説明

乾燥保護コーティングを備える管状のネジ付きエレメント

コーティング(11)は基体(13)に付着する固体マトリクスを含み、その固体マトリクス中には、マトリクスの構成物質と共にそれらの粒子自体の間で相乗効果を及ぼすべく選択される少なくとも2つのクラスからの固体潤滑剤の粒子が分散している。炭化水素坑井内において使用されるネジ付きエレメントのネジ切り部を腐食および摩耗から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ式管接続のためのネジ付きエレメントに関係する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の坑井において使用される管状コンポーネント(管または連結器)の端部に設けられるネジ付きエレメントは、先ず、輸送および掘削現場での保管中、ならびにこの目的を達成するまで、腐食に対して保護されなければならず、これらのエレメントは、慣習的には、製造工場から出荷される際に保護用のグリースまたはオイルでコーティングされる。
【0003】
坑井では、それらのエレメントは、何回も組立て−分解サイクルを受けなければならないことがある。組立て作業は、高い軸方向負荷の下で垂直に実施され、例えば、特にはネジ切り部において生じる摩耗のリスクを被るネジ接続を介して垂直に組み立てられる長さ数メートル(通常10〜13メートルの長さ)の管の重量の下で、垂直に実施される。その上、上記の負荷は、組み立てられるべき管が垂直に吊り下げられるため、組み立てられるネジ付きエレメントの軸方向における僅かなミスアラインメントにより局部に集中する可能性もあり、これは、摩耗のリスクを増大させる。従って、図1は、ミスアラインメントを伴う、長さ10〜13メートルの2つの管1および2のネジ接続を介する現場での組み立てを示しており、ここでは、管1の雄型ネジ付き部分4を管2の雌型ネジ付き部分5内に組み立てるためにパワートング(power tongs)3が使用されている。
【0004】
組立て−分解作業の間に生じる摩耗に対して敏感な部分、例えばネジ切り部などを保護するため、それらのネジ切り部は、慣習的には、保護用のグリースが取り除かれ、特殊な組立て用グリース、例えばAPI Bul第5A2号または第5A3号の仕様を満たすグリースなどがコーティングされる。現場で第二のコーティングを施さなければならないという欠点に加え、重金属および/または有毒金属、例えば鉛などが充填されたそのようなグリースの使用は、組立て作業中にネジ切り部から過剰なグリースが放出されるため、坑井および環境の汚染をも引き起こす。
【0005】
特許文献1は、この二重のコーティングを単一のコーティングで置き換えることを提案しており、この操作は、化学作用を有する少なくとも1つの極圧添加剤を含むロウ状の粘度(半乾性として公知の)を有する潤滑剤の薄い層を用いて、ネジ付きエレメントを製造するための工場で実施される。しかし、上記の半乾性のコーティングは、輸送および保管中の粉塵または砂粒子による汚染に対して機械的な保護を必要とするという欠点を抱えている。
【0006】
特許文献2〜7は、ネジ付きエレメントを製造するための工場において適用される様々な保護用固体コーティングでグリースを置き換えることを提案しており、それらの保護用固体コーティングは基体に付着する固体マトリクスを含み、また、その固体マトリクス中には固体潤滑剤粒子が分散している。中でもとりわけ、二硫化モリブデン、MoSが最も詳細に言及されている化合物である。
【0007】
そのようなコーティングは、グリースを上回る改善を示すものの、まだ完全に満足のいくものではない。具体的に述べると、掘削現場条件下においては、そのようなコーティングは、しばしば、剥げて取れおよび/またはそのコーティングの擦られた表面から粒子がもぎ取られて環境中に散逸し、そのような事態には、その管状コンポーネントをプラントへ返却することを必要とする。
【0008】
これに加え、そのようなコーティングは、一般的に、炉内において、数十分間、または1時間以上もの間、約200℃に加熱することにより硬化することを必要とし、これは、そのコーティング生成サイクルの複雑度をかなり増加させ、ネジ切り部の機械加工とうまくリンクさせることができない。
【0009】
更に、そのようなコーティングは、一般的に、ネジ付きエレメントを腐食から保護することまたは充分に保護することができず、従って、特許文献6および7は、腐食を抑える材料(第一の文献においてはカルボン酸の金属塩、第二の文献においては亜鉛粒子を含有するエポキシ樹脂)の別の層を適用することを提案している。
【0010】
そのような二層化されたコーティングは、更に一層複雑な製造サイクルを必要とし、それでもなお、粒子がもぎ取られるという問題を克服することができない。
【特許文献1】米国特許第6933264号明細書
【特許文献2】米国特許第4414247号明細書
【特許文献3】米国特許第4630849号明細書
【特許文献4】米国特許第6027145号明細書
【特許文献5】米国特許第B2−6679526号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0166341号明細書
【特許文献7】国際公開第04/033951号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、少なくとも現場条件下におけるトライボロジーの観点から、およびコーティングの適用生産性に関して、ならびに、任意で腐食の観点から、公知のグリースおよび乾性または半乾性コーティングの欠点を克服することである。
【0012】
「現場条件下における組立て」という用語は、垂直位置における組立てを意味し、そこでは、(i)第一のネジ付きエレメントが垂直位置に固定され、次いで、(ii)長さが13メートルであってよい管の下端に配置された、またはそのような下端と一体となった、第一のネジ付きエレメント内に組み立てられる第二のネジ付きエレメントが、吊り上げ装置により、第一のネジ付きエレメントの上方に実質的に垂直に保持され、その後、この第二のネジ付きエレメントが、適切な装置、例えばパワートングなどを用いることにより、第一のネジ付きエレメント内に組み立てられる。同様に、「現場条件下における分解」という用語は、垂直に配置された第一および第二のネジ付きエレメントを分解し、このようにして管の重量を支えることを意味し(ことによると、ミスアラインメントを被ることがある)、分解される管は、吊り上げ装置から吊り下げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、本発明は、ネジ式管接続のためのネジ付きエレメントを提供し、そのネジ付きエレメントは、摩耗しにくく、固体の薄いコーティングで被覆されたネジ切り部を含み、また、そのコーティングは、触れても粘つかずに基体に付着し、固体マトリクスを含み、その固体マトリクス中には固体潤滑剤の粒子が分散している。
【0014】
本発明によれば、その固体マトリクスは潤滑性であって、塑性型または粘塑性型のレオロジー的挙動を呈し、上記の固体潤滑剤の粒子は、以下で定められるとおりのクラス1、2、3および4のうちの少なくとも2つからの潤滑剤の粒子を含む。
【0015】
補完的または置換的であり得る本発明の任意の特徴が以下に示されている。
・上記のマトリクスが80℃から320℃までの範囲の融点を有する、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、
・上記の熱可塑性ポリマーがポリエチレンである、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの金属セッケンを含む、
・セッケンが、摩擦により生成されるコーティング破片の捕捉に寄与することができるように適合化されている、
・セッケンがステアリン酸亜鉛である、
・上記のマトリクスが、植物由来、動物由来、鉱物由来または合成由来の少なくとも1つのワックスを含む、
・ワックスが、摩擦により生成されるコーティングからの破片の捕捉に寄与することができるように適合化されている、
・そのワックスがカルナウバワックスである、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの腐食防止剤を含む、
・その腐食防止剤がスルホン酸カルシウム誘導体である、
・そのセッケンが、ISO 9227標準による塩水噴霧腐食試験の下で腐食が発現するまでの時間を改善することができるように選択される、
・上記のマトリクスが、100℃において少なくとも850mm/sの動粘度を有する少なくとも1つの液体ポリマーを含む、
・上記の液体ポリマーが水に不溶性である、
・上記の液体ポリマーが、ポリメタクリル酸アルキル、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリジアルキルシロキサンから選択される、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの表面活性剤を含む、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの着色剤を含む、
・上記のマトリクスが少なくとも1つの酸化防止剤を含む、
・それらの固体潤滑剤粒子がクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む、
・それらの固体潤滑剤粒子が、クラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む、
・それらの固体潤滑剤粒子がグラファイト粒子を含まない、
・それらの固体潤滑剤粒子が、クラス1からの固体潤滑剤として少なくとも窒化ホウ素粒子を含む、
・それらの固体潤滑剤粒子が二硫化モリブデン粒子を含まない、
・それらの固体潤滑剤粒子が、フッ化グラファイト、スズ硫化物およびビスマス硫化物から選択されるクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む、
・それらの固体潤滑剤粒子がクラス4からの固体潤滑剤として少なくともポリテトラフルオロエチレン粒子を含む、
・上記のコーティングが球状配置を有する少なくとも1つのフラーレンの分子を含む、
・そのマトリクスの重量による組成が以下のとおりである。
ポリエチレンホモポリマー 15%から90%まで
カルナウバワックス 5%から30%まで
ステアリン酸亜鉛 5%から30%まで
スルホン酸カルシウム誘導体 0から50%まで
ポリメタクリル酸アルキル 0から15%まで
着色剤 0から1%まで
酸化防止剤 0から1%まで
・そのマトリクスの重量による組成が以下のとおりである。
ポリエチレンホモポリマー 15%から90%まで
カルナウバワックス 5%から30%まで
ステアリン酸亜鉛 5%から30%まで
スルホン酸カルシウム誘導体 0から50%まで
ポリメタクリル酸アルキル 0から15%まで
ポリジメチルシロキサン 0から2%まで
着色剤 0から1%まで
酸化防止剤 0から1%まで
・それらの固体潤滑剤の重量による組成が以下のとおりである。
フッ化グラファイト 20%から99%まで
窒化ホウ素 0%から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
・それらの固体潤滑剤の重量による組成が以下のとおりである。
スズ硫化物 20%から99%まで
窒化ホウ素 0から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
・それらの固体潤滑剤の重量による組成が以下のとおりである。
ビスマス硫化物 20%から99%まで
窒化ホウ素 0から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
・そのコーティングの重量による組成が以下のとおりである。
マトリクス 70%から95%まで
固体潤滑剤 5%から30%まで
・そのコーティングの厚みが10μmから50μmまでの範囲内である。
・そのコーティングが、組立てによるこれら2つのネジ付きエレメントの結合後に第二のネジ付きエレメントの対応する表面と密封式の干渉接触をもたらすことができるように適合化されている密封面にも適用される。
【0016】
また、本発明は、雄型のネジ付きエレメントと雌型のネジ付きエレメントとを含み、ジ上記のネジ付きエレメントのうちの少なくとも一方が上で定められるネジ式管接続にも関係し、更には、管状のネジ付きエレメントを仕上げるための方法にも関係するものであり、その方法においては、上で定められる固体の抗摩耗性コーティングの薄い層が、少なくとも、コーティングされる表面にコーティングの付着を改善することができるように適合化されている表面処理を施した後のネジ切り部の表面に適用される。
【0017】
本発明の方法は、少なくとも幾つかの以下の特徴を含んでいてよい。
・コーティングの構成物質をマトリクスの融点よりも高い温度に加熱し、その後コーティングが、その溶融されたマトリクスを含む上記の構成物質を噴霧することにより適用される、
・コーティングが、そのコーティングの構成物質により形成される粉末の火炎を通じる投射により適用される、
・コーティングが、そのコーティングの構成物質が分散されている水性エマルジョンを噴霧することにより適用される、
・ネジ付きエレメントが80℃以上の温度に加熱される、
・ネジ付きエレメントが環境温度(ambient temperature)に維持される、
・上記の表面処理が機械的な処理、化学的な処理および非反応性蒸着(から選択される、
・コーティングされる表面が金属表面であり、上記の表面処理が上記表面を化学変換するための処理である、
・上記の化学変換処理がリン酸処理である、
・表面処理に続き、防食作用を有するナノ材料(11)により、コーティング(12)される表面の凹凸または細孔を充満させるための処理が施される、
・上記のナノ材料が酸化亜鉛の粒子(11)である、
・上記のナノ材料が200nmのオーダーの平均粒径を有する、
・上記のナノ材料が水性分散液の形態で適用される。
【0018】
本発明の特徴および利点は、添付図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、特定の材料のトライボロジー的挙動の研究に属し、以下でまとめられている特定の概念を利用する。
【0020】
基本概念
固体潤滑剤の移動フィルム効果またはリーフィング効果
流体力学的および乾式潤滑様式における固体潤滑剤は、流体または粘塑性材料中に分散されているときには、安定した方法で表面に定着し、その表面の摩擦特性を改変する傾向がある。固体潤滑剤は、移動して、化学結合により表面に結合され、これにより良好な耐摩耗性および摩擦特性の改善がもたらされる。これらの固体の性状が、それらの表面に耐摩耗性の保護を与え、ヘルツ圧力と呼ばれる高い表面応力により発生する極圧での抵抗性および耐摩耗特性、ならびに広い範囲の負荷および摩擦速度にわたる小さな摩擦係数を付与する。移動フィルム効果またはリーフィング効果を発生させるための上記の特性は、表面に応力が反復的に加わるタイプの摩擦、例えばネジ式管接続の系における組立ておよび分解の間に生じる摩擦などに対して用いられる。
【0021】
摩擦による第三体
摩擦による第三体は、摩擦の間に接触する2つの表面の間で生じる。
【0022】
潤滑剤の不在下においては、応力下にあって相互に擦れあう2つの物体は、それらのそれぞれの物体からの破片により形成される第三体を生成し、その破片は、化学的に変換されている場合もあれば、化学的に変換されていない場合もある。この第三体が、加えられた応力下における第三体の挙動、応力下における第三体の変換メカニズム、および第三体の移動、定着または排除される能力により、摩擦特性の一部を定める。
【0023】
液体、流体または塑性固体の潤滑剤、即ち、材料の流動と共に塑性的な方法でせん断下において変形する潤滑剤がそれら2つの物体の間に介入している場合、その潤滑剤は、それら2つの物体の表面を分離するフィルムを形成し、それ自体が第三体を構成する。その第三体の組成は、境界条件において改変され、即ち、その摩擦応力がそれらの潤滑化された材料の接触をもたらしたときに、その流体または塑性材料と混合する固体の生成を伴って改変される。
【0024】
極圧特性
これらは、非常に高いヘルツ圧力を被る表面が摩耗に耐え、低い摩擦係数を持って摺動することを可能にする特定の生成物の特性である。
【0025】
ヘルツ圧力
負荷の下で接触する表面は、特定の表面積を有する接触ゾーンを定め、弾性的に変形する。加えられた負荷を上記の表面積で割った値がヘルツ圧力を定める。高いヘルツ圧力の間、固体の非塑性材料は、内部せん断を受け、その材料の疲労により耐用年数を低減させ得るが、一方、固体の塑性材料は、構造的な劣化を伴うことなく、このせん断を受けることができる。
【0026】
マトリクス
マトリクスが、有効成分を所定の位置に定着または運搬することを可能にする系を指定する。また、マトリクスは、異質な系を結合させるための物質としても作用し、マトリクスが結合または運搬するそれらの有効成分を補完する機能を有することができる。
【0027】
相乗効果
基本的な特性を有するいくつかの物体を、完全に異なる特性および挙動を有する複合物体に合成することができる。そのような挙動が構成物質の累積的な性能よりも良好な性能をもたらす場合には、相乗効果が存在する。
【0028】
粘度、可塑性、粘塑性、粒状挙動
静水圧の影響下では限られた変形を受け、また、小さなせん断応力においてすらその影響下では不定の流動性を示す高度に変形可能な物体または流動性物体が存在する。そのような例は、オイルおよびグリースである。
【0029】
少なくとも特定の応力閾値までは応力の性状に関係なく限られた変形を受ける僅かに変形可能な物体または固形物が存在する。これは、その材料の構造が劣化する域を超えた降伏強さを有する熱硬化性の系の場合である。
【0030】
殆どの既存の材料は、これら2つの極端なケースの間にある(弾性、塑性、粘性または粘塑性挙動を有する材料)。
【0031】
摩擦の間に発生または存在する第三体は、以下の表1に示されているように、それの潤滑性または非潤滑性をそれの物理的状態に負っている。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明のマトリクスにおいて使用される材料は、表1のカテゴリー1に属する。
【0034】
熱可塑性および熱硬化性ポリマー
「熱可塑性」という用語は、可溶性で、可逆的に、それぞれの温度TおよびT(ガラス転移温度および融点)に加熱することにより軟化し、その後溶融され、冷却することにより凝固させることができるポリマーを表す。熱可塑性ポリマーは、熱硬化性ポリマーとは対照的に、化学反応を伴うことなく変換される。静止位置においては、触れても乾燥していて安定した乾燥固体構造(非付着性)を保持しながら、摩擦下において粘性流動を得るため、本発明においては熱可塑性ポリマーが使用される。それとは対照的に、熱硬化性ポリマーは、一般的に、応力下において粘性挙動を示さず、または僅かな粘性挙動しか示さない。
【0035】
金属セッケン
この用語は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のセッケン、ならびに他の金属のセッケンを包含する。これらの金属セッケンは、表面間で流動する能力を有する可溶性の化合物である(表1のカテゴリー1)。
【0036】
ワックス
この用語は、様々な由来(鉱物由来、特にはガソリン蒸留由来、植物由来、動物由来または合成由来)の潤滑特性を有する可溶性物質であって、多少なりとも糊状または硬質の稠度を有し、それらの性状に依存して大幅に変わり得る融点および滴点を有する可溶性の物質を包含する。
【0037】
腐食防止剤
腐食防止剤は、表面に適用される液体または固体材料に対してその表面を種々の異なる腐食の様態から保護する能力を付与する添加剤である。そのような腐食防止剤は、様々な化学的、電気化学的または物理化学的メカニズムに従って機能する。
【0038】
固体潤滑剤
固体潤滑剤は、2つの摩擦面の間に介入して、摩擦係数を低減し、それらの表面に及ぼされる摩耗および損傷を低減することができる、固体の安定した物体である。上記物体は、作用のメカニズムおよび構造により定められる、異なるカテゴリに分類することができる。
クラス1:それらの潤滑特性がそれらの結晶構造に負っている固形物、例えばグラファイトまたは窒化ホウ素BN、
クラス2:それらの潤滑特性がそれらの結晶構造およびそれらの組成中の反応性化学元素に負っている固形物、例えば二硫化モリブデンMoS、フッ化グラファイト、スズ硫化物またはビスマス硫化物、
クラス3:それらの潤滑特性がそれらの化学的反応性に負っている固形物、例えば特定のチオ硫酸塩型の化合物、
クラス4:それらの潤滑特性が摩擦応力下における塑性または粘塑性挙動に負っている固形物、例えばポリテトラフルオロエチレン、PTFE、またはポリアミド。
【0039】
非常に高い性能の生成物を明確にするため、本発明者らは、固形潤滑剤の様々なクラスの相乗特性について調べた。
【0040】
本発明において使用するのに好適な固体潤滑剤は、これまで広範には使用されてこなかったクラス2の化合物、例えばグラファイトのフッ化物、または複合型のスズもしくはビスマス硫化物などを含む。本発明者らによれば、これらの化合物は、それらが有する金属とのこれまでより高い結合能力および極圧下におけるこれまでよりずっと優れた性能の観点において、従来の固体潤滑剤、例えばグラファイト、二硫化モリブデンまたは二硫化タングステンなどとは異なる。他のクラスの固体潤滑剤と相乗的に使用されるときには、これらの化合物は特に顕著な性能を達成することができる。
【0041】
本発明者らは、腐食を促進し得るグラファイトを使用せず、また、二硫化モリブデン(この化合物は、特に湿気の存在下において不安定であり、また、スチールに対して腐食性の硫黄酸化物または硫化水素を放出し、場合によってはそのスチールに硫化水素応力亀裂、SSCが生じやすくしてしまうことが公知であるため)も使用しない解決策について研究した。
【0042】
フラーレン
フラーレンは、単一の層または多層内において閉管もしくは開管、または閉球もしくは開球の形状をした構造を有する分子材料である。球形のフラーレンは、単層の場合にはサイズが数十nmであり、多層の場合には約80nm以上である。そのようなフラーレンは、それらの表面において、表面粗さにより創出された部位を安定した方法でブロックし、また、剥片型の劣化を防止すべく作用する。
【0043】
応力の様々なタイプ
本発明は、ネジ式管接続が機能するときにそれらが被る様々な応力を考慮に入れている。
【0044】
低速および高速、ならびに低いヘルツ圧力および高いヘルツ圧力での摩擦
ネジ接続の組立ておよび分解中の摩擦系は、それらが遭遇する広範囲の様々な摩擦速度により複雑化される。その速度は、組立て中は比較的高く、組立ての終わりまたは分解の始めには殆どゼロである。更に、ヘルツ圧力は、同じ摩擦期間中で非常に高く、制限条件となる。従って、本発明者らは、上記の応力を満足させる系を定めるべく探索した。
【0045】
動的応力による問題を克服するため、本発明者らは、その特性が応力下において粘性流動をもたらし、遭遇するすべての速度状況を満足させる塑性であるマトリクスを開発した。系をこの広範囲にわたる様々なせん断に適合化させるべく最高の性能の系を得るためには、幾つかの構成物質の使用が必要である。上記のマトリクスは、他の有効成分をそのままに維持し、安定した移動フィルムまたは薄片(leaves)の生成への寄与を可能にする。
【0046】
塑性特性を有する熱可塑性樹脂を一般的に選択し、本発明者らは、溶融状態においてそれらが有する高い粘度のために適用問題をもたらす他の粘塑性ポリマー、例えばポリアミド6、ポリアミド11またはポリプロピレンなどよりもむしろ、既存の一連の粘塑性ポリマーからポリエチレンを選抜した。融点が105℃以上のタイプのポリエチレンを選んだ。
【0047】
改善されたマトリクスの可塑性が金属セッケン型の化合物を加えることにより達成され、中でもとりわけ、カルシウム、ビスマスおよび亜鉛セッケンが、上述の現場条件下における組立て−分解ステップの回数に関して、更には破片の再凝集特性の改善に関して、優れた結果をもたらした。以下で調べた腐食防止剤との相乗効果のため、上記のセッケンの中からステアリン酸亜鉛を選択した。
【0048】
天然脂肪、例えばカルナウバワックスなどをマトリクスに組み入れることにより、組立て−分解作業中の破片再凝集特性を最適化することができる。
【0049】
非常に高い摩擦負荷を伴った準静的条件下における制限的な潤滑応力を満足させるため、本発明者らは、固体潤滑剤をベースとした適切な添加剤の系を開発した。従来の添加剤は、表面応力がそれらの添加剤を反応可能にする場合にのみ機能し、この状態は特定の負荷および摩擦速度の下においてのみ起こる。従って、本発明者らは、準静的条件下においても潤滑様式を保証することができる固体潤滑剤技術を利用した。より詳細には、本発明者らは、遭遇するすべての速度条件および応力条件をカバーするため、異なるクラスの固体潤滑剤間における相乗効果、およびそれらの固体潤滑剤とマトリクスの粘塑性挙動との間の相乗効果を利用した。これらの相乗効果は、マトリクスの作用により強化されるリーフィング効果を容易に生み出す。クラス1/クラス2の相乗作用およびクラス1/クラス2/クラス4の相乗作用が成功裏に試験された。
【0050】
クラス2/クラス4型の相乗作用と比較して、クラス1、2および4を組み合わせた系では、現場条件下における組立て−分解サイクルの回数が50%増加することが観測された。
【0051】
本発明者らは、以下の生成物で特に良好な相乗作用性能を観測した。フッ化グラファイト(クラス2)/PTFE(クラス4)/窒化ホウ素(クラス1)、二硫化スズ(クラス2)/PTFE(クラス4)/窒化ホウ素(クラス1)および硫化ビスマス(クラス2)/PTFE(クラス4)/窒化ホウ素(クラス1)。
【0052】
不良環境(塩分を含んだ湿気または塩分を含まない湿気)
表面の抗腐食性保護要件によって、マトリクスに腐食防止剤を組み入れることが必要になることがある。腐食防止剤のうち、スルホン酸カルシウム誘導体、および、特にはワックス、石油樹脂またはパラフィン、例えばALOX 2211 Yという商品名でLUBRIZOLから販売されている製品などにより構成された媒質中において酸化カルシウムをカルシウムスルホン酸塩と結び付けることから誘導される誘導体は特に高性能であることが判明したが、他の化合物も使用することができ、例えばアミン、アミノボレート、第四級アミン、ポリアルファオレフィンでの超アルカリ化スルホネート、ストロンチウムホスホシリケート、亜鉛ホスホシリケートまたはボレートカルボキシレート型なども使用することができる。
【0053】
腐食抵抗性は、選定された腐食防止剤を、他のメカニズムにより腐食を防止すべく作用する化合物と結び付けることにより改善することもできる。特に、上で示されているように、ステアリン酸亜鉛は、マトリクスの潤滑挙動に大いに寄与しながら、腐食防止剤との相乗作用特性を示した。
【0054】
抗腐食性の保護に関する主要な試験は、国際標準ISO 9227に従って実施される塩水噴霧試験であり、リン酸マンガン処理により処理されたプレート(8〜20g/mのリン酸塩の蒸着)を用い、ISO EN 2846−3に従って指数Reが与えられる。
【0055】
保護された環境における使用(環境適合性に関する制約)
本マトリクスの組成は、環境汚染の可能性を排除するため、表面での摩擦から生じる破片を防止すべく意図されていてよい。本マトリクスの適切な組成のため、そのような破片は、破片が形成されるとすぐに再凝集する。
【0056】
この特性を実証するため、本発明者らは、摩擦の間に発生される破片の重量を計測することによる定量手順を実験プロトコルに含めた。従って、それらの実験プロトコルは、金属セッケンおよびワックスの有効性を証明することができた。
【0057】
しかし、必要とされる腐食防止剤の量に依存して、破片捕捉特性または破片再凝集特性の低下が観測され、本発明者らは、これを修正しようと努めた。従って、本発明者らは、非常に粘性の高いポリマー、例えばポリメタクリル酸アルキル(PAMA)、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリシロキサンなどの影響を考慮し、VISCOFLEX 6−950という商品名でROHMAXから販売されている、100℃において850mm/sの動粘度を有するPAMAを用いて得られた破片再凝集試験における優れた結果を参酌した。
【0058】
数回の組立て−分解サイクルの後、本発明のコーティングを備える2つのネジ切り部(そのうちの一方のコーティングのみがPAMAを含む)の検討は、このコーティングの場合、摩擦により生成された破片が再凝集し、外部汚染を引き起こすことなく摩擦表面に組み入れられ、一方、別のコーティングの場合には、破片が分散されたままであったことを示した。
【0059】
コーティングの適用性
環境温度(ambient temperature)でのコーティングの付着を改善するため、少なくとも1つの表面活性剤(界面活性剤とも呼ばれる)をマトリクスに加えることが必要になることがある。
【0060】
この件に関して更に具体的に述べると、本発明者らは、2%またはそれ未満のポリジメチルシロキサンの添加を考慮した。
【0061】
ポリマーであるかポリマーでないかにかかわらず、同様な表面活性特性を有する他の化合物も考慮に入れた。
【0062】
従って、本発明は、2つのグループの生成物をそれらの間での相乗的相互作用の系統的な研究により結び付ける。
【0063】
・マトリクスの構成物質、
・固体潤滑剤の相乗的アンサンブル。
【0064】
本発明の方法は、潤滑化されるべきエレメントの表面を調製するステップを含む。
【0065】
組み立て−分解試験は、移動フィルムを適切に構築するためには、機械的な処理、例えばサンドブラスティングもしくはショットブラスティングなどにより、または表面への結晶化された鉱質沈着物に基づく反応性処理を用いる表面の物理的もしくは化学的修飾により、化学攻撃的な処理、例えば酸を用いる処理、亜鉛もしくはマンガンリン酸処理、または表面化学変換層をもたらすシュウ酸処理のいずれかにより、コーティングされるべき表面を改変することが必要であることを示した。これらの表面処理法の中でもとりわけ、リン酸処理は、摩擦の間に抵抗し、且つ、非常に安定した移動フィルムの産生をもたらし、更には、基本的な抗腐食性の保護をももたらす適切な付着力を持った表面を生成することができるため、好適な表面処理法である。
【0066】
また、そのサイズがそれらのナノ材料を細孔内に挿入することができるような大きさであるナノ材料を用いて表面の細孔を充満させることからなる補完的な表面を調製することも望ましい。上記の充満の目的は、コーティングの良好な付着を保ちながら、腐食に対してその表面を保護するため、不動態化作用を有する材料で細孔により創出された部位をブロックし、飽和させることである。
【0067】
図2は、金属基体13の細孔部位12内への粒子11の充満を示している。
【0068】
本発明者らは、単純な水中における分散液により適用されるナノメートルのサイズ(平均で200nm)の酸化亜鉛粒子を挿入することにより、上で引用されている標準に従って実施された塩水噴霧試験で性能が改善(腐食出現時間の20%の増大)されたことを確証した。
【0069】
処理された表面の視覚的な識別を可能にするため、あらゆる公知の有機着色剤を、摩擦性能を低下させない量(例えば≦1%)で使用することができる。
【0070】
酸化、例えば熱または紫外線暴露によって生じる酸化による劣化からコーティングを保護するため、1つ以上の酸化防止剤を加えることが可能である。ポリフェノール化合物、ナフチルアミン誘導体および有機亜リン酸塩が一群の主要な酸化防止剤を構成する。詳細には、本発明者らは、Ciba−Geigyから販売されているIRGANOX(登録商標)L150(ポリフェノールおよびアミン酸化防止剤の系)、ならびにIRGAFOS(登録商標)168(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)との組み合わせを選択した。
【0071】
また、本発明は、工業的規模で容易に使用することを可能にするためのコーティングの適用方法にも関係する。様々な技術をこの目的で使用することができ、そのうちの最も適した技術が以下で説明されている。
【0072】
ホットメルト噴霧法は、生成物を液相において高温で保持し、サーモスタット付きのスプレーガンを用いてそれを噴霧することから構成される。その生成物は、融点よりも10℃から50℃高い温度に加熱され、良好な表面被覆率をもたらすべくその融点よりも高い温度で予熱された表面に噴霧される。
【0073】
一つの変形態様においては、予熱されていない(即ち、環境温度に維持された)ネジ付きエレメントに噴霧が実施される。この後、そのコーティングの組成は、少量の表面活性剤、例えば最大で2%、典型的にはポリジメチルシロキサン0.6%を加えることにより適合化される。
【0074】
図3は、本方法を実施するための設備の一例を示している。生成物20がタンク21内で溶融され、プロペラ式攪拌機22を用いて攪拌され、その後、調節可能なポンプ24によりパイプ25を通じてスプレーヘッド23へ送られ、スプレーヘッド23にはコンプレッサー26により空気も供給される。これらのコンポーネント21および23から26までの温度は調節可能である。
【0075】
更なる一つの技術はエマルジョンコーティングであり、そこでは、生成物が水性エマルジョンの形状で噴霧される。このエマルジョンおよび基体は環境温度であってよく、従って、乾燥時間が必要になる。その乾燥時間は、生成物を60℃から80℃までの間の温度に予熱することおよび/または表面を50℃から150℃までの間の温度に加熱することによりかなり短縮することができる。
【0076】
図4は、熱溶射法またはフレーム溶射法を示している。この場合、粉末の形状における生成物30は、空気32および燃料ガス33が供給された銃(gun)31から、コーティングされるべき表面へ発射される。この粉末は、火炎34を通過するときに溶融し、均一な方法で標的を覆う。
【実施例】
【0077】
実施例
Vallourec & Mannesmann TubesのOCTG部門から発行された技術仕様書に従って低合金鋼(L80グレード)から形成される、公称径が177.8mm(7インチ)で単位長さ当たりの重量が43.15kg/m(29lb/ft)のVAM TOP HCタイプのネジ接続を用いた。
【0078】
コーティングを適用する前に、雄型のネジ付きエレメントはリン酸亜鉛処理(4〜20g/mの範囲の層の重量)を受け、雌型のネジ付きエレメントはリン酸マンガン処理(8〜20g/mの範囲の層の重量)を受けた。これらのネジ付きエレメントを130℃に予熱し、そこへ、以下の組成を有し、150℃において溶融状態に保持された、35μmの厚みの生成物の層がホットメルト噴霧により適用された。
【0079】
PE 520という商品名でCLARIANTから販売されているポリエチレン 19%
カルナウバワックス 15%
ステアリン酸亜鉛 20%
VISCOPLEX 6−950という商品名でROHMAXから販売されているPAMA 5%
ALOX 2211 Yという商品名でLUBRIZOLから販売されているスルホン酸カルシウム誘導体 30%
フッ化グラファイト 7%
ポリテトラフルオロエチレン 2%
窒化ホウ素 1%
着色剤(キニザリングリーン、C2822) 0.5%
Ciba−Geigyから販売されている酸化防止剤、
IRGANOX(登録商標)L150 0.3%
IRGAFOS(登録商標)168 0.2%
ISO 9227およびISO EN 2846−3を用いた塩水噴霧試験の結果はRe=0(1000時間後)であった。
【0080】
現場条件を組立て−分解試験によりシミュレートし、そこでは、雌型エレメントを含むカップリング40(図5)がパワートングの固定ジョー41内において垂直に保持され、パップジョイント(pup joint)として公知の垂直に配置された短管42の下端に形成される雄型エレメントを手操作により雌型エレメント内に事前に組み立てた。
【0081】
管42(1メートル)の短さを補償して、長さが13メートルの管をシミュレートするため、移動クレーンから前もって吊り下げられていた420kgの塊状物43を、塊状物43の重心が管42およびカップリング40に正確に軸上に配置されることがないようにして、管42の上端に配置した。
【0082】
この後、雄型エレメントをパワートングの移動ジョー44内に位置付け、16rpmの初期回転速度で雌型エレメント内に組み立て、最終段階においては、コーティングされていないネジ接続の公称組立てトルク(この実施例においては20100N・mであった)に達して終了するまで、その速度を低減させた。
【0083】
分解作業は、対称的に、即ち、漸増的な回転速度で実施された。
【0084】
これらのネジ付きエレメントの構成要素の劣化を伴うことなく、これらの条件下において、10回より多くの組立て−分解サイクルを実施することができた。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】炭化水素坑井内におけるネジ付きエレメントの組立てにより取り付ける準備が整った2つの管の図を示している。
【図2】ネジ付きエレメントのネジ切りされた表面の一部をより拡大された尺度で示しており、その表面には、本発明の方法に従って、ナノ材料により細孔が充満されている。
【図3】本発明の方法を実施するために使用することができる装置を概略的に示している。
【図4】本発明の方法を実施するために使用することができる装置を概略的に示している。
【図5】組立て−分解試験により本発明のコーティングを評価するための装置を概略的に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触れても粘つかずに基体に付着し、且つ、固体潤滑剤の粒子が分散された固体マトリクスを含む固体の薄いコーティングで被覆されたネジ切り部を含む、摩耗に対して抵抗性を有するネジ式管接続用のネジ付きエレメントにおいて、前記固体マトリクスが潤滑性であり塑性型または粘塑性型のレオロジー的挙動を呈し、ならびに、前記固体潤滑剤の粒子がクラス1、2、3および4のうちの少なくとも2つからの潤滑剤の粒子を含むことを特徴とするネジ付きエレメント。
【請求項2】
前記マトリクスが80℃から320℃までの範囲の融点を有する請求項1に記載のネジ付きエレメント。
【請求項3】
前記マトリクスが少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む請求項1または2に記載のネジ付きエレメント。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーがポリエチレンである請求項3に記載のネジ付きエレメント。
【請求項5】
前記マトリクスが少なくとも1つの金属セッケンを含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項6】
前記セッケンが摩擦により生成されるコーティングの破片を捕捉することに寄与する請求項5に記載のネジ付きエレメント。
【請求項7】
前記セッケンがステアリン酸亜鉛である請求項5または6に記載のネジ付きエレメント。
【請求項8】
前記マトリクスが少なくとも植物由来、動物由来、鉱物由来または合成由来のワックスを含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項9】
前記ワックスが摩擦により生成されるコーティングからの破片を捕捉することに寄与する請求項8に記載のネジ付きエレメント。
【請求項10】
前記ワックスがカルナウバワックスである請求項8または9に記載のネジ付きエレメント。
【請求項11】
前記マトリクスが少なくとも1つの腐食防止剤を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項12】
前記腐食防止剤がスルホン酸カルシウム誘導体である請求項11に記載のネジ付きエレメント。
【請求項13】
前記セッケンが、ISO 9227塩水噴霧腐食試験下において腐食が発現するまでの時間を改善するために選択される、請求項5または6との組み合わせにおける請求項11または12に記載のネジ付きエレメント。
【請求項14】
前記マトリクスが、100℃において少なくとも850mm/sの動粘度を有する少なくとも1つの液体ポリマーを含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項15】
前記液体ポリマーが水に不溶性である請求項14に記載のネジ付きエレメント。
【請求項16】
前記液体ポリマーがポリメタクリル酸アルキル、ポリブテン、ポリイソブテンおよびポリジアルキルシロキサンから選択される請求項14または15に記載のネジ付きエレメント。
【請求項17】
前記マトリクスが少なくとも1つの表面活性剤を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項18】
前記マトリクスが少なくとも1つの着色剤を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項19】
前記マトリクスが少なくとも1つの酸化防止剤を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項20】
前記固体潤滑剤粒子がクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項21】
前記固体潤滑剤粒子が、クラス1からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子、クラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子およびクラス4からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項22】
前記固体潤滑剤粒子がグラファイト粒子を含まない先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項23】
前記固体潤滑剤粒子がクラス1からの固体潤滑剤として少なくとも窒化ホウ素粒子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項24】
前記固体潤滑剤粒子が二硫化モリブデン粒子を含まない先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項25】
前記固体潤滑剤粒子が、フッ化グラファイト、スズ硫化物およびビスマス硫化物から選択されるクラス2からの少なくとも1つの固体潤滑剤の粒子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項26】
前記固体潤滑剤粒子がクラス4からの固体潤滑剤として少なくともポリテトラフルオロエチレン粒子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項27】
前記コーティングが球状配置を有する少なくとも1つのフラーレンの分子を含む先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項28】
前記マトリクスの重量による組成が以下のとおり、
ポリエチレンホモポリマー 15%から90%まで
カルナウバワックス 5%から30%まで
ステアリン酸亜鉛 5%から30%まで
スルホン酸カルシウム誘導体 0から50%まで
ポリメタクリル酸アルキル 0から15%まで
着色剤 0から1%まで
酸化防止剤 0から1%まで
である先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項29】
前記マトリクスの重量による組成が以下のとおり、
ポリエチレンホモポリマー 15%から90%まで
カルナウバワックス 5%から30%まで
ステアリン酸亜鉛 5%から30%まで
スルホン酸カルシウム誘導体 0から50%まで
ポリメタクリル酸アルキル 0から15%まで
ポリジメチルシロキサン 0から2%まで
着色剤 0から1%まで
酸化防止剤 0から1%まで
である先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項30】
前記固体潤滑剤の重量による組成が以下のとおり、
フッ化グラファイト 20%から99%まで
窒化ホウ素 0%から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
である先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項31】
前記固体潤滑剤の重量による溶液が以下のとおり、
スズ硫化物 20%から99%まで
窒化ホウ素 0から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
である請求項1から28のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項32】
前記固体潤滑剤の重量による組成が以下のとおり、
ビスマス硫化物 20%から99%まで
窒化ホウ素 0から30%まで
ポリテトラフルオロエチレン 1%から80%まで
である請求項1から28のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項33】
前記コーティングの重量による組成が以下のとおり、
マトリクス 70%から95%まで
固体潤滑剤 5%から30%まで
である先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項34】
前記コーティングの厚みが10μmから50μmまでの範囲内である先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項35】
前記コーティングが、組立て作業により前記2つのネジ付きエレメントを取り付けた後に第二のネジ付きエレメントの対応する表面と密封式の接触をもたらすように適合化された密封面にも適用される先行する請求項のいずれか1項に記載のネジ付きエレメント。
【請求項36】
雄型のネジ付きエレメントおよび雌型のネジ付きエレメントを含み、前記ネジ付きエレメントのうちの少なくとも一方が先行する請求項のいずれか1項によるものであることを特徴とするネジ式管接続。
【請求項37】
ネジ付き管状エレメントを仕上げるための方法であって、固体のコーティングを得るべく前記ネジ切り部の少なくとも表面に固体の抗摩耗性コーティングの薄い層が適用される方法において、コーティングされるべき前記表面が前記コーティングの付着を改善するための表面処理を受け、また、前記コーティングの構成物質が請求項1から35のいずれか1項で定められるとおりのものであることを特徴とするネジ付き管状エレメントの仕上げ方法。
【請求項38】
前記コーティングの構成物質が前記マトリクスの融点よりも高い温度に加熱され、その後前記コーティングが、溶融された前記マトリクスを含む前記構成物質を噴霧することにより適用される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記コーティングが、前記コーティングの構成物質により形成される粉末の火炎を通じる投射により適用される請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記コーティングが、前記コーティングの構成物質が分散されている水性エマルジョンを噴霧することにより適用される請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記ネジ付きエレメントが80℃以上の温度に加熱される請求項37から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ネジ付きエレメントが環境温度(ambient temperature)に維持される請求項37から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記表面処理が機械的な処理、化学的な処理および非反応性蒸着から選択される請求項37から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
コーティングされる前記表面が金属表面であり、前記表面処理が前記表面の化学変換用の処理である請求項37から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記化学変換処理がリン酸処理である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記表面処理に続き、防食作用を有するナノ材料(11)により、コーティング(12)されるべき前記表面の凹凸または細孔を充満させるための処理が施される請求項37から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ材料が酸化亜鉛の粒子(11)である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ材料が200nmのオーダーの平均粒径を有する請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記ナノ材料が水性分散液の形態で適用される請求項46から48のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−512819(P2009−512819A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534908(P2008−534908)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009707
【国際公開番号】WO2007/042231
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】