中性子照射材の溶接方法
【課題】溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属内に生じるポロシティの数量を減少させると共に、その大きさを縮小させる中性子照射材の溶接方法を提供することにある。
【解決手段】溶加材(図示せず)を添加しながら中性子照射材1を溶接し、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属2を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことにより、溶接金属2内のポロシティ3aを大気中に浮上させて、再溶融した溶接金属4内のポロシティ3bの数量を減少させると共に、その大きさを縮小させた。
【解決手段】溶加材(図示せず)を添加しながら中性子照射材1を溶接し、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属2を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことにより、溶接金属2内のポロシティ3aを大気中に浮上させて、再溶融した溶接金属4内のポロシティ3bの数量を減少させると共に、その大きさを縮小させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子照射材の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内では、核分裂により中性子が発生している。前記原子炉を覆う原子炉容器では、その材料である低合金鋼中に含まれるB(ボロン)に前記中性子が衝突することによりHe(ヘリウム)に核変換されている。
【0003】
前記原子炉容器が損傷した場合、図7(a)に示すように、非消耗式ワーク溶接、すなわち、電極51の先端近傍に不活性ガスであるArガス52を吹き付けながら電極51と低合金鋼53の損傷した部位53aとの間に電圧をかけてアーク54を発生させ、その熱によって低合金鋼53と溶加材55とを溶接している。このとき、低合金鋼53と溶加材55とが溶融して、図7(b)に示すように、溶接金属(ビード)56が生成する。このような溶接を溶接継手に沿って複数回、図示例では6回行い損傷部位53aの全体を溶接している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−254595号公報
【特許文献2】特開平6−289184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような材料を溶接したとき、溶融させた低合金鋼53中に含まれるHeが溶接金属56中に溶解する。
【0006】
そのため、上述したような非消耗式ワーク溶接にて、低合金鋼と同じ成分系の溶加材を用いた場合、低合金鋼53中に生じたHe(図示せず)が溶接金属56内に入り込み、図7(b)に示すように、溶接金属56が凝固したときに前記Heが気泡(ポロシティ)57となっていた。
【0007】
ポロシティ57の大きさ及びその数量は、低合金鋼53中に含まれるHe量が多いほど、また溶接入熱が高く低合金鋼53を溶融させる量が多いほど増加していた。
【0008】
ポロシティ57が溶接金属56内に多数存在すると溶接欠陥、すなわち、低合金鋼53自体の強度が低下してしまったり、低合金鋼53に亀裂が生じると、その亀裂の進展ルートとなったりしてしまう。
【0009】
上記特許文献1に記載の照射材の溶接方法に関する技術では、原子炉構造物及び炉内機器などの構成材料について、溶接時に、中性子照射を受けることにより、その内部に生じたヘリウム原子が拡散し粒界に集合して生成するバブルを抑制するものの、溶加材と上述した原子炉構造物及び炉内機器などの構成材料とを溶接してなる溶接金属中に生じるポロシティを抑制することはできなかった。
【0010】
上記特許文献2に記載の中性子照射材の補修溶接施工方法では、照射材中のHeガスが材料結晶粒界にヘリウムガスが集積されることによる中性子照射材の溶接割れを抑制するものの、溶加材と前記中性子照射材とを溶接してなる溶接金属中に生じるポロシティを抑制することはできなかった。
【0011】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属内に生じるポロシティの数量を減少させると共に、その大きさを縮小させる中性子照射材の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する第1の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接し、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第2の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接を連続して行った後、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第3の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接と、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに行う再溶融溶接とを交互に行ったことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第4の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、中性子照射材をレーザ溶接により溶接したことを特徴とする。前記レーザ溶接としては、例えばYAGレーザ溶接やCO2レーザ溶接などが挙げられる。
【0016】
上述した課題を解決する第5の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接したことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決する第6の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、ステンレスまたはNi基合金と同等の表面張力を有する溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を再溶融溶接したことにより、前記溶接金属内にあるポロシティの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0019】
第2の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を再溶融溶接したことにより、前記溶接金属内にあるポロシティの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0020】
第3の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、前記溶接金属の再溶融溶接を1回の溶接が終わる度に行うこととなり、再溶融溶接の範囲を前記溶接金属内により確実に留めることができるので、前記溶接金属内にあるポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0021】
第4の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、ステンレスまたはNi基合金の溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属内に前記溶加材が溶融していることにより、前記溶接金属における表面張力が大きくなり、溶接金属が凝固する際に、溶解度を越えて過飽和になったヘリウムガスがポロシティになることが抑制される。また、ステンレスまたはNi基合金と同等な表面張力を有する溶加材を用いることで、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いたときと同様に、ポロシティになることを抑制する効果が得られる。よって、前記溶接金属内のポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る中性子照射材の溶接方法を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。以下、原子炉を覆う原子炉容器など、中性子が照射される材料を本発明では中性子照射材と称する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0024】
本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図1(a)に示すように、最初に非消耗式アーク溶接、すなわち、電極(図示せず)の先端近傍に不活性ガスであるArガス(図示せず)を吹き付けながら前記電極と、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷した部位(図示せず)との間に電圧をかけてアーク(図示せず)を発生させ、その熱によって中性子照射材1と添加した溶加材とを溶融して溶接する。この溶接を溶接継手に沿って連続して行って、図示例では6回行って、6つの溶接金属(ビード)が作られる。このときには、溶接金属2内にはポロシティ3aが存在する。
【0025】
続いて、上述したような溶接を行った後、前記溶加材を添加せずに非消耗式アーク溶接により、溶接金属2を再溶融溶接して、溶接金属2内のポロシティ3aが大気中に浮上し、図1(b)に示すように、再溶融した溶接金属4内のポロシティ3bは、溶接金属2内のポロシティ3aと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属2の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。
【0026】
したがって、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属4内のポロシティ3bの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、ポロシティ3bに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例2】
【0027】
以下に、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、上述した第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法における手順を変えたものである。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0029】
本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図2(a)に示すように、最初に、非消耗式アーク溶接、すなわち、電極12の先端近傍に不活性ガスであるArガス11を吹き付けながら電極12と、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷した部位(図示せず)との間に電圧をかけてアーク13を発生させ、その熱によって中性子照射材1と、添加した溶加材14とを溶融して、1層1ビードの溶接金属15が生成する。ただし、この1層1ビードの溶接金属15内にはポロシティ16aが存在する。
【0030】
続いて、図2(b)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を再溶融溶接する。すなわち、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と1層1ビードの溶接金属15との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により1層1ビードの溶接金属15を再溶融溶接して、その中に存在していたポロシティ16aが大気中に浮上する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属15の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。よって、再溶融した溶接金属17内のポロシティ16bは、溶接金属15内のポロシティ16aと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0031】
続いて、図2(c)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を生成するときと同様に、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と中性子照射材1との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により中性子照射材1と添加した溶加材14とを溶融して、1層2ビードの溶接金属18が生成する。ただし、この1層2ビードの溶接金属18内にはポロシティ16cが存在する。
【0032】
続いて、図2(d)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を再溶融するときと同様に、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と1層2ビードの溶接金属18との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により1層2ビードの溶接金属18を再溶融溶接して、その中に存在していたポロシティ16cが大気中に浮上する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属18の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。よって、再溶融した溶接金属19内のポロシティ16dは、溶接金属18内のポロシティ16cと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0033】
上述した操作、すなわち、溶加材14を添加しながら中性子照射材1の溶接と、前記溶接による溶接金属の再溶融溶接とを交互に、中性子照射材1の損傷部位(図示せず)の全体に対して行う。
【0034】
したがって、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属17,19内のポロシティ16b、16dの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小するので、ポロシティ16b、16dに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例3】
【0035】
以下に、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。
【0036】
図3は、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0037】
本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷部位(図示せず)をレーザ溶接、例えばCO2レーザ溶接やYAGレーザ溶接により図示しない溶加材と中性子照射材1とを溶融して溶接する。前述したレーザ溶接では、溶接時の溶接入熱が前記非消耗式アーク溶接に比べて小さいため、図3に示すように、レーザ溶接による中性子照射材1の溶け込み面積S1は、図3(b)に示す従来の非消耗式アーク溶接による中性子照射材1の溶け込み面積S2に比べて小さくなる。よって、中性子照射材1の溶け込み面積S1が小さいので、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属21内のポロシティ22は、前記非消耗式アーク溶接による溶接金属23のポロシティ24に比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0038】
したがって、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、上述した本発明の第1の実施例と同様に、溶接金属21内のポロシティ22の数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、ポロシティ22に起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例4】
【0039】
以下に、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。
【0040】
図4は、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0041】
本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図4(a)に示すように、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷部位(図示せず)を補修する際に、溶加材としてステンレスまたはNi基合金を用い、非消耗式アーク溶接にて溶接する。すなわち、ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材1を溶接する。表面張力が小さい低合金鋼を溶加材として用いた溶接では、図4(b)に示すように、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属32内にはポロシティ33が生じていたが、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いた溶接では、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属31内に前記溶加材が溶融していることにより、溶接金属31における表面張力が大きくなり、溶接金属31が凝固する際に、溶解度を越えて過飽和になったヘリウムガスがポロシティになることが抑制され、溶接金属31内にはポロシティは生じない。また、ステンレスまたはNi基合金の代わりに、ステンレスまたはNi基合金と同程度の表面張力を有するように、不純物元素の添加量が調整された低合金鋼の溶加材を用いた場合でも、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いたときと同様に、ポロシティになることを抑制する効果を得ることができる。
【0042】
したがって、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属31内のポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができ、中性子照射材1に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0043】
[評価]
図5に本発明の中性子照射材の溶接方法による溶接金属の概略と従来の中性子照射材の溶接方法による溶接金属の概略とを示し、図5(a)には、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法(小入熱(2.5kJ/cm)、通常溶加材量+再溶融(溶接条件1))による溶接金属の概略、図5(b)には、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法(極小入熱(0.8kJ/cm)(溶接条件2))に相当する入熱による溶接金属の概略、図5(c)には、溶接条件2における溶加材量を1.5倍としたとき(溶接条件3)の溶接金属の概略、図5(d)には、従来の中性子照射材の溶接方法(小入熱(2.5kJ/cm)(溶接条件4)による溶接金属の概略を示す。図6は、図5の各溶接条件における溶接入熱量とポロシティ総面積との関係を示すグラフである。
【0044】
図5に示すように、溶接条件1における溶接金属41のポロシティ42、溶接条件2における溶接金属43のポロシティ44、および溶接条件3における溶接金属45のポロシティ46は、溶接条件4における溶接金属47のポロシティ48に比べて、それらの大きさが縮小していることが分かる。
【0045】
さらに、図5(b)に示す溶接条件2による溶接金属43における中性子照射材1の溶け込み面積S3は、図5(c)に示す溶接条件3による溶接金属45における中性子照射材1の溶け込み面積S3よりも小さくなっていることが分かる。よって、溶接条件3の溶接金属45では、溶接条件2の溶接金属43に比べて、中性子照射材1の中に存在するヘリウムが溶接金属内に溶け込んでなるポロシティの生成は抑制される。
【0046】
図6に示すように、溶接入熱量に関わらず、溶接条件4の溶接金属47に比べて、溶接条件1〜3の各溶接金属41,43,45では、溶接金属41,43,45内のポロシティ42,44,46の総面積がそれぞれ小さくなっていることが分かる。
【0047】
したがって、本発明の中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属内に生じるポロシティの数量を減少させることができると共に、その大きさを縮小させることができ、中性子照射材1自体の強度の低下を抑制することができる。さらに、中性子照射材1に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなりにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、中性子照射材の溶接方法に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図5】本発明の中性子照射材の溶接方法による溶接金属と従来の中性子照射材の溶接方法による溶接金属との概略図である。
【図6】図5の各溶接条件における溶接入熱量とポロシティ総面積との関係を示すグラフである。
【図7】従来の中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 中性子照射材
2 溶接金属(ビード)
3 ポロシティ
4 再溶融した溶接金属
11 Arガス
12 電極
13 アーク
14 溶加材
15 1層1ビードの溶接金属
16 ポロシティ
17 再溶融した溶接金属
18 1層2ビードの溶接金属
19 再溶融した溶接金属
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子照射材の溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉内では、核分裂により中性子が発生している。前記原子炉を覆う原子炉容器では、その材料である低合金鋼中に含まれるB(ボロン)に前記中性子が衝突することによりHe(ヘリウム)に核変換されている。
【0003】
前記原子炉容器が損傷した場合、図7(a)に示すように、非消耗式ワーク溶接、すなわち、電極51の先端近傍に不活性ガスであるArガス52を吹き付けながら電極51と低合金鋼53の損傷した部位53aとの間に電圧をかけてアーク54を発生させ、その熱によって低合金鋼53と溶加材55とを溶接している。このとき、低合金鋼53と溶加材55とが溶融して、図7(b)に示すように、溶接金属(ビード)56が生成する。このような溶接を溶接継手に沿って複数回、図示例では6回行い損傷部位53aの全体を溶接している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−254595号公報
【特許文献2】特開平6−289184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような材料を溶接したとき、溶融させた低合金鋼53中に含まれるHeが溶接金属56中に溶解する。
【0006】
そのため、上述したような非消耗式ワーク溶接にて、低合金鋼と同じ成分系の溶加材を用いた場合、低合金鋼53中に生じたHe(図示せず)が溶接金属56内に入り込み、図7(b)に示すように、溶接金属56が凝固したときに前記Heが気泡(ポロシティ)57となっていた。
【0007】
ポロシティ57の大きさ及びその数量は、低合金鋼53中に含まれるHe量が多いほど、また溶接入熱が高く低合金鋼53を溶融させる量が多いほど増加していた。
【0008】
ポロシティ57が溶接金属56内に多数存在すると溶接欠陥、すなわち、低合金鋼53自体の強度が低下してしまったり、低合金鋼53に亀裂が生じると、その亀裂の進展ルートとなったりしてしまう。
【0009】
上記特許文献1に記載の照射材の溶接方法に関する技術では、原子炉構造物及び炉内機器などの構成材料について、溶接時に、中性子照射を受けることにより、その内部に生じたヘリウム原子が拡散し粒界に集合して生成するバブルを抑制するものの、溶加材と上述した原子炉構造物及び炉内機器などの構成材料とを溶接してなる溶接金属中に生じるポロシティを抑制することはできなかった。
【0010】
上記特許文献2に記載の中性子照射材の補修溶接施工方法では、照射材中のHeガスが材料結晶粒界にヘリウムガスが集積されることによる中性子照射材の溶接割れを抑制するものの、溶加材と前記中性子照射材とを溶接してなる溶接金属中に生じるポロシティを抑制することはできなかった。
【0011】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属内に生じるポロシティの数量を減少させると共に、その大きさを縮小させる中性子照射材の溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決する第1の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接し、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第2の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接を連続して行った後、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接したことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第3の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接と、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに行う再溶融溶接とを交互に行ったことを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第4の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、中性子照射材をレーザ溶接により溶接したことを特徴とする。前記レーザ溶接としては、例えばYAGレーザ溶接やCO2レーザ溶接などが挙げられる。
【0016】
上述した課題を解決する第5の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接したことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決する第6の発明に係る中性子照射材の溶接方法は、ステンレスまたはNi基合金と同等の表面張力を有する溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を再溶融溶接したことにより、前記溶接金属内にあるポロシティの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0019】
第2の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を再溶融溶接したことにより、前記溶接金属内にあるポロシティの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0020】
第3の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、前記溶接金属の再溶融溶接を1回の溶接が終わる度に行うこととなり、再溶融溶接の範囲を前記溶接金属内により確実に留めることができるので、前記溶接金属内にあるポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0021】
第4の発明に係る中性子照射材の溶接方法によれば、ステンレスまたはNi基合金の溶加材と中性子照射材とが溶融してなる溶接金属内に前記溶加材が溶融していることにより、前記溶接金属における表面張力が大きくなり、溶接金属が凝固する際に、溶解度を越えて過飽和になったヘリウムガスがポロシティになることが抑制される。また、ステンレスまたはNi基合金と同等な表面張力を有する溶加材を用いることで、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いたときと同様に、ポロシティになることを抑制する効果が得られる。よって、前記溶接金属内のポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した前記中性子照射材の強度の低下を抑制することができ、前記中性子照射材に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る中性子照射材の溶接方法を実施するための最良の形態を実施例に基づき具体的に説明する。以下、原子炉を覆う原子炉容器など、中性子が照射される材料を本発明では中性子照射材と称する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0024】
本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図1(a)に示すように、最初に非消耗式アーク溶接、すなわち、電極(図示せず)の先端近傍に不活性ガスであるArガス(図示せず)を吹き付けながら前記電極と、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷した部位(図示せず)との間に電圧をかけてアーク(図示せず)を発生させ、その熱によって中性子照射材1と添加した溶加材とを溶融して溶接する。この溶接を溶接継手に沿って連続して行って、図示例では6回行って、6つの溶接金属(ビード)が作られる。このときには、溶接金属2内にはポロシティ3aが存在する。
【0025】
続いて、上述したような溶接を行った後、前記溶加材を添加せずに非消耗式アーク溶接により、溶接金属2を再溶融溶接して、溶接金属2内のポロシティ3aが大気中に浮上し、図1(b)に示すように、再溶融した溶接金属4内のポロシティ3bは、溶接金属2内のポロシティ3aと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属2の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。
【0026】
したがって、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属4内のポロシティ3bの数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、ポロシティ3bに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例2】
【0027】
以下に、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、上述した第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法における手順を変えたものである。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0029】
本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図2(a)に示すように、最初に、非消耗式アーク溶接、すなわち、電極12の先端近傍に不活性ガスであるArガス11を吹き付けながら電極12と、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷した部位(図示せず)との間に電圧をかけてアーク13を発生させ、その熱によって中性子照射材1と、添加した溶加材14とを溶融して、1層1ビードの溶接金属15が生成する。ただし、この1層1ビードの溶接金属15内にはポロシティ16aが存在する。
【0030】
続いて、図2(b)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を再溶融溶接する。すなわち、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と1層1ビードの溶接金属15との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により1層1ビードの溶接金属15を再溶融溶接して、その中に存在していたポロシティ16aが大気中に浮上する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属15の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。よって、再溶融した溶接金属17内のポロシティ16bは、溶接金属15内のポロシティ16aと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0031】
続いて、図2(c)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を生成するときと同様に、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と中性子照射材1との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により中性子照射材1と添加した溶加材14とを溶融して、1層2ビードの溶接金属18が生成する。ただし、この1層2ビードの溶接金属18内にはポロシティ16cが存在する。
【0032】
続いて、図2(d)に示すように、1層1ビードの溶接金属15を再溶融するときと同様に、Arガス11を電極12の先端近傍に吹き付けながら、電極12と1層2ビードの溶接金属18との間に電圧をかけアーク13を発生させその熱により1層2ビードの溶接金属18を再溶融溶接して、その中に存在していたポロシティ16cが大気中に浮上する。ただし、再溶融溶接する範囲を溶接金属18の大きさに留め、中性子照射材1を溶融させないようにする。よって、再溶融した溶接金属19内のポロシティ16dは、溶接金属18内のポロシティ16cと比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0033】
上述した操作、すなわち、溶加材14を添加しながら中性子照射材1の溶接と、前記溶接による溶接金属の再溶融溶接とを交互に、中性子照射材1の損傷部位(図示せず)の全体に対して行う。
【0034】
したがって、本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属17,19内のポロシティ16b、16dの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小するので、ポロシティ16b、16dに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例3】
【0035】
以下に、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。
【0036】
図3は、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0037】
本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷部位(図示せず)をレーザ溶接、例えばCO2レーザ溶接やYAGレーザ溶接により図示しない溶加材と中性子照射材1とを溶融して溶接する。前述したレーザ溶接では、溶接時の溶接入熱が前記非消耗式アーク溶接に比べて小さいため、図3に示すように、レーザ溶接による中性子照射材1の溶け込み面積S1は、図3(b)に示す従来の非消耗式アーク溶接による中性子照射材1の溶け込み面積S2に比べて小さくなる。よって、中性子照射材1の溶け込み面積S1が小さいので、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属21内のポロシティ22は、前記非消耗式アーク溶接による溶接金属23のポロシティ24に比べて、その数量が減少すると共に、その大きさが縮小する。
【0038】
したがって、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、上述した本発明の第1の実施例と同様に、溶接金属21内のポロシティ22の数量が減少すると共に、その大きさが縮小するので、ポロシティ22に起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができると共に、中性子照射材1が亀裂したときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【実施例4】
【0039】
以下に、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法について、図を用いて具体的に説明する。
【0040】
図4は、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【0041】
本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法は、図4(a)に示すように、低合金鋼からなる中性子照射材1の損傷部位(図示せず)を補修する際に、溶加材としてステンレスまたはNi基合金を用い、非消耗式アーク溶接にて溶接する。すなわち、ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材1を溶接する。表面張力が小さい低合金鋼を溶加材として用いた溶接では、図4(b)に示すように、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属32内にはポロシティ33が生じていたが、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いた溶接では、前記溶加材と中性子照射材1とが溶融してなる溶接金属31内に前記溶加材が溶融していることにより、溶接金属31における表面張力が大きくなり、溶接金属31が凝固する際に、溶解度を越えて過飽和になったヘリウムガスがポロシティになることが抑制され、溶接金属31内にはポロシティは生じない。また、ステンレスまたはNi基合金の代わりに、ステンレスまたはNi基合金と同程度の表面張力を有するように、不純物元素の添加量が調整された低合金鋼の溶加材を用いた場合でも、ステンレスまたはNi基合金の溶加材を用いたときと同様に、ポロシティになることを抑制する効果を得ることができる。
【0042】
したがって、本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属31内のポロシティの数量がより確実に減少すると共に、その大きさがより確実に縮小し、前記ポロシティに起因した中性子照射材1の強度の低下を抑制することができ、中性子照射材1に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなることを抑制することができる。
【0043】
[評価]
図5に本発明の中性子照射材の溶接方法による溶接金属の概略と従来の中性子照射材の溶接方法による溶接金属の概略とを示し、図5(a)には、本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法(小入熱(2.5kJ/cm)、通常溶加材量+再溶融(溶接条件1))による溶接金属の概略、図5(b)には、本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法(極小入熱(0.8kJ/cm)(溶接条件2))に相当する入熱による溶接金属の概略、図5(c)には、溶接条件2における溶加材量を1.5倍としたとき(溶接条件3)の溶接金属の概略、図5(d)には、従来の中性子照射材の溶接方法(小入熱(2.5kJ/cm)(溶接条件4)による溶接金属の概略を示す。図6は、図5の各溶接条件における溶接入熱量とポロシティ総面積との関係を示すグラフである。
【0044】
図5に示すように、溶接条件1における溶接金属41のポロシティ42、溶接条件2における溶接金属43のポロシティ44、および溶接条件3における溶接金属45のポロシティ46は、溶接条件4における溶接金属47のポロシティ48に比べて、それらの大きさが縮小していることが分かる。
【0045】
さらに、図5(b)に示す溶接条件2による溶接金属43における中性子照射材1の溶け込み面積S3は、図5(c)に示す溶接条件3による溶接金属45における中性子照射材1の溶け込み面積S3よりも小さくなっていることが分かる。よって、溶接条件3の溶接金属45では、溶接条件2の溶接金属43に比べて、中性子照射材1の中に存在するヘリウムが溶接金属内に溶け込んでなるポロシティの生成は抑制される。
【0046】
図6に示すように、溶接入熱量に関わらず、溶接条件4の溶接金属47に比べて、溶接条件1〜3の各溶接金属41,43,45では、溶接金属41,43,45内のポロシティ42,44,46の総面積がそれぞれ小さくなっていることが分かる。
【0047】
したがって、本発明の中性子照射材の溶接方法によれば、溶接金属内に生じるポロシティの数量を減少させることができると共に、その大きさを縮小させることができ、中性子照射材1自体の強度の低下を抑制することができる。さらに、中性子照射材1に亀裂が生じたときの亀裂の進展ルートとなりにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、中性子照射材の溶接方法に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係る中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【図5】本発明の中性子照射材の溶接方法による溶接金属と従来の中性子照射材の溶接方法による溶接金属との概略図である。
【図6】図5の各溶接条件における溶接入熱量とポロシティ総面積との関係を示すグラフである。
【図7】従来の中性子照射材の溶接方法の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 中性子照射材
2 溶接金属(ビード)
3 ポロシティ
4 再溶融した溶接金属
11 Arガス
12 電極
13 アーク
14 溶加材
15 1層1ビードの溶接金属
16 ポロシティ
17 再溶融した溶接金属
18 1層2ビードの溶接金属
19 再溶融した溶接金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接し、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項2】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接を連続して行った後、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項3】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接と、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに行う再溶融溶接とを交互に行った
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項4】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
中性子照射材をレーザ溶接により溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項5】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項6】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
ステンレスまたはNi基合金と同等の表面張力を有する溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項1】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接し、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項2】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接を連続して行った後、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに再溶融溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項3】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
溶加材を添加しながら中性子照射材の溶接と、前記溶加材と前記中性子照射材とが溶融してなる溶接金属を、前記溶加材を添加せずに行う再溶融溶接とを交互に行った
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項4】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
中性子照射材をレーザ溶接により溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項5】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
ステンレスまたはNi基合金のどちらかの溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【請求項6】
中性子が照射される中性子照射材の溶接方法であって、
ステンレスまたはNi基合金と同等の表面張力を有する溶加材を添加しながら中性子照射材を溶接した
ことを特徴とする中性子照射材の溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2006−231403(P2006−231403A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14582(P2006−14582)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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