説明

二重管の曲げ加工方法およびその方法で曲げた二重管並びにその二重管を用いた二重管式熱交換器

【課題】 管内に管のつぶれを防止するための充填物を充填することなく、曲げ部の外管と内管との間隔を所望間隔にでき、かつ正確な曲げ加工が施された曲げ部を有する、熱交換性能の優れた二重管を能率的にかつ低コストで得る。
【解決手段】 外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管を前記外管に挿入し、しかる後前記外管と該外管に挿入された前記内管の螺旋加工部とを同時に一括して少なくとも一箇所の曲げ加工を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ部を有する二重管の曲げ加工方法およびその方法で曲げた二重管並びにその二重管を用いた、好ましくはディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるNOxを尿素水により還元浄化する内燃機関の排気ガス浄化装置用の二重管式熱交換器による尿素水配管、あるいは各種用途用の二重管式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるNOxを尿素水により還元浄化する方法として、尿素水とSCR(Selective Catalytic Reduction、選択還元触媒)方式の触媒コンバータによりNOxを大幅に低減する方法が知られている。この尿素−SCR方式は、濃度が32%程度の尿素水を還元剤とし、これをSCR触媒コンバータ直前において排気ガスに混合させる方式であり、尿素は排気ガス中でアンモニアに変化し、SCR触媒コンバータ内で排気ガス中のNOxがアンモニアと結びついて水と無害な窒素に分解されるので、排気ガスのクリーン化に有望な技術とされている。しかしながら、尿素水はー10℃付近で凍結してしまうので、寒冷時や極寒時には尿素水の供給不能となる実用上の重大な欠点を有する。したがって、寒冷時や極寒時においても尿素−SCRシステムを正常に作動させるためには、寒冷時や極寒時に尿素水配管内における尿素水の凍結を防止する必要がある。
【0003】
かかる対策として、尿素水を寒冷時や極寒時にその供給配管系において凍結から防止する手段を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置が提案されている(特許文献1参照。)。この排気ガス浄化装置は、尿素水供給配管系の外表面の全体ないし主要部分にわたって電熱線(ヒーター)を配置し、その上に断熱材の包囲層を設け、尿素水の温度あるいは外気温度に応じて電熱線に通電し、尿素水の温度を凍結を防止するのに適切な温度範囲に維持する構成となした保温装置を備えたものである。また、SCR触媒と、排気ガスをSCR触媒に流入させる排気管と、排気ガスに尿素水等の還元剤等を供給する供給ノズルを備えたSCRマフラーにおいて、還元剤等供給ノズルまたは排気管を、保温性の二重管構造としたものが提案されている(特許文献2参照。)。このSCRマフラーの二重管構造の還元剤等供給ノズルは、外側または内側を二重管構造としたもので、その二重管構造の内部は、空洞状態か、もしくは保温性を高めるという観点から熱伝導性の低い保温材等で空間部を埋めた構造となしたものである。さらに、エンジンの冷却液により尿素水を加熱する方式の加熱装置を備えた排気浄化装置が提案されている(特許文献3参照。)。この排気浄化装置は、エンジンの冷却液により貯蔵タンクに貯蔵される尿素水を加熱すべく、エンジンの冷却液配管を前記貯蔵タンク内に通過させる構成を採用したものである。
【0004】
そして、前記内燃機関の排気ガス浄化装置(特許文献1、3参照)、あるいは二重管構造の排気管(特許文献2参照)に使用する二重管としては、以下に記載する曲げ加工方法により曲げ加工されたものがある。
その二重管の曲げ加工方法は、例えば、内管と外管の間に形状記憶樹脂等の充填物を充填して、常温で曲げ加工を施し、加工後加熱して充填物を抜き取る方法(特許文献4参照)、内管と外管の間に所定のヤング率を有するバックアップ材を充填して曲げ加工を施す方法(特許文献5参照)、内管と外管の間に棒状の直線状ワイヤあるいはコイル状ワイヤからなる充填材を充填して曲げ加工を施す方法(特許文献6参照)、内管と外管の間に可撓性及び耐圧性を有し、内部に水等の液体を圧入した筒状の袋体を挿入して曲げ加工を施す方法(特許文献7参照)、内管と外管の間にアウタ芯金を、内管の内側にインナ芯金をそれぞれ配して曲げ加工を施す方法(特許文献8参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2000−27627号公報
【特許文献2】特開2005−226528号公報
【特許文献3】PCT/JP2004/012747号明細書
【特許文献4】特開平7−88565号公報
【特許文献5】特開平8−276221号公報
【特許文献6】特開平8−276222号公報
【特許文献7】特開平9−94616号公報
【特許文献8】特開2003−211229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来の二重管の曲げ加工方法は、全て内管と外管の間に形状記憶樹脂、バックアップ材、直線状ワイヤあるいはコイル状ワイヤ、内部に水等の液体を圧入した筒状の袋体、芯金等の充填物を充填する必要があり、これら充填物の作製と管内への充填作業に多大な工数を必要とし、又特に、芯金(アウタ芯金、インナ芯金)を使用して曲げ加工を施す方法は、複雑な曲げ機構を必要とする等により、非能率的でかつ製造コストも高くつくといった欠点がある。したがって、このような高価な二重管を採用する内燃機関の排気ガス浄化装置や排気管等も必然的に製造コストが高くつくという欠点がある。
【0006】
本発明は、従来技術の前記欠点を解消するためになされたものであり、内管と外管の間に形状記憶樹脂、バックアップ材、直線状ワイヤあるいはコイル状ワイヤ、内部に水等の液体を圧入した筒状の袋体、芯金等の充填物を充填することなく、曲げ部の内管と外管との間隔を所望間隔にでき、かつ正確な曲げ加工が外管および内管に施された曲げ部を有し、さらに振動によるフレッティング摩耗がほとんど生じない長寿命の、熱交換性能の優れた二重管を能率的にかつ低コストで得ることができる、内燃機関の排気ガス浄化装置用尿素水配管用二重管の曲げ加工方法およびその二重管並びにその二重管を用いた熱交換器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二重管の曲げ加工方法は、外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管を前記外管に挿入し、しかる後前記外管と該外管に挿入された前記内管の螺旋加工部とを同時に一括して少なくとも一箇所の曲げ加工を施すことにより、外管の曲げ部に内管の螺旋加工部を有する二重管を得ることを特徴とするものである。
また、本発明法では、前記外管に、少なくとも前記螺旋加工部を有する内管を複数本挿入し、その後曲げ加工を施すことも可能であり、その場合、前記複数の内管は略180°位相で対向させて二重螺旋配置としたり、あるいはその複数の内管を隣接させて配置することができる。
【0008】
上記本発明の曲げ加工方法により曲げ加工される二重管は、外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接する曲げ部を少なくとも一箇所有することを特徴とするものである。また、その二重管は、前記外管に、少なくとも前記螺旋加工部を有する内管が複数本挿入され、少なくとも一方の内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接した構成となしていたり、または前記複数の内管が略180°位相で対向して二重螺旋配置となしていたり、あるいは前記複数の内管が隣接して配置されていることを好ましい態様とするものである。
【0009】
さらに、本発明に係る二重管式熱交換器は、外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接した曲げ部を少なくとも一箇所有し、前記外管の両端に、先端を継手部とした内管を突出させた絞部を有し、かつ前記絞部付近の外管に熱媒体流体用継手部が設けられた構成となしたことを特徴とするものである。また、この二重管式熱交換器においても、前記外管に少なくとも前記螺旋加工部を有する内管が複数本配設され、少なくとも一方の内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接していたり、または前記複数の内管が略180°位相で対向して二重螺旋配置となしていたり、あるいは前記複数の内管が隣接して配置されていることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る二重管の曲げ加工方法によれば、外管内面は外管に内接する内管に形成された螺旋加工部の剛性により曲げ加工の初期の段階から外管内面の軸方向に一重ないし多重の螺旋状に反力を受けることができることにより、外管に大きな偏平を生じることなく精度よく曲げ加工を施すことができるので、複雑な曲げ機構を必要とせず、比較的簡易な曲げ機構により、エンジン冷却水の流路等の空間が十分に確保された曲げ部を有する高品質の二重管を低コストで製造することができる。
【0011】
また、本発明の二重管の曲げ加工方法により得られる二重管は、エンジン冷却水の流路等の空間が十分に確保された曲げ部を有するのみならず、この二重管を採用した本発明の二重管式熱交換器は、流過抵抗が小さくかつ熱伝達が確実に行われるのみならず、外管と内管が強固に接触するので自動車への搭載等の振動状態で使用されても振動接触によるフレッティング摩耗もほとんどなく、高性能かつ長寿命である。
【0012】
さらに、本発明の二重管式熱交換器は、螺旋加工部を有する内管を複数本、好ましくは2本配設することにより、熱媒体流体の往復配管(供給配管と戻り配管)を確保でき、配設性・配索性に優れるのみならず、小型かつ高性能であり、その上コストも安価につく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る二重管の曲げ加工方法の第1実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図、図2は図1のA矢視図、図3は図1B−B線上の断面図、図4は図1に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図、図5は同じく本発明に係る第2実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図、図6は図5のC矢視図、図7は図5D−D線上の断面図、図8は図5に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図、図9は同じく本発明に係る第3実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図、図10は図9のE矢視図、図11は図9F−F線上の断面図、図12は図9に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図、図13は同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第1実施例を一部省略示す略平面図、図14は同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第2実施例を一部省略示す略平面図、図15は同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第3実施例を一部省略示す略平面図であり、1は外管、2は内管、3は曲げ部、4A、4B、4Cは二重管式熱交換器、4A−1、4B−1、4C−1はエンジン冷却液の入口、4A−2、4B−2、4C−2はエンジン冷却液の出口、4A−3、4B−3、4C−3は尿素水入口、4A−4、4B−4、4C−4は尿素水出口、5は密封栓である。
【0014】
図1〜図4に示す第1実施例の二重管の曲げ加工方法は、外管1の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を前記外管1に挿入し、前記外管1の内面と内管2の螺旋加工部の外周面とを当接させた状態で曲げ加工を施す(図4)。この二重管の曲げ加工では、図4に矢印で示すように当該二重管に曲げ力を加えて前記外管1と内管2とを同時に一括して曲げ加工を施す。この曲げ加工により、外管1の曲げ部3に内管2の螺旋加工部を有する二重管を得ることができる(図4)。即ち、本発明に係る二重管の曲げ加工方法によれば、外管内面は外管に内接する内管2に形成された螺旋加工部の剛性により曲げ加工の初期の段階から外管内面の軸方向に螺旋状に反力を受けることができることにより、外管1に大きな偏平を生じることなく精度よく曲げ加工を施すことができるので、曲げ部3の外管1と内管2との間隔を通流する流体の流路等の空間を十分に確保でき、流過抵抗が少なくかつ熱伝達が確実に行われるのみならず、外管1と内管2が強固に接触するので自動車への搭載等の振動状態で使用されても振動接触によるフレッティング摩耗もほとんどなくなる。
【0015】
図5〜図8に示す第2実施例の二重管の曲げ加工方法は、外管1の内径より小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を2本用い、この2本の内管2を例えば略180度位相をずらして前記外管1に挿入し、前記外管1の内面と2本の内管2の螺旋加工部の外周面とを当接させた状態で曲げ加工を施す(図8)。この2本の内管2を用いた二重管の曲げ加工においても、前記と同様、図8に矢印で示すように当該二重管に曲げ力を加えて前記外管1と内管2とを同時に一括して曲げ加工を施す。この曲げ加工により、外管1の曲げ部3に2本の内管2の螺旋加工部を有し、かつ前記2本の内管2が略180度位相で対向して二重螺旋配置となしている二重管を得ることができる(図8)。即ち、この二重管の曲げ加工方法の場合も、外管内面は外管に内接する2本の内管2に形成された螺旋加工部の剛性により曲げ加工の初期の段階から外管内面の軸方向に二重螺旋状に反力を受けることができることにより、外管1に大きな偏平が生じることなく精度よく曲げ加工を施すことができるので、曲げ部3の外管1と2本の内管2との間隔を通流する流体の流路等の空間を確保でき、熱伝達が確実に行われるのみならず、外管1と2本の内管2が強固に接触するので自動車への搭載等の振動状態で使用されても振動接触によるフレッティング摩耗もほとんどなくなる。
なお、内管2が2本の場合は、それぞれ流体の供給配管と戻り配管とに分けて用いることができる。
【0016】
図9〜図12に示す第3実施例の二重管の曲げ加工方法は、前記複数の内管を隣接させて配置する方法を例示したもので、外管1の内径より小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を2本用い、この2本の内管2を図のように揃えて前記外管1に挿入し、前記外管1の内面と隣接する2本の内管2の螺旋加工部の外周面とを当接させた状態で曲げ加工を施す(図12)。この2本の内管2を隣接させて用いた二重管の曲げ加工においても、前記と同様、図12に矢印で示すように当該二重管に曲げ力を加えて前記外管1と内管2とを同時に一括して曲げ加工を施す。この曲げ加工により、外管1の曲げ部3に隣接する2本の内管2の螺旋加工部を有する二重管を得ることができる(図12)。即ち、この二重管の曲げ加工方法の場合も、外管内面は外管に内接する隣接した2本の内管2に形成された螺旋加工部の剛性により曲げ加工の初期の段階から外管内面の軸方向に二重螺旋状に反力を受けることができることにより、外管1に大きな偏平が生じることなく精度よく曲げ加工を施すことができるので、曲げ部3の外管1と2本の内管2との間隔を通流する流体の流路等の空間を確保でき、熱伝達が確実に行われるのみならず、外管1と2本の内管2が強固に接触するので自動車への搭載等の振動状態で使用されても振動接触によるフレッティング摩耗もほとんどなくなる。
なお、この場合も前記と同様、内管2が2本の場合は、それぞれ流体の供給配管と戻り配管とに分けて用いることができる。
【0017】
図13に示す二重管式熱交換器4Aは、前記図1〜図4に示す第1実施例の二重管の曲げ加工方法により得られた二重管を採用した二重管式熱交換器を例示したもので、外管1の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2の前記螺旋加工部が前記外管1内面と当接した曲げ部3を少なくとも一箇所有し、前記外管1の両端に、先端を継手部2−1とした内管2を突出させた絞部1−3を有し、かつ前記絞部1−3付近の外管1に熱媒体流体用継手部1−4が設けられた構成となしている。
【0018】
この二重管式熱交換器4Aの二重管は、外管1の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を前記外管1に挿入した後、前記図1〜図4に示す曲げ加工を施して二重管とし、次いで外管1および内管2の両端部に端末加工を施して絞部1−3、継手部2−1を形成し、さらに外管1の両端部の絞部1−3付近に継手部1−4を取着して二重管式熱交換器4Aとする。この二重管式熱交換器4Aを例えば内燃機関の排気ガス浄化装置用尿素水配管として使用する場合は、外管1および内管2をそれぞれエンジン冷却液配管および尿素水配管とし、エンジン冷却液配管である外管1の両端部に設けた継手部1−4がそれぞれエンジン冷却液の入口4A−1、出口4A−2となり、尿素水配管である内管2の両端部に設けた継手部2−1がそれぞれ尿素水の入口4A−3、出口4A−4となる。
【0019】
また、図14に示す二重管式熱交換器4Bは、前記図5〜図8に示す第2実施例の二重管の曲げ加工方法により得られた二重管を採用した二重管式熱交換器を例示したもので、外管1の曲げ部3に2本の内管2の螺旋加工部を有し、かつ前記2本の内管2が略180度位相で対向して二重螺旋配置となしている二重管からなり、前記外管1の両端に、先端を継手部2−1とした2本の内管2を密封栓5を介して突出させ、かつ前記密封栓5付近の外管1の両端部に熱媒体流体用継手部1−4が設けられた構成となしている。
【0020】
この図14に示す二重管式熱交換器4Bの二重管は、外管1の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を2本、例えば略180度位相をずらして前記外管1に挿入した後、前記図5〜図8に示す曲げ加工を施して二重管とし、次いで外管1の両端部に取付けた密封栓5を貫通して外部に露出させた2本の内管2に端末加工を施して継手部2−1を形成し、さらに外管1の両端部の前記密封栓5付近に継手部1−4を取着して二重管式熱交換器4Bとする。この二重管式熱交換器4Bを例えば内燃機関の排気ガス浄化装置用尿素水配管として使用する場合は、外管1および2本の内管2をそれぞれエンジン冷却液配管および尿素水配管とし、エンジン冷却液配管である外管1の両端部に設けた継手部1−4がそれぞれエンジン冷却液の入口4B−1、出口4B−2となり、尿素水配管である2本の内管2の両端部に設けた継手部2−1がそれぞれ尿素水の入口4B−3、出口4B−4となる。
なお、この二重管式熱交換器4Bの場合は、2本の内管2からなる尿素水配管をそれぞれ尿素水の供給配管と戻り配管とすることができる。また、ここでは内管1〜2本を用いた場合を例示したが、多数本でもよいことはいうまでもない。
【0021】
さらに、図15に示す二重管式熱交換器4Cは、前記図9〜図12に示す第3実施例の二重管の曲げ加工方法により得られた二重管を採用した二重管式熱交換器を例示したもので、外管1の曲げ部3に隣接した2本の内管2の螺旋加工部を有する二重管からなり、この場合も前記外管1の両端に、先端を継手部2−1とした2本の内管2を密封栓5を介して突出させ、かつ前記密封栓5付近の外管1の両端部に熱媒体流体用継手部1−4が設けられた構成となしている。
【0022】
この図15に示す二重管式熱交換器4Cの二重管は、外管1の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管2を2本揃えて前記外管1に挿入した後、前記図9〜図12に示す曲げ加工を施して二重管とし、次いで前記と同様に外管1の両端部に取付けた密封栓5を貫通して外部に露出させた連設する2本の内管2に端末加工を施して継手部2−1を形成し、さらに外管1の両端部の前記密封栓5付近に継手部1−4を取着して二重管式熱交換器4Cとする。この二重管式熱交換器4Cを例えば内燃機関の排気ガス浄化装置用尿素水配管として使用する場合も前記と同様、外管1および隣接した2本の内管2をそれぞれエンジン冷却液配管および尿素水配管とし、エンジン冷却液配管である外管1の両端部に設けた継手部1−4がそれぞれエンジン冷却液の入口4C−1、出口4C−2となり、尿素水配管である2本の内管2の両端部に設けた継手部2−1がそれぞれ尿素水の入口4C−3、出口4C−4となる。
なお、この二重管式熱交換器4Cの場合も、隣接した2本の内管2からなる尿素水配管をそれぞれ尿素水の供給配管と戻り配管とすることができる。また、この場合も隣接させる内管2は多数本でもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る二重管の曲げ加工方法によれば、外管の内面は外管に内接する内管に形成された螺旋加工部の剛性により曲げ加工の初期の段階から外管内面の軸方向に一重ないし多重の螺旋状に反力を受けることができることにより、外管に大きな偏平を生じることなく精度よく曲げ加工を施すことができるので、複雑な曲げ機構を必要とせず、比較的簡易な曲げ機構により、エンジン冷却水の流路等の空間が十分に確保された曲げ部を有する高品質の二重管を低コストで製造することができる。また、本発明の二重管の曲げ加工方法により得られる二重管は、エンジン冷却水の流路が十分に確保された曲げ部を有するのみならず、この二重管を採用した本発明の二重管式熱交換器は、流過抵抗が小さくかつ熱伝達が確実に行われるのみならず、外管と内管が強固に接触するので自動車への搭載等の振動状態で使用されても振動接触によるフレッティング摩耗もほとんどなく、高性能かつ長寿命であるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の二重管式熱交換器は、螺旋加工部を有する内管を複数本、好ましくは2本ないし多数本配設することにより、外管の偏平化を更に防止して熱媒体流体の流路空間を確保し熱媒体流体の往復配管(供給配管と戻り配管)を確保でき、配設性が良好であるのみならず、小型コンパクトで高性能を有しかつ長寿命であるという優れた効果を奏する。さらにまた、内燃機関の排気ガスに含まれるNOxを尿素水により還元浄化する内燃機関の排気ガス浄化装置における尿素水配管を前記本発明の二重管式熱交換器構造とすることによって、高性能の排気ガス浄化装置を低コストで製造することができ、また、本発明による二重管式熱交換器は、燃料クーラーやオイルクーラー等にも使用することができる等、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る二重管の曲げ加工方法の第1実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1B−B線上の断面図である。
【図4】図1に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図である。
【図5】同じく本発明に係る第2実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図である。
【図6】図5のC矢視図である。
【図7】図5D−D線上の断面図である。
【図8】図5に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図である。
【図9】同じく本発明に係る第3実施例における曲げ加工前の二重管を示す縦断側面図である。
【図10】図9のE矢視図である。
【図11】図9F−F線上の断面図である。
【図12】図9に示す二重管の曲げ加工状態を模式的に示す縦断側面図である。
【図13】同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第1実施例を一部省略示す略平面図である。
【図14】同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第2実施例を一部省略示す略平面図である。
【図15】同じく本発明に係る二重管式熱交換器の第3実施例を一部省略示す略平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 外管
2 内管
3 曲げ部
4A、4B、4Cは二重管式熱交換器
4A−1、4B−1、4C−1 エンジン冷却液の入口
4A−2、4B−2、4C−2 エンジン冷却液の出口
4A−3、4B−3、4C−3 尿素水入口
4A−4、4B−4、4C−4 尿素水出口
5 密封栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管を前記外管に挿入し、しかる後前記外管と該外管に挿入された前記内管の螺旋加工部とを同時に一括して少なくとも一箇所の曲げ加工を施すことにより、外管の曲げ部に内管の螺旋加工部を有する二重管を得ることを特徴とする二重管の曲げ加工方法。
【請求項2】
前記外管に、少なくとも前記螺旋加工部を有する内管を複数本挿入し、その後曲げ加工を施すことを特徴とする請求項1に記載の二重管の曲げ加工方法。
【請求項3】
前記複数の内管を略180°位相で対向させて二重螺旋配置とすることを特徴とする請求項2に記載の二重管の曲げ加工方法。
【請求項4】
前記複数の内管を隣接させて配置することを特徴とする請求項2に記載の二重管の曲げ加工方法。
【請求項5】
外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接する曲げ部を少なくとも一箇所有することを特徴とする二重管。
【請求項6】
前記外管に、少なくとも前記螺旋加工部を有する内管が複数本挿入され、少なくとも一方の内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接した構成となしていることを特徴とする請求項5に記載の二重管。
【請求項7】
前記複数の内管が略180°位相で対向して二重螺旋配置となしていることを特徴とする請求項6に記載の二重管。
【請求項8】
前記複数の内管が隣接して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の二重管。
【請求項9】
外管の内径より僅かに小径の螺旋外径を有する管軸方向に所望長さの螺旋加工部を少なくとも一箇所設けた内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接した曲げ部を少なくとも一箇所有し、前記外管の両端に、先端を継手部とした内管を突出させた絞部を有し、かつ前記絞部付近の外管に熱媒体流体用継手部が設けられた構成となしたことを特徴とする二重管式熱交換器。
【請求項10】
前記外管に少なくとも前記螺旋加工部を有する内管が複数本配設され、少なくとも一方の内管の前記螺旋加工部が前記外管と当接していることを特徴とする請求項9に記載の二重管式熱交換器。
【請求項11】
前記複数の内管が略180°位相で対向して二重螺旋配置となしていることを特徴とする請求項10に記載の二重管式熱交換器。
【請求項12】
前記複数の内管が隣接して配置されていることを特徴とする請求項10に記載の二重管式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−281711(P2009−281711A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137318(P2008−137318)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000120249)臼井国際産業株式会社 (168)
【Fターム(参考)】