二環式スフィンゴシン−1−リン酸受容体アナログ
一つ以上のS1P受容体にアゴニスト活性を持つ化合物が提供される。化合物は、リン酸化後にS1P受容体のアゴニストとして機能することができるスフィンゴシンアナログである。
【化43】
【化43】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2006年2月9日出願の仮出願No. 60/771,789、2006年11月1日出願の仮出願No. 60/855,960、および2006年11月21日出願の仮出願No. 60/860,694の優先権を主張し、その開示は参照によってその全容が組み込まれる。
【0002】
[米国政府の権利]
本発明はNational Institutes of Healthによって授与されたGrant No. R01 GM067958において米国政府支援の下で行われた。米国政府は本発明についての一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーの五つのメンバーの刺激によって様々な細胞応答を引き起こす、リゾリン脂質メディエーターである。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、刺激によってヘテロ三量体Gタンパク質α(Gα)サブユニットおよびβ‐γ(Gβγ)二量体の活性化を介して二次メッセンジャーシグナルを伝播する。最終的に、このS1P駆動のシグナル伝達は、細胞生存、細胞移動の増加、そしてしばしば有糸分裂誘発をもたらす。S1P受容体を標的とするアゴニストの近年の発展は、生理的恒常性におけるこのシグナル伝達システムの役割に関する知見を与えてきた。例えば、リン酸化を受ける免疫調節剤FTY720(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン1,3-ジオール)は、五つのS1P受容体のうちの四つに対するアゴニストであり、S1Pトーン(tone)の増強がリンパ球トラフィッキングに影響することを明らかにした。さらに、S1Pタイプ1受容体(S1P1)アンタゴニストは、肺血管内皮の漏出を引き起こし、これは、S1Pがいくつかの組織層において内皮バリアの完全性の維持に関与しているかもしれないことを示唆する。
【0004】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーの五つのメンバーの刺激によって様々な細胞応答を引き起こす、リゾリン脂質メディエーターである。
【0005】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、血小板凝集、細胞増殖、細胞形態、腫瘍細胞侵入、内皮細胞走化性、内皮細胞血管形成をもたらすようなものを含む、多くの細胞過程を誘導することが示されている。こうした理由から、S1P受容体は、創傷治療や腫瘍成長阻害などの治療への応用のための良い標的となる。
【0006】
スフィンゴシン-1-リン酸は、一部にはS1P1、S1P2、S1P3、S1P4、および、S1P5(以前はEDG1、EDG5、EDG3、EDG6、および、EDG8)という名のGタンパク質共役受容体のセットを介して細胞にシグナルを送る。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、刺激によってヘテロ三量体Gタンパク質α(Gα)サブユニットおよびβ‐γ(Gβγ)二量体の活性化を介して二次メッセンジャーシグナルを伝播する。これらの受容体は、構造に関係があるリゾホスファチジン酸(LPA)の三つの他の受容体LPA1、LPA2、および、LPA3(以前はEDG2、EDG4、および、EDG7)と50-55%のアミノ酸配列相同性およびクラスターを共有する。
【0007】
リガンドが受容体に結合すると、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に立体配座の変化が誘導され、GDPは関連Gタンパク質のαサブユニットのGTPによって置換され、その後Gタンパク質は細胞質に放出される。αサブユニットはその後βγサブユニットから解離され、
それにより、各サブユニットはエフェクタータンパク質と結合できるようになる。エフェクタータンパク質は、細胞応答をもたらす二次メッセンジャーを活性化する。最終的に、Gタンパク質のGTPはGDPに加水分解され、Gタンパク質のサブユニットは相互に再結合し、その後受容体と再結合する。増幅は一般的なGPCR経路において重要な役割を果たす。一つのリガンドの一つの受容体への結合は、多くのGタンパク質の活性化につながり、そのGタンパク質の各々は、増幅された細胞応答をもたらす多くのエフェクタータンパク質と結合することができる。
【0008】
個々の受容体は組織特異性と応答特異性の両方を兼ね備えるので、S1P受容体は良い薬剤標的となる。一つの受容体に選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストの発現は、その受容体を含む組織に細胞応答を局在させ、不要な副作用を制限するので、S1P受容体の組織特異性は望ましい。S1P受容体の応答特異性もまた、他の応答に影響することなく特定の細胞応答を開始したり抑制したりするアゴニストもしくはアンタゴニストの発現を可能にするので、重要である。例えば、S1P受容体の応答特異性は、細胞形態に影響することなく血小板凝集を開始するS1P模倣剤を許容することができる。
【0009】
スフィンゴシン-1-リン酸は、スフィンゴシンキナーゼとの反応においてスフィンゴシンの代謝物として形成され、高レベルのスフィンゴシンキナーゼが存在し、スフィンゴシンリアーゼが無い血小板凝集体において大量に保存される。S1Pは血小板凝集の間に放出され、血清中に蓄積し、悪性腹水の中にも見られる。S1Pの可逆性生分解は、外部ホスホヒドロラーゼ(ectophosphohydrolases)、特にスフィンゴシン-1-リン酸ホスホヒドロラーゼによる加水分解を介して大概進行する。S1Pの不可逆性生分解は、S1Pリアーゼによって触媒され、エタノールアミンリン酸とヘキサデセナールをもたらす。
【0010】
効能、選択性、経口生体利用性が改良されたS1P受容体のアゴニストである、新規の、効力のある選択剤が現在必要とされている。加えて、そのような化合物の合成と使用だけでなく同定が技術的に必要とされている。本発明はこうしたニーズを満たすものである。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、一態様において、一つ以上のS1P受容体にアゴニスト活性を持つ化合物を提供する。化合物はスフィンゴシンアナログであり、リン酸化後、S1P受容体のアゴニストとして機能することができる。従って、構造式Iの化合物が提供される。
【0012】
【化14】
ここで式中のX1、Y1、Z1は独立にO、CRa、CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、R1は水素、ハロ(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシル基であり、R2は水素、ハロ基、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(
C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基であり、あるいはR2は構造式II、III、IV、VもしくはVIを持つ基であってもよい。
【0013】
【化15】
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は独立にO、S、C、CR15、CR16R17、C=O、NもしくはNR18であり、R15、R16、R17は独立に水素、ハロ基、(C1-C10)アルキル基、ハロ置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であり、ここでR18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基であってもよく、R10、R11、R12、R13、もしくはR14の少なくとも一つがヘテロ原子(O、SもしくはN)である。Z2は(C1-C6)アルキル基、(C3-C8)シクロアルキル基、置換アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、(C6-C10)アリール基、アルキル置換アリール基、(C7-C16)アリールアルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基であって、ここでZ2のアルキル基は1、2、3もしくは4個の基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基である。破線の丸は一つ以上の任意の二重結合をあらわす。Y2はO、C=OもしくはCH2であり、W1は結合もしくは-CH2-CH2-CH2-であり、W2は結合もしくはCH2-で、かつmが1、2、もしくは3であるか、あるいは(C=O)(CH2)1-5でかつmは1である。破線と実線の二重線の組み合わせの各々は任意の二重結合をあらわし、nは0、1、2、もしくは3で、qは0、1、2、もしくは3である。
【0014】
R3は水素、(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシル基であって、R4はヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホン酸(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸であり、Rcは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。Ra、Rb、Rcは独立に水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。
【0015】
R1のアルキル基は、1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換されてもよく、ここで置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基である。R2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基のいずれかは、1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換され、ここで置換基は独立にオキソ基(=O)、イミノ基(=NRd)、(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはC6-アリール基であり、あるいはR2アルキル基の炭素原子の一つ以上は、過酸化物の酸素ではない酸素(non-peroxide oxygen)、硫黄、もしくはNRcで独立に置換することができる。R3のアルキル基は、1もしくは2個のヒドロキシ基で随意に置換され、Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。本発明は、構造式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は構造式VIIを持つリン酸エステルを提供する。
【0017】
【化16】
【0018】
別の態様では、本発明は構造式Iの化合物のプロドラッグを提供する。別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物、または薬物療法で使用するためのその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルも提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は腫瘍の血管新生の抑制方法を提供し、その方法は、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の有効量を癌細胞に接触させるステップを含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患の治療もしくは同種移植片生着の延長のために、リンパ球トラフィッキングを変化させることによって免疫系を調節する方法を提供する。前記方法は、少なくとも一つの構造式Iの化合物の有効量を、それを必要とする被験者に投与するステップを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は神経因性疼痛の予防、抑制、もしくは処置の方法を提供し、この方法は、少なくとも一つの構造式Iの化合物の有効量を投与するステップを含み、あるいは構造式Iの化合物および薬学的に許容可能な担体が、それを必要とする被験者に投与される。本来、疼痛は侵害受容性もしくは神経因性である可能性がある。神経因性疼痛は、その慢性的な性質、明白な直接原因(例えば組織損傷)の欠如、痛覚過敏、もしくはアロディニア(異痛)を特徴とする。痛覚過敏とは、疼痛性刺激に対する過剰反応のことである。アロディニアとは、正常刺激(例として衣類の接触、温風もしくは冷気などを含む)を疼痛と知覚することである。神経因性疼痛は、腕や、より多くは足などの四肢の神経損傷の結果となり得る。引き金となる事象は、例えば交通事故などの外傷や切断(例えば幻肢痛)を含み得る。神経因性疼痛は、例えばビンクリスチンやパクリタキセル(タキソールTM)などの薬物治療の副作用によって起こる可能性があり、あるいは1型糖尿病や2型糖尿病、帯状疱疹、HIV-1感染などの疾病病変の一部として起こる可能性がある。通常は、神経因性疼痛はアスピリンなどの鎮静剤や非ステロイド性抗炎症薬には反応しない。
【0022】
別の態様では、本発明はカテーテル後の血管損傷の修復方法を提供し、この方法は、構造式Iの化合物の有効量を患部の血管腔に接触させるステップを含む。別の態様では、本発明は構造式Iの化合物で留置ステントをコーティングするステップを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、血管損傷後の血管再狭窄を予防し抑制するために、S1Pアナログを使用するための組成物と方法を提供する。例えば、損傷はバルーン血管形成によるものであってもよい。別の態様では、本発明は血管再狭窄を防ぐために被験者を処置する方法を含む。
【0024】
別の態様では、本発明は喘息の発作を防ぐためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、喘息はシステイニルロイコトリエンの過剰生産によるものであることがある。別の態様では、本発明は喘息を処置するために被験者を処置する方法を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は肥満を処置するために構造式Iのスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は血中脂質組成を正常化するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、血中の低密度リポタンパク質(LDLもしくは“悪玉コレステロール”)レベルが減少し得る。別の態様では、血中トリグリセリドレベルが減少し得る。
【0027】
別の態様では、本発明は動脈硬化の予防と処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は腫瘍性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、この処置は抗血管新生特性のために有効なS1P受容体アンタゴニストの適用によって行われる。別の態様では、この処置は複数基質の脂質キナーゼを阻害する構造式Iのスフィンゴシンアナログの投与によって行われる。
【0029】
別の態様では、本発明は神経変性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、処置はアルツハイマー型老年性認知症のためのものである。
【0030】
別の態様では、本発明は、薬物療法(例えば腫瘍性疾患の処置、神経因性疼痛の処置、自己免疫疾患の処置、同種移植片生着の延長)における使用のために、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、腫瘍成長、転移もしくは腫瘍血管新生を阻害するための薬剤を調製するために、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を使用する方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、自己免疫疾患の処置、もしくは同種移植片生着の延長のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、神経因性疼痛の処置のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物(例えばS1P受容体プロドラッグ)を、スフィンゴシンキナーゼタイプ1もしくは2の基質として、in vitroおよびin vivoで評価する方法を提供する。別の態様では、本発明は、in vivoもしくはin vitroを含む指定の受容体部位に結合する構造式Iの化合物を、前記受容体に結合するのに有効な構造式Iの化合物の量で評価する方法を含む。指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を使って、特定の受容体サブタイプに対する試験化合物の選択性を測定することができる。あるいは、前記薬剤を前記リガンド‐受容体複合体に接触させることによって、また、リガンドの置換もしくは薬剤の結合の程度を測定することによって、疾病の処置のための有力な治療薬を特定するツールとして、指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を使用することができる。
【0035】
別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物の調製に有用な、本明細書で開示される新規の中間体とプロセスを提供し、本明細書で記載される合成プロセスだけでなく、一般的な中間体と特定の中間体を含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、構造式Iを持つ化合物とそのアナログもしくは誘導体の合成スキームと使用方法を提供する。別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物のアナログおよび誘導体を調製するための合成・修飾スキームと、そのようなアナログおよび誘導体を使用するための組成物と方法を提供する。
【0037】
上記の発明の開示は、本発明の開示された実施形態の各々、もしくはあらゆる実施例を説明することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をさらに詳細に例示する。本出願全体のいくつかの部分において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、この実施例は様々な組み合わせで使用することができる。各事例において、列挙されたリストは代表的なグループとなるに過ぎず、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0038】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細は、添付の下記の記載において説明される。本発明のその他の特徴、目的、利点は、記載と図面、および請求項から明らかとなるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本明細書では以下の略語が使用される。S1P:スフィンゴシン-1-リン酸、S1P1-5:S1P受容体タイプ、GPCR:Gタンパク質共役受容体、SAR:構造活性相関、EDG:内皮細胞分化遺伝子、EAE:実験的自己免疫性脳脊髄炎、NOD:非肥満性糖尿病、TNFα:腫瘍壊死因子α、HDL:高比重リポタンパク質、RT-PCR:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。
【0040】
本発明を説明し特許請求するにあたり、他に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。本明細書で記載されたものに類似するもしくは均等な任意の方法と物質が、本発明の実践や試験に使用可能であるが、本明細書には好ましい物質と方法を記載する。以下の用語の各々はこの項においてこれに関連する意味を持つ。ラジカル、置換基、および範囲に対して下記に列挙した特定の好ましい値は一例に過ぎず、ラジカルと置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0041】
“a”、“an”、“the”、“少なくとも一つ(at least one)”、および“一つ以上(one or more)”という用語は互換的に使用される。従って、例えば“an”elementを含む組成物とは、一つの要素もしくは一つ以上の要素を意味する。
【0042】
“受容体アゴニスト”という用語は、S1Pの一つ以上の受容体に対するS1Pの作用を模倣するが、異なる効能や有効性を持ち得る化合物のことである。
【0043】
“受容体アンタゴニスト”という用語は、1)内因性のアゴニスト活性を欠き、かつ2)S1P受容体(群)のアゴニスト(例えばS1P)活性をブロックする化合物のことであり、完全に克服性(surmountable)と可逆性の両方の形式ではたらくことが多い(‘競合的アンタゴニスト’)。
【0044】
“病的細胞”という用語は、疾病もしくは障害に罹患した被験者の細胞をあらわし、この病的細胞は疾病もしくは障害に罹患していない被験者と比較して変化した表現型を持つ。
【0045】
細胞もしくは組織が、疾病もしくは障害に罹患していない被験者の同じ細胞もしくは組織と比較して変化した表現型を持つ場合、その細胞もしくは組織は疾病もしくは障害に“罹患”していることになる。
【0046】
疾病もしくは障害は、その疾病もしくは障害の症状の重篤度、そのような症状を患者が経験する頻度、あるいはその両方が低下した場合、“軽減”したことになる。
【0047】
化合物の“アナログ”とは、例として構造はもう一方に似ているが必ずしも異性体であるとは限らない化合物のことである(例えば5-フルオロウラシルはチミンのアナログである)。
【0048】
“細胞”、“細胞系”、“培養細胞”という用語は互換的に使用され得る。
【0049】
“対照”細胞、“対照”組織、“対照”サンプル、もしくは“対照”被験者とは、試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者と同じ種類の細胞、組織、サンプル、もしくは被験者である。対照は、例えば試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者が実験されたのとちょうど同じ、もしくは、ほぼ同じ時間に実験され得る。また、対照は、例えば試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者が実験された時間とは離れた時間に実験されてもよいし、対照の実験結果は記録されてもよく、その記録された結果は試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者の実験によって得られた結果と比較されてもよい。また、対照は試験群もしくは試験被験者とは別の供給源もしくは他の同様の供給源から得てもよく、試験サンプルは試験が実施される疾病もしくは障害を持つと思われる被験者から得られる。
【0050】
“試験”細胞、“試験”組織、“試験”サンプル、もしくは“試験”被験者とは、実験もしくは処置されるもののことである。
【0051】
“pathoindicative”な細胞、組織、もしくはサンプルとは、それらが存在する時、その細胞、組織、もしくはサンプルがその中に局在する(あるいはそこから組織が得られる)動物が疾病もしくは障害に罹患していることの指標となるようなものである。例として、動物の肺細胞に一つ以上の乳腺細胞があることは、その動物が転移性乳癌に罹患していることを示す。
【0052】
疾病もしくは障害に罹患していない動物の組織において一つ以上の細胞が存在する場合、組織は細胞を“正常に含む”ことになる。
【0053】
“検出”という用語とその文法的な変形は、定量化を伴わない種の計測をあらわし、一方“測定”もしくは“計測”という用語とそれらの文法的な変形は、定量化を伴う種の計測をあらわす。“検出”および“同定”という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0054】
“検出可能マーカー”もしくは“レポーター分子”とは、マーカーを持たない同様の化合物の存在下でマーカーを含む化合物の特異的な検出を可能にする原子もしくは分子のことである。検出可能マーカーもしくはレポーター分子は、例えば放射性同位体、抗原決定
基、酵素、ハイブリダイゼーションに利用可能な核酸、発色団、蛍光色素分子、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、蛍光偏光変化もしくは光散乱変化をもたらす分子を含む。
【0055】
“疾病”とは、動物がホメオスタシスを維持できない動物の健康状態のことであり、疾病が改善されない場合、動物の健康は悪化し続ける。
【0056】
動物の“障害”とは、動物がホメオスタシスを維持することはできるが、障害のない場合よりも動物の健康状態が好ましくないような健康状態のことである。処置されないままでも、障害は動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こすとは限らない。
【0057】
“有効量”という用語は、選択された効果を生み出すのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量は、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を低下させる量である。
【0058】
“機能”分子とは、分子が特徴付けられる特性をあらわす形態の分子のことである。例えば、機能酵素とは、酵素が特徴付けられる特有の触媒活性をあらわすもののことである。
【0059】
“阻害”という用語は、評されている機能を減らすもしくは妨げる化合物の能力をあらわす。好ましくは、阻害は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも75%だけ機能が阻害される。
【0060】
“教材”という用語は、出版物、記録、図表、もしくは任意のその他の表現媒体を含み、本明細書で列挙される様々な疾病もしくは障害の緩和をもたらすキットにおいて、開示された化合物の実用性を伝えるために使用できるようなものである。随意に、あるいは交互に、教材は哺乳類の細胞もしくは組織における疾病もしくは障害を緩和する一つ以上の方法を記載し得る。キットの教材は、例えば開示された化合物を含む容器に添付されてもよいし、あるいは同定された化合物を含む容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは、受取人によって教材と化合物が協調的に使用されるという意図を持って、容器とは別々に教材が輸送されてもよい。
【0061】
“非経口”という用語は、消化管を通さないが、皮下、筋肉内、髄腔内、もしくは静脈内などのその他の経路によることを意味する。
【0062】
“薬学的に許容可能な担体”という用語は、任意の標準的な薬学的担体(リン酸緩衝生理食塩水、水、および、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、および様々な種類の湿潤剤など)を含む。この用語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤の任意のものも含む。
【0063】
“精製”とそれに類した用語は、自然環境では通常はその分子もしくは化合物に付随する他の要素を実質的に含まない(少なくとも75%、好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%含まない)形態で分子もしくは化合物を単離することに関する。“精製”という用語は、プロセス中に得られた特定分子の完全な純度を必ずしも示すものではない。“非常に純粋な”化合物とは、90%よりも高い純度の化合物のことを言う。“非常に精製された”化合物とは、95%よりも高い純度の化合物のことを言う。
【0064】
“サンプル”とは、好ましくは被験者からの生物学的サンプルをあらわし、正常組織サンプル、疾病組織サンプル、バイオプシー、血液、唾液、糞便、精液、涙、尿を含むが限
定はされない。サンプルは、目的の細胞、組織もしくは流体を含む、被験者から得られた任意の他の物質の供給源であることも可能である。サンプルは細胞もしくは組織培養から得ることも可能である。
【0065】
“標準”という用語は、比較のために使用されるあるものをあらわす。例えば、標準とは、対照サンプルに投与もしくは付加され、かつ、試験サンプルで前記化合物を測定する際に結果を比較するために使用される、既知の標準薬剤もしくは化合物である可能性がある。標準とは、サンプルに既知量で加えられ、かつ、目的マーカーが測定される前に精製もしくは抽出手順にサンプルが処理されるか供される際に、精製率もしくは回収率などを測定するのに有用な、薬剤や化合物などの“内部標準”のこともあらわし得る。
【0066】
分析、診断、もしくは処置の“被験者”は動物である。そのような動物は哺乳類を含み、ヒトを含むことが好ましい。
【0067】
“治療”処置とは、病状の兆候を示す被験者に、そうした兆候の縮小もしくは除去を目的として施される処置のことである。
【0068】
化合物の“治療有効量”とは、化合物が投与される被験者に有益な効果をもたらすのに十分な化合物の量である。
【0069】
“処置”という用語は、特定の障害もしくは疾患の予防、あるいは特定の障害もしくは疾患に付随する症状の緩和、または前記症状の予防もしくは除去を含む。
【0070】
開示された化合物は、一般的にIUPACもしくはCAS命名法に従って命名される。当業者に周知の略語が使用されてもよい(例えば“Ph”はフェニル基、“Me”はメチル基、“Et”はエチル基、“h”は単数もしくは複数の時間、“rt”は室温、“rac”はラセミ混合物)。
【0071】
ラジカル、置換基、範囲に対して下記に列挙した値は一例に過ぎず、ラジカルおよび置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。開示された化合物は、値、限定的な値、さらに限定的な値、および本明細書で記載された好ましい値の任意の組み合わせを持つ構造式Iの化合物を含む。
【0072】
“ハロゲン”もしくは“ハロ基”という用語は、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、ヨード基を含む。“ハロアルキル基”という用語は、少なくとも一つのハロゲン置換基を持つアルキル基をあらわし、非制限的な例としては、クロロメチル基、フルオロエチル基、もしくはトリフルオロメチル基などを含むがこれらに限定はされない。“C1-C20アルキル基”という用語は、1から9の炭素原子を持つ分岐鎖もしくは直鎖アルキル基をあらわす。非制限的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを含むがこれらに限定はされない。“C2-C20アルケニル基”という用語は、2から9の炭素原子と少なくとも一つの二重結合を持つオレフィン性不飽和の分岐鎖もしくは直鎖の基をあらわす。通常は、C2-C20アルケニル基は1-プロペニル基、2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ブテニル基、ヘキセニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などを含むがこれらに限定はされない。“(C2-C20)アルキニル基”という用語は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、もしくは5-ヘキシニル基などである可能性がある。“(C1-C10)アルコキシ基もしくはアルコキシル基”という用語は、酸素原子に結合したアルキル基をあらわす。(C1-C10)アルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペントキシ基、3-ペントキシ基、もしくはヘキシルオキシ基などである可能性がある。“C3-C12シクロアルキル基”という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などである可能性がある。
【0073】
“随意に置換された”という用語は、0、1、2、3もしくは4個の置換基との置換をあらわし、置換基はそれぞれ独立に選択される。独立に選択された置換基の各々は他の置換基と同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
“(C6-C10)アリール基”という用語は、一つもしくは二つの芳香環を持つ単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などを含むがこれらに限定はされない。
【0075】
“アリール(C1-C20)アルキル基”もしくは“アラルキル基”という用語は、一つもしくは二つの芳香環を持つ単環もしくは二環式の炭素環系で置換されたアルキル基をあらわし、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などを含む。アリールアルキル基の非制限的な例は、ベンジル基、フェニルエチル基などを含む。
【0076】
“随意に置換されたアリール基”という用語は、0、1、2、3もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含み、置換アリール基は、1、2、3もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含み、置換基は例えばアルキル基、ハロ基、もしくはアミノ置換基などの基を含む。
【0077】
“(C2-C10)複素環基”とは、1、2もしくは3個のヘテロ原子を(随意に各環に)含む、随意に置換された単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、ヘテロ原子は酸素、硫黄、窒素である。
【0078】
“(C4-C10)ヘテロアリール基”という用語は、1、2もしくは3個のヘテロ原子を(随意に各環に)含む、随意に置換された単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、ヘテロ原子は酸素、硫黄、窒素である。ヘテロアリール基の非制限的な例としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基などを含む。
【0079】
“二環式”という用語は、不飽和もしくは飽和の安定な架橋もしくは縮合二環式炭素環のいずれかをあらわす。二環式環は、安定な構造を提供する任意の炭素原子に結合することがある。典型的には二環式環系は約7から約12の原子を環系に持つことができる。この用語はナフチル基、ジシクロヘキシル基、ジシクロヘキセニル基などを含むがこれらに限定はされない。
【0080】
“リン酸アナログ”と“ホスホン酸アナログ”という用語は、リン酸とホスホン酸のアナログを含み、ここでリン原子は+5酸化状態にあり、酸素原子うちの一つ以上が非酸素部分(non-oxygen moiety)で置換されている。例えばリン酸アナログホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホラミデート、ボロノホスフェートなどを含み、例えば水素、NH4、Na、Kなどの付随する対イオンを、こうした対イオンが存在する場合に含む。
【0081】
化合物の“誘導体”とは、アルキル基、アシル基、もしくはアミノ基による水素の置換などの一つ以上のステップにおいて、同様の構造の別の化合物から生成され得る化合物を
あらわす。
【0082】
“薬学的に許容可能な担体”という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HO-プロピルβシクロデキストリン)、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤などの、標準的な薬学的担体の任意のものを含む。この用語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された薬剤の任意のもの、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤の任意のものも含む。
【0083】
“薬学的に許容可能な塩”という用語は、開示された化合物の生物学的有効性と特性を保持し、かつ生物学的にもしくはその他の点で好ましくないものではない塩をあらわす。多くの場合、開示された化合物は、アミノ基もしくはカルボキシル基あるいはそれらに類似する基があるおかげで、酸もしくは塩基の塩を形成することができる。
【0084】
“有効量”とは、選択された効果を生み出すのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量は、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を低下させる量である。
【0085】
開示された化合物は、一つ以上の不斉中心を分子内に含むことができる。本発明の開示に従って、立体化学を指定しない任意の構造は、全ての様々な光学異性体、ならびにそれらのラセミ混合物を包含するものと理解される。
【0086】
開示された化合物は互変異性型で存在してもよく、本発明は個々の単一の互変異性体と混合物の両方を含む。例えば以下の構造
【0087】
【化17】
は、
【0088】
【化18】
だけでなく
【0089】
【化19】
の構造の混合物をあらわすものと理解される。
【0090】
16:0、18:0、18:1、20:4、もしくは22:6炭化水素という用語は、分岐鎖もしくは直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基をあらわし、一番目の整数は基の中の炭素の総数をあらわし、二番目の整数は基の中の二重結合の数をあらわす。
【0091】
“S1P調節剤”とは、in vivoもしくはin vitroでS1P受容体活性の検出可能な変化(例えば、実施例で説明されたバイオアッセイなどの当該技術分野で既知の所定のアッセイによって測定される、S1P活性の少なくとも10%の増加もしくは減少)を引き起こすことができる化合物もしくは組成物をあらわす。“S1P受容体”とは、特定のサブタイプが示されない限り、全てのS1P受容体サブタイプをあらわす(例えば、S1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5)。
【0092】
当業者には当然のことながら、不斉中心を持つ開示された化合物は、光学活性なラセミ体で存在し、分離されてもよい。当然のことながら、開示された化合物は、本明細書に記載された有用な特性を有する化合物の、任意のラセミ体、光学活性体、もしくは立体異性体、またはそれらの混合物(S,R; S,S; R,R;もしくはR,Sジアステレオマーなど)を包含する。そのような光学活性体を調製する方法(例えば、再結晶技術によるラセミ体の光学分割(resolution)、光学活性な出発物質からの合成、キラル合成、もしくはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によるもの)、ならびに、本明細書で記載される標準検査を用いて、もしくは当該技術分野で周知の他の同様の検査を用いて、S1Pアゴニスト活性を測定する方法は、当該技術分野で周知である。さらに、いくつかの化合物は多形性を示すこともある。
【0093】
S1P受容体アゴニストプロドラッグ(S1P1受容体型選択性のアゴニストが好ましい)の利用可能性は、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、また特に多発性硬化症などの自己免疫病変のための処置方法として、リンパ球トラフィッキングの変化を含むが、限定はされない。多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型、などを含む様々な疾患の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に使用するだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0094】
さらに、開示された化合物は、同種移植片生着の延長(例えば固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植など)のための方法として、リンパ球トラフィッキングの変更に使用することができる。
【0095】
さらに、開示された化合物はオートタキシン(autotaxin)を抑制するのに使用することができる。オートタキシンは血漿ホスホジエステラーゼであり、最終生成物阻害を受けることがわかっている。オートタキシンはいくつかの基質を加水分解してリゾホスファチジン酸とスフィンゴシン-1-リン酸を生じ、癌の進行と血管新生に関係している。従って、開示された化合物のS1P受容体アゴニストプロドラッグはオートタキシンを阻害するために使用することができる。この活性は、S1P受容体に対する作動性(agonism)と組み合わされることもあるし、あるいはそのような作用とは独立していることもある。
【0096】
さらに、開示された化合物はS1Pリアーゼの阻害に有用となり得る。S1PリアーゼはS1Pを不可逆的に分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの阻害は、リンパ球減少を併発してリンパ球トラフィッキングを妨害する。従って、S1Pリアーゼ阻害剤は免疫系機能の調節に有用となり得る。そのため、開示された化合物はS1Pリアーゼを抑制するために使用することができる。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0097】
さらに、開示された化合物はカンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストとして有用となり得る。CB1拮抗作用は、体重の減少と血中脂質プロファイルの改善に関係がある。CB1拮抗作用はS1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0098】
さらに、開示された化合物はグループIVA細胞質PLA2(cPLA2)の阻害に有用となり得る。cPLA2はエイコサン酸(例えばアラキドン酸)の放出を触媒する。エイコサン酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性エイコサノイドに変化する。従って、開示された化合物は抗炎症薬として有用となり得る。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0099】
さらに、開示された化合物は複数基質脂質キナーゼ(MuLK)の抑制のために有用となり得る。MuLKは多くのヒト腫瘍細胞に高度に発現するので、その抑制は腫瘍の成長もしくは伝播を遅らせる可能性がある。
【0100】
多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型などを含む様々な疾病の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に用いるだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0101】
本発明は、構造式Iの化合物を含む薬学的組成物も含む。より詳細には、そのような化合物は、当業者に既知の標準的な薬学的に許容可能な担体、充填剤、可溶化剤、安定剤を用いて、薬学的組成物として処方され得る。例えば、構造式Iの化合物を含む薬学的組成物、もしくはそのアナログ、誘導体、もしくは改良体が、本明細書で記載されるように被験者に適切な化合物を投与するために使用される。
【0102】
構造式Iの化合物は、構造式Iの化合物の治療的に許容可能な量、もしくは、構造式Iの化合物の治療有効量と、薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、疾病もしくは障害の処置のために有用である。
【0103】
開示された化合物と方法は、一つ以上のS1P受容体(特にS1P1、S1P4、S1P5受容体型)に受容体アゴニストもしくはアンタゴニストとしての活性を持つスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)アナログを対象とする。開示された化合物と方法は、リン酸部分を持つ化合物、ならびにホスホン酸、α置換ホスホン酸(特にα置換がハロゲンとチオリン酸であるもの)などの耐加水分解性のリン酸代理物(surrogate)を持つ化合物の両方を含む。
【0104】
基、置換基、範囲に対して下記に列挙した値は一例に過ぎず、基および置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0105】
X1、Y1、および、Z1は独立にO、CH、CH2、CHCF3、N、NHもしくはSである。
【0106】
X1、Y1、および、Z1の別の値はCH2である。
【0107】
R1は水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、または、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基となり得る。
【0108】
R1のさらなる値は、水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3である。
【0109】
R1のさらに追加の値は、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基である。
【0110】
R1のさらに追加の値は、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基である。
【0111】
構造式Iを持つ化合物は、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-の構造を持つ鎖を含むR2基を持つことができる。
【0112】
R2の値は以下を含む。
【0113】
【化20】
【0114】
構造式IIを持つR2のさらなる値は、
【0115】
【化21】
ここで式中のY3は(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-、もしくはCF3CH2CH2-もしくは以下の構造式を持つ基である。
【0116】
【化22】
【0117】
構造式II(パラ置換3,5-ジフェニル-(1,2,4)-オキサジアゾール)を持つR2のさらなる値は、
【0118】
【化23】
【0119】
構造式IIを持つR2の別の値は、
【0120】
【化24】
【0121】
構造式IIを持つR2の別の値は、
【0122】
【化25】
【0123】
構造式IIIを持つR2のさらなる値は、
【0124】
【化26】
【0125】
構造式IIIを持つR2の別の値は、
【0126】
【化27】
【0127】
R2のさらなる値は、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、もしくは(C2-C26)アルコキシアルキル基を含む。
【0128】
R2のさらに追加の値は、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、(C2-C14)アルキニル基、または、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム(C=NRd)基で随意に置換された(C1-C10)アルコキシ基を含む。
【0129】
R2のさらなる値は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基を含む。
【0130】
R3の別の値は、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロ
ピル基、ヒドロキシプロピル基、もしくはイソプロピル基である。
【0131】
R3の別の値は、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である。
【0132】
R4の値は、ヒドロキシ基もしくはリン酸(-OPO3H2)である。
【0133】
特定の化合物は以下の構造式を持つ。
【0134】
【化28】
【0135】
さらなる化合物は以下の構造式を持つ。
【0136】
【化29】
【0137】
構造式Iを持つさらなる化合物は、上記もしくは図1の化合物を含み、ここで式中のヒドロキシ基の水素原子の一つ以上は、リン酸基-OP(=O)(OH)2で置換される。
【0138】
構造式Iのさらなる化合物は下記の表1に図示される。
【0139】
【表1】
【0140】
別の態様では、本発明は構造式Iの一般構造を持つS1P受容体プロドラッグ化合物を提供し、これは、構造式VIIIを持つ一置換テトラリン環系を持つ化合物によって提供される。構造式Iのいくつかの実施形態では、構造(例えばIXおよびX)はただ一つの不斉中心しか持たないので、アミノ炭素はプロキラルであり、例えば酵素触媒リン酸化を受けてキラルとなる。
【0141】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載された化合物は、例えば第一級アルコールのリン酸化によって活性化されてモノリン酸化アナログを形成するような、プロドラッグであることが想定される。さらに、活性薬剤はS1Pタイプ1受容体のアゴニストであることが想定される。
【0142】
構造式Iの化合物が、安定な非毒性の酸もしくは塩基の塩を作るのに十分に塩基性もしくは酸性である場合、化合物を薬学的に許容可能な塩として調製および投与することが適切となり得る。薬学的に許容可能な塩の例は、生理学的に許容可能なアニオンを形成する酸で形成された有機酸付加塩(例えばトシレート、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、タータレート(tartarate)、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩)である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩を含む無機塩も形成され得る。
【0143】
薬学的に許容可能な塩は当該技術分野で周知の標準的な手順を用いて得られる。例えばアミンなどの十分に塩基性の化合物と適切な酸との反応によって、生理学的に許容可能なアニオンを得ることができる。アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)のカルボン酸塩も作られ得る。
【0144】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、無機塩基と有機塩基から調製することができる。無機塩基由来の塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、および、マグネシウムの塩を含むが限定はされない。有機塩基由来の塩は、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジへテロアリールアミン、トリへテロアリールアミン、複素環アミン、ジ複素環アミン、トリ複素環アミン、アミン上の少なくとも二つの置換基が異なり、かつアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、もしくは複素環基である、混合ジ-アミンおよびトリ-アミンなどの、1級アミン、2級アミン、3級アミンの塩を含むが限定はされない。二つもしくは三つの置換基が、アミノ窒素と共に複素環もしくはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。非制限的なアミンの例は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルピペリジンなどを含む。また当然のことながら、その他のカルボン酸誘導体が有用である(例えばカルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミドなどを含むカルボン酸アミド)。
【0145】
構造式Iの化合物は薬学的組成物として処方することができ、ヒトの患者などの哺乳類の宿主に、選択された投与経路に適した様々な形で投与することができる(例えば経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下の経路)。
【0146】
従って、本発明の化合物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な可食性の担体などの、薬学的に許容可能な溶媒と併用して、例えば経口で全身投与されてもよい。化合物は、ハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに入れてもよいし、タブレットに圧縮してもよいし、あるいは患者の食餌の食べ物に直接混ぜてもよい。治療用経口投与のために、活性化合物は一つ以上の賦形剤と合わせてもよいし、摂取可能なタブレット、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハースな
どの形で使用されてもよい。そのような組成物と製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物と製剤のパーセンテージは勿論異なってもよく、好都合に所定の単位剤形の質量の約2%〜約60%の間であってもよい。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、効果的な投与量レベルが得られるような量である。
【0147】
タブレット、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものも含んでもよい。:トラガカント・ゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤、第二リン酸カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、スクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリーフレーバーなどの香料が加えられてもよい。単位剤形がカプセルの際は、上述の種類の材料に加えて、植物油もしくはポリエチレングリコールなどの液体担体を含んでもよい。様々な他の材料がコーティングとして存在してもよく、あるいはそうでなければ固形単位剤形の物理的形状を修正するように存在してもよい。例えば、タブレット、ピル、もしくはカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラック、もしくは糖などでコーティングされてもよい。シロップもしくはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロースもしくはフルクトース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料、チェリーもしくはオレンジフレーバーなどの香料を含んでもよい。勿論、任意の単位剤形を調製するために使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に許容可能で、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性製剤および装置に組み込まれてもよい。
【0148】
また、活性化合物は、輸液もしくは注射によって、静脈内もしくは腹腔内に投与されてもよい。活性化合物もしくはその塩の溶液は、非毒性の界面活性剤と随意に混合して、水に調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物、ならびに油分に調製することもできる。通常の保存条件と使用条件において、これらの製剤は微生物の繁殖を防ぐために保存料を含む。
【0149】
注射もしくは輸液のための薬の剤形の例は、滅菌した注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは分散液の即時調製のために適した、随意にリポソームに封入された、有効成分を含む滅菌水溶液もしくは分散液もしくは滅菌粉末を含むことができる。全ての場合において、最終的な剤形は、製造条件および保存条件下において、滅菌、流体、かつ安定であるべきである。液体担体もしくは溶媒は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの混合物を含む溶媒もしくは液体分散媒質であることができる。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液について必要な粒子サイズの維持、もしくは界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の抑制は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌薬によってもたらすことができる。多くの場合、例えば糖、バッファーもしくは塩化ナトリウムといった等張剤を含むことが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチンといった吸収遅延剤の組成で使用することによって、注射可能な組成物の吸収を延長することができる。
【0150】
滅菌注射剤は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙された様々なその他の成分と共に適切な溶媒に合わせ、必要に応じてその後ろ過滅菌することによって調製される。滅菌注射剤の調製用の滅菌粉末の場合は、真空乾燥と凍結乾燥技術が調製方法として好ましい。これらの方法では、前もってろ過滅菌した溶液に存在する任意の所望の追加成分を含む有効成分の粉末を生じる。
【0151】
局所投与のために、本発明の化合物は、例えば液体である際には純粋な形で適用されて
もよい。しかしながら、化合物は、個体もしくは液体であってもよい皮膚科学的に許容可能な担体と併用して、組成物もしくは剤形として皮膚に投与することが一般的に好ましい。
【0152】
固形担体の例は、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体を含む。有用な液体担体は、水、アルコール、もしくはグリコール、もしくは水‐アルコール/グリコール混合物を含み、その中に本発明の化合物が、随意に非毒性の界面活性剤を用いて、効果的なレベルで溶解もしくは分散することができる。香料および追加の抗菌剤などのアジュバントを、所定の使用のために特性を最適化するために付加することができる。得られる液体組成物は、吸収パッドから適用することができ、包帯およびその他の包帯剤に浸透させるために使用することができ、あるいは、ポンプタイプもしくはエアロゾルスプレーを用いて患部上にスプレーすることができる。
【0153】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロース、もしくは変性無機材料などの増粘剤も、使用者の皮膚に直接適用するために、塗布可能な(spreadable)ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために、液体担体と共に利用することが出来る。
【0154】
構造式Iの化合物を皮膚に供給するために使用できる有用な外皮用組成物の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Jacquet et al. (U.S.Pat. No. 4,608,392)、Geria (U.S. Pat. No. 4,992,478)、Smith et al. (U.S. Pat. No. 4,559,157)およびWortzman (U.S. Pat. No. 4,820,508)を参照のこと。
【0155】
構造式Iの化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性、および動物モデルにおけるin vivo活性の比較によって決定できる。マウスおよびその他の動物における有効投与量のヒトへの外挿法は当該技術分野で既知であり、例えばU.S. Pat. No. 4,938,949を参照のこと。
【0156】
一般的に、ローションなどの液組成における構造式Iの化合物(群)の濃度は、約0.1から約25質量パーセントであり、約0.5〜10質量パーセントが好ましい。ゲルもしくは粉末などの半固体もしくは固体組成における濃度は、約0.1〜5 wt-%であり、組成の総質量に基づいて約0.5〜2.5質量パーセントが好ましい。
【0157】
処置での使用のために必要な化合物、もしくはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩によって異なるだけでなく、投与経路、処置される疾病の状態、および患者の年齢と状態によっても異なり、最終的に付添の医師もしくは臨床医の判断による。しかしながら一般的には、投与量は一日当たり体重の約0.1〜約10 mg/kgの範囲である。
【0158】
化合物は単位剤形で都合よく投与される。例えば、5〜1000 mg、好都合には10〜750 mg、最も好都合には50〜500 mgの有効成分を単位剤形あたりに含む。
【0159】
理想的には、有効成分は約0.5〜約75μMの活性化合物のピーク血漿濃度に達するように投与されるべきであり、約1〜50μMが好ましく、約2〜約30μMが最も好ましい。これは、例えば有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射(随意に食塩水に入れて)によって、あるいは約1〜100 mgの有効成分を含むボーラス(bolus)として経口投与することによって実現されてもよい。好ましい血中レベルは、約0.01〜5.0 mg/kg/hrを供給する持続注入、もしくは有効成分(群)の約0.4〜15 mg/kgを含む間欠的注入によって維持されてもよい。
【0160】
所望の投与量は、好都合に単回投与で示されてもよいし、あるいは、例えば一日あたり2、3、4、もしくはそれ以上のsub-dosesとして、適切な間隔で投与される分割投与と
して示されてもよい。sub-dose自体も、例えば吸入器からの複数回吸入、もしくは眼への複数滴の点眼など、複数の個別の大まかに間隔をあけた投与にさらに分割されてもよい。
【0161】
開示された方法は、構造式Iの阻害化合物と、その阻害化合物もしくはその阻害化合物を含む組成物の、細胞もしくは被験者への投与を説明する教材を含むキットを含む。これは、その化合物もしくは組成物を細胞もしくは被験者に投与する前に、その阻害化合物もしくは組成物を溶解もしくは懸濁するための(好ましくは滅菌)溶媒を含むキットなど、当業者に既知のキットのその他の実施形態を含むと解釈されるべきである。被験者はヒトであることが好ましい。
【0162】
上記のように、もしくは下記の実施例で論じるように、開示された化合物と方法に従って、当業者に既知の従来の化学技術、細胞技術、組織化学技術、生化学技術、分子生物学技術、微生物学技術、in vivo技術が利用できる。そのような技術は完全に文字通り説明される。
【0163】
さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施形態例を用いて、開示された化合物を作成し利用することができると考えられる。
【0164】
構造式Iの化合物の調製、もしくは構造式Iの化合物の調製に有用な中間体の調製のためのプロセスは、さらなる実施形態として提供される。構造式Iの化合物の調製に有用な中間体も、さらなる実施形態として提供される。そのプロセスはさらなる実施形態として提供され、本明細書においてスキームで図解される。他に限定されない限り、一般的な 基の意味は上述した通りである。
【0165】
いくつかの開示された化合物の合成の実施例は、スキーム1(図2)に図解する。試薬と条件は以下の通りである。:a)Tf2O, 2,6-ルチジン, CH2Cl2, 0℃, 2h, 93%;b)1-オクテン, 9-BBN, K3PO4, KBr, H2O, Pd(PPh3)4, 65℃, 2h, 82%;c)CuBr2, EtOAc, CHCl3, reflux 6h, 80%;d)NaH, N-アセトアミド-マロン酸ジエチル, DMF, 0℃-rt, overnight, 75%;e)Et3SH, TiCl4, CH2Cl2, rt, 12h, 65%;f)LiBH4, rt, THF, 48h, 33%;g)LiOH, H2O, MeOH, THF, 50℃, 5h, 75%;h)P2O5, H3PO4, 100℃, 2h, 37%;i)12M HCL, MeOH, reflux, 2h;j)LiAlH4, THF, reflux, 12h, 21%, two steps;k)P2O5, H3PO4, 100℃, 2h, 50%。
【0166】
ここで本発明は、以下の実施例と実施形態を参照して説明される。さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施例を用いて、開示された化合物を作成し利用することができると考えられる。従って以下の実施例は、例示目的に提供されたに過ぎず、特に好ましい実施形態を指摘し、 本開示の残りを限定するものと解釈されるものではない。従って、実施例は、本明細書で提供される教示の結果として明らかとなる、いかなる全ての変更をも包含するものと解釈されるべきである。
【実施例】
【0167】
[実施例1:トリフルオロメタンスルホン酸5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2イルエステル(2)]
【0168】
【化30】
【0169】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.7 mL、10 mmol)を、0℃に冷却された脱水したジクロロメタン(10 mL)の6-ヒドロキシ-1-テトラロン(1.62 g、10 mmol)および2,6-ルチジン(1.28 mL、10 mmol)の溶液に1時間にわたってゆっくりと加えた。1時間後、溶液をジクロロメタン(10 mL)で希釈し、1M塩酸(20 mL)で洗浄した。有機層をジクロロメタン(50 mL)で再抽出し、あわせた有機物を1M塩酸(10 mL)で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)で精製し、2.7 gの化合物2(93%)を得た。
【0170】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.13 (p, 2H, J= 6.22Hz), 2.63 (t, 2H, J = 6.95Hz), 2.98 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.15 (m, 2H), 8.07 (m, 1H); 13C NMR δ 23.08, 29.88, 38.92, 116.74, 119.81, 121.56, 130.14, 132.58, 147.38, 152.52, 196.53.
【0171】
[実施例2:6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(3)]
【0172】
【化31】
【0173】
9-BBN(THFの0.5 M溶液、20.2 mL、10.1 mmol)を、1-オクテン(1.6 mL、10.1 mmol)に室温で加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。この後、K3PO4(2.93 g、13.8 mmol)、Pd(Ph3P)4(191 mg、0.17 mmol、1.8 mol %)、KBr(1.2 g、10.1 mmol)および脱気H2O(0.18 mL、10 mmol)を加えた。この後、無水脱気THF(10 mL)の化合物2(2.7 g、9.2 mmol)の溶液を加えた。反応混合物をアルゴン下で65℃で2時間加熱した。冷却後、溶液をpH 1まで酸性にし、EtOAc(100 mL)に抽出した。水層をEtOAc(50 mL)で再抽出し、合わせた有機物をH2O(20 mL)とブライン(40 mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、1.93 gの化合物3(82%)を得た。
【0174】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.24 (bs, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 2.06 (p, 2H, J = 5.85Hz), 2.57 (t, 4H, J = 6.95Hz), 2.87 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.01 (s, 1H), 7.06 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.06Hz); 13C NMR δ 14.32, 22.88, 23.61, 29.44, 29.55, 29.66, 29.96, 31.32, 32.08, 36.31, 39.33, 127.12, 127.45, 128.73, 130.75, 144.70, 149.28, 198.09.
【0175】
[実施例3:2-ブロモ-6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(4)]
【0176】
【化32】
【0177】
臭化第二銅(3.34 g、15.0 mmol)を攪拌しながら酢酸エチル(10 mL)で加熱還流した。これに化合物3(1.93 g、7.5 mmol)を含むクロロホルム(10 mL)を加えた。反応物をさらに6時間加熱還流し、冷却した。臭化銅と臭化第二銅の残留物をろ過し、ろ液を活性炭で脱色し、セライト層を通してろ過し、酢酸エチル(4x50 mL)で洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、2.02 gの化合物4(80%)を得た。
【0178】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.26 (bs, 10H), 1.61 (p, 2H, J = 6.96Hz), 2.46 (m, 2H), 2.62 (t, 2H, J = 7.69Hz), 2.86 (dt, 1H, J = 16.34Hz, 4.39Hz), 3.27 (dt, 1H, J = 16.83Hz, 4.39Hz), 4.69 (t, 1H, J = 4.02Hz), 7.07 (s, 1H), 7.14 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.99 (d, 1H, 1 = 8.05Hz); 13C NMR δ 14.34, 22.88, 26.42, 29.44, 29.57, 29.64, 31.25, 32.08, 32.32, 36.39, 127.75, 128.00, 128.73, 129.00, 144.30, 150.39, 190.54.
【0179】
[実施例4:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4,-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチルエステル(5)]
【0180】
【化33】
【0181】
鉱油中の水酸化ナトリウム(720 mg、18.0 mmol)60%を無水DMF(10 mL)で懸濁し、無水DMF(10 mL)中にアセトアミドマロン酸ジエチル(3.26 g、15 mmol)を含む溶液を加えた。アニオンが形成されるまで、溶液を0℃で3時間攪拌した。無水DMF(10 mL)中に化合物4(2.02 g、6.0 mmol)を含む溶液を加え、溶液を室温に加温し、一晩攪拌した。混合物を蒸留水(50 mL)に注ぎ、氷浴中で1M塩酸でpH 3まで酸性にし、酢酸エチル(3x50 mL)で抽出した。有機相をブライン(2x30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、40% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、2.12 gの化合物5(75%)を得た。
【0182】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.22Hz), 1.24 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 1.97 (s, 3H), 2.59 (t, 2H, J = 7.32Hz), 2.83-3.21 (m, 4H), 3.88 (dd, 1H, J = 14.00Hz, 3.68Hz), 4.14-4.32 (m, 4H), 6.86 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 7.07 (d, 1H, J = 8.69 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 8.36Hz); 13C NMR δ 14.05, 14.16,14.30,
22.85, 23.31, 26.98, 29.40, 29.49, 29.61, 29.98, 31.28, 32.05, 36.32, 56.16, 62.40, 63.13, 66.33, 127.16, 127.63, 128.78, 144.84, 150.07, 166.38, 168.70, 169.83, 197.63.
【0183】
[実施例5:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(6)]
【0184】
【化34】
【0185】
5 mlのCH2Cl2にトリエチルシラン(1.3 ml、8.2 mmol)を加えた溶液を、化合物5(1 g、2.1 mmol)を含む5 mlのCH2Cl2に加えた。反応混合物をAr下で室温で攪拌し、TiCl4(0.09 ml、8.2 mmol)を滴下した。得られた溶液を12時間攪拌し、0℃に冷却し、10 mlの飽和NaHCO3をゆっくり加えてクエンチした。水層をCH2Cl2(3x30 mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(2x30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、630 mgの化合物6(65%)を得た。
【0186】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.46Hz), 1.26 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.79Hz), 2.03 (s, 3H), 2.28 (b, 1H), 2.49-2.68 (m, 4H), 2.82-2.92 (m, 2H), 4.20-4.34 (m, 4H), 6.69 (s, 1H), 6.89-7.05 (m, 3H); 13C NMR δ 14.21, 14.25,14.37, 22.92, 23.37, 25.48, 29.50, 29.63, 29.72, 29.76, 30.39, 31.93, 32.13, 35.78, 40.33, 62.46, 62.79, 68.80, 126.04, 128.81, 129.30, 132.85, 136.28, 140.66, 150.07, 167.63, 168.32, 169.42.
【0187】
[実施例6:N-[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミド(7)]
【0188】
【化35】
【0189】
水素化ホウ素リチウム(THF中の2M溶液、0.88 ml、1.76 mmol)を0℃で5 mlのTHFの化合物6(200 mg、0.44 mmol)に加えた。反応混合物を室温で48時間攪拌し、40 mlの酢酸エチルで希釈した。溶液をブライン(2x20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、4% MeOHを含むCH2Cl2)で精製し、55 mgの化合物7(33%)を得た。
【0190】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.56Hz), 1.29 (m, 10H), 1.57 (p, 2H, J = 6.25Hz), 1.94-1.98 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 2.51 (t, 2H, J = 7.32), 2.60-2.85 (m, 4H), 3.69 (d, 2H, J = 11.61), 3.89 (dd, 2H, J = 11.61Hz, 7.25Hz), 6.22 (s, 1H), 6.88-6.99 (m, 3H); 13C NMR δ 14.38, 22.92, 24.20, 24.35, 29.52, 29.66, 29.73, 29.95, 30.32, 31.94, 32.14, 35.78, 38.26, 63.55, 64.34, 64.46, 126.18, 128.85, 129.30, 133.06, 136.22, 140.75, 172.40.
【0191】
[実施例7:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(VPC104061)]
【0192】
【化36】
【0193】
化合物7(53 mg、0.14 mmol)とLiOH.H2O(45 mg、1.1 mmol)を含むMeOH(3 ml)の溶液、THF(1.5 ml)、および水(3 ml)を50℃で5時間攪拌し、酢酸エチル(20 ml)で
希釈した。溶液をブライン(2x10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2の50% MeOH)で精製し、35 mgの化合物VPC104061(75%)を得た。
【0194】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.17Hz), 1.29 (m, 10H), 1.56 (p, 2H, J = 6.17Hz), 1.82-1.98 (m, 2H), 2.51 (t, 2H, J = 6.95), 2.58-2.88 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.61 (d, 2H, J = 10.98), 3.73 (d, 2H, J = 10.61Hz), 6.87-6.98 (m, 3H); 13C NMR δ 14.37, 22.93, 24.02, 29.32, 29.53, 29.70, 29.75, 29.85, 30.26, 31.94, 32.14, 35.08, 39.58, 57.74, 66.13, 66.19, 126.09, 128.81, 129.39, 133.28, 136.26, 140.64. MS (ESI) m/z 334.1 [M+H]+.
【0195】
[実施例8:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ホスホノオキシプロピル]エステル(VPC104081)]
【0196】
【化37】
【0197】
五酸化リン(2.0 g、14 mmol)を含むリン酸(水中で85%、2 ml、29 mmol)をVPC104061(25 mg、0.07 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。生成物に水を加えて沈殿させた(14 mg、37%)。MS (ESI) m/z 494.4 [M+H]+.
【0198】
[実施例9:アミノ-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-酢酸(8)]
【0199】
【化38】
【0200】
化合物6(300 mg、0.65 mmol)を12M HCl(10 ml)に加えた。混合物を加熱還流し、混合物が均質になるまでMeOH(5 ml)を加えた。薄層クロマトグラフィー(TLC)で測定されるように開始物質が使い尽くされるまで、還流を2時間続けた。反応混合物を減圧下で濃縮し、MeOHとジエチルエーテルで複数回共蒸発させた(co-evaporated)。所望の化合物8をジエチルエーテルとヘキサンから再結晶化し、淡褐色固体を得た。これを次の反応に直接用いた。
【0201】
[実施例10:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノール(VPC104059)]
【0202】
【化39】
【0203】
実施例9で調製したアミノ酸8を、THF(10ml)の水酸化リチウムアルミニウム(62 mg、1.63 mmol)の還流溶液に加えた。反応混合物を12時間加熱還流し、続いて0℃に冷却して10M NaOHを加え、20分間攪拌した。酢酸エチル(20 ml)を加え、混合物をセライトと硫酸マグネシウムを通してろ過した。ろ液を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、50% MeOHを含むCH2Cl2)で精製し、41 mgの生成物VPC104059(21%、二段階)を得た。
【0204】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.39Hz), 1.28 (m, 10H), 1.55 (p, 2H, J = 7.16Hz), 1.67-2.11 (m, 3H), 2.48 (t, 2H, J = 7.69), 2.56-2.83 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.47-3.75 (m, 2H), 6.82-6.96 (m, 3H); 13C NMR δ 13.34, 22.58, 26.45,
29.14, 29.21, 29.29, 29.47, 31.70 31.90, 32.26, 35.40, 47.56, 125.64, 128.36, 128.86, 128.93, 133.19, 139.93, MS (ESI) m/z 303.9 [M+H]+.
【0205】
[実施例11:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]エステル(VPC104127)]
【0206】
【化40】
【0207】
五酸化リン(1.5 g、10.5 mmol)を含むリン酸(水中で85%、1.5 ml、22 mmol)をVPC104059(25 mg、0.08 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。生成物に水を加えて沈殿させた(10 mg、50%)。MS (ESI) m/z 384.2 [M+H]+.
【0208】
[実施例12:構造(X)の合成]
構造式IXを持つ化合物を含むエーテルの合成をスキーム2(図3)に図解する。ケト-アルコール1Aを、標準的な試薬と技術を用いてケト-エーテル1Bに変換させる。実施例3と同様のやり方で、ケト-エーテルをハロゲン化してハロ-エーテル1Cを得る。実施例4に記載の手順と同様のやり方で、ハロ-エーテルをアルキル化してジエステル-エーテル1Dを得る。当該技術分野で既知の標準的な還元剤を用いて、ジエステルをエーテル-トリオール1Eに変換させる。当該技術分野で既知の標準的な方法を用いて、トリオールをジオールに変換させ、脱保護し、化合物IXを得る。
【0209】
[実施例13:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(A)]
【0210】
【化41】
【0211】
水素化ホウ素ナトリウム(75 mg、2.00 mmol)を含む室温の5 mlエタノール溶液に、2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物5)(1.00 g、2.1 mmol)を含む5 mlエタノールを加えた。反応混合物をアルゴン下で室温でさらに1時間攪拌し、水(20 mL)と塩化メチレン(20 mL)を加えてクエンチした。有機層を除去し、水層を塩化メチレン(2x20 mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(2x20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20%酢酸エチルを含むヘキサン)で精製し、755 mgの化合物A(75%)を得た。
【0212】
[実施例14:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(B)]
【0213】
【化42】
【0214】
2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物A、755 mg、1.58 mmol)を無水酢酸(5 mL)に溶解し、その後0℃で触媒量の塩化第二鉄(66 mg、0.4 mmol)を加えた。反応物をさらに2時間0℃で攪拌し、20 mLのジエチルエーテルを加えた。反応物を50 mLの氷冷水に注意深く注ぎ、有機層を素早く分離した。有機層を塩化メチレン(2x20 mL)で再抽出し、あわせた有機層をブライン(20 mL)で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、10%酢酸エチルを含むヘキサン)で精製し、458 mgの化合物B(60%)を得た。完全合成は図4に図解する。
【0215】
[実施例14:スフィンゴシンキナーゼアッセイ]
組み換えスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)は、関連プラスミドDNAをHEK293T細胞に導入することによって、マウスもしくはヒトの組み換え酵素の発現を強制することによって調製される。60時間後、細胞を採取し、破壊された非ミクロソーム(例えば溶解性の)画分が保持される。組み換え酵素を含む破壊細胞の上澄みを、試験化合物(FTY720、AA151、VIIIおよびXVIII)(5〜50μM)とγ-32P-ATPと混合し、37℃で0.5〜2.0時間インキュベートする。反応混合物中の脂質を有機溶媒に抽出し、順相薄層クロマトグラフィーで示す。放射性標識したバンドをオートラジオグラフィーで検出し、プレートから擦り取ってシンチレーション計数で定量化する。示されたヒストグラム(図5A、5B、6)では、スフィンゴシンは15μMにあらわれ、試験化合物は50μMの濃度であった。インキュベーション時間は20分であった。
【0216】
[実施例15:GTPγS-35バインディングアッセイ]
このアッセイは、単独でのGタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニスト活性を説明す
る。このアッセイは、それぞれのタンパク質をコードする四つのプラスミドDNAを細胞に導入することによって、HEK293T細胞における、組み換えGPCR(例えばS1P1-5受容体)、およびヘテロ三量体Gタンパク質の三つのサブユニット(典型的にはα-2、β-1、もしくはγ-2)の各々の発現を同時に強制する。導入から約60時間後、細胞を採取し、開き、核を除去する。粗ミクロソームを残留物から精製する。ミクロソーム上の受容体-Gタンパク質複合体のアゴニスト(例えばS1P)刺激は、用量依存的なやり方でα-サブユニット上のGTPからGDPへの交換をもたらす。GTP結合α-サブユニットは、GDPに加水分解されない放射性核種(硫黄35)標識ホスホチオネート(phosphothionate)である、GTPアナログ(GTPγS-35)を用いて検出される。Gタンパク質が付着したミクロソームはろ過によって回収され、結合したGTPγS-35が液体シンチレーションカウンターで定量化される。アッセイは相対効力(relative potency:EC50値)と最大効価(maximum effect:有効性、Emax)を与える。アンタゴニスト活性は、一定量のアンタゴニストの存在下で、アゴニストの用量‐反応曲線の右方向のシフトとして検出される。アンタゴニストが競合的に作用する場合、受容体/アンタゴニストの対の親和性(Ki)を決定できる。
【0217】
化合物VIII(モノ、XXVI、二リン酸化、XXVII、異性体の混合物)および化合物XXVIIIのリン酸化された形は効能が低く、S1P3受容体の部分的なアゴニストである(図8を参照)。化合物XXVI、XXVIIおよびXXVIIIは、S1Pと比較してS1P1により有効であり、S1P3により有効性が低い。アッセイは、Davis, M.D., J.J. Clemens, T.L. Macdonald and K.R. Lynch (2005) "S1P Analogs as Receptor Antagonists" Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp.9833-9841に記載されているように実施した。
【0218】
[実施例16:リンパ球減少アッセイ]
化合物(例えば化合物VIIIなどの一級アルコール)を2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに溶解し、体重あたり0.01、1.0および10 mg/kgの投与量で強制経口投与によってマウス群に導入する。24時間後と48時間後、マウスを軽度麻酔して、ca. 0.1 mlの血液を眼窩静脈叢(orbital sinus)から採取する。リンパ球の数(マイクロリットルの血液あたり1000のオーダーで;通常は4-11)を、Hemavet blood analyzerを用いて測定した。化合物VIIIを示すヒストグラムでは、溶媒処理したマウスの100%値は、24時間で7.5、96時間で5であった。マウスは三群で、マウスの血統はsv 129 x C57BL/6の交雑系であった。活性化合物(例えば化合物VIIIと化合物XXVIII)を20 mMで酸性DMSOに溶解し、混合しながら2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンを含む水に1:20で希釈した。この溶液を腹腔内投与(i.p.)で体重あたり0.01、1.0、10 mg/kgの投与量でマウスに導入した。
【0219】
図9では、強制経口投与によって投与された化合物VIIIと化合物XXVIIIを用いるアッセイの結果がグラフで図示される。化合物VIIIのIV投与24時間後の総リンパ球数(k/μl)が報告される。
【0220】
化合物を2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに溶解し、3セットの12週齢のC57Bl/6雌マウスに強制経口投与(PO)によって投与した。投与18時間後、血液を眼窩静脈叢から採取し、Hemavet blood analyzerでリンパ球数を測定した。投与量は、化合物XXIX(1 mg/kg)、化合物VIII(10 mg/kg)、FTY720(0.3 mg/kg)であった。化合物XXIX、3,5-ジフェニル-1,2,4-オキサジアゾールは、Li et al. (Journal Medicinal Chemistry, vol. 48, p.6169 (2005))に記載のS1P1受容体アゴニストであり、これを比較として用いた。結果を図10に図解する。
【0221】
[実施例17:心拍数アッセイ]
マウスに化合物VIII、FTY720(静脈内、3 mg/kg)、もしくは溶媒(2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン)を投与し、投与1時間後に心拍数を測定した。心拍数は、EC
GenieTMシステムを用いて、非拘束状態の意識のある動物で記録した。結果を図11に図解する。
【0222】
本発明は、本明細書に記載のアッセイと方法のみに限定されるものと解釈されるべきではなく、その他の方法とアッセイも含むものと解釈されるべきである。本明細書に記載されていないが使用されたその他の方法は周知であり、化学、生化学、分子生物学、臨床医学の分野の当業者の権限内にある。当業者は、本明細書に記載の手順を実施するのに、その他のアッセイと方法が利用可能であることがわかるだろう。
【0223】
本明細書で使用した略語は、臨床、化学、生物学の分野における従来の意味を持つ。何か矛盾がある場合には、その中に任意の定義を含む本発明の開示を採用するものとする。
【0224】
本明細書で引用の特許、特許出願、出版物の各々および全ての開示は、本開示にその全容が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。本開示の実施形態例が考察され、本開示の範囲内の考えられる変更が参照される。本開示におけるこれらおよびその他の変更および修正は、本開示の範囲から逸脱することなく当業者に明らかとなるだろう。また、当然のことながら本開示と下記に記載の請求項は、本明細書で記載の実施形態例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】三つのS1PアゴニストFTY720、AA151、化合物XXIX、および構造式Iのさらなる化合物の図である。
【図2】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図3】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図4】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図5A】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図5B】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図6】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図7】S1Pおよび化合物XXVI、XXVII、およびXXVIIIを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果をグラフで示す。
【図8】S1Pおよび化合物XXVI、XXVII、およびXXVIIIを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果をグラフで示す。
【図9】経口量の試験化合物をマウスに投与した24時間後(各群の左の棒)および48時間後(各群の右の棒)の総リンパ球数(k/μl)をグラフで示す。
【図10】経口量の試験化合物をマウスに投与した18時間後の総リンパ球数(k/μl)をグラフで示す。
【図11】化合物VIIIがマウスの心拍数に何の影響も与えないことを示すアッセイ結果のグラフ図である。アッセイでは試験化合物をIV投薬を介して投与し、溶媒は2%シクロデキストリンであった。
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2006年2月9日出願の仮出願No. 60/771,789、2006年11月1日出願の仮出願No. 60/855,960、および2006年11月21日出願の仮出願No. 60/860,694の優先権を主張し、その開示は参照によってその全容が組み込まれる。
【0002】
[米国政府の権利]
本発明はNational Institutes of Healthによって授与されたGrant No. R01 GM067958において米国政府支援の下で行われた。米国政府は本発明についての一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーの五つのメンバーの刺激によって様々な細胞応答を引き起こす、リゾリン脂質メディエーターである。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、刺激によってヘテロ三量体Gタンパク質α(Gα)サブユニットおよびβ‐γ(Gβγ)二量体の活性化を介して二次メッセンジャーシグナルを伝播する。最終的に、このS1P駆動のシグナル伝達は、細胞生存、細胞移動の増加、そしてしばしば有糸分裂誘発をもたらす。S1P受容体を標的とするアゴニストの近年の発展は、生理的恒常性におけるこのシグナル伝達システムの役割に関する知見を与えてきた。例えば、リン酸化を受ける免疫調節剤FTY720(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン1,3-ジオール)は、五つのS1P受容体のうちの四つに対するアゴニストであり、S1Pトーン(tone)の増強がリンパ球トラフィッキングに影響することを明らかにした。さらに、S1Pタイプ1受容体(S1P1)アンタゴニストは、肺血管内皮の漏出を引き起こし、これは、S1Pがいくつかの組織層において内皮バリアの完全性の維持に関与しているかもしれないことを示唆する。
【0004】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーの五つのメンバーの刺激によって様々な細胞応答を引き起こす、リゾリン脂質メディエーターである。
【0005】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、血小板凝集、細胞増殖、細胞形態、腫瘍細胞侵入、内皮細胞走化性、内皮細胞血管形成をもたらすようなものを含む、多くの細胞過程を誘導することが示されている。こうした理由から、S1P受容体は、創傷治療や腫瘍成長阻害などの治療への応用のための良い標的となる。
【0006】
スフィンゴシン-1-リン酸は、一部にはS1P1、S1P2、S1P3、S1P4、および、S1P5(以前はEDG1、EDG5、EDG3、EDG6、および、EDG8)という名のGタンパク質共役受容体のセットを介して細胞にシグナルを送る。EDG受容体はGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、刺激によってヘテロ三量体Gタンパク質α(Gα)サブユニットおよびβ‐γ(Gβγ)二量体の活性化を介して二次メッセンジャーシグナルを伝播する。これらの受容体は、構造に関係があるリゾホスファチジン酸(LPA)の三つの他の受容体LPA1、LPA2、および、LPA3(以前はEDG2、EDG4、および、EDG7)と50-55%のアミノ酸配列相同性およびクラスターを共有する。
【0007】
リガンドが受容体に結合すると、Gタンパク質共役受容体(GPCR)に立体配座の変化が誘導され、GDPは関連Gタンパク質のαサブユニットのGTPによって置換され、その後Gタンパク質は細胞質に放出される。αサブユニットはその後βγサブユニットから解離され、
それにより、各サブユニットはエフェクタータンパク質と結合できるようになる。エフェクタータンパク質は、細胞応答をもたらす二次メッセンジャーを活性化する。最終的に、Gタンパク質のGTPはGDPに加水分解され、Gタンパク質のサブユニットは相互に再結合し、その後受容体と再結合する。増幅は一般的なGPCR経路において重要な役割を果たす。一つのリガンドの一つの受容体への結合は、多くのGタンパク質の活性化につながり、そのGタンパク質の各々は、増幅された細胞応答をもたらす多くのエフェクタータンパク質と結合することができる。
【0008】
個々の受容体は組織特異性と応答特異性の両方を兼ね備えるので、S1P受容体は良い薬剤標的となる。一つの受容体に選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストの発現は、その受容体を含む組織に細胞応答を局在させ、不要な副作用を制限するので、S1P受容体の組織特異性は望ましい。S1P受容体の応答特異性もまた、他の応答に影響することなく特定の細胞応答を開始したり抑制したりするアゴニストもしくはアンタゴニストの発現を可能にするので、重要である。例えば、S1P受容体の応答特異性は、細胞形態に影響することなく血小板凝集を開始するS1P模倣剤を許容することができる。
【0009】
スフィンゴシン-1-リン酸は、スフィンゴシンキナーゼとの反応においてスフィンゴシンの代謝物として形成され、高レベルのスフィンゴシンキナーゼが存在し、スフィンゴシンリアーゼが無い血小板凝集体において大量に保存される。S1Pは血小板凝集の間に放出され、血清中に蓄積し、悪性腹水の中にも見られる。S1Pの可逆性生分解は、外部ホスホヒドロラーゼ(ectophosphohydrolases)、特にスフィンゴシン-1-リン酸ホスホヒドロラーゼによる加水分解を介して大概進行する。S1Pの不可逆性生分解は、S1Pリアーゼによって触媒され、エタノールアミンリン酸とヘキサデセナールをもたらす。
【0010】
効能、選択性、経口生体利用性が改良されたS1P受容体のアゴニストである、新規の、効力のある選択剤が現在必要とされている。加えて、そのような化合物の合成と使用だけでなく同定が技術的に必要とされている。本発明はこうしたニーズを満たすものである。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、一態様において、一つ以上のS1P受容体にアゴニスト活性を持つ化合物を提供する。化合物はスフィンゴシンアナログであり、リン酸化後、S1P受容体のアゴニストとして機能することができる。従って、構造式Iの化合物が提供される。
【0012】
【化14】
ここで式中のX1、Y1、Z1は独立にO、CRa、CRaRb、N、NRc、もしくはSであり、R1は水素、ハロ(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシル基であり、R2は水素、ハロ基、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(
C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C4-C10)ヘテロアリール基であり、あるいはR2は構造式II、III、IV、VもしくはVIを持つ基であってもよい。
【0013】
【化15】
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は独立にO、S、C、CR15、CR16R17、C=O、NもしくはNR18であり、R15、R16、R17は独立に水素、ハロ基、(C1-C10)アルキル基、ハロ置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であり、ここでR18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基であってもよく、R10、R11、R12、R13、もしくはR14の少なくとも一つがヘテロ原子(O、SもしくはN)である。Z2は(C1-C6)アルキル基、(C3-C8)シクロアルキル基、置換アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、(C6-C10)アリール基、アルキル置換アリール基、(C7-C16)アリールアルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基であって、ここでZ2のアルキル基は1、2、3もしくは4個の基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基である。破線の丸は一つ以上の任意の二重結合をあらわす。Y2はO、C=OもしくはCH2であり、W1は結合もしくは-CH2-CH2-CH2-であり、W2は結合もしくはCH2-で、かつmが1、2、もしくは3であるか、あるいは(C=O)(CH2)1-5でかつmは1である。破線と実線の二重線の組み合わせの各々は任意の二重結合をあらわし、nは0、1、2、もしくは3で、qは0、1、2、もしくは3である。
【0014】
R3は水素、(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシル基であって、R4はヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホン酸(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸であり、Rcは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。Ra、Rb、Rcは独立に水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。
【0015】
R1のアルキル基は、1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換されてもよく、ここで置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基である。R2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基のいずれかは、1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換され、ここで置換基は独立にオキソ基(=O)、イミノ基(=NRd)、(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはC6-アリール基であり、あるいはR2アルキル基の炭素原子の一つ以上は、過酸化物の酸素ではない酸素(non-peroxide oxygen)、硫黄、もしくはNRcで独立に置換することができる。R3のアルキル基は、1もしくは2個のヒドロキシ基で随意に置換され、Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である。本発明は、構造式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は構造式VIIを持つリン酸エステルを提供する。
【0017】
【化16】
【0018】
別の態様では、本発明は構造式Iの化合物のプロドラッグを提供する。別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物、または薬物療法で使用するためのその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルも提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は腫瘍の血管新生の抑制方法を提供し、その方法は、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の有効量を癌細胞に接触させるステップを含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、自己免疫疾患の治療もしくは同種移植片生着の延長のために、リンパ球トラフィッキングを変化させることによって免疫系を調節する方法を提供する。前記方法は、少なくとも一つの構造式Iの化合物の有効量を、それを必要とする被験者に投与するステップを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は神経因性疼痛の予防、抑制、もしくは処置の方法を提供し、この方法は、少なくとも一つの構造式Iの化合物の有効量を投与するステップを含み、あるいは構造式Iの化合物および薬学的に許容可能な担体が、それを必要とする被験者に投与される。本来、疼痛は侵害受容性もしくは神経因性である可能性がある。神経因性疼痛は、その慢性的な性質、明白な直接原因(例えば組織損傷)の欠如、痛覚過敏、もしくはアロディニア(異痛)を特徴とする。痛覚過敏とは、疼痛性刺激に対する過剰反応のことである。アロディニアとは、正常刺激(例として衣類の接触、温風もしくは冷気などを含む)を疼痛と知覚することである。神経因性疼痛は、腕や、より多くは足などの四肢の神経損傷の結果となり得る。引き金となる事象は、例えば交通事故などの外傷や切断(例えば幻肢痛)を含み得る。神経因性疼痛は、例えばビンクリスチンやパクリタキセル(タキソールTM)などの薬物治療の副作用によって起こる可能性があり、あるいは1型糖尿病や2型糖尿病、帯状疱疹、HIV-1感染などの疾病病変の一部として起こる可能性がある。通常は、神経因性疼痛はアスピリンなどの鎮静剤や非ステロイド性抗炎症薬には反応しない。
【0022】
別の態様では、本発明はカテーテル後の血管損傷の修復方法を提供し、この方法は、構造式Iの化合物の有効量を患部の血管腔に接触させるステップを含む。別の態様では、本発明は構造式Iの化合物で留置ステントをコーティングするステップを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、血管損傷後の血管再狭窄を予防し抑制するために、S1Pアナログを使用するための組成物と方法を提供する。例えば、損傷はバルーン血管形成によるものであってもよい。別の態様では、本発明は血管再狭窄を防ぐために被験者を処置する方法を含む。
【0024】
別の態様では、本発明は喘息の発作を防ぐためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、喘息はシステイニルロイコトリエンの過剰生産によるものであることがある。別の態様では、本発明は喘息を処置するために被験者を処置する方法を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は肥満を処置するために構造式Iのスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は血中脂質組成を正常化するためにスフィンゴシンアナログ(S1Pプロドラッグを含む)を使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、血中の低密度リポタンパク質(LDLもしくは“悪玉コレステロール”)レベルが減少し得る。別の態様では、血中トリグリセリドレベルが減少し得る。
【0027】
別の態様では、本発明は動脈硬化の予防と処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は腫瘍性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、この処置は抗血管新生特性のために有効なS1P受容体アンタゴニストの適用によって行われる。別の態様では、この処置は複数基質の脂質キナーゼを阻害する構造式Iのスフィンゴシンアナログの投与によって行われる。
【0029】
別の態様では、本発明は神経変性疾患の処置のためにS1PアナログおよびS1Pプロドラッグを使用するための組成物と方法を提供する。一態様では、処置はアルツハイマー型老年性認知症のためのものである。
【0030】
別の態様では、本発明は、薬物療法(例えば腫瘍性疾患の処置、神経因性疼痛の処置、自己免疫疾患の処置、同種移植片生着の延長)における使用のために、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、腫瘍成長、転移もしくは腫瘍血管新生を阻害するための薬剤を調製するために、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩を使用する方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、自己免疫疾患の処置、もしくは同種移植片生着の延長のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、哺乳類種(例えばヒト)において、神経因性疼痛の処置のための薬剤を調製するための、構造式Iの化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物(例えばS1P受容体プロドラッグ)を、スフィンゴシンキナーゼタイプ1もしくは2の基質として、in vitroおよびin vivoで評価する方法を提供する。別の態様では、本発明は、in vivoもしくはin vitroを含む指定の受容体部位に結合する構造式Iの化合物を、前記受容体に結合するのに有効な構造式Iの化合物の量で評価する方法を含む。指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を使って、特定の受容体サブタイプに対する試験化合物の選択性を測定することができる。あるいは、前記薬剤を前記リガンド‐受容体複合体に接触させることによって、また、リガンドの置換もしくは薬剤の結合の程度を測定することによって、疾病の処置のための有力な治療薬を特定するツールとして、指定されたS1P受容体部位に結合したリガンドを含む組織を使用することができる。
【0035】
別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物の調製に有用な、本明細書で開示される新規の中間体とプロセスを提供し、本明細書で記載される合成プロセスだけでなく、一般的な中間体と特定の中間体を含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、構造式Iを持つ化合物とそのアナログもしくは誘導体の合成スキームと使用方法を提供する。別の態様では、本発明は、構造式Iの化合物のアナログおよび誘導体を調製するための合成・修飾スキームと、そのようなアナログおよび誘導体を使用するための組成物と方法を提供する。
【0037】
上記の発明の開示は、本発明の開示された実施形態の各々、もしくはあらゆる実施例を説明することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をさらに詳細に例示する。本出願全体のいくつかの部分において、実施例のリストを通してガイダンスが提供され、この実施例は様々な組み合わせで使用することができる。各事例において、列挙されたリストは代表的なグループとなるに過ぎず、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0038】
本発明の一つ以上の実施形態の詳細は、添付の下記の記載において説明される。本発明のその他の特徴、目的、利点は、記載と図面、および請求項から明らかとなるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本明細書では以下の略語が使用される。S1P:スフィンゴシン-1-リン酸、S1P1-5:S1P受容体タイプ、GPCR:Gタンパク質共役受容体、SAR:構造活性相関、EDG:内皮細胞分化遺伝子、EAE:実験的自己免疫性脳脊髄炎、NOD:非肥満性糖尿病、TNFα:腫瘍壊死因子α、HDL:高比重リポタンパク質、RT-PCR:逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応。
【0040】
本発明を説明し特許請求するにあたり、他に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を持つ。本明細書で記載されたものに類似するもしくは均等な任意の方法と物質が、本発明の実践や試験に使用可能であるが、本明細書には好ましい物質と方法を記載する。以下の用語の各々はこの項においてこれに関連する意味を持つ。ラジカル、置換基、および範囲に対して下記に列挙した特定の好ましい値は一例に過ぎず、ラジカルと置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0041】
“a”、“an”、“the”、“少なくとも一つ(at least one)”、および“一つ以上(one or more)”という用語は互換的に使用される。従って、例えば“an”elementを含む組成物とは、一つの要素もしくは一つ以上の要素を意味する。
【0042】
“受容体アゴニスト”という用語は、S1Pの一つ以上の受容体に対するS1Pの作用を模倣するが、異なる効能や有効性を持ち得る化合物のことである。
【0043】
“受容体アンタゴニスト”という用語は、1)内因性のアゴニスト活性を欠き、かつ2)S1P受容体(群)のアゴニスト(例えばS1P)活性をブロックする化合物のことであり、完全に克服性(surmountable)と可逆性の両方の形式ではたらくことが多い(‘競合的アンタゴニスト’)。
【0044】
“病的細胞”という用語は、疾病もしくは障害に罹患した被験者の細胞をあらわし、この病的細胞は疾病もしくは障害に罹患していない被験者と比較して変化した表現型を持つ。
【0045】
細胞もしくは組織が、疾病もしくは障害に罹患していない被験者の同じ細胞もしくは組織と比較して変化した表現型を持つ場合、その細胞もしくは組織は疾病もしくは障害に“罹患”していることになる。
【0046】
疾病もしくは障害は、その疾病もしくは障害の症状の重篤度、そのような症状を患者が経験する頻度、あるいはその両方が低下した場合、“軽減”したことになる。
【0047】
化合物の“アナログ”とは、例として構造はもう一方に似ているが必ずしも異性体であるとは限らない化合物のことである(例えば5-フルオロウラシルはチミンのアナログである)。
【0048】
“細胞”、“細胞系”、“培養細胞”という用語は互換的に使用され得る。
【0049】
“対照”細胞、“対照”組織、“対照”サンプル、もしくは“対照”被験者とは、試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者と同じ種類の細胞、組織、サンプル、もしくは被験者である。対照は、例えば試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者が実験されたのとちょうど同じ、もしくは、ほぼ同じ時間に実験され得る。また、対照は、例えば試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者が実験された時間とは離れた時間に実験されてもよいし、対照の実験結果は記録されてもよく、その記録された結果は試験細胞、試験組織、試験サンプル、もしくは試験被験者の実験によって得られた結果と比較されてもよい。また、対照は試験群もしくは試験被験者とは別の供給源もしくは他の同様の供給源から得てもよく、試験サンプルは試験が実施される疾病もしくは障害を持つと思われる被験者から得られる。
【0050】
“試験”細胞、“試験”組織、“試験”サンプル、もしくは“試験”被験者とは、実験もしくは処置されるもののことである。
【0051】
“pathoindicative”な細胞、組織、もしくはサンプルとは、それらが存在する時、その細胞、組織、もしくはサンプルがその中に局在する(あるいはそこから組織が得られる)動物が疾病もしくは障害に罹患していることの指標となるようなものである。例として、動物の肺細胞に一つ以上の乳腺細胞があることは、その動物が転移性乳癌に罹患していることを示す。
【0052】
疾病もしくは障害に罹患していない動物の組織において一つ以上の細胞が存在する場合、組織は細胞を“正常に含む”ことになる。
【0053】
“検出”という用語とその文法的な変形は、定量化を伴わない種の計測をあらわし、一方“測定”もしくは“計測”という用語とそれらの文法的な変形は、定量化を伴う種の計測をあらわす。“検出”および“同定”という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0054】
“検出可能マーカー”もしくは“レポーター分子”とは、マーカーを持たない同様の化合物の存在下でマーカーを含む化合物の特異的な検出を可能にする原子もしくは分子のことである。検出可能マーカーもしくはレポーター分子は、例えば放射性同位体、抗原決定
基、酵素、ハイブリダイゼーションに利用可能な核酸、発色団、蛍光色素分子、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、蛍光偏光変化もしくは光散乱変化をもたらす分子を含む。
【0055】
“疾病”とは、動物がホメオスタシスを維持できない動物の健康状態のことであり、疾病が改善されない場合、動物の健康は悪化し続ける。
【0056】
動物の“障害”とは、動物がホメオスタシスを維持することはできるが、障害のない場合よりも動物の健康状態が好ましくないような健康状態のことである。処置されないままでも、障害は動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こすとは限らない。
【0057】
“有効量”という用語は、選択された効果を生み出すのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量は、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を低下させる量である。
【0058】
“機能”分子とは、分子が特徴付けられる特性をあらわす形態の分子のことである。例えば、機能酵素とは、酵素が特徴付けられる特有の触媒活性をあらわすもののことである。
【0059】
“阻害”という用語は、評されている機能を減らすもしくは妨げる化合物の能力をあらわす。好ましくは、阻害は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは少なくとも75%だけ機能が阻害される。
【0060】
“教材”という用語は、出版物、記録、図表、もしくは任意のその他の表現媒体を含み、本明細書で列挙される様々な疾病もしくは障害の緩和をもたらすキットにおいて、開示された化合物の実用性を伝えるために使用できるようなものである。随意に、あるいは交互に、教材は哺乳類の細胞もしくは組織における疾病もしくは障害を緩和する一つ以上の方法を記載し得る。キットの教材は、例えば開示された化合物を含む容器に添付されてもよいし、あるいは同定された化合物を含む容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは、受取人によって教材と化合物が協調的に使用されるという意図を持って、容器とは別々に教材が輸送されてもよい。
【0061】
“非経口”という用語は、消化管を通さないが、皮下、筋肉内、髄腔内、もしくは静脈内などのその他の経路によることを意味する。
【0062】
“薬学的に許容可能な担体”という用語は、任意の標準的な薬学的担体(リン酸緩衝生理食塩水、水、および、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、および様々な種類の湿潤剤など)を含む。この用語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤の任意のものも含む。
【0063】
“精製”とそれに類した用語は、自然環境では通常はその分子もしくは化合物に付随する他の要素を実質的に含まない(少なくとも75%、好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%含まない)形態で分子もしくは化合物を単離することに関する。“精製”という用語は、プロセス中に得られた特定分子の完全な純度を必ずしも示すものではない。“非常に純粋な”化合物とは、90%よりも高い純度の化合物のことを言う。“非常に精製された”化合物とは、95%よりも高い純度の化合物のことを言う。
【0064】
“サンプル”とは、好ましくは被験者からの生物学的サンプルをあらわし、正常組織サンプル、疾病組織サンプル、バイオプシー、血液、唾液、糞便、精液、涙、尿を含むが限
定はされない。サンプルは、目的の細胞、組織もしくは流体を含む、被験者から得られた任意の他の物質の供給源であることも可能である。サンプルは細胞もしくは組織培養から得ることも可能である。
【0065】
“標準”という用語は、比較のために使用されるあるものをあらわす。例えば、標準とは、対照サンプルに投与もしくは付加され、かつ、試験サンプルで前記化合物を測定する際に結果を比較するために使用される、既知の標準薬剤もしくは化合物である可能性がある。標準とは、サンプルに既知量で加えられ、かつ、目的マーカーが測定される前に精製もしくは抽出手順にサンプルが処理されるか供される際に、精製率もしくは回収率などを測定するのに有用な、薬剤や化合物などの“内部標準”のこともあらわし得る。
【0066】
分析、診断、もしくは処置の“被験者”は動物である。そのような動物は哺乳類を含み、ヒトを含むことが好ましい。
【0067】
“治療”処置とは、病状の兆候を示す被験者に、そうした兆候の縮小もしくは除去を目的として施される処置のことである。
【0068】
化合物の“治療有効量”とは、化合物が投与される被験者に有益な効果をもたらすのに十分な化合物の量である。
【0069】
“処置”という用語は、特定の障害もしくは疾患の予防、あるいは特定の障害もしくは疾患に付随する症状の緩和、または前記症状の予防もしくは除去を含む。
【0070】
開示された化合物は、一般的にIUPACもしくはCAS命名法に従って命名される。当業者に周知の略語が使用されてもよい(例えば“Ph”はフェニル基、“Me”はメチル基、“Et”はエチル基、“h”は単数もしくは複数の時間、“rt”は室温、“rac”はラセミ混合物)。
【0071】
ラジカル、置換基、範囲に対して下記に列挙した値は一例に過ぎず、ラジカルおよび置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。開示された化合物は、値、限定的な値、さらに限定的な値、および本明細書で記載された好ましい値の任意の組み合わせを持つ構造式Iの化合物を含む。
【0072】
“ハロゲン”もしくは“ハロ基”という用語は、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、ヨード基を含む。“ハロアルキル基”という用語は、少なくとも一つのハロゲン置換基を持つアルキル基をあらわし、非制限的な例としては、クロロメチル基、フルオロエチル基、もしくはトリフルオロメチル基などを含むがこれらに限定はされない。“C1-C20アルキル基”という用語は、1から9の炭素原子を持つ分岐鎖もしくは直鎖アルキル基をあらわす。非制限的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを含むがこれらに限定はされない。“C2-C20アルケニル基”という用語は、2から9の炭素原子と少なくとも一つの二重結合を持つオレフィン性不飽和の分岐鎖もしくは直鎖の基をあらわす。通常は、C2-C20アルケニル基は1-プロペニル基、2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ブテニル基、ヘキセニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などを含むがこれらに限定はされない。“(C2-C20)アルキニル基”という用語は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、もしくは5-ヘキシニル基などである可能性がある。“(C1-C10)アルコキシ基もしくはアルコキシル基”という用語は、酸素原子に結合したアルキル基をあらわす。(C1-C10)アルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、ペントキシ基、3-ペントキシ基、もしくはヘキシルオキシ基などである可能性がある。“C3-C12シクロアルキル基”という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などである可能性がある。
【0073】
“随意に置換された”という用語は、0、1、2、3もしくは4個の置換基との置換をあらわし、置換基はそれぞれ独立に選択される。独立に選択された置換基の各々は他の置換基と同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
“(C6-C10)アリール基”という用語は、一つもしくは二つの芳香環を持つ単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などを含むがこれらに限定はされない。
【0075】
“アリール(C1-C20)アルキル基”もしくは“アラルキル基”という用語は、一つもしくは二つの芳香環を持つ単環もしくは二環式の炭素環系で置換されたアルキル基をあらわし、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基、インデニル基などを含む。アリールアルキル基の非制限的な例は、ベンジル基、フェニルエチル基などを含む。
【0076】
“随意に置換されたアリール基”という用語は、0、1、2、3もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含み、置換アリール基は、1、2、3もしくは4個の置換基を持つアリール化合物を含み、置換基は例えばアルキル基、ハロ基、もしくはアミノ置換基などの基を含む。
【0077】
“(C2-C10)複素環基”とは、1、2もしくは3個のヘテロ原子を(随意に各環に)含む、随意に置換された単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、ヘテロ原子は酸素、硫黄、窒素である。
【0078】
“(C4-C10)ヘテロアリール基”という用語は、1、2もしくは3個のヘテロ原子を(随意に各環に)含む、随意に置換された単環もしくは二環式の炭素環系をあらわし、ヘテロ原子は酸素、硫黄、窒素である。ヘテロアリール基の非制限的な例としては、フリル基、チエニル基、ピリジル基などを含む。
【0079】
“二環式”という用語は、不飽和もしくは飽和の安定な架橋もしくは縮合二環式炭素環のいずれかをあらわす。二環式環は、安定な構造を提供する任意の炭素原子に結合することがある。典型的には二環式環系は約7から約12の原子を環系に持つことができる。この用語はナフチル基、ジシクロヘキシル基、ジシクロヘキセニル基などを含むがこれらに限定はされない。
【0080】
“リン酸アナログ”と“ホスホン酸アナログ”という用語は、リン酸とホスホン酸のアナログを含み、ここでリン原子は+5酸化状態にあり、酸素原子うちの一つ以上が非酸素部分(non-oxygen moiety)で置換されている。例えばリン酸アナログホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホラミデート、ボロノホスフェートなどを含み、例えば水素、NH4、Na、Kなどの付随する対イオンを、こうした対イオンが存在する場合に含む。
【0081】
化合物の“誘導体”とは、アルキル基、アシル基、もしくはアミノ基による水素の置換などの一つ以上のステップにおいて、同様の構造の別の化合物から生成され得る化合物を
あらわす。
【0082】
“薬学的に許容可能な担体”という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HO-プロピルβシクロデキストリン)、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤などの、標準的な薬学的担体の任意のものを含む。この用語は、ヒトを含む動物での使用のために、米国連邦政府の規制当局によって認可された薬剤の任意のもの、あるいは米国薬局方に列挙された薬剤の任意のものも含む。
【0083】
“薬学的に許容可能な塩”という用語は、開示された化合物の生物学的有効性と特性を保持し、かつ生物学的にもしくはその他の点で好ましくないものではない塩をあらわす。多くの場合、開示された化合物は、アミノ基もしくはカルボキシル基あるいはそれらに類似する基があるおかげで、酸もしくは塩基の塩を形成することができる。
【0084】
“有効量”とは、選択された効果を生み出すのに十分な量を意味する。例えば、S1P受容体アンタゴニストの有効量は、S1P受容体の細胞シグナル伝達活性を低下させる量である。
【0085】
開示された化合物は、一つ以上の不斉中心を分子内に含むことができる。本発明の開示に従って、立体化学を指定しない任意の構造は、全ての様々な光学異性体、ならびにそれらのラセミ混合物を包含するものと理解される。
【0086】
開示された化合物は互変異性型で存在してもよく、本発明は個々の単一の互変異性体と混合物の両方を含む。例えば以下の構造
【0087】
【化17】
は、
【0088】
【化18】
だけでなく
【0089】
【化19】
の構造の混合物をあらわすものと理解される。
【0090】
16:0、18:0、18:1、20:4、もしくは22:6炭化水素という用語は、分岐鎖もしくは直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基をあらわし、一番目の整数は基の中の炭素の総数をあらわし、二番目の整数は基の中の二重結合の数をあらわす。
【0091】
“S1P調節剤”とは、in vivoもしくはin vitroでS1P受容体活性の検出可能な変化(例えば、実施例で説明されたバイオアッセイなどの当該技術分野で既知の所定のアッセイによって測定される、S1P活性の少なくとも10%の増加もしくは減少)を引き起こすことができる化合物もしくは組成物をあらわす。“S1P受容体”とは、特定のサブタイプが示されない限り、全てのS1P受容体サブタイプをあらわす(例えば、S1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5)。
【0092】
当業者には当然のことながら、不斉中心を持つ開示された化合物は、光学活性なラセミ体で存在し、分離されてもよい。当然のことながら、開示された化合物は、本明細書に記載された有用な特性を有する化合物の、任意のラセミ体、光学活性体、もしくは立体異性体、またはそれらの混合物(S,R; S,S; R,R;もしくはR,Sジアステレオマーなど)を包含する。そのような光学活性体を調製する方法(例えば、再結晶技術によるラセミ体の光学分割(resolution)、光学活性な出発物質からの合成、キラル合成、もしくはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によるもの)、ならびに、本明細書で記載される標準検査を用いて、もしくは当該技術分野で周知の他の同様の検査を用いて、S1Pアゴニスト活性を測定する方法は、当該技術分野で周知である。さらに、いくつかの化合物は多形性を示すこともある。
【0093】
S1P受容体アゴニストプロドラッグ(S1P1受容体型選択性のアゴニストが好ましい)の利用可能性は、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、また特に多発性硬化症などの自己免疫病変のための処置方法として、リンパ球トラフィッキングの変化を含むが、限定はされない。多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型、などを含む様々な疾患の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に使用するだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0094】
さらに、開示された化合物は、同種移植片生着の延長(例えば固形臓器移植、移植片対宿主病の処置、骨髄移植など)のための方法として、リンパ球トラフィッキングの変更に使用することができる。
【0095】
さらに、開示された化合物はオートタキシン(autotaxin)を抑制するのに使用することができる。オートタキシンは血漿ホスホジエステラーゼであり、最終生成物阻害を受けることがわかっている。オートタキシンはいくつかの基質を加水分解してリゾホスファチジン酸とスフィンゴシン-1-リン酸を生じ、癌の進行と血管新生に関係している。従って、開示された化合物のS1P受容体アゴニストプロドラッグはオートタキシンを阻害するために使用することができる。この活性は、S1P受容体に対する作動性(agonism)と組み合わされることもあるし、あるいはそのような作用とは独立していることもある。
【0096】
さらに、開示された化合物はS1Pリアーゼの阻害に有用となり得る。S1PリアーゼはS1Pを不可逆的に分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの阻害は、リンパ球減少を併発してリンパ球トラフィッキングを妨害する。従って、S1Pリアーゼ阻害剤は免疫系機能の調節に有用となり得る。そのため、開示された化合物はS1Pリアーゼを抑制するために使用することができる。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0097】
さらに、開示された化合物はカンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストとして有用となり得る。CB1拮抗作用は、体重の減少と血中脂質プロファイルの改善に関係がある。CB1拮抗作用はS1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0098】
さらに、開示された化合物はグループIVA細胞質PLA2(cPLA2)の阻害に有用となり得る。cPLA2はエイコサン酸(例えばアラキドン酸)の放出を触媒する。エイコサン酸は、プロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性エイコサノイドに変化する。従って、開示された化合物は抗炎症薬として有用となり得る。この抑制は、S1P受容体活性と協働することもあるし、あるいはいずれのS1P受容体との活性とも独立していることもある。
【0099】
さらに、開示された化合物は複数基質脂質キナーゼ(MuLK)の抑制のために有用となり得る。MuLKは多くのヒト腫瘍細胞に高度に発現するので、その抑制は腫瘍の成長もしくは伝播を遅らせる可能性がある。
【0100】
多発性硬化症の“処置”は、再発寛解型、慢性進行型などを含む様々な疾病の種類を含み、S1P受容体アゴニストは、予防的に用いるだけでなく、疾病の兆候および症状を緩和するために、単独で使用することもできるし、あるいはその他の薬剤と併用することもできる。
【0101】
本発明は、構造式Iの化合物を含む薬学的組成物も含む。より詳細には、そのような化合物は、当業者に既知の標準的な薬学的に許容可能な担体、充填剤、可溶化剤、安定剤を用いて、薬学的組成物として処方され得る。例えば、構造式Iの化合物を含む薬学的組成物、もしくはそのアナログ、誘導体、もしくは改良体が、本明細書で記載されるように被験者に適切な化合物を投与するために使用される。
【0102】
構造式Iの化合物は、構造式Iの化合物の治療的に許容可能な量、もしくは、構造式Iの化合物の治療有効量と、薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、疾病もしくは障害の処置のために有用である。
【0103】
開示された化合物と方法は、一つ以上のS1P受容体(特にS1P1、S1P4、S1P5受容体型)に受容体アゴニストもしくはアンタゴニストとしての活性を持つスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)アナログを対象とする。開示された化合物と方法は、リン酸部分を持つ化合物、ならびにホスホン酸、α置換ホスホン酸(特にα置換がハロゲンとチオリン酸であるもの)などの耐加水分解性のリン酸代理物(surrogate)を持つ化合物の両方を含む。
【0104】
基、置換基、範囲に対して下記に列挙した値は一例に過ぎず、基および置換基の規定範囲内のその他の値もしくはその他の規定値を除外するものではない。
【0105】
X1、Y1、および、Z1は独立にO、CH、CH2、CHCF3、N、NHもしくはSである。
【0106】
X1、Y1、および、Z1の別の値はCH2である。
【0107】
R1は水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、または、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基となり得る。
【0108】
R1のさらなる値は、水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3である。
【0109】
R1のさらに追加の値は、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基である。
【0110】
R1のさらに追加の値は、ベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基である。
【0111】
構造式Iを持つ化合物は、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-の構造を持つ鎖を含むR2基を持つことができる。
【0112】
R2の値は以下を含む。
【0113】
【化20】
【0114】
構造式IIを持つR2のさらなる値は、
【0115】
【化21】
ここで式中のY3は(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-、もしくはCF3CH2CH2-もしくは以下の構造式を持つ基である。
【0116】
【化22】
【0117】
構造式II(パラ置換3,5-ジフェニル-(1,2,4)-オキサジアゾール)を持つR2のさらなる値は、
【0118】
【化23】
【0119】
構造式IIを持つR2の別の値は、
【0120】
【化24】
【0121】
構造式IIを持つR2の別の値は、
【0122】
【化25】
【0123】
構造式IIIを持つR2のさらなる値は、
【0124】
【化26】
【0125】
構造式IIIを持つR2の別の値は、
【0126】
【化27】
【0127】
R2のさらなる値は、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、もしくは(C2-C26)アルコキシアルキル基を含む。
【0128】
R2のさらに追加の値は、(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基、(C2-C14)アルキニル基、または、カルボニル基(C=O)もしくはオキシム(C=NRd)基で随意に置換された(C1-C10)アルコキシ基を含む。
【0129】
R2のさらなる値は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基を含む。
【0130】
R3の別の値は、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロ
ピル基、ヒドロキシプロピル基、もしくはイソプロピル基である。
【0131】
R3の別の値は、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である。
【0132】
R4の値は、ヒドロキシ基もしくはリン酸(-OPO3H2)である。
【0133】
特定の化合物は以下の構造式を持つ。
【0134】
【化28】
【0135】
さらなる化合物は以下の構造式を持つ。
【0136】
【化29】
【0137】
構造式Iを持つさらなる化合物は、上記もしくは図1の化合物を含み、ここで式中のヒドロキシ基の水素原子の一つ以上は、リン酸基-OP(=O)(OH)2で置換される。
【0138】
構造式Iのさらなる化合物は下記の表1に図示される。
【0139】
【表1】
【0140】
別の態様では、本発明は構造式Iの一般構造を持つS1P受容体プロドラッグ化合物を提供し、これは、構造式VIIIを持つ一置換テトラリン環系を持つ化合物によって提供される。構造式Iのいくつかの実施形態では、構造(例えばIXおよびX)はただ一つの不斉中心しか持たないので、アミノ炭素はプロキラルであり、例えば酵素触媒リン酸化を受けてキラルとなる。
【0141】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載された化合物は、例えば第一級アルコールのリン酸化によって活性化されてモノリン酸化アナログを形成するような、プロドラッグであることが想定される。さらに、活性薬剤はS1Pタイプ1受容体のアゴニストであることが想定される。
【0142】
構造式Iの化合物が、安定な非毒性の酸もしくは塩基の塩を作るのに十分に塩基性もしくは酸性である場合、化合物を薬学的に許容可能な塩として調製および投与することが適切となり得る。薬学的に許容可能な塩の例は、生理学的に許容可能なアニオンを形成する酸で形成された有機酸付加塩(例えばトシレート、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、タータレート(tartarate)、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩)である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩を含む無機塩も形成され得る。
【0143】
薬学的に許容可能な塩は当該技術分野で周知の標準的な手順を用いて得られる。例えばアミンなどの十分に塩基性の化合物と適切な酸との反応によって、生理学的に許容可能なアニオンを得ることができる。アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)のカルボン酸塩も作られ得る。
【0144】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、無機塩基と有機塩基から調製することができる。無機塩基由来の塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、および、マグネシウムの塩を含むが限定はされない。有機塩基由来の塩は、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジへテロアリールアミン、トリへテロアリールアミン、複素環アミン、ジ複素環アミン、トリ複素環アミン、アミン上の少なくとも二つの置換基が異なり、かつアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、もしくは複素環基である、混合ジ-アミンおよびトリ-アミンなどの、1級アミン、2級アミン、3級アミンの塩を含むが限定はされない。二つもしくは三つの置換基が、アミノ窒素と共に複素環もしくはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。非制限的なアミンの例は、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルピペリジンなどを含む。また当然のことながら、その他のカルボン酸誘導体が有用である(例えばカルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミドなどを含むカルボン酸アミド)。
【0145】
構造式Iの化合物は薬学的組成物として処方することができ、ヒトの患者などの哺乳類の宿主に、選択された投与経路に適した様々な形で投与することができる(例えば経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下の経路)。
【0146】
従って、本発明の化合物は、不活性希釈剤もしくは吸収可能な可食性の担体などの、薬学的に許容可能な溶媒と併用して、例えば経口で全身投与されてもよい。化合物は、ハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに入れてもよいし、タブレットに圧縮してもよいし、あるいは患者の食餌の食べ物に直接混ぜてもよい。治療用経口投与のために、活性化合物は一つ以上の賦形剤と合わせてもよいし、摂取可能なタブレット、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハースな
どの形で使用されてもよい。そのような組成物と製剤は、少なくとも約0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物と製剤のパーセンテージは勿論異なってもよく、好都合に所定の単位剤形の質量の約2%〜約60%の間であってもよい。そのような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、効果的な投与量レベルが得られるような量である。
【0147】
タブレット、トローチ、ピル、カプセルなどは、以下のものも含んでもよい。:トラガカント・ゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤、第二リン酸カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、スクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、冬緑油、もしくはチェリーフレーバーなどの香料が加えられてもよい。単位剤形がカプセルの際は、上述の種類の材料に加えて、植物油もしくはポリエチレングリコールなどの液体担体を含んでもよい。様々な他の材料がコーティングとして存在してもよく、あるいはそうでなければ固形単位剤形の物理的形状を修正するように存在してもよい。例えば、タブレット、ピル、もしくはカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラック、もしくは糖などでコーティングされてもよい。シロップもしくはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロースもしくはフルクトース、保存料としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、着色料、チェリーもしくはオレンジフレーバーなどの香料を含んでもよい。勿論、任意の単位剤形を調製するために使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に許容可能で、かつ実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は徐放性製剤および装置に組み込まれてもよい。
【0148】
また、活性化合物は、輸液もしくは注射によって、静脈内もしくは腹腔内に投与されてもよい。活性化合物もしくはその塩の溶液は、非毒性の界面活性剤と随意に混合して、水に調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物、ならびに油分に調製することもできる。通常の保存条件と使用条件において、これらの製剤は微生物の繁殖を防ぐために保存料を含む。
【0149】
注射もしくは輸液のための薬の剤形の例は、滅菌した注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは分散液の即時調製のために適した、随意にリポソームに封入された、有効成分を含む滅菌水溶液もしくは分散液もしくは滅菌粉末を含むことができる。全ての場合において、最終的な剤形は、製造条件および保存条件下において、滅菌、流体、かつ安定であるべきである。液体担体もしくは溶媒は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの混合物を含む溶媒もしくは液体分散媒質であることができる。適切な流動性は、例えばリポソームの形成、分散液について必要な粒子サイズの維持、もしくは界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の抑制は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌薬によってもたらすことができる。多くの場合、例えば糖、バッファーもしくは塩化ナトリウムといった等張剤を含むことが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムとゼラチンといった吸収遅延剤の組成で使用することによって、注射可能な組成物の吸収を延長することができる。
【0150】
滅菌注射剤は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙された様々なその他の成分と共に適切な溶媒に合わせ、必要に応じてその後ろ過滅菌することによって調製される。滅菌注射剤の調製用の滅菌粉末の場合は、真空乾燥と凍結乾燥技術が調製方法として好ましい。これらの方法では、前もってろ過滅菌した溶液に存在する任意の所望の追加成分を含む有効成分の粉末を生じる。
【0151】
局所投与のために、本発明の化合物は、例えば液体である際には純粋な形で適用されて
もよい。しかしながら、化合物は、個体もしくは液体であってもよい皮膚科学的に許容可能な担体と併用して、組成物もしくは剤形として皮膚に投与することが一般的に好ましい。
【0152】
固形担体の例は、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体を含む。有用な液体担体は、水、アルコール、もしくはグリコール、もしくは水‐アルコール/グリコール混合物を含み、その中に本発明の化合物が、随意に非毒性の界面活性剤を用いて、効果的なレベルで溶解もしくは分散することができる。香料および追加の抗菌剤などのアジュバントを、所定の使用のために特性を最適化するために付加することができる。得られる液体組成物は、吸収パッドから適用することができ、包帯およびその他の包帯剤に浸透させるために使用することができ、あるいは、ポンプタイプもしくはエアロゾルスプレーを用いて患部上にスプレーすることができる。
【0153】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロース、もしくは変性無機材料などの増粘剤も、使用者の皮膚に直接適用するために、塗布可能な(spreadable)ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために、液体担体と共に利用することが出来る。
【0154】
構造式Iの化合物を皮膚に供給するために使用できる有用な外皮用組成物の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Jacquet et al. (U.S.Pat. No. 4,608,392)、Geria (U.S. Pat. No. 4,992,478)、Smith et al. (U.S. Pat. No. 4,559,157)およびWortzman (U.S. Pat. No. 4,820,508)を参照のこと。
【0155】
構造式Iの化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性、および動物モデルにおけるin vivo活性の比較によって決定できる。マウスおよびその他の動物における有効投与量のヒトへの外挿法は当該技術分野で既知であり、例えばU.S. Pat. No. 4,938,949を参照のこと。
【0156】
一般的に、ローションなどの液組成における構造式Iの化合物(群)の濃度は、約0.1から約25質量パーセントであり、約0.5〜10質量パーセントが好ましい。ゲルもしくは粉末などの半固体もしくは固体組成における濃度は、約0.1〜5 wt-%であり、組成の総質量に基づいて約0.5〜2.5質量パーセントが好ましい。
【0157】
処置での使用のために必要な化合物、もしくはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩によって異なるだけでなく、投与経路、処置される疾病の状態、および患者の年齢と状態によっても異なり、最終的に付添の医師もしくは臨床医の判断による。しかしながら一般的には、投与量は一日当たり体重の約0.1〜約10 mg/kgの範囲である。
【0158】
化合物は単位剤形で都合よく投与される。例えば、5〜1000 mg、好都合には10〜750 mg、最も好都合には50〜500 mgの有効成分を単位剤形あたりに含む。
【0159】
理想的には、有効成分は約0.5〜約75μMの活性化合物のピーク血漿濃度に達するように投与されるべきであり、約1〜50μMが好ましく、約2〜約30μMが最も好ましい。これは、例えば有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射(随意に食塩水に入れて)によって、あるいは約1〜100 mgの有効成分を含むボーラス(bolus)として経口投与することによって実現されてもよい。好ましい血中レベルは、約0.01〜5.0 mg/kg/hrを供給する持続注入、もしくは有効成分(群)の約0.4〜15 mg/kgを含む間欠的注入によって維持されてもよい。
【0160】
所望の投与量は、好都合に単回投与で示されてもよいし、あるいは、例えば一日あたり2、3、4、もしくはそれ以上のsub-dosesとして、適切な間隔で投与される分割投与と
して示されてもよい。sub-dose自体も、例えば吸入器からの複数回吸入、もしくは眼への複数滴の点眼など、複数の個別の大まかに間隔をあけた投与にさらに分割されてもよい。
【0161】
開示された方法は、構造式Iの阻害化合物と、その阻害化合物もしくはその阻害化合物を含む組成物の、細胞もしくは被験者への投与を説明する教材を含むキットを含む。これは、その化合物もしくは組成物を細胞もしくは被験者に投与する前に、その阻害化合物もしくは組成物を溶解もしくは懸濁するための(好ましくは滅菌)溶媒を含むキットなど、当業者に既知のキットのその他の実施形態を含むと解釈されるべきである。被験者はヒトであることが好ましい。
【0162】
上記のように、もしくは下記の実施例で論じるように、開示された化合物と方法に従って、当業者に既知の従来の化学技術、細胞技術、組織化学技術、生化学技術、分子生物学技術、微生物学技術、in vivo技術が利用できる。そのような技術は完全に文字通り説明される。
【0163】
さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施形態例を用いて、開示された化合物を作成し利用することができると考えられる。
【0164】
構造式Iの化合物の調製、もしくは構造式Iの化合物の調製に有用な中間体の調製のためのプロセスは、さらなる実施形態として提供される。構造式Iの化合物の調製に有用な中間体も、さらなる実施形態として提供される。そのプロセスはさらなる実施形態として提供され、本明細書においてスキームで図解される。他に限定されない限り、一般的な 基の意味は上述した通りである。
【0165】
いくつかの開示された化合物の合成の実施例は、スキーム1(図2)に図解する。試薬と条件は以下の通りである。:a)Tf2O, 2,6-ルチジン, CH2Cl2, 0℃, 2h, 93%;b)1-オクテン, 9-BBN, K3PO4, KBr, H2O, Pd(PPh3)4, 65℃, 2h, 82%;c)CuBr2, EtOAc, CHCl3, reflux 6h, 80%;d)NaH, N-アセトアミド-マロン酸ジエチル, DMF, 0℃-rt, overnight, 75%;e)Et3SH, TiCl4, CH2Cl2, rt, 12h, 65%;f)LiBH4, rt, THF, 48h, 33%;g)LiOH, H2O, MeOH, THF, 50℃, 5h, 75%;h)P2O5, H3PO4, 100℃, 2h, 37%;i)12M HCL, MeOH, reflux, 2h;j)LiAlH4, THF, reflux, 12h, 21%, two steps;k)P2O5, H3PO4, 100℃, 2h, 50%。
【0166】
ここで本発明は、以下の実施例と実施形態を参照して説明される。さらなる説明無しに、当業者は前述の説明と以下の実施例を用いて、開示された化合物を作成し利用することができると考えられる。従って以下の実施例は、例示目的に提供されたに過ぎず、特に好ましい実施形態を指摘し、 本開示の残りを限定するものと解釈されるものではない。従って、実施例は、本明細書で提供される教示の結果として明らかとなる、いかなる全ての変更をも包含するものと解釈されるべきである。
【実施例】
【0167】
[実施例1:トリフルオロメタンスルホン酸5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2イルエステル(2)]
【0168】
【化30】
【0169】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.7 mL、10 mmol)を、0℃に冷却された脱水したジクロロメタン(10 mL)の6-ヒドロキシ-1-テトラロン(1.62 g、10 mmol)および2,6-ルチジン(1.28 mL、10 mmol)の溶液に1時間にわたってゆっくりと加えた。1時間後、溶液をジクロロメタン(10 mL)で希釈し、1M塩酸(20 mL)で洗浄した。有機層をジクロロメタン(50 mL)で再抽出し、あわせた有機物を1M塩酸(10 mL)で洗浄した。有機物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)で精製し、2.7 gの化合物2(93%)を得た。
【0170】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 2.13 (p, 2H, J= 6.22Hz), 2.63 (t, 2H, J = 6.95Hz), 2.98 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.15 (m, 2H), 8.07 (m, 1H); 13C NMR δ 23.08, 29.88, 38.92, 116.74, 119.81, 121.56, 130.14, 132.58, 147.38, 152.52, 196.53.
【0171】
[実施例2:6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(3)]
【0172】
【化31】
【0173】
9-BBN(THFの0.5 M溶液、20.2 mL、10.1 mmol)を、1-オクテン(1.6 mL、10.1 mmol)に室温で加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。この後、K3PO4(2.93 g、13.8 mmol)、Pd(Ph3P)4(191 mg、0.17 mmol、1.8 mol %)、KBr(1.2 g、10.1 mmol)および脱気H2O(0.18 mL、10 mmol)を加えた。この後、無水脱気THF(10 mL)の化合物2(2.7 g、9.2 mmol)の溶液を加えた。反応混合物をアルゴン下で65℃で2時間加熱した。冷却後、溶液をpH 1まで酸性にし、EtOAc(100 mL)に抽出した。水層をEtOAc(50 mL)で再抽出し、合わせた有機物をH2O(20 mL)とブライン(40 mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、1.93 gの化合物3(82%)を得た。
【0174】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.24 (bs, 10H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 2.06 (p, 2H, J = 5.85Hz), 2.57 (t, 4H, J = 6.95Hz), 2.87 (t, 2H, J = 6.22Hz), 7.01 (s, 1H), 7.06 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.06Hz); 13C NMR δ 14.32, 22.88, 23.61, 29.44, 29.55, 29.66, 29.96, 31.32, 32.08, 36.31, 39.33, 127.12, 127.45, 128.73, 130.75, 144.70, 149.28, 198.09.
【0175】
[実施例3:2-ブロモ-6-オクチル-3,4-ジヒドロ-2H-ナフタレン-1-オン(4)]
【0176】
【化32】
【0177】
臭化第二銅(3.34 g、15.0 mmol)を攪拌しながら酢酸エチル(10 mL)で加熱還流した。これに化合物3(1.93 g、7.5 mmol)を含むクロロホルム(10 mL)を加えた。反応物をさらに6時間加熱還流し、冷却した。臭化銅と臭化第二銅の残留物をろ過し、ろ液を活性炭で脱色し、セライト層を通してろ過し、酢酸エチル(4x50 mL)で洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、2.02 gの化合物4(80%)を得た。
【0178】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.95Hz), 1.26 (bs, 10H), 1.61 (p, 2H, J = 6.96Hz), 2.46 (m, 2H), 2.62 (t, 2H, J = 7.69Hz), 2.86 (dt, 1H, J = 16.34Hz, 4.39Hz), 3.27 (dt, 1H, J = 16.83Hz, 4.39Hz), 4.69 (t, 1H, J = 4.02Hz), 7.07 (s, 1H), 7.14 (d, 1H, J = 8.05 Hz), 7.99 (d, 1H, 1 = 8.05Hz); 13C NMR δ 14.34, 22.88, 26.42, 29.44, 29.57, 29.64, 31.25, 32.08, 32.32, 36.39, 127.75, 128.00, 128.73, 129.00, 144.30, 150.39, 190.54.
【0179】
[実施例4:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4,-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)マロン酸ジエチルエステル(5)]
【0180】
【化33】
【0181】
鉱油中の水酸化ナトリウム(720 mg、18.0 mmol)60%を無水DMF(10 mL)で懸濁し、無水DMF(10 mL)中にアセトアミドマロン酸ジエチル(3.26 g、15 mmol)を含む溶液を加えた。アニオンが形成されるまで、溶液を0℃で3時間攪拌した。無水DMF(10 mL)中に化合物4(2.02 g、6.0 mmol)を含む溶液を加え、溶液を室温に加温し、一晩攪拌した。混合物を蒸留水(50 mL)に注ぎ、氷浴中で1M塩酸でpH 3まで酸性にし、酢酸エチル(3x50 mL)で抽出した。有機相をブライン(2x30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、40% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、2.12 gの化合物5(75%)を得た。
【0182】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.85 (t, 3H, J = 6.22Hz), 1.24 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.95Hz), 1.97 (s, 3H), 2.59 (t, 2H, J = 7.32Hz), 2.83-3.21 (m, 4H), 3.88 (dd, 1H, J = 14.00Hz, 3.68Hz), 4.14-4.32 (m, 4H), 6.86 (s, 1H), 7.03 (s, 1H), 7.07 (d, 1H, J = 8.69 Hz), 7.84 (d, 1H, J = 8.36Hz); 13C NMR δ 14.05, 14.16,14.30,
22.85, 23.31, 26.98, 29.40, 29.49, 29.61, 29.98, 31.28, 32.05, 36.32, 56.16, 62.40, 63.13, 66.33, 127.16, 127.63, 128.78, 144.84, 150.07, 166.38, 168.70, 169.83, 197.63.
【0183】
[実施例5:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(6)]
【0184】
【化34】
【0185】
5 mlのCH2Cl2にトリエチルシラン(1.3 ml、8.2 mmol)を加えた溶液を、化合物5(1 g、2.1 mmol)を含む5 mlのCH2Cl2に加えた。反応混合物をAr下で室温で攪拌し、TiCl4(0.09 ml、8.2 mmol)を滴下した。得られた溶液を12時間攪拌し、0℃に冷却し、10 mlの飽和NaHCO3をゆっくり加えてクエンチした。水層をCH2Cl2(3x30 mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(2x30 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20% EtOAcを含有するヘキサン)で精製し、630 mgの化合物6(65%)を得た。
【0186】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.87 (t, 3H, J = 6.46Hz), 1.26 (m, 16H), 1.58 (p, 2H, J = 6.79Hz), 2.03 (s, 3H), 2.28 (b, 1H), 2.49-2.68 (m, 4H), 2.82-2.92 (m, 2H), 4.20-4.34 (m, 4H), 6.69 (s, 1H), 6.89-7.05 (m, 3H); 13C NMR δ 14.21, 14.25,14.37, 22.92, 23.37, 25.48, 29.50, 29.63, 29.72, 29.76, 30.39, 31.93, 32.13, 35.78, 40.33, 62.46, 62.79, 68.80, 126.04, 128.81, 129.30, 132.85, 136.28, 140.66, 150.07, 167.63, 168.32, 169.42.
【0187】
[実施例6:N-[2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]-アセトアミド(7)]
【0188】
【化35】
【0189】
水素化ホウ素リチウム(THF中の2M溶液、0.88 ml、1.76 mmol)を0℃で5 mlのTHFの化合物6(200 mg、0.44 mmol)に加えた。反応混合物を室温で48時間攪拌し、40 mlの酢酸エチルで希釈した。溶液をブライン(2x20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、4% MeOHを含むCH2Cl2)で精製し、55 mgの化合物7(33%)を得た。
【0190】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.56Hz), 1.29 (m, 10H), 1.57 (p, 2H, J = 6.25Hz), 1.94-1.98 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 2.51 (t, 2H, J = 7.32), 2.60-2.85 (m, 4H), 3.69 (d, 2H, J = 11.61), 3.89 (dd, 2H, J = 11.61Hz, 7.25Hz), 6.22 (s, 1H), 6.88-6.99 (m, 3H); 13C NMR δ 14.38, 22.92, 24.20, 24.35, 29.52, 29.66, 29.73, 29.95, 30.32, 31.94, 32.14, 35.78, 38.26, 63.55, 64.34, 64.46, 126.18, 128.85, 129.30, 133.06, 136.22, 140.75, 172.40.
【0191】
[実施例7:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-プロパン-1,3-ジオール(VPC104061)]
【0192】
【化36】
【0193】
化合物7(53 mg、0.14 mmol)とLiOH.H2O(45 mg、1.1 mmol)を含むMeOH(3 ml)の溶液、THF(1.5 ml)、および水(3 ml)を50℃で5時間攪拌し、酢酸エチル(20 ml)で
希釈した。溶液をブライン(2x10 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2の50% MeOH)で精製し、35 mgの化合物VPC104061(75%)を得た。
【0194】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.17Hz), 1.29 (m, 10H), 1.56 (p, 2H, J = 6.17Hz), 1.82-1.98 (m, 2H), 2.51 (t, 2H, J = 6.95), 2.58-2.88 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.61 (d, 2H, J = 10.98), 3.73 (d, 2H, J = 10.61Hz), 6.87-6.98 (m, 3H); 13C NMR δ 14.37, 22.93, 24.02, 29.32, 29.53, 29.70, 29.75, 29.85, 30.26, 31.94, 32.14, 35.08, 39.58, 57.74, 66.13, 66.19, 126.09, 128.81, 129.39, 133.28, 136.26, 140.64. MS (ESI) m/z 334.1 [M+H]+.
【0195】
[実施例8:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-3-ホスホノオキシプロピル]エステル(VPC104081)]
【0196】
【化37】
【0197】
五酸化リン(2.0 g、14 mmol)を含むリン酸(水中で85%、2 ml、29 mmol)をVPC104061(25 mg、0.07 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。生成物に水を加えて沈殿させた(14 mg、37%)。MS (ESI) m/z 494.4 [M+H]+.
【0198】
[実施例9:アミノ-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-酢酸(8)]
【0199】
【化38】
【0200】
化合物6(300 mg、0.65 mmol)を12M HCl(10 ml)に加えた。混合物を加熱還流し、混合物が均質になるまでMeOH(5 ml)を加えた。薄層クロマトグラフィー(TLC)で測定されるように開始物質が使い尽くされるまで、還流を2時間続けた。反応混合物を減圧下で濃縮し、MeOHとジエチルエーテルで複数回共蒸発させた(co-evaporated)。所望の化合物8をジエチルエーテルとヘキサンから再結晶化し、淡褐色固体を得た。これを次の反応に直接用いた。
【0201】
[実施例10:2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エタノール(VPC104059)]
【0202】
【化39】
【0203】
実施例9で調製したアミノ酸8を、THF(10ml)の水酸化リチウムアルミニウム(62 mg、1.63 mmol)の還流溶液に加えた。反応混合物を12時間加熱還流し、続いて0℃に冷却して10M NaOHを加え、20分間攪拌した。酢酸エチル(20 ml)を加え、混合物をセライトと硫酸マグネシウムを通してろ過した。ろ液を真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、50% MeOHを含むCH2Cl2)で精製し、41 mgの生成物VPC104059(21%、二段階)を得た。
【0204】
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, 3H, J = 6.39Hz), 1.28 (m, 10H), 1.55 (p, 2H, J = 7.16Hz), 1.67-2.11 (m, 3H), 2.48 (t, 2H, J = 7.69), 2.56-2.83 (m, 5H), 3.19 (b, 4H), 3.47-3.75 (m, 2H), 6.82-6.96 (m, 3H); 13C NMR δ 13.34, 22.58, 26.45,
29.14, 29.21, 29.29, 29.47, 31.70 31.90, 32.26, 35.40, 47.56, 125.64, 128.36, 128.86, 128.93, 133.19, 139.93, MS (ESI) m/z 303.9 [M+H]+.
【0205】
[実施例11:リン酸モノ-[2-アミノ-2-(6-オクチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-エチル]エステル(VPC104127)]
【0206】
【化40】
【0207】
五酸化リン(1.5 g、10.5 mmol)を含むリン酸(水中で85%、1.5 ml、22 mmol)をVPC104059(25 mg、0.08 mmol)に加えた。混合物を100℃で2時間攪拌し、0℃に冷却した。生成物に水を加えて沈殿させた(10 mg、50%)。MS (ESI) m/z 384.2 [M+H]+.
【0208】
[実施例12:構造(X)の合成]
構造式IXを持つ化合物を含むエーテルの合成をスキーム2(図3)に図解する。ケト-アルコール1Aを、標準的な試薬と技術を用いてケト-エーテル1Bに変換させる。実施例3と同様のやり方で、ケト-エーテルをハロゲン化してハロ-エーテル1Cを得る。実施例4に記載の手順と同様のやり方で、ハロ-エーテルをアルキル化してジエステル-エーテル1Dを得る。当該技術分野で既知の標準的な還元剤を用いて、ジエステルをエーテル-トリオール1Eに変換させる。当該技術分野で既知の標準的な方法を用いて、トリオールをジオールに変換させ、脱保護し、化合物IXを得る。
【0209】
[実施例13:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(A)]
【0210】
【化41】
【0211】
水素化ホウ素ナトリウム(75 mg、2.00 mmol)を含む室温の5 mlエタノール溶液に、2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物5)(1.00 g、2.1 mmol)を含む5 mlエタノールを加えた。反応混合物をアルゴン下で室温でさらに1時間攪拌し、水(20 mL)と塩化メチレン(20 mL)を加えてクエンチした。有機層を除去し、水層を塩化メチレン(2x20 mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(2x20 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20%酢酸エチルを含むヘキサン)で精製し、755 mgの化合物A(75%)を得た。
【0212】
[実施例14:2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-3,4-ジヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(B)]
【0213】
【化42】
【0214】
2-アセチルアミノ-2-(6-オクチル-1-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-2-イル)-マロン酸ジエチルエステル(化合物A、755 mg、1.58 mmol)を無水酢酸(5 mL)に溶解し、その後0℃で触媒量の塩化第二鉄(66 mg、0.4 mmol)を加えた。反応物をさらに2時間0℃で攪拌し、20 mLのジエチルエーテルを加えた。反応物を50 mLの氷冷水に注意深く注ぎ、有機層を素早く分離した。有機層を塩化メチレン(2x20 mL)で再抽出し、あわせた有機層をブライン(20 mL)で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、10%酢酸エチルを含むヘキサン)で精製し、458 mgの化合物B(60%)を得た。完全合成は図4に図解する。
【0215】
[実施例14:スフィンゴシンキナーゼアッセイ]
組み換えスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)は、関連プラスミドDNAをHEK293T細胞に導入することによって、マウスもしくはヒトの組み換え酵素の発現を強制することによって調製される。60時間後、細胞を採取し、破壊された非ミクロソーム(例えば溶解性の)画分が保持される。組み換え酵素を含む破壊細胞の上澄みを、試験化合物(FTY720、AA151、VIIIおよびXVIII)(5〜50μM)とγ-32P-ATPと混合し、37℃で0.5〜2.0時間インキュベートする。反応混合物中の脂質を有機溶媒に抽出し、順相薄層クロマトグラフィーで示す。放射性標識したバンドをオートラジオグラフィーで検出し、プレートから擦り取ってシンチレーション計数で定量化する。示されたヒストグラム(図5A、5B、6)では、スフィンゴシンは15μMにあらわれ、試験化合物は50μMの濃度であった。インキュベーション時間は20分であった。
【0216】
[実施例15:GTPγS-35バインディングアッセイ]
このアッセイは、単独でのGタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニスト活性を説明す
る。このアッセイは、それぞれのタンパク質をコードする四つのプラスミドDNAを細胞に導入することによって、HEK293T細胞における、組み換えGPCR(例えばS1P1-5受容体)、およびヘテロ三量体Gタンパク質の三つのサブユニット(典型的にはα-2、β-1、もしくはγ-2)の各々の発現を同時に強制する。導入から約60時間後、細胞を採取し、開き、核を除去する。粗ミクロソームを残留物から精製する。ミクロソーム上の受容体-Gタンパク質複合体のアゴニスト(例えばS1P)刺激は、用量依存的なやり方でα-サブユニット上のGTPからGDPへの交換をもたらす。GTP結合α-サブユニットは、GDPに加水分解されない放射性核種(硫黄35)標識ホスホチオネート(phosphothionate)である、GTPアナログ(GTPγS-35)を用いて検出される。Gタンパク質が付着したミクロソームはろ過によって回収され、結合したGTPγS-35が液体シンチレーションカウンターで定量化される。アッセイは相対効力(relative potency:EC50値)と最大効価(maximum effect:有効性、Emax)を与える。アンタゴニスト活性は、一定量のアンタゴニストの存在下で、アゴニストの用量‐反応曲線の右方向のシフトとして検出される。アンタゴニストが競合的に作用する場合、受容体/アンタゴニストの対の親和性(Ki)を決定できる。
【0217】
化合物VIII(モノ、XXVI、二リン酸化、XXVII、異性体の混合物)および化合物XXVIIIのリン酸化された形は効能が低く、S1P3受容体の部分的なアゴニストである(図8を参照)。化合物XXVI、XXVIIおよびXXVIIIは、S1Pと比較してS1P1により有効であり、S1P3により有効性が低い。アッセイは、Davis, M.D., J.J. Clemens, T.L. Macdonald and K.R. Lynch (2005) "S1P Analogs as Receptor Antagonists" Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp.9833-9841に記載されているように実施した。
【0218】
[実施例16:リンパ球減少アッセイ]
化合物(例えば化合物VIIIなどの一級アルコール)を2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに溶解し、体重あたり0.01、1.0および10 mg/kgの投与量で強制経口投与によってマウス群に導入する。24時間後と48時間後、マウスを軽度麻酔して、ca. 0.1 mlの血液を眼窩静脈叢(orbital sinus)から採取する。リンパ球の数(マイクロリットルの血液あたり1000のオーダーで;通常は4-11)を、Hemavet blood analyzerを用いて測定した。化合物VIIIを示すヒストグラムでは、溶媒処理したマウスの100%値は、24時間で7.5、96時間で5であった。マウスは三群で、マウスの血統はsv 129 x C57BL/6の交雑系であった。活性化合物(例えば化合物VIIIと化合物XXVIII)を20 mMで酸性DMSOに溶解し、混合しながら2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンを含む水に1:20で希釈した。この溶液を腹腔内投与(i.p.)で体重あたり0.01、1.0、10 mg/kgの投与量でマウスに導入した。
【0219】
図9では、強制経口投与によって投与された化合物VIIIと化合物XXVIIIを用いるアッセイの結果がグラフで図示される。化合物VIIIのIV投与24時間後の総リンパ球数(k/μl)が報告される。
【0220】
化合物を2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンに溶解し、3セットの12週齢のC57Bl/6雌マウスに強制経口投与(PO)によって投与した。投与18時間後、血液を眼窩静脈叢から採取し、Hemavet blood analyzerでリンパ球数を測定した。投与量は、化合物XXIX(1 mg/kg)、化合物VIII(10 mg/kg)、FTY720(0.3 mg/kg)であった。化合物XXIX、3,5-ジフェニル-1,2,4-オキサジアゾールは、Li et al. (Journal Medicinal Chemistry, vol. 48, p.6169 (2005))に記載のS1P1受容体アゴニストであり、これを比較として用いた。結果を図10に図解する。
【0221】
[実施例17:心拍数アッセイ]
マウスに化合物VIII、FTY720(静脈内、3 mg/kg)、もしくは溶媒(2%ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン)を投与し、投与1時間後に心拍数を測定した。心拍数は、EC
GenieTMシステムを用いて、非拘束状態の意識のある動物で記録した。結果を図11に図解する。
【0222】
本発明は、本明細書に記載のアッセイと方法のみに限定されるものと解釈されるべきではなく、その他の方法とアッセイも含むものと解釈されるべきである。本明細書に記載されていないが使用されたその他の方法は周知であり、化学、生化学、分子生物学、臨床医学の分野の当業者の権限内にある。当業者は、本明細書に記載の手順を実施するのに、その他のアッセイと方法が利用可能であることがわかるだろう。
【0223】
本明細書で使用した略語は、臨床、化学、生物学の分野における従来の意味を持つ。何か矛盾がある場合には、その中に任意の定義を含む本発明の開示を採用するものとする。
【0224】
本明細書で引用の特許、特許出願、出版物の各々および全ての開示は、本開示にその全容が参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。本開示の実施形態例が考察され、本開示の範囲内の考えられる変更が参照される。本開示におけるこれらおよびその他の変更および修正は、本開示の範囲から逸脱することなく当業者に明らかとなるだろう。また、当然のことながら本開示と下記に記載の請求項は、本明細書で記載の実施形態例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】三つのS1PアゴニストFTY720、AA151、化合物XXIX、および構造式Iのさらなる化合物の図である。
【図2】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図3】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図4】構造式Iの化合物の合成を図解するスキームである。
【図5A】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図5B】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図6】S1Pアゴニスト化合物FTY720、AA151、VIIIおよびXVIIIに対するスフィンゴシンキナーゼタイプ2(SPHK2)活性の結果を図解する。
【図7】S1Pおよび化合物XXVI、XXVII、およびXXVIIIを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果をグラフで示す。
【図8】S1Pおよび化合物XXVI、XXVII、およびXXVIIIを試験する、ヒトS1P1受容体に対する破壊細胞GTPγ35S結合アッセイの結果をグラフで示す。
【図9】経口量の試験化合物をマウスに投与した24時間後(各群の左の棒)および48時間後(各群の右の棒)の総リンパ球数(k/μl)をグラフで示す。
【図10】経口量の試験化合物をマウスに投与した18時間後の総リンパ球数(k/μl)をグラフで示す。
【図11】化合物VIIIがマウスの心拍数に何の影響も与えないことを示すアッセイ結果のグラフ図である。アッセイでは試験化合物をIV投薬を介して投与し、溶媒は2%シクロデキストリンであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
式中のX1、Y1、Z1は独立にO、CRa、CRaRb、N、NRcもしくはSであって、
R1は水素、ハロ(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)ハロアルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であって、
R2は水素、ハロ基、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C5-C10)ヘテロアリール基であって、あるいはR2は構造式II、III、IV、V、もしくはVIを持つ基であってもよく、
【化2】
ここで式中のR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は独立にO、S、C、CR15、CR16R17、C=O、NもしくはNR18であって、
R15、R16、および、R17は独立に水素、ハロ基、(C1-C10)アルキル基、ハロ置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であり、R18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基である可能性があり、
R10、R11、R12、R13もしくはR14の少なくとも一つはヘテロ原子であり、
Z2は(C1-C6)アルキル基、(C3-C8)シクロアルキル基、置換アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、アリール基、アルキル置換アリール基、アリールアルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基であって、Z2のアルキル基は1、2、3もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基であり、
破線の丸は一つ以上の任意の二重結合をあらわし、
Y2はO、C=O、もしくはCH2であり、W1は結合もしくは-CH2-CH2-CH2-であり、W2は結合もしくは-CH2-で、かつmが1、2、もしくは3であるか、あるいは(C=O)(CH2)1-5で、かつmが1であり、nは0、1、2、もしくは3であり、
破線と実線の二重線の組み合わせの各々は任意の二重結合をあらわし、R3は水素、(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であり、
R4はヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホン酸(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸であり、
Ra、Rb、Rcは独立に水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり、
R1のアルキル基は1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基であり、
R2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基のいずれかは、1、2、3もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にオキソ基(=O)、イミノ基(=NRd)、(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはC6-アリール基であり、あるいはR2アルキル基の炭素原子の一つ以上が、過酸化物の酸素ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで独立に置換されてもよく、R3のアルキル基は1もしくは2個のヒドロキシ基で随意に置換され、Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である
ことを特徴とする構造式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル。
【請求項2】
R1が水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基である、請求項1の化合物。
【請求項3】
R1が水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3である、請求項2の化合物。
【請求項4】
R1がベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基である、請求項2の化合物。
【請求項5】
R2が-CH2-CH2-O-CH2CH2-O-を含む、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項6】
R2が
【化3】
である請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項7】
R2が
【化4】
であり、式中のY3は(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-もしくはCF3CH2CH2-もしくは
次の構造式を持つ基であることを特徴とする、請求項6の化合物。
【化5】
【請求項8】
R2が
【化6】
である請求項7の化合物。
【請求項9】
R2が
【化7】
である請求項8の化合物。
【請求項10】
R2が
【化8】
である請求項6の化合物。
【請求項11】
R2が
【化9】
である請求項10の化合物。
【請求項12】
R2が構造式IV
【化10】
を持つ請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項13】
R2が
【化11】
である請求項12の化合物。
【請求項14】
R2が(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基および(C2-C14)アルキニル基、(C1-C10)アルコキシ基もしくは(C2-C16)アルコキシアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項15】
R2が(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基もしくは(C2-C12)アルコキシアルキル基である、請求項14の化合物。
【請求項16】
R2がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基である、請求項15の化合物。
【請求項17】
X1、Y1、および、Z1の各々がCH2である、請求項1から16のいずれか一項の化合物。
【請求項18】
R3が水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、もしくはイソプロピル基である、請求項1から17のいずれか一項の化合物。
【請求項19】
R3が水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である、請求項18の化合物。
【請求項20】
【化12】
の構造式を持つ請求項1から19のいずれか一項の化合物。
【請求項21】
【化13】
の構造式を持つ請求項20の化合物。
【請求項22】
哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置のための方法であり、スフィンゴシン-1-リン酸受容体の活性が関係し、かつそのような活性のアゴニズムが要求され、前記哺乳類に請求項1から21のいずれか一項の化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記病態が自己免疫疾患である、請求項21の方法。
【請求項24】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症である、請求項22の方法。
【請求項25】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項24の方法。
【請求項26】
前記病態がリンパ球トラフィッキングの変化である、請求項25の方法。
【請求項27】
前記処置がリンパ球トラフィッキングの変化である、請求項26の方法。
【請求項28】
リンパ球トラフィッキングが同種移植片生着の延長をもたらす、請求項27の方法。
【請求項29】
前記同種移植片が移植用である、請求項28の方法。
【請求項30】
哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置のための方法であって、S1Pリアーゼ活性が関与し、かつ前記S1Pリアーゼの阻害が要求され、前記哺乳類に請求項1から21のいずれか一項の化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項31】
薬物療法における使用のための請求項1から21のいずれか一項の化合物の使用。
【請求項32】
スフィンゴシン-1-リン酸受容体の活性が関与する、哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置に有用な薬剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項の化合物の使用。
【請求項33】
前記薬剤が液体担体を含む、請求項32の使用。
【請求項1】
【化1】
式中のX1、Y1、Z1は独立にO、CRa、CRaRb、N、NRcもしくはSであって、
R1は水素、ハロ(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)ハロアルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であって、
R2は水素、ハロ基、(C1-C20)アルキル基、(C1-C20)アルコキシ基、(C2-C26)アルコキシアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、(C3-C12)シクロアルキル基、(C6-C10)アリール基、(C7-C30)アリールアルキル基、(C2-C10)複素環基、(C5-C10)ヘテロアリール基であって、あるいはR2は構造式II、III、IV、V、もしくはVIを持つ基であってもよく、
【化2】
ここで式中のR7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は独立にO、S、C、CR15、CR16R17、C=O、NもしくはNR18であって、
R15、R16、および、R17は独立に水素、ハロ基、(C1-C10)アルキル基、ハロ置換(C1-C10)アルキル基、ヒドロキシ基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基であり、R18は水素もしくは(C1-C10)アルキル基である可能性があり、
R10、R11、R12、R13もしくはR14の少なくとも一つはヘテロ原子であり、
Z2は(C1-C6)アルキル基、(C3-C8)シクロアルキル基、置換アルキル基、(C2-C6)アルケニル基、(C2-C6)アルキニル基、アリール基、アルキル置換アリール基、アリールアルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基であって、Z2のアルキル基は1、2、3もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基であり、
破線の丸は一つ以上の任意の二重結合をあらわし、
Y2はO、C=O、もしくはCH2であり、W1は結合もしくは-CH2-CH2-CH2-であり、W2は結合もしくは-CH2-で、かつmが1、2、もしくは3であるか、あるいは(C=O)(CH2)1-5で、かつmが1であり、nは0、1、2、もしくは3であり、
破線と実線の二重線の組み合わせの各々は任意の二重結合をあらわし、R3は水素、(C1-C10)アルキル基、もしくは(C1-C10)アルコキシ基であり、
R4はヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホン酸(-CH2PO3H2)、もしくはα置換ホスホン酸であり、
Ra、Rb、Rcは独立に水素もしくは(C1-C10)アルキル基であり、
R1のアルキル基は1、2、3、もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にハロ基、(C1-C10)アルコキシ基もしくはシアノ基であり、
R2のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、もしくはヘテロアリール基のいずれかは、1、2、3もしくは4個の置換基で随意に置換され、置換基は独立にオキソ基(=O)、イミノ基(=NRd)、(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはC6-アリール基であり、あるいはR2アルキル基の炭素原子の一つ以上が、過酸化物の酸素ではない酸素、硫黄、もしくはNRcで独立に置換されてもよく、R3のアルキル基は1もしくは2個のヒドロキシ基で随意に置換され、Rdは水素もしくは(C1-C10)アルキル基である
ことを特徴とする構造式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル。
【請求項2】
R1が水素、フッ素、塩素、臭素、トリフルオロメチル基、メトキシ基、(C1-C6)アルキル基、(C1-C6)ハロアルキル基、アルコキシ基もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基、アルキル置換アリール基、アリール置換アルキル基、もしくはアリール置換アリールアルキル基である、請求項1の化合物。
【請求項3】
R1が水素、トリフルオロメチル基、もしくは-CH2CF3である、請求項2の化合物。
【請求項4】
R1がベンジル基、フェニルエチル基、もしくはメチルベンジル基である、請求項2の化合物。
【請求項5】
R2が-CH2-CH2-O-CH2CH2-O-を含む、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項6】
R2が
【化3】
である請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項7】
R2が
【化4】
であり、式中のY3は(CH3)3C-、CH3CH2(CH3)2C-、CH3CH2CH2-、CH3(CH2)2CH2-、CH3(CH2)4CH2-、(CH3)2CHCH2-、(CH3)3CCH2-、CH3CH2O-、(CH3)2CHO-もしくはCF3CH2CH2-もしくは
次の構造式を持つ基であることを特徴とする、請求項6の化合物。
【化5】
【請求項8】
R2が
【化6】
である請求項7の化合物。
【請求項9】
R2が
【化7】
である請求項8の化合物。
【請求項10】
R2が
【化8】
である請求項6の化合物。
【請求項11】
R2が
【化9】
である請求項10の化合物。
【請求項12】
R2が構造式IV
【化10】
を持つ請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項13】
R2が
【化11】
である請求項12の化合物。
【請求項14】
R2が(C1-C10)アルキル基、(C2-C10)アルケニル基および(C2-C14)アルキニル基、(C1-C10)アルコキシ基もしくは(C2-C16)アルコキシアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項15】
R2が(C1-C10)アルキル基、(C1-C10)アルコキシ基もしくは(C2-C12)アルコキシアルキル基である、請求項14の化合物。
【請求項16】
R2がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘプトキシ基、もしくはオクトキシ基である、請求項15の化合物。
【請求項17】
X1、Y1、および、Z1の各々がCH2である、請求項1から16のいずれか一項の化合物。
【請求項18】
R3が水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、もしくはイソプロピル基である、請求項1から17のいずれか一項の化合物。
【請求項19】
R3が水素、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、もしくはヒドロキシエチル基である、請求項18の化合物。
【請求項20】
【化12】
の構造式を持つ請求項1から19のいずれか一項の化合物。
【請求項21】
【化13】
の構造式を持つ請求項20の化合物。
【請求項22】
哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置のための方法であり、スフィンゴシン-1-リン酸受容体の活性が関係し、かつそのような活性のアゴニズムが要求され、前記哺乳類に請求項1から21のいずれか一項の化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項23】
前記病態が自己免疫疾患である、請求項21の方法。
【請求項24】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症である、請求項22の方法。
【請求項25】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項24の方法。
【請求項26】
前記病態がリンパ球トラフィッキングの変化である、請求項25の方法。
【請求項27】
前記処置がリンパ球トラフィッキングの変化である、請求項26の方法。
【請求項28】
リンパ球トラフィッキングが同種移植片生着の延長をもたらす、請求項27の方法。
【請求項29】
前記同種移植片が移植用である、請求項28の方法。
【請求項30】
哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置のための方法であって、S1Pリアーゼ活性が関与し、かつ前記S1Pリアーゼの阻害が要求され、前記哺乳類に請求項1から21のいずれか一項の化合物の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項31】
薬物療法における使用のための請求項1から21のいずれか一項の化合物の使用。
【請求項32】
スフィンゴシン-1-リン酸受容体の活性が関与する、哺乳類における病態もしくは症状の予防もしくは処置に有用な薬剤を調製するための、請求項1から21のいずれか一項の化合物の使用。
【請求項33】
前記薬剤が液体担体を含む、請求項32の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−526073(P2009−526073A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554413(P2008−554413)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003645
【国際公開番号】WO2007/092638
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003645
【国際公開番号】WO2007/092638
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]