説明

乗員情報取得装置及び乗員情報取得システム、並びにこれを用いた車両制御装置及び車両制御システム

【課題】本発明は、乗員の医療情報が更新されたときに医療情報を取得し、無駄な通信を行わず、通信回数を低減させつつ必要な医療情報を適切に取得できる乗員情報取得装置及び乗員情報取得システム、並びにこれを用いた車両制御装置及び車両制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両乗員に関する情報の取得を行う乗員情報取得装置40であって、
車両70が医療機関90の付近にいることを検知する医療機関検知手段10と、
該医療機関検知手段により前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知したときに、乗員が前記車両に乗車してきたことを検知する乗車検知手段20と、
該乗車検知手段により前記乗員の乗車を検知したときに、前記乗員の医療情報を取得する医療情報取得手段30と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員情報取得装置及び乗員情報取得システム、並びにこれを用いた車両制御装置及び車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された健康管理装置と健康情報センタとが通信することにより運転者の健康を管理する運転者健康管理システムであって、健康管理装置は、車両に運転者が乗車したことを検出する乗車検出手段を備え、乗車検出手段により運転者の乗車を検出した場合、運転者の健康状態の目安となる健康管理データを取得して健康情報センタに送信し、健康情報センタは、健康状態を判定するための医療情報と医療機関が記憶された医療機関情報とを備え、受信した運転者の健康管理データに基づいて、医療情報を参照して運転者の健康状態を診断し、診断結果を健康管理装置に送信して診断結果に応じて運転者の健康管理を支援するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−302206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、運転者の医療情報が更新されていなくても、車両に運転者が乗車したことを検出する度に健康管理データを取得して健康情報センタに送信するため、無駄な通信が行われ、通信回数が多くなってしまい、データ処理負担が増加するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、乗員の医療情報が更新されたときに医療情報を取得し、無駄な通信を行わず、通信回数を低減させつつ必要な医療情報を適切に取得できる乗員情報取得装置及び乗員情報取得システム、並びにこれを用いた車両制御装置及び車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る乗員情報取得装置は、車両乗員に関する情報の取得を行う乗員情報取得装置であって、
車両が医療機関の付近にいることを検知する医療機関検知手段と、
該医療機関検知手段により前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知したときに、乗員が前記車両に乗車してきたことを検知する乗車検知手段と、
該乗車検知手段により前記乗員が乗車してきたことを検知したときに、前記乗員の医療情報を取得する医療情報取得手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、乗員の医療情報が更新された場合のみ医療情報を取得するため、通信回数を低減することができるとともに、必要な医療情報を適切に取得することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る乗員情報取得装置において、
前記医療機関検知手段は、前記車両が前記医療機関の敷地内に入ったとき又は前記車両が前記医療機関から所定範囲内の駐車場に入ったときに、前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知することを特徴とする。
【0008】
これにより、乗員の医療情報が更新されたか否かの判定精度を高めることができ、乗員の医療情報が更新されたタイミングで確実に情報取得を行うことができる。
【0009】
第3の発明に係る車両制御装置は、第1又は第2の発明に係る乗員情報取得装置を備え、
該乗員情報取得装置を用いて取得した医療情報に基づいて、車載機器の制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、乗員の医療情報に基づいて、乗員にとって適切な車両制御を行うことができる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明に係る車両制御装置において、
前記車両制御手段は、乗員の運転支援をするように前記車載機器の前記制御を行うことを特徴とする。
【0012】
これにより、乗員の健康状態を考慮し、乗員の運転負荷を低減し、乗員にとって快適となるような運転支援制御を実現することができる。
【0013】
第5の発明に係る乗員情報取得システムは、車載された乗員情報取得装置とセンタが通信することにより、前記乗員情報取得装置に乗員の医療情報を取得させる乗員情報取得システムであって、
前記乗員情報取得装置は、車両が医療機関の付近にいることを検知する医療機関検知手段と、
該医療機関検知手段により前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知したときに乗員が前記車両に乗車してきたことを検知する乗車検知手段と、
該乗車検知手段により前記乗員が前記車両に乗車してきたことを検知したときに前記乗員の個人情報を前記センタに送信する個人特定情報送信手段と、
前記センタを通じて前記乗員の医療情報を受信する医療情報受信手段と、を備え、
前記センタは、前記個人特定情報に対応した前記乗員の医療情報を前記乗員情報取得装置に送信する医療情報送信手段を備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、センタは、車両が医療機関の付近に来たときに、更新した医療情報を車両側にタイミングよく提供することができるとともに、車載乗員情報取得装置は、乗員の医療情報を更新の度にタイミングよく取得でき、少ない通信回数で最新の医療情報を取得することができる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明に係る乗員情報取得システムにおいて、
前記医療機関検知手段は、前記車両が前記医療機関の敷地内に入ったとき又は前記車両が前記医療機関から所定範囲内の駐車場に入ったときに、前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知することを特徴とする。
【0016】
これにより、医療情報の更新の判定精度を高めることができ、適切なタイミングで確実に車両側の医療情報を更新させることができる。
【0017】
第7の発明に係る車両制御システムは、第5又は第6の発明に係る乗員情報取得システムを備え、
該乗員情報取得システムの乗員情報取得装置を用いて取得した医療情報に基づいて、車載機器の制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする。
【0018】
これにより、乗員の医療情報に基づいた適切な車両制御を行うことができ、車載機器を効果的に機能させることができる。
【0019】
第8の発明は、第7の発明に係る車両制御システムにおいて、
前記車両制御手段は、乗員の運転支援をするように前記車載機器の前記制御を行うことを特徴とする。
【0020】
これにより、乗員の医療情報を考慮し、乗員の運転負荷を低減し、快適な車両環境を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、更新された乗員の最新の医療情報を、少ない通信回数で確実に取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明を適用した実施例に係る乗員情報取得装置40及び乗員情報取得システム100、並びにこれを用いた車両制御装置60及び車両制御システム160の全体構成を示した模式図の一例である。図1において、本実施例に係る乗員情報取得装置40及び車両制御装置60は、車両70に備えられる。また、乗員取得システム100及び車両制御システム160は、車両70側に備えられた乗員情報取得装置40及び車両制御装置60に加えて、センタ80を有する。更に、本実施例に係る乗員情報取得装置40及び乗員情報取得システム100、並びにこれを用いた車両制御装置60及び車両制御システム160は、関連構成要素として、医療機関90を有する。
【0024】
医療機関90は、患者を診断、治療等の医療行為を行う機関であり、病院等が含まれる。本実施例に係る乗員情報取得装置40及び車両制御装置60は、車両70に乗車する乗員の医療情報を取得するため、医療機関90は、車両70が駐停車可能な敷地91か、又は最寄りの駐車場92のスペースを有する。医療機関90は、敷地91内に駐車場が無い場合であっても、付近に駐車場92を有するか、又は少なくとも路上駐車可能な領域をその付近に有する。
【0025】
センタ80は、車両70の乗員の医療情報をデータとして記録する施設であり、通信により医療情報を取得する。センタ80は、自ら医療機関90に乗員の医療情報を取得するためにアクセス又はリクエストしてもよいし、医療機関90からセンタ80に乗員の医療情報を送信することにより、医療情報を取得してもよい。
【0026】
センタ80が所有する医療情報は、乗員が医療機関90で医療行為を受ける度に、最新の情報に更新される。医療情報の更新は、医療機関90から、乗員の診察等を行ったときにセンタ80に送信されてもよいし、センタ80が、定期的に医療機関90にアクセス又はリクエストしてもよい。また、センタ80が、車両70からの個人情報を特定する送信があってこれを受信したときに、医療機関90にアクセス又はリクエストするようにしてもよい。この点については、後述する。
【0027】
センタ80は、個人情報を特定することにより、当該個人についての医療情報を提供できる機関である。つまり、センタ80は、複数のユーザ(乗員)の情報を所有できるが、個人を特定することにより、当該個人についての医療情報のみを検索し、これを当該個人に提供する。
【0028】
センタ80は、医療情報以外にも、車両70を保有する乗員の個人情報を所有してよい。例えば、G−Book等のように、渋滞情報等の種々の情報を提供できる機関であってよく、更に個人情報を特定することにより、当該個人に特定の種々の情報を提供できてもよい。
【0029】
車両70は、乗員情報取得装置40及び車両制御装置60を備え、これらは、センタ80から医療情報を受信する。また、乗員情報取得装置40及び車両制御装置60は、乗員が携帯する健康保険証21を検出し、乗員が車両70に乗車しようとしていることを検出するが、この点の詳細は後述する。
【0030】
図2は、車両70に備えられた乗員情報取得装置40並びにこれを用いた車両制御装置60の全体構成を示した機能ブロック図の一例である。図2において、本実施例に係る乗員情報取得装置40は、医療機関検知手段10と、乗車検知手段20と、医療情報取得手段30とを備える。また、本実施例に係る車両制御装置60は、更に車両制御手段50を備える。
【0031】
医療機関検知手段10は、車両70が、医療機関90の付近にいることを検知する手段である。車両70の乗員のカルテ等を含む医療情報が更新されるためには、乗員が診察等を受けるために医療機関90に行くことが必要であるので、医療機関検知手段10は、車両70が医療機関90の付近にいることを検知する。
【0032】
なお、乗員が電車等の車両70以外の手段で医療機関90に行ったときには、本実施例に係る乗員情報取得装置40は、医療情報を取得しないことになるが、本実施例に係る乗員情報取得装置40は、乗員が車両70を利用するときに乗員を快適にすることを目的としている。よって、乗員が車両70を利用したときに医療情報を取得するようにすれば、本実施例に係る乗員情報取得装置40の目的は達せられる。
【0033】
医療機関検知手段10は、車両70が医療機関90の付近にいることを検知するために、ナビゲーション装置11を利用してよい。ナビゲーション装置11は、車両70の地図上の現在地を検出できるので、例えば、車両70が医療機関90の付近の所定範囲内に停車したことを検出したときに、医療機関90の付近にいることを検知するようにしてよい。特に、医療機関90がある程度の広さの敷地91を有している場合や、医療機関90の付近に最寄りの駐車場92がある場合には、車両70が医療機関90の敷地91内や最寄りの駐車場92にいるときに、医療機関90の付近にいると判定及び検知してもよい。更に、医療機関90の開いている時間等も条件に加え、医療機関90の開いている時間帯に車両70が医療機関90の付近にいるときに、車両70が医療機関90の付近にいると判定・検知するようにすれば、更に検知精度を高めることができる。
【0034】
なお、ナビゲーション装置11は、車両70の地球上の絶対位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)受信機12と、車両70の挙動を検出するための車速センサ13と、ジャイロセンサ14と、マップマッチングを行うための地図データ15とを備えてよい。一方、医療機関検知手段10は、医療機関の敷地91や最寄りの駐車場92の位置データ、医療機関90の診療時間帯などのデータを所持しており、ナビゲーション装置11で検出した車両70の現在位置と照合することにより、車両70が医療機関90の付近にいることを検知する。
【0035】
乗車検知手段20は、医療機関検知手段10により、車両70が医療機関90の付近にいることが検出されたときに、乗員が車両70に乗車してきたことを検知する手段である。例えば、健康保険証21がICチップで構成されている場合には、乗車検知手段20は、健康保険証21からの信号を受信することにより、乗員が車両70に乗車してきたことを検知できる。
【0036】
図3は、本実施例に係る乗員情報取得装置40の乗車検知手段20による乗車検知の状態の一例を示した模式図である。図3において、健康保険証21から電波が発信され、乗車検知手段20がこれを受信することにより、乗員が乗車してきたことを検知することができる。
【0037】
図4は、健康保険証21の一例を示した図である。図4において、健康保険証21は、薄板化又はフィルム化されたIC(Integrated Circuit)チップ22が埋め込まれている。ICチップ22には、氏名、住所、記号等の個人を特定できる個人情報が記憶され、これらの個人情報に基づいて、健康保険証21の所有者を特定できるようになっている。従って、図3に示したように、健康保険証21を所持した乗員が、医療機関90で診察等を受けて車両70に乗車しようとしているときに、健康保険証21から発信された電波を、車両70に搭載された乗員情報取得装置40の乗車検知手段20が受信して個人情報の認証を得ることにより、乗員が車両70に乗り込んで来たことを検知できる。
【0038】
なお、乗車検知手段20による乗車検知は、乗員が車両70に乗り込んだときでもよいし、乗員が車両70に接近したときから検知するようにしてもよい。乗車検知のタイミングは、乗車検知手段20の感度により調整することができる。例えば、乗車検知手段20は、乗員が車両70に1〔m〕以内又は2〔m〕以内に接近したときに健康保険証21からの信号を検知可能とすることもできるし、検知範囲を70〔cm〕以下程度とするか、金属を通さない電波を用いるようにすれば、乗員が車両70に乗車してから乗員が車両70に乗り込んできたことを検知することもできる。
【0039】
乗車検知手段20は、ICチップ化された健康保険証21ではなく、車両70のワイヤレスキー等を個人認証に用い、これにより乗員が車両70に乗り込もうとしていることを検知するようにしてもよい。医療機関検知手段10により、車両70が医療機関付近にいることは既に検知されているので、ワイヤレスキーを検知することによっても、乗員が医療機関90で診察等を受けて来た状態であると判定できるからである。また、乗車検知手段20は、健康保険証21とワイヤレスキーの双方を検知可能とし、両者の検知から検知精度を高めるようにしてもよい。
【0040】
図2に戻り、他の構成要素の説明を行う。
【0041】
医療情報取得手段30は、乗車検知手段20により乗員の車両70への乗車を検知したときに、診察を受けて来た乗員の医療情報を取得する手段である。乗員が診察を受けてから乗車したときには、医療機関90が保有するカルテ等の乗員の医療情報は、更新されている可能性が極めて高い。よって、医療情報取得手段30は、乗員の医療情報が更新された可能性が極めて高いタイミングで、医療情報を取得する。
【0042】
医療情報取得手段30は、通信装置31を制御し、通信により医療情報を取得するようにしてよい。通信装置31は、センタ80との通信を行うための通信手段である。通信装置31は、医療情報を通信により受信する医療情報受信手段32を備える。医療情報受信手段32は、通常の受信機の機能を有してよく、電波等の信号を受信して、これを復調して情報を取得できる機能を有してよい。また、通信装置31は、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)等の通信網を介して、センタ80とデータ通信を行うものであってもよい。
【0043】
また、通信装置31は、乗員の個人特定情報を送信する個人特定情報送信手段33を必要に応じて備えてよい。センタ80からの乗員の医療情報の送信が、車両70側からの個人特定情報の受信に基づき、これを起点にして行われる場合には、車両70側から乗員を特定する個人情報を送信する必要があるので、かかる場合には、通信装置31は、個人特定情報送信手段33を備える。個人特定情報送信手段33は、通常の送信機が適用されてよく、乗員の個人特定情報を、電波や通信網等を利用してセンタ80に送信できる機能を有する手段であれば、種々の態様の送信機が適用されてよい。
【0044】
医療情報取得手段30は、通信装置31を制御し、乗車検知手段20により乗員の乗車が検知されたら、医療情報受信手段32を作動させて、センタ80から送信される医療情報を受信可能な状態にしたり、受信した医療情報を記憶したりする。また、個人特定情報送信手段33による個人特定情報のセンタ80への送信が必要な場合には、個人特定情報送信手段33に、乗員の個人情報を送信させる制御を行う。
【0045】
このように、乗員情報取得装置40が有する医療機関検知手段10、乗車検知手段20及び医療情報取得手段30は、種々の演算処理を行うため、演算処理手段として構成されてよい。例えば、医療機関検知手段10、乗車検知手段20及び医療情報取得手段30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、コンピュータプログラムにより演算処理を実行するマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、所定の電子回路を有するASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。また、これらは、一体的にECU(Electronic Control Unit、電子制御ユニット)として構成されてもよい。
【0046】
次に、車両制御装置60について説明する。車両制御装置60は、乗員情報取得装置40に加えて、車両制御手段50を有する。車両制御手段50は、乗員情報取得装置40で取得した医療情報に基づいて、乗員の運転支援となる制御を実行する手段である。
【0047】
車両制御手段50は、医療情報に基づいて、エアコン制御システム51、ライト制御システム52、ナビゲーション装置11、ステアリングシステム53、シート54、運転支援システム55及び運動制御システム56が乗員の運転を支援したり、乗員を快適にしたりするような制御を行う。つまり、車両制御手段50は、乗員の診断結果に基づいて、疾患のある部分を補うような制御を、エアコン制御システム51、ライト制御システム52、ナビゲーション装置11、ステアリングシステム53、シート54、運転支援システム55及び運動制御システム56等の制御実行手段を用いて行う。
【0048】
車両制御手段50で行う、乗員の個別の医療情報に基づいた具体的な制御例の内容は後述するが、個々の制御実行手段について以下説明する。
【0049】
エアコン制御システム51は、車両70の室内の空調を制御する手段である。エアコン制御システム51は、車両70内の温度調整を行う以外に、乗員が花粉症のときに、空気を鼻や口に当てて花粉が入り込まないようにする花粉対策機能等を備えていてもよい。
【0050】
ライト制御システム52は、車両70の外部を照らすライトを制御する手段であり、視力が低下した乗員には、薄暗くなった段階で早めにライトを点灯させる等の制御が可能である。
【0051】
ナビゲーション装置11は、運転者に、渋滞の少ない道を案内したり、代行運転のサービスを紹介したりし、視覚的な情報を与えることにより、乗員を支援する手段である。また、片耳の聴力が落ちている場合には、左右の音声バランスを調整したりし、音声的に乗員の支援も行う。
【0052】
ステアリングシステム53は、ステアリングギア比を調整したり、ステアリングアシストトルクを調整したりする手段である。これにより、運転者の上半身に疾患があり、力が出ず操舵が困難な場合等の運転支援ができる。
【0053】
シート54は、乗員に最適な位置に調整されることにより、乗員の姿勢を良好にし、快適な乗車環境を提供することができる。
【0054】
運転支援システム55は、それ自体が運転者の運転を支援するための手段であるので、これらを適切な場面で十分に活用することにより、運転者の運転支援を行うことができる。例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)システムは、前の車両との車間距離や相対速度から目標の車間距離を計算し、
自動的に車間距離を調節するシステムである。また、LKA(Lane-Keeping Assist)システムは、車両70が車線を保って走行するように調整するシステムである。PCS(Pre-Crash Safety)システムは、運転者の眼瞼が適切に開いているかを検知し、開いていない場合には警告を発して衝突を事前に防ぐシステムである。IPA(Intelligent Parking Assist)システムは、車両70の駐車を支援するシステムである。また、クリアランスソナーは、障害物検知システムであり、障害物が接近すると警告を発するシステムである。
【0055】
運動制御システム56は、車両の姿勢、挙動を制御するシステムであり、横滑り安定装置のVSC(Vehicle Stability Control)システム、ABS(Antilock Brake System)等が含まれる。また、VDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management、統合車両姿勢安定システム)のように、これらを統合制御したシステムであってもよい。
【0056】
このように、車両制御手段50は、乗員情報取得装置40が取得した乗員の医療情報に基づいて、制御実行手段を動作させる制御演算処理を行う。よって、車両制御手段50は、マイクロコンピュータやASIC等の演算処理手段として構成されてよく、ECUとして構成されてよい。また、車両制御手段50は、乗員情報取得装置40の医療機関検知手段10、乗車検知手段20及び医療情報取得手段30と一体的に車両制御ECU57内に組み込まれて構成されてもよい。
【0057】
次に、図5を用いて、センタ80の構成及び機能について説明する。図5は、センタ80の全体構成を示した機能ブロック図の一例である。
【0058】
図5において、センタ80は、データ処理手段81と、データ格納手段82と、通信手段86とを有する。データ処理手段81は、データ格納手段82にアクセスを行い、データの読み込み、書き換え等のデータ処理を行うとともに、通信手段86を制御する演算処理手段である。
【0059】
データ格納手段82は、ユーザの個人情報を記憶して格納する手段である。データ格納手段82は、各ユーザに応じた種々の個人情報を格納記憶してよいが、例えば、個人特定情報83、医療情報84、標準データ85等を格納していてもよい。個人特定情報83は、ユーザ個人を特定するための情報であり、氏名、住所、保険証番号等の個人特定情報を保持していてよい。医療情報84は、医療に関する情報であり、乗員の医療機関90による診断結果の情報も含まれる。医療情報84は、乗員が医療機関90に行って診察を受け、診断結果等の医療情報が追加、変更された場合には、更新されて書き換えられる。標準データ85は、標準的な個人情報に関するデータであり、例えば、所有している車両70の型式や、仕様等の情報等が含まれていてよい。
【0060】
データ格納手段82においては、個人特定情報83により個人が特定されたら、当該特定された個人の医療情報84や標準データ85にアクセスできるような構成であってよい。また、データ格納手段82に格納された情報は、医療情報84のように、随時更新され得るデータについては、書き換え可能に構成されてよい。
【0061】
通信手段86は、外部と通信を行う手段であり、電波による通信を行ってもよいし、通信網を介した通信を行ってもよい。通信手段86は、受信手段87と、送信手段88とを備えていてよい。
【0062】
受信手段86は、外部からの信号を受信する手段であり、本実施例に係る乗員情報取得システム100及び車両制御システム160においては、センタ80は、医療情報信号と、個人特定情報信号を受信する。医療情報信号は、医療機関90から送信される信号である。個人特定情報信号は、乗員情報取得装置40又は車両制御装置60の通信装置31から送信される信号である。
【0063】
医療機関90から送られる医療情報は、医療機関90側から自動的に医療情報が送られるようになっていれば、それを受信すればよい。医療情報を取得するために、センタ80から医療機関90へのアクセス又はリクエスト信号の送信が必要であれば、アクセス後又は送信手段88からリクエスト信号送信後に、医療機関90から送信された医療情報を受信するようにすればよい。また、車両70側から個人特定情報信号が送られて来た場合には、データ処理手段81が、データ格納手段82の個人特定情報83と照合を行い、一致したユーザの医療情報84にアクセスする。なお、個人特定情報を受信してから、医療機関90にアクセス又は医療情報をリクエストする処理となっている場合には、ネットワークを介してアクセスを行うか、リクエスト信号を送信手段88から医療機関90に送信する。
【0064】
なお、医療機関90は、医療情報格納手段95と、センタ80と送受信する通信手段96とを備える。医療情報格納手段95は、乗員の医療情報を格納する記憶手段であり、乗員が医療機関90で診察を受けたときに、医療情報格納情報95に記憶された乗員の医療情報は更新される。つまり、最新の診察結果が反映される。
【0065】
ここで、医療情報格納手段95の医療情報が更新されたときに、自動的に医療機関90からセンタ80に更新された医療情報が送信されるシステム構成となっている場合には、通信手段96により、医療情報がセンタ80に送信される。これにより、センタ80は、医療機関90で保存している乗員の医療情報が更新される度に最新の医療情報を取得できる。
【0066】
一方、センタ80からのリクエスト信号を受けてから、医療機関90が医療情報をセンタ80に送信するシステム構成となっている場合には、医療機関90は、センタ80から送信されたリクエスト信号を通信手段96により受信し、医療情報格納手段95に保存されている医療情報にアクセスする。そして、該当する乗員の医療情報を、通信手段96により、センタ80に送信する。これにより、センタ80側では、乗員の更新された医療情報を、医療情報が必要なタイミングで取得することができる。
【0067】
なお、医療機関90の医療情報格納手段95には、センタ80がネットワークを介して直接的にアクセスできるシステム構成としてもよい。医療機関90で、センタ80のアクセスを予め許可しておくシステム構成としておけば、センタ80は、直接的に乗員の医療情報を入手することができる。
【0068】
このようにして、受信手段86が、医療機関90から医療情報を取得した場合には、データ処理手段81が、データ格納手段82に格納された医療情報84を速やかに書き換えて更新するデータ更新処理を行う。
【0069】
送信手段88は、外部に信号を送信する手段であり、本実施例に係る乗員情報取得システム100及び車両制御システム160においては、送信手段88は、医療情報信号を医療情報送信手段として車両70側に送信する。また、送信手段88は、必要に応じて、医療機関90に、医療情報の送信をリクエストするリクエスト信号を送信してもよい。上述のように、車両70側の通信装置31から個人特定情報が送信され、受信手段87が個人特定情報を受信した場合には、乗員情報取得装置40が乗員の医療情報を要求していることを意味するので、送信手段88は、データ処理手段81がアクセスして取得した最新の医療情報84を車両70側に送信する。また、車両70からの個人特定情報を受信してから、医療情報84の更新を行う処理になっている場合には、送信手段88は、医療機関90にリクエスト信号を送信する。そして、医療機関90から送られてきた最新の医療情報にデータ格納手段82の医療情報84が更新されたら、送信手段88は、やはり更新された医療情報を車両70側に送信する。
【0070】
このように、センタ80においては、乗員の医療情報を保存するとともに、医療情報の更新があったら、データ格納手段82の医療情報84を更新し、医療情報データが最新となるように管理する。そして、センタ80は、車両70側から、個人特定情報が送られてきたときには、データ格納手段82に格納された個人特定情報83と車両70から送信された個人特定情報の照合を行い、特定された個人の最新の医療情報を車両70側に送信する。
【0071】
次に、図6乃至図8を用いて、本実施例に係る車両制御装置60及び車両制御システム160において実行される、医療情報に基づいて実行される制御の例について説明する。制御は、車両制御装置60及び車両制御システム160の車両制御手段50により実行される。
【0072】
図6は、乗員が、認知症であるとの診断結果が医療情報として提供された場合の制御内容の例を示した図である。
【0073】
まず、図6に示したような、特定の症状に対する運転支援を行う前に、医療機関90に行って診断を受けてきた乗員が運転者であった場合には、運転者に注意を促すような制御を実行してもよい。例えば、運転者の症状が軽くない場合には、ナビゲーション装置11により、運転者に、「運転しない方が良いですよ」といった音声メッセージや、画像によるメッセージを出力するようにしてもよい。また、ナビゲーション装置11により、代行運転を行っている業者を紹介する表示を行ったり、更に車両用携帯電話が代行運転の業者に接続されるような制御を行ったりしてもよい。更に、簡単な計算問題を画面に表示したり、音声質問したりして、運転者の意識が十分運転できる状態にあるか否かの簡単な問診を行うようにしてもよい。同様に、色の識別が出来るか否か、視力又は聴力に問題が無いかの簡易問診を、ナビゲーション装置11により行うようにしてもよい。
【0074】
また、上述のような運転を本人に行わせない推薦メッセージを行った上で、やはり診察を受けてきた乗員が車両70の運転を行う場合には、運転者の運転支援の例として、以下の制御の実行が考えられる。例えば、ナビゲーション装置11により、交通量が少ない道路を選択し、更に停車できる場所を画面表示して、運転者の安全をサポートするような制御を実行してもよい。また、運転者が運転困難になったときに、退避し易いように、退避場所への経路をナビゲーション装置11により案内するようにしてもよい。
【0075】
これらの制御に加えて、運転者が認知症であるとの問診結果が医療情報として取得された場合には、車両制御装置60及び車両制御システム160は、症状別に、図6に示すような制御を実行するようにしてよい。
【0076】
図6において、例えば、緑内障と診察され、運転者の視野が低下しているという医療情報が得られたら、運転支援システム55のクリアランスソナーの感度を上げ、障害物の存在を早めに運転者に知らせるようにする制御を行ってもよい。これにより、運転者は早めに警報により障害物の存在を認識することができるので、通常よりも狭い範囲しか視認できない場合であっても、視野の低下を補い、運転負荷を低減させることができる。
【0077】
また、例えば、飛蚊症と診察され、運転者の視力が低下している場合には、ライト制御システム52を制御し、ライト点灯を自動モードにし、薄暗くなったらなるべく早くライトを点灯させるような制御を行ってもよい。更に、運転支援システム55のPCSによる衝突防止警報のタイミングを前だしする制御を行うようにしてもよい。例えば、衝突前の2秒前に警報を発する制御を通常行っている場合に、衝突前の1.4秒前に警報を発するようにすれば、運転者に早めに注意を促すことができる。通常であれば、警報が早めに鳴ると、運転者は煩わしさを感じてしまうが、身体が万全で無いときには、早めに注意をした方が、安全性を高めて適切な制御を行うことができるとともに、運転者の安心度を高めることができる。
【0078】
また、例えば、難聴と診察され、運転者の聴力が低下している場合には、ナビゲーション装置11の案内時の音声の音量を通常より大きくなるように制御するようにしてもよい。これにより、運転者に必要な情報を確実に提供することができる。また、運転者が、片耳のみ聴力が低下している場合には、聴力が低下している側の音量のみを高くし、運転者にとって左右のバランス良く音声を聴くことができるように制御してもよい。
【0079】
図7は、医療機関90の診察を受けた乗員が運転者である場合の、種々の症状に対応する運転者の運転操作を支援するための制御例を示した図である。
【0080】
図7において、例えば、運転者が緑内障又は飛蚊症と診察され、視野又は視力が低下しているという医療情報が取得されたときには、加速特性を下げるような制御を行うようにしてもよい。加速度特性が上がり、急加速になる程、運転者は視野、視界が必要になるため、視野又は視力が低下しているときには、加速度特性を下げることにより、運転者の安全性を増すことができる。加速度特性は、例えば、アクセル開度に対する駆動力の出力を変化させ、アクセルペダルを踏み込んでも、駆動力が出にくい特性にすることにより、制御することができる。
【0081】
なお、図6の認知症に対する制御においては、視野の低下に対しては、クリアランスソナーの感度を上げ、視力の低下については、PCSの衝突防止警報を前だしする制御例を説明した。これは、認知症の運転者が高齢の場合が多いことを考慮し、警報等を早めに出力する強い制御を採用している。一方、図7においては、一般の運転者にとっては、警報の前だしはやはり煩わしさを感じる人が多いことを考慮し、加速特性を変化させる制御を行う例を挙げている。このように、乗員の性質等を考慮し、症状に応じたきめ細かい制御を行うことも可能である。
【0082】
また、例えば、肩こり、寝違い等で首が回らない症状で、運転者の目視確認範囲が低下しているとの医療情報を取得した場合には、目視範囲の低下が懸念される方向の、クリアランスソナーの感度を上げ、障害物検知を早めに行う制御を実行してもよい。これにより、首が回らない方向については、障害物検知による警報を早めに発し、運転者が目視確認できない範囲を障害物検知によりカバーし、運転支援を行うことができる。
【0083】
また、肩、肘、指の怪我や骨折等の症状の医療情報を取得し、ステアリング操作が困難であると考えられる場合には、ステアリングシステム53を制御し、ステアリングギア比を上げたり、ステアリングトルクを大きくしたりする制御を行うようにしてもよい。ステアリングギア比は、例えばVGRS(variable Gear Ratio Steering、ギア比可変ステアリング)等を利用し、ギア比を小さくし、車両応答性が良くなるような制御を行い、運転者が操舵をし難い状況を支援して運転負荷を低減する制御を行うようにしてよい。また、ステアリングアシストトルクを大きくし、パワーステアリングで運転者による操舵が行い易くなるような制御を行うようにしてもよい。なお、腕や肩等の怪我が片方であり、片方のみの操舵がし難い場合には、片側の操舵のみ制御を行うようにしてもよい。
【0084】
また、例えば、足の骨折等でギプスをしているとの医療情報を取得し、通常のドライビングポジションが取れず、ドライビングポジションの変更が必要と考えられる場合には、運転者がシート54に座る前に、シート54の位置を変更する制御を行うようにしてもよい。ギプスをした場合、足が曲げにくくなり、足を伸ばした状態で運転を行うことを強いられるので、例えば、運転者の着座前に、シートポジションを後ろに移動させるような制御を行うようにしてもよい。
【0085】
また、例えば、麻酔などの治療を受けて意識が正常に働かない状態であるとの医療情報を取得し、運転操作が鈍くなるおそれがあると考えられるときには、VSCをオフとすることを禁止したり、運転支援システム55を積極的に動作させたりする制御を行うことが考えられる。つまり、頭がぼうっとして思考が鈍いときには、瞬時の操作が必要なときに対応できなくなるおそれがあるので、運転者がVSCによる車両横滑り制御をオフにするスイッチ操作を行おうとしても、スイッチオフ操作に注意を促したり、オフに入らないようにしたりする制御を実行してもよい。更に、運転支援システム55を積極的に動作させ、自動的にオンとするような制御を行うようにしてもよい。つまり、例えば、ACC及びLKAにより、走行中は一定の車間距離を保って車線からはみ出ないように走行し、駐車時には、IPAにより車両70を駐車させるような制御を実行させることができる。
【0086】
このように、運転者が通常の健康状態であれば、煩わしくて不快と感じられるおそれのある支援でも、診断結果に応じて支援範囲を広げることにより、運転者にとって有効な操作支援を行うことができ、安全運転をサポートすることができる。
【0087】
図8は、図6及び図7において説明した症状よりは軽い症状であるが、運転者又は同乗者を快適にするために有効と考えられる制御の例を示した図である。
【0088】
図8に示した例は、医療機関90で診察を受けた乗員が、運転者だけでなく同乗者である場合にも適用される。運転者以外の車両70の同乗者に本実施例に係る車両制御装置60及び車両制御システム160による制御を適用する場合には、医療情報は、同乗者についての医療情報を取得する。この場合でも、健康保険証21は各個人に設定されているので、乗車検知手段20においては、医療機関90から車両70に乗車する個人を特定することができる。また、ワイヤレスキーにより乗車検知を行う場合にも、ワイヤレスキーが複数設定されており、個人毎に割り当てられている場合には、これによっても個人を特定し、通信装置31により個人特定情報をセンタ80に送信することができる。更に、センタ80においても、各個人毎に医療情報84が格納記憶されているので、乗員情報取得装置40及び乗員情報取得システム100は、運転者の場合と同様に、同乗者についても医療情報を取得することができる。
【0089】
図8において、例えば、乗員が風邪又は冷え性であるとの医療情報が取得され、身体を冷やさない方がよいと考えられる場合には、エアコン制御システム51を用い、医療機関90で診察を受けた乗員席側のエアコンの設定温度を現設定温度より上げるような制御を行ってもよい。例えば、医療機関90で診察を受けた乗員が運転者である場合には、運転席側の設定温度を上げ、医療機関90で診察を受けた乗員が同乗者である場合には、助手席側の設定温度を上げるように制御してよい。これにより、暖めることが必要な乗員の周囲のみ暖かい空気を提供することができ、快適な車両環境を提供することができるとともに、制御の不要な乗員には、通常通りの温度とすることができる。
【0090】
また、例えば、乗員が花粉症であるとの医療情報が取得された場合には、エアコン制御システム51を用い、エアコンを花粉モードとし、診察を受けた乗員の鼻や口に空気を吹き掛ける制御を行うようにしてもよい。これにより、花粉症の乗員に対しては、花粉が鼻や口から入り込み難くなるような制御を行うことができる。
【0091】
また、例えば、乗員が腰痛であるとの医療情報が取得された場合には、対象となる乗員が車両70を乗り降りする時に、車両70の車高を高くしたり、シート54の高さを上げたりするようにし、乗り降り時の腰痛の負担を軽減するような制御を行うようにしてもよい。
【0092】
このように、医療情報に基づいて制御を実行することで、乗員の体調に合った、より快適な室内環境を提供することができる。また、同乗者に制御を適用する場合には、運転者が同乗者に気遣って室内環境を整備する手間が省けるので、運転者は運転に集中することができる。
【0093】
次に、図9を用いて、本実施例に係る乗員情報取得装置40及び車両制御装置60並びにこれを用いた乗員情報取得システム100及び車両制御システム160の動作フローについて説明する。図9は、本実施例に係る乗員情報取得装置40及び車両制御装置60並びにこれを用いた乗員情報取得システム100及び車両制御システム160の動作フロー図である。
【0094】
ステップ100では、医療機関検知手段10により、車両70が医療機関90の付近にいるか否かが判定される。車両70が医療機関90の付近にいることの判定は、ナビゲーション装置11を用いて、車両70が医療機関90付近の所定範囲にいるかにより判定されてよい。具体的には、例えば、車両70が医療機関90の敷地91内にいるか、最寄りの駐車場92にいるか等により判定及び検知されてよい。
【0095】
ステップ110において、車両70が医療機関90の付近にいないと判定された場合には、図9の動作フローを最初から繰り返す。一方、車両70が医療機関90の付近にいると判定された場合には、ステップ120に進む。
【0096】
ステップ110では、乗車検知手段20により、車両70に、医療機関90で診断を受けた運転者又は同乗者が乗り込んで来たか否かが判定される。乗車検知手段20による乗車検知は、ICチップ化された健康保険証21や、ワイヤレスキーからの信号を受信することにより、運転者又は同乗者が車両70に乗車してきたことを検知してよい。
【0097】
ステップ110において、車両70に診断を受けた運転者又は同乗者が乗り込んで来なかったと判定された場合には、図9の動作フローを最初から繰り返す。一方、車両70に診断を受けた運転者又は同乗者が乗り込んで来たと判定された場合には、ステップ130に進む。
【0098】
ステップ120では、車両70側の医療情報取得手段30により、通信装置31の個人特定情報送信手段33を用いて診断を受けた乗員の個人特定情報がセンタ80に送信される。
【0099】
ステップ130では、センタ80が、医療機関90から、医療情報(診断結果)を入手する。センタ80は、例えば、ステップ120において乗員の個人特定情報を受信したら、医療機関90にリクエストを送信し、医療機関90から医療情報を入手する。また、医療機関90は、乗員の診察があったときには、自動的に医療情報をセンタ80に送信し、診断の度に自動的にセンタ80が医療情報を取得できる構成としてもよい。そして、センタ80は、受信手段87により診断結果を受信し、データ処理手段81が個人を特定し、データ格納手段82の医療情報84に、最新の医療情報を更新して書き込む。
【0100】
ステップ140では、センタ80の送信手段88が、更新された医療情報84の内容を車両70側に送信する。具体的には、センタ80は、車両70から受信した個人特定情報に基づいて個人を特定し、当該個人の医療情報84にデータ処理手段81がアクセスし、これを送信手段88から送信するように処理を行う。
【0101】
ステップ150では、乗員情報取得装置40が、センタ80から送信された医療情報を通信装置31により受信し、乗員の医療情報を取得する。乗員情報取得装置40は、乗員が診断を受けた直後のタイミングで、1回の送受信で更新された医療情報の情報を取得することができる。つまり、少ない通信回数で、最新の医療情報を取得することができる。
【0102】
ステップ160では、車両制御手段50を含む車両制御装置60により、乗員情報取得装置40で取得した医療情報に応じて、運転者の運転を支援又は同乗者を快適にする制御が実行される。これにより、医療情報に基づき、運転者の運転負荷を低減し、同乗者を快適にするのに最も適切な制御内容を実行することができる。
【0103】
このように、本実施例に係る乗員情報取得装置40及び乗員情報取得システム100によれば、少ない通信回数で乗員の最新の医療情報を最も必要なタイミングで取得することができる。また、本実施例に係る車両制御装置60及び車両制御システム160によれば、取得した医療情報に基づき、乗員の健康状態にとって最も必要とされる運転支援制御又は車両環境を快適にする制御を行うことができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本実施例に係る乗員情報取得装置40及び乗員情報取得システム100、車両制御装置60及び車両制御システム160の全体構成模式図の一例である。
【図2】乗員情報取得装置40及び車両制御装置60の全体構成図の一例である。
【図3】乗車検知手段20による乗車検知の状態の一例を示した模式図である。
【図4】健康保険証21の一例を示した図である。
【図5】センタ80の全体構成を示した機能ブロック図の一例である。
【図6】認知症の診断結果が提供された場合の制御内容の例を示した図である。
【図7】種々の症状に対応する運転者の運転操作支援の制御例を示した図である。
【図8】運転者又は同乗者を快適にする制御の例を示した図である。
【図9】本実施例に係る乗員情報取得装置40等の動作フロー図である。
【符号の説明】
【0106】
10 医療機関検知手段
11 ナビゲーション装置
12 GPS受信機
13 車速センサ
14 ジャイロセンサ
15 地図データ
20 乗車検知手段
21 健康保険証
22 ICチップ
30 医療情報取得手段
31 通信装置
32 個人特定情報送信手段
33 医療情報受信手段
40 乗員情報取得装置
50 車両制御手段
51 エアコン制御システム
52 ライト制御システム
53 ステアリングシステム
54 シート
55 運転支援システム
56 運動制御システム
57 車両制御ECU
60 車両制御装置
70 車両
80 センタ
81 データ処理手段
82 データ格納手段
83 個人特定情報
84 医療情報
85 標準データ
86 通信手段
87 受信手段
88 送信手段(医療情報送信手段)
90 医療機関
91 敷地
92 駐車場
95 医療情報格納手段
96 通信手段
100 乗員情報取得システム
160 車両制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員に関する情報の取得を行う乗員情報取得装置であって、
車両が医療機関の付近にいることを検知する医療機関検知手段と、
該医療機関検知手段により前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知したときに、乗員が前記車両に乗車してきたことを検知する乗車検知手段と、
該乗車検知手段により前記乗員が乗車してきたことを検知したときに、前記乗員の医療情報を取得する医療情報取得手段と、を備えることを特徴とする乗員情報取得装置。
【請求項2】
前記医療機関検知手段は、前記車両が前記医療機関の敷地内に入ったとき又は前記車両が前記医療機関から所定範囲内の駐車場に入ったときに、前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知することを特徴とする請求項1に記載の乗員情報取得装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗員情報取得装置を備え、
該乗員情報取得装置を用いて取得した医療情報に基づいて、車載機器の制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
前記車両制御手段は、乗員の運転支援をするように前記車載機器の前記制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
車載された乗員情報取得装置とセンタが通信することにより、前記乗員情報取得装置に乗員の医療情報を取得させる乗員情報取得システムであって、
前記乗員情報取得装置は、車両が医療機関の付近にいることを検知する医療機関検知手段と、
該医療機関検知手段により前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知したときに乗員が前記車両に乗車してきたことを検知する乗車検知手段と、
該乗車検知手段により前記乗員が前記車両に乗車してきたことを検知したときに前記乗員の個人情報を前記センタに送信する個人特定情報送信手段と、
前記センタを通じて前記乗員の医療情報を受信する医療情報受信手段と、を備え、
前記センタは、前記個人特定情報に対応した前記乗員の医療情報を前記乗員情報取得装置に送信する医療情報送信手段を備えることを特徴とする乗員情報取得システム。
【請求項6】
前記医療機関検知手段は、前記車両が前記医療機関の敷地内に入ったとき又は前記車両が前記医療機関から所定範囲内の駐車場に入ったときに、前記車両が前記医療機関の付近にいることを検知することを特徴とする請求項5に記載の乗員情報取得システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の乗員情報取得システムを備え、
該乗員情報取得システムの乗員情報取得装置を用いて取得した医療情報に基づいて、車載機器の制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
前記車両制御手段は、乗員の運転支援をするように前記車載機器の前記制御を行うことを特徴とする請求項7に記載の車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−254544(P2009−254544A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106595(P2008−106595)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】