説明

事故防止システム

【課題】専用の情報送受信用端末を備えていない車両や通行者に対しても、道路から工事現場へ工事車両が進入することによる危険を通知し、当該工事車両との衝突事故を予防することができる事故防止システムを提供する
【解決手段】工事現場101の進入口102から車線111に沿った上流側には、無線基地局1が設置される。さらに、この無線基地局1から上流側には、表示器3が設置される。無線基地局1が工事用車両201のETC車載器2から個体識別番号を取得し、予め設定した個体識別番号と一致することを検出すると、無線基地局1は、表示器3に対して、工事車両201が減速して工事現場101に進入する旨の表示制御を行う。表示器3は、この表示制御に従い、車線111の上流側に向けて表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工事車両や救急車等の特定場所に関係する関係車両や一般車両等が通行する道路から特定場所に関係車両が進入する際に、当該関係車両へ周囲の車両等が衝突することを防止する事故防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上を走行中の車両に対して、各種情報を提供するシステムが各種開示されている。例えば、特許文献1には、走行中の車両と固定点に設置された近距離無線通信装置との間で、質問信号と応答信号とを送受信する情報提供システムが開示されている。また、特許文献2には、データセンターにおいてアプリケーションおよびデータの更新が必要なバスの情報および更新情報を保持し、更新が必要なバスへの通信をアクセスして、必要な更新情報を送信するアプリケーション/データ更新システムが開示されている。
【特許文献1】特開2003−69489公報
【特許文献2】特開2004−348545公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように走行車両に情報を送るシステムが各種存在するが、これらの方法では、情報の提供を受ける走行車両の全てに情報送受信用端末を備えており、当該情報送受信用端末を搭載している車両にのみ情報が提供される。
【0004】
ところで、例えば、工事現場にて工事車両が一般道から工事現場へ進入するような場合、工事車両が減速するため、後続車両の運転手が気をつけておかないと、工事車両に衝突する可能性がある。また、工事車両が対向車線を横切って工事現場に進入するような場合には、対向車線を走行中の車両が工事車両に衝突する可能性がある。さらには、工事車両が一般道から路側帯や側道を横断して工事現場に進入するような場合には、路側帯や側道を利用する自転車や歩行者と工事車両が衝突する可能性がある。
【0005】
しかしながら、上述の後続車両、対向車線車両、路側帯および側道の通行者は、工事車両の進入情報を取得する情報送受信用端末を用いていない可能性があり、工事車両の挙動のみで、工事現場への進入を推測して衝突を回避しなければならなかった。
【0006】
したがって、この発明の目的は、専用の情報送受信用端末を備えていない車両や通行者に対しても、道路から工事現場へ工事車両が進入する等の関係車両が特定場所に進入することによる危険を通知し、当該関係車両との衝突事故を予防することができる事故防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、特定場所に進入する関係車両との事故を防止する事故防止システムである。この発明の事故防止システムは、関係車両に設置されたITS通信機能を有する端末装置と、特定場所の進入口近傍に設置された無線基地局と、無線基地局からの制御を受けて所定の通知を行う状況通知手段と、を備える。この発明の無線基地局は、ITS通信機能を有する端末装置からの信号に基づいて、関係車両が特定場所へ進入する旨の通知を行わせるよう状況通知手段への通知制御を行うことを特徴としている。
【0008】
この構成では、関係車両が特定場所の進入口に向かって走行して進入口から所定の範囲内に達すると、無線基地局が関係車両のITS通信機能を有する端末装置と通信を行う。具体的には、工事車両が工事現場に進入する場合や、救急車が病院に侵入する場合に、無線基地局が関係車両のITS通信機能を有する端末装置と通信する。無線基地局は、このITS通信機能を有する端末装置から発する信号に基づいて、状況通知手段に特定通知の制御を行う。状況通知手段は、この制御を受けて、関係車両が特定場所へ進入することを示す内容の事故防止用の通知を行う。これにより、一般車両のドライバ等に対して注意を促すことができる。
【0009】
また、この発明の事故防止システムでは、ITS通信機能を有する端末装置からの信号は、前記端末装置の個体識別番号情報である。そして、無線基地局は、個体識別番号情報が予め設定した個体識別番号であることを検出すると、状況通知手段への通知制御を行うことを特徴としている。
【0010】
この構成では、ITS通信機能を有する端末装置を検出する情報として、個体識別番号を用いる。個体識別番号は端末装置のそれぞれに固有の情報であるので、個体識別番号による該当端末装置の検出が可能となる。
【0011】
また、この発明の事故防止システムでは、ITS通信機能を有する端末装置がETC車載器であることを特徴としている。
この構成では、ITS通信機能を有する端末装置として従来ノンストップ自動料金支払いシステムで利用されているETC車載器を用いる。ETC車載器は、現在一般に多く普及しており、且つETC車載器毎に固有の個体識別番号を有するので、本発明のシステムへの導入には最適なものの一つである。
【0012】
また、この発明の事故防止システムの無線基地局は、進入口から道路に沿って、自動車の流れの上流側に第1設置距離だけ離れた位置で、且つ道路における前記進入口側の路側の近傍に設置されている。また、状況通知手段は、路側に沿った無線基地局からさらに上流側に第2設置距離だけ離れた位置に設置され、道路に沿った上流側に通知を行うことを特徴としている。
【0013】
この構成では、具体的に、無線基地局および状況通知手段は、道路に対して、特定場所の進入口と同じ側で、且つ進入口に対して進行方向の上流側に設置される。この際、無線基地局は、関係車両の減速開始位置と、無線の有効到達範囲とを考慮した第1設置距離に設置される。また、状況通知手段は、無線基地局よりもさらに上流側に設置される。この際、状況通知手段は、該状況通知手段で通知された内容を後続の一般車両のドライバが認識して十分に減速対策が可能な第2設置距離に設置される。これにより、関係車両と同じ車線を走行中の後続車両が関係車両に追突することを予防するように、注意を促すことができる。
【0014】
また、この発明の事故防止システムの状況通知手段は関係車両に設置させていることを特徴としている。
【0015】
この構成では、状況通知手段が関係車両に設置されていることで、関係車両周囲の一般車両に対して、より明確な通知を行うことができる。
【0016】
また、この発明の事故防止システムの状況通知手段は、道路に対して進入口と対向する車線側に設置されていることを特徴としている。
【0017】
この構成では、対向車線を走行中の一般車両のドライバに対して、前方を走行中の関係車両が特定場所に進入する旨の通知が行われる。これにより、対向車線を走行する一般車両のドライバに注意を促すことができる。
【0018】
また、この発明の事故防止システムの無線基地局は、道路に対して進入口と対向する車線側に設置されていることを特徴としている。
【0019】
この構成では、進入口側の車線と対向する対向車線から道路を横切って、特定場所に進入する関係車両がある場合に、関係車両が道路を横切って特定場所に進入する旨の通知を、一般車両に対して行う。これにより、関係車両が道路を横切ることについて各一般車両のドライバへ注意を促すことができる。
【0020】
また、この発明の事故防止システムは、進入口の近傍に設置された側道用の状況通知手段を備える。そして、この事故防止システムの無線基地局は、側道用の状況通知手段に対して、関係車両が特定場所に進入する旨の通知を行わせることを特徴としている。
【0021】
この構成では、特定場所の進入口付近の歩行者等に対して、関係車両が歩道等を横切って特定場所に進入する旨の通知が行われる。これにより、歩行者に注意を促すことができる。
【0022】
また、この発明の事故防止システムでは、状況通知手段が表示器であることを特徴としている。
【0023】
この構成では、前述の通知を視覚的に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、工事現場に進入する工事用車両等の特定場所に進入する関係車両が、進入に際して減速したり、前方を横切ったりする可能性があることを、周囲の一般車両や歩行者に通知することができる。これを見た一般車両のドライバや歩行者は、関係車両の挙動に注意し、事故防止措置を執ることができる。この際、一般車両のドライバや歩行者に対して、専用の通信機を持たせる必要がないので、比較的簡素なシステムで衝突予防を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る事故防止システムについて図を参照して説明する。
図1は本実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
図2は本実施形態の事故防止システムの無線基地局1、ETC車載器2、表示器3の主要構成を示すブロック図である。
【0026】
図3は本実施形態の事故防止システムのシステムフロー図である。
なお、以下の説明では、「特定場所」として「工事現場」を設定し、「関係車両」として「工事車両」を設定した場合を示すが、他の組み合わせであっても、以下の構成を適用することができる。例えば、「特定場所」が「病院や消防署」であり、「関係車両」が「救急車」である場合や、「特定場所」が「車庫」であり、「関係車両」が「バス」である場合、さらには、「特定場所」が「配送センター」であり、「関係車両」が「宅配車両」である場合等にも適用することができる。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の事故防止システムは、道路100の工事現場101側の路側に設置された無線基地局1、表示器3と、工事車両201に搭載されたETC車載器2とを備える。
【0028】
道路100は、例えば、図1に示すように車線111、車線112の片側一車線ずつからなる一般道である。道路100の車線111の路側には、工事現場101があり、当該工事現場101と道路100の車線111との境界部が進入口102となる。
【0029】
無線基地局1は、車線111の路側の進入口102から所定距離だけ上流側に設置されている。無線基地局1と進入口102との距離は、進入口102に進入する工事用車両201が、右折進入に対して減速を開始する時点よりも前に、無線基地局1が工事用車両201に搭載されたETC車載器2を検知することができる距離で設定されている。この距離が、本発明の第1設置距離に相当する。例えば、道路100の最高制限速度と、工事車両201の減速性能と、無線基地局1の無線電波の有効到達距離とにより設定される。すなわち、工事用車両が最高制限速度で走行中に減速して、進入口102に右折して進入することができるための、進入口102から最も遠い位置を算出し、この算出された距離を含む範囲が無線基地局1から有効な電波の到達範囲となるように設定する。
【0030】
表示器3は、車線111の路側で、無線基地局1からさらに上流側に設置されている。無線基地局1と表示器3との距離は、無線基地局1から衝突予防の通知表示の制御が行われた場合に、工事用車両201の直後を走行する一般車両202が、表示器3の表示を視認できる範囲で、且つ、視認後に衝突防止動作が可能な程度の距離に設定されている。例えば、無線機基地局1の電波の路側に沿った方向の到達距離と、前述の工事用車両201の長さと、統計的に得られる一般道の車間距離との合算値を用いる。もちろん、この合算値により得られる位置よりも無線基地局1側(下流側)に設置してもよく、反対に、無線基地局1から遠い側(上流側)に設置してもよく、現状に応じて適宜設定すればよい。この際、進入口102から表示器3までの距離が本発明の第2設置距離に相当する。
【0031】
工事車両201にはETC車載器2が搭載されており、工事用車両201から電力を受けて動作する。
【0032】
次に、各部の詳細について説明する。
無線基地局1は、制御部10、無線制御部11、送受信アンテナ12、通信I/F13、外部装置制御部14、メモリ15、電源部19を備える。
制御部10は無線基地局1の全体制御を行うとともに、予め設定されたETC個体識別番号と、検知結果から得られたETC個体識別番号とを照合して一致すれば、衝突予防の表示制御信号を、外部装置制御部14に与える。なお、この具体的な処理は後述する。
無線制御部11は、送受信アンテナ12から送信するETC探知信号の生成、および、送受信アンテナ12で受信した被検知信号の取得、解析を行う。この際、無線制御部11は、ETC車載器を検出した場合、すなわち被検知信号を取得した場合には、ETCの個体識別番号を制御部10に与える。送受信アンテナ12は、所定の指向性を有するアンテナであり、本実施形態の場合であれば、車線111の無線基地局1から上流方向に所定距離の領域を主たる電波放射範囲とするように設定されている。具体的に、無線制御部11は、所定の時間間隔でETC探知信号を生成して送受信アンテナ12から送信する。この際、無線制御部11は、予め通信チャンネルを設定しておき、当該設定した通信チャンネルでETC探知信号を生成、送信する。
【0033】
通信I/F13は、外部機器との通信を制御する。例えば、外部接続式の入力装置やPC等の通信機器と接続した際の通信データ制御を行う。このように接続された入力装置から、ETCの個体識別番号が入力されると、通信I/F13は、このETC個体識別番号を取得して、制御部10に与える。
【0034】
外部装置制御部14は、制御部10からの各種制御信号に基づいて、外部接続された機器に、対応する制御信号を出力する。具体的に、本実施形態の場合では、制御部10から表示制御信号を受け付けると、外部接続された表示器3に、当該表示制御信号を出力する。
【0035】
メモリ15は、無線基地局1の各種プログラム等が記憶されているとともに、通信I/F13を介して入力された工事車両のETC個体識別番号を記憶する。電源部19には、外部からAC電力が供給され、所定の電力形式に変換して無線基地局1の各部に供給する。
【0036】
ETC車載器2は、制御部20、無線制御部21、送受信アンテナ22、通信I/F23、電源部29を備える。なお、一般的な自動料金支払いに関するETC車載器2の機能は既知であるので説明を省略する。
【0037】
制御部20は、ETC車載器2の全体制御を行う。無線制御部21は、送受信アンテナ22を介して受信した無線基地局1からのETC探知信号を受信して、自身の個体識別番号(個体ID)を含む被検知信号を生成し、送受信アンテナ22から送信する。通信I/F23は、既知のETCカード等を読み取るインターフェースである。このETCカードの個体コードを前述の個体識別番号に用いても良い。電源部29は、当該ETC車載器2が搭載された工事用車両201から電力の供給を受け、ETC車載器2の各部に電力を供給する。
【0038】
表示器3は、ディスプレイ30と表示制御部31とを備える。表示制御部31は、無線基地局1から表示制御信号を受信すると、ディスプレイ30に対して表示制御を行う。ディスプレイ30は、表示器3において、無線基地局1および工事現場101の進入口102と反対の方向が表示方向となるように設置される。そして、表示器3は、例えばLED表示パネル等からなり、表示制御部31の制御により、衝突予防のメッセージ等を表示する。例えば、「!前方工事用車両が減速します!」や、「減速注意!」等のメッセージを表示する。
【0039】
次に、図3を用いて本実施形態の事故防止システムの動作フローを説明する。
図3は本実施形態の事故防止システムのシステムフロー図である。
【0040】
まず、事前処理として、無線基地局1は、工事用車両を識別するためのETC個体識別番号を外部入力機器を介して取得し、メモリ15に記憶する(S101)。また、無線基地局1は、予め設定された通信帯域およびその現場の電波状況に応じて、通信チャンネルを設定する(S102)。
【0041】
無線基地局1は所定の時間間隔でETC探知信号を送信し続ける(S111)。
ETC車載器2を搭載した工事用車両201が走行車線111を走行中、ETC車載器2は待機状態にあるが(S211)、工事用車両201が無線基地局1の有効電波範囲に到達すると、ETC車載器2はETC探知信号を受信して(S212:Y)、自身の個体ID(個体識別番号)を含む被検知信号を送信する(S213)。
無線基地局1は、電源オン時には被検知信号の受信待機状態にあり(S121)、ETC車載器2からの被検知信号を受信すると(S122:Y)、個体識別番号を取得する。無線基地局1は、取得した個体識別番号が、予め記憶した工事用車両の個体識別番号と一致することを検知すると(S123:Y)、表示制御信号を生成して、表示器3に送信する。なお、取得した個体識別番号が予め設定した工事用車両の個体識別番号でなければ、表示制御を行わず、被検知信号の受信待機状態に戻る(S123:N)。
【0042】
表示器3は、表示制御信号を受信すると(S311)、ディスプレイ30に前述したような衝突予防の通知を表示する(S312)。なお、この際、表示時間は、内蔵のタイマ等で予め設定してもよく、無線基地局1から表示終了制御信号を受け付けるまでの時間に設定しても良い。また、表示は、常時点灯表示でも点滅表示でもよい。
【0043】
このような表示が行われると、工事用車両201の後続の一般車両202は、表示器の衝突予防通知を視認して、前方の工事用車両201が減速して工事現場101に進入することを知ることができる。これにより、工事用車両201への追突を予防することができる。この際、後続の一般車両202には、ETC車載器や専用の表示器を設置する必要がないので、事故防止システムを比較的簡素な構成で実現することができる。
【0044】
次に、第2の実施形態に係る事故防止システムについて図を参照して説明する。
【0045】
図4は本実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
本実施形態の事故防止システムは、工事用車両201のリアに車載用表示器4を設置した例であり、他の構成は、第1の実施形態に示したものと同じである。なお、本実施形態では、第1の実施形態の図2、図3に示した表示器3は、表示器3と車載表示器4とに置き換えることができる。
【0046】
この構成では、無線基地局1は、工事用車両201のETC車載器2の個体識別番号が予め記憶した個体識別番号に一致すると、表示器3とともに、車載用表示器4にも衝突予防の通知を行う表示制御信号を送信する。この際、無線基地局1は、表示制御信号を送受信アンテナ12から送信する。工事用車両201の車載用表示器4には、図示しないが、アンテナおよび無線制御部が備えられており、車載用表示器4は、無線基地局1からの表示制御信号を受信してディスプレイ40に衝突予防の通知を表示する。表示内容は、表示器3と同等の内容のものであり、自車が減速して工事現場101に右折進入する旨のものである。工事用車両201の後続の一般車両202のドライバは、この車載用表示器4の表示を視認して、衝突防止の措置を行う。
【0047】
本実施形態の構成を用いることで、工事用車両201の後続の一般車両202のドライバは、視線を路側方向に向けることなく、前方の工事用車両201のこの先の挙動を察知することができるので、より安全に衝突防止措置を実行することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、表示器3と車載用表示器4とを同時に用いる例を示したが、車載用表示器4のみを用いる態様であっても良い。また、本実施形態では、無線基地局1から車載用表示器4に直接表示制御信号を送信する例を示したが、ETC車載器2に表示制御信号を中継する機能を持たせ、ETC車載器2経由で表示制御信号を伝搬しても良い。
【0049】
次に、第3の実施形態に係る事故防止システムについて図を参照して説明する。
図5は本実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【0050】
本実施形態の事故防止システムは、無線基地局1を、道路100に対して工事現場101の進入口102と対向する路側に設置し、無線基地局1側の路側に表示器3Aを設置し、進入口102側の路側に表示器3Bを設置したものである。
【0051】
図5に示すように、工事現場101の進入口102は、道路100の車線112側の路側に存在する。無線基地局1は、道路100において、進入口102側と対向する車線111の路側に設置されており、当該車線111の上流を探知範囲として、ETC探知信号を送信する。
【0052】
表示器3Aは、無線基地局1と同じ路側で、車線111における無線基地局1より上流側に設置されている。表示器3Aは、ディスプレイ30Aが無線基地局1側と反対の方向となる車線111の上流側を表示方向とするように設置されている。
【0053】
表示器3Bは、進入口102と同じ路側で、車線112における進入口112より上流側(車線111における進入口112より下流側)に設置されている。表示器3Bは、ディスプレイ30Bが進入口102と反対の方向となる車線112の上流側を表示方向とするように設置されている。
【0054】
このような構成では、無線基地局1が工事用車両201のETC車載器2の個体識別番号を取得し、予め記憶した個体識別番号と一致することを検出すると、無線基地局1は、表示器3A,3Bに表示制御信号を送信する。表示器3A,3Bは、表示制御信号を受けて、それぞれに個別の表示をディスプレイ30A,30Bに行う。より具体的には、表示器3Aは、車線111の上流側に向けて、「前方の工事用車両が減速して工事現場101の進入口102に進入する」旨の表示を行う。表示器3Bは、車線112の上流側に向けて、「前方を工事用車両が横切って進入口102に進入する」旨の表示を行う。
【0055】
これにより、対向する二車線を走行する一般車両202,203へ、衝突予防の通知を行うことができる。すなわち、工事車両201が走行する車線の一般車両のみでなく、対向車線の一般車両にも衝突予防の通知を行うことができる。
【0056】
次に、第4の実施形態に係る事故防止システムについて図を参照して説明する。
図6は本実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【0057】
本実施形態の事故防止システムは、図5の第3の実施形態で示した事故防止システムにおいて、進入口102側の路側にも無線基地局を設置したものである。すなわち、工事現場101の近傍の進入口102側の路側に無線基地局1Bを設置し、対向車線側の路側に無線基地局1Aを設置したものである。
【0058】
このような構成では、無線基地局1A,1Bの少なくともいずれか一方が、予め設定された個体識別番号のETC車載器を検知すると、表示器3A,3Bの双方に表示制御信号を送信する。この際、表示制御信号には発信元の無線基地局1A,1Bの識別情報が含まれている。表示器3A,3Bは、表示制御信号を受けると、発信元の無線基地局を検出し、発信元に応じた衝突予防の通知を表示する。具体的に、例えば、無線基地局1Bが予め設定された個体識別番号のETC車載器を検知すると、表示器3Bは、車線112の上流側に向けて、「前方の工事用車両が減速して工事現場101の進入口102に進入する」旨の表示を行う。一方、表示器3Aは特に表示を行わない。また、無線基地局1Aが予め設定された個体識別番号のETC車載器を検知すると、表示器3Aは、車線111の上流側に向けて、「前方の工事用車両が減速して工事現場101の進入口102に進入する」旨の表示を行う。一方、表示器3Bは、車線112の上流側に向けて、前方を工事用車両が横切って進入口102に進入する」旨の表示を行う。
【0059】
これにより、工事現場101に対していずれの方向から工事用車両102が到来しても、対向する両車線の一般車両に対して、必要十分な衝突予防の通知を行うことができる。
【0060】
次に、第5の実施形態に係る事故防止システムについて図を参照して説明する。
図7は本実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【0061】
本実施形態の事故防止システムは、道路100の路側に歩道帯113,114が存在する場合を示すものであり、歩道帯113,114および歩道帯用表示器5A,5Bを除き第1の実施形態と同じである。なお、第1の実施形態と同じ箇所については説明を省略する。
【0062】
工事現場101の進入口102の両脇には、歩道帯用表示器5A,5Bが設置されている。歩道帯用表示器5Aは、進入口102から車線111の上流側に向く歩道帯113上にディスプレイ50Aが向くように設置されており、歩道帯用表示器5Bは、進入口102から車線111の下流側に向く歩道帯113上にディスプレイ50Bが向くように設置されている。歩道帯用表示器5A,5Bは同じ内容の通知を表示する。例えば、「まもなく進入口に工事用車両が進入する」旨の表示を行う。この表示は、無線基地局1Aから表示制御信号を受信することで行われる。
【0063】
このような構成を用いることで、道路100を走行する一般車両のみでなく、歩道113を通行中の歩行者、自転車等に衝突予防(巻き込み事故事前回避)の通知を行うことができる。
【0064】
以上のように、本発明の構成を用いることで、工事用車両が工事現場の進入口に進入する際に生じる可能性のある、追突事故、横切り衝突事故、巻き込み事故を未然に防ぐように、一般車両や歩行者に通知を行うことができる。この際、一般車両や歩行者は専用の通信端末を常備する必要がないので、比較的簡素なシステム構成で、事故防止システムを実現することができる。
【0065】
また、ETC車載器の個体識別番号を用いることで、工事車両に対しても、ETC車載器さえ装着していれば、新たなハードウエアを追加することなく、事故防止システムを実現することができる。
【0066】
なお、前述の各実施形態はそれぞれ無線基地局と表示器との組み合わせを示した例であり、これら実施形態を組み合わせることで可能な事故防止システムについても、前述の構成を適用し、前述の効果を奏することができる。
【0067】
また、前述の説明では、工事用車両の後方に車載用表示器を設置する例を示したが、図8に示すように、工事用車両201の上に車載用表示器4’を設置してもよい。
図8は、工事用車両201の後方および天井にそれぞれ車載用表示器4および車載用表示器4’を設置した例を示す図である。
【0068】
工事用車両201の後方に設置された車載用表示器4は、図4に示したものと同じである。また、工事用車両201の天井に設置された車載用表示器4’は、工事用車両201の進行方向に対して表示を行う構造からなる。このような構成を用いることで、工事用車両201から前方、後方の双方へ通知を行うことができる。これにより、図8に示すようなセンターラインが無く比較的幅の狭い道路の場合に接触する可能性が増加する前方および後方からの車両の双方に通知を行うことができる。なお、図8では、後方用と前方用とで、車載用表示器を別体形成した例を示したが、天井に前方・後方へ同時に表示を行う単体の車載用表示器や、全周囲に対して表示を行う車載用表示器を用いても良い。また、図8では道路幅が狭い場合を例に示したが、当然のことながら、幅が広くセンターラインある道路であっても、同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【図2】第1の実施形態の事故防止システムの無線基地局1、ETC車載器2、表示器3の主要構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の事故防止システムのシステムフロー図である。
【図4】第2の実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【図5】第3の実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【図6】第4の実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【図7】第5の実施形態の事故防止システムの概要を説明する説明図である。
【図8】工事用車両201の後方および天井にそれぞれ車載用表示器4および車載用表示器4’を設置した例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B−無線基地局、10−制御部、11−無線制御部、12−送受信アンテナ、13−通信I/F、14−外部装置制御部、15−メモリ、19−電源部、
2−ETC車載器、20−制御部、21−無線制御部、22−送受信アンテナ、23−通信I/F、29−電源部、
3,3A,3B−表示器、30,30A,30B−ディスプレイ、31−表示制御部、
4,4’−車載用表示器、40−ディスプレイ、
5A,5B−歩道帯用表示器、50A,50B−ディスプレイ、
100−道路、111,112−走行車線、113,114−歩道
201,201A,201B−工事用車両、202,203−一般車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定場所に進入する関係車両との事故を防止する事故防止システムであって、
前記関係車両に設置されたITS通信機能を有する端末装置と、
前記特定場所の進入口近傍に設置された無線基地局と、
該無線基地局からの制御を受けて所定の通知を行う状況通知手段と、を備え、
前記無線基地局は、前記ITS通信機能を有する端末装置からの信号に基づいて、前記関係車両が前記特定場所へ進入する旨の通知を行わせるよう前記状況通知手段への通知制御を行う、
事故防止システム。
【請求項2】
前記ITS通信機能を有する端末装置からの信号は、前記端末装置の個体識別番号情報であり、
前記無線基地局は、前記個体識別番号情報が予め設定した個体識別番号であることを検出すると、前記状況通知手段への通知制御を行う請求項1に記載の事故防止システム。
【請求項3】
前記ITS通信機能を有する端末装置はETC車載器である、
請求項1または請求項2に記載の事故防止システム。
【請求項4】
前記無線基地局は、前記進入口から前記道路に沿って、自動車の流れの上流側に第1設置距離だけ離れた位置で、且つ前記道路における前記進入口側の路側の近傍に設置され、
前記状況通知手段は、前記路側に沿った前記無線基地局からさらに上流側に第2設置距離だけ離れた位置に設置され、前記道路に沿った上流側に通知を行う、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の事故防止システム。
【請求項5】
前記状況通知手段は前記関係車両に設置されている、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の事故防止システム。
【請求項6】
前記状況通知手段は前記道路に対して前記進入口と対向する車線側に設置されている、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の事故防止システム。
【請求項7】
前記無線基地局は前記道路に対して前記進入口と対向する車線側に設置されている、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の事故防止システム。
【請求項8】
前記進入口の近傍に設置された側道用の状況通知手段を備え、
前記無線基地局は、前記側道用の状況通知手段に対して、前記関係車両が前記特定場所に進入する旨の通知を行わせる、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の事故防止システム。
【請求項9】
前記状況通知手段は表示器である請求項1〜8のいずれかに記載の事故防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−217282(P2008−217282A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52192(P2007−52192)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】