説明

二次電池の製造方法および二次電池

【課題】二次電池の製造方法を改善する。
【解決手段】正極、負極およびセパレータを巻回して電極群6を形成する工程と、電極群6を円筒状容器1に収納する工程と、電極群6に非水電解液を含浸させる工程と、突起部7aおよび突起部8aが貫通孔13の中で封止体3に保持されるように正極リード端子7および負極リード端子8を封止体3の各貫通孔13に挿し込み、封止体3を円筒状容器1の開口部に装着する工程と、円筒状容器1の高さ方向に関して封止体3の上面3pと封止体3の下面3qとの間において封止体3に加わる径方向の圧縮荷重を増加させるように、円筒状容器1の側部10をかしめる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ノート型パソコンを始めとした様々なポータブル機器に使用されている。ポータブル機器の長時間駆動および携帯性の向上といった要望を受け、二次電池には更なる軽量化、エネルギー密度の向上および信頼性の向上が求められている。近年は、地球環境保全の目的で、二次電池を使用したシステムの提案が活発になされている。例えば、車両分野では、モータと内燃機関とを備えたハイブリッド車両、および、モータのみを備えた電動車両が普及しつつある。電力貯蔵の分野では、太陽光等の自然エネルギーを有効活用するために、二次電池を用いた比較的大容量の蓄電システムが提案されている。
【0003】
ポータブル機器向けのリチウムイオン二次電池では、極板群を収納するための容器として、ラミネート加工されたアルミニウム箔製の容器、および、金属製の扁平な角型容器が広く使用されている。他方、使用期間の長さ、使用環境の厳しさ、蓄電容量の大きさ等を考慮すると、エネルギー分野向けの二次電池では、極板群を収納するための容器として、金属製の円筒状容器が有力である。
【0004】
金属製の円筒状容器は、例えば、特許文献1および非特許文献1に開示された構造を有する。すなわち、有底の容器本体と、容器本体の開口部を閉じるための封口板とで、円筒状容器が構成されている。極板群に接続された2つのリード端子は、容器本体および封口板にそれぞれ溶接される。封口板は、安全装置の役割も担っており、比較的複雑な構造を有する。
【0005】
具体的に、非特許文献1は、絶縁リング、ガスケット、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子、ラプチャー等の部品で構成された封口板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−86868号公報
【非特許文献1】芳尾真幸、小沢昭弥編、「リチウムイオン二次電池−材料と応用」、第2版、日刊工業新聞社、2001年1月27日、p.175−176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および非特許文献1からも理解できるように、金属製の円筒状容器の部品点数は比較的多い。このことは、二次電池のコストの低減および生産性の向上の妨げとなっている。
【0008】
また、金属製の円筒状容器を用いた二次電池には、次のような問題も存在する。リード端子を容器本体または封口板に溶接するために、レーザ溶接、抵抗溶接、スポット溶接、または超音波溶接等の各種方法が採用される。何れの溶接方法を採用する場合においても、溶接条件の安定領域が比較的狭いことに起因して、溶接部位毎に溶接条件や電極設定を精密に管理する必要がある。このような精密な管理を行ったとしても、例えば溶接電流が過多となった場合には、リード端子等の溶接部位に孔があいたり、溶接時に融けた金属がスパッタリングの火花により金属ヒュームとなって飛散したりする。飛散した金属(金属粉)は、容器内に異物として混入し、電池の内部短絡を引き起こす原因となりうる。このように、従来の二次電池の製造工程には溶接工程が含まれており、溶接工程においては、溶接条件を精密に管理する必要がある。このことは、二次電池のコストの低減の妨げとなっている。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、二次電池の改善された製造方法と、その方法により製造された二次電池とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、
開放端側に突起部を有する正極リード端子が固定された正極と、開放端側に突起部を有する負極リード端子が固定された負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを巻回して電極群を形成する工程と、
前記電極群を金属製の円筒状容器に収納する工程と、
前記電極群に非水電解液を含浸させる工程と、
2つの貫通孔を備えた弾性力を有する封止体の各貫通孔に、前記正極リード端子の前記突起部および前記負極リード端子の前記突起部が各貫通孔の中で前記封止体に保持されるように前記正極リード端子および前記負極リード端子を挿し込み、前記封止体を前記円筒状容器の開口部に装着する工程と、
前記円筒状容器の高さ方向に関して前記封止体の上面と前記封止体の下面との間において前記封止体に加わる径方向の圧縮荷重を増加させるように、前記円筒状容器の側部をかしめる工程と、
を含む、二次電池の製造方法を提供する。
【0011】
他の側面において、本発明は、
金属製の円筒状容器と、
正極、負極および前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを有し、前記円筒状容器に収納された、巻回された電極群と、
前記円筒状容器の開口部に固定された封止体と、を備え、
前記電極群は、前記正極に接続された正極リード端子と、前記負極に接続された負極リード端子とをさらに有し、
前記封止体は、2つの貫通孔を有するとともに、弾性材料で構成されており、
前記正極リード端子および前記負極リード端子は、それぞれ、開放端側に突起部を有し、かつ前記突起部が各貫通孔の中で前記封止体に保持されるように前記封止体の各貫通孔に挿し込まれており、
前記円筒状容器の側部には、前記円筒状容器の高さ方向に関して前記封止体の上面と前記封止体の下面との間において、前記電極群の中心軸に向かう方向に突出しているかしめ部が設けられている、二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属製の円筒状容器の開口部を閉じるための部材として、弾性材料でできた封止体が使用されている。正極リード端子および負極リード端子は、封止体に形成された2つの貫通孔を通じて、円筒状容器の外部まで延びている。このような構造によれば、二次電池の製造工程を簡素化しやすい。具体的には、リード端子を円筒状容器または封止体に溶接する必要がない。溶接工程を省略できるので、金属粉が円筒状容器内に残留することに基づく二次電池の信頼性の低下、作業環境の悪化等の諸問題も起こりにくい。
【0013】
本発明によれば、正極リード端子および負極リード端子は、それぞれ、開放端側に突起部を有している。かしめ加工時に封止体に作用する押圧力により、正極リード端子および負極リード端子が貫通孔の中で封止体にそれぞれ食い込み、各リード端子が封止体に接合される。これにより、正極リード端子、負極リード端子および封止体を介して電極群を円筒状容器に対して固定することができる。また、正極リード端子および負極リード端子に設けられた突起部は、貫通孔の中で封止体から弾性力を受け、封止体に保持される。言い換えれば、突起部によって貫通孔が塞がれている。これにより、外部から円筒状容器内への水分の透過を防止でき、二次電池の信頼性を高めることができる。また、正極リード端子および負極リード端子に設けられた突起部が貫通孔の中で封止体にそれぞれ食い込むので、正極リード端子、負極リード端子および封止体を介して電極群を円筒状容器に対して固定する効果を強めることができる。
【0014】
また、電極群の重量に基づいて各リード端子に荷重が加えられたとしても、貫通孔の中で突起部がしっかりと保持されているので、各リード端子に対する機械的ストレスを抑制できる。従って、封止体に対するリード端子の位置ずれを防止でき、それにより、リード端子の位置ずれに基づく円筒状容器の内部への水分透過、すなわち、貫通孔とリード端子との間の微小な隙間を通じた円筒状容器の内部への水分透過を防止できる。
【0015】
なお、上記本発明の製造方法に含まれた各工程は、上記の順番で実施されてもよいし、一の工程と他の工程との順番が入れ替わって実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の断面図
【図2】図1に示す二次電池の電極群の分解斜視図
【図3】変形例に係る二次電池の部分断面図
【図4】図1に示す二次電池の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の二次電池100は、金属製の円筒状容器1、円筒状容器1に収納された電極群6、および円筒状容器1の開口部に固定された封止体3を備えている。二次電池100は、典型的には、リチウムイオン二次電池である。
【0019】
図2に示すように、電極群6は、正極20、正極リード端子7、負極25、負極リード端子8および2つのセパレータ24で構成されている。セパレータ24は、それぞれ、正極20と負極25との間に配置されている。正極リード端子7および負極リード端子8は、それぞれ、正極20および負極25に接続されている。正極20、負極25およびセパレータ24は、巻き芯29に巻きつけられている。これにより、電極群6は全体として円筒の形を有している。
【0020】
図1に示すように、封止体3には、2つの貫通孔13が形成されている。貫通孔13は、正極リード端子7(または負極リード端子8)の直径よりも小さい直径を有する。正極リード端子7は、2つの貫通孔13の一方の中で突起部7aが封止体3に保持されるように封止体3の貫通孔13に挿し込まれている。同様に、負極リード端子8は、2つの貫通孔13の他方の中で突起部8aが封止体3に保持されるように封止体3の貫通孔13に挿し込まれている。つまり、正極リード端子7および負極リード端子8は、それぞれ、貫通孔13を通って円筒状容器1の外部まで延びている。本実施形態では、円筒状容器1の高さ方向に関して、正極リード端子7の長さが、負極リード端子8の長さに一致している。また、高さ方向に関して、突起部7aの位置が突起部8aの位置に一致している。
【0021】
円筒状容器1の側部1aには、円筒状容器1の高さ方向に関して封止体3の上面3pと封止体3の下面3qとの間において、電極群6の中心軸に向かう方向に突出しているかしめ部10が設けられている。かしめ部10は、円環の形状を有するように円筒状容器1の周方向に沿って形成されている。この構成によれば、封止体3に対して、周方向に均一な圧縮荷重を付与できる。
【0022】
本実施形態において、かしめ部10は、高さ方向に関して、突起部7a(および8a)の下端と封止体3の下面3qとの間に設けられている。つまり、かしめの効果を最も多く得ることができる位置よりも円筒状容器1の開口部に近い位置に突起部7a(および8a)が位置している。このような構成によれば、高さ方向に関して、かしめ部10と突起部7aとの2箇所で正極リード端子7を封止体3に対して固定することが可能になる。同様に、かしめ部10と突起部8aとの2箇所で負極リード端子8を封止体3に対して固定することが可能となる。その結果、電極群6を支持する効果が一層強化される。また、水分透過の防止効果を高めることができる。
【0023】
本実施形態では、かしめ部10の最も窪んだ位置H1が、高さ方向に関して、突起部7aおよび8aの下端と封止体3の下面3qとの間に位置している。従って、突起部7aおよび8aよりも少し下の位置で、封止体3に最大の圧縮荷重が付与される。本実施形態では、高さ方向に関して、かしめ部10の一部が突起部7aおよび8aに重なっている。ただし、高さ方向に関して、かしめ部10が突起部7aおよび8aに重ならないように、かしめ部10および突起部7aおよび8aの位置を規定することも可能である。
【0024】
円筒状容器1の開口端部12は、U字状に曲げられている。U字状に曲げられた開口端部12は、封止体3の上面3pに接しており、これにより、円筒状容器1の中に押し込む方向の荷重を封止体3に付与している。円筒状容器1の内側には、円筒状容器1の高さ方向に関して封止体3の下面3qと円筒状容器1の底面(内部の底面)との間において、円筒状容器1の内周面と電極群6の外周面との間の隙間を狭めている凸部17が設けられている。本実施形態では、電極群6を変形させない程度に凸部17が電極群6に僅かに接触している。凸部17は、電極群6を周方向に包囲する円環の形状を有する。
【0025】
二次電池は、通常の使用は勿論のこと、真夏の車中等の高温条件下で使用されることも多い。この場合、二次電池の内圧が上昇する可能性がある。また、非水電解質二次電池は、正極材料および負極材料の結晶中に非水電解質イオンを出し入れすることで充放電を行う。その際、結晶の膨張および収縮を伴う場合があるため、電極群は変形する。電極群が変形すると電極合剤に含まれた粉体の状態が変形し、内部抵抗が上昇したり、正極と負極との間の距離が拡大したりする場合があるため、二次電池の特性が劣化する。本実施形態のように凸部17を設けると、電極群6を円筒状容器1に固定できるだけでなく、電極群6の変形も抑制できる。従って、長期に渡って二次電池100の特性が良好に維持される。
【0026】
また、凸部17が円環状に形成されていると、周方向に関して電極群6に均一な保持力が作用しうる。これにより、電極群6の変形を抑制する効果が更に高まる。電極群6の中心軸を円筒状容器1の中心軸に一致させることができるので、リード端子7および8に機械的ストレスもかかりにくい。さらに、内圧の上昇および外圧に対する円筒状容器1の耐久性も向上する。
【0027】
本実施形態では、正極リード端子7と封止体3との接触界面のうち、突起部7aが保持されている位置を基準として円筒状容器1の開口部に近い部分に封止剤15が充填されている。同様に、負極リード端子8と封止体3の接触界面のうち、突起部8aが保持されている位置を基準として円筒状容器1の開口部に近い部分に封止剤15が充填されている。封止剤15は、外部への電解液の漏液および蒸発を防止する役割と、外部から円筒状容器1の内部への水分の侵入を防止する役割とを担う。封止剤15によれば、リード端子7および8が電極群6を支える機能を一層高めることもできる。
【0028】
なお、円筒状容器1の底部の空間、すなわち、円筒状容器1の底部と電極群6との間に絶縁シート等の他の部材が設けられていてもよい。同様に、封止体3の下面3qと電極群6との間に絶縁シート等の他の部材が設けられていてもよい。
【0029】
次に、各部品について詳細に説明する。
【0030】
<<円筒状容器>>
円筒状容器1は、底部と開口部とを有する金属製容器である。円筒状容器1の材料としては、軽量性および加工性の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を好適に使用できる。かしめ強度を比較的容易に高めることができるという理由から、Cu、Mn、Si等の元素を微量添加したアルミニウム合金が好ましい。
【0031】
<<封止体>>
封止体3は、弾性材料で構成されている。詳細には、封止体3は、ゴム弾性を有する材料(エラストマー)でできており、円柱の形状を有する。封止体3の直径は、円筒状容器1の開口部の直径よりも少し大きい。封止体3の材料としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、ブタジエンスチレンゴム(SBR)等を使用できる。
【0032】
<<正極>>
図2に示すように、正極20は、正極集電体21と、正極集電体21の片面または両面に設けられた正極活物質層22とを有する。正極活物質層22は、例えば、正極活物質、結着剤および導電助剤で構成されている。
【0033】
正極集電体21は、導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成されている。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。正極集電体21の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を好適に使用できる。
【0034】
正極活物質としては、二酸化マンガン(MnO2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4)等の酸化物を使用できる。上記化学式の「x」および「y」は、それぞれ、0〜1の範囲の値でありうる。
【0035】
好ましい正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムリン酸鉄が挙げられる。これらは、金属リチウムの電位に対して例えば3.0V以上5.0V以下の充放電電位を有する。
【0036】
導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素材料を使用できる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の樹脂材料を使用できる。
【0037】
<<負極>>
負極25は、負極集電体26と、負極集電体26の片面または両面に設けられた負極活物質層27とを有する。負極活物質層27は、例えば、負極活物質、結着剤および導電助剤で構成されている。
【0038】
負極集電体26も導電性を有するシート状の部材であり、典型的には金属箔で構成されている。金属箔に代えて、多数の孔を有する部材(金属メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル)も使用できる。負極集電体26の材料としては、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を好適に使用できる。
【0039】
負極活物質としては、金属リチウム、リチウム合金、リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti512)、リチウムイオンを吸蔵および放出できる炭素材料、リチウムと合金を形成しうる材料(いわゆる合金系活物質)等を使用できる。炭素材料としては、グラファイトが代表的である。合金系活物質としては、スズ、スズ合金、シリコンおよびシリコン合金が挙げられる。充放電効率およびサイクル寿命の観点から、炭素材料またはリチウムチタン複合酸化物を好適に使用できる。
【0040】
結着剤および導電助剤としては、正極20と同じものを使用できる。
【0041】
負極25(詳細には負極活物質層27)が、金属リチウムの電位に対して1.0V以上貴な電位を有する負極活物質を含む場合、負極集電体26は、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金でできている。この構成によれば、アルミニウム製の円筒状容器1に負極25が触れた場合であっても、円筒状容器1の溶出を防止できる。言い換えれば、上記構成によれば、アルミニウム製の円筒状容器1の使用が許される。アルミニウム製の円筒状容器1は、二次電池100の軽量化に寄与する。
【0042】
金属リチウムの電位に対して1.0V以上貴な電位を有する負極活物質として、リチウムとチタンとを含む複合酸化物が挙げられる。具体的には、化学式Li4+xTi512(0≦x≦3)で表され、スピネル型構造を有するチタン酸リチウムが挙げられる。
【0043】
<<セパレータ>>
セパレータ24としては、多孔質フィルム、不織布等を使用できる。多孔質フィルムとしては、ポリエチレンまたはポリプロピレンでできたものを例示できる。不織布としては、セルロースまたはポリビニルアルコール(PVA)でできたものを例示できる。
【0044】
<<非水電解質>>
正極20、負極25およびセパレータ24には、非水電解質が含浸されている。非水電解質としては、電解質と有機溶媒とを含む液状の非水電解質が挙げられる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネートを使用できる。ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)等の環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)等の鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等も使用できる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で使用できる。
【0045】
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)等のリチウム塩が挙げられる。化学的安定性と高誘電率化の観点から、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を主たる電解質として用いることが好ましい。「主たる電解質」とは、モル比にて最も多く含まれた電解質を意味する。電解質は、有機溶媒に対して、例えば0.5〜2.0mol/Lの濃度で溶解している。
【0046】
<<リード端子>>
正極リード端子7は、正極集電体21に固定された第一部分と、封止体3の貫通孔13の中を通って円筒状容器1の外部に延びている第二部分と、第二部分に設けられた突起部7aとで構成されている。つまり、正極リード端子7は、開放端側に突起部7aを有している。第一部分は、正極集電体21に溶接等により固定しうるように板状に成形された部分である。第二部分は、一定の直径を有する棒状の部分である。「リード端子の直径」は、この第二部分の直径を表す。突起部7aは、第二部分から径方向の外側に向かって突出している部分である。つまり、突起部7aは、第二部分の直径よりも大きい直径を有する。
【0047】
本実施形態において、円筒状容器1の高さ方向に垂直な方向から見たとき、突起部7aは、矩形の形状を有する。正極リード端子7の軸方向から見たとき、突起部7aは、円の形状を有する。これらの構造は、負極リード端子8にも採用されている。本実施形態では、リード端子7および8は、それぞれ、突起部7aおよび8aを1つのみ有する。ただし、1つのリード端子に複数の突起部が設けられていてもよい。第二部分の直径は、例えば、0.5〜5mmの範囲にある。突起部7aおよび8aの各直径は、例えば、0.6〜7mmの範囲にある。封止体3の貫通孔13の内径は、例えば、0.2〜4.9mmの範囲にある。
【0048】
図3に示す変形例において、正極リード端子7の突起部7bおよび負極リード端子8の突起部8bは、それぞれ、円筒状容器1の高さ方向に垂直な方向から見たとき、円筒状容器1の開口部側に位置している短辺と、円筒状容器1の底面側に位置している長辺とを含む台形の形状を有する。このような形状の突起部7bおよび8bが設けられていると、封止体3の貫通孔13にリード端子7および8を比較的スムーズに挿入できるので、二次電池100の組み立て時の作業性が向上する。また、電極群6を支える機能の向上も期待できる。
【0049】
リード端子7および8の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属を使用できる。
【0050】
<<封止剤>>
封止剤15としては、アスファルト、コールタール等のピッチ、ピッチと他の材料(鉱物油、シリコンゴム等)との混合物、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマーを主成分として含む材料等を使用できる。なお、「主成分」とは、質量比で最も多く含まれた成分を意味する。なお、図3の変形例に示すように、封止剤15は、突起部7aおよび8bの下側に充填されていてもよい。すなわち、正極リード端子7と封止体3との接触界面のうち、突起部7b(または7a)が保持されている位置を基準として電極群6に近い部分に封止剤15が充填されていてもよい。同様に、負極リード端子8と封止体3の接触界面のうち、突起部8b(または8a)が保持されている位置を基準として電極群6に近い部分に封止剤15が充填されていてもよい。このような構成によれば、円筒状容器1の内部への水分透過をより確実に防止できる。
【0051】
次に、図1に示す二次電池の製造方法について説明する。
【0052】
図4に示すように、まず、正極20および負極25を作製する。正極20および負極25は、公知の方法に従って作製できる。具体的には、活物質、導電助剤、結着剤および溶媒を含む合剤を長尺の集電体に塗布し、合剤層が形成されるように塗布された合剤を乾燥させる。その後、合剤層と集電体とをプレスすれば、帯状の電極(正極20および負極25)が得られる(STEP1)。正極20および負極25には、それぞれ、正極リード端子7および負極リード端子8が溶接等により固定される。
【0053】
次に、正極20と、負極25と、セパレータ24とを巻回して電極群6を形成する(STEP2)。次に、電極群6を円筒状容器1に収納する(STEP3)。次に、電極群6に非水電解液を含浸させる(STEP4)。電極群6に非水電解液を含浸させる工程は、円筒状容器1に封止体3を装着する前であれば、どの段階で行ってもよい。
【0054】
電極群6を簡単に収納できるようにするために、二次電池100の組立前において、円筒状容器1の開口部における直径は、円筒状容器1の底部の直径を上回る。つまり、円筒状容器1の側部1aには緩やかなテーパが付与されている。この場合、電極群6の収納後、円筒状容器1の側部1aの絞り加工(縮径加工)を行うことが望ましい。これにより、円筒状容器1の寸法を所望の寸法へと調節できる。
【0055】
次に、円筒状容器1の側部1aをかしめる(STEP5)。これにより、円筒状容器1に封止体3を装着したときに、円筒状容器1の高さ方向に関して封止体3の上面3pと封止体3の下面3qとの間において封止体3に加わる径方向の圧縮荷重を増加させるかしめ部10が形成される。
【0056】
また、電極群6を円筒状容器1に収納した後、円筒状容器1の内周面と電極群6の外周面との間の隙間を狭めるように、円筒状容器1の外周面に溝を形成して円筒状容器1の内側に凸部17を設ける。凸部17は電極群6に接触してもよいが、充放電反応の均一性の観点から凸部17が電極群6を圧迫しないこと、凸部17が電極群6を変形させないことが望ましい。
【0057】
リード端子7および8に過剰な力が加わることを回避するために、円筒状容器1の中で電極群6が動くことを防ぐための構造が担うべき役割は大きい。本実施形態では、そのような構造として、リード端子7および8の突起部7aおよび8a、かしめ部10、および凸部17が採用されている。特に、電極群6には、コバルト、マンガン等の金属が使用されていることが多く、電極群6が重くなりがちである。この場合、上記構造によってもたらされる利益は一層大きいものとなる。
【0058】
なお、かしめ部10と同じように、凸部17もかしめ加工によって形成できる。また、凸部17が円環の形状を有するように円筒状容器1の周方向に沿って溝を形成することが好ましい。これにより、電極群6の周方向に均一な保持力を作用させることが可能となる。
【0059】
次に、封止体3を円筒状容器1の開口部に装着する(STEP6)。突起部7aおよび突起部8aが各貫通孔13の中で封止体3に保持されるように正極リード端子7および負極リード端子8を封止体3の各貫通孔13に挿し込む。リード端子7および8が挿し込まれた封止体3を円筒状容器1の開口部に装着する。
【0060】
封止体3の装着後、正極リード端子7と封止体3との接触界面(微小隙間)のうち、突起部7aが保持されている位置を基準として円筒状容器1の開口部に近い部分に封止剤15を充填する。封止剤15の充填には、例えば細い先端を有するディスペンサを使用できる。同様に、負極リード端子8と封止体3の接触界面のうち、突起部8aが保持されている位置を基準として円筒状容器1の開口部に近い部分に封止剤15を充填する。これにより、リード端子7および8と貫通孔13との間の隙間を確実に封じることができる。
【0061】
最後に、封止体3の上面3pに圧縮荷重が加わるように、開口端部12をU字状に曲げる(STEP7)。開口端部12の曲げは、かしめ加工により行うことができる。以上の各工程を行うことにより、図1に示す二次電池100が得られる。なお、円筒状容器1の開口部に封止体3を装着した後で、かしめ部10を形成してもよい。この場合、開口端部12を曲げる工程と、かしめ部10を形成する工程とを同時または連続して行えるので、生産性の向上を期待できる。同様に、円筒状容器1の開口部に封止体3を装着した後で、凸部17を形成してもよい。
【0062】
以上に説明した方法は、リード端子7および8を円筒状容器1等に溶接する工程を含んでいない。従って、溶接工程で金属粉が発生し、その金属粉が容器内に残留することに基づく二次電池の信頼性の低下、作業環境の悪化等の諸問題が起こりにくい。また、本実施形態の方法には、加熱を要する加工が含まれていないので、加熱によるひずみ等の不具合が電極群6に起こりにくい。
【0063】
また、本実施形態で説明した方法によって製造されたリチウム二次電池は、リード端子への機械的ストレス、容器内への水分の透過が抑制されているので、高い信頼性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、エネルギー分野向けの二次電池、例えば、一般家庭用の二次電池に有利に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 円筒状容器
3 封止体
6 電極群
7 正極リード端子
8 負極リード端子
7a,7b,8a,8b 突起部
10 かしめ部
13 貫通孔
15 封止剤
17 凸部
20 正極
24 セパレータ
25 負極
100 二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放端側に突起部を有する正極リード端子が固定された正極と、開放端側に突起部を有する負極リード端子が固定された負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを巻回して電極群を形成する工程と、
前記電極群を金属製の円筒状容器に収納する工程と、
前記電極群に非水電解液を含浸させる工程と、
2つの貫通孔を備えた弾性力を有する封止体の各貫通孔に、前記正極リード端子の前記突起部および前記負極リード端子の前記突起部が各貫通孔の中で前記封止体に保持されるように前記正極リード端子および前記負極リード端子を挿し込み、前記封止体を前記円筒状容器の開口部に装着する工程と、
前記円筒状容器の高さ方向に関して前記封止体の上面と前記封止体の下面との間において前記封止体に加わる径方向の圧縮荷重を増加させるように、前記円筒状容器の側部をかしめる工程と、
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記円筒状容器の高さ方向に関して前記突起部の下端と前記封止体の下面との間において前記円筒状容器の側部をかしめる、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電極群を前記円筒状容器に収納した後、前記円筒状容器の内周面と前記電極群の外周面との間の隙間を狭めるように、前記円筒状容器の外周面に溝を形成して前記円筒状容器の内側に凸部を設ける工程をさらに含む、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記凸部が円環の形状を有するように前記円筒状容器の周方向に沿って前記溝を形成する、請求項3に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記正極リード端子と前記封止体との接触界面、および、前記負極リード端子と前記封止体の接触界面のうち、前記突起部が保持されている位置を基準として前記円筒状容器の前記開口部に近い部分に封止剤を充填する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記円筒状容器がアルミニウムまたはアルミニウム合金でできており、
前記負極は、金属リチウムの電位に対して1.0V以上貴な電位を有する負極活物質を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
金属製の円筒状容器と、
正極、負極および前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを有し、前記円筒状容器に収納された、巻回された電極群と、
前記円筒状容器の開口部に固定された封止体と、を備え、
前記電極群は、前記正極に接続された正極リード端子と、前記負極に接続された負極リード端子とをさらに有し、
前記封止体は、2つの貫通孔を有するとともに、弾性材料で構成されており、
前記正極リード端子および前記負極リード端子は、それぞれ、開放端側に突起部を有し、かつ前記突起部が各貫通孔の中で前記封止体に保持されるように前記封止体の各貫通孔に挿し込まれており、
前記円筒状容器の側部には、前記円筒状容器の高さ方向に関して前記封止体の上面と前記封止体の下面との間において、前記電極群の中心軸に向かう方向に突出しているかしめ部が設けられている、二次電池。
【請求項8】
前記かしめ部が、前記高さ方向に関して前記突起部の下端と前記封止体の下面との間に設けられている、請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記円筒状容器の内側には、前記円筒状容器の高さ方向に関して前記封止体の下面と前記円筒状容器の底面との間において、前記円筒状容器の内周面と前記電極群の外周面との間の隙間を狭めている凸部が設けられている、請求項7または8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記凸部が、前記電極群を周方向に包囲する円環の形状を有する、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記正極リード端子と前記封止体との接触界面、および、前記負極リード端子と前記封止体の接触界面のうち、前記突起部が保持されている位置を基準として前記円筒状容器の前記開口部に近い部分に充填された封止剤をさらに備えた、請求項7〜10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極リード端子の前記突起部および前記負極リード端子の前記突起部は、それぞれ、前記円筒状容器の高さ方向に垂直な方向から見たとき、前記円筒状容器の前記開口部側に位置している短辺と、前記円筒状容器の底面側に位置している長辺とを含む台形の形状を有する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−22955(P2012−22955A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161293(P2010−161293)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】