説明

乗員拘束装置用のインフレータバッグ、その取付構造、及び乗員腰部拘束装置

収容性を損なうことなく、耐熱性に乗員拘束装置用インフレータバッグ、その取付構造、及び、そのインフレータバッグを使用した乗員腰部拘束装置を提供することを目的とする。そこで、ガスの充填により膨張展開することにより、車両内の乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグにおいて、前記ガスが接する内面に形成されたメタル層と、前記メタル層の外側に積層された柔軟性に優れた補強布層とを含む本体シートを備え、前記本体シートを袋状に成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、乗員拘束装置用のインフレータバッグに係り、特に、シートクッション内に装備して車両衝突時に乗員の腰部を拘束する乗員腰部拘束装置や、インストルメントパネルの下部に装備して車両衝突時に乗員の脚部を拘束する乗員脚部拘束装置に適用するのに好適なインフレータバッグに関する。また、そのインフレータバッグの取付構造及びそのインフレータバッグを用いた乗員腰部拘束装置に関する。
【背景技術】
車両が前方衝突したときには、慣性により乗員が前方へ移動しようとする。乗員がシートベルトを着用している場合、シートベルトの肩ベルト及び腰ベルトの拘束作用により、乗員の前方への移動はかなりの程度抑えられるが、必ずしも十分でない場合があった。
この乗員の前方への移動を防止するため、車両が前方衝突等により急減速した場合に、瞬時にシートクッションの前端部を上昇させて、乗員の前方移動を制限するようにした乗員腰部拘束装置が、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3において知られている。また、前方へ移動する乗員の脚部を保護するための乗員脚部拘束装置が、例えば特許文献4、特許文献5において知られている。
図5は乗員腰部拘束装置の従来例を示している。(a)は膨張展開前の状態、(b)は膨張展開後の状態を示している。図において、1はシートフレームであり、このシートフレーム1の前部には、上から見て凹んだ凹部1aが設けられ、その上面に、凹部1aを覆うようにメタルシート2が、溶接や接着等により貼り付けられている。この例において、インフレータバッグ3は、メタルシート2とシートフレーム1で構成されており、インフレータ4の発生したガスが、インフレータバッグ3の内部空間に充填されるようになっている。
この乗員腰部拘束装置を備えた車両においては、前方衝突等による車両急減速時に、インフレータ4が作動して高圧ガスをインフレータバッグ3に送り込む。そうすると、インフレータバッグ3を構成するメタルシート2が膨張展開し、シートクッション6の前部座面を上昇させることにより、シートに着座した乗員Mの前方への移動を防止する。
図6は乗員脚部拘束装置(ニーエアバッグ装置とも呼ばれている)の従来例を示している。(a)は膨張展開前の状態、(b)は膨張展開後の状態を示している。図において、11はインストルメントパネル、12はカバーパネル、13はカバーパネル12の裏側に内蔵されたエアバッグモジュールである。エアバッグモジュール13には、インフレータバッグ(エアバッグ本体)14と、インフレータ15が装備され、インフレータ15の発生したガスが、インフレータバッグ14の内部に充填されるようになっている。
この乗員脚部拘束装置を備えた車両においては、前方衝突等による車両急減速時に、インフレータ15が作動して高圧ガスをインフレータバッグ14に送り込む。そうすると、インフレータバッグ14が膨張展開してカバーパネル12を押し出し、それにより、シートに着座した乗員の脚部Nを拘束して、車内装備へ脚部が衝突する際の衝撃を緩和する。
ところで、この種の乗員拘束装置のインフレータバッグを金属の単品部品として構成する場合、従来では、図7に示すように、2枚のメタルシート21、22を溶接(点線23が溶接部を示す)により貼り合わせて構成したり、図8に示すように、2枚のメタルシート21、22の間に、膨張量確保のためのベローズ25を挟んで溶接して構成したりしているのが一般的である。そして、このように構成したインフレータバッグを車両に装備する場合には、予めインフレータバッグに対してインフレータを組み付けてモジュール化し、その上でこれを車両に装備している。
【特許文献1】 特開平5−229378号公報
【特許文献2】 特開平10−217818号公報
【特許文献3】 英国特許GB2357466
【特許文献4】 特開平8−40177号公報
【特許文献5】 特開平9−123857号公報
しかし、図7に示したインフレータバッグは、2枚のメタルシート21、22を重ね合わせた上で周辺溶接することにより構成しているので、製作が面倒であり、高コストになるという問題があった。また、図8に示したインフレータバッグは、その上さらに、2枚のメタルシート21、22の間にベローズ25を挟んで溶接することにより構成しているので、さらに製作が面倒であり、一層高コストになるという問題があった。
メタルシートでインフレータバッグを構成した場合には、膨張前の状態において折り畳み難く、収容性が悪いという問題がある。一方、ファブリック(布)でインフレータバッグを構成した場合には、収容性に優れるものの、高温なガスに耐えうる耐熱性に問題がある。
本発明は、上記事情を考慮し、収容性を損なうことなく、耐熱性に乗員拘束装置用インフレータバッグ、その取付構造、及び、そのインフレータバッグを使用した乗員腰部拘束装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
請求項1に係る乗員拘束装置用のインフレータバッグは、ガスの充填により膨張展開することにより、車両内の乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグにおいて、前記ガスが接する内面に形成されたメタル層と、前記メタル層の外側に積層された柔軟性に優れた補強布層とを含む本体シートを備え、前記本体シートを袋状に成形している。
この場合、メタル薄膜シートとしてはアルミシート等の可撓性を有する薄膜シートが利用可能である。また、補強布としては縫製布が利用可能である。また、樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等が利用可能である。また、袋体として成形する際の本体シートの貼り合わせ方法としては、接着や熱融着などの方法を採用することができる。
単に樹脂だけのシートで袋状に成形したものと比べて、本発明のインフレータバッグは、メタル薄膜シートを内面に張り、且つ、補強布を層状に積層することで構成した本体シートで成形したものであるので、ガス充填時の高圧・高温にも十分に耐えることができ、インフレータバッグとしての信頼性を高めることができる。また、可撓性を有する袋体として成形されたものであるから、平たく押し潰した形でコンパクトに車両に据え付けることができる。
請求項2の発明の乗員拘束装置用のインフレータバッグは、請求項1において、前記袋体が、平面視矩形で一方の対向2辺で互いに接合された表裏2枚の広幅部シートと、該広幅部シートの他方の対向2辺で表裏2枚の広幅部シートの縁部と接合された膨張高さ確保用の左右2枚の襠部シートとにより構成されており、該両襠部シートが中央幅広の略菱形状に形成されることで、前記広幅部シートが、前記両襠部シートの中央幅広部分を頂点とする略円筒曲面状に膨張可能とされていることを特徴とする。
このインフレータバッグでは、襠部シートを設けたことにより、高圧ガス導入による膨張展開時に、平面視矩形の広幅部シートを略円筒曲面状に膨ませることができるので、十分な膨張高さ(膨張代)を確保することができ、エネルギ吸収度合いを高めることができる。
請求項3の発明の乗員拘束装置用のインフレータバッグは、請求項2において、少なくとも一方の前記広幅部シートの表面に、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部と平行に複数の細幅ポケットが密に隣接して配列されており、各細幅ポケットに、それぞれ前記本体シートよりも硬質材料よりなる短冊プレートが差し込まれていることを特徴とする。この場合、短冊プレートとしては、硬質樹脂のプレートや金属プレート等が利用可能である。
このインフレータバッグでは、高圧ガス導入による膨張展開時に略円筒曲面状に膨らむ広幅部シートに、硬質材料よりなる複数の短冊プレートが配設されているので、広幅部シートの膨張力を全体で均等に乗員に伝えることができる。従って、乗員からの衝撃を効率良く吸収することができ、乗員保護性能の向上を図ることができる。即ち、短冊プレートを配設しない場合は、広幅部シートの全体が柔軟であるから、拘束されていない中央部がどうしても盛り上がりがちになる(つまり、広幅部シートが球面状に膨張しがちになる)が、短冊プレートを配設した場合は、広幅部シートが略円筒曲面状に膨らむことになる(つまり、中央部だけでなく端の方まで均等な高さで膨らむようになる)ので、広い面積で乗員を均等に支えることができ、乗員からの衝撃エネルギを効率良く吸収することができる。また、複数の短冊プレートの使用により、広幅部シートの膨らみを略円筒曲面状に保つことができるので、膨張展開性能を阻害することもない。
請求項4の発明の乗員拘束装置用のインフレータバッグは、請求項3において、前記各短冊プレートの長さが、その配列方向の中央部にあるものほど長く、端部にあるものほど短く設定されており、袋体の四隅が短冊プレートによる拘束から解放されていることを特徴とする。
このインフレータバッグでは、短冊プレートの長さを配列方向の端部にあるものほど短く設定して、袋体の四隅を短冊プレートによる拘束から解放しているので、袋体の四隅に膨張の際に無理な力がかかるのを防止することができ、インフレータバッグの膨張性能を高めることができる。
請求項5の発明の乗員拘束装置用のインフレータバッグは、請求項2〜4のいずれかにおいて、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの一方が、所定幅の接合代を確保した帯板状に形成され、その帯板状の接合部に、前記本体シートよりも硬質材料よりなる取付固定用の押さえプレートが取り付けられていることを特徴とする。
このインフレータバッグでは、広幅部シート同士の接合部に硬質の押さえプレートを取り付けているので、その部分を用いてインフレータバッグを車両に容易に取り付けることができる。
請求項6の発明の乗員拘束装置用のインフレータバッグの取付構造は、請求項2〜5のいずれかに記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグの取付構造であって、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの一方のみを車両に固定し、他方を自由にしたことを特徴とする。
請求項2〜5に記載のインフレータバッグは、高圧ガスの導入による膨張展開時に、表裏の広幅部シートが共に略円筒曲面状に膨らむ。そのような形に膨らむ場合、両端の接合部が共に車両に固定されていると、インフレータバッグ自体が膨張しにくくなる上、固定部に無用な力がかかることになる。そこで、請求項6の発明の取付構造では、一方の接合部のみを車両に固定し他方の接合部を自由にしている。このようにすることで、インフレータバッグ自体の膨張展開を阻害することがなくなると共に、固定部に無用な力が働かなくなり、膨張力を有効に乗員に作用させることができ、衝撃エネルギを効率良く吸収できるようになる。
請求項7の発明の乗員腰部拘束装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグを、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部を前後方向に向けて車両のシートクッションの前下部に内装し、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの車両後部側に位置する接合部のみを車両に固定して車両前部側の接合部を自由にし、車両急減速時に高圧ガスの充填により前記インフレータバッグを膨張展開させることで、シートクッションの前部座面を上昇させ、それによりシートに着座した乗員の前方への移動を防止することを特徴とする。
この装置では、インフレータバッグの後端側の接合部を固定し、前端側の接合部を自由にしているので、高圧ガスの導入により膨張展開するとき、前端側が持ち上がるようにして膨らむ。従って、シートクッションの前部座面を前端側から上昇させることができて、乗員の腰部を有効にインフレータバッグによって拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態のインフレータバッグの膨張展開時の外観を示す斜視図である。
図2は、図1のA−A矢視断面図である。
図3は、本発明に係る本体シート(樹脂シート)の構造を示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態のインフレータバッグを用いた乗員腰部拘束装置の概略側面図である。
図5は、従来の乗員腰部拘束装置の構成図で、(a)はインフレータバッグが膨張展開する前の状態、(b)はインフレータバッグが膨張展開した後の状態を示す側断面図である。
図6は、従来の乗員脚部拘束装置の構成図で、(a)はインフレータバッグが膨張展開する前の状態、(b)はインフレータバッグが膨張展開した後の状態を示す側断面図である。
図7は、従来のインフレータバッグの構成図で、(a)は収縮時の状態を示す外観斜視図、(b)は膨張展開時の状態を示す外観斜視図である。
図8は、従来の他のインフレータバッグの構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施形態のインフレータバッグの膨張展開時の外観を示す斜視図、図2は図1のA−A矢視断面図である。図3は、本発明に係る本体シート(樹脂シート)の構造を示す断面図である。
インフレータバッグ50のバッグ本体50Aは、高圧ガスの充填により膨張展開可能で、膨張展開することによって乗員を拘束する乗員拘束装置用のものである。図3に示すように、メタルシート100を内面に張り且つ補強布102,104,106を層状に積層することで構成した本体シートを貼り合わせることにより、可撓性を有する気密な袋体として成形されている。この場合、メタルシート100としては、アルミシート等の可撓性を有する薄膜シートを利用することができる。
メタルシート100の材質としては、アルミニウムの他に、アルミ合金、銅、銅合金、ステンレスなどを使用することができる。また、これらの素材は、インフレータバッグの内面の特に温度の上がる部分にのみ局所的に又は部分的に用いてもよい。アルミニウムを使用した場合のメタルシート100の厚みとしては、1/1000mm〜1/10mmとすることができる。好ましくは、1/1000mm〜1/100mmとする。
補強布層のうち、メタルシート100に接する層102及び最も外側の層106としては、例えば、ポリエステルシートを使用することができる。2つのポリエステルシート102,106の間には、補強用の紙層104を介在させることができる。なお、層104としては縫製布を利用することができる。また、層102,104を構成する樹脂の例としては、ポリエステルの他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の種々のものを利用することができる。
図3に示す本体シートを構成する層の数及び材質は、実施例のものに限らず、必要とされる耐圧等に応じて適宜変更可能である。
袋体として成形されたバッグ本体50Aは、平面視矩形で一方の対向2辺で互いに接合された表裏2枚の広幅部シート51と、広幅部シート51の他方の対向2辺で表裏2枚の広幅部シート51の縁部と接合された膨張高さ確保用の左右2枚の襠部シート52とにより構成されている。広幅部シート51同士の接合部53は、所定幅の接合代(例えば、15〜30mm)を確保した帯板状に形成されており、その片方の接合部53には、バッグ本体50Aを構成する本体シート(樹脂シート)よりも硬質の材料(例えば、所定厚の金属板)よりなる取付固定用の帯状の押さえプレート65が取り付けられている。そして、その押さえプレート65を通して接合部53には、ネジ固定用の取付孔66が形成されている。接合代を広めに確保することにより、本体シートが薄い場合にも、高い接合強度を得ることが可能となる。
また、襠部シート52は、表裏2枚の広幅部シート51を合わせることで形成される筒状の空間の端面を塞ぐように配置されており、両広幅部シート51の側縁部と接合されている。この接合部54も、所定幅の接合代(例えば、15〜30mm)を確保した状態で帯板状に形成されている。なお、樹脂シートの接合は、接着または熱融着で行うのがよい。接合代を広めに確保することにより、本体シートが薄い場合にも、高い接合強度を得ることが可能となる。
このように両襠部シート52が中央幅Hが広くなった略菱形状に形成されていることで、表裏2枚の広幅部シート51が、両襠部シート52の中央幅広部分52Aを頂点とする略円筒曲面状に膨張可能となっている。
また、このバッグ本体50Aの片面側の広幅部シート51の表面には、更に別の樹脂シート(この樹脂シートは温度条件が厳しくないので、金属層を持たない単なる樹脂シートでよい)58が貼り付けられることで、広幅部シート51同士の対向2辺の接合部53と平行に、複数の細幅ポケット61が密に隣接して配列されている。図2に示すように、各細幅ポケット61は、上に被せる樹脂シート58を適当に弛ませた状態で、所定ピッチでバッグ本体50A側の広幅部シート51の表面に接着(融着も可)することにより形成されている。図中59で示す部分が接着(または融着)部分である。
そして、このように形成された各細幅ポケット61に、それぞれバッグ本体50Aを構成する樹脂シートよりも硬質の材料(例えば、所定厚の金属板)よりなる短冊プレート62が差し込まれている。各短冊プレート62の長さは、その配列方向の中央部にあるものほど長く、端部にあるものほど短く設定されており、平面視矩形のバッグ本体50Aの四隅が、短冊プレート62による拘束から解放されている。
以上の構成のインフレータバッグ50は、単に樹脂だけのシートで袋状に成形したものと比べ、メタル薄膜シートを内面に張り、且つ、補強布を層状に積層することで構成した樹脂シートで成形したものであるので、ガス充填時の高圧・高温にも十分に耐えることができ、インフレータバッグ50としての信頼性を高めることができる。また、可撓性を有する袋体としてバッグ本体50Aが成形されているので、平たく押し潰した形でコンパクトに車両に据え付けることができる。
また、略菱形状の襠部シート52を端面に設けることで、膨らんだ状態での高さを確保するようにしているので、エネルギ吸収度合いを高めることができる。また、高圧ガス導入による膨張展開時に略円筒曲面状に膨らむ広幅部シート51に硬質の短冊プレート62を配設しているので、広幅部シート51の膨張力を全体で均等に乗員に伝えることができ、乗員からの衝撃を効率良く吸収することができて、乗員保護性能の向上を図ることができる。また、複数の短冊プレート62の使用により、広幅部シート51の膨らみを略円筒曲面状に保つことができるので、膨張展開性能を阻害することもない。
特に、各短冊プレート62の長さを、その配列方向の中央部にあるものほど長く、端部にあるものほど短く設定して、矩形状のバッグ本体50Aの四隅を短冊プレート62による拘束から解放しているので、バッグ本体50Aの四隅に膨張の際に無理な力がかかるのを防止することができ、インフレータバッグ50の膨張性能を高めることができる。
このインフレータバッグ50を使用する場合には、押さえプレート65を設けた側の接合部53をネジで車体に固定し、他方の接合部53は自由にしておく。図4はこのインフレータバッグ50を用いて乗員腰部拘束装置100を構成した例を示している。
この乗員腰部拘束装置100では、前記インフレータバッグ50を、広幅部シート51同士の対向2辺の接合部53を前後方向に向けて、車両のシートクッション71の前下部に内装している。そして、押さえプレート65を取り付けた車両後部側の接合部53のみを、車体側部材70にボルト・ナット68で固定して、車両前部側の接合部53は自由な状態にしてある。
この乗員腰部拘束装置100を装備した車両が前方衝突し、図示略のインフレータから高圧ガスが発生すると、その高圧ガスの導入によってインフレータバッグ50が膨張展開し、シートクッション71の前部座面を上昇させて、シートに着座した乗員Mの前方への移動を防止する。その際、インフレータバッグ50の後端側の接合部53だけが固定され、前端側の接合部53が自由になっているので、インフレータバッグ50は、矢印Aのように、前端側が持ち上がるようにして膨らむ。従って、シートクッション71の前部座面を無理なく前端側から上昇させることができて、インフレータバッグ50の膨張力(矢印B)を有効に乗員Mの腰部に作用させることができ、衝撃エネルギを効率良く吸収することができる。
なお、前記インフレータバッグは、腰部拘束装置以外に、運転席用エアバッグ装置、助手席用エアバッグ装置、側突用エアバッグ装置、インフレータカーテン装置、ニーエアバッグ装置の各インフレータバッグとしても適用可能である。
以上説明したように、請求項1の発明のインフレータバッグは、メタル薄膜シートを内面に張り且つ補強布を層状に積層することで構成した樹脂シートで成形したものであるので、ガス充填時の高圧・高温にも十分に耐えることができ、インフレータバッグとしての信頼性を十分に確保することができる。また、可撓性を有する袋体として成形されたものであるから、平たく押し潰した形でコンパクトに車両に据え付けることができる。
請求項2の発明のインフレータバッグは、膨張展開時の高さ確保用に襠部シートを設けているので、高いエネルギ吸収率を確保することができる。
請求項3の発明のインフレータバッグは、膨張広幅面に硬質材料よりなる複数の短冊プレートを配設しているので、インフレータバッグの膨張力を均等に乗員に伝えることができ、乗員からの衝撃を効率良く吸収することができる。
請求項4の発明のインフレータバッグは、短冊プレートの長さを調節して、袋体の四隅を短冊プレートによる拘束から解放しているので、袋体の四隅に膨張の際に無理な力がかかるのを防止することができ、インフレータバッグの膨張性能を高めることができる。
請求項5の発明のインフレータバッグは、広幅部シート同士の接合部に硬質の押さえプレートを取り付けているので、その部分を用いてインフレータバッグを車両に容易に取り付けることができる。
請求項6の発明のインフレータバッグの取付構造は、インフレータバッグを車両に取り付けるに当たり、一方の接合部のみを車両に固定し他方の接合部を自由にしているので、インフレータバッグ自体の膨張展開を阻害することなく、また、固定部に無用な力を加えることなく、膨張力を有効に乗員に作用させることができ、衝撃エネルギを効率良く吸収できる。
請求項7の発明の乗員腰部拘束装置は、インフレータバッグの後端側の接合部を固定し、前端側の接合部を自由にしているので、高圧ガスの導入により膨張展開するとき、前端側が持ち上がるようにして膨らませることができる。従って、シートクッションの前部座面を前端側から上昇させることができて、乗員の腰部を有効にインフレータバッグによって拘束することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの充填により膨張展開することにより、車両内の乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグにおいて、
前記ガスが接する内面に形成されたメタル層と、前記メタル層の外側に積層された柔軟性に優れた補強布層とを含む本体シートを備え、
前記本体シートを袋状に成形したことを特徴とする乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
【請求項2】
前記本体シートは、平面視矩形で一方の対向2辺で互いに接合された表裏2枚の広幅部シートと、該広幅部シートの他方の対向2辺で表裏2枚の広幅部シートの縁部と接合された膨張高さ確保用の左右2枚の襠部シートとにより構成され、該両襠部シートが中央幅広の略菱形状に形成されることで、前記広幅部シートが、前記両襠部シートの中央幅広部分を頂点とする略円筒曲面状に膨張可能とされていることを特徴とする請求項1記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
【請求項3】
少なくとも一方の前記広幅部シートの表面に、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部と平行に複数の細幅ポケットが密に隣接して配列されており、各細幅ポケットに、それぞれ前記本体シートよりも硬質材料よりなる短冊プレートが差し込まれていることを特徴とする請求項2記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
【請求項4】
前記各短冊プレートの長さが、その配列方向の中央部にあるものほど長く、端部にあるものほど短く設定されており、袋体の四隅が短冊プレートによる拘束から解放されていることを特徴とする請求項3記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
【請求項5】
前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの一方が、所定幅の接合代を確保した帯板状に形成され、その帯板状の接合部に、前記本体シートよりも硬質材料よりなる取付固定用の押さえプレートが取り付けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグの取付構造であって、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの一方のみを車両に固定し、他方を自由にしたことを特徴とする乗員拘束装置用のインフレータバッグの取付構造。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれかに記載の乗員拘束装置用のインフレータバッグを、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部を前後方向に向けて車両のシートクッションの前下部に内装し、前記広幅部シート同士の対向2辺の接合部のうちの車両後部側に位置する接合部のみを車両に固定して車両前部側の接合部を自由にし、車両急減速時に高圧ガスの充填により前記インフレータバッグを膨張展開させることで、シートクッションの前部座面を上昇させ、それによりシートに着座した乗員の前方への移動を防止することを特徴とする乗員腰部拘束装置。

【国際公開番号】WO2004/069586
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504839(P2005−504839)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001083
【国際出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】