説明

中継装置

【課題】自己の故障診断を行うことのできる中継装置を提供する。
【解決手段】携帯端末機との間で基地局機能として通信を行う第1送受信部と固定基地局との間で携帯電話機機能として通信を行う第2送受信部とを備え、前記携帯端末機と前記固定基地局との通信の中継を担う中継装置は、故障診断を開始するための契機を検知すると、第1送受信部から送信され、第1のケーブルを介して第2送受信部で受信された第1信号を用いて、第1送受信部における基地局としての送信機能と第2送受信部における携帯電話機としての受信機能とに対する故障診断を行い、第2送受信部から送信され、第2のケーブルを介して第1送受信部で受信された第2信号を用いて、第1送受信部における基地局としての受信機能と第2送受信部における携帯電話機としての送信機能とに対する故障診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機と固定基地局との無線通信間に用いられる中継装置における自己の故障診断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を安定的に実行させるためには、通信機器の故障を検出することが必要である。そこで、特許文献1では、固定基地局において自己の故障診断を行う技術が開示されている。この技術では、固定基地局は、通常の携帯電話機の通信機能と同等の機能をもつ故障診断専用の端末部を有している。固定基地局は、故障診断時において、当該端末部と通信することで、自己の故障を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−319617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話機と固定基地局との間に介在して、両者間の無線通信を行う中継装置は、通常、固定基地局と通信する機能と、携帯電話機と通信する機能の両者をもち合わせている。つまり中継装置は、携帯電話機としての機能と、固定基地局としての機能とを有している。
中継装置は、上述したように、2種類の機能を有しているので、故障が発生する可能性が、携帯電話機と通信するための機能のみを有している固定基地局に比べて高い。そのため、中継装置の故障を検出することが望まれている。しかしながら、特許文献1では、固定基地局に対する自己の故障診断を行う技術は開示されているものの、中継装置に対する自己の故障診断を行う技術は開示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、自己の故障診断を行うことのできる中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、携帯端末機との間で通信を行う第1送受信手段と固定基地局との間で通信を行う第2送受信手段とを備え、前記携帯端末機と前記固定基地局との通信の中継を担う中継装置であって、自己の故障診断を開始するための契機を検知する検知手段と、前記故障診断をする場合において、前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間の信号の送受信に用いられる第1及び第2の中継手段と、前記検知手段により前記契機が検知された場合、前記第1送受信手段から送信され、前記第1の中継手段を介して前記第2送受信手段で受信された第1信号と、前記第2送受信手段から送信され、前記第2の中継手段を介して前記第1送受信手段で受信された第2信号とを用いて、自機の故障診断を行う診断手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この構成によると、中継装置は、故障診断用に専門の構成要素を有することなく、自己の故障診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】中継装置10を含む通信システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】中継装置10の構成を示す図である。
【図3】(a)は第1送信部150の構成を、(b)は第1受信部151の構成を、(c)は第2送信部160の構成を、(d)は第2受信部161の構成を、それぞれ示すブロック図である。
【図4】(a)はRSSIリストT100のデータ構造の一例を、(b)はCINRリストT200のデータ構造の一例を、(c)はBERリストT300のデータ構造の一例を、それぞれ示す図である。
【図5】故障診断処理に係る全体的な処理の動作を示す流れ図である。
【図6】故障診断処理の動作を示す流れ図である。図7へ続く。
【図7】故障診断処理の動作を示す流れ図である。図6から続く。
【図8】RSSIを用いた異常判定処理の動作を示す流れ図である。
【図9】CINRを用いた異常判定処理の動作を示す流れ図である。
【図10】BERを用いた異常判定処理の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の実施の形態
本発明に係る第1の実施の形態としての中継装置10について説明する。
1.1 全体の概要
ここでは、本発明に係る中継装置10を含む通信システム1の概要について説明する。
通信システム1は、図1にて示すように、中継装置10、携帯電話機20、固定基地局30及びメンテナンスサーバ40から構成されている。
【0010】
中継装置10は、送受信される信号の電波が回り込みにくい屋内に存在する携帯電話機20と、屋外に存在する固定基地局30との間に介在して、携帯電話機20と固定基地局30との間の信号の送受信を行うものであり、比較的小さい範囲を通信範囲とする装置である。
また、中継装置10は、自己の故障の診断(以下、「故障診断」という。)を行い、異常が検出されると、その旨を固定基地局30へ通知する。
【0011】
固定基地局30は、携帯電話機20との間において無線通信を行うものである。また、中継装置10から異常が検出された旨の通知を受け取ると、固定基地局30とネットワーク(図示せず)を介して接続されたメンテナンスサーバ40へ通知する。
携帯電話機20は、中継装置10及び固定基地局30を介して他の携帯電話機(図示せず)との間における無線通信を行う。
【0012】
メンテナンスサーバ40は、固定基地局30から中継装置10が異常を検出した旨の通知を受け取ると、その旨を管理者へ通知する。
また、中継装置10と携帯電話機20との間、及び中継装置10と固定基地局30との間は、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing)による通信方法で通信が行われるものとする。
【0013】
1.2 中継装置10の構成
以下、本発明に係る中継装置10の構成について説明する。
中継装置10は、図2にて示すように、送信アンテナ101、102、受信アンテナ103、104、分配器105、106、混合器107、108、第1送受信部109、第2送受信部110、記憶部111、制御部112、第1ケーブル113、第2ケーブル114及びスイッチ115〜120から構成されている。
【0014】
中継装置10は、故障診断時において、第1送受信部109と第2送受信部110との間で、第1ケーブル113及び第2ケーブル114を介して信号の送受信を行い、送受信された信号の品質を用いて、自己の故障を診断する。ここで、信号の品質とは、第1送受信部109と第2送受信部110との間で送受信される信号に対する信号の電力強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)、雑音比を示すCINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio)及び誤り率を示すBER(Bit Error Rate)で示されるものである。
【0015】
(1)送信アンテナ101、102
送信アンテナ101は、無線通信により携帯電話機20へ信号を送信するアンテナである。具体的には、送信アンテナ101は、第1送受信部109から分配器105を介して受け取った信号を携帯電話機20へ送信する。
送信アンテナ102は、無線通信により固定基地局30へ信号を送信するアンテナである。具体的には、送信アンテナ102は、第2送受信部110から分配器106を介して受け取った信号を固定基地局30へ送信する。
【0016】
(2)受信アンテナ103、104
受信アンテナ103は、無線通信により携帯電話機20からの信号を受信するアンテナである。具体的には、受信アンテナ103は、携帯電話機20から受信した信号を混合器107を介して第1送受信部109へ出力する。
受信アンテナ104は、無線通信により固定基地局30からの信号を受信するアンテナである。具体的には、受信アンテナ104は、固定基地局30から受信した信号を混合器108を介して第2送受信部110へ出力する。
【0017】
(3)分配器105、106
分配器105、106は、外部から信号を受け取ると、受け取った信号を2つの経路へ分配して出力するものである。
具体的には、分配器105は、第1送受信部109から携帯電話機20へ送信すべき信号を受け取ると、受け取った信号を送信アンテナ101及び第1ケーブル113へ分配する。また、分配器106は、第2送受信部110から固定基地局30へ送信すべき信号を受け取ると、受け取った信号を送信アンテナ102及び第2ケーブル114へ分配する。
【0018】
なお、分配器105、106は、上記にて示す信号の入出力経路以外には信号は流れないものとする。
(4)混合器107、108
混合器107、108は、2つの経路から信号を受け取った場合に、受け取った各信号を合成して、外部へ出力するものである。
【0019】
具体的には、混合器107は、受信アンテナ103及び第2ケーブル114の双方から信号を受け取ると、受け取った信号を合成して第1送受信部109へ出力する。また、混合器108は、受信アンテナ104及び第1ケーブル113の双方から信号を受け取ると、受け取った信号を合成して第2送受信部110へ出力する。
なお、混合器107、108は、上記にて示す信号の入出力経路以外には信号は流れないものとする。
【0020】
(5)第1送受信部109
第1送受信部109は、中継装置10と携帯電話機20との間における信号の送受信と、故障診断時において第2送受信部との間で信号の送受信とを行うものであり、基地局の機能を実現するものである。
第1送受信部109は、図2にて示すように、第1送信部150、第1受信部151及び第1測定部152を有している。
【0021】
(5−1)第1送信部150
第1送信部150は、携帯電話機20へ送信すべき信号を送信アンテナ101を介して携帯電話機20へ送信、及び故障診断時において故障診断に用いる信号を第1ケーブル113を介して第2送受信部110へ送信するものであり、基地局の機能のうち送信に係る機能を実現する。
【0022】
第1送信部150は、通常、携帯電話機20がハンドオーバーを行なえるようにするために、同期信号及び中継装置10を識別する報知情報を含む信号(以下、「報知信号」という。)を定期的に出力している。
また、第1送信部150は、故障診断時においては、検査用の信号を出力する。ここで、検査用の信号とは、通信システム1の運用上意味をなさないダミーデータを含む信号である。
【0023】
以下、第1送信部150の具体的な構成について説明する。
第1送信部150は、図3(a)に示すように、変調回路200及び増幅回路201を有している。
変調回路200は、固定基地局30から送信され、第2送受信部110において復調(デコード)された信号や、検査用の信号を制御部112から受け取ると、受け取った信号を符号化(エンコード)し、その後、送信すべき周波数へと変調する回路である。
【0024】
増幅回路201は、変調回路200にて符号化された信号の電力を、送信すべき電力へと増幅し、増幅された電力にて符号化された信号を分配器105へ出力する回路である。
(5−2)第1受信部151
第1受信部151は、携帯電話機20からの信号を受信アンテナ103を介して受信、及び故障診断時において検査用の信号を第2ケーブル114を介して第2送受信部110から受信し、受信した信号を増幅及び復調して制御部112へ出力するものであり、基地局の機能のうち受信に係る機能を実現する。
である。
【0025】
以下、第1受信部151の具体的な構成について説明する。
第1受信部151は、図3(b)にて示すように、フィルタ210、増幅回路211及び復調回路212を有している。
フィルタ210は、受信した信号に含まれるノイズを取り除くものである。
増幅回路211は、受信した信号の受信電力を復調可能な信号レベルまで増幅する回路である。
【0026】
復調回路212は、符号化(エンコード)された信号を復号(デコード)し、復号した信号を制御部112へ出力する回路である。
(5−3)第1測定部152
第1測定部152は、携帯電話機20からの信号を受信した場合に、受信した信号のRSSI及びCINRを測定する。また、第1測定部152は、故障診断時において、第2送受信部110へ送信する信号の送信電力を測定し、且つ第2送受信部110から第2ケーブル114を介して受信した検査用の信号に対するRSSI及びCINRをも測定する。
【0027】
RSSI及びCINRの測定については、公知の技術であるため、ここでの説明は省略する。
(6)第2送受信部110
第2送受信部110は、中継装置10と固定基地局30との間における信号の送受信と、故障診断時において第2送受信部との間で信号の送受信とを行うものであり、携帯電話機の通信機能を実現するものである。
【0028】
第2送受信部110は、図2にて示すように、第2送信部160、第2受信部161及び第2測定部162を有している。
(6−1)第2送信部160
第2送信部150は、固定基地局30へ送信すべき信号を送信アンテナ102を介して固定基地局30へ送信、及び故障診断時において故障診断に用いる信号を第2ケーブル114を介して第1送受信部109へ送信するものであり、携帯電話機の通信機能のうち送信に係る機能を実現する。
【0029】
第2送信部160は、故障診断時においては、第1送信部150と同様に、検査用の信号を出力する。
以下、第2送信部160の具体的な構成について説明する。
第2送信部160は、図3(c)に示すように、変調回路220及び増幅回路221を有している。
【0030】
変調回路220は、携帯電話機20から送信され、第1送受信部109において復調(デコード)された信号や、検査用の信号を制御部112から受け取ると、受け取った復調された信号を符号化(エンコード)する回路である。
増幅回路221は、変調回路220にて符号化された信号の電力を、送信すべき電力へと増幅し、増幅された電力にて符号化された信号を分配器106へ出力する回路である。
【0031】
(6−2)第2受信部161
第2受信部161は、固定基地局30からの信号を受信アンテナ104を介して受信、及び故障診断時において検査用の信号を第1ケーブル113を介して第1送受信部109から受信し、受信した信号を増幅及び復調して制御部112へ出力するものであり、携帯電話機の通信機能のうち受信に係る機能を実現する。
【0032】
第2送信部160は、通常、中継装置10がハンドオーバーを行うために、同期信号及び固定基地局30を識別する報知情報を含む報知信号を定期的に受信している。
以下、第2受信部161の具体的な構成について説明する。
第2受信部161は、図3(d)にて示すように、フィルタ230、増幅回路231及び復調回路232を有している。フィルタ230、増幅回路231及び復調回路232のそれぞれは、フィルタ210、増幅回路211及び復調回路212のそれぞれと同様の機能動作を行うので、ここでの説明は省略する。
【0033】
(6−3)第2測定部162
第2測定部162は、固定基地局30からの信号を受信した場合に、受信した信号に対するRSSI及びCINRを測定する。また、第2測定部152は、故障診断時において、第2送信部160が第1送受信部109へ送信する検査用の信号の送信電力を測定し、且つ第1送受信部109から第1ケーブル113を介して受信した検査用の信号に対するRSSI及びCINRをも測定する。
【0034】
(7)第1ケーブル113、第2ケーブル114及びスイッチ115〜120
第1ケーブル113及び第2ケーブル114それぞれは、分配器105と混合器108とを、混合器107と分配器106とを、それぞれ接続するためのものである。
スイッチ115及び116それぞれは、制御部112の制御により、送信アンテナ101と分配器105との間、及び送信アンテナ102と分配器106との間のそれぞれを接続したり、非接続にしたりする。
【0035】
スイッチ117及び118それぞれは、制御部112の制御により、受信アンテナ103と混合器107との間、及び受信アンテナ104と混合器108との間のそれぞれを接続したり、非接続にしたりする。
スイッチ119及び120それぞれは、制御部112の制御により、分配器105と混合器108との間、及び混合器107と分配器106との間のそれぞれを接続したり、非接続にしたりする。スイッチ119及び120は、制御部112の制御がON・OFF状態を切り替えることで、第1ケーブル113及び第2ケーブル114とが導通・非導通の状態となる、つまり、第1送受信部及び第2送受信部の間が導通・非導通の状態となる。
【0036】
通常の運用時、つまり故障診断の非実行時には制御部112が、スイッチ119及び120をOFF状態とし、分配器105と混合器108との間、及び混合器107と分配器106との間のそれぞれを非接続にする。残りのスイッチ115〜118はONとなっている。
故障診断時には制御部112が、スイッチ119及び120をON状態とし、分配器105と混合器108との間、及び混合器107と分配器106との間のそれぞれを接続状態にする。なお、他のスイッチ115〜118は、ONの状態のままである。
【0037】
(8)記憶部111
記憶部111は、HDD(HardDisc Drive)、メモリ等を含んで構成され、中継装置10が動作上必要とする設定情報、各種データ、プログラム、及び故障診断時にて検出した故障(装置の異常)に係る異常情報を記憶する機能を有する。ここで、異常情報とは、検出した時刻、エラー種別及びエラー事象からなるものである。エラー種別とは、RSSI、CINR及びBERの何れかを示すものであり、エラー事象とは、検出したエラーの内容を示すものである。
【0038】
具体的には、記憶部111は、故障診断の動作に係るプログラム及び故障の判断基準となるデータを含む各種リストを記憶している。各種リストとは、RSSIの基づく故障診断に用いるRSSIリストT100及びCINRに基づく故障診断に用いるCINRリストT200及びBERに基づく故障診断に用いるBERリストT300を記憶している。また、故障診断時に送受信する検査用の信号に含まれる検査用情報(データ)、第1送受信部109及び第2送受信部110にて行われる変調方式及び符号化率をも予め記憶している。なお、ここでは、第1送受信部109及び第2送受信部110それぞれにて行われる変調方式及び符号化率は同一のものとする。
【0039】
以下、各種リストについて説明する。
(RSSIリストT100)
RSSIリストT100は、図4(a)にて示すように、送信電力、受信電力基準値、RSSI警告値(低)、RSSI警告値(高)、RSSI異常値(低)及びRSSI異常値(高)からなる組を複数個有している。これらの値は、故障診断時において、第1送受信部109と第2送受信部110との間に介在する分配器105、106、混合器107、108、第1ケーブル113及び第2ケーブル114や、第1送受信部109及び第2送受信部110のそれぞれが有する増幅回路201、211、220、231の性能及び特性によって予め決定されたものである。
【0040】
送信電力は、故障診断時において、送信側である送受信部から送信される信号(報知信号又は検査用の信号)の送信電力を示すものである。なお、ここでは、信号の送信側となる送受信部は、故障診断時において、RSSIリストT100にて示される送信電力のうち一の送信電力で信号を送信するものとする。
受信電力基準値は、故障診断時において、信号送信側の送受信部が送信した信号の送信電力に基づいて予め決定された値である。
【0041】
RSSI警告値(低)は、受信側である送受信部が受信する信号の受信電力を正常の範囲内とみなすための下限値である。
RSSI警告値(高)は、受信側である送受信部が受信する信号の受信電力を正常の範囲内とみなすための上限値である。
RSSI異常値(低)は、受信側である送受信部が受信する信号の受信電力の異常の程度が、警告レベルのものであるのか異常レベルのものであるのかを切り分ける下限値である。つまり、受信電力が、RSSI警告値(低)からRSSI異常値(低)の範囲内である場合には、その異常の程度が警告レベルであることを示し、RSSI異常値(低)を下回る場合には、異常レベルであることを示す。
【0042】
RSSI異常値(高)は、受信側である送受信部が受信する信号の受信電力は正常値ではないが、警告レベルのものであり、運用に耐え得る電力であることを示す上限値である。つまり、受信電力が、RSSI警告値(高)からRSSI異常値(高)の範囲内である場合には、その異常の程度が警告レベルであることを示し、RSSI異常値(高)を上回る場合には、異常レベルであることを示す。
【0043】
(CINRリストT200)
CINRリストT200は、図4(b)にて示すように、RSSI値、CINR基準値、CINR警告値及びCINR異常値からなる組を複数個有している。これらの値は、故障診断時において、第1送受信部109と第2送受信部110との間に介在する分配器105、106、混合器107、108、第1ケーブル113及び第2ケーブル114や、第1送受信部109及び第2送受信部110のそれぞれが有する増幅回路201、211、220、231の性能及び特性によって決定されるものである。
【0044】
RSSI値は、故障診断時に測定されたRSSIの値を示すものである。
CINR基準値は、測定されたRSSI値に基づいて決定されるCINRの値である。
CINR警告値は、受信側である送受信部が受信する信号に対するCINRの値を正常値であるとみなすための下限値である。
CINR異常値は、受信側である送受信部が受信する信号に対するCINRの値が、警告レベルのものであるのか異常レベルのものであるのかを切り分けるための値である。つまり、測定されたCINRの値が、CINR警告値からCINR異常値の範囲内である場合には、通信システムの運用には支障はないが、その異常の程度が警告レベルであることを示し、CINR異常値以下である場合には、異常レベルであることを示す。
【0045】
(BERリストT300)
BERリストT300は、図4(c)にて示すように、RSSI値、CINR基準値、変調方式・符号化率、BER基準値及びBER異常値からなる組を複数個有している。BER基準値及びBER異常値は、理論値若しくは実測値を元に導き出せるものである。
RSSI値は、故障診断時に測定されたRSSIの値を示すものである。
【0046】
CINR基準値は、測定されたRSSI値に基づいて決定されるCINRの値であり、その対応は、CINRリストT200と同様である。
変調方式・符号化率は、送信する信号を変調する際の変調方式及び符号化率を示すものである。
BER基準値は、BERの値が正常値であるとみなすための基準値であり、RSSI値、CINR基準値及び変調方式・符号化率の組み合わせのよる理論値若しくは実測値を元に導き出されたものである。測定されたBERの値がBER基準値以下である場合に、当該BERの値は正常値であるとみなされる。
【0047】
BER異常値は、測定されたBERの値が、正常レベルのものであるのか異常レベルのものであるのかを切り分けるための値である。つまり、測定されたBERの値が、BER基準値からBER異常値の範囲内である場合には、通信システムの運用には支障はないが、その異常の程度が警告レベルであることを示し、BER異常値以上である場合には、異常レベルであることを示す。
【0048】
(9)制御部112
制御部112は、記憶部111に記憶されているプログラムを実行することにより、中継装置10の動作全体の制御を行うものである。
具体的には、制御部112は、第1送受信部109で受信された固定基地局30へ送信すべき信号を第2送受信部110へ出力する。また、逆に、制御部112は、第2送受信部110で受信された携帯電話機20へ送信すべき信号を第1送受信部109へ出力する。
【0049】
また、制御部112は、故障診断を開始するための契機を監視しており、当該契機を検出すると、故障診断の動作を開始する。
以下、故障診断に係る構成要素及び機能について説明する。
制御部112は、故障診断に係る構成要素として、検知部170及び診断部171を有している。
【0050】
(9−1)検知部170
検知部170は、故障診断を開始するための契機を監視するものである。
具体的には、検知部170は、第2送受信部110の第2測定部162で定期的に測定される報知信号のRSSI、CINRの測定結果に基づいて、固定基地局30からの電波状態及び通信状態を確認する。例えば、検知部170は、CINRの値が、固定基地局30から受信すべき受信電力より低い場合、若しくは高い場合、及びCINRの値が予め定められた値より高い場合を、電波状態及び通信状態が異常であると判断する。
【0051】
また、検知部170は、携帯電話機20が接続された直近の日時(以下、「端末最終接続日時」という。)と現在日時との差分が予め定められた設定値より大きいか否かを確認する。これにより、接続された携帯電話機の存否を確認することができる。
また、検知部170は、故障診断時刻として、予め設定された時刻が到来したか否かを確認する。
【0052】
さらには、検知部170は、中継装置10の管理者により故障診断の開始の指示を受け付けたか否かを確認する。
検知部170により、固定基地局30からの電波状態及び通信状態の確認時において異常を検知した場合、端末最終接続日時と現在日時との差分が予め定められた設定値より大きい場合、故障診断時刻として予め設定された時刻が到来した場合、及び中継装置10の管理者からの指示を受け付けた場合の何れかにおいて、故障診断が開始される。
【0053】
(9−2)診断部171
診断部171は、第1送受信部109及び第2送受信部110から送信しされる信号の品質、つまり受信した信号のRSSI、CINR及びBERに基づいて、故障診断を行うものである。
具体的には、診断部171は、検知部170で故障診断を開始するための契機が検知されると、スイッチ119及び120をON状態に、つまり第1ケーブル113及び第2ケーブル114を導通し、故障診断の終了時及び中止時においてスイッチ119及び120をOFF状態に、つまり第1ケーブル113及び第2ケーブル114を非導通にする。
【0054】
診断部171は、第1送受信部109から送信された報知信号が、第2送受信部110にて受信されたか否かを判断する。第1送受信部109から送信された報知信号が、第2送受信部110にて受信されたと判断する場合、診断部171は、第1測定部152にて測定された当該報知信号の出力時の電力と、第2測定部162にて測定された当該報知信号のRSSI及びCINRとを取得する。
【0055】
診断部171は、取得したRSSI及びCINRに基づいて第1送受信部109の第1送信部150及び第2送受信部110の第2受信部161に対して異常が発生しているか否かを判定する。以下において、当該処理を異常判定処理という。
診断部171は、記憶部111にて記憶している検査用情報を含む検査用の信号を生成し、生成した検査用の信号を第2送信部160を介して出力する。診断部171は、第2送信部160から送信された検査用の信号が第1受信部151にて受信されると、第2測定部162にて測定された当該検査用の信号の出力時の電力と、第1測定部152にて測定された当該検査用の信号のRSSI及びCINRを取得する。
【0056】
診断部171は、取得したRSSI及びCINRに基づいて、第1送受信部109の第1受信部151及び第2送受信部110の第2送信部160に対する異常判定処理を行う。また、診断部171は、第1受信部151が受信した検査用の信号に含まれる情報と、記憶部111にて記憶している検査用情報とから得られるBERを用いた異常判定処理を行う。
【0057】
さらに、診断部171は、記憶部111にて記憶している検査用情報を含む検査用の信号を生成し、生成した検査用の信号を第1送信部150を介して出力する。診断部171は、第1送信部150から送信された検査用の信号が第2受信部161にて受信されると、第2受信部161が受信した検査用の信号に含まれる情報と、記憶部111にて記憶している検査用情報とから得られるBERを用いた異常判定処理を行う。
【0058】
また、第1受信部151が携帯電話機20からの接続要求若しくはハンドオーバーの要求を示す信号(以下、「要求信号」という。)を受信すると、診断部171は、故障診断を中止する。このような場面は、以下のような理由で起こり得る。故障診断中であってもスイッチ115がON状態であるので送信アンテナ101と第1送信部150とは導通したままとなり、第1送信部150は携帯電話機20に対してハンドオーバーのための報知信号を送信しているからである。このような場合、第1受信部151が受信する信号は、混合器107により、要求信号と検査用の信号とが混在することがある。しかしながら、OFDMによる通信形態では、周波数と時間とから決定される通信に用いる領域は、携帯電話機20及び第2送受信部110それぞれにおいて異なるよう制御されている。そのため、要求信号と検査用の信号とが混在した場合であっても、これら領域から個別に信号を抽出することができるので、診断部171は、故障診断中においても、携帯電話機20から要求信号を識別することができる。
【0059】
以下、RSSI、CINR及びBERそれぞれを用いた異常判定処理について説明する。
(RSSIを用いた異常判定処理)
診断部171は、出力された信号に対する送信電力とRSSIリストT100とを用いて、送信電力に対応するRSSI警告値(低)及びRSSI警告値(高)をRSSIリストT100から特定する。診断部171は、取得したRSSIの値が、特定されたRSSI警告値(低)及びRSSI警告値(高)を用いて正常範囲内であるか否かを判断する。ここで、正常範囲内であるとは、測定されたRSSIの値が、特定されたRSSI警告値(低)より大きく特定されたRSSI警告値(高)より小さい範囲に属することである。
【0060】
診断部171は、RSSIの値が正常範囲内でないと判断する場合、当該値が特定されたRSSI警告値(高)以上であるか否かを判断する。当該値が特定されたRSSI警告値(高)以上であると判断する場合、診断部171は、検査用の信号の送信側における増幅回路のパラメータ異常と判断し、当該増幅回路のパラメータ調整を行う。この場合、診断部171は、増幅回路の増幅係数を下げて、RSSIの値が正常範囲内となるようにする。当該値が特定されたRSSI警告値(高)以上でない、つまり当該値が特定されたRSSI警告値(低)以下であると判断する場合、診断部171は、信号の受信側の異常であると判断する。診断部171は、検出時刻と、エラー種別をRSSI及びエラー事象を受信側の異常を示す旨とする情報とからなる異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する。
【0061】
(CINRを用いた異常判定処理)
診断部171は、取得したRSSIの値とCINRリストT200とを用いて、取得したRSSIに対応するCINR異常値を特定する。診断部171は、特定したCINR異常値を用いて、取得したCINRの値が異常であるか否かを判断する。具体的には、診断部171は、CINRの値が、特定したCINR異常値以下であるか否かを判断する。
【0062】
CINRの値が特定したCINR異常値以下であると判断する場合には、診断部171は、検出時刻と、エラー種別をCINR及びエラー事象をCINRが低いことを示す情報とからなる異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する。
CINRの値が特定したCINR異常値以下でないと判断する場合には、診断部171は、第1送受信部109及び第2送受信部110双方とも正常に動作しているものとみなす。
【0063】
(BERを用いた異常判定処理)
診断部171は、受信した信号に含まれる情報と、記憶部111にて記憶している検査用情報とを用いてBERを取得(測定)する。
診断部171は、記憶部111に記憶している変調方式及び符号化率を取得する。
診断部171は、測定されたRSSIの値とCINRリストT200とからCINR基準値を取得する。診断部171は、測定されたRSSIの値、取得したBERの値、CINR基準値、変調方式及び符号化率とBERリストT300とを用いて、BERの値が異常であるか否かを判断する。具体的には、診断部171は、取得したBERの値が、BERリストT300においてRSSIの値、CINR基準値、変調方式及び符号化率の組み合わせに対応するBER異常値以上であるか否かを判断する。
【0064】
BERの値がBER異常値以上であると判断する場合には、診断部171は、信号の復調に用いた復調回路若しくはその周辺回路に異常があるものとして、検出時刻と、エラー種別をBER及びエラー事象をBERが高いことを示す情報とからなる異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する。
【0065】
BERの値がBER異常値以下であると判断する場合には、診断部171は、信号の復調に用いた復調回路が正常に動作しているものとみなす。
1.3 中継装置10の動作
(1)全体的な処理
ここでは、故障診断処理に係る中継装置10の動作について、図5にて示す流れ図を用いて説明する。
【0066】
制御部112の検知部170は、第2送受信部110の第2測定部162で定期的に測定される報知信号のRSSI、CINRの測定結果に基づいて、固定基地局30からの電波状態及び通信状態を確認し(ステップS5)、第2送受信部110の機能動作が正常であるか否かを判断する(ステップS10)。
第2送受信部110の機能動作が正常であると判断する場合(ステップS10における「Yes」)、検知部170は、端末最終接続日時と現在日時とを取得し(ステップS15)、端末最終接続日時と現在日時との差分が予め定められた設定値より大きいか否かを確認する(ステップS20)。
【0067】
差分が設定値より大きくない、つまり設定値以下であると判断する場合(ステップS20における「No」)、検知部170は、中継装置10の管理者により故障診断の開始の指示を受け付けたか、又は故障診断時刻として設定された時刻が到来したかを確認する(ステップS25)。
指示を受け付けていない、又は故障診断時刻として設定された時刻が到来していないと判断する場合(ステップS25における「No」)、処理は、ステップS5へと戻る。
【0068】
検知部170において、第2送受信部110の機能動作が正常でない、つまり異常であると判断する場合(ステップS10における「No」)、端末最終接続日時と現在日時との差分が予め定められた設定値より大きいと判断する場合(ステップS20における「Yes」)、及び故障診断の開始の指示を受け付けた又は故障診断時刻として設定された時刻が到来したと判断する場合(ステップS25における「Yes」)、診断部171は故障診断処理を実行して、中継装置10の故障診断を行う(ステップS30)。
【0069】
(2)故障診断処理について
ここでは、図5にて示すステップS30における故障診断処理について、図6及び図7に示す流れ図を用いて説明する。
診断部171は、検知部170で故障診断を開始するための契機が検知されると、スイッチ119及び120をON状態にして、第1ケーブル113及び第2ケーブル114を導通する(ステップS100)。
【0070】
診断部171は、第2受信部161が定期的に受信している報知信号を受信したか否かにより、基地局をスキャンしたか否かを判断する(ステップS105)。
基地局をスキャンしたと判断する場合(ステップS105における「Yes」)、診断部171は、スキャンした基地局は中継装置10であるか否かを判断する(ステップS110)。具体的には、診断部171は、第2受信部161が受信した報知信号に中継装置10を識別する報知情報が含まれるか否かを判断する。
【0071】
スキャンした基地局が中継装置10であると判断する場合(ステップS110における「Yes」)、第2送受信部110の第2測定部162は、第2受信部161が受信した報知信号に対するRSSI及びCINRを測定する(ステップS115)。なお、このとき、第1測定部152では、第1送信部150から送信された報知信号の送信電力を測定している。
【0072】
診断部171は、測定されたRSSIを用いた異常判定処理、CINRを用いた異常判定処理を行う(ステップS120、S125)。
第2送受信部110の第2送信部160は、検査用の信号を送信する(ステップS130)。なお、このとき、第2測定部162では、第2送信部160から送信された検査用の信号の送信電力を測定している。
【0073】
第1送受信部109の第1測定部152は、第1受信部151が受信した検査用の信号に対するRSSI及びCINRを測定する(ステップS135)。
診断部171は、測定されたRSSIを用いた異常判定処理、CINRを用いた異常判定処理、及びBERを用いた異常判定処理を行う(ステップS140、S145、S150)。
【0074】
第1送受信部109の第1送信部150は、検査用の信号を送信する(ステップS155)。
診断部171は、第2受信部161が受信した検査用の信号に含まれる情報と検査用情報とから得られるBERを用いた異常判定処理を行う(ステップS160)。
診断部171は、全ての異常判定処理を終了すると、スイッチ119及び120をOFF状態にして、第1ケーブル113及び第2ケーブル114を非導通にする(ステップS165)。
【0075】
基地局をスキャンしていないと判断する場合(ステップS105における「No」)及びスキャンした基地局が中継装置10でないと判断する場合(ステップS110における「No」)、処理はステップS105へ戻る。
(3)RSSIを用いた異常判定処理
ここでは、図6にて示すステップS120及びS140で行われる異常判定処理について説明する。
【0076】
なお、ステップS120にて行われる異常判定処理と、ステップS140にて行われる異常判定処理とは、対象となる構成要素が第1送信部150及び第2受信部161であるか、第2送信部160及び第1受信部151であるかの違いであり、処理概念には差はない。
ここでは、ステップS120にて行われる異常判定処理についてのみ、図8にて示す流れ図を用いて説明し、ステップS140で行われる異常判定処理についての説明は省略する。
【0077】
診断部171は、第2測定部162が測定したRSSIの値が正常範囲内であるか否かを判断する(ステップS200)。具体的には、診断部171は、測定したRSSIの値が第1測定部152で測定した報知信号の送信電力に対応するRSSI警告値(低)からRSSI警告値(高)の範囲内であるか否かを判断する。
第2測定部162が測定したRSSIの値が正常範囲内でないと判断する場合(ステップS200における「No」)、診断部171は、測定されたRSSIがRSSI警告値(高)以上であるか否かを判断する(ステップS205)。
【0078】
測定されたRSSIの値がRSSI警告値(高)以上であると判断する場合(ステップS205における「Yes」)、診断部171は、報知信号を送信した第1送信部150における増幅回路201のパラメータ調整を行う(ステップS210)。具体的には診断部171は、増幅回路201の増幅係数を下げる。
パラメータの変更後、第1送信部150は、再度、報知信号を送信する(ステップS215)。第2測定部162は、再度送信された報知信号のRSSIを測定する(ステップS220)。診断部171は、再度計測されたRSSIの値が正常範囲内であるか否かを判断する(ステップS225)。正常範囲内であると判断する場合には(ステップS225における「Yes」)、処理は終了する。正常範囲内でないと判断する場合には、処理はステップS210へ戻る。
【0079】
測定されたRSSIがRSSI警告値(高)以上でない、つまりRSSI警告値(低)以下であると判断する場合(ステップS205における「No」)、診断部171は、第2受信部161が異常である旨の異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する(ステップS230、S235)。
【0080】
以上が、ステップS120にて行われる異常判定処理である。ステップS140にて行われる異常判定処理は、上記の記載において、第1送受信部109における構成要素を第2送受信部110における構成要素へと、第2送受信部110における構成要素を第1送受信部109における構成要素へと、報知信号を検査用の信号へと、それぞれ変更すればよい。
【0081】
(4)CINRを用いた異常判定処理
ここでは、図6にて示すステップS125及びS145で行われる異常判定処理について説明する。
なお、ステップS125にて行われる異常判定処理と、ステップS145にて行われる異常判定処理とは、対象となる構成要素が第2受信部161であるか、第1受信部151であるかの違いであり、処理概念には差はない。
【0082】
ここでは、ステップS125にて行われる異常判定処理についてのみ、図9にて示す流れ図を用いて説明し、ステップS145で行われる異常判定処理についての説明は省略する。
診断部171は、CINRの値が、CINR異常値以下であるか否かを判断する(ステップS300)。
【0083】
CINRの値がCINR異常値以下であると判断する場合には(ステップS300における「Yes」)、診断部171は、検出時刻と、エラー種別をCINR及びエラー事象をCINRが低いことを示す情報となからなる異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する(ステップS305、S310)。
【0084】
CINRの値がCINR異常値以下でないと判断する場合には(ステップS300における「No」)、診断部171は、CINRの値は正常であるとして当該処理を終了する。
(5)BERを用いた異常判定処理
ここでは、図6、7にて示すステップS150及びS160で行われる異常判定処理について説明する。
【0085】
なお、ステップS150にて行われる異常判定処理と、ステップS160にて行われる異常判定処理とは、対象となる構成要素が第2受信部161であるか、第1受信部151であるかの違いであり、処理概念には差はない。
ここでは、ステップS150にて行われる異常判定処理についてのみ、図10にて示す流れ図を用いて説明し、ステップS160で行われる異常判定処理についての説明は省略する。
【0086】
診断部171は、受信した信号に含まれる情報と、記憶部111にて記憶している検査用情報とを比較してBERを取得する(ステップS400)。
診断部171は、記憶部111に記憶している変調方式及び符号化率と、測定されたRSSIの値に対応するCINR基準値とを取得する(ステップS405)。具体的には、診断部171は、記憶部111から変調方式及び符号化率を取得し、測定されたRSSIの値に対応するCINR基準値をCINRリストT200から取得する。診断部171は、取得したBERの値が、BERリストT300においてRSSIの値、CINR基準値、変調方式及び符号化率の組み合わせに対応するBER異常値以上であるか否かを判断する。
【0087】
BERの値がBER異常値以上であると判断する場合には(ステップS405における「Yes」)、診断部171は、検出時刻と、エラー種別をBER及びエラー事象をBERが高いことを示す情報となからなる異常情報を生成し、記憶部111に記憶するとともに、固定基地局30を介してメンテナンスサーバ40へ送信する(ステップS410、S415)。
【0088】
BERの値がBER異常値以上でないと判断する場合には(ステップS405における「No」)、診断部171は、BERの値は正常であるとして当該処理を終了する。
1.4 その他
以上、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0089】
(1)上記実施の形態では、スイッチ115〜118に対する制御について言及しなかったが、制御部112は、以下のようにスイッチ115〜118を制御してもよい。
制御部112は、RSSIを用いた異常判定処理中に、測定されたRSSIの値が、RSSI異常値(低)以下、またはRSSI異常値(高)以上である場合には、異常が検出された第1送受信部若しくは第2送受信部が運用に耐え得るものではないと判断し、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにする。
【0090】
また、制御部112は、CINRを用いた異常判定処理中も同様に、測定されたCINRの値が、CINR異常値以下である場合には、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにする。
また、BERを用いた異常判定処理中に、ビット誤りを検出すると、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにする。
【0091】
さらには、制御部112は、中継装置10の管理者の指示によりスイッチ115〜118をOFF状態としてもよい。この場合、携帯電話機20及び固定基地局30と通信することなく、診断の専用モードで、故障診断を行うことができる。
さらには、スイッチ116、118を以下のように制御してもよい。
第2送受信部110は、常に固定基地局30間との通信を行っているため、故障診断中において第1送受信部109から受信した信号のRSSI、CINRが正確に測定できない。そこで、故障診断を開始するための契機を検出した場合、制御部112は、固定基地局30との通信を不可とするためにスイッチ116、118をOFF状態としてもよい。
【0092】
これにより、中継装置10と固定基地局30間との通信は切断されるが、第1送受信部109は送信アンテナ101にて報知信号を送信し続けているため、見掛け上サービスは継続している。固定基地局30との通信が不可となっている間は、中継装置10の第2送受信部110は、第1送受信部109から送信された信号の測定を行うことで自己診断・パラメータ調整を実施することができる。第1送受信部109が携帯電話機20から要求信号を受信した場合、中継装置10は、スイッチ116、118をON状態として、固定基地局30との通信をただちに復旧させ、実サービスを開始させる。
【0093】
(2)上記実施の形態において、端末最終接続日時と現在日時との差分が予め定められた設定値より大きい場合を、接続された携帯電話機が存在しない場合としたが、これに限定されない。
接続された携帯電話機が存在しない場合とは、携帯電話機が省電力のため、間欠送受信を行っている場合(間欠送受信の無通信区間)も含んでもよい。
【0094】
または、間欠送受信の無通信区間とは、接続された携帯電話機がない状態であるとしてもよい。また、接続された携帯電話機が存在してもネットワーク側との送受信が発生しないケース、すなわち第2送受信部110において固定基地局30間との送受信が必要ないケースを、接続された携帯電話機がない状態としてもよい。
(3)上記実施の形態においては、制御部112は、故障診断開始時において、第1ケーブル113及び第2ケーブル114の双方とも導通状態としたが、これに限定されない。
【0095】
制御部112は、以下のようにスイッチ119及び120を制御してもよい。
制御部112は、第1送受信部109から第2送受信部110へ信号を送信する場合には、第1ケーブル113を導通状態とし、第2ケーブル114を非道通状態、つまりスイッチ119をON状態とし、スイッチ120をOFF状態とする。そして、制御部112は、第2送受信部110から第1送受信部109へ信号を送信する場合には、スイッチ119をOFF状態とし、スイッチ120をON状態とする。
【0096】
これにより、信号を送信する一の送受信部は、他の送受信からケーブルを介して信号を受信することはないので、外部からの信号を無線通信により確実に受信することができる。
(4)上記実施の形態では、中継装置10は、故障診断時に携帯電話機20からの要求信号を受信すると、実行中の故障診断を中止したが、これに限定されない。
【0097】
中継装置10は、故障診断時に携帯電話機20からの要求信号を受信すると、実行中の処理のブレイクポイントを記憶しておき、処理を中断してもよい。そして、中継装置10は、再度、故障診断を開始するための契機を検知すると、ブレイクポイント、つまり処理を中断した箇所から故障診断を行えばよい。
(5)上記実施の形態において、送信アンテナ101、102と、受信アンテナ103、104とを個別の構成としたが、これに限定されない。
【0098】
送信アンテナ101と受信アンテナ103とを、送受信される信号を合成・分配する1つの送受信アンテナとしてもよい。
また、送信アンテナ102と受信アンテナ104についても同様に、1つの送受信アンテナとしてもよい。
また、上記実施の形態では、第1送受信部109及び第2送受信部110それぞれにおいて、単一の送信アンテナ及び受信アンテナを設けたが、これに限定されない。
【0099】
第1送受信部109及び第2送受信部110それぞれは、MIMO(Multi Input Multi Output)を使用する場合のように複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを設けてもよい。
(6)上記実施の形態では、RSSIリストT100を正常、異常の切り分けのみに用いたが、これに限定されない。
【0100】
RSSIリストT100は、計測されたRSSIの値を正常、警告、異常の切り分けに用いられてもよい。
診断部171は、計測されたRSSIの値が正常範囲でないと判断する場合、さらに、RSSIの値が、RSSI異常値(低)からRSSI警告値(低)の範囲内であるか、又はRSSI警告値(高)からRSSI異常値(高)の範囲内であるかを判断する。RSSIの値がこれらの何れかの範囲内である場合には、パラメータの変更は行わず、RSSIの値が警告レベルであることを示す情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。なお、RSSIの値がRSSI警告値(高)からRSSI異常値(高)の範囲内にある場合には、診断部171は、上記と同様に、警告レベルであることを示す情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信し、さらに、パラメータ変更を行ってもよい。
【0101】
診断部171は、RSSIの値がRSSI異常値(低)からRSSI警告値(低)の範囲内になく、かつRSSI警告値(高)からRSSI異常値(高)の範囲内にもない場合、パラメータの変更は行わず、異常情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。なお、RSSIの値がRSSI異常値(高)以上である場合には、診断部171は、異常情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信し、さらに、パラメータ変更を行ってもよい。
【0102】
また、診断部171は、RSSIの値がRSSI異常値(低)からRSSI警告値(低)の範囲内になく、かつRSSI警告値(高)からRSSI異常値(高)の範囲内にもない場合、異常情報を送信した後、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにしてもよい。
(7)上記実施の形態では、CINRリストT200を正常、異常の切り分けのみに用いたが、これに限定されない。
【0103】
CINRリストT200は、計測されたCINRの値を正常、警告、異常の切り分けに用いられてもよい。
診断部171は、計測されたCINRの値がCINR警告値より以上であるか否かを判断する。CINRの値がCINR警告値以上であると判断する場合には、診断部171は、CINRの値は正常値であるとする。
【0104】
CINRの値がCINR警告値以上でないと判断する場合、さらに、CINRの値がCINR警告値とCINR異常値との範囲内にあるか否かを判断する。
CINRの値がCINR警告値とCINR異常値との範囲内である場合には、診断部171は、CINRの値が警告レベルであることを示す情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。
【0105】
診断部171は、CINRの値がCINR警告値とCINR異常値との範囲内でない場合、つまりCINR異常値以下である場合、診断部171は、異常情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。
また、診断部171は、CINRの値がCINR異常値以下である場合、異常情報を送信した後、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにしてもよい。
【0106】
(8)上記実施の形態では、BERリストT300を正常、異常の切り分けのみに用いたが、これに限定されない。
BERリストT300は、計測されたBERの値を正常、警告、異常の切り分けに用いられてもよい。
診断部171は、計測されたBERの値がBER基準値以下であるか否かを判断する。BERの値がBER基準値以下であると判断する場合には、診断部171は、BERの値は正常値であるとする。
【0107】
BERの値がBER基準値以下でないと判断する場合、さらに、BERの値がBER基準値とBER異常値との範囲内にあるか否かを判断する。
BERの値がBER基準値とBER異常値との範囲内である場合には、診断部171は、BERが警告レベルであることを示す情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。
【0108】
診断部171は、BERの値がBER基準値とBER異常値との範囲内でない場合、つまりBER異常値以上である場合、診断部171は、異常情報を記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信する。
また、診断部171は、BERの値がBER異常値以上である場合、異常情報を送信した後、スイッチ115〜118をOFF状態とし、携帯電話機20及び固定基地局30との通信が不可となるようにしてもよい。
【0109】
(9)上記実施の形態において、計測されたRSSIの値が異常値(低)以下である場合、診断部171は、異常情報を生成し、記憶部111に記憶すると共に、メンテナンスサーバ40へ送信したが、これに限定されない。
計測されたRSSIの値が異常値(低)以下である場合、診断部171は、第1送受信部109と第2送受信部110における受信部の信頼性が非常に高い場合、送信側の不具合と判断し、RSSIの値が正常範囲の上限値を超える場合と同様に、増幅回路のパラメータの変更してもよい。具体的には、診断部171は、増幅係数を上げることで、RSSIの値が正常範囲内となるようにする。
【0110】
(10)上記実施の形態において、中継装置10は、検査用情報を予め記憶して、それをBERの取得時に用いたが、これに限定されない。
例えば、検査用の信号に含まれる情報は、0から9までの数値を繰り返すといった予め定められた規則に基づいて、当該情報を含む検査用信号を送信してもよい。
受信側では、受け取った検査用の信号に含まれる情報が予め定められた規則と一致しない部分を誤りとして検出することで、そのBERを取得することができる。
【0111】
(11)上記実施の形態において、中継装置10は、BERリストT300を用いて、BERの正常・異常を切り分けたが、これに限定されない。
中継装置は、受信した信号において誤りの有無によって、つまりBERの値が、0であるかそれ以外であるかによって、BERの正常・異常を切り分けてもよい。
(12)上記実施の形態において、第1送受信部109と第2送受信部110とを同じ筐体内にあるとしたが、これに限定されない。
【0112】
第1送受信部109と第2送受信部110は、異なる筐体内に存在してもよい。この場合、制御部112は、第1送受信部109が存在する筐体内にあってもよいし、第2送受信部110が存在する筐体内にあってもよいし、又はこれら筐体とは異なる筐体内にあってもよい。
(13)上記実施の形態において、故障診断時には、RSSI、CINR及びBERの3種類の値を用いて診断したが、これに限定されない。
【0113】
診断部171は、これら値のうち少なくとも1種類の値を用いて故障診断を行ってもよい。
(14)上記の実施の形態で説明した手法の手順を記述したプログラムをメモリに記憶しておき、CPU(Central Processing Unit)などがメモリからプログラムを読み出して、読み出したプログラムを実行することによって、上記の手法が実現されるようにしてもよい。
【0114】
また、当該手法の手順を記述したプログラムを記録媒体に格納して、頒布するようにしてもよい。
(15)上記実施の形態において、中継装置10は、当該中継装置10の管理者により故障診断の開始の指示を受け付けたが、これに限定されない。
通信事業者から指示を受け付けてもよいし、メンテナンスサーバ40から故障診断の開始のコマンドを受け付けてもよい。
【0115】
(16)本実施の形態では、第1ケーブル113及び第2ケーブル114を、第1送受信部109及び第2送受信部110との間の信号の送受信に用いることで記載したが、必ずしもこの場合に限られない。第1送受信部109と第2送受信部110との間の信号の送受信に用いる手段として、例えば、第1送受信部109と第2送受信部110との間の信号を、中継装置10が使用していない周波数帯を用いた無線通信で行ってもよい。また、有線で通信する場合には光ケーブルを用いて行ってもよい。
【0116】
(17)上記実施の形態及び変形例を組み合わせるとしてもよい。
1.5 まとめ
(1)通常、実施の形態にて示す通信システム1では、第2送受信部110では固定基地局30とのネゴシエーションにより送信電力を制御している。そのため送信電力は一定にはならないが、その際の送信電力は第2送受信部110で把握しているため、それから第1送受信部109で信号を受信する際の電力は計算することができる。第1送受信部109では第2送受信部110より受信した信号のRSSI、CINRおよび復調結果(BER)から故障診断やパラメータ調整が可能である。またRSSI、CINRを正確に測定するためには第1送受信部109が携帯電話機20と通信を行っていない必要がある。他の端末との通信を検出した場合、中継装置10は、RSSI、CINR及びBERを用いた呼称診断やパラメータ調整をただちに中止することで、実サービスの質の低下を防ぐことができる。
【0117】
(2)本実施の形態にて示す中継装置は、携帯端末機との間で通信を行う第1送受信手段と固定基地局との間で通信を行う第2送受信手段とを備え、前記携帯端末機と前記固定基地局との通信の中継を担う中継装置であって、自己の故障診断を開始するための契機を検知する検知手段と、前記故障診断をする場合において、前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間の信号の送受信に用いられる第1及び第2の中継手段と、前記検知手段により前記契機が検知された場合、前記第1送受信手段から送信され、前記第1の中継手段を介して前記第2送受信手段で受信された第1信号と、前記第2送受信手段から送信され、前記第2の中継手段を介して前記第1送受信手段で受信された第2信号とを用いて、自機の故障診断を行う診断手段とを備えることを特徴とする。
【0118】
この構成によると、中継装置は、故障診断用に専門の構成要素を有することなく、自己の故障診断を行うことができる。
(3)ここで、前記診断手段は、前記第1信号を用いて、前記第1送受信手段における送信機能と前記第2送受信手段における受信機能とに対する故障診断を行い、前記第2信号を用いて、前記第1送受信手段における受信機能と前記第2送受信手段における送信機能とに対する故障診断を行うとしてもよい。
【0119】
この構成によると、中継装置は、第1送受信手段と第2送受信手段との間で、第1及び第2の中継手段を介して通信を行い、第1信号を用いて第1送受信手段の送信機能と第2送受信手段の受信機能とに対する故障診断を行い、第2信号を用いて第1送受信手段の受信機能と第2送受信手段の送信機能とに対する故障診断を行っている。これにより、中継装置は、第1送受信手段及び第2送受信手段の双方における故障を検出することができる。
【0120】
(4)ここで、前記第1送受信手段は、送信機能を担う第1送信部と、受信機能を担う第1受信部とを備え、前記第2送受信手段は、送信機能を担う第2送信部と、受信機能を担う第2受信部とを備え、前記第1送信部は、故障診断時において、前記第1の中継手段を介して前記第2受信部へ前記第1信号を送信し、前記第2送信部は、故障診断時において、前記第2の中継手段を介して前記第1受信部へ前記第2信号を送信し、前記診断手段は、前記第1信号に対するRSSI(Received Signal Strength Indicator)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部の故障診断を行い、前記第2信号に対するRSSIに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、前記第1信号に対するRSSI及び前記第2信号に対するRSSIのうち少なくとも一方が、予め定められた範囲内にない場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断するとしてもよい。
【0121】
この構成によると、中継装置は、第1信号及び第2信号それぞれに対するRSSIに基づいて、第1送受信手段及び第2送受信手段の故障を検出することができる。
(5)ここで、前記診断手段は、前記範囲内にない信号に対するRSSIの値が、前記範囲内の上限以上である場合には、当該RSSIに対する信号に基づく診断対象である送信部が異常であると判断し、受信すべき信号のRSSIが正常となるよう当該送信部からの送信電力を下げ、当該RSSIの値が、前記範囲内の下限以下である場合には、送受信電力に係る故障を示す旨情報を外部装置へ通知するとしてもよい。
【0122】
この構成によると、中継装置は、RSSIの値が予め定められた範囲の上限以上である場合には、送信すべき信号の送信電力を下げることで自己修復を行うことができる。また、RSSIの値が予め定められた範囲の下限以下である場合には、中継装置は、故障を示す情報を外部装置へ通知するので、通知を受け取った人が検出された故障に対する対処を行うことができる。
【0123】
(6)ここで、前記診断手段は、さらに、前記第1信号に対するCINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部との故障診断を行い、前記第2信号に対するCINRに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、前記第1信号に対するCINR及び前記第2信号に対するCINRのうち少なくとも一方が、予め定められた値以下である場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断するとしてもよい。
【0124】
この構成によると、中継装置は、第1信号及び第2信号それぞれに対するCINRに基づいて、第1送受信手段及び第2送受信手段の故障を検出することができる。
(7)ここで、前記診断手段は、さらに、前記第1信号に対するBER(Bit Error Rate)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部との故障診断を行い、前記第2信号に対するBERに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、前記第1信号に対するBER及び前記第2信号に対するBERのうち少なくとも一方が、予め定められた値以上である場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断するとしてもよい。
【0125】
この構成によると、中継装置は、第1信号及び第2信号それぞれに対するBERに基づいて、第1送受信手段及び第2送受信手段の故障を検出することができる。
(8)ここで、前記第1の中継手段には、前記診断時には前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第1のスイッチを有しており、前記第2の中継手段には、前記診断時には前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第2のスイッチを有しており、前記第1送信部及び前記第1受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第1送信アンテナ及び第1受信アンテナが接続され、前記第2送信部及び前記第2受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第2送信アンテナ及び第2受信アンテナが接続され、前記検知手段は、当該中継装置を含む通信システムの運用中に、自己の故障診断を開始するための前記契機を検知し、前記診断手段は、前記検知手段で前記契機が検知されると、前記通信システムの運用と並行して前記故障診断を行うべく、前記第1及び前記第2の中継手段双方ともが前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間を導通するよう前記第1及び第2のスイッチの双方ともを制御するとしてもよい。
【0126】
この構成によると、中継装置は、携帯電話機と固定基地局との通信を止めることなく、第1送受信手段と第2送受信手段との診断を行う。つまり、中継装置は、携帯電話機に対する通信システムの運用を行いつつ、故障の検出を行うことができる。
(9)ここで、前記第1の中継手段には、前記診断時には前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第1のスイッチを有しており、前記第2の中継手段には、前記診断時には前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第2のスイッチを有しており、前記第1送信部及び前記第1受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第1送信アンテナ及び第1受信アンテナが接続され、前記第2送信部及び前記第2受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第2送信アンテナ及び第2受信アンテナが接続され、前記検知手段は、当該中継装置を含む通信システムの運用中に、自己の故障診断を開始するための前記契機を検知し、前記診断手段は、前記検知手段で前記契機が検知されると、前記通信システムの運用と並行して前記故障診断を行うべく、前記第1信号を送信する場合には、前記第1の中継手段が前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通するよう前記第1のスイッチを制御するとともに、第2の中継手段が前記第1受信部と前記第2送信部との間を非導通とするよう前記第2のスイッチを制御し、前記第2信号を送信する場合には、前記第2の中継手段が前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通するよう前記第2のスイッチを制御するとともに、第1の中継手段が前記第1送信部と前記第2受信部との間を非導通とするよう前記第1のスイッチを制御するとしてもよい。
【0127】
この構成によると、中継装置は、携帯電話機と固定基地局との通信を止めることなく、第1送受信手段と第2送受信手段との故障診断を行う。さらに、中継装置は、一のケーブルを導通にし、他のケーブルを非導通とするので、前記一のケーブルを用いて信号を送信する一の送受信手段は、他の送受信手段から信号を受信することはない。つまり、前記一の送受信手段は、診断中において、通信システムの運用上、必要な信号のみを外部(携帯電話機若しくは固定基地局)から確実に受信することができる。
【0128】
(10)ここで、前記診断手段は、前記第1受信部が携帯電話機から通信に係る要求信号を受信した場合、前記診断を中断又は中止するとともに、前記第1及び前記第2の中継手段それぞれが前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間を非導通となるよう前記第1及び前記第2のスイッチを制御するとしてもよい。
この構成によると、中継装置は、携帯電話機からの要求信号を受信すると、診断を中止又は中断するので、通信システムの運用に対して診断の影響を与えることはない。
【0129】
(11)ここで、前記第2受信部は、故障診断時において、第2受信アンテナ及び前記第2の中継手段を用いて、ハンドオーバーすべく基地局のスキャニングを行っており、前記第1信号は、当該中継装置を識別する報知情報を含んだ前記スキャニングの対象の信号であり、前記診断手段は、前記第2送受信手段による前記スキャニングで受信された信号に当該中継装置を識別する報知情報が含まれている場合に、当該受信した信号を用いて前記第1送受信手段及び前記第2送受信手段の故障を診断するとしてもよい。
【0130】
この構成によると、中継装置は、スキャニング対象の信号を用いて診断を行っている。つまり、中継装置は、通常の通信サービスの運用で用いる信号、及びスキャニングの機能を用いているので、通常の運用時の機能と並存して実行することができる。
(12)ここで、 前記検知手段が前記契機を検知するとは、前記固定基地局との通信が異常であること、携帯電話機と一定時間以上接続がなされていないこと、予め定められた時刻が到来したこと及び当該中継装置の管理者から故障診断を行う旨の指示を受け付けたことの何れかを検知することであるとしてもよい。
【0131】
この構成によると、中継装置は、前記固定基地局との通信が異常であること、携帯電話機と一定時間以上接続がなされていないこと、予め定められた時刻が到来したこと及び当該中継装置の管理者から故障診断を行う旨の指示を受け付けたことの何れかを検知することで、診断を開始する。これにより、通信サービスの管理者は、診断を必要とするタイミングで中継装置に診断を行わせることができる。
【0132】
(13)ここで、前記第1及び第2の中継手段それぞれは、第1及び第2のケーブルであるとしてもよい。
この構成によると、中継装置は、第1及び第2のケーブルを用いることで、第1信号及び第2信号の送受信を行うための構成を容易に構築できる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、通信システムにおいて、携帯電話機と同等の通信機能及び固定基地局と同等の通信機能とを有する中継装置の故障診断に有用である。
【符号の説明】
【0134】
1 通信システム
10 中継装置
20 携帯電話機
30 固定基地局
40 メンテナンスサーバ
101、102 送信アンテナ
103、104 受信アンテナ
105、106 分配器
107、108 混合器
109 第1送受信部
110 第2送受信部
111 記憶部
112 制御部
113 第1ケーブル
114 第2ケーブル
115〜120 スイッチ
150 第1送信部
151 第1受信部
152 第1測定部
160 第2送信部
161 第2受信部
162 第2測定部
170 検知部
171 診断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末機との間で通信を行う第1送受信手段と固定基地局との間で通信を行う第2送受信手段とを備え、前記携帯端末機と前記固定基地局との通信の中継を担う中継装置であって、
自己の故障診断を開始するための契機を検知する検知手段と、
前記故障診断をする場合において、前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間の信号の送受信に用いられる第1及び第2の中継手段と、
前記検知手段により前記契機が検知された場合、前記第1送受信手段から送信され、前記第1の中継手段を介して前記第2送受信手段で受信された第1信号と、前記第2送受信手段から送信され、前記第2の中継手段を介して前記第1送受信手段で受信された第2信号とを用いて、自機の故障診断を行う診断手段と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記診断手段は、
前記第1信号を用いて、前記第1送受信手段における送信機能と前記第2送受信手段における受信機能とに対する故障診断を行い、
前記第2信号を用いて、前記第1送受信手段における受信機能と前記第2送受信手段における送信機能とに対する故障診断を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記第1送受信手段は、送信機能を担う第1送信部と、受信機能を担う第1受信部とを備え、
前記第2送受信手段は、送信機能を担う第2送信部と、受信機能を担う第2受信部とを備え、
前記第1送信部は、故障診断時において、前記第1の中継手段を介して前記第2受信部へ前記第1信号を送信し、
前記第2送信部は、故障診断時において、前記第2の中継手段を介して前記第1受信部へ前記第2信号を送信し、
前記診断手段は、
前記第1信号に対するRSSI(Received Signal Strength Indicator)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部の故障診断を行い、
前記第2信号に対するRSSIに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、
前記第1信号に対するRSSI及び前記第2信号に対するRSSIのうち少なくとも一方が、予め定められた範囲内にない場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記診断手段は、
前記範囲内にない信号に対するRSSIの値が、前記範囲内の上限以上である場合には、当該RSSIに対する信号に基づく診断対象である送信部が異常であると判断し、受信すべき信号のRSSIが正常となるよう当該送信部からの送信電力を下げ、
当該RSSIの値が、前記範囲内の下限以下である場合には、送受信電力に係る故障を示す旨情報を外部装置へ通知する
ことを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記診断手段は、さらに、
前記第1信号に対するCINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部との故障診断を行い、
前記第2信号に対するCINRに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、
前記第1信号に対するCINR及び前記第2信号に対するCINRのうち少なくとも一方が、予め定められた値以下である場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断する
ことを特徴とする請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
前記診断手段は、さらに、
前記第1信号に対するBER(Bit Error Rate)に基づいて、前記第1送信部及び前記第2受信部との故障診断を行い、
前記第2信号に対するBERに基づいて、前記第1受信部及び前記第2送信部の故障診断を行い、
前記第1信号に対するBER及び前記第2信号に対するBERのうち少なくとも一方が、予め定められた値以上である場合に、診断対象である送信部及び/又は受信部が異常であると判断する
ことを特徴とする請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
前記第1の中継手段には、前記診断時には前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第1のスイッチを有しており、
前記第2の中継手段には、前記診断時には前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第2のスイッチを有しており、
前記第1送信部及び前記第1受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第1送信アンテナ及び第1受信アンテナが接続され、
前記第2送信部及び前記第2受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第2送信アンテナ及び第2受信アンテナが接続され、
前記検知手段は、当該中継装置を含む通信システムの運用中に、自己の故障診断を開始するための前記契機を検知し、
前記診断手段は、
前記検知手段で前記契機が検知されると、
前記通信システムの運用と並行して前記故障診断を行うべく、前記第1及び前記第2の中継手段双方ともが前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間を導通するよう前記第1及び第2のスイッチの双方ともを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記第1の中継手段には、前記診断時には前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第1のスイッチを有しており、
前記第2の中継手段には、前記診断時には前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通し、非診断時には非導通とすべく第2のスイッチを有しており、
前記第1送信部及び前記第1受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第1送信アンテナ及び第1受信アンテナが接続され、
前記第2送信部及び前記第2受信部それぞれには、携帯電話機と通信を行うための第2送信アンテナ及び第2受信アンテナが接続され、
前記検知手段は、当該中継装置を含む通信システムの運用中に、自己の故障診断を開始するための前記契機を検知し、
前記診断手段は、
前記検知手段で前記契機が検知されると、
前記通信システムの運用と並行して前記故障診断を行うべく、前記第1信号を送信する場合には、前記第1の中継手段が前記第1送信部と前記第2受信部との間を導通するよう前記第1のスイッチを制御するとともに、第2の中継手段が前記第1受信部と前記第2送信部との間を非導通とするよう前記第2のスイッチを制御し、
前記第2信号を送信する場合には、前記第2の中継手段が前記第1受信部と前記第2送信部との間を導通するよう前記第2のスイッチを制御するとともに、第1の中継手段が前記第1送信部と前記第2受信部との間を非導通とするよう前記第1のスイッチを制御する
ことを特徴とする請求項6に記載の中継装置。
【請求項9】
前記診断手段は、
前記第1受信部が携帯電話機から通信に係る要求信号を受信した場合、前記診断を中断又は中止するとともに、前記第1及び前記第2の中継手段それぞれが前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間を非導通となるよう前記第1及び前記第2のスイッチを制御する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の中継装置。
【請求項10】
前記第2受信部は、故障診断時において、第2受信アンテナ及び前記第2の中継手段を用いて、ハンドオーバーすべく基地局のスキャニングを行っており、
前記第1信号は、当該中継装置を識別する報知情報を含んだ前記スキャニングの対象の信号であり、
前記診断手段は、
前記第2送受信手段による前記スキャニングで受信された信号に当該中継装置を識別する報知情報が含まれている場合に、当該受信した信号を用いて前記第1送受信手段及び前記第2送受信手段の故障を診断する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の中継装置。
【請求項11】
前記検知手段が前記契機を検知するとは、
前記固定基地局との通信が異常であること、携帯電話機と一定時間以上接続がなされていないこと、予め定められた時刻が到来したこと及び当該中継装置の管理者から故障診断を行う旨の指示を受け付けたことの何れかを検知することである
ことを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の中継手段それぞれは、第1及び第2のケーブルである
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項13】
携帯端末機との間で基地局機能として通信を行う第1送受信手段と固定基地局との間で携帯電話機機能として通信を行う第2送受信手段とを備え、前記携帯端末機と前記固定基地局との通信の中継を担う中継装置で用いられる方法であって、
前記中継装置は、
自己の故障診断時において、前記第1送受信手段と前記第2送受信手段との間の信号の送受信に用いられる第1及び第2のケーブルを備え、
前記方法は、
自己の故障診断を開始するための契機を検知する検知ステップと、
前記検知ステップにより前記契機が検知された後、前記第1送受信手段から送信され、前記第1のケーブルを介して前記第2送受信手段で受信された第1信号を用いて、前記第1送受信手段における基地局としての送信機能と前記第2送受信手段における携帯電話機としての受信機能とに対する故障診断を行い、前記第2送受信手段から送信され、前記第2のケーブルを介して前記第1送受信手段で受信された第2信号を用いて、前記第1送受信手段における基地局としての受信機能と前記第2送受信手段における携帯電話機としての送信機能とに対する故障診断を行う診断ステップと
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−97295(P2011−97295A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248281(P2009−248281)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】