説明

中空状容器とその製造方法

【課題】金属体、レーザ光非透過性の樹脂体、及び、レーザ光透過性の樹脂体とを一体化させた凹状容器体を溶着して製造される中空状容器体とその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の中空状容器の製造方法は、凹状の金属体と、レーザー光非透過性の第1樹脂体とからなる凹状形状体の第1樹脂体の側面に、レーザー光透過性の第2樹脂体を接合した凹状容器体10、20の当接面を溶着して中空状容器を製造する方法である。第1凹状容器体10の第2樹脂体の当接面と、レーザ光非透過性樹脂製の中間部材30の一方の当接面とを当接させ、レーザー光照射により第1凹状容器体10と中間部材30の一方とを溶着させる工程と、第2凹状容器体20の第2樹脂体の当接面と、中間部材30の他方の当接面とを当接させ、レーザー光照射により第2凹状容器体20と中間部材30の他方とを溶着させる工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体と樹脂体とを一体化させた凹状容器体の当接面が溶着されて中空状の容器に製造される中空状容器とその製造方法に関する。さらに詳しくは、金属体、レーザー光非透過性の樹脂体、レーザー光透過性の樹脂体とを一体化させた凹状容器体に、レーザー光を照射することで当接面同士が溶着されて中空状の容器に製造される中空状容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器、電子機器、通信機器等においては、常に、小型化、軽量化が求められ、日々、小型化、軽量化のための研究開発が行われている。その一つの方法として、所定の表面処理を行った金属体を金型内にインサートし、キャビティ内に所定の種類の樹脂組成物を射出し、金属体と樹脂体とを一体化して接合する技術を本発明者らは提案している。以下、この技術を「射出接合法」と称して説明を行う。
【0003】
この射出接合法は、金属表面を表面処理して高硬度結晶性樹脂組成物である樹脂体を射出成形により接合する技術である。すなわち、この技術はマグネシウム合金、アルミニウム合金等の軽金属、ステンレス等の鉄合金類に対し、高強度のエンジニアリング樹脂組成物を接合し一体化させるものである。
【0004】
金型を使用し射出と同時に接合する方法として、アルミニウム合金に対しポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT」という。)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS」という。)を射出成形させて、一体化する製造技術が知られている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。この技術は、アルミニウム合金形状物の表面に超微細凹凸面を形成し、アルミニウム合金形状物と樹脂を接合一体化させる技術である。
このようにすることで、ボルトなどを使用することなく、金属と樹脂を一体化した製品、部品等を製造することができる。
【0005】
一方、樹脂同士を、レーザーを利用して溶着する技術も知られている。例えば、レーザー光を透過させる透過性を有する第1の樹脂材と、レーザー光を透過させる透過性を有しない第2の樹脂材とを重ね合わせ、第1の樹脂材を介して第2の樹脂材に向けてレーザー光を照射することで、第1の樹脂材と第2の樹脂材の接着面を加熱溶融し、第1の樹脂材と第2の樹脂材とを接着する方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。また、外装缶と蓋体とをレーザー光で溶着する密閉電池とその製造方法も知られている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2004−216425号公報
【特許文献2】特開2004−216609号公報
【特許文献3】WO2004−055248 A1号公報
【特許文献4】特開2007−203585号公報
【特許文献5】特公平05−42336号公報
【特許文献6】特開2001−84973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所定の形状に形成された金属体と樹脂組成物とからなる樹脂体とを一体化した凹状容器体を上下に重ね合わせ、中空状容器を製造することができると、機械的強度と、小型化、軽量化等を兼ね備えた容器として用途が大きく拡がる。また、この容器が、内部を密封できる中空状容器であると用途はさらに拡がる。さらに、樹脂同士がレーザー光の照射で溶着できると、容器に内蔵されている部品等に、熱、振動等の影響を与えることがないので好ましい。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献等で開示された金属体に対して強度に接合可能な樹脂体は、レーザー光を透過させないレーザー光非透過性の樹脂組成物からなる樹脂体であることが多い。言い換えると、金属体とレーザー光非透過性の樹脂体とを一体化させた凹状容器体同士をレーザー光の照射を利用して溶着することができないという問題点があった。
【0008】
また、特許文献6のように、熱可塑性樹脂で外装缶及び蓋体を形成すると、使用目的や温度によっては機械的強度が不足するおそれがあり、また、直方体形状に予め作成した外装缶に電極群を挿入する際に電極群の外側表面を傷つけやすいという問題点があった。
このような現状から、金属体と非透過性の樹脂組成物とからなる樹脂体とを一体化させた凹状容器体において、機械的強度に富み、薄型、軽量化が図れ、かつ、密封可能に接合することができる中空状容器とその製造方法の開発が要望されていた。
【0009】
本発明は、前述した問題点を解決するためになされたもので、次の目的を達成する。
本発明の目的は、機械的強度に富み、薄型、軽量化が図れ、容易に製造することができる中空状容器とその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、内部の密封性に優れた中空状容器とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した目的を達成するために、次の手段を採用する。
本発明1の中空状容器の製造方法は、
一方の側に開口部が形成された凹状の金属体と、この金属体に一体に接合されるレーザー光非透過性の第1樹脂体とからなる凹状形状体を、前記一方の側の面が向き合うように接合して中空状容器を製造する方法であって、第1凹状形状体または第2凹状形状体のレーザー光非透過性の第1樹脂体の側面にレーザー光透過性の第2樹脂体を一体に接合し、第1凹状容器体または第2凹状容器体を製造する工程と、前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体の当接面と、レーザー光非透過性樹脂製の中間部材の一方の当接面とを当接させ、前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体の側よりレーザー光を照射することにより前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体と前記中間部材の一方の当接面とを溶着させ、中間容器体を製造する工程と、前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体の当接面と、前記中間容器体の前記中間部材の他方の当接面とを当接させ、前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体の側よりレーザー光を照射することにより前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体と前記中間部材の他方の当接面とを溶着させ、中空状容器を製造する工程とからなっている。
【0012】
本発明2の中空状容器の製造方法は、本発明1において、
前記凹状形状体は、前記金属体の接合面に、所定の表面処理を行う工程と、前記金属体を金型内にインサートする工程と、前記金型に形成された第1キャビティ内に前記第1樹脂体を射出し、前記金属体の表面処理した面に、前記第1樹脂体を一体に接合する工程で製造されたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明3の中空状容器の製造方法は、本発明1または2において、
前記第2樹脂体は、前記金属体の前記開口部の側の周囲に、フランジ部が形成されているものであり、前記中間容器体または前記中空状容器を製造する工程は、前記第2樹脂体のフランジ部と前記中間部材の接合面とを溶着させる工程であることを特徴とする。
【0014】
本発明4の中空状容器の製造方法は、本発明1から3において、
前記第1樹脂体、前記第2樹脂体、前記中間部材から選択される少なくとも1種は、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
【0015】
本発明5の中空状容器は、
一方の側に開口部が形成された凹状の金属体と、この金属体の前記開口部側の周縁部に一体に接合された第1樹脂体と、この第1樹脂体に、前記金属体が接合された側の反対側に一体に接合された第2樹脂体とからなる第1凹状形状体及び第2凹状形状体が、前記開口部側の面が対向するように接合される第2樹脂体とからなる第1凹状形状体及び第2凹状形状体が、前記開口部側の面を対向して接合される中空状容器であって、少なくとも、前記第1凹状形状体の前記第2樹脂体と、前記第2凹状形状体の前記第2樹脂体との間に挟着される中間部材を有し、前記第1樹脂体、及び、前記中間部材がレーザー光非透過性の樹脂からなり、前記第2樹脂体が、レーザー光透過性の樹脂からなることを特徴とする。
【0016】
本発明6の中空状容器は、本発明5において、
前記第2樹脂体は、前記金属体の前記開口部の側の周囲にフランジ部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明7の中空状容器は、本発明5または6において、
前記第1樹脂体、前記第2樹脂体、前記中間部材から選択される少なくとも1種は、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の中空状容器の製造方法は、簡素で、機械的強度を備えた構成で、小型化、薄型化を図った中空状容器の製造方法を提供することができる。すなわち、この中空状容器は、凹状容器体の主要部分が金属体であり機械的強度を備え、接合部分をレーザー光照射による溶着で行っているので、製造が容易である。
また、本発明の中空状容器は、機械的強度に富み、薄型、軽量化が図れ、密封性が高い中空状容器である。
さらに、本発明においては、レーザー光非透過性の第1樹脂体を、レーザー光非透過性の第1樹脂体に一体に接合された透過性の第2樹脂体を介してレーザー光照射で溶着している。そのため、金属に接合する樹脂組成物の主成分以外の組成物とその配合量は、溶着に寄与するか、あるいは少なくとも溶着に影響を及ぼさないのであれば、特に限定することはない。
【0019】
また、本発明の中空状容器は、金属体とレーザー光非透過性の第1樹脂体とが射出接合によって強力に接合されており、密封性が高い。さらに、レーザー透過性の第2樹脂体と中間部材(レーザー光非透過性樹脂製)とは、接合面がレーザー光照射により連続的に溶着されているので、この部分も密封性が高い。従って、中空状容器の内部を確実に密封することができ、各種気体、液体の内部への侵入、内部からの漏洩等を生じさせることがない。
さらに、本発明の中空状容器の製造方法によれば、中空状容器として、いろいろな形状のもの、いろいろな用途に使用可能なものを、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の中空状容器とその製造方法について、図面に基づいて、その実施の形態を詳細に説明する。なお、図面は、説明を容易にするために、模式的に、かつ拡大して図示している。
【0021】
図1は、本発明の製造方法で製造した中空状容器の断面図である。図2〜5は、凹状容器体の製造工程を示すための断面図である。図2、3は、金属体とレーザー光非透過性の第1樹脂体を一体に接合する工程を模式的に示す図で、図2は射出成形前の状態、図3は射出成形後の状態を示す図である。図4、5は、レーザー光非透過性の第1樹脂体にレーザー光透過性の第2樹脂体を一体にする工程を模式的に示した説明図であり、図4は射出成形前の状態、図5は射出成形後の状態を示している。図6は、レーザー光照射で第1凹状容器体と中間部材の一方の面とを溶着している工程を模式的に示した説明図である。図7は、レーザー光照射で第2凹状容器体と中間部材の他方の面とを溶着している工程を模式的に示した説明図である。図8は、図7のA部を拡大して示した説明図である。
【0022】
〔金属体の製造〕
金属体11、21の材料としては、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄、銅、チタン、黄銅、ステンレスなど、いろいろなものを使用することができる。本実施の形態では、金属体の材料をアルミニウム合金として説明を行う。アルミニウム合金としては、JIS(日本工業規格)に規定される展伸用アルミニウム合金のA1000番台〜7000番台の全ての合金、及びADC1〜12などの鋳造用アルミニウム合金、及び純アルミニウムの全てが使用できる。凹状の金属体にするには、鋳造用合金等であれば、ダイカスト法で形状化する方法、またそれを更に機械加工して形状を整える方法で行うとよい。また、展伸用合金では、板状の素材を、熱プレス加工、機械加工を施して形状化する方法を採用できる。
この実施の形態では、アルミニウム合金をプレス加工で所定の肉厚(例えば、0.3mm)の凹状の金属体11、21を作成した。
【0023】
〔金属体の表面処理〕
金属体の表面にレーザー光非透過性の樹脂組成物からなる樹脂体を射出接合するには、金属体11、21の接合部である側壁部11a、21aに表面処理を施す必要がある。この金属処理については、前述した公報等で詳細に説明されているので、概要のみ記載する。
表面処理の内容は、3段階の処理工程、即ち脱脂処理、前処理、本処理の工程からなっている。言い換えると、表面処理は、脱脂後、化学エッチング、特殊超微細エッチングを行なう処理工程である。脱脂処理は、凹状の金属体に付着している加工油等の油類の落としが目的である。これは市販のアルミニウム合金用脱脂剤が使用できる。
【0024】
前処理は、酸塩基性の水溶液で本処理に備えて綺麗な表面を得る処理で、アルミニウム合金を溶かせるようにした処理である。塩基性液としては、0.5〜5%濃度の苛性ソーダ水溶液を25〜40℃で使用し、酸性液としては、0.5〜5%濃度の一水素二弗化アンモニウム、塩酸、又は硝酸の水溶液を25〜40℃に温度制御して使用するとよい。この前処理の化学エッチングによりμmオーダー(ミクロンオーダー)の粗さの面が得られる。
【0025】
本処理は、前処理の終った金属体をアンモニア、水和ヒドラジン、又は水溶性アミンの水溶液に浸漬する処理である。具体的には、所定濃度の一水和ヒドラジン水溶液を所定温度にして使用するのが好ましい。この本処理を行なうことでμmオーダーの凹凸表面をさらに超微細エッチングし、表面に平均直径20〜80nmの微細凹凸面を構成し、同時にヒドラジン分子を吸着させる。このとき、アルミニウム合金の表面層の超微細凹凸面はミクロ的な意味であるが硬化されている。
【0026】
なお、金属体の材料としては他の種類の金属でも所定の表面処理を行えばよい。この表面処理の概要をまとめると次のようになる。
金属体側の表面処理については、3つの条件がある。
(1)第1の条件は、金属体の表面が、化学エッチング手法によって0.5〜10μm周期の凹凸で、その凹凸の高低差がその周期の半分程度、即ち0.25〜5μmまでの粗面になっていることである。
【0027】
ただし、実際には前記周期及び高低差で全表面を覆うことはバラツキのある化学反応では難しい。そのため、実際には、粗度計で見た場合に、0.2〜20μmの不定期な周期の凹凸で、かつ凹凸の高低差が0.2〜10μmである輪郭曲線が描けること、又は、走査型プローブ顕微鏡で走査解析した場合に、JIS(日本工業規格)の「JIS B0601:2001」でいう「粗さ曲線」の平均周期、即ち輪郭曲線要素の平均長さ(RSm)が0.5〜10μmで、かつ最大高さ粗さ(Rz)が0.2〜5μmである粗度面であれば、第1の条件を実質的に満たしたものとする。この第1の条件を実質的に満たすような金属表面の凹凸を、「ミクロンオーダー凹凸」と称する。
【0028】
(2)第2の条件は、更に微細エッチング処理、酸化処理、又は化成処理等を加えて、各ミクロンオーダー凹凸の壁面に10〜300nm程度の周期の超微細凹凸が形成されていることである。
(3)第3の条件は、金属体の複雑な表面形状が、セラミック質、具体的には化学エッチング前の自然酸化層よりも厚い金属酸化物層で覆われていることである。
【0029】
〔金属体とレーザー光非透過性(以下、非透過性という)の第1樹脂体との接合〕
所定の表面処理が施された金属体は、一方の金型41、他方の金型42から構成される金型40内にインサートされる。
その後、金型40内に形成された第1キャビティ44に、PPSを主成分とした高硬度結晶性樹脂組成物、PBTを主成分とした高硬度結晶性樹脂組成物を、ゲート43、43を介して射出し、一体に接合させる。この実施の形態のPPSを主成分とした高硬度結晶性樹脂組成物、PBTを主成分とした高硬度結晶性樹脂組成物は、レーザー光を透過させない非透過性の樹脂組成物である。
【0030】
すなわち、金属体11の側面である側壁部11aに非透過性の第1樹脂体12が一体に射出接合する。このことにより、金属体11と第1樹脂体12とからなる凹状形状体が製造される。
また、金属体21の側面である側壁部21aに非透過性の第1樹脂体22が一体に射出接合する。このことにより、金属体21と第1樹脂体22とからなる凹状形状体が製造される。
非透過性の樹脂組成物は、前述した射出接合法で接合可能な樹脂組成物であるとよい。
【0031】
金型温度としては特に固化後樹脂強度への影響が少なく、複合体の生産効率に優れることから100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上であるとよい。一方、射出温度、射出圧、射出速度は特に通常の射出成形と変わらないが、強いて言えば、射出速度と射出圧は高目にすることが好ましい。
【0032】
〔高硬度結晶性樹脂組成物〕
高硬度結晶性樹脂組成物(非透過性の樹脂組成物)については、前述した公報等に詳細に説明されているので、概略を説明する。この非透過性の樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他強化繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、及びガラス粉から選ばれる1種以上の充填材を組成物全体の20〜60質量%を含むPPS、PBTである。これらの充填材を含ませることでアルミニウム合金の線膨張率のレベルに出来るだけ近づけるとよい。
【0033】
PPS系樹脂組成物としては、PPSと称される範疇に属するものであればよく、その中でも樹脂組成物部品とする際の成形加工性に優れることから直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重98N(10kgf)の条件下、測定した溶融粘度が100〜30000ポイズであるものが好ましい。
PBT系樹脂組成物としては、PET及び/またはポリオレフィン系樹脂を3〜30%と、PBTを70〜97%の組成を有するものが好ましい。
【0034】
さらに、非透過性の樹脂組成物は金属体との接合力を長期に保つために20〜50%重量の繊維系フィラーが含まれているとよい。このフィラーの含有により樹脂組成物の線膨張率をアルミニウム合金並にすることが可能となる。
【0035】
この射出接合法の接合原理は、ミクロンオーダー凹凸の凹部に樹脂組成物が侵入し、さらにその凹部壁面にある超微細凹凸の凹部にも樹脂組成物が侵入した状態で、樹脂組成物が3次元固化して凹部から抜けなくなるというアンカー効果論による。超微細凹凸を覆う金属酸化物層は金属相よりも硬度が高いので、ミクロンオーダー凹凸に係る凹部内で固化した樹脂組成物は、高い硬度で覆われた超微細凹凸によって、まるでスパイクのように引っかけられ固定される。
【0036】
このような射出接合法によって、アルミニウム合金製の凹状の金属体11とレーザー光を透過させない非透過性の第1樹脂体12とが一体に射出接合した第1凹状形状体が製造される。同様に、金属体21と非透過性の第1樹脂体22とが一体に射出接合した第2凹状形状体が製造される。
【0037】
〔レーザー光透過性(以下、透過性という)の第2樹脂体の接合〕
図4、5に示すように、金型45は、一方の金型46、他方の金型47とから構成されている。他方の金型47内に、金属体11と非透過性の第1樹脂体12とが一体化した第1凹状形状体をインサートすると第2キャビティ49が形成される。第2キャビティ49にレーザー光を透過する透過性の第2樹脂の組成物をゲート48、48を介して射出し、第1樹脂体12の側面12aの外側に一体に接合させる。なお、第2樹脂は、レーザー光を透過する透過性の樹脂であればよく、例えば、PBTまたはPPSを主成分とする樹脂組成物からなるものであってもよい。第1樹脂体12の側面12aに透過性の樹脂組成物からなる第2樹脂体13は容易に接合し一体化する。第2樹脂体13には開口側周囲にフランジ部13aが一体に形成されている(図6参照)。金型45を開き、金属体11、非透過性の第1樹脂体12、及び、透過性の第2樹脂体13が一体化した第1凹状容器体10を取り出す。
【0038】
同様に、他方の金型47内に、金属体21と非透過性の第1樹脂体22とが一体化した第2凹状形状体をインサートし、第2キャビティ49にレーザー光を透過する透過性の第2樹脂の組成物をゲート48、48を介して射出し、第1樹脂体22の側面22aの外側に一体に接合させる。第1樹脂体22の側面22aに透過性の樹脂組成物からなる第2樹脂体23は容易に接合し一体化する。第2樹脂体23には開口側周囲にフランジ部23aが一体に形成されている。金型45を開き、金属体21、非透過性の第1樹脂体22、及び、透過性の第2樹脂体23が一体化した第2凹状容器体20を取り出す。
【0039】
このようにして、第1凹状形状体(金属体、第1樹脂体)、第2凹状形状体(金属体、第1樹脂体)と、第2樹脂体とが一体化した第1凹状容器体10、第2凹状容器体20が、各々、製造される。
【0040】
なお、この実施の形態では、説明を容易にするために、第1樹脂体成形用の金型40と、第2樹脂体成形用の金型45を別のもので説明したが、一つの金型で成形してもよい。例えば、金型内のスライドコアを移動させる方式の金型、金型を回転させる方式の金型等の2色成形金型などとして知られている構成の金型を使用して、凹状形状体、凹状容器体を順次製造してもよいことはいうまでもない。
【0041】
〔中間部材〕
レーザー光を透過させない非透過性樹脂(例えば、PPS)製で、中央部に角孔が形成された矩形状の部材であって所定の厚さ(例えば、1mm)の中間部材30を製作する。なお、非透過性樹脂は、レーザー光を透過しない樹脂であればよく、例えば、PBTまたはPPSを主成分とする樹脂組成物からなるものであってもよい。さらに、非透過性樹脂は、熱吸収を高める着色添加物等が添加されているものであってもよい。
【0042】
〔第1凹状容器体と中間部材との溶着〕
第1凹状容器体10の第2樹脂体13のフランジ部13aの当接面13bと、中間部材30の一方の当接面30aとを密着させた状態に固定する。
第1凹状容器体10の透過性の第2樹脂体13の側(例えば、この形態では第2樹脂体13の上方)からレーザー溶着装置50のレーザー光53を照射する。レーザー光53は、レーザー光照射装置52のレーザー光照射部51から照射される。レーザーの種類としては、YAGレーザ(Yittrium・Aluminium・Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、半導体レーザー〔レーザーダイオード(LD)〕、COレーザーなどが使用できる。
【0043】
非透過性樹脂製である中間部材30の一方の当接面30a側は、レーザー光53のエネルギーを吸収して溶融する。これにともなって透過性の第2樹脂体13の当接面13b側も溶融し、中間部材30と第2樹脂体13とが溶着し接合する。すなわち、接合部31が形成される(図8参照)。レーザー光53と、第1凹状容器体10及び中間部材30とを、相対的に、接合面を形成する方向に沿って移動させる。このことにより、第1凹状容器体10の第2樹脂体13のフランジ部13aと中間部材30とが連続的に溶着して接合される。第1凹状容器体10と中間部材30とが一体化した中間容器体15が製造される。
【0044】
〔第2凹状容器体と中間部材との溶着〕
第1凹状容器体10と中間部材30とが一体化した中間容器体15を反転させ、中間部材30の他方の当接面30bに第2凹状容器体20をのせる。第2凹状容器体20の第2樹脂体23のフランジ部23aの当接面23bと、中間部材30の他方の当接面30bとを密着させた状態に固定する。
【0045】
第2凹状容器体20の透過性の第2樹脂体23の側(例えば、この形態では第2樹脂体23の上方)からレーザー溶着装置50のレーザー光53を照射する。レーザー光53は、レーザー光照射装置52のレーザー光照射部51から照射される。レーザー光の種類としては、YAGレーザ(Yittrium・Aluminium・Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)等の固体レーザー、半導体レーザー〔レーザーダイオード(LD)〕、COレーザーなどが使用できる。
【0046】
中間部材30の他方の当接面30b側は、レーザー光53のエネルギーを吸収して溶融する。これにともなって透過性の第2樹脂体23の当接面23b側も溶融し、中間部材30と第2樹脂体23とが溶着し接合する。すなわち、接合部32が形成される(図8参照)。レーザー光53と、第2凹状容器体20及び中間容器体15とを、相対的に、接合面を形成する方向に沿って移動させる。このことにより、第2凹状容器体20の第2樹脂体23のフランジ部23aと中間部材30とが連続的に溶着して接合される。
【0047】
すなわち、非透過性樹脂からなる中間部材30を介して、第1凹状容器体10の第2樹脂体13のフランジ部13aと、第2凹状容器体20の第2樹脂体23のフランジ部23aとが、サンドイッチ状に溶着、接合され、中空状容器体1を製造することができる。また、接合部31、32は、連続的に溶着されているので、内部の中空部の密封性は高い。
【0048】
この製造方法で製造された中空状容器は、各種電気機器、電子機器、通信機器等の容器として採用することができる。すなわち、機械的強度に富み、薄型、軽量化が図れ、密封性に優れた中空状容器であり、例えば、リチウムイオン電池の容器、キャパシタの容器などに使用されるとよい。また、部品等が内蔵された状態で中空状容器を製造しても、内蔵されている部品等に、熱、振動等の影響を与えることがほとんどない。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、凹状形状体、凹状容器体を、同一の形状のもので説明を行っているが、凹状容器体と中間部材とが溶着可能なものであれば、異なる形状のものであってもよい。また、一方が平らに近い形状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の中空状容器の製造方法で製造した中空状容器の断面図である。
【図2】図2は、金属体とレーザ光非透過性の第1樹脂体とを一体に接合する工程を模式的に示した図であって、射出前の状態を示す説明図である。
【図3】図3は、金属体とレーザ光非透過性の第1樹脂体とを一体に接合する工程を模式的に示した図であって、射出後の状態を示す説明図である。
【図4】図4は、レーザ光非透過性の第1樹脂体とレーザ光透過性の第2樹脂体とを一体に接合する工程を模式的に示した図であって、射出前の状態を示す説明図である。
【図5】図5は、レーザ光非透過性の第1樹脂体とレーザ光透過性の第2樹脂体とを一体に接合する工程を模式的に示した図であって、射出後の状態を示す説明図である。
【図6】図6は、レーザー光照射で第1凹状容器体と中間部材とを溶着して接合する工程を模式的に示した説明図である。
【図7】図7は、レーザー光照射で第2凹状容器体と中間部材とを溶着して接合する工程を模式的に示した説明図である。
【図8】図8は、図7のA部を拡大して示した説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 … 中空状容器
10 … 第1凹状容器体
11、21… 金属体
12、22… レーザ光非透過性の第1樹脂体
13、23… レーザ光透過性の第2樹脂体
15 … 中間容器体
20 … 第2凹状容器体
30 … 中間部材
40、45… 金型
44、49… キャビティ
53 … レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側に開口部が形成された凹状の金属体と、この金属体に一体に接合されるレーザー光非透過性の第1樹脂体とからなる凹状形状体を、前記一方の側の面が向き合うように接合して中空状容器を製造する方法であって、
第1凹状形状体または第2凹状形状体のレーザー光非透過性の第1樹脂体の側面にレーザー光透過性の第2樹脂体を一体に接合し、第1凹状容器体または第2凹状容器体を製造する工程と、
前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体の当接面と、レーザー光非透過性樹脂製の中間部材の一方の当接面とを当接させ、前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体の側よりレーザー光を照射することにより前記第1凹状容器体の前記第2樹脂体と前記中間部材の一方の当接面とを溶着させ、中間容器体を製造する工程と、
前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体の当接面と、前記中間容器体の前記中間部材の他方の当接面とを当接させ、前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体の側よりレーザー光を照射することにより前記第2凹状容器体の前記第2樹脂体と前記中間部材の他方の当接面とを溶着させ、中空状容器を製造する工程と
からなる中空状容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された中空状容器の製造方法において、
前記凹状形状体は、前記金属体の接合面に、所定の表面処理を行う工程と、
前記金属体を金型内にインサートする工程と、
前記金型に形成された第1キャビティ内に前記第1樹脂体を射出し、前記金属体の表面処理した面に、前記第1樹脂体を一体に接合する工程で製造されたものである
ことを特徴とする中空状容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された中空状容器の製造方法において、
前記第2樹脂体は、前記金属体の前記開口部の側の周囲に、フランジ部が形成されているものであり、
前記中間容器体または前記中空状容器を製造する工程は、前記第2樹脂体のフランジ部と前記中間部材の接合面とを溶着させる工程である
ことを特徴とする中空状容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された中空状容器の製造方法において、
前記第1樹脂体、前記第2樹脂体、前記中間部材から選択される少なくとも1種は、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものである
ことを特徴とする中空状容器の製造方法。
【請求項5】
一方の側に開口部が形成された凹状の金属体と、この金属体の前記開口部側の周縁部に一体に接合された第1樹脂体と、この第1樹脂体に、前記金属体が接合された側の反対側に一体に接合された第2樹脂体とからなる第1凹状形状体及び第2凹状形状体が、前記開口部側の面が対向するように接合される中空状容器であって、
少なくとも、前記第1凹状形状体の前記第2樹脂体と、前記第2凹状形状体の前記第2樹脂体との間に中間部材が挟着され、
前記第1樹脂体、及び、前記中間部材がレーザー光非透過性の樹脂からなり、
前記第2樹脂体が、レーザー光透過性の樹脂からなる
ことを特徴とする中空状容器。
【請求項6】
請求項5に記載された中空状容器において、
前記第2樹脂体は、前記金属体の前記開口部の側の周囲にフランジ部が形成されている
ことを特徴とする中空状容器。
【請求項7】
請求項5または6に記載された中空状容器において、
前記第1樹脂体、前記第2樹脂体、前記中間部材から選択される少なくとも1種は、ポリブチレンテレフタレート樹脂またはポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものである
ことを特徴とする中空状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−285929(P2009−285929A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139434(P2008−139434)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【出願人】(000206141)大成プラス株式会社 (87)
【Fターム(参考)】