説明

二流体スリットノズルおよびその製造方法

【課題】 液体と気体を混合して長さ方向に均質な膜状噴射ミストを得るため、二流体を直角に衝突させる混合空間をスリットノズルの内部に設け、混合流体を更に均質化させる手段を通過させ、噴射する二流体スリットノズルを提供する。
【解決手段】 長尺板状の液体供給プレートと気体供給プレートの間にミキシングプレートを挟持し、液体供給プレートからミキシングプレートを直角に貫通する液体オリフィスを介して送られる液体と、空気供給プレートからミキシングプレートの他面に空気オリフィスを介して送られる空気とを、ミキシングプレートの他面の混合空間で衝突混合させ、混合空間の下流端とミキシングおよび空気供給両プレートの下端面間の噴射スリットの上流端とを、ミキシングプレートを貫通する2群オリフィスと液体供給プレート側で2群のオリフィス間を繋いで拡張と圧縮による均質化および加速を行う衝突チャンバで連通し噴射スリットから噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は二流体スリットノズルおよびその製造方法に関し、特に、電子部品の精密洗浄や二流体洗浄に用いる気液混合の膜状噴射ミストを形成する二流体スリットノズルと、この二流体スリットノズルを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膜状噴射ミストを形成するには複数の二流体ノズルを一列に並置して用いていたが、隣接する各ノズルから噴射されるスプレー間の干渉部分における微粒噴霧の分布が均一とならず、洗浄効果にむらが生じる。また、各ノズルからのスプレーには噴霧角度があり、噴霧角度に対応して所望の洗浄効果を得るためには、被洗浄体の表面に対するノズル列の位置、高さあるいは距離の設定に大きな制限が加わる。しかもノズルから近距離のスプレーにおける噴霧の分布は一様でなく、噴霧の存在しない箇所もあるため、被洗浄体に対してスプレー速度の最も高い近距離位置でこのノズル列を用いることはできず、分布は一様ではあるがスプレー速度が低下した離間位置での使用を余儀なくされるため、実際に得られるスプレーインパクトと洗浄効果は減衰されたものとなる。
【0003】
好適な膜状噴射ミストの形成のために、複数の長尺板状体を重ね合わせてスリット状のノズルを構成する二流体スリットノズルの提案がある(特許文献1)。ここでは気体供給側の第1板材と液体供給側の第2板材で中間スペーサを挟み、中間スペーサを幅方向に越える両板材の長さ方向の一端面に沿ってスリット状噴射孔を設け、中間スペーサの一面に設けた気体流路と他面に設けた液体流路を、スリット状噴射孔に通じる気液衝突混合部において45°ないし90°の交差角で合流させる。つまり、気体と液体の合流をスリットノズルの内部で行うことにより、二流体は確実に混合されるので、ノズルを被洗浄体に接近して設置し、高いスプレーインパクトが得られる。しかしながら、このノズルにおける気液衝突混合部はわずかな距離をもってスリット状噴射孔に連続しているので、二流体の混合空間としては狭小であり、高度に均質なスプレーの形成は期待できない。
【0004】
長尺板状体を重ねて構成するスリット状のノズルにおいて、構造を簡素化し、しかもノズルの長手方向における混合ミストの噴霧分布の均等性を向上し、洗浄力を向上できる二流体スリットノズルの他の構成が提案されている(特許文献2)。重ね合わせた一対の長尺板状体の対向面間に、板状に広がる混合空間を設け、板状体を通して供給される気体と液体はそれぞれチャンバと、供給プレートの多数の噴射孔とを介して互いに90°の関係で合流して混合空間に送られ、混合された後、混合空間に連通して両板状体の長さ方向一端面に設けたスリット状吐出口から吐出される。しかしながらこの二流体スリットノズルにおいても二流体は単純に同じ幅で広がる混合空間から直接スリット状吐出口に送られるので、上記の場合と同じく高度に均質なスプレーの実現を期待することはできない。
【特許文献1】特開2006−192360号公報
【特許文献2】特開2007−98310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の複数の二流体ノズルの一列配置による従来例で述べたように、強いスプレーインパクトによる高い洗浄効果を得るためには、スプレー速度が充分に高い、ノズルに近い位置におけるスプレー噴霧の分布が均一であることが必要である。その意味では、特許文献1が示すように、スリットノズルの構成を採用し、それぞれ噴出する気体と液体を互いに45°ないし90°の角度で衝突させることによる混合をスリットノズルの内部で行なうことが効果的であるが、混合後の二流体の更なる均質化のための空間あるいは措置が不十分である。
【0006】
一方、特許文献2においては、流体の流れ方向に或る長さを持った混合空間の上流域の互いに離れた位置で二流体をそれぞれ流れ方向に90°の関係で、あるいは同じ位置でそれぞれ流れ方向に45°の関係で合流させ、下流のスリット状吐出口に導く間に混合を行なうことを示すが、噴出直後の空気流に直接直角に噴出液体を衝突させる積極的な混合と、長さは持つが単に平坦な混合空間を流下させる以外の積極的な均質化措置を示すものではない。
【0007】
そこで本発明はこのような課題を解決するために提案されたもので、二流体を混合して好適な膜状噴射ミストを得るためにスリットノズルを採用し、二流体の混合に充分な混合空間をスリットノズルの内部に設け、この混合空間内において噴出空気流にほぼ直角に噴出液体流を衝突させ、噴射スリットに送る以前に混合流体に対する積極的な均質化を行ない得る構成を持つスリットノズルを提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、噴射スリットに至近の位置においても高度に均質な二流体混合による膜状噴射ミストが形成され、したがって最高のスプレー速度による最大のスプレーインパクトと最上の洗浄効果を達成できる二流体スリットノズルを提供することにある。
【0009】
更に、本発明の第3の目的は、上記した第1ならびに第2の目的における二流体スリットノズルを容易に、したがって安価に製造することを可能とする製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決のため、この発明に係る二流体スリットノズルは、それぞれ長尺で互いに固定ボルトで緊締されるミキシングプレート、ミキシングプレートの一面に接する液体供給プレートおよびミキシングプレートの他面に接する空気供給プレートでなり、液体供給プレートは外面に開口する液体管接続口ならびにミキシングプレートに接する面にプレートの長さ方向に沿って開口し液体管接続口と連通する1次液体チャンバを備え、空気供給プレートは外面に開口する空気管接続口ならびにミキシングプレートと接する面にプレートの長さ方向に沿って開口し空気管接続口と連通する1次空気チャンバを備え、ミキシングプレートは液体供給プレートの1次液体チャンバ及び空気供給プレートの1次空気チャンバと各プレートの長さ方向に沿う一端面に開く噴射スリットとの間を連通する混合チャンバを備える二流体スリットノズルにおいて、ミキシングプレートの混合チャンバは、それぞれプレートの長さ方向に直交して細溝状にミキシングプレートの他面に形成した空気オリフィスを介して上流端で1次空気チャンバと連通し、かつ、それぞれ空気オリフィスに直交してミキシングプレートを貫通する細孔状の液体オリフィスを介して上流端近傍で1次液体チャンバと連通し、ミキシングプレートの他面にプレートの長さ方向に直交して形成した複数の縦溝でなり、混合チャンバの各溝の下流端は噴射スリットの上流端から離間して終端し、混合チャンバの下流端と噴射スリットの上流端との間は、混合チャンバの各溝の下流端においてミキシングプレートを貫通する複数の1次オリフィスと、噴射スリットの上流端においてミキシングプレートを貫通する複数の2次オリフィスと、液体供給プレートのミキシングプレートに接する面に各1次オリフィスと各2次オリフィスとの間を連通して形成した凹部でなる衝突チャンバとで連通されることを特徴とする。
更に、請求項2に係る二流体スリットノズルは、ミキシングプレートの混合チャンバをなす縦溝の下流端が隣接一対ごとにミキシングプレートの他面に形成した横溝でU字状に連結され、各横溝は多数個の1次オリフィスによって衝突チャンバと連通し、噴射スリットの上流端は、ミキシングプレートの他面に全2次オリフィスを連通して各プレートの長手方向に伸びる横溝形状に形成した最終チャンバを介して2次オリフィスと連通することを特徴とする。
請求項3に係る二流体スリットノズルは、衝突チャンバが1次オリフィスの出口に対面する位置に段状深部を有し、衝突チャンバの段状深部より下流の浅部に対面する2次オリフィスは1次オリフィスより小径かつ小間隔でより多数設けられ、噴射スリットは空気供給プレートのミキシングプレートと接する面の、最終チャンバに面する位置から噴射スリットが開くプレートの一端面まで設けた凹面部でなることを特徴とする。
また、本発明に係る二流体スリットノズルの製造方法は、それぞれ長尺板状のミキシングプレート、ミキシングプレートの一面に接する液体供給プレートおよびミキシングプレートの他面に接する空気供給プレートを用意し、液体供給プレートにその外面で開口する液体管接続口ならびにミキシングプレートとの接合面で開口しかつ液体管接続口と連通する1次液体チャンバを形成し、空気供給プレートにその外面で開口する空気管接続口ならびにミキシングプレートとの接合面で開口しかつ空気管接続口と連通する1次空気チャンバを形成し、ミキシングプレートの他面に空気供給プレートの1次空気チャンバの開口に連通する空気オリフィスと、空気オリフィスの下流端に上流端を接続した混合チャンバと、ミキシングプレートの長さ方向に沿う一端面に開口する噴射スリットとを形成し、ミキシングプレートの一面に液体供給プレートを、他面に空気供給プレートをそれぞれ接合して重ね合わせ、固定ボルトにより緊締してなる二流体スリットノズルの製造方法において、ミキシングプレートに空気オリフィスと混合チャンバを形成する工程は、ミキシングプレートの他面に、空気オリフィスとしてプレートの長さ方向に直交する複数の細溝を、混合チャンバとしてそれぞれ細溝の各々に上流端を連続しかつ下流端を噴射スリットの上流端から離間させた複数の縦溝を、エッチングまたは拡散融合によって形成してなると共に、更に、各縦溝の上流端において細溝に直交してミキシングプレートを貫通して液体供給プレートの開口に連通する複数の液体オリフィスと、各縦溝の下流端においてミキシングプレートを貫通する複数の1次オリフィスと、噴射スリットの上流端においてミキシングプレートを貫通し1次オリフィスより小径かつ小間隔の複数の2次オリフィスならびにミキシングプレートの他面側において全2次オリフィスをプレートの長さ方向に連通する最終チャンバとを形成する工程を含み、液体供給プレートに液体管接続口と1次液体チャンバを形成する工程は、ミキシングプレートとの接合面にミキシングプレートの1次オリフィスと2次オリフィスとを連通する凹部でなる衝突チャンバを形成する工程を含むことを特徴とする。
更に、請求項5に係る二流体スリットノズルの製造方法は、ミキシングプレートに空気オリフィスと混合チャンバを形成する工程が、更に、混合チャンバをなす縦溝の下流端を隣接一対ごとにU字状に連結する横溝と、各横溝を多数個所で衝突チャンバと連通する1次オリフィスとを、ミキシングプレートの他面に形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明による二流体スリットノズルによれば、二流体を混合して好適な膜状噴射ミストを得るために先ずスリットノズルを採用し、二流体の混合をスリットノズル内部に設けた混合チャンバの上流端において、空気オリフィスの噴出口に対して液体オリフィスの噴出口を直角に配することによって行う。それによって液体流は空気流により最も効果的にせん断化され、液体は微粒化されて確実な気液混合体がえられる。混合体は混合チャンバを下る間に更に混合を進めるのみならず、混合チャンバの下流端において小径の1次オリフィスにより方向を変えて衝突チャンバに送られ、ここで拡張と圧縮を含む攪拌作用を受けて均質化が進められる。均質化され圧縮された噴霧はより小径で、より多数の2次オリフィスで高速化されて最終チャンバに進み、ここで噴霧は更に均質化され、高速で噴射スリットから噴射される。最終チャンバでは、噴霧は最小径で最多数の2次オリフィスから高速で噴出するため、スリットノズルの長さ方向において均質で高速な膜状噴射ミストが確実に得られる。
【0012】
また、この発明による二流体スリットノズルの製造方法によれば、このスリットノズルを構成する部品中、最も精密な加工を必要とするミキシングプレートにおいて、多数の気体オリフィスとこれに引き続くU字形の混合チャンバならびに最終チャンバを、空気供給プレートと接合するミキシングプレートの他面に開口する溝によって構成したので、これら部材はこの他面側からエッチングまたは拡散融合により容易に形成し得ることとなり、したがって二流体スリットノズルは安価に製造可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明に係る二流体スリットノズルの一実施例における構成を図2のI−I線に沿う断面図で示す。
図1において、二流体スリットノズルは、概略すれば、それぞれ長尺で板状の液体供給プレート1と、ミキシングプレート2と、空気供給プレート3とを重ね合わせて構成される。側面1Aにおいてミキシングプレート2の一面2Aと接合する厚手の液体供給プレート1は、上端面に開口して液体供給管を接続し得る液体管接続口11と、この液体管接続口11と内部で連通し、側面1Aで開口する1次液体チャンバ12と、下端面に近い位置で側面1Aに開口する凹部でなる衝突チャンバ13とを備える。1次液体チャンバ12は液体管接続口11と対向する段部と、この段部からミキシングプレート2の一面2Aに沿って更に深まる凹部とを含むことにより、流入液体は拡張と圧縮を含む攪拌作用を受ける。
【0015】
側面3Aでミキシングプレート2の他面2Bに接合する厚手の空気供給プレート3は、反対側の側面に開口する空気管接続口31と、この空気管接続口31に連通して側面3Aに開口する1次空気チャンバ32を備える。
【0016】
上記の液体供給プレート1と空気供給プレート3との間に挟持されるミキシングプレート2は、実質的に1次液体チャンバ12と1次空気チャンバ32とを相互に分離する構成となるが、両チャンバ12と32内の液体と空気とを、この実施例では空気供給プレート3の長手方向に沿う下端面からある高さ位置にかけて、長手方向に連続して形成した凹面と、この凹面に対向するミキシングプレート2の下端面2Cに続く他面2Bの一部とで構成される噴射スリット33の上流端まで運ぶ間に、高効率で混合し、均質で高速の噴霧とするための手段が設けられる。
【0017】
先ず、1次空気チャンバ32の、空気供給プレート3の下端面側の底面は、1次液体チャンバ12の凹部の底面より高い位置におき、それによって直角の気液混合噴射を可能とする。図1に見られるように、ミキシングプレート2はその他面2Bの、1次空気チャンバ32の底面部分に連通する位置から、1次液体チャンバ12の凹部底面より上の位置まで、図2のミキシングプレート2の他面2B側平面図に見られるパターンで、多数の細溝状の空気オリフィス21を備える。更に、ミキシングプレート2の他面2Bは、各空気オリフィス21の下流端にそれぞれ連続するやや太い多数の縦溝状の混合チャンバ22を備え、各混合チャンバ22の下流端は噴射スリット33の上流端から僅かに離間する位置で終端するように設けられる。各混合チャンバ22の上流端部分において、空気オリフィス21と直角の方向にミキシングプレート2を貫通して1次液体チャンバ12の凹部底面近くに連通する液体オリフィス23が設けられる。したがって、各混合チャンバ22の上流端内では、液体オリフィス23から噴射された液体が、空気オリフィス21から噴出する空気と直角関係で衝突し、噴出空気流によって効果的にせん断されて微細粒化され、空気流と混合されつつ混合チャンバ22内を下る。
【0018】
混合チャンバ22の下流端部分には小径の1次オリフィス25がミキシングプレート2をほぼ垂直に貫通して設けられ、混合チャンバ22の下流端部と、液体供給プレート1の接合面1Aに設けた前述の衝突チャンバ13の上流端部とがこの1次オリフィス25によって連通される。衝突チャンバ13の上流端部には1次オリフィス25からの混合噴霧の流れ方向に深くした深凹部14が設けられており、混合噴霧はここで一旦拡張された後下流側の浅い凹部で再び圧縮される。衝突チャンバ13の下流端部は噴射スリット33の上流端部に対向して位置され、これら対向端部はミキシングプレート2を貫通して1次オリフィス25より更に小径に設けた2次オリフィス26により連通される。したがって、衝突チャンバ13内で一旦拡張され、再圧縮されることによって確実に均質化された混合噴霧は、この系では最小径の2次オリフィス26により加速されて噴射スリット33に送られる。
【0019】
望ましくは、図2に見られるように、縦溝状混合チャンバ22の下流端部は隣接する一対毎に横溝24によってU字状に連通され、連接される一対毎の空気オリフィス21と混合チャンバ22とは各プレートの長さ方向に或る間隔を設けることにより或る長さを持った横溝24には複数の小径1次オリフィス25を設け、更に、ミキシングプレート2の他面2B側において、プレートの長さ方向に1次オリフィスより更に小間隔で最多数とした最小径の2次オリフィス26の全てを連通する長手の横溝で形成した最終チャンバ27を設け、この最終チャンバ27を噴射スリット33の上流端部に接続する。このように横溝24、多数の小径1次オリフィス25、衝突チャンバ13、最多数最小径の2次オリフィス26および全2次オリフィスを連通する最終チャンバ27でなる経路において拡散と圧縮を反復して行なうことにより、積極的にほぼ完全に均質化された膜状噴射ミストを噴射スリット33の全長にわたって高速で形成することが可能となる。
【0020】
なお、噴射スリット33はここでは空気供給プレート3のミキシングプレートとの接合面3Aに設けた凹面として記載したが、これに限定することなく、ミキシングプレート2の他面2Bにおいて最終チャンバ27からミキシングプレート2の下端面2Cまで設けた凹面としても、ほぼ同様の効果が得られる。
【0021】
次に、本発明に係る二流体スリットノズルの製造方法について述べる。先ず、それぞれ長尺板状のミキシングプレート2と、ミキシングプレート2の一面2Aに接する液体供給プレート1と、ミキシングプレート2の他面2Bに接する空気供給プレート3の素材を用意する。
【0022】
液体供給プレート1については、そのいずれかの外面、ここでは厚さ側の上端面で開口し、プレートの長さ方向に適宜間隔を置いた複数個の液体管接続口11と、ミキシングプレート2との接合面1Aで開口するとともに内部で液体管接続口11と連通する1次液体チャンバ12とを形成する。この1次液体チャンバ12は、各液体管接続口11毎に1本ずつ適宜の長さに分割するか、液体供給プレート1のほぼ全長に連続する1本とするか、いずれとすることもできる。
【0023】
空気供給プレート3については、そのいずれかの外面、ここではミキシングプレート2との接合面3Aと反対側の幅側の面で開口し、プレートの長さ方向に適宜間隔を置いた複数個の空気管接続口31と、ミキシングプレートとの接合面3Aで開口し内部で空気管接続口31と連通する1次空気チャンバ32とを、各空気管接続口31毎に分割するか、全空気管接続口に共通する1本として形成する。
【0024】
ミキシングプレート2については、一般的に、その他面2Bにおいて空気供給プレート3の1次空気チャンバ32の開口に連通する空気オリフィス21と、空気オリフィスの下流端に上流端を接続した混合チャンバ22と、ミキシングプレートの長さ方向に沿う一端面に開口する噴射スリットとを形成する。かくしてできあがったミキシングプレート2の一面2Aに液体供給プレート1を、他面2Bに空気供給プレート3をそれぞれ接合して重ね合わせ、ミキシングプレート2を挟持して、例えば空気供給プレート3の側から固定ボルト34、35を液体供給プレート1に対して緊締して二流体スリットノズルが製造される。
【0025】
特に、本発明に係る二流体スリットノズルの製造方法によれば、ミキシングプレート2に空気オリフィス21と混合チャンバ22を形成するために、ミキシングプレート2の他面2Bに、空気オリフィス21としてミキシングプレートの長さ方向に直交する複数の細溝を、混合チャンバ22としてそれぞれ細溝の各々に上流端を連続しかつ下流端を噴射スリット33の上流端から離間させたやや太い複数の縦溝を、エッチングまたは拡散融合によって形成する。更に、各縦溝の上流端において細溝に直交してミキシングプレート2を貫通して液体供給プレート1の開口に連通する複数の液体オリフィス23と、各縦溝の下流端においてミキシングプレート2を貫通する複数の小径の1次オリフィス25と、噴射スリット33の上流端においてミキシングプレート2を貫通し1次オリフィスより小径かつ小間隔の複数の2次オリフィス26と、ミキシングプレート2の他面2B側において全2次オリフィス26をミキシングプレートの長さ方向に連通する横溝状の最終チャンバ27とを形成する。
【0026】
なお、液体供給プレート1に液体管接続口11と1次液体チャンバ12を形成する際には、ミキシングプレートとの接合面1Aに、ミキシングプレートの1次オリフィス25と2次オリフィス26との間を連通する段付き凹部でなる衝突チャンバ13を形成する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明に係る二流体スリットノズルの一実施例構成の、図2のI−I線に沿う断面図
【図2】図1の一実施例構成における長尺のミキシングプレートの一部の空気供給プレート接合面側平面図
【符号の説明】
【0028】
1 液体供給プレート
11 液体管接続口
12 1次液体チャンバ
13 衝突チャンバ
2 ミキシングプレート
21 空気オリフィス
22 混合チャンバ
23 液体オリフィス
24 横溝
25 1次オリフィス
26 2次オリフィス
27 最終チャンバ
3 空気供給プレート
31 空気管接続口
32 1次空気チャンバ
33 噴射スリット
34、35 固定ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ長尺で互いに固定ボルトで緊締されるミキシングプレート、ミキシングプレートの一面に接する液体供給プレートおよびミキシングプレートの他面に接する空気供給プレートでなり、液体供給プレートは外面に開口する液体管接続口ならびにミキシングプレートに接する面にプレートの長さ方向に沿って開口し液体管接続口と連通する1次液体チャンバを備え、空気供給プレートは外面に開口する空気管接続口ならびにミキシングプレートと接する面にプレートの長さ方向に沿って開口し空気管接続口と連通する1次空気チャンバを備え、ミキシングプレートは液体供給プレートの1次液体チャンバ及び空気供給プレートの1次空気チャンバと各プレートの長さ方向に沿う一端面に開く噴射スリットとの間を連通する混合チャンバを備える二流体スリットノズルにおいて、
ミキシングプレートの混合チャンバは、それぞれプレートの長さ方向に直交して細溝状にミキシングプレートの他面に形成した空気オリフィスを介して上流端で1次空気チャンバと連通し、かつ、それぞれ空気オリフィスに直交してミキシングプレートを貫通する細孔状の液体オリフィスを介して上流端近傍で1次液体チャンバと連通し、ミキシングプレートの他面にプレートの長さ方向に直交して形成した複数の縦溝でなり、混合チャンバの各溝の下流端は噴射スリットの上流端から離間して終端し、混合チャンバの下流端と噴射スリットの上流端との間は、混合チャンバの各溝の下流端においてミキシングプレートを貫通する複数の1次オリフィスと、噴射スリットの上流端においてミキシングプレートを貫通する複数の2次オリフィスと、液体供給プレートのミキシングプレートに接する面に各1次オリフィスと各2次オリフィスとの間を連通して形成した凹部でなる衝突チャンバとで連通されることを特徴とする二流体スリットノズル。
【請求項2】
ミキシングプレートの混合チャンバをなす縦溝の下流端が隣接一対ごとにミキシングプレートの他面に形成した横溝でU字状に連結され、各横溝は多数個の1次オリフィスによって衝突チャンバと連通し、噴射スリットの上流端は、ミキシングプレートの他面に全2次オリフィスを連通して各プレートの長手方向に伸びる横溝形状に形成した最終チャンバを介して2次オリフィスと連通することを特徴とする請求項1に記載の二流体スリットノズル。
【請求項3】
衝突チャンバは1次オリフィスの出口に対面する位置に段状深部を有し、衝突チャンバの段状深部より下流の浅部に対面する2次オリフィスは1次オリフィスより小径かつ小間隔でより多数設けられ、噴射スリットは空気供給プレートのミキシングプレートと接する面の、最終チャンバに面する位置から噴射スリットが開くプレートの一端面まで設けた凹面部でなることを特徴とする請求項2に記載の二流体スリットノズル。
【請求項4】
それぞれ長尺板状のミキシングプレート、ミキシングプレートの一面に接する液体供給プレートおよびミキシングプレートの他面に接する空気供給プレートを用意し、液体供給プレートにその外面で開口する液体管接続口ならびにミキシングプレートとの接合面で開口しかつ液体管接続口と連通する1次液体チャンバを形成し、空気供給プレートにその外面で開口する空気管接続口ならびにミキシングプレートとの接合面で開口しかつ空気管接続口と連通する1次空気チャンバを形成し、ミキシングプレートの他面に空気供給プレートの1次空気チャンバの開口に連通する空気オリフィスと、空気オリフィスの下流端に上流端を接続した混合チャンバと、ミキシングプレートの長さ方向に沿う一端面に開口する噴射スリットとを形成し、ミキシングプレートの一面に液体供給プレートを、他面に空気供給プレートをそれぞれ接合して重ね合わせ、固定ボルトにより緊締してなる二流体スリットノズルの製造方法において、
ミキシングプレートに空気オリフィスと混合チャンバを形成する工程は、ミキシングプレートの他面に、空気オリフィスとしてプレートの長さ方向に直交する複数の細溝を、混合チャンバとしてそれぞれ細溝の各々に上流端を連続しかつ下流端を噴射スリットの上流端から離間させた複数の縦溝を、エッチングまたは拡散融合によって形成してなると共に、更に、各縦溝の上流端において細溝に直交してミキシングプレートを貫通して液体供給プレートの開口に連通する複数の液体オリフィスと、各縦溝の下流端においてミキシングプレートを貫通する複数の1次オリフィスと、噴射スリットの上流端においてミキシングプレートを貫通し1次オリフィスより小径かつ小間隔の複数の2次オリフィスならびにミキシングプレートの他面側において全2次オリフィスをプレートの長さ方向に連通する最終チャンバとを形成する工程を含み、液体供給プレートに液体管接続口と1次液体チャンバを形成する工程は、ミキシングプレートとの接合面にミキシングプレートの1次オリフィスと2次オリフィスとを連通する凹部でなる衝突チャンバを形成する工程を含むことを特徴とする二流体スリットノズルの製造方法。
【請求項5】
ミキシングプレートに空気オリフィスと混合チャンバを形成する工程は、更に、混合チャンバをなす縦溝の下流端を隣接一対ごとにU字状に連結する横溝と、各横溝を多数個所で衝突チャンバと連通する1次オリフィスとを、ミキシングプレートの他面に形成する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の二流体スリットノズルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−66564(P2009−66564A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240456(P2007−240456)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【特許番号】特許第4156656号(P4156656)
【特許公報発行日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】