説明

乾燥装置

【課題】高水分の被処理物を高い処理能力で乾燥できる乾燥装置を提供すること。
【解決手段】乾燥装置は、加熱攪拌部14が設けられて内部が減圧される乾燥室11を有する第1乾燥機1と、加熱攪拌部24が設けられて内部が減圧される乾燥室21を有する第2乾燥機2を有する。被処理物を第1乾燥機1で乾燥した後、第2乾燥機2で更に乾燥する。第2乾燥機2の減圧値を第1乾燥機1の減圧値よりも大きく、かつ、第2乾燥機2の加熱攪拌部24の回転速度を第1乾燥機1の加熱攪拌部14の回転速度よりも大きくすることにより、連続的に高水分の被処理物を低水分に乾燥させると共に脱臭することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機汚泥のような高水分の被処理物を乾燥させる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場の有機汚泥や生ごみ等の高水分の被処理物を乾燥させるため、被処理物が投入される乾燥室内を減圧して水の沸点を降下させることにより、被処理物の水分を低温で蒸発させるようにした乾燥装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された乾燥装置では、円筒状の真空蒸気釜の内側の乾燥室に投入された被処理物としての汚泥を、周面に形成されて加熱用蒸気が供給されるジャケットによって加熱すると共に、乾燥室内に軸方向に配列された複数のディスク状の攪拌羽根で攪拌している。この乾燥装置は、被処理物が乾燥して粉末状になると、ディスク状の攪拌羽根の回転方向を逆転させて、被処理物を乾燥室の一端に設けられた排出口に送って排出する。被処理物の排出が完了すると、新たな高水分の被処理物を投入口から乾燥室に投入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−313918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の乾燥装置は、乾燥室内を減圧しても、乾燥室の周面に設けられたジャケットのみで被処理物を加熱するので、加熱効率が比較的低く、処理能力が比較的低いという問題がある。
【0006】
また、上記従来の乾燥装置は、被処理物の乾燥をバッチ処理で行うので、処理能力の向上が困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、高水分の被処理物を高い処理能力で乾燥できる乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の乾燥装置は、被処理物が投入され、内部が減圧される乾燥室と、
乾燥室内に配置され、熱媒体が内部に供給される回転軸と、この回転軸に固定され、熱媒体が内部に供給されるコイル状管体と、このコイル状管体の外周側に配置されたブレードとを有する加熱攪拌部と、
乾燥室の壁面に形成され、熱媒体が供給されるジャケットと
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、乾燥室内に投入された被処理物が、回転する加熱攪拌部に接触しながら、この加熱攪拌部のコイル状管体とブレードとで攪拌される。この被処理物は、接触する加熱攪拌部の回転軸とコイル状管体から、回転軸とコイル状管体の内部に供給される熱媒体の熱を受けて加熱される。加熱攪拌部の回転軸とコイル状管体は、被処理物の接触面積が大きいので、内部に供給される熱媒体の熱により、効率的に被処理物を乾燥することができる。また、被処理物は、乾燥室の壁面に形成されたジャケットから、このジャケットに供給される熱媒体の熱を受けて加熱される。
【0010】
このように、被処理物は、攪拌作用を受ける加熱攪拌部によって効率的に加熱され、また、乾燥室の壁面のジャケットによって加熱されるので、効果的に水分が蒸発して良好な効率で乾燥する。したがって、本発明の乾燥装置は、高水分の被処理物を、従来よりも高い処理能力で乾燥させることができる。ここで、高水分とは、被処理物が質量比で80〜99%の水分量を有することをいう。
【0011】
一実施形態の乾燥装置は、加熱攪拌部を有して内部が減圧される乾燥室を複数個備え、第1乾燥室で処理された被処理物を、第2乾燥室以降の乾燥室に順次送って処理するように形成され、
第2乾燥室以降の乾燥室の加熱攪拌部の回転速度が、第1乾燥室の加熱攪拌部の回転速度よりも大きい。
【0012】
上記実施形態によれば、第1乾燥室に投入された被処理物は、減圧された状態で、加熱攪拌部によって加熱及び攪拌され、水分量が減少する。ここで、第1乾燥室で処理される被処理物は、水分量が質量比で80%以上の高水分であるので、加熱攪拌部を比較的低い回転速度で回転させることにより、加熱攪拌部の回転軸とコイル状管体の被処理物への接触時間を確保して、被処理物を効果的に乾燥させることができる。
【0013】
第1乾燥室で処理されて水分が低減した被処理物は、第2乾燥室に投入される。第2乾燥室に投入された被処理物は、減圧された状態で、加熱攪拌部によって加熱及び攪拌され、水分量が更に減少する。更なる乾燥室が設けられている場合、被処理物は、後続の乾燥室に順次送られて処理され、水分量が順次減少する。ここで、第2乾燥室以降の乾燥室で処理される被処理物は、第1乾燥室で乾燥された後の比較的低い水分量であるので、固形成分が凝集して所謂ダマになりやすく、ダマの発生によって被処理物全体の乾燥効率が低下しやすい。なお、ダマとは、乾燥室の中で回転力を受けることによって被処理物が球状に凝集し、表面部は乾燥が進行する一方、内部は水分を含んだまま残留するものをいう。ここで、第2乾燥室以降の乾燥室の加熱攪拌部を、第1乾燥室の加熱攪拌部の回転速度よりも大きい回転速度で回転させるので、ダマの形成を防止して、被処理物を良好な効率で乾燥させて低水分にすることができる。なお、低水分とは、被処理物が質量比で30%以下の水分量を有することをいう。
【0014】
一実施形態の乾燥装置は、第1乾燥室に被処理物を連続的に投入する投入装置と、第1乾燥室から第2乾燥室以降の乾燥室へ被処理物を連続的に順次搬送する搬送装置と、最終の乾燥室から被処理物を連続的に排出する排出装置とを備える。
【0015】
上記実施形態によれば、投入装置で被処理物を第1乾燥室に連続的に投入し、搬送装置で被処理物を第1乾燥室から第2乾燥室以降の乾燥室へ連続的に順次搬送し、排出装置で被処理物を最終の乾燥室から連続的に排出することにより、被処理物の乾燥を連続処理で行うことができ、バッチ処理によるよりも大幅に高い効率で被処理物を乾燥できる。ここで、「連続的」とは、各装置が常に継続して動作する状態のみに限定されず、状況に応じて停止する場合も含まれる。
【0016】
一実施形態の乾燥装置は、第1乾燥室よりも下側に第2乾燥室以降の乾燥室が配置されている。
【0017】
上記実施形態によれば、第1乾燥室で処理された被処理物を、被処理物に作用する重力により、容易に第2乾燥室以降の乾燥室に搬送することができる。ここで、第2乾燥室の減圧量を第1乾燥室の減圧量よりも大きくすることにより、吸引作用の併用により、被処理物を第1乾燥室から第2乾燥室へ更に容易に搬送できる。
【0018】
一実施形態の乾燥装置は、投入装置は、入口と出口に密閉バルブが設けられたエアロックを有し、エアロック内の被処理物を第1乾燥室に吸引させて投入するように形成されている。
【0019】
上記実施形態によれば、エアロックの入口の密閉バルブが開き、かつ、エアロックの出口の密閉バルブが閉じた状態で被処理物を投入装置に投入し、この後、エアロックの入口の密閉バルブを閉じて、エアロックの出口の密閉バルブを開く。これにより、内部が減圧される乾燥室とエアロックとの間の気圧の差により、被処理物を乾燥室に迅速かつ確実に投入することができる。
【0020】
一実施形態の乾燥装置は、被処理物からの蒸気を凝縮させる凝縮部と、乾燥室内の空気を凝縮部で凝縮された凝縮水と共に吸引する吸引ポンプと、吸引ポンプで吸引した乾燥室内の空気と凝縮水を脱臭流体に接触させるスクラバとを有し、スクラバの脱臭流体が、凝縮部とスクラバとの間を循環する冷却水である。
【0021】
上記実施形態によれば、吸引ポンプで乾燥室内の空気と凝縮水とを吸引することにより、乾燥室の減圧と凝縮水の回収とを効率的に行うことができる。また、スクラバで、乾燥室内の空気と凝縮水を、脱臭流体としての冷却水に接触させることにより、乾燥室内の空気と凝縮水の脱臭を行うと共に、冷却水の冷却を行うことができる。したがって、スクラバに冷却機能を付加することができ、乾燥装置の動作効率を向上することができる。
【0022】
一実施形態の乾燥装置は、脱臭流体に、酵素が添加されている。
【0023】
上記実施形態によれば、乾燥室内の空気と凝縮水を、更に効率的に脱臭することができる。
【0024】
一実施形態の乾燥装置は、被処理物は、有機汚泥又は生ごみである。
【0025】
上記実施形態によれば、主に産業廃棄物として取り扱われる有機汚泥と、一般廃棄物として取り扱われる生ごみのいずれについても、効率的に乾燥処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態の乾燥装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】第1乾燥機の縦断面図である。
【図3】乾燥装置の横断面図である。
【図4】乾燥装置の平面図である。
【図5】変形例の乾燥装置の横断面図である。
【図6】他の変形例の乾燥装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の乾燥装置を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0028】
図1は、実施形態の乾燥装置の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態の乾燥装置は、第1乾燥機1と、第2乾燥機2と、スクラバとしてのクーリングタワー3とで大略構成されている。
【0029】
図2は第1乾燥機1の縦断面図であり、図3は乾燥装置の横断面図であり、図4は乾燥装置の平面図である。
【0030】
第1乾燥機1は、内部に乾燥室11を有する大略円筒形状のケーシング12と、乾燥室11の下部の壁面に形成されたジャケット13と、乾燥室11内に配置された加熱攪拌部14を有する。
【0031】
ケーシング12の一端の上部には、被処理物が投入される投入口12aが形成され、ケーシング12の他端の下部には、被処理物が排出される排出口12bが形成されている。ケーシング12の投入口12aには、被処理物を投入する投入装置51が設けられている。投入装置51は、被処理物の入口と出口に密閉バルブが設けられたエアロック機構が内蔵されている。投入装置51の入口から内部に被処理物を投入した後、入口の密閉バルブを閉じると共に出口の密閉バルブを開くと、大気圧の投入装置51と、大気圧よりも低い乾燥室11との気圧の差により、被処理物が乾燥室11内に吸引されて投入される。
【0032】
加熱攪拌部14は、ケーシング12の両端面に設けられた軸受121,122に両端が支持された回転軸141と、回転軸141に固定されたコイル状管体142と、コイル状管体142の外周側に配置されて一辺が5〜10cmの矩形の複数のブレード143を有する。回転軸141とコイル状管体142は内部が互いに連通しており、熱媒体としての蒸気が、軸受を介して回転軸141とコイル状管体142内に供給される。加熱攪拌部14は、モータMで回転駆動され、回転軸141とコイル状管体142で被処理物を加熱すると共に、ケーシング12内の被処理物を投入口12aから排出口12bに向かって送りをかけながら攪拌するように形成されている。ブレード143は、表面が、加熱攪拌部14の径方向の先端縁が回転方向に傾斜すると共に、軸方向の排出口12b側の側縁が反回転方向に傾斜している。これにより、加熱攪拌部14が回転するに伴い、ブレード143が、ケーシング12の内側面近傍の被処理物をすき取るようになっている。ケーシング12の側面には、長手方向に延びる図示しないメンテナンス窓が設けられており、このメンテナンス窓を開いて、加熱攪拌部14のブレード143の取り付け角度の調節や、ブレード143の交換等のメンテナンスを行うようになっている。
【0033】
ケーシング12の軸受121,122は、加熱攪拌部14の回転軸141を支持すると共に、熱媒体としての蒸気の供給と排出を行っている。供給側軸受121は、蒸気供給管123に接続された筐体124と、筐体124内に設けられて回転軸141を支持するスリーブ軸受125を有する。筐体124の内部は、回転軸141の周面に設けられた複数の連通穴141aを介して回転軸141の内部に連通すると共に、ジャケット13の内部に連通している。排出側軸受122は、蒸気排出管126に接続された筐体127と、筐体127内に設けられて回転軸141を支持するスリーブ軸受128を有する。筐体127の内部は、回転軸141の周面に設けられた複数の連通穴141bを介して回転軸141の内部に連通すると共に、ジャケット13の内部に連通している。図示しないボイラから蒸気供給管123を通して供給側軸受121に供給された蒸気が、連通穴141aを介して回転軸141に供給されると共に、ジャケット13に供給される。回転軸141に供給された蒸気は、一部がコイル状管体142に供給される。回転軸141とコイル状管体142に供給された蒸気は、回転軸141とコイル状管体142が接触する被処理物と熱交換を行った後、回転軸141の連通穴141bを通して排出側軸受122に戻る。排出側軸受122に戻った蒸気は、蒸気排出管126を通してボイラに戻される。
【0034】
加熱攪拌部14のコイル状管体142は、上流側コイル144と下流側コイル145で形成されている。回転軸141の内部は、供給側軸受121に連通する上流側室146と、排出側軸受122に連通する下流側室147とに区画されている。上流側コイル144と下流側コイル145の上流端144a,145aは、回転軸141の上流側室146に連通している。上流側コイル144と下流側コイル145の下流端144b,145bは、回転軸141の下流側室147に連通している。これにより、供給側軸受121に供給された蒸気を、上流側コイル144と下流側コイル145とに分配して流して、コイル状管体142の上流側端と下流側端との間の加熱温度差を少なくしている。
【0035】
ケーシング12内の上部には、被処理物から蒸発した蒸気を凝縮し、外部に排出するための凝縮部15が設けられている。凝縮部15は、ケーシング12の一端面に形成された冷却水供給室151と、ケーシング12の他端面に形成された冷却水排出室152を有する。冷却水供給室151には、クーリングタワー3から冷却水を供給する冷却水供給管153が接続されている。冷却水排出室152には、冷却水を排出してクーリングタワー3に戻す冷却水排出管154が接続されている。冷却水供給室151と、冷却水排出室152との間には、ケーシング12の軸方向に延在して供給室151と排出室152とに両端が連通する複数の冷却水管155,155,・・・が設けられている。複数の冷却水管155,155,・・・は、図3の横断面図に示すように、ケーシング12内の上部の幅方向の両側に振り分けて配置されている。複数の冷却水管155,155,・・・の側方と下方には、凝縮水を収集する集水樋154が設けられている。集水樋156の内側に、凝縮水と共に乾燥室11内の空気を吸引する吸引管157が連通している。
【0036】
第2乾燥機2は、投入口と排出口以外は第1乾燥機1と同様の構成を有する。すなわち、内部に乾燥室21を有するケーシング22と、ジャケット23と、加熱攪拌部24を有する。加熱攪拌部24は、内部に蒸気が供給される回転軸241及びコイル状管体242と、コイル状管体242の外周側に設けられて一辺が5〜10cmの矩形の複数のブレード243を有する。ケーシング22内の上部には、被処理物から蒸発した蒸気を凝縮し、外部に排出するための凝縮部25が設けられている。第2乾燥機2の加熱攪拌部24のブレード243も、第1乾燥機1の加熱攪拌部14のブレード143と同様に、表面が、加熱攪拌部24の径方向の先端縁が回転方向に傾斜すると共に、軸方向の排出口22b側の側縁が反回転方向に傾斜している。また、ケーシング22の側面に、長手方向に延びる図示しないメンテナンス窓が設けられている。
【0037】
第2乾燥機2のケーシング22には、一端側の下部に投入口22aが形成され、他端側の下部に排出口22bが形成されている。第1乾燥機1のケーシング12の排出口12bと、第2乾燥機2のケーシング22の投入口22aとの間は、スクリューコンベヤで形成された搬送コンベヤ52によって接続されている。第2乾燥機2の排出口22bには、スクリューコンベヤで形成された排出コンベヤ53が接続されている。排出コンベヤ53の終端には、エアロック機構を有する排出装置54が設けられている。
【0038】
第1乾燥機1と第2乾燥機2は、図3及び図4に示すように、ケーシング12,22の長手方向が平行をなすように、略同じ高さに配置されている。
【0039】
第1及び第2乾燥機1,2のいずれも、乾燥室11,21内に、酵素が添加されている。酵素は、海、山及び陸等の自然界に生息する土着菌や発酵菌等の微生物を採取、培養したものを乾燥室11,21内に投入して添加する。特に、余剰汚泥等の有機汚泥を発酵させて脱臭を行うには、各種の動植物や土壌に生息する菌が有効であることが見出されている。菌が生息する動植物や土壌としては、よもぎ、野草、薬草、海辺の草、笹、竹やぶの土、山林の土、魚、海草、果実、パイナップル、リンゴ、ミカン、ビワ及びブドウ等がある。これらに生息する菌を、米ぬか又はオガ屑で培養して用いるのが好ましい。本実施形態では、減圧値0.03〜0.07MPaの減圧下、熱媒体温度60〜80℃で30分から2〜3時間にわたり、被処理物を攪拌しながら発酵菌を混合して脱臭を行うので、かかる条件下で発酵生育する微生物が好ましい。乾燥室11,21内に添加する酵素として、次の酵素のうちの少なくとも1つを採用することができる。なお、各酵素に続く括弧内に、各酵素が作用する物質を記している。アルコールデハイドロゲナーゼ(アルコール)、ラクテートデハイドロゲナーゼ(乳糖)、グルコース6リン酸デハイドロゲナーゼ(糖質)、アルデヒドデハイドロゲナーゼ(アルデヒド)、L・アスパルテイト・ベーターセミアルデヒド・NADPオキシドレクターゼ(アルデヒド)、グルタミン酸デハイドロゲナーゼ(アミノ酸)、アスパラギン酸セミアルデヒド・デハイドロゲナーゼ(アミノ酸)、NADPH2チクトクロームC・リアクターゼ(NADP)、グルタチオン・デハイドロゲナーゼ(グルタチオン)、トレハローズリン酸シンテクターゼ(糖質)、ポリフォスヘエードキナーゼ(ATP)、エタノールアミンフォスヘエードサイチジル・トランスフェラーゼ(CTP)、トレハローズフォスファターゼ(糖質)、メタルチオ・フォスフォ・グリセレート・フォスファターゼ(グリセリン)、イヌラーゼ(イヌリン)、β−マンノシターゼ(糖質)、ウリジン・ヌクレオシターゼ(アミノ酸)、シトシン・ジアミナーゼ(シトシン)、メチルシステインシンテターゼ(アミノ酸)、アスパラギン酸シンテターゼ(ATP)、コハク酸デハイドロゲナーゼ(コハク酸)、アコニチン酸ハイドロゲナーゼ(クエン酸)、フマレイトハイドロゲナーゼ(マロン酸)、マレイトデハイドロゲナーゼ(マロン酸)、クエン酸シンテターゼ(アセチルCouA)、イソクエン酸デハイドロゲナーゼ(クエン酸)、LSNADPオキシダクターゼ(クエン酸)、モノアミンオキシダクターゼ(アミン)、ヒスタミナーゼ(アミン)、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(オキソ酸)、ATPアーゼ(ATP)、ヌクレオチドピロフォスファターゼ(核酸)、エンドポリフォスファターゼ(ATP)、ATPフォスフォハイドロラーゼ(ATP)、オロチジン5リン酸デカルボキシラーゼ(オロチジン)。これらのうちの少なくとも1つの酵素を含む微生物を、被処理物Wに含ませることにより、多種類の有機物成分からなる被処理物Wに対して効果的に分解処理を行うことができる。
【0040】
クーリングタワー3は、第1及び第2乾燥機1,2の凝縮部15,25から真空ポンプVP1,VP2で吸引された凝縮水と、乾燥室11,21内の空気が供給される。クーリングタワー3は、第1乾燥機1の冷却水排出室152と第2乾燥機2の冷却水排出室から回収した冷却水を風で冷却し、冷却した冷却水を冷却水ポンプP1,P2で、第1乾燥機1の冷却水供給室151と第2乾燥機2の冷却水供給室に戻す。また、クーリングタワー3は、凝縮水の脱臭処理を行うスクラバとして機能し、冷却水がスクラバの脱臭流体として機能する。
【0041】
上記クーリングタワー3は、冷却水を噴射するノズル31と、このノズル31から噴射された冷却水が流下する流下部32と、この流下部32を流れる冷却水に風を送るファン33と、上記流下部32を流れた冷却水を受ける水槽34を有する。水槽34には、凝縮部15から冷却水が導かれる冷却水管と、真空ポンプVP1,VP2から凝縮水が導かれる凝縮水管が接続されている。この凝縮水管には、ダストセパレータが介設されている。水槽34内には、散水ポンプSPが介設された散水管の一端が開口しており、この散水管の他端はノズル31に接続されている。上記流下部32には、樹脂で形成された多孔性の充填材が配置されている。クーリングタワー3において、水槽34に導かれた凝縮水が冷却水に混ざり、この凝縮水が混ざった冷却水がノズル31に導かれる。ノズル31から噴射された冷却水は、流下部32を流れる際にファン33からの風で温度が降下して、水槽34内に流入する。クーリングタワー3で冷却された冷却水は、冷却水ポンプP1,P2によって第1及び第2乾燥機1,2の凝縮部15,25に戻される。
【0042】
上記クーリングタワー3と凝縮部15,25との間を循環する冷却水には、酵素が添加されている。この酵素は、乾燥室11,21内に微生物を投入して添加されたのと同様に、土着菌や発酵菌等の微生物が冷却水に投入されることによって添加されている。冷却水に添加される酵素は、上述の乾燥室11,21に添加できる複数の酵素のうち、少なくとも1つであればよい。冷却水中に酵素を添加することにより、凝縮水中に含まれる臭気成分や水溶性有害物質等を分解除去する。酵素による臭気成分等の分解は、クーリングタワー3及び凝縮部15,25の間に形成される冷却水の循環路において行われる。特に、クーリングタワー3の流下部32の充填材が微生物の担体として機能し、この流下部32で臭気の分解を促進するのが好ましい。
【0043】
本実施形態の乾燥装置は、凝縮水を冷却水に混ぜることにより、臭気成分等の濃度を全体として低減させるので、凝縮水の臭気成分等が増大しても微生物の処理能力を越える虞が少なくて、安定した微生物処理を行うことができる。また、乾燥室11,21内が減圧されていることから、凝縮部15,25で冷却水が室内空気と熱交換する際の冷却水の温度上昇が比較的小さくて、冷却水の温度は概ね40〜45℃になる。これにより、冷却水中の微生物が高温によって死滅する不都合が防止され、微生物が安定して活性化され、凝縮水を安定して微生物で脱臭することができる。
【0044】
また、クーリングタワー3では、冷却水の蒸発が促進されるのでオーバーフローが殆ど生じない。しかも、凝縮水中の臭気成分等は冷却水で薄められるので、高度に分解除去できる。したがって、乾燥装置の外部に臭気成分や有害成分が排出される不都合を効果的に防止できる。また、水槽34には、真空ポンプVP1,VP2によって凝縮水と共に乾燥室11,21内の空気が導かれる。この水槽34に導かれた空気に含まれる臭気成分等は、水槽34内の冷却水や、流下部32から滴下する冷却水に接触して溶解し、この冷却水の微生物によって分解除去される。このように、クーリングタワー3は、乾燥室11,21から導かれる空気のスクラバとしても機能し、冷却水が脱臭流体として機能する。
【0045】
上記乾燥装置で被処理物を乾燥する場合、第1乾燥室11の内部の空気を真空ポンプVP1で吸引すると共に、第2乾燥室21の内部の空気を真空ポンプVP2で吸引して、いずれも大気圧よりも低い圧力に減圧する。ここで、第1乾燥室11の減圧値を0.03〜0.07MPaとし、水の沸点を約90〜68℃に低下させることができる。なお、減圧値とは、大気圧から低減させる圧力の大きさをいう。一方、第2乾燥室21の減圧値を0.05〜0.09MPaとし、水の沸点を約80〜46℃に低下させることができる。
【0046】
各乾燥機1,2に供給する熱媒体としては、ジャケット13,23には0.2〜0.3MPaかつ130℃の蒸気を用いる一方、加熱攪拌部14,24には0.7〜0.8MPaかつ170℃の蒸気を用いる。このように、可動部である加熱攪拌部14,24にジャケット13,23よりも高い温度の熱媒体を供給することにより、被処理物の付着を防止しながら効率的に蒸発させることができる。また、乾燥室11,21内が減圧されているので、常圧で乾燥させるよりも熱媒体の温度を低く設定できる。したがって、熱媒体としての蒸気の生成エネルギーを削減できる。また、被処理物の加熱温度が低いので、第1及び第2乾燥室11,21内に添加されて脱臭を行う微生物の死滅を防止でき、効果的に脱臭を行うことができる。
【0047】
また、第1乾燥室11には、質量比で80〜96%の水分量である高水分の被処理物が投入される一方、第2乾燥室21には、第1乾燥室11で乾燥処理されて質量比で50〜60%の水分量である中水分の被処理物が投入される。第2乾燥室21は、中水分の被処理物を乾燥させて、質量比で30%以下の水分量である低水分の被処理物を排出する。ここで、第2乾燥室21の減圧値を、第1乾燥室11の減圧値よりも大きく設定し、第2乾燥室21の気圧が第1乾燥室11よりも低い状態で乾燥させる。これにより、被処理物の水分量が第1乾燥室11の被処理物の水分量よりも少ない第2乾燥室21において、乾燥効率を向上させて、第1乾燥室11の乾燥効率とあわせることができる。したがって、第1乾燥室11で乾燥させて第2乾燥室21に搬送する被処理物の量と、第2乾燥室21で乾燥させて第2乾燥室21から排出する被処理物の量を、概ね同じに揃えることができる。その結果、第1乾燥室11と第2乾燥室21で連続的に乾燥処理を行うことができる。ここで、連続的な乾燥処理とは、投入装置51で第1乾燥機1に連続して被処理物を投入すると共に、第1乾燥機1から第2乾燥機2へ搬送コンベヤ52で連続して被処理物を搬送し、更に、第2乾燥機2からの乾燥室21から排出コンベヤ53で連続して被処理物を排出する場合に限られない。少なくとも第1乾燥機1の加熱攪拌部14と、第2乾燥機2の加熱攪拌部24が連続して動作していれば、投入装置51による被処理物の投入と、搬送コンベヤ52による被処理物の搬送と、排出コンベヤ53による被処理物の排出は、断続的であってもよい。
【0048】
さらに、第2乾燥室21の加熱攪拌部24の回転速度は、第1乾燥室11の加熱攪拌部14の回転速度よりも大きく設定するのが好ましい。これにより、第1乾燥室11の被処理物よりも水分量が少なくて乾燥し難い乾燥第2乾燥室21の被処理物を、第1乾燥室11の被処理物と同じ程度に乾燥させることができ、第1乾燥室11と第2乾燥室21とで被処理物の連続処理を行うことができる。ここで、第1乾燥室11の加熱攪拌部14の回転速度を10rpm(回転毎分)と設定する一方、第2乾燥室21の加熱攪拌部24の回転速度を30rpmと設定することができる。なお、第1乾燥室11と第2乾燥室21の被処理物の水分量に応じて、第1乾燥室11の加熱攪拌部14の回転速度を1rpm〜20rpmの間に設定すると共に、第2乾燥室21の加熱攪拌部24の回転速度を10rpm〜60rpmの間に設定することができる。
【0049】
また、第1乾燥室11及び第2乾燥室21の加熱攪拌部14,24は、コイル状管体142,242の外周側に設けられたブレード143,243により、ケーシング12,22の内側面の近傍の被処理物をすき取ることができる。したがって、ケーシング12,22のジャケット13,23が形成された位置の内側面に、被処理物が固着する不都合を効果的に防止できる。
【0050】
上記実施形態の乾燥装置において、第1乾燥機1と第2乾燥機2で乾燥され、水分量が質量比で30%以下となった低水分の被処理物は、排出装置54のエアロック機構を通して排出される。
【0051】
このように、本実施形態の乾燥装置は、第1乾燥機1と第2乾燥機2により、第1乾燥機1の乾燥室11よりも第2乾燥機2の乾燥室21を大きい減圧値で減圧し、第1乾燥機1の加熱攪拌部14よりも第2乾燥機2の加熱攪拌部24を大きい回転速度で回転することにより、高水分の被処理物を、第1乾燥機1と第2乾燥機2乾燥機とで連続的に乾燥処理をして、低水分の被処理物を得ることができる。また、第1乾燥機1と第2乾燥機2で凝縮された凝縮水を、スクラバとして機能するクーリングタワー3で脱臭を行うことができる。これらにより、例えば下水汚泥やし尿等の臭気が強くて水分量の高い有機汚泥を、高い効率で乾燥及び脱臭処理することができる。その結果、被処理物の乾燥処理効率を、従来の3倍程度に増大できることが確認された。
【0052】
上記実施形態において、第1乾燥機1で処理された被処理物を、第1乾燥機1のケーシング12の下部の排出口12bから第2乾燥機2のケーシング22の下部の投入口22aへ、水平に延在する搬送コンベヤ52で搬送したが、図5の横断面図に示すように、第2乾燥機2のケーシング22の上部に投入口を設け、第1乾燥機1のケーシング12の下部の排出口12bから第2乾燥機2のケーシング22の上部の投入口へ、傾斜して配置した搬送コンベヤ52を通して被処理物を搬送してもよい。
【0053】
上記実施形態において、乾燥装置は、第1乾燥機1と第2乾燥機2を略同じ高さに配置して形成したが、第1乾燥機1よりも下方に第2乾燥機2に配置してもよい。図6の側面図に示すように、第1乾燥機1の直下に第2乾燥機2を配置することにより、第1乾燥機1の被処理物を第2乾燥機2に搬送する搬送コンベヤを省略し、開閉バルブ55のみによって第1乾燥機1の被処理物を第2乾燥機2に搬送することができる。ここで、第2乾燥機2の乾燥室21の減圧値を第1乾燥機1の乾燥室11の減圧値よりも大きくすることにより、第2乾燥機2の吸引作用によって第1乾燥機1の被処理物を容易に搬送することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 第1乾燥機
2 第2乾燥機
3 クーリングタワー
11,21 乾燥室
12,22 ケーシング
13,23 ジャケット
14,24 加熱攪拌部
P1,P2 冷却水ポンプ
VP1,VP2 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が投入され、内部が減圧される乾燥室と、
乾燥室内に配置され、熱媒体が内部に供給される回転軸と、この回転軸に固定され、熱媒体が内部に供給されるコイル状管体と、このコイル状管体の外周側に配置されたブレードとを有する加熱攪拌部と、
乾燥室の壁面に形成され、熱媒体が供給されるジャケットと
を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置において、
加熱攪拌部を有して内部が減圧される乾燥室を複数個備え、第1乾燥室で処理された被処理物を、第2乾燥室以降の乾燥室に順次送って処理するように形成され、
第2乾燥室以降の乾燥室の加熱攪拌部の回転速度が、第1乾燥機の加熱攪拌部の回転速度よりも大きいことを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乾燥装置において、
第1乾燥機に被処理物を連続的に投入する投入装置と、第1乾燥室から第2乾燥室以降の乾燥室へ被処理物を連続的に順次搬送する搬送装置と、最終の乾燥室から被処理物を連続的に排出する排出装置とを備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
請求項2に記載の乾燥装置において、
第1乾燥室よりも下側に第2乾燥室以降の乾燥室が配置されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
請求項2に記載の乾燥装置において、
投入装置は、入口と出口に密閉バルブが設けられたエアロックを有し、エアロック内の被処理物を第1乾燥室に吸引させて投入するように形成されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
請求項2に記載の乾燥装置において、
被処理物からの蒸気を凝縮させる凝縮部と、乾燥室内の空気を凝縮部で凝縮された凝縮水と共に吸引する吸引ポンプと、吸引ポンプで吸引した乾燥室内の空気と凝縮水を脱臭流体に接触させるスクラバとを有し、スクラバの脱臭流体が、凝縮部とスクラバとの間を循環する冷却水であることを特徴とする乾燥装置。
【請求項7】
請求項5に記載の乾燥装置において、
脱臭流体に、酵素が添加されていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項8】
請求項1に記載の乾燥装置において、
被処理物は、有機汚泥又は生ごみであることを特徴とする乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236731(P2010−236731A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83576(P2009−83576)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】