロキシシクロヘキシル基に転換した割合により表現される。この記載を通して、すべての温度は摂氏である。
【0043】
例1(比較例)
この比較例は、ネガ型遠紫外レジストが、従来の樹脂を結合剤として使用した高規定度の現像液により現像されたときに得られた分解能を示す。ホトレジストを製造するのに用いた物質を、以下に示し重量部で表す。
【0044】
【表1】

【0045】
ホトレジストを、(HMDS蒸気で前処理した)露出シリコンウェファーに30秒間スピンコーティングし、その後、Nanospec215反射分光光度計で測定して1.02μm厚の被膜に、真空熱板上、125℃において60秒間、軽く焼付けた。0.25μmまでの寸法で変化する線空間対の束を、GCA0.35NAエキシマレーザーステッパーを用いて、広範囲の暴露エネルギーに暴露した。ついでウェファーを、真空熱板上、125℃において60秒間、暴露後の焼付けを行った。暴露したウェファーを、その後、Shipley MF703現像液(界面活性剤を添加した0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いて、ホトレジストの非露光領域の洗浄時間の5倍の時間で、合計30秒、ダブルパドルプログラムを使用してGCAMicro−Trak上で現像した。パターンを形成したウェファーをダイシングし、溶解された最小サイズの線空間対およびホトレジストの断面の性質を走査電子顕微鏡(SEM)によって測定するために調査した。SEM分析は、0.46μmの線空間対では鮮明な輪郭で解像されていたが、0.44μm線空間対ではミクロ橋かけが起こることを示した。
【0046】
例2
この実施例は、本発明の重合体を用いて、ミクロ橋かけを排除する能力を示す。ホトレジストを製造するのに用いた物質を以下に示し、重量部で表す。
【0047】
【表2】

【0048】
ホトレジストを、(HMDS蒸気で前処理した)露出シリコンウェファーに30秒間スピンコーティングし、その後、Nanospec215反射分光光度計で測定して1.02μm厚の被膜に、真空熱板上、125℃において60秒間、軽く焼付けた。0.25μmまでの寸法で変化する線空間対の束を、GCA0.35NAエキシマレーザーステッパーを用いて、広範囲の暴露エネルギーに暴露した。ついでウェファーを、真空熱板上、125℃において60秒間、暴露後の焼付けを行った。暴露したウェファーを、その後、例1と同様に界面活性剤を添加された0.26N水酸化テトラメチルアンモニウムを用いて、総時間75秒でホトレジストの露出領域の洗浄時間の5倍の時間ダブルパドルプログラムを使用してGCAMicro−Trak上で現像した。パターンを形成したウェファーをダイシングし、走査電子顕微鏡(SEM)により、解像される最小サイズの線空間対およびホトレジストの輪郭の性質を測定するために調査した。SEM試験は、151mJ/cmの暴露エネルギーにおいて、解像度0.36μmで、例1で観察されたようなミクロ橋かけがないことを示した。
【0049】
例3
この実施例は、本発明の重合体を用いて、規定度の高い現像液中で、高い分解能と、高い超高速の感光速度の両方を得られたことを示す。ホトレジストを製造するのに用いた物質を以下に示し、重量部で表す。
【0050】
【表3】

【0051】
ホトレジストを、(HMDS蒸気で前処理した)露出シリコンウェファーに30秒間スピンコーティングし、その後、Prometrix膜厚測量計で測定して0.54μm厚の被膜に、真空熱板上、60秒間90℃において軽く焼付けた。0.25μmまでの寸法で変化する線空間対の束を、GCA0.35NAエキシマレーザーステッパーを用いて、広範囲の暴露エネルギーに暴露した。ついでウェファーを、真空熱板上、60秒間105℃において暴露後の焼付けを行った。暴露したウェファーを、その後、添加された0.21N水酸化テトラメチルアンモニウム(Shipley(登録商標)MF702現像液)または界面活性剤を添加された0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム(Shipley MF703現像液)を用いて、MF702現像液については総時間60秒で、MF703現像液については総時間35秒で、ホトレジストの非露出領域の洗浄時間の5倍の時間、ダブルパドルプログラムを使用してGCAMicro−Trak上で現像した。パターンを形成したウェファーをダイシングし、走査電子顕微鏡(SEM)により、解像された最小サイズの線空間対およびホトレジストの輪郭の性質を測定するために調査した。微細像のミクロ橋かけは、観察されなかった。微細像を作るのに必要なエネルギー線量は、0.21Nの現像液では13mJ/cmであり、0.26Nの現像液では12mJ/cmであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、Zは、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン架橋であり;Aは、芳香環上で水素と置き換わる、1〜3の炭素原子を有する低級アルキル、ハロ、1〜3の炭素原子を有するアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロおよびアミノからなる群から選択される置換基であり;aは、0〜4の整数であり;Bは、環状アルコール環上で水素と置き換わる、1〜3の炭素原子を有する低級アルキル、ハロ、1〜3の炭素原子を有するアルコキシ、ヒドロキシル、ニトロおよびアミノからなる群から選択される置換基であり;bは、0〜6の整数であり;−OGはスルホニルエステルを表し;xは、スルホニルエステルを有しないフェノール単位のモル分率で0.50〜0.99の数であり;yは、スルホニルエステル基を有しないシクロヘキサノール単位のモル分率で0〜0.50の数であり;xは、スルホニルエステル基を有するフェノール単位のモル分率で0.01〜0.20の数であり;yは、スルホニルエステル基を有するシクロヘキサノール単位のモル分率で0〜0.20の数である)
に従うアルカリ可溶性重合体。

【公開番号】特開2006−291223(P2006−291223A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183681(P2006−183681)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【分割の表示】特願平8−60477の分割
【原出願日】平成8年3月18日(1996.3.18)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】