説明

乳酸菌ラクトバシラス・サケイ株、飲料製造方法、食品製造方法、漬け床製造方法、製パン改質原料製造方法

【課題】低温増殖能と乳酸産生能に優れ、各種ストレスに対して高い耐性を有し、糖質資化能に特徴的な乳酸菌を開発し提供する。
【解決手段】 低温増殖能と乳酸産生能に優れ、各種ストレスに対して高い耐性を有し、糖質資化能に特徴を持った乳酸菌ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株を新規に分離した。本乳酸菌は従来株ラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と比べて低温増殖性や低温における乳酸産生能に優れている。また、ラクトバシラス・サケイの分類上重要な意義を持つ糖質メリビオース発酵性を失っている。また、NBRC 3541株とほぼ同様の糖質発酵性を有するが、メリビオース発酵性の他、マルトース発酵性も失っていることから、本乳酸菌による発酵物中にメリビオース及びマルトースが高度に残存する。したがって、メリビオース及びマルトースの有する機能性を発酵物中に残存させることが可能であり、甘みとふくらみある風味を有する発酵物を得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,秋田県山本郡八森町の世界自然遺産「白神山地」緩衝地域より所管官庁の許可を得て採取した温帯落葉広葉樹林帯の腐葉土より新規に分離した乳酸菌 ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株に関するものである。詳しくは、 ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株は、従来の生モト清酒製造に利用された同種株に比べて、低温で良好な生育を示し、低温にて乳酸を高生産する。さらに従来株が有するマルトース資化性及びメリビオース資化性を失った特殊な糖質資化性を示す。また、5%以下の食塩濃度環境下あるいは5%以下のアルコール濃度環境下で良好な生育を示すが、食塩濃度8%またはアルコール濃度7.5%の環境でも生育する特性を有する。
【0002】
乳酸菌は、我が国においてきわめて需要の高い漬け物、みそ、しょうゆ、清酒をはじめとする酒類、乳発酵製品などの発酵食品の分野で広く活用されており、耐塩性や耐アルコール性が高く低温発酵力に優れた乳酸菌が強く求められている。本発明に係わる新規乳酸菌はこの要望に応えるものである。
【背景技術】
【0003】
従来の技術では、乳酸菌は古来より漬け物、みそ、しょうゆ、清酒をはじめとする酒類、乳発酵製品などの発酵食品や発酵飲料の製造に利用されている有用な微生物であり、古来より食習慣がある安全な微生物といえる。発酵食品などの製造過程において、乳酸菌による乳酸発酵が行われ、系のpHが低下することで系中の雑菌の増殖を抑制し、製品の風味と品質が向上する。
【0004】
アルコール含有飲料またはアルコール含有食品製造に用いられる植物原料は、例えば米や芋、麦、ごま、トウモロコシを原料とする清酒やみりん、焼酎、ビール、ウィスキー等があげられる。また、ブドウやその他果実を利用して製造されるワインが代表的で、生食できる果実であればほぼ原料を選ばない。動物原料の代表的例は乳酒とよばれる乳を原料とするアルコール含有飲料が存在する。アルコール含有食品の例としてはアルコール含有飲料製造の際に分離される各種粕があり、その代表例として酒粕が食品として利用されている。ほかに酒まんじゅうなどがあげられるが、味噌や醤油などにも少量含有されることが知られている。アルコール含有飲料のうち米を原料とする清酒を例としてあげると、生モト清酒または山廃清酒製造の酒母・もろみ製造工程において特に酵母と乳酸菌の共存・発酵が公知の事実として知られている。ラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌は、当初生モト清酒製造工程から分離選抜された乳酸菌で、酒にちなんで命名された。ラクトバシラス・サケイ株は清酒製造行程において中心的働きをする乳酸菌として知られるほか、優れた低温増殖性と乳酸産生能を持つことが知られている。その後、ラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌は、清酒酒母やもろみのほか、ザウアークラウトなど野菜漬物のほか、発酵肉製品、魚肉のすり身などから分離されている。
【0005】
Sneath, P. H. A.らの方法(非特許文献1)によると、ラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌株はマンニトールを資化せず、メリビオースを資化することで、類似した形態を示すラクトバシラス・カルバタスやラクトバシラス・カゼイに属する乳酸菌株と区別される。ゆえに、ラクトバシラス・サケイを利用した発酵物中にメリビオースを残存させることは困難であった。メリビオースやラフィノースは豆を主とした豆類、大麦小麦等の穀類、ごま、とうもろこし、じゃがいもなど多くの植物に含まれておりヒトが昔から微量に摂取しているオリゴ糖である。
【0006】
メリビオースは、アトピー性皮膚炎の症状を改善する効果があることが近年明らかにされ(非特許文献2)、注目を集めている。また、メリビオースにフラクトースが結合したオリゴ糖であるラフィノースは、人の腸内に生息している善玉菌とよばれるビフィズス菌が選択的に発酵できるため、人体内でビフィズス菌の増殖促進物質として摂食し、腸内ミクロフローラ改善物質としてプレバイオティクスの分野から注目を集めている。マルトースをはじめとするマルトオリゴ糖はグルコースが2ないし7個α‐1,4‐グルコシド結合で連結されたオリゴ糖であって、デンプンやアミロースにアミラーゼを作用させることによって得られ、保湿性に優れ、低甘味で低粘度の物性を有するため、各種デンプン質食品の物性改良剤等に利用され、また高純度品は、血清中のアミラーゼ活性測定のための診断薬用基質として利用されている。イソマルトオリゴ糖は、直鎖の上記マルトオリゴ糖に対する名称で、α‐1,4結合以外に、α‐1,6結合、α‐1,2結合、α‐1,3結合などの結合方式をもったマルトオリゴ糖であって、ブドウ糖にグルコアミラーゼを作用させることにより得られ、コクのある甘味特性や保湿性の他に、低う触性ビフィズス菌増殖作用を有しているためプレバイオティクスの分野から注目されているが、その他、製品に対してテリを良くするなどの効果を持っており、清酒、味噌、醤油に多く含まれている。
【0007】
清酒の醸造初期段階において雑菌汚染により酒母やもろみが腐敗する「腐造」を予防するため、系の温度を10℃以下の低温で維持しながら、乳酸菌に乳酸を生成させる、あるいは、添加乳酸によってpHを低下させる。乳酸によってアルコール発酵を行う酵母育成に必要な環境が整う。酒母を例に挙げると、乳酸生成期間を高温で行うと雑菌汚染により腐造をまねくため、野生乳酸菌の発生を待つ古来の手法では、乳酸発酵期間に10〜21日程度を必要とし、酒母期間は約30日程度必要であった。その後開発された添加乳酸菌を用いる生モト酒母や山廃酒母は乳酸発酵期間を10℃以下の低温で7日〜14日という長期間の乳酸発酵期間が必要である。乳酸発酵後に醸造用酵母を添加するため、従来の乳酸菌を用いた酒母製造期間はおよそ14日〜21日必要であった。このような課題を解決する目的で、醸造用乳酸を添加する速醸酒母育成法が考案された。速醸酒母は現在一般に広く用いられているが、無添加食品を好む社会の傾向から、乳酸の添加に代えて仕込み時に乳酸菌を加えて乳酸を生成させる方法が提案されている。乳酸菌を使用した生モト清酒または山廃清酒の製造法としては特許文献1、特許文献2、特許文献3があるが、これらはいずれも耐熱性乳酸菌を使用し、仕込み温度を50〜60℃の高温とすることで雑菌汚染を抑制している。また、この様に醸造された酒母による製成酒は一般的な清酒の総酸度に比べて2〜3倍の多酸酒になり、清酒本来の風味を損なうおそれがある。
【0008】
上記問題点の解決を図る目的で、酒母を乳酸菌の分離源として選択し、低温で増殖性に優れた乳酸菌を選択する方法及び得られた乳酸菌を利用して10〜14日間の短期間で山廃酒母を製造する方法(特許文献4)が提案されているが、その分離方法や酒母を乳酸菌の分離源とすること、また、得られた乳酸菌が低温増殖性に優れることは非特許文献3の記すとおり公知の事実であり、得られた乳酸菌を用いて短期間に酒母を製造する方法は容易に類推できることで、特許文献5と同様に、低温増殖性に優れた特定乳酸菌を使用する酒母製造法である。また、乳酸菌を使用する清酒の製造方法(特許文献6)も同様に乳酸菌を使用して酒母を製造することは容易に類推できることである。
【0009】
清酒において、風味改善を目的にグルコースのオリゴ糖類を高度に残存させた清酒製造法が求められている。また、清酒に機能性の付与が希望されている。また、アルコール含有食品である酒粕などの高付加価値化が期待されている。みりんとは、清酒製造原料の米をもち米にした発酵調味料で、製造工程は清酒とほぼ同様であり、みりん中にはアルコールが14%程度含まれる。
【0010】
米以外を利用する植物原料にて製造されるアルコール飲料の代表例としては、ワインやビールが挙げられる。ワインを例に挙げると、アルコール発酵終了後のワインに乳酸菌を加え、リンゴ酸を乳酸にするマロラクティック発酵が広く知られている。マロラクティック発酵により、ワインの酸味が柔らかくなり、香味がより複雑になるほか、微生物に資化されやすいリンゴ酸が減少することでワインの微生物安定性が増加する。ラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌はマロラクティック発酵を行うことが知られている(非特許文献4)。ビールを例に挙げるとベルギーのランビックビールなどは酵母とともに乳酸菌による発酵が知られている。
【0011】
含塩発酵食品とは味噌、醤油、魚醤油、漬物、水畜産加工品などが例としてあげられ、醸造中に好塩性の乳酸菌や酵母が発酵し、独特の香気と風味を持つことが知られている。これらの食品は食塩を多く含むため、塩分過剰摂取と高血圧症や脳卒中との関連が明らかになった現在では減塩化が進められている。しかし、塩分の減少は醸造中の腐敗の増加とともに風味の低下も伴っており、新たな製造方法の開発が求められている。また、ラフィノースやメリビオースなどの大豆オリゴ糖のもつ機能性を活用した製品の開発が希望されている。
【0012】
含塩発酵食品の減塩化と風味改善を目的に好塩性乳酸菌を接種し醸造する製造方法が広く研究されており、一部実用化に至っている。しかしながら、好塩性乳酸菌は食塩による生育抑制が不可能なため、生味噌などでは乳酸発酵が継続し、過剰な酸味を伴う過剰発酵が発生しやすい。
【0013】
野菜の漬物とは浅漬けや一夜漬け、麹漬け、ぬか漬け、キムチなど多岐にわたるが、浅漬けや一夜漬けとは野菜類を約2.5%〜5%の低い食塩濃度で低温で漬けた漬け物で、漬け後一晩で食べられることから名付けられている。しかし、食品の保存性に重大な意義をもつ食塩の濃度が低いことから、原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため消費期間は極端に短く、日持ち向上剤や保存料を添加しない限り製品化は困難である。また、麹漬けとは野菜類を塩と米と米麹からなる漬け床に漬け込み熟成させた食品である。塩分が低いことや糖分が高く栄養価が高いことから微生物汚染を受けやすく、安定した品質の食品を長期間安定して供給することは困難であった。ぬか漬けとは、精米時に発生する米ぬかと食塩をはじめとする漬け床につけ込み熟成させた食品であり、手入れの手間や塩分が高いことから製品化が困難である。低塩化を検討した場合、食品の保存性に重大な意義をもつ食塩の濃度が低いことから、原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため消費期間は極端に短く、日持ち向上剤や保存料を添加しない限り製品化は困難である。漬物製造用スターターとして特許文献7が提案されているが、これは特定の微生物ラクトバシラス・サケHS1株を使用した製造法に関する特許である。
【0014】
発酵豆乳とは豆乳ヨーグルトに代表され、豆乳に乳酸菌を接種して培養した、牛乳ヨーグルトと類似した豆乳のヨーグルトである。主に生食用として製造されるが、一般には牛乳と豆乳を混合し風味を改善している。また、ラフィノースやメリビオースといった大豆オリゴ糖のもつ機能性を活用した製品の開発が希望されている。
【0015】
天然酵母パンとはサワーブレッドとも呼ばれる。天然酵母パン種とは、天然酵母パン製造に使用される添加酵母のうち、パン製造に使用する添加酵母を自ら培養及び育種及び継代する必要があるものを言い、酵母をドライフルーツなどから分離または培養する作業を「種おこし」という。種おこしが必要なパンを天然酵母パンという。種おこしは、主に以前使用した天然酵母パン種に水や小麦粉などを加えて種継ぎを行う。この時、原材料に付着して乳酸菌などが混入し、天然酵母パン種中で増殖し、焼成後のパンに酸味等をはじめとする独特の風味が付与されるが、制御が困難なため過剰な酸味を発生することが問題とされてきた。その他、一般雑菌やカビが混入し、天然酵母パン種が腐敗することもある。この雑菌汚染や過剰な酸味の発生を抑制するため、従来の解決手段として、生モト酒母から分離された乳酸菌添加で解決する方法(特許文献8)や生米等の乳酸菌発酵物を磨砕して得た乳液状の発酵種を、パンの第一次原料粉に添加混捏し、乳酸発酵のみを先行させて乳酸生地を一旦製出し、この乳酸生地に、第二次原料を添加混合してパン生地を製出し、常法通り製パンを行う方法(特許文献9)、さらに乳酸発酵を選考させる方法として茶葉中で増殖させた茶葉エキスで乳酸菌のみの発酵を行わせる方法(特許文献10)がある。乳酸発酵を伴った製パンでは、焼成後のパンの粘弾性が高く、柔らかくしっとりとしたパンに焼き上がり、乾燥に強くカビなどの汚染にも強いパンになることが知られている。
【0016】
生鮮畜肉類や魚類をはじめとする水産品の発酵食品は発酵ソーセージや各種みそ漬け、いずし、麹漬け、みりん漬けなどが代表的である。発酵ソーセージとは日本ではあまり例がないが、主にドライソーセージ、又は、セミドライソーセージと呼ばれサラミなどが該当し、水分を減少させたソーセージである。適切な乳酸菌を原材料に接種後、25℃前後で培養し、風乾した物を言う。地方によっては続いてカビを付着させたものもある。雑菌の増殖速度が添加する乳酸菌の増殖速度よりも速い場合が多々あり、その場合は製造中に腐敗する。乳酸発酵による独特の風味があるため、日本人にはあまり好まれない。
【0017】
ハタハタずしやいずし類をはじめとする水産加工品とは、魚類などを塩と米と米麹をはじめとする漬け床につけ込み熟成した食品である。ぬか漬けとは、精米時に発生する米ぬかと食塩をはじめとする漬け床につけ込み熟成させた食品である。塩辛とは原材料を食塩でつけ込んだ食品である。これらはいずれも原材料に付着して混入した乳酸菌によるpHの低下や塩分を高くすることで保存性を向上していた。しかし、時間の経過とともに原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため安定した品質の食品を提供するのは困難である。また、同様の理由で低塩化は困難であった。これらの製品の多くは低温で発酵を行うため、発酵期間が長期にわたる。そこで、低温増殖能に優れた乳酸菌の開発と発酵期間の短縮が期待されている。
【0018】
発酵乳製品とはヨーグルトやチーズ、発酵バター、発酵乳飲料などが代表的である。これらは発酵を開始させるスターターと呼ばれる特定の乳酸菌群が開発され、実用化されている。使用される乳は、牛などが代表的である。乳には様々な微生物に汚染されていることが多く、一般に加熱処理した乳にスターターを接種し、37℃程度で速やかに乳酸発酵が進められる。近年、生きたまま人体の腸管まで到達できる乳酸菌を選抜し、活用したプロバイオティクス乳酸菌製品に注目が集まっており、特にヨーグルトや発酵乳飲料で積極的に活用されている。これらは体質改善など様々な効果が期待されている。
【特許文献1】特開昭49−94900号公報
【特許文献2】特開昭61−58574号公報
【特許文献3】特開昭64−74976号公報
【特許文献4】特開平11−46748号公報
【特許文献5】特開2004−305015号公報
【特許文献6】特開2001−314182号公報
【特許文献7】特許第3091196号公報
【特許文献8】特開2000−189041号公報
【特許文献9】特開平11−266775号公報
【特許文献10】特開平11−27607号公報
【非特許文献1】Bergey's Manual of Systematic Bacteriology volume 2
【非特許文献2】アレルギー学会第14回春期臨時大会にて発表、「メリビオースのアトピー性皮膚炎改善作用」ファンケル、日本甜菜製糖総合研究所、アレルギー専門医の千葉友幸氏との共同研究)
【非特許文献3】酒母より分離せる乳酸菌の研究 第四報 菌種の分類に就て.(Katagiri, H., Kitahara, K. & Fukami, A., 1934年)
【非特許文献4】Energy conservation in malolactic fermentation by Lactobacillus plantarum and Lactobacillus sake., Kolb S. et.al, Arch Microbiol. 1992;157(5):457-63.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
乳酸菌は古来より食習慣があることから安全性の面で心配がない。従って、低温で増殖が可能であり、乳酸産生能に優れた乳酸菌は発酵能力に優れていると言え、かような乳酸菌を見いだすことで様々な発酵食品に利用できる。本発明の目的は、低温増殖能と乳酸産生能をはじめとした発酵能力に優れた乳酸菌を開発し提供することにある。
【0020】
さらに、本発明の他の目的は、開発された乳酸菌の特長を生かし、飲料の原材料や食品に存在する雑菌の増殖を、低温度と乳酸による低pHにより抑制しながら特定乳酸菌による安定した品質の発酵飲料又は発酵食品を提供し、かつ、それらの製造方法を提供することにある。従来のラクトバシラス・サケイを利用した発酵物は、メリビオースが発酵に利用されるため、発酵物中にメリビオースがほとんど残存しなかった。そこで、機能性オリゴ糖として注目される原材料由来のメリビオース及びラフィノース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖を高度に残存する発酵物の製造を目指し、メリビオース発酵性及びラフィノース発酵性及びマルトオリゴ糖発酵性及びイソマルトオリゴ糖発酵性を失った乳酸菌を開発し提供することにある。
【0021】
アルコール含有飲料のうち清酒を例に挙げると、現在一般に広く活用されている速醸酒母は、別に用意された醸造用乳酸を添加することで乳酸発酵の期間を無くし、酒母期間を7日〜14日に短縮している。それに対して、生モト清酒や山廃清酒は醸造用乳酸を添加せず、必要な乳酸を乳酸菌による乳酸発酵により得ているため、一般に酒母期間が14〜21日必要である。本発明の目的は、本乳酸菌が従来のラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌に比べて低温増殖性が優れかつ低温で乳酸を高生産する特性を生かし、本乳酸菌を酒母またはもろみ中に添加し、酵母とともに発酵を行わせることで健全な生モト酒母や山廃酒母、それぞれのもろみを短期間に育成させることにある。その結果、10℃以下の低温で乳酸発酵期間を従来の7日〜14日間から1日〜7日に短縮することが可能となる。乳酸発酵後に酵母を添加した場合、酵母による発酵期間は約7日必要であることから、生モト酒母や山廃酒母期間を速醸酒母と同等の期間である7日〜14日程度に大幅に短縮できる。さらに、速醸酒母と同等の醸造期間で消費者に添加乳酸を使用しない生モト清酒あるいは山廃清酒を提供できるほか、設備の利用効率が向上し、作業員の業務軽減や経費削減に貢献でき、コスト低下を実現する。
【0022】
従来の技術であり類似する特許として「酒母及び清酒の製造方法(特許文献4)」が提案されているが、酒母から乳酸菌を分離する方法や酒母を乳酸菌の分離源とすることまた、得られた乳酸菌が低温増殖性に優れることは非特許文献3の記すとおり公知の事実であり、得られた乳酸菌を用いて短期間に酒母を製造する方法は容易に類推できることで、特許文献5と同様に特定乳酸菌を使用した酒母製造法と見なすことが可能であり、本技術とは異なる。また、乳酸菌を使用する清酒の製造方法(特許文献6)も同様に乳酸菌を使用して酒母を製造することは容易に類推できることであるため、本発明とは異なる。
【0023】
アルコール含有飲料のうち清酒やみりんを例に挙げると、製成酒中のグルコースオリゴ糖残量が多いほどボディ感がありふくらみのある製品になることが明らかになってきている。また、アルコール含有食品のうち圧搾残渣である酒粕にも同様のことが言える。そこで、本乳酸菌の特徴から系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味を形成を目指す。
【0024】
農水畜産物搾汁液又は麦汁などのエキス中で乳酸発酵を伴う酒類のうち、ワインを例に挙げると、リンゴ酸による酸味の低減によりワインの酸味が柔らかくなり、香味がより複雑になるほか、製成酒の微生物的安定性を提供できる。さらに製成酒に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。。
【0025】
また、ビールでは、日本ではあまりなじみのないランビックビールを手軽に提供することが可能になる。さらに製成酒に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【0026】
含塩発酵食品とは味噌、醤油、魚醤油、漬物などが例としてあげられ、醸造中に好塩性の乳酸菌や酵母が発酵し、独特の香気と風味を持つことが知られている。そのため、好塩性微生物を分離選抜し、前述の食品に接種し醸造する例が認められるが、好塩性微生物の増殖を食塩で抑制することは困難で、過剰な酸味を伴う過剰発酵が発生しやすく殺菌を行わなければいけない。本乳酸菌のもつ優れた耐塩性により未殺菌でも過剰発酵を伴わず適切な酸味で風味豊かな含塩食品の醸造が可能となる。また、乳酸による系中のpH低下により雑菌の生育が抑制されるため、食品の保存性向上のために加えられていた食塩の使用量を減らすことが可能となり、含塩発酵食品の低塩化が可能となる。さらに、系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【0027】
野菜の漬物とは浅漬けや一夜漬け、麹漬け、ぬか漬け、キムチなど多岐にわたるが、浅漬けや一夜漬けとは野菜類を約2.5%〜5%の低い食塩濃度で低温で漬けた漬け物で、漬け後一晩で食べられることから名付けられている。しかし、食品の保存性に重大な意義をもつ食塩の濃度が低いことから、原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため消費期間は極端に短く、日持ち向上剤や保存料を添加しない限り製品化は困難である。また、麹漬けとは野菜類を塩と米と米麹からなる漬け床に漬け込み熟成された食品である。塩分が低いことや糖分が高く栄養価が高いことから微生物汚染を受けやすく、安定した品質の食品を長期間安定して供給することは困難であった。ぬか漬けとは、精米時に発生する米ぬかと食塩をはじめとする漬け床につけ込み熟成させて食品であり、手入れの手間や塩分が高いことから製品化が困難である。低塩化を検討した場合、食品の保存性に重大な意義をもつ食塩の濃度が低いことから、原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため消費期間は極端に短く、日持ち向上剤や保存料を添加しない限り製品化は困難である。そこで、低温に於ける増殖性と乳酸産生能の秀でた本乳酸菌を活用し、10℃以下で野菜漬物を発酵させることで雑菌の増殖を抑制し、日持ち向上剤や保存料を使用せず低食塩で日持ちする風味豊かな低塩化野菜漬物や漬け床の開発を目指す。さらに、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味を形成を目指す。漬物製造用スターターとして特許文献7が提案されているが、これは特定の微生物ラクトバシラス・サケHS1を使用した製造法に関する特許であり、本発明とは異なる。
【0028】
豆乳ヨーグルトは主に生食用として製造されるが、より低温で安全に製造可能で高品質な豆乳ヨーグルトの製造を目的とする。さらに、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みを有する特徴ある風味とテリの形成を目指す。
【0029】
天然酵母パン種とはサワーブレッドとも呼ばれる天然酵母パン製造に使用される添加酵母のうち、パン製造に使用する添加酵母を自ら培養及び育種する必要があるものを言い、これを種おこし作業という。種おこし作業が必要なパンを天然酵母パンという。種おこし作業は、主に以前使用した天然酵母パン種に水や小麦粉などを加えて種継ぎを行う。この時、原材料に付着して乳酸菌などが混入し、天然酵母パン種中で増殖し、焼成後のパンに酸味等をはじめとする独特の風味が付与されるが、制御が困難なため過剰な酸味を発生することが問題とされてきた。その他、一般雑菌やカビが混入し、天然酵母パン種が腐敗することもある。この雑菌汚染や過剰な酸味の発生を抑制するため、従来の解決手段として、生モト酒母から分離された乳酸菌添加で解決する方法(特許文献8)があるが、分離源が異なるため本発明とは一致しない。また、生米等の乳酸菌発酵物を磨砕して得た乳液状の発酵種を、パンの第一次原料粉に添加混捏し、乳酸発酵のみを先行させて乳酸生地を一旦製出し、この乳酸生地に、第二次原料を添加混合してパン生地を製出し、常法通り製パンを行う方法(特許文献9)、さらに乳酸発酵を選考させる方法として茶葉中で増殖させた茶葉エキスで乳酸菌のみの発酵を行わせる方法(特許文献10)がある。しかしながら、これらは乳酸菌数を増加させる培養基質についての発明であり、本発明とは一致しない。そこで、低温で生育に優れた本乳酸菌を添加することで、低温とpH低下によって一般微生物の増殖抑制を実現し、常に安定した品質で酸味が少なく好ましい風味を維持できる天然酵母種の開発を目指す。さらに、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【0030】
生鮮畜肉類や魚類をはじめとする水産品の発酵食品は発酵ソーセージや各種みそ漬け、いずし、麹漬け、みりん漬けなどが代表的である。生鮮畜肉類や魚類をはじめとする水産品をもちいた発酵ソーセージは酸味が強く風味に特徴があるため日本人にあまり好まれないが、添加する乳酸菌の増殖速度にくらべて、より早い雑菌が増殖する場合が多々あるため、低温で増殖速度が極めて速乳酸菌で短時間発酵させることで雑菌の増殖を抑制し、酸味が少なく日本人の味覚に好ましい発酵ソーセージ類を開発する。さらに、系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【0031】
ハタハタずしやいずし類をはじめとする水産加工品とは、魚類などを塩と米と米麹をはじめとする漬け床につけ込み熟成した食品である。ぬか漬けとは、精米時に発生する米ぬかと食塩をはじめとする漬け床につけ込み熟成させた食品である。塩辛とは原材料を食塩でつけ込んだ食品である。これらはいずれも原材料に付着して混入した乳酸菌によるpHの低下や塩分を高くすることで保存性を向上していた。しかし、時間の経過とともに原材料に付着して混入した乳酸菌や酵母により酸敗や接着剤臭などの異臭を発生するため安定した品質の食品を提供するのは困難である。また、近年の低塩分志向から低塩化が進められているが、その場合日持ちが極端に短く、日持ち向上剤や保存料を添加しない限り製品化は困難である。そこで、低温で優れた増殖と乳酸産生能を有する本乳酸菌で水産加工品を発酵させることで雑菌の増殖を抑制し、短期間で発酵を終了させ、低塩分で風味豊かな発酵食品の製造を行う。さらに、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【0032】
発酵乳製品とはヨーグルトやチーズ、発酵バター、発酵乳飲料などが代表的である。これらの製造に低温で増殖可能で耐塩性に優れた本乳酸菌の特性を活かしたスターターの開発を行う。さらに、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成を目指す。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、発酵食品用乳酸菌を自然界より分離するにあたり、自然からのストレス負荷が大きく且つ未開の土壌である北緯40度以北の温帯落葉広葉樹林帯の腐葉土を分離源とし、低温で良好な生育を示し、乳酸産生能に優れ、糖質資化性に特徴を持った乳酸菌について鋭意研究した結果、メリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖資化性を失った乳酸菌 ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株を新規に分離したことで、本発明を完成した。
【0034】
本発明は、低温で良好な生育を示し、乳酸産生能に優れ、マルトース及びメリビオース資化性を失った新規な乳酸菌 ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株に関するものである。上記したように、乳酸菌は古来より食習慣があるため安全性の面で心配がなく、本乳酸菌は漬け物、みそ、しょうゆ、清酒やビール、ワインをはじめとする酒類、乳発酵食品、パン、乳発酵飲料など様々な発酵食品や発酵飲料に利用可能である。また本乳酸菌は低温で良好な生育を示し、系中に乳酸を生成することから、発酵食品や発酵飲料製造中において一般雑菌の生育しない10℃以下において低pH状態を作り出すことで、一般雑菌の汚染が少ない安全な醸造と低塩化が可能となり、腐敗や品質低下を防ぐことが可能である。さらに本乳酸菌はメリビオース及びマルトース発酵性を失い、さらに、ラフィノース及びマルトオリゴ糖及びイソマルトオリゴ糖発酵性を失っているため、系中に、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、製品にラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の付与が可能である。
【0035】
本乳酸菌は低温で良好な生育を示し、低温においても良好な乳酸産生能を有することを確認した。低温増殖性に優れるとされ、高品質な生モト清酒又は山廃清酒製造に貢献しているとされるラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌は、1934年に新種として生モト酒母より分離され、NBRC 3541株として保存されている。例えば本乳酸菌KLB 3138aC株と、生モト酒母より分離された同種の乳酸菌NBRC 3541株をはじめとするその他の同種株を、酒母やもろみ中に添加し低温で乳酸発酵を行わせた結果、系中においてKLB 3138aC株の乳酸生成能が最も優れていることが明らかとなった。その結果、酒母期間の大幅な短縮が可能になるほか、酒母又はもろみ初期温度を一般雑菌などの増殖速度が遅い低温に保つことが可能となり、腐敗や品質低下を防ぐことが可能である。本乳酸菌を用いると系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、系中により多くのマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存することから、ふくらみある風味を有する清酒製造が可能となる。
【0036】
さらに、本乳酸菌は低温での増殖に優れ、食塩濃度8%またはアルコール濃度7.5%の環境でも生育する特性から、生鮮畜肉や魚類をはじめとする水産品やそれらの麹漬け、塩漬けやぬか漬けあるいは麹漬け野菜、豆乳、牛乳に本乳酸菌を接種したところ、良好に生育し、良好な香気とさわやかな酸味や特徴的な甘みを有するふくらみある風味を確認することで本発明を完成した。
【0037】
米と米麹と水からなる甘酒に本乳酸菌を接種し発酵させた乳酸発酵甘酒から良好な香気とさわやかな酸味や特徴的な甘みを有するふくらみある風味を確認した。この乳酸発酵甘酒を用いて肉や魚類や野菜などの麹漬けを低温度で試作したところ、原材料に由来する一般細菌の増殖を乳酸と低温度が抑制するため微生物的に安定で、原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、メリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味を有する麹漬けを短時間で製造できた事で発明を完成した。
【発明の効果】
【0038】
本発明のラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株は低温増殖性に優れ、低温培養時における乳酸産生能も優れていた。さらに、ラクトバシラス・サケイにもかかわらず、メリビオース発酵性を失っており、マルトース発酵性をも失った、非常めずらしい糖質発酵性を有していたことから、様々な環境において系中にマルトースを残存させることが可能であり、特徴的な甘みを有する風味に優れた発酵食品の開発が可能である。本乳酸菌はつわり香や菌臭といった異臭の発生がほとんど無いという特性を持つ。その他、食塩濃度5%以下またはアルコール濃度5%の環境で良好に生育でき、食塩濃度最大8%または、アルコール濃度最大7.5%の環境でも生育できる。乳酸菌は古来より食習慣があるため安全性の面では問題がなく、本乳酸菌を発酵スターターとして活用することにより、従来の乳酸発酵食品を低温で安全に製造できるほか、乳酸発酵物に特徴ある甘みに起因するふくらみある風味を簡単に付与できる。清酒製造においては、従来の生モト酒母又は山廃酒母製造に必要な日数約21日を7〜14日に短縮でき、さらに極めて低温での醸造が可能となり、雑菌による異味異臭を伴わないマルトースに起因するふくらみある風味の清酒製造が可能である。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明に用いられる乳酸菌KLB 3138aC株は次の方法で腐葉土より分離した。
[菌株の分離と同定] 本乳酸菌は秋田県山本郡八森町の世界自然遺産「白神山地」緩衝地域より所管官庁の許可を得て採取した腐葉土0.1gをアジ化ナトリウム20ppm,クロラムフェニコール20ppm,塩化ナトリウム0.9%, 蒸留水5mlの組成からなる生理食塩水中に縣濁した後、この縣濁液1mlを、アジ化ナトリウム20ppm,クロラムフェニコール20ppm,炭酸カルシウム0.8%, 寒天1%を加えたLactobacilli MRS培地(組成:プロテオースペプトン1%、牛肉エキス1%、酵母エキス0.5%、ブドウ糖2%、Tween 80 0.1%、クエン酸アンモニウム0.5%、硫酸マグネシウム0.01%、硫酸マンガン0.005%、リン酸二カリウム0.2%、ディフコ社製)20mlの組成からなるMRS寒天培地で混釈培養を行い、30℃,3日間培養し純粋に分離したものである。
【0040】
このように分離した乳酸菌から、炭酸カルシウムを含むMRS寒天培地に対するクリアゾーンの大きさを指標として、高い乳酸産生能を有する乳酸菌を選択した。選択した乳酸菌は16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析(Mori, K. et al.:Int. J. Syst. Bacteriol., 47巻、54-57 、1997)及び、DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)さらに、糖質の発酵性について検討を行い、微生物の同定と菌学的性質の決定を行った。
【0041】
16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析(Mori, K. et al.:Int. J. Syst. Bacteriol., 47巻、54-57 、1997) によりラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と1439bp中98.7%の相同性を示し、さらに、生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と1434bp中99.7%の相同性を示したため、本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌と推定された。
【0042】
乳酸菌の同定に重要な意義を持つ糖質の発酵性において、特にラクトバシラス・サケイとラクトバシラス・カルバタス及びラクトバシラス・カゼイの分類にはマンニトール及びメリビオース発酵性が重要視される。ラクトバシラス・サケイはメリビオース発酵性を有し、マンニトールは発酵しない。ラクトバシラス・カゼイはマンニトール発酵性を有し、メリビオースは発酵しない。ラクトバシラス・カルバタスはメリビオースとマンニトールの両方を発酵しない。本乳酸菌KLB 3138aC株は、マンニトール及びメリビオースの両方を発酵しないため、ラクトバシラス・カルバタスに属する乳酸菌の可能性が示唆された。しかしながら、糖質発酵性試験の結果をラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と比べるとマルトース及びメリビオースの発酵性を失っている点を除いて一致したが、ラクトバシラス・カルバタスやラクトバシラス・カゼイとはほとんど一致しなかった。故に本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると推定された。
【0043】
DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)により、ラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と70%以上のハイブリッドを形成し、ラクトバシラス・カルバタスやラクトバシラス・カゼイを含む他の乳酸菌株とは50%以下のハイブリッドを形成した。故に本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると同定された。
【0044】
このように分離した乳酸菌KLB 3138aC株は、16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析によりラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と1439bp中98.7%の相同性を示し、さらに、生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と1434bp中99.7%の相同性を示したこと、DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)により、ラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と70%以上のハイブリッドを形成し、ラクトバシラス・カルバタスを含む他の乳酸菌株とは50%以下のハイブリッドしか形成しないこと、糖質の発酵性がラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と比べてマルトース及びメリビオースの発酵性を失っている点を除いて一致したこと等の性質から本乳酸菌はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると同定した。しかし、16S rDNAにおいて100%の相同性を示さず、DNA-DNAハイブリダイゼーション法においても100%のハイブリッドを形成しないことや、糖質発酵性においてラクトバシラス・サケイの決定要因であるメリビオース発酵性を有しないことから、公知菌とは明らかに異なる新規な菌株と認め、本菌をラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株と命名した。
【0045】
Sneath, P. H. A.らの方法[Bergey's Manual of Systematic Bacteriology volume 2]で調べた本乳酸菌KLB 3138aC株のその他の菌学的性質は、菌体の形:桿菌、グラム染色性:陽性、胞子形成:陰性、カタラーゼ活性:陰性、運動性:陰性であった。
【0046】
本菌株ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに17 産生寄 第 245号(FERM AP−20731)として寄託されている。
【0047】
本発明に用いられる乳酸菌KLB 3138aC株の低温増殖性は次の方法により決定した。
【0048】
Lactobacilli MRS培地にて純粋培養したラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株 (以下、JCM 1157株と記す)と生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株 (以下、NBRC 3541株と記す)及び本菌株ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株 (以下、KLB 3138aC株と記す)をそれぞれ5℃または10℃または15℃で培養し、増殖の程度をA600で経時的に調べた。
【0049】
本乳酸菌をはじめとするその他のラクトバシラス・サケイが酒類の製造中において系中に酸を産生することは、次の方法にて確認した。
【0050】
酒類のうち清酒を例とし、酒母やもろみのモデル系として甘酒を作成した。甘酒は、米と米麹と水を1:1:2の割合で混合し、60℃で4時間糖化後、80℃で2時間殺菌して調整した。この甘酒に本乳酸菌やその他のラクトバシラス・サケイを植菌し、30℃で培養したところ、pHの低下が認められた。さらに、米と米麹と水を1:1:3の割合で混合し、55℃で2時間糖化後8℃まで冷却した甘酒に、本乳酸菌やその他のラクトバシラス・サケイを植菌し、8℃で培養したところ、pHの低下が認められた。さらに、ジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもない、非常に高品質な乳酸発酵甘酒ができたことから、清酒においてもつわり香などのない高品質な発酵を行うことができる。
【0051】
本発明に用いられる乳酸菌KLB 3138aC株の食塩耐性やアルコール耐性は次の方法により決定した。
【0052】
食塩耐性は、Lactobacilli MRS培地にて純粋培養した菌体を、0〜8%(w/v)になるように1%刻みで塩化ナトリウムを加えたLactobacilli MRS培地にて培養し、上清中の濁度の変化を調べた。アルコール耐性は、Lactobacilli MRS培地にて純粋培養した菌体を、0〜17.5%(w/v)になるように2.5%刻みで99.5%エタノールを加えたLactobacilli MRS培地にて培養し、上清中の濁度の変化を調べた。その結果、食塩濃度5%、アルコール濃度5%まで良好に生育することがわかった。食塩濃度8%またはアルコール濃度7.5%まで生育可能であった。
【0053】
次に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0054】
以下、本菌株または本菌または本乳酸菌とはラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株 (以下、KLB 3138aC株と記す)を示す。その他のラクトバシラス・サケイとは、ラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株 (以下、JCM 1157株と記す)と生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株 (以下、NBRC 3541株と記す)を示す。ラクトバシラス・カルバタスとは、標準菌株であるラクトバシラス・カルバタス JCM 1096株 (以下、ラクトバシラス・カルバタスまたはJCM 1096株と記す)を、ラクトバシラス・カゼイとは、標準菌株であるラクトバシラス・カゼイ JCM 1134株(以下、ラクトバシラス・カゼイまたはJCM 1134株と記す)を示す。
【実施例1】
【0055】
ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株の分離と同定
【0056】
秋田県山本郡八森町の世界自然遺産「白神山地」緩衝地域より所管官庁の許可を得て採取した腐葉土0.1gをアジ化ナトリウム20ppm,クロラムフェニコール20ppm,塩化ナトリウム0.9%, 蒸留水5mlの組成からなる生理食塩水中に縣濁した後、この縣濁液1mlを、アジ化ナトリウム20ppm,クロラムフェニコール20ppm,炭酸カルシウム0.8%, 寒天1%を加えたLactobacilli MRS培地(組成:プロテオースペプトン1%、牛肉エキス1%、酵母エキス0.5%、ブドウ糖2%、Tween 80 0.1%、クエン酸アンモニウム0.5%、硫酸マグネシウム0.01%、硫酸マンガン0.005%、リン酸二カリウム0.2%、ディフコ社製)20mlの組成からなるMRS寒天培地で混釈培養を行い、30℃,3日間培養し純粋に分離した。
【0057】
このように分離した乳酸菌から、炭酸カルシウムを含むMRS寒天培地に対するクリアゾーンの大きさを指標として、高い乳酸産生能を有する乳酸菌を選択した。選択した乳酸菌は16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析(Mori, K. et al.:Int. J. Syst. Bacteriol., 47巻、54-57 、1997)及び、DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)さらに、糖質の発酵性について検討を行い、菌学的性質の決定を行った。
【0058】
16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析(Mori, K. et al.:Int. J. Syst. Bacteriol., 47巻、54-57 、1997) によりラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と1439bp中98.7%の相同性を示し、さらに、生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と1434bp中99.7%の相同性を示したため、本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌と推定された。
【0059】
乳酸菌の同定に重要な意義を持つ糖質の発酵性において、特にラクトバシラス・サケイとラクトバシラス・カルバタス及びラクトバシラス・カゼイの分類にはマンニトール及びメリビオース発酵性が重要視される。ラクトバシラス・サケイはメリビオース発酵性を有し、マンニトールは発酵しない。ラクトバシラス・カゼイはマンニトール発酵性を有し、メリビオースは発酵しない。ラクトバシラス・カルバタスはメリビオースとマンニトールの両方を発酵しない。本乳酸菌KLB 3138aC株は、マンニトール及びメリビオースの両方を発酵しないため、ラクトバシラス・カルバタスに属する乳酸菌の可能性が示唆された。しかしながら、糖質発酵性試験の結果をラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と比べるとマルトース及びメリビオースの発酵性を失っている点を除いて一致したが、ラクトバシラス・カルバタスやラクトバシラス・カゼイとはほとんど一致しなかった。故に本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると推定された。
【0060】
DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)により、ラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と70%以上のハイブリッドを形成し、ラクトバシラス・カルバタスやラクトバシラス・カゼイを含む他の乳酸菌株とは50%以下のハイブリッドを形成した。故に本乳酸菌KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると同定された。
【0061】
このように分離した乳酸菌KLB 3138aC株は、16SリボソームDNA(rDNA)の塩基配列の相同性の解析によりラクトバシラス・サケイの標準菌株であるラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と1439bp中98.7%の相同性を示し、さらに、生モト酒母より分離されたラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と1434bp中99.7%の相同性を示したこと、DNA-DNAハイブリダイゼーション法(Ezaki, T. et al.: J. Clin. Microbiol., 26巻、1708-1713 、1988)により、ラクトバシラス・サケイ JCM 1157株と70%以上のハイブリッドを形成し、ラクトバシラス・カルバタスを含む他の乳酸菌株とは50%以下のハイブリッドしか形成しないこと、糖質の発酵性がラクトバシラス・サケイ NBRC 3541株と比べてマルトース及びメリビオースの発酵性を失っている点を除いて一致したこと等の性質から本乳酸菌はラクトバシラス・サケイに属する菌株であると同定した。
【0062】
しかし、16S rDNAにおいて100%の相同性を示さず、DNA-DNAハイブリダイゼーション法においても100%のハイブリッドを形成しないことや、糖質発酵性においてラクトバシラス・サケイの決定要因であるメリビオース発酵性を有しないことから、公知菌とは明らかに異なる新規な菌株と認め、本菌をラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC株と命名した。
【0063】
Sneath, P. H. A.らの方法[Bergey's Manual of Systematic Bacteriology volume 2]で調べた本乳酸菌KLB 3138aC株のその他の菌学的性質は、菌体の形:桿菌、グラム染色性:陽性、胞子形成:陰性、カタラーゼ活性:陰性、運動性:陰性であった。
【0064】
本菌の同定に関する知見を表1に示す。
【0065】
【表1】

【実施例2】
【0066】
本乳酸菌KLB 3138aC株とその他ラクトバシラス・サケイの糖質発酵性の比較
【0067】
本菌の糖質発酵性とその他のラクトバシラス・サケイ株及びラクトバシラス・カルバタス、ラクトバシラス・カゼイの糖質発酵性を調べ、比較を行った。その結果、KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイの特徴であるメリビオース発酵性を示さないことがわかった。メリビオース発酵性とマルトース発酵性を有しない他は、生モト酒母より分離されたNBRC 3541株とほぼ同等の糖質発酵性を示すことから、標準株JCM 1157株に比べてNBRC 3541株と近縁である可能性が考えられた。また、ふくらみのある甘みを呈するマルトース発酵性を持たないことから、KLB 3138aC株を使用した発酵食品は、従来のラクトバシラス・サケイを利用した発酵食品に比べ特徴的な甘みを有するマルトースをより多く含んだ食品になる可能性が示唆された。本菌の糖質発酵性とその他のラクトバシラス・サケイ株及びラクトバシラス・カルバタス、ラクトバシラス・カゼイの糖質発酵性を表2に記す。
【0068】
【表2】

【実施例3】
【0069】
本乳酸菌KLB 3138aC株とその他ラクトバシラス・サケイのマルトオリゴ糖発酵性の比較
【0070】
本菌の糖質発酵性とその他のラクトバシラス・サケイ株のマルトオリゴ糖類またはイソマルトオリゴ糖類の発酵性を調べ、比較を行った。その結果、KLB 3138aC株はグルコースが2個結合したマルトース、3個結合したマルトトリオース、4個結合したマルトテトラオースを発酵しないことがわかった。また、グルコースを含むマルトオリゴ糖混合物であるモルトエキス発酵性についても弱いことがわかった。イソマルトオリゴ糖も発酵しないことがわかった。従来株は、マルトース発酵性を示し、イソマルトオリゴ糖発酵性も示すことから、本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた発酵産物は、系中に原材料由来のマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存することがわかった。KLB 3138aC株を使用した発酵食品は、従来のラクトバシラス・サケイを利用した発酵食品に比べ特徴的な甘みを有するマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖及びイソマルトオリゴ糖をより多く含んだ食品になる。本菌の糖質発酵性とその他のラクトバシラス・サケイ株の糖質発酵性を表3に記す。
【0071】
【表3】

【実施例4】
【0072】
本乳酸菌KLB 3138aC株とその他のラクトバシラス・サケイの生育に与える培養温度の影響比較
【0073】
本乳酸菌KLB 3138aC株とその他のラクトバシラス・サケイで、培養温度を5℃、10℃、15℃に設定したのち所定時間静置培養し、本菌の生育状態について調べた。培養温度を変化させた場合の増殖量をA600(吸光度600nm) で測定した。
【0074】
培養温度を5℃で培養した結果を図1に、10℃で培養した結果を図2に、15℃で培養した結果を図3に示した。KLB 3138aC株とNBRC 3541株は温度帯にかかわらずJCM 1157株と比較して生育が良く、JCM 1157株は低温増殖性が劣る株だとわかった。また、KLB 3138aC株とNBRC 3541株では、KLB 3138aC株の方が初期生育及び最高濁度で良好であった。
【0075】
KLB 3138aC株はその他のラクトバシラス・サケイと比較して低温増殖性に優れることがわかった。5℃でも良好な生育を示すことから、一般雑菌の増殖できない低温環境中で発酵食品の製造が可能になる。
【実施例5】
【0076】
本乳酸菌KLB 3138aC株の食塩耐性とアルコール耐性
【0077】
本乳酸菌の食塩耐性とアルコール耐性は次のようにして調べた。食塩耐性は、Lactobacilli MRS培地にて純粋培養した菌体を、0.8%(w/v)になるように1%刻みで塩化ナトリウムを加えたLactobacilli MRS培地にて培養し、上清中の濁度の変化を調べた。アルコール耐性は、Lactobacilli MRS培地にて純粋培養した菌体を、0〜17.5%(w/v)になるように2.5%刻みで99.5%エタノールを加えたLactobacilli MRS培地にて培養し、上清中の濁度の変化を調べた。
【0078】
結果を図4と図5に示す。図4は食塩耐性試験における濁度変化を示す。図5は本乳酸菌のアルコール耐性試験における濁度変化を示している。その結果、KLB 3138aC株は食塩濃度5%、アルコール濃度5%まで良好に生育することがわかった。また、図には示されていないが、培養開始後96時間以降では、食塩濃度8%及びアルコール濃度7.5%における生育を確認した。この結果より、本乳酸菌を利用した高含塩発酵食品への利用が可能だと認められた。また、アルコール濃度7.5%まで生育できることから、酵母などによるアルコール発酵と並行して本乳酸菌による乳酸生成が可能であると認められた。
【0079】
以上、実施例1〜5によって新規に得られた知見をまとめると、本菌株KLB 3138aC株はラクトバシラス・サケイに属する乳酸菌であるが、公知の菌株とは明らかに異なる新規な乳酸菌であり、生モトまたは山廃酒母製造に従来利用されてきたその他のラクトバシラス・サケイ株よりも低温における増殖性及び乳酸産生能に優れる。さらに食塩濃度5%、アルコール濃度5%まで良好に生育し、生育は遅れるが食塩濃度8%及びアルコール濃度7.5%まで増殖可能であった。また、ラフィノース発酵性及びメリビオース発酵性及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類発酵性及びイソマルトオリゴ糖類発酵性を失っていることから、KLB 3138aC株による発酵終了後は、系中に原材料に由来するこれらオリゴ糖類が多量に残存し、従来株では不可能な特徴を持った製品開発が期待できる。
【実施例6】
【0080】
高温糖化酒母を使用した本乳酸菌KLB 3138aC株とその他のラクトバシラス・サケイの乳酸生産性比較
【0081】
本乳酸菌をはじめとするその他のラクトバシラス・サケイが酒類の製造中において系中に乳酸を産生することは、次の方法にて確認した。
【0082】
酒類のうち清酒を例とし、酒母やもろみのモデル系として高温糖化酒母を作成した。蒸米とアルコール脱水麹と水を2:4:5の割合で混合し60℃で2時間糖化して高温糖化酒母を調整した。高温糖化酒母に本乳酸菌やその他のラクトバシラス・サケイを植菌し、30℃で12時間静置培養し、pHの低下を測定した。また、できあがった乳酸発酵酒母の官能試験を行った。
【0083】
その結果、いずれの乳酸菌を使用した場合もpHの低下が認められたことから、本乳酸菌は清酒原材料中で生育できることが確認された。本乳酸菌を用いた乳酸発酵酒母からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵酒母ができたことから、清酒においてもつわり香などがなく、麹又は酵母を選択することで、系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。原材料の蒸米を蒸煮もち米にしたみりんにおいても同様の結果が得られた。
【実施例7】
【0084】
モデル酒母を使用した本乳酸菌KLB 3138aC株とその他のラクトバシラス・サケイの低温環境下における乳酸生産性比較
【0085】
本乳酸菌をはじめとするその他のラクトバシラス・サケイが酒類の製造中において系中に低温で乳酸を産生することは、次の方法にて確認した。
【0086】
酒類のうち清酒を例とし、酒母やもろみのモデル系としてモデル酒母を作成した。蒸米と米麹と水を2:4:5の割合で混合してモデル酒母とした。JCM 1157株が低温増殖性に劣ることは前述の通りであるため、モデル酒母に本乳酸菌あるいはNBRC 3541株を、1mlあたり10の6乗個となるように植菌し、実際の酒母に近い温度である8℃で所定時間静置培養し、低温における乳酸産生の指標として酸度を経時的に測定した。また、できあがった乳酸発酵酒母の官能試験を行った。
【0087】
その結果を図6に示す。モデル酒母を用いて8℃で低温培養した場合、本乳酸菌は従来菌であるNBRC 3541株に比べて良好な乳酸産生能を示した。一般に清酒酵母が選択的に増殖を始める酸度である酸度 2.5を目標とした場合、KLB 3138aC株はNBRC 3541株に比べて4日早い7日で到達した。故に、酒母またはもろみ製造時に本乳酸菌を添加することで従来菌を添加した場合よりも酒母期間の大幅な短縮が可能となる。さらに、本乳酸菌を用いた乳酸発酵酒母からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵酒母ができたことから、清酒においてもつわり香などがなく、麹又は酵母を選択することで、系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。原材料の蒸米を蒸煮もち米にしたみりんにおいても同様の結果が得られた。
【実施例8】
【0088】
モデル酒母における本乳酸菌KLB 3138aC株の添加量と酸度
【0089】
酒類の製造期間短縮を目的に本乳酸菌添加量と低温における乳酸産生量を測定することは、次の方法にて確認した。
【0090】
酒類のうち清酒を例とし、酒母やもろみのモデル系としてモデル酒母を作成した。蒸米と米麹と水を2:4:5の割合で混合してモデル酒母とした。モデル酒母に本乳酸菌を、1mlあたり10の6乗個または、10の8乗個または、10の10乗個となるように植菌し、実際の酒母に近い温度である8℃で所定時間静置培養し、低温における乳酸産生の指標として酸度を経時的に測定した。また、できあがった乳酸発酵酒母の官能試験を行った。酵母添加時期を計る酸度として、酸度1.8〜2.5の範囲を目標とした。
【0091】
その結果を図7に示す。本乳酸菌を1mlあたり10の10乗個添加した場合、培養2日目で酸度3を超えたことから、培養1日目の酸度は1.8〜2.3と予想された。この結果より、乳酸菌添加と同時に酵母添加が可能であり、その他、本乳酸菌添加後8℃で1日培養して酵母添加が適当だとわかった。同様に、本乳酸菌を1mlあたり10の8乗個添加した場合の酵母添加時期は、乳酸菌培養開始後4〜5日目、10の6乗個添加した場合の酵母添加時期は、乳酸菌培養開始後6〜7日目に酵母添加すればよいことがわかった。これらの結果から、従来の生モト酒母又は山廃酒母に必要であった7〜14日間の乳酸発酵期間を、酒母期間短縮を目的とした従来技術のように仕込み温度を高温にするといった特別な操作を行わずとも、通常の速醸酒母と同程度の品温経過で生モト酒母又は山廃酒母の乳酸発酵期間を0日または1〜7日で育成することができた。さらに、本乳酸菌を用いた乳酸発酵酒母からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵酒母ができたことから、清酒においてもつわり香などがなく、麹又は酵母を選択することで系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。原材料の蒸米を蒸煮もち米にしたみりんにおいても同様の結果が得られた。
【0092】
以上、実施例6から8によって新規に得られた知見をまとめると、本菌株KLB 3138aC株は清酒酒母中で良好な乳酸生成能を持つ。生モト酒母より分離され、生モトまたは山廃酒母製造に従来利用されたNBRC 3541株に比べ低温における乳酸生成能にすぐれ、酒母製造における乳酸発酵期間を特別な操作なしに0日または1から7日と従来に比べ大幅に短縮できた。さらに、通常の速醸酒母と同程度の品温経過で生モト酒母又は山廃酒母を育成できる。本乳酸菌を用いた乳酸発酵酒母からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵酒母ができたことから、清酒においてもつわり香などがなく、麹又は酵母を選択することで系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。原材料の蒸米を蒸煮もち米にしたみりんにおいても同様の結果が得られた。
【実施例9】
【0093】
農水畜産物搾汁液又は麦汁における本乳酸菌KLB 3138aC株の増殖
【0094】
農水畜産物搾汁液又は麦汁を用いた酒類の製造を目的に本乳酸菌添加量と低温における乳酸産生量を測定することは、次の方法にて確認した。
【0095】
ワインのモデルとしてブドウジュースを、ビールのモデルとしてビールモルトを用意した。ブドウジュースまたはビールモルトに本乳酸菌を、1mlあたり10の6乗個植菌し、10℃で所定時間静置培養し、低温における乳酸産生の指標として酸度を経時的に測定した。
【0096】
その結果、本乳酸菌は良好な乳酸産生能を示した。さらに、ジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵酒母ができたことから、製成酒においてもつわり香などがなく、酵母を選択することで系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例10】
【0097】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた乳酸発酵甘酒および乳酸発酵麦エキスの製造法
【0098】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いて様々な食品へ利用できる乳酸発酵甘酒および乳酸発酵麦エキスの製造方法を確立する。
【0099】
あらかじめ本乳酸菌KLB 3138aC株を5mlのLactobacilli MRS培地で30℃にて一晩培養した培養液、全量を遠心分離にて集菌しておき、乳酸菌菌体5mlとして使用した。乳酸発酵甘酒の原料には米と米麹と水を使用し、乳酸発酵麦エキスの原料には例として小麦と小麦麹と水を使用した。それぞれの比率は米と米麹と水または小麦と小麦麹と水をそれぞれ1:1:2の割合で混合した。これら混合物を55℃で糖化を行い加熱殺菌した糖化液を造り、この糖化液100gに対して乳酸菌菌体5mlを添加し、30℃で1日間培養した。乳酸菌の生育はpHの低下にて確認した。
【0100】
両方ともpHの低下が認められ、また、本乳酸菌以外検出されなかったため、雑菌汚染のない乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスが得られた。本乳酸菌を加えて調整した乳酸発酵甘酒または乳酸発酵麦エキスはマルトースが豊富に含まれた独特の甘みが非常に特徴的であり、酸味が緩和されていた。本乳酸菌を用いた乳酸発酵物からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵物ができる。さらに、pHを安定させたい場合は、培養終了後、80℃にて1時間加熱殺菌を行うとよい。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例11】
【0101】
本乳酸菌KLB 3138aC株における畜肉及び魚類をはじめとする水産品での増殖性
【0102】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた発酵食品の開発を目的に、生の畜肉及び魚類に本乳酸菌を接種し増殖特性について検討した。
【0103】
生畜肉として豚の挽肉を、また、生魚としてハタハタを用意し、それぞれに対して3%塩化ナトリウムを加えた。あらかじめ、本乳酸菌KLB 3138aC株を5mlのLactobacilli MRS培地で30℃にて一晩培養した培養液、全量を遠心分離にて集菌しておいた。100gの豚肉及びハタハタに対して本乳酸菌KLB 3138aC株の5ml一晩培養液分の菌体を添加し、15℃で24時間培養を行い、発酵肉又は発酵魚を製造した。対照として、乳酸菌非添加区を用意した。さらに、豚挽肉に3%塩化ナトリウムを加え、豚挽肉100gに対して5ml分の一晩培養液から集菌したの本乳酸菌の菌体のみを加え、良く混合した後、羊の腸または豚の腸に詰め、15℃にて24時間培養することで、発酵ソーセージを作った。乳酸菌の生育はpHにて確認した。
【0104】
乳酸菌を添加した発酵肉や発酵魚は発酵終了後、やや酸臭を伴ったがフライパン又は焼き網で焼いて試食したところ、酸臭や酸味は感じられなかった。一方、乳酸菌を添加しなかった肉や魚では強い酸臭と腐敗臭が感じられたため、試食を行わなかった。乳酸菌を添加した肉や魚からは、pHの低下が認められた。発酵ソーセージは、発酵終了後軽い酸臭が認められたが、沸騰水中で10分煮た後試食したところ、香りや味の変化は認められなかった。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例12】
【0105】
含塩食品中における本乳酸菌KLB 3138aC株の増殖
【0106】
含塩食品の風味改善を目的に本乳酸菌の5%または8%食塩を加えた蒸煮ダイズまたはハタハタにおける乳酸産生量を測定することは、次の方法にて確認した。
【0107】
含塩食品のうち、植物性原料の含塩食品例として味噌、醤油の主原料である大豆を例に挙げ、蒸煮大豆を用意し、蒸煮大豆重量に対して5%または8%となるように食塩を加えた。また、動物性原料の高含塩食品例として魚醤油やいずしの原料であるハタハタを用意した。ハタハタは内臓を取り除いた後、流水にて充分洗浄後1%酢酸溶液に10分間浸漬し、一般雑菌を殺菌した。このハタハタ重量に対して5%または8%となるように食塩を加えた。本乳酸菌を蒸煮大豆またはハタハタ100gあたり10の6乗個植菌し、15℃で1週間培養した。本乳酸菌増殖の指標として酸度を経時的に測定した。
【0108】
その結果、8%食塩添加区においても順調な酸度の上昇が認められたことから、上記系中において本乳酸菌は良好に生育することが確認された。この乳酸発酵大豆からは、本乳酸菌以外の一般細菌は分離されなかった。これは原料の殺菌の他、本乳酸菌の生成する乳酸によって系中のpHが低下し、一般細菌の増殖を抑制したためと考えられる。この様に含塩食品中における本乳酸菌KLB 3138aC株の増殖が認められた。本乳酸菌を含塩所品である味噌や醤油、魚醤油、いずし製造に使用することで、より風味豊かな含塩食品の製造が可能である。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例13】
【0109】
含塩発酵食品の過剰発酵を防止する製造方法及びその製造方法を用いた含塩発酵食品
【0110】
含塩食品の乳酸発酵には一般に好塩性乳酸菌が利用されるが、殺菌しない場合強い酸味を呈する過剰発酵がたびたび問題となる。この問題を解決する目的で次の実験を行った。
【0111】
含塩食品のうち、例として味噌及び醤油及びハタハタの魚醤油について検討した。味噌は蒸煮大豆に実施例10で得られた未殺菌の乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して10%〜17%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で3ヶ月熟成させた。醤油は蒸煮大豆に実施例10で得られた未殺菌の乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して15%〜20%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で熟成させた。ハタハタの魚醤油は、ハタハタを流水で良く洗浄後、1% 酢酸溶液に10分間浸漬して殺菌したハタハタに実施例10で得られた未殺菌の乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して20%〜35%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で熟成させた。
【0112】
その結果、いずれの食塩添加区からも酸度の上昇が認められなかったことから、上記系中において本乳酸菌は過剰発酵をおこさず、高含塩食品に乳酸発酵風味を付与することが確認された。本乳酸菌以外の一般細菌は分離されなかった。これは原料の殺菌の他、本乳酸菌の生成する乳酸によって系中のpHが低下し、一般細菌の増殖を抑制したためと考えられる。この様に、過剰発酵を防止することが出来た。また、本乳酸菌を用いた乳酸発酵物からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵物ができた。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例14】
【0113】
含塩発酵食品の低塩化製造方法及びその製造方法を用いた含塩発酵食品
【0114】
近年の消費者嗜好から含塩食品の低塩化が期待されている。本乳酸菌をもちいた低塩化味噌、醤油、魚醤油の製法について検討した。
【0115】
含塩食品のうち、例として味噌及び醤油及びハタハタの魚醤油について検討した。味噌は蒸煮大豆に実施例10で得られた殺菌した乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して8%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で3ヶ月熟成させた。醤油は蒸煮大豆に実施例10で得られた殺菌した乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して15%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で熟成させた。ハタハタの魚醤油は流水で良く洗浄後、1% 酢酸溶液に10分間浸漬して殺菌したハタハタに実施例10で得られた殺菌した乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスを加え、全量に対して17%の食塩を加え、ミンサーにかけて30℃で熟成させた。
【0116】
その結果、いずれの食塩添加区からも酸度の上昇が認められず、異常発酵も認められなかったことから、高含塩食品の低塩化を検討する場合において、殺菌した本乳酸菌による乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスを加えることは、有効だと考えられた。本乳酸菌以外の一般細菌は分離されなかった。これは原料の殺菌の他、本乳酸菌の生成する乳酸によって系中のpHが低下し、一般細菌の増殖を抑制したためと考えられる。また、本乳酸菌を用いた乳酸発酵物からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵物ができた。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例15】
【0117】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた豆乳ヨーグルトの製造及び利用
【0118】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた豆乳ヨーグルトの開発を、次の方法により検討した。
【0119】
本乳酸菌KLB 3138aC株を1mlのLactobacilli MRS培地で30℃にて一晩培養した培養液、全量を遠心分離にて集菌しておいた。市販の豆乳「成分無調整豆乳」(株式会社 紀文フードケミファ社製)100mlに対して本乳酸菌KLB 3138aC株の1ml一晩培養液分の菌体を添加し、30℃で16時間培養を行い、豆乳ヨーグルトを作成した。
【0120】
豆乳に乳酸菌を添加し30℃で12時間以上培養すると豆乳が凝固し、適度な酸味とふくらみある特徴を有する豆乳ヨーグルトができた。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例16】
【0121】
本乳酸菌KLB 3138aC株における高塩分の塩漬け野菜中での増殖性とそれらを用いた野菜漬物の製造
【0122】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いて高塩分で乳酸発酵させた発酵野菜漬物の開発を目的に、次の方法により検討した。
【0123】
野菜漬物にはキュウリを使用し、ぬか漬け、米と米麹を利用した麹漬け、一夜漬けの3種類の漬け床を用意して試験を行った。本乳酸菌を加えない非添加区とNBRC 3541株添加区を用意した。あらかじめ、本乳酸菌KLB 3138aC株を5mlのLactobacilli MRS培地で30℃にて一晩培養した培養液、全量を遠心分離にて集菌しておき、乳酸菌菌体5mlとして使用した。ぬか床は、市販米ぬか1kgを80℃で2時間殺菌し、米糠100gに対し、100mlの滅菌した水道水と7%塩化ナトリウムを添加し、乳酸菌菌体5mlを加え、良く混合後、25℃で4日間培養したものをぬか床とした。米と米麹を利用した麹漬けは、米と米麹と水を例えば1:1:2の割合で混合し、55℃で糖化を行い加熱殺菌した甘酒を造り、この甘酒100gに対して乳酸菌菌体5mlを添加し、25℃で1日間培養して麹漬けの漬け床とした。ぬか漬けと麹漬けではこれらの漬け床に塩もみしたキュウリを24時間漬け込み、4℃で保存した。一夜漬けにはキュウリ重量に対して5%塩化ナトリウムを加え、さらにキュウリ100gに対して乳酸菌菌体5mlを加え、キュウリ重量の30%重量の5%塩化ナトリウム溶液で差し水を行った。25℃で24時間乳酸菌を培養した後キュウリを取り出し、新たに塩もみしたキュウリを漬け込み25℃で6時間つけた後、4℃で保存した。各漬物の風味について検討した。
【0124】
本乳酸菌を加えて調整したぬか床及び麹漬け床では酸味の他、特徴ある甘みを有する風味豊かな漬物ができあがった。特にNBRC 3541株と顕著な差が認められ、マルトースが豊富に含まれた独特の甘みが非常に特徴的であり、酸味が緩和された漬物となった。また、一夜漬けでは通常の一夜漬けと遜色ない、適度な酸味を有する風味豊かな漬物ができあがった。本乳酸菌を用いた乳酸発酵漬物からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵漬物ができる。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例17】
【0125】
本乳酸菌KLB 3138aC株と米と米麹混合物を用いた、ハタハタずしとイカの塩辛の製造
【0126】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた水産加工品の開発を目的に、ハタハタの麹漬けであるハタハタずしとイカの塩辛を例として、次の方法により検討を行った。
【0127】
ハタハタは常法に従い、食酢と5%食塩にて下漬けを行った。この下漬けされたハタハタを、実施例16で製造した麹漬けの漬け床に漬け込み、4℃で3日間つけ込み、ハタハタずしとした。対照として乳酸菌非添加及びNBRC 3541株添加の麹漬けの漬け床に漬け込んだ。これを4℃で2週間保存した。イカの塩辛は常法に10%の麹漬けの漬けどこを添加して製造を行い、塩分を3.5%とした。その後4℃で貯蔵を行った。
【0128】
本乳酸菌を加えて調整した麹漬け床を使用したハタハタずしとイカの塩辛は、酸味の他、特徴ある甘みを有する風味豊かな漬物ができあがった。特にNBRC 3541株と顕著な差が認められ、マルトースが豊富に含まれた独特の甘みが非常に特徴的であり、酸味が緩和された漬物となった。本乳酸菌を用いた乳酸発酵水産加工品からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵水産加工品ができる。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例18】
【0129】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いたハタハタ糠漬けの製造
【0130】
魚肉類のぬか漬け製造を目的に、例として本乳酸菌KLB 3138aC株を用いたハタハタのぬか漬けを調整した。次の方法により検討を行った。
【0131】
ハタハタは常法に従い、食酢と5%食塩にて下漬けを行った。この下漬けされたハタハタを、実施例16で製造したぬか床に漬け込み、4℃で3日間漬け込み、ハタハタのぬか漬けとした。対照として乳酸菌非添加及びNBRC 3541株添加のぬか床に付け込んだ。
【0132】
本乳酸菌を加えて調整したぬか床を使用したハタハタのぬか漬けは、高塩分で酸味の他特徴ある甘みを有する風味豊かな発酵ぬか漬けができあがった。特にNBRC 3541株と顕著な差が認められ、マルトースが豊富に含まれた独特の甘みが非常に特徴的であり、酸味が緩和された漬物となった。本乳酸菌を用いた乳酸発酵水産加工品からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な乳酸発酵水産加工品ができる。また、ハタハタのぬか漬けの他、ニシンのぬか漬けなども高品質化が実現可能であった。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例19】
【0133】
本乳酸菌KLB 3138aC株による乳酸発酵甘酒を用いた天然酵母パン種と、それを用いた種おこし及び天然酵母パン種の継代及び天然酵母パン製造
【0134】
本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた乳酸発酵甘酒を使用した天然酵母パン種を製造し、天然酵母パンに使用される天然酵母種の安全製造とパン種の継代、及び天然酵母パンの製造を行った。
【0135】
実施例10の方法で得た本乳酸菌による乳酸発酵甘酒又は乳酸発酵麦エキスに、天然酵母の分離源となるレーズンなどのドライフルーツを加え、10℃で3日培養して味や香りを確認し、腐敗の有無などを確認した。また、この様にして分離された天然酵母の継代をパン種培地を用いて行い、天然酵母パン種として味や香りを確認し、腐敗の有無などを確認した。また、この様にして製造した天然酵母パン種を小麦重量の10%添加し、天然酵母パンを製造した。
【0136】
パン種培地を使用して天然酵母の分離を試みたところ、酵母のみが効率よく増殖し、また、異常な酸味や臭気の発生は認められなかったため、天然酵母の分離に適していることがわかった。パン種培地を用いて継代した天然酵母パン種を用いたパンは酸味が弱く、日本人向きなパンが作れ、また、豊かな甘みを特徴とする風味有るパンが焼けた。これらは、パン種培地が低温で保存されるほか、低pHで有ることにより、ドライフルーツに付着した一般の乳酸菌などが増殖できず、酵母のみの純粋な培養に成功したと考えられる。本乳酸菌を用いた乳酸発酵パン種培地からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な天然酵母パン種ができる。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例20】
【0137】
本乳酸菌KLB 3138aC株と水と小麦粉を用いた天然酵母用培地の製造と、それを用いた種おこし及び天然酵母パン種の継代及び天然酵母パン製造
【0138】
水と小麦粉から構成される天然酵母継代用の培地(以下、継代培地)を開発し、さらに本乳酸菌KLB 3138aC株を用いて抗菌物質を含む継代培地(以下、乳酸発酵継代培地)を製造し、この乳酸発酵継代培地を利用して天然酵母パンに使用される天然酵母種の安全製造とパン種の継代、及び天然酵母パンの製造を行った。
【0139】
水と小麦粉を例えば2:1の割合で混合し加熱殺菌して継代培地とした。継代培地には麦芽や麦芽糖を添加しても良い。あらかじめ、本乳酸菌KLB 3138aC株を5mlのLactobacilli MRS培地で30℃にて一晩培養した培養液、全量を遠心分離にて集菌しておき、乳酸菌菌体5mlとして使用した。この継代培地に乳酸菌菌体5mlを加え、30℃で1日間培養し、非加熱で又は加熱殺菌したものを乳酸発酵継代培地とした。この乳酸発酵継代培地に天然酵母の分離源となるレーズンなどのドライフルーツを加え、15℃で3日培養したもの味や香りを確認し、腐敗の有無などを確認した。また、この様にして分離された天然酵母の継代を乳酸発酵継代培地を用いて行い、天然酵母パン種として味や香りを確認し、腐敗の有無などを確認した。また、この様にして製造した天然酵母パン種を小麦重量の20%添加し、天然酵母パンを製造した。
【0140】
乳酸発酵継代培地を使用して天然酵母の分離を試みたところ、酵母が効率よく増殖し、また、異常な酸味や臭気の発生は認められなかったため、天然酵母の分離に適していることがわかった。乳酸発酵継代培地を用いて継代した天然酵母パン種を用いたパンは酸味が弱く、日本人向きなパンが作れ、また、豊かな甘みを特徴とする風味有るパンが焼けた。これらは、乳酸発酵継代培地が低温で保存されるほか、低pHで有ることにより、ドライフルーツに付着した一般の乳酸菌などが増殖できず、酵母のみの純粋な培養に成功したと考えられる。本乳酸菌を用いた乳酸発酵継代培地からジアセチルの発生は官能的に認められず、乳酸菌の菌臭などもなく、マルトースに由来するふくらみある甘みを有する非常に高品質な天然酵母パン種ができる。本乳酸菌による発酵産物は系中に原材料由来のラフィノース及びメリビオース及びマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖類及びイソマルトオリゴ糖が残存するため、ラフィノース及びメリビオースの機能性を提供するほか、ふくよかな甘みとテリを有する特徴ある風味の形成ができた。
【実施例21】
【0141】
本乳酸菌KLB 3138aC株の製パン改質特性
【0142】
水及び小麦粉及び食塩及び酵母より構成されるパン種に本乳酸菌を加えて混捏した際の混捏特性や、焼成後のパンについて官能検査を行った。
【0143】
国産小麦粉重量に2%重量の食塩及び3%重量の白神こだま酵母生酵母及び65%重量の水を加え、基本パン種とした。この基本パン種に、小麦粉重量に対して1%重量の生きた本乳酸菌KLB 3138aC株を加えた生菌添加区、基本パン種に、小麦粉重量に対して1%重量の加熱殺菌した本乳酸菌KLB 3138aC株を加えた死菌添加区、基本パン種に本乳酸菌KLB 3138aC株を加えない非添加区を用意し、それぞれを混合後、混捏し、その混捏特性を調べた。さらに、混捏後、常法通り発酵を行い、200℃にて45分焼成をし、焼成後のパンについて官能検査を行った。
【0144】
生菌添加区、死菌添加区いずれにおいても、非添加区に比べ粘弾性の向上が認められ、ハンドリングに優れていた。さらに焼成後のパンにおいては生菌添加区、死菌添加区いずれにおいても、非添加区のパンに比べ、しっとり感に優れており、しっとり感が維持され日持ち向上が実現された。さらに、非添加区に比べ焼成後のパンは柔らかく且つ弾力性に優れていた。生菌添加区では死菌添加区に比べ特徴的な甘みが若干強くなった。このように、本乳酸菌KLB 3138aC株は製パン改質特性を有しており、本乳酸菌を加えた製パンはハンドリング及び風味に優れており、さらに日持ち向上が実現できた。本乳酸菌KLB 3138aC株を用いた製パン改質剤の開発が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明にかかる乳酸菌ラクトバシラス・サケイ株は、飲料製造方法、食品製造方法、漬け床製造方法、製パン改質原料製造方法などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】生育に与える温度の影響を摂氏5度について示すグラフである。
【図2】生育に与える温度の影響を摂氏10度について示すグラフである。
【図3】生育に与える温度の影響を摂氏15度について示すグラフである。
【図4】生育に与える食塩の影響を示すグラフである。
【図5】生育に与えるアルコールの影響を示すグラフである。
【図6】水麹における酸度変化を示すグラフである。
【図7】酸度に与える乳酸菌添加量の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
【0147】
A600 吸光度600ナノメーターによる測定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温で良好な生育と乳酸産生を示し、耐塩性及び耐アルコール性など優れたストレス耐性を有し、イソマルトオリゴ糖及び/かつマルトースをはじめとするマルトオリゴ糖及び/かつメリビオース資化性を失った新規な乳酸菌ラクトバシラス・サケイ KLB 3138aC。
【請求項2】
請求項1の乳酸菌を用いて、植物原料又は/及び動物原料から、アルコール含有飲料を製造するアルコール含有飲料製造方法。
【請求項3】
請求項1の乳酸菌を用いて、植物原料又は/及び動物原料から、アルコール含有食品を製造するアルコール含有食品製造方法。
【請求項4】
請求項1の乳酸菌を用いて、含塩発酵食品を製造する含塩発酵食品製造方法。
【請求項5】
請求項1の乳酸菌を用いて、含塩発酵食品の過剰発酵を防止する含塩発酵食品製造方法。
【請求項6】
請求項1の乳酸菌を用いて、含塩発酵食品の低塩化を実現する含塩発酵食品製造方法。
【請求項7】
請求項1の乳酸菌を用いて、野菜類の発酵漬物を製造する発酵漬物製造方法。
【請求項8】
請求項1の乳酸菌を用いて、野菜類の漬け床を製造する漬け床製造方法。
【請求項9】
請求項1の乳酸菌を用いて、発酵豆乳を製造する発酵豆乳製造方法。
【請求項10】
請求項1の乳酸菌を用いて、天然酵母パン種を製造する天然酵母パン種製造方法。
【請求項11】
請求項1の乳酸菌を用いて、生鮮畜肉を発酵させてなる発酵食品製造方法。
【請求項12】
請求項1の乳酸菌を用いて、魚類をはじめとする水産品を発酵させてなる発酵食品製造方法。
【請求項13】
請求項1の乳酸菌を用いて、発酵乳製品を製造する発酵乳製品製造方法。
【請求項14】
請求項1の乳酸菌を用いて、製パン改質原料を製造する製パン改質原料製造方法。
【請求項15】
請求項1の乳酸菌を用いて、食品を製造する方法であって、食品中にイソマルトオリゴ糖及び/又はマルトースをはじめとするマルト5、オリゴ糖及び/又はメリビオース及び/又はラフィノースのいずれか一つ以上を残存させる飲料製造方法。
【請求項16】
請求項1の乳酸菌を用いて、食品を製造する方法であって、食品中にイソマルトオリゴ糖及び/又はマルトースをはじめとするマルト5、オリゴ糖及び/又はメリビオース及び/又はラフィノースのいずれか一つ以上を残存させる食品製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−236344(P2007−236344A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66336(P2006−66336)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【Fターム(参考)】