説明

亜鉛粉末を製造するための遠心噴霧

溶融亜鉛から亜鉛又は亜鉛合金粉末を製造するための遠心衝突噴霧方法。溶融亜鉛の流れが、噴霧チャンバ内に含まれた回転ディスクの表面上に噴射される。ディスクは、開口端部及び対向する閉鎖端部、並びに一体型側壁を有するカップ形状の空洞を有する。ディスクは、ディスク内の開放空洞の中心部内に突き出るバッフルを有してもよい。バッフルは直線的又は湾曲した側面を有してもよい。ディスクは、約10,000〜15,000rpm(回転数毎分)の高速で回転される。チャンバ内の酸素含有量は、好ましくは約1〜6体積%である。亜鉛粉末は、より小さな粒径を有して製造される。アノード活物質としてこのような亜鉛生成物を用いる亜鉛アルカリ電池は、特にデジタルカメラなどの高放電率の動作における動力源として改善された性能を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池に好適な亜鉛又は亜鉛合金粉末を製造するための遠心噴霧方法における改善に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のインゴットを溶融状態に変化させ、最終的に溶融金属を金属粉末に変化させるための方法は、当該技術分野において開示されている。様々な方法が採用されている。基本的な「ガス噴霧方法」では、溶融金属は、ノズルを通って放出チャンバ内に移り、そこでは溶融金属は、加圧下でガスの連続した流入する流れと混合される。ガスは、溶融金属の流れを噴霧する役割をし、この流れは冷却されると金属粉末に変化する。ガス噴霧の変形(「超音波ガス噴霧」)は、超音波速度で、先細−末広ノズルを通って混合チャンバ内に噴射される流入するガスを用いて、混合チャンバでは流入するガスは溶融金属のスプレーと混合される。チャンバの壁上における超音波ガスジェットの衝突は、衝撃波を生成し、これは溶融金属を小さな液滴に分解するのを助ける。金属液滴は、制御された雰囲気内で冷却すると、チャンバの外で金属粉末へと固化する。他の方法は遠心分離を用いて、溶融金属の流入する流れを微小の液滴に分解し、これは冷却すると金属粉末に変化する。
【0003】
「遠心鋳造(centrifugal shot casting process)」では、金属のバッチが水冷却るつぼに配置される。るつぼに近接した据付電極が、電極とるつぼとの間の電弧を活性化する。これは十分な熱を発生させ、金属を溶融する。るつぼが回転するときに、遠心力によって溶融金属はるつぼの壁を上方へ移動する。回転るつぼの縁部に溶融金属が移動するときに、それは破壊され、遠心力によって液滴の形体で放出され、アルゴン又はヘリウムの制御された雰囲気下で金属粒子に固化する。この方法は、本来は核燃料で使用される耐火性粉末を噴霧するのに使用されていたが、この方法は鉄、ニッケル、コバルト、及びチタンを含む幅広い範囲の金属粉末を製造するのに使用されている。
【0004】
「内部的に冷却された回転ディスク噴霧」方法では、溶融金属の流れは、ディスクの中心部内の中空のカップ形の空洞内に加圧下で噴射される。同時に冷たい液体の焼入れ剤の壁が、カップの内壁に対して向けられ、溶融金属を小さな液滴に分解させる。制御された雰囲気下で液滴が凝結するときに、金属粉末は形成される。
【0005】
溶融金属から金属粉末を製造するための他の遠心分離方法「遠心噴霧(centrifugal atomization)」では、カップの中心部内で溶融金属の内部的な焼入れはない。カップの中心部内へ焼入れ液を噴射することなく、溶融金属は回転ディスクのカップ形状の中心部内に直接噴射され得る。高速でディスクが回転するときに、溶融金属はカップの中心部の表面上にフィルムを形成する。フィルムが回転ディスクの縁部の周辺部に到達するとき、それは小さな液滴に砕け始める。小さな金属液滴は、制御された雰囲気下に保持されたチャンバ内で金属粉末に固化する。このような噴霧方法用の従来のディスクは、その中にいずれのバッフルも有さないカップ形状の空洞を有する。亜鉛粉末を製造するための、このような噴霧方法のための従来のディスク回転速度は、典型的に約500〜8000rpm(回転数毎分)、例えば、約1000〜8000rpmである。このような従来の方法及びディスク回転速度を用いて、典型的なバッチ生産で製造された亜鉛粒子の典型的な中央粒径D50は、約200〜350マイクロメートルである。(噴霧方法によって製造された亜鉛粒子のバッチの中央粒径D50及び平均粒径は、一般的にほぼ同じ値であり、よってこれらの用語は有効に、互換的に使用することができる。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
「回転ディスク」の機械設計を改善して、回転ディスクの表面上における溶融亜鉛の滑りの可能性を低減することが望ましい。滑りは、溶融亜鉛の所与の塊上の遠心力の喪失となり、したがって溶融亜鉛の所与の塊が、回転ディスクの縁部から出て液滴に砕けるとき、運動エネルギーにおける低減となる。このような遠心力における喪失は、今度は、より大きな液滴となり、結果として、所望されるよりも大きな粒径の亜鉛粉末生成物となる。
【0007】
より大きな割合の、より小さな粒径の亜鉛粉末が製造できるように、遠心噴霧方法を改善することが望ましい。このような亜鉛粉末は、アルカリ電池の性能を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルカリ電池用の亜鉛又は亜鉛合金粉末の製造における改善を目的とする。アルカリ電池は当該技術分野において周知である。アルカリ電池は典型的に、粒子状の亜鉛を含むアノードと、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ電解質と、二酸化マンガン又はオキシ水酸化ニッケル若しくは酸化銅を含むカソードとを有する。アルカリ電池は、亜鉛/空気ボタン電池(典型的に補聴器用に使用される)の形体であってもよい。アノード内に粒子状の亜鉛を用いる代表的なアルカリ電池は、例えば米国特許第6,841,302(B2)号に開示されており、代表的な亜鉛/空気電池は、米国特許第3,897,265号に開示されている。より詳細には、本発明は、遠心噴霧法を用いながら、そのような亜鉛又は亜鉛合金粉末の製造における改善を目的とする。
【0009】
本発明の改善された遠心噴霧法では、溶融亜鉛は、中実のインゴットから電気炉内で製造される。亜鉛は好ましくは、添加水銀を含有せず、それによって亜鉛中の水銀含有量は、約100ppm(重量百万分率)未満である。亜鉛は、インジウム、ビスマス、アルミニウム又は鉛などの合金添加物を含有してもよい。例えば、インジウム、ビスマス、アルミニウム及び鉛の1つ又は全ては、望ましくは溶融亜鉛に添加されてもよい。亜鉛の重量に基づいて、インジウムは典型的に約50〜1500ppm(百万分率)の量で、ビスマスは約5〜1000ppmの量で、アルミニウムは約5〜100ppm、好ましくは約5〜25ppmの量で、鉛は約100〜1000ppmの量で添加されてもよい。溶融亜鉛中には添加鉛はゼロであり、よって亜鉛中の鉛含有率は約100ppm未満であることが望ましい。(本明細書で使用される用語「亜鉛」は、亜鉛合金なども場合によっては含めるということを理解されたい。)溶融亜鉛は炉から移動ライン(樋)を通って、電気加熱されたじょうご(タンディッシュ)に移され、これは溶融亜鉛を約450℃〜550℃、典型的に約500℃に維持する。
【0010】
溶融亜鉛は加熱されたじょうごからノズルを通って放出され、溶融亜鉛の流れを作り、これは電気モーターによって駆動される回転ディスクの表面に衝突する。ディスクは、約10体積%未満の比較的低い酸素含有量の雰囲気を有する噴霧チャンバ内に収容される。噴霧チャンバ内の酸素含有量は、約1〜6体積%であることが望ましい。チャンバ内の望ましい酸素含有量は、約1.5〜5.5体積%、例えば約1.5〜4.5体積%、又は約4.0〜4.5体積%であるということが判明した。ガス組成物の残りは、窒素又は他のガス、例えばアルゴン、あるいは亜鉛と非反応性のヘリウムである。噴霧チャンバ内の雰囲気は、ほぼ大気圧で維持され、典型的には大気よりもわずかに上の圧力で維持され、例えば、最高で、大気圧より高い約20.7×10パスカル(3psi)である。チャンバ内の雰囲気の温度は、循環冷媒のジャケットの使用を介して、あるいは噴霧ガスを熱交換器に通過させ、冷却されたガスをチャンバに戻して再循環して、約75°F〜140°F(23.9℃〜60.0℃)、好ましくは約100°F〜140°F(37.8℃〜60.0℃)である。
【0011】
噴霧チャンバ内では、本発明のディスクは、約10,000〜15,000rpm、望ましくは約12,000〜14,000rpm(回転数毎分)の回転速度で回転するように維持される。溶融亜鉛の流れがディスク表面に衝突するとき、フィルムが発現され、これは露出したディスク表面を被覆する。溶融亜鉛フィルムは、回転ディスクの周囲縁部の方へ移動し、その点で、溶融亜鉛フィルムは遠心力によってディスクから放出され、溶融金属の放出された塊に運動エネルギーを付与する。それが放出されるとき、溶融亜鉛の液滴が形成され、チャンバ内で懸濁するようになる。液滴が冷却するとき、亜鉛粉末の生成物が形成され、これは出口シュートによってチャンバから取り出される。
【0012】
本発明の遠心噴霧方法によると、約1〜6体積%、好ましくは約1.5〜5.5体積%、例えば約1.5〜4.5体積%、又は望ましくは約4.0〜4.5体積%の噴霧チャンバ内の酸素含有量と組み合わせて、回転ディスクを、約10,000〜15,000rpm(回転数毎分)、好ましくは約12,000〜14,000rpmの高速回転速度で運転することが有利であるということが判明した。ディスクは、溶融亜鉛を受容するためのカップ形状の空洞をその中に有する。ディスクは、いずれのバッフルも有さないカップ形状の空洞をその中に有してもよい。あるいは、ディスクは、空洞壁から延び、かつ開口部空洞内に突き出る一体型バッフルをその中に有してもよい。亜鉛粉末のバッチはしたがって、中央粒径D50が望ましくは約90〜135マイクロメートル、例えば約90〜120マイクロメートル、の亜鉛粒径を備えて、本発明の噴霧方法によって製造されてもよい。(用語「粉末試料の平均粒径」は本明細書で使用されるとき、特に指定がない限り、従来のレーザー散乱法によって決定される中央粒径D50である。)本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末は典型的に、約60〜510マイクロメートルの亜鉛粒径分布を有することができ、少なくとも一部の亜鉛粒子は、60マイクロメートル以下の粒径を有し、亜鉛粒子の1重量%未満は510マイクロメートル超の粒径を有する。本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末は、約50〜510マイクロメートルの亜鉛粒径分布を有することができ、少なくとも一部の亜鉛粒子は、50マイクロメートル以下の粒径を有し、亜鉛粒子の1重量%未満は510マイクロメートル超の粒径を有する。本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末は更に、約30〜510マイクロメートルの亜鉛粒径分布を有することができ、少なくとも一部の亜鉛粒子は、30マイクロメートル以下の粒径を有し、亜鉛粒子の1重量%未満は510マイクロメートル超の粒径を有する。
【0013】
より高いディスク回転速度、10,000〜15,000rpm、好ましくは12,000〜14,000rpmを用いる本発明の改善された噴霧方法は、好ましくは約1〜6体積%、好ましくは約1.5〜5.5体積%のチャンバの酸素濃度と組み合わせて、このような方法の従来の操作よりも小さな粒径の亜鉛粒子をもたらす。アルカリ電池(例えば、二酸化マンガンを含むカソードを備えるアルカリ電池)内でアノード活物質としての、このような亜鉛生成物の使用は、例えばデジタルカメラ動力源など、特に高速放電用途において、これらの電池の性能の改善をもたらす。確実にはわかっていないが、しかし、本発明の改善された方法からもたらされる第2の亜鉛特性は、より小さな粒径に加えて、それ自体が改善されたアルカリ電池の性能に寄与し得るということである。本明細書の亜鉛生成物のこのような第2の特性には、例えば亜鉛粒子の形状分布、並びに亜鉛粒子の表面質感及び表面モルホロジーなどの要因を挙げることができる。本発明の改善された方法によって生成された製品試料において、異なる亜鉛粒子の形状があり得る。このような亜鉛粒子の形状には、例えば、規則的又は不規則的な針状、規則的又は不規則的な多角形、直線的な面及びアーチ形の面の組み合わせを有する粒子並びに球状若しくは実質的に球状を挙げることができる。本明細書の方法によって作られる亜鉛粉末の特定の粒子形状分布、並びに粒子表面質感などの第2の物理的特性は、アルカリ電池内の、この亜鉛の有効な特性に寄与し得る。このような特性は、容易に定義したり、又は測定することはできない。
【0014】
本発明の改善された方法によって作られた亜鉛粉末は、単体で又は他の亜鉛粉末と混合して使用され、アルカリ電池内のアノード活物質として使用されるための、最終的な亜鉛粉末混合物を形成することができる。アルカリ電池内のアノード活物質として使用される、亜鉛粉末の少なくとも約50重量パーセント、例えば、亜鉛粉末の少なくとも約60重量パーセントは、本発明の改善された方法によって作られることが望ましい。アルカリ電池内のアノード活物質として使用される、亜鉛粉末の約50〜75重量パーセントは、本発明の改善された方法によって作られることが望ましい。アルカリ電池のアノード用の亜鉛粉末の残りは典型的に、200メッシュ(0.075mm)以下、又は325メッシュ(0.045mm)以下の平均粒径を有する亜鉛微粉として添加されてもよい。例えば、200メッシュ以下の亜鉛微粉を十分に、本発明の方法によって作られた亜鉛粉末に添加して、それによってサイズ200メッシュ以下の合計亜鉛微粉が、アルカリ電池内のアノード活物質として使用される合計亜鉛粉末の約10〜50重量パーセントを構成してもよい。325メッシュ以下の亜鉛微粉を十分に、本発明の方法によって作られた亜鉛粉末に添加して、それによってサイズ325メッシュ以下の合計亜鉛微粉が、アルカリ電池内でアノード活物質として使用される合計亜鉛粉末の約10〜50重量パーセントを構成してもよい(参照されたメッシュサイズは従来のTylerメッシュサイズであり、それを通って粒子が通過することができる特定のふるいの正方形の開口部(ミリメートル)に相当する。200のTylerメッシュサイズは、0.075mmのふるいの正方形の開口部に相当し、325のTylerメッシュサイズは、米国のStandard Screen ASTME−11仕様によると、0.045mmのふるいの正方形の開口部に相当する。)
【0015】
本発明の主要な態様では、ディスクの形体(溶融亜鉛の流れを受容するための)は、カップ空洞内に突き出るバッフルを有さない。典型的にグラファイト材料製のディスクは、全体的に実質的に円筒形状を有する。ディスク内のカップ形状の空洞は、開口端部及び対向する閉鎖端部を有し、それらの間に一体型側壁を備える。カップの閉鎖端部は、平坦な底面で形成される。カップ形状の空洞は、一体成形された直線的又は傾斜した側壁を有してもよい。好ましくは、空洞の側壁表面の一部は、外側に湾曲しており、すなわち、その開口端部からカップ空洞内を見たとき、凸状である。ディスクは、ディスクの上面の周囲縁部に当接する開口端部で上面を有する。上面は平坦部分を有し、これは上部の周囲縁部から延び、カップ空洞を形成する側壁に遷移する。カップ空洞側壁は、望ましくは外側に湾曲した表面部分を有し、この表面部分はカップの閉鎖した底部に隣接する垂直表面に遷移する。カップの側壁と底面の交点は、この交点で滑らかな表面があるように、わずかに内側に傾斜(凸部)が付けられてもよい。カップ空洞は、ディスク本体内に含まれるため、カップ空洞はディスク全体の直径未満である直径及びディスク全体の深さ未満である深さを有する。
【0016】
本発明の別の態様では、ディスクの形体(溶融亜鉛の流れを受容するための)は、カップ空洞内へ突き出る、複数の一体型バッフルを備えるカップ形状の空洞を有してもよい。典型的にグラファイト材料のディスクは、全体的に実質的に円筒形状を有する。ディスク内のカップ形状の空洞は、開口端部及び閉鎖端部を有し、それらの間に一体型側壁を備える。カップ形状の空洞は、直線的又は傾斜した側壁を有してもよい。空洞はディスク本体内に含まれるため、カップ空洞はディスク全体の直径未満である直径及びディスク全体の深さ未満である深さを有する。ディスクは、前述の空洞内に突き出る複数の一体成形されたバッフルによって特徴付けられる。特に、バッフルは空洞の側壁から生じて、ディスク内の前述のカップ形状の空洞内に延びるか、又は突き出る。
【0017】
カップ形状の空洞内に突き出るバッフルは、直線的な側壁を有してもよく、あるいはそれらの側壁は湾曲されてもよい。湾曲した側壁を備えるバッフルが用いられる場合、それらは同じ方向で全て湾曲していることが好ましい。例えば、バッフルの側壁は、ディスク回転の方向で内側に湾曲してもよい。バッフルの上面は、直線的であるか、又は下向きに傾斜してもよい。すなわち、ディスクが上部で前述の空洞の開口端部で見られたとき、バッフルの上面は、それが空洞側壁から空洞の中心の方への方向において横断するとき、下向きの傾斜を有してもよい。
【0018】
一態様では、ディスクが上部で空洞の開口端部で見られたとき、バッフルは、ディスクの上部の露出された表面の高さ、又は少なくともそれに近い高さ、又は実質的にその高さである上面を有してもよい。別の態様では、バッフルはディスクの上面から凹んでいる上面を有してもよい。すなわち、バッフルの上面は、ディスクが上部で空洞の開口端部から見られたとき、ディスクの上面の高さ以下であってもよい。
【0019】
このように、バッフルが直線的な側壁及び平坦な上面を有する形体である場合、それは典型的に多面体の形状を有してもよい。例えば、それは実質的に三角柱の形体であってもよい。バッフルが湾曲した側壁を有する形体である場合、側壁がわずかに若しくは穏やかに湾曲したアーチ形又は半球の表面形状のようである場合を除き、それは実質的に多面体のものの全体形状を更に有してもよい。
【0020】
ディスクのカップ形状の空洞内に突き出るバッフルを有する本発明のディスク設計は、ディスク表面に対して溶融亜鉛のフィルムの遠心分離の滑りを低減する働きをすることができる。したがって、遠心分離エネルギーは保存され、ディスク表面上の溶融亜鉛フィルムに効果的に付与することができる。これは、バッフルのないディスクと比べて、所与のディスク回転速度で、放出された溶融亜鉛の所与の塊に付与される運動エネルギーを増加させ、より小さな粒径を得ることができる。しかしながら、非常に高いディスク回転速度では、例えば約10,000〜15,000rpmでは、ディスクの上面上で溶融亜鉛の波様動作が形成されることがある。これは、ディスクの上面にわたって溶融亜鉛の流れの非均一性となることがあり、バッフルの効果をいくらか相殺する恐れがある。バッフルを有さないカップ形状のディスクは、ディスクの上面上のいずれか顕著な波様の作用の形成に耐性があるように思われる。したがって、バッフルを備える本発明のディスクの実施形態は、非常に有効であり得るが、バッフルのないカップ形状のディスクは、特に約10,000〜15,000rpmの高い回転速度での亜鉛粉末の生産に有効なディスク設計である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、以下の図面を参照することによって、よりよく理解されよう。
【図1】遠心噴霧装置の概略図。
【図2】遠心噴霧のための回転可能なディスクの望ましい形体の実施形態であり、ディスクは、ディスク内のカップ空洞内に延びるいずれのバッフルも有していない。
【図2A】遠心噴霧のための回転可能なディスクの別の望ましい形体の実施形態であり、回転可能なディスクは、ディスク内のカップ空洞内に延びる、全深さの、直線的な壁の付いたバッフルを有する。
【図2B】遠心噴霧のための改善された回転可能なディスクの実施形態であり、ディスクは、ディスク内のカップ空洞内に延びる、減少された深さの、直線的な壁の付いたバッフルを有する。
【図3A】遠心噴霧のための改善された回転可能なディスクの実施形態であり、ディスクは、ディスク内のカップ空洞内に延びる、全深さの、湾曲した壁の付いたバッフルを有する。
【図3B】遠心噴霧のための改善された回転可能なディスクの実施形態であり、ディスクは、ディスク内のカップ空洞内に延びる、減少された深さの、湾曲された壁の付いたバッフルを有する。
【図4】本発明の噴霧方法によって作られた亜鉛粉末をその中に備えるアノードを有するアルカリ電池の、表面を一部切り取った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
遠心噴霧方法及び装置10は、図1の概略図に示される。遠心噴霧方法では、純粋な中実の亜鉛インゴット13が電気誘導炉12内に挿入され、炉12内で亜鉛溶融金属に変えられる。(亜鉛が、アルカリ電池用のアノード材料としての使用を意図される場合、インジウム及びビスマスなどの合金添加物が、典型的に、亜鉛の重量を基準として約100〜1500ppmインジウム及び約100〜1000ppmビスマスの量で、溶融亜鉛に添加されてもよい。所望により、合金添加鉛は、亜鉛の重量を基準として、典型的に約100〜1000ppmの量で添加されてもよい。)噴霧方法から最終的に製造される粒子状の亜鉛合金は、したがって本質的に純粋な亜鉛の電気化学容量を有する。したがって、用語「亜鉛」は、アルカリ電池内でアノード材料としての使用については、このような亜鉛合金を含むように理解される。溶融亜鉛は添加水銀及び添加鉛を含有しないことが好ましい。したがって、製造された亜鉛粒子は、100ppm未満の水銀及び100ppm未満の鉛を含有する。
【0023】
溶融亜鉛は次いで、電気炉12から移動ライン18(「樋」)を介して、小型の、電気加熱された炉20(「タンディッシュ」)に移される。加熱された炉20(「タンディッシュ」)は、溶融亜鉛の均一な流れを維持し、これは次いで、溶融亜鉛の直線的な、安定した流れ26として、ノズル24を通過し、回転ディスク100の中心部分の上に衝突する。回転ディスク100は、図1に示されるように噴霧チャンバ14内に含まれる。電気駆動モーター22が、チャンバ14の外側に提供され、ディスク100を所望の速度で回転させる駆動軸33と連通する。ディスク100は、典型的にグラファイト製であってもよいが、ディスク100は、タングステン又はセラミック材料のような高温に耐性のあり得る他の材料から構成されてもよい。ディスク100は、空洞空間内に突き出るいずれかのバッフルを有さない、カップ形状の空洞50(図2)をその中に有してもよい。ディスク100は、内部バッフル110a又は110bを含んでもよく、これは図2A又は2Bにそれぞれ示されるように、空洞空間内に突き出る。(あるいは、ディスク100は、図3A又は3Bで最も良く示される形体と交換されてもよい。)溶融亜鉛の流れが、回転ディスク100の中心部分に衝突するとき、溶融亜鉛フィルムがディスク100の上面上に形成される。溶融フィルム塊は遠心力によって回転ディスク100の周囲縁部に移動する。溶融亜鉛がディスク表面から放出されるとき、それは微細な液体の金属液滴28を形成し、これは、典型的に鉄鋼から作製される噴霧チャンバ14内に噴霧する。溶融液滴が冷却するとき、それらは亜鉛又は亜鉛合金粒子に固化し、これはシュート30を通ってチャンバ14から取り出される亜鉛粉末35として回収することができる。
【0024】
噴霧チャンバ14の内部雰囲気は、望ましくは約1〜6体積%の酸素含有量、例えば約1.5〜5.5体積%、例えば約1.5〜4.5体積%、又は望ましくは約4.0〜4.5体積%を有する、比較的低い酸素含有量で維持される。チャンバ14内のガス状の雰囲気の残りは、不活性ガス、典型的に窒素を含んでもよい。しかしながら、他の不活性ガス(すなわち、亜鉛と無反応という点での不活性)、例えばアルゴン又はヘリウムが、単体で又は混合物で、あるいは窒素との任意の混合で使用されてもよい。(チャンバ14内の雰囲気の酸素含有量は、酸素が約10体積%の濃度を超えないように制御されなくてはならず、これはより高い酸素含有量では、溶融亜鉛の微細な噴霧28との爆発性混合物を発現する可能性があるからである。)チャンバ14内のガス状の雰囲気15は、大気圧で、望ましくは75°F〜140°F、(23.9℃〜60.0℃)、好ましくは約100°F〜140°F(37.8℃〜60.0℃)の温度で維持されてもよい。これは、チャンバ14の周辺で循環冷媒のジャケット(図示せず)を適用することによって、又は噴霧ガスを熱交換器に通過させ、冷却されたガスをチャンバ14に再循環することによって達成され得る。
【0025】
上述(図1)のような噴霧装置は、亜鉛粉末の所望のスループットの速度に基づいて、寸法が拡大又は縮小されてもよいということが理解される。ディスク100が望ましくは約10,000〜15,000rpm(回転数毎分)、好ましくは約12,000〜14,000rpmの高速で回転するよう設定され得るように、十分な動力の電気駆動モーター122が選択される。ディスク100(典型的にグラファイト製)の寸法及び重量は、十分な馬力のモーターが選択されて、所望の回転速度でディスクを駆動できるように、あらかじめ決定することができる。
【0026】
具体的な実施形態
回転可能なディスク100の設計の好ましい実施形態が、図2〜3Bに示される。
【0027】
ディスク100の好ましい実施形態は、図2に最も良く示される。ディスク100(図2)は、開口端部58及び対向する閉鎖端部48、並びにそれらの間に一体型側壁40を有する。ディスクの一体型側壁40は、ディスクの外側を向く外側表面46及びディスク内側を向く内側表面56を有する。ディスク100は全体的に実質的な円筒形状を有する。ディスク100内にはカップ形状の空洞50がある。空洞50は、底面57、対向する開口端部58及び一体型側壁56によって囲まれる。このように、ディスクの外側側面46と内側側面56との間に中実のディスク材料の厚さがある。側壁の外側表面46は、ディスクの閉鎖端部48を周回する底縁部42によってその底部で囲まれ、側壁の外側表面46は、開口端部58を周回する上縁部44によってその上部で囲まれる。周辺の上縁部44から空洞50内に延びるディスク100の上部の周囲表面45(図2)がある。上部の周囲表面45は、カップ空洞側壁56間の一体型傾斜遷移表面59によって、カップ空洞側壁56内に遷移する。遷移表面59は、好ましくは外側に湾曲し、すなわち、ディスクの開口端部から見たとき、凸部形状である。望ましい特定の実施形態では、外側表面46によって画定されるとき、ディスク100(図2)の外径は、約12.07cm(4.75インチ)であってもよく、空洞の底面57は、約6.60cm(2.60インチ)であってもよく、カップ形状の空洞50の深さは、約2.54cm(1.0インチ)であってもよい。上面45は、上縁部44から測定されたとき、所望により約0.25cm(0.1インチ)の小さな平坦部分を有してもよい。上面45の平坦部分は、約2.03〜2.54cm(0.8〜1.0インチ)の曲面半径を有し得る、外側に湾曲した表面59内に遷移する。外側に湾曲した遷移表面59は、カップの底面57に隣接する小さな深さの垂直面53で終端する。カップの側壁56とカップの底面57との交点で、わずかに内側に傾斜した(凹部)表面52があってもよい。
【0028】
ディスク100の代替の実施形態は、図2Aに示される。ディスク100は、閉鎖端部137及び対向する開口端部138、並びにそれらの間に一体型側壁120を有する。ディスク100は全体的に実質的な円筒形状を有する。ディスク100内にはカップ形状の空洞130がある。空洞130は、底面137、対向する開口端部138及び一体型側壁136によって囲まれる。ディスクの一体型側壁120は、ディスクの外側を向く外側表面126及びディスク内側を向く内側表面136を有する。内側側面136は空洞130の側壁も形成する。したがって、ディスクの外側側面126と内側側面136との間に中実のディスク材料の厚さがある。側壁表面126は、ディスクの閉鎖端部137を周回する底縁部122によってその底部で囲まれ、側壁表面126は、開口端部138を周回する上縁部124によってその上部で囲まれる(図2A)。周辺の上縁部124から空洞130内に延びるディスク100の上部の周囲表面125がある。本発明の改善されたディスク100は、カップ空洞130内に、内側側壁表面136から延びる前縁部114aを有する、複数の一体型バッフル110aによって特徴付けられる。
【0029】
バッフル110aは、実質的に多面体の形状である。図2Aで示される実施形態では、バッフル110aは、実質的に多面体の形状であり、より具体的には三角柱のようである。したがって、バッフル110a(図2A)は、平坦な、実質的に三角形の上面111a、及びそこから下方に延びる平坦な(非湾曲の)側面112aを有する。
【0030】
代表的なバッフル110aの垂直深さは、その上面111aからその底面113aまで測定される。図2Aに示されるバッフル110aは、空洞130の全深さを横断するそれらの垂直深さによって特徴付けられる。すなわち、代表的なバッフル110a(図2A)の垂直深さは、空洞130の床面137から上面125まで測定されたとき、空洞130の全深さを横断する。この実施形態の変形では、バッフル110aの底面と空洞130の床面137との間に空間があってもよい。そのような場合、バッフル110aの垂直深さは、空洞130の深さ未満である。しかしながら、そのような実施形態では、バッフル110aの上面111aは、図2Aで示されるように、ディスク100の上部の周囲表面125の高さである、又は少なくともその高さに近い、又は実質的にその高さである。
【0031】
ディスク100の別の代替の実施形態が図2Bに示される。この実施形態では、上述のようなバッフル110aに類似の、複数の代表的なバッフル110bが用いられる。バッフル110b(図2B)と110a(図2A)との間の主な違いは、バッフル110bが凹んでおり、すなわち、それらはディスク100の上面125から変位されているということである。したがって、バッフル110bの上面111bは、ディスクの上面125の高さではないが、むしろ上面111bはディスクの上面125の下に位置する。バッフル110bの底面113Bは、空洞130の床面137に接触してもよく、又は別の方法としては底面113bは床面137から離間されてもよい。バッフル110b(図2B)の形体は、さもなければバッフル110a(図2A)のものと同じ又は類似である(same of similar)。すなわち、バッフル110bは、バッフル110aと同じ形状を有してもよい。しかしながら、図2Bに示される好ましい実施形態では、前縁113bは、バッフルの上面111bよりも更にディスク空洞130内への高さであるように、バッフル110bの上面111bは、下向きに湾曲される。したがって、バッフル110bの垂直深さは、上面111bと底面113bとの間の距離で測定されたとき、バッフルの前縁114bにおいてよりもディスクの側壁136近くが大きい。
【0032】
本発明の別の実施形態では、ディスクは、図3A及び3Bで示される形体であってもよい。これらの実施形態は、バッフルが湾曲した側面を有するということを除き、図2A及び2Bで示される実施形態に類似である。このように、図3Aで示される実施形態では、ディスク100は以下の特徴を有する。
【0033】
ディスク100は、閉鎖端部237及び対向する開口端部238、並びにそれらの間に一体型側壁220を有する。ディスク100内にはカップ形状の空洞230がある。空洞230は、底面237、対向する開口端部238及び一体型側壁236によって囲まれる。ディスクの側壁220は、ディスク100の外側側面を形成する外側表面226と、ディスク100内で空洞230の境界となる側壁表面を形成する内側側面236とを有する。したがって、外側の側面226と内側の側面236との間に中実のディスク材料の厚さがある。外側の側壁表面226は、ディスクの閉鎖端部237を周回する底縁部222によってその底部で囲まれ、側面226は、開口端部138(図2A)を周回する上縁部224によってその上部で囲まれる。周辺の上縁部224から空洞230内に延びるディスク100の上部の周囲表面225がある。本発明の改善されたディスク100は、カップ空洞230内に、内側側壁表面236から延びる前縁部214aを有する、複数の一体型バッフル210aによって特徴付けられる。
【0034】
側面212aがわずかに又は緩やかに湾曲され、図3Aで示されるアーチ形又は半球の表面形状のようであるということを除いて、バッフル210aは、実質的に多面体の形状である。好ましくは、一対の対向する湾曲した側面212aがあり、図3Aで示されるように、1つは凸状の形状であり、対向する表面は凹部の形状である。図3Aに示される実施形態では、側壁212aがわずかに又は緩やかに湾曲されてアーチ形又は半球の表面形状のようであるということを除いて、バッフル210aは、実質的に多面体の形状であり、より具体的には三角柱のようである。このように、バッフル210a(図2A)は、平坦な又は実質的に平坦な上面211a、及びそこから下方に延びる一対の湾曲した対向する側面212aを有してもよい。(上面211aはまた、それが壁236から空洞230の中心部に向かう方向で横断するように、下向きの傾斜を有してもよい。)バッフル210aは、図3Aで示されるように、好ましくは全て同じ方向で湾曲している側壁212aを有する。図3Aに示される形態では、バッフルの側壁212aは、ディスク回転の方向で全て内側に、すなわち反時計方向で湾曲している。代表的なバッフル210aの垂直深さは、その上面211aからその底面213aまで測定される。図3Aに示されるバッフル210aは、空洞230の全深さを横断する、それらの垂直深さによって特徴付けられる。すなわち、代表的なバッフル210a(図3A)の垂直深さは、空洞230の床面237から上面225まで測定されたとき、空洞130の全深さを横断する。この実施形態の変形では、バッフル210aの底面と空洞230の床面237との間に空間があってもよい。そのような場合、バッフル210aの垂直深さは、空洞230の深さ未満である。しかしながら、そのような実施形態では、バッフル210aの上面211aは、図3Aで示されるように、ディスク100の上部の周囲表面225の高さである、又は少なくともその高さに近い、又は実質的にその高さである。
【0035】
ディスク100の別の代替の実施形態が図3Bに示される。この実施形態では、上述のようなバッフル210aに類似の、複数の代表的なバッフル210bが用いられる。このように、バッフル210bは、実質的に多面体の形状であるが、側面212bはわずかに又は緩やかに湾曲され、図3Bで示されるアーチ形又は半球の表面形状のようである。バッフル210b(図3B)と210a(図3A)との間の主な違いは、バッフル210bが凹んでおり、すなわち、それらはディスク100の上面225から変位されているということである。したがって、バッフル210bの上面211bは、ディスクの上面225の高さではないが、むしろ上面211bはディスクの上面225の下に位置する。バッフル210bの底面213bは、空洞230の床面237に接触してもよく、又は別の方法として、底面213bは床面237から離間されてもよい。バッフル210b(図3B)の形状及び形体は、さもなければバッフル210a(図3A)のものと同じ又は類似(same of similar)であってもよい。図3Bに示される好ましい実施形態では、バッフル210bの上面211bは、平坦又は実質的に平坦であってもよい。あるいは、上面211bは所望により、それが壁236から空洞230の中心部に向かう方向で横断するとき、下方に湾曲又は勾配してもよい。バッフル210bは、図3Bで示されるように、好ましくは全て同じ方向で湾曲している側壁212bを有する。図3Bに示される形体では、バッフルの側壁212bは、ディスク回転の方向で全て内側に、すなわち反時計方向で湾曲している。
【実施例】
【0036】
本発明の回転可能なディスク100(図2、2A若しくは2B)又はディスク100(図3A若しくは3B)は、遠心噴霧方法(図1)に用いられてもよい。図2に示される回転可能なディスク100の実施形態は、カップ空洞50内に突き出る内部バッフルを1つも有さない。図2A及び2B又は図3A及び3Bに示される回転可能なディスク100の実施形態は、カップ空洞を形成する側壁から、ディスク中心部内でカップ形状の空洞内へ突き出る、一体成形された内部バッフルを有する。
【0037】
カップ空洞内に突き出るバッフルを備えるディスク100の望ましい実施形態は、図2A及び2Bに示される。内部バッフルは、図2A及び2Bにそれぞれ示される好ましい形体110a及び110bを有してもよい。カップ空洞内に突き出るバッフルを備えるディスク100の別の望ましい実施形態は、図3A及び3Bに示される。内部バッフルは、図3A及び3Bにそれぞれ示される好ましい形体210a及び210bを有してもよい。上述のように、溶融亜鉛又は溶融亜鉛合金は、ノズル24からカップ形状の空洞50(図2)、又はカップ形状の空洞130(図2A及び2B)、又はカップ形状の空洞230(図3A若しくは3B)内に噴射される。溶融亜鉛が中に噴射されるカップ形状の空洞は、典型的に約7.6〜20.3cm(3〜8インチ)の直径、及び約1.3〜5.1cm(0.5〜2.0インチ)の深さを有してもよい。ディスク100(全実施形態)は、約10,000〜15,000rpm、好ましくは約12,000〜14,000rpm(回転数毎分)の速度で回転されるのが望ましい。このようなディスク及びディスク回転速度は、典型的に約454〜2268kg/時(1000〜5000ポンド/時)の速度で、亜鉛粉末の製造に効果的に用いることができる。この方法から製造された亜鉛粉末35の中央粒径D50は、典型的に約80〜350マイクロメートルであり得る。
【0038】
非限定的な例によって、噴霧チャンバ14は、約1361kg/時(1時間当たり3000ポンド)の速度で、亜鉛粉末の製造に対応するよう設計されてもよい。亜鉛粉末のそのような製造を生じさせるために、ディスク100(図2)は、又はディスク100(図2A若しくは2B)は、又は別の方法としてディスク100(図3A若しくは3B)は、全体の直径、例えば約12.7〜17.8cm(5〜7インチ)を有してもよい。カップ形状の空洞50(図2)又はカップ形状の空洞130(図2A若しくは2B)は、約7.6〜10.2cm(3〜4インチ)の直径、及び約2.5〜5.1cm(1〜2インチ)の深さを有してもよい。十分な動力のモーター22が、ディスク100に約10,000〜15,000rpm(回転数毎分)で回転を可能にするよう選択される。これに関して、チャンバ14の直径は、その一番幅の広い区域で、典型的に約8.5メートル(28フィート)であってもよい。溶融亜鉛は、それがノズル24からの安定した流れとして通過し、回転ディスク100の表面に衝突するとき、約450℃〜550℃、典型的に約500℃の温度であり得る。チャンバの雰囲気15は、残りの窒素と共に、望ましくは約1〜6体積%の酸素、好ましくは約1.5〜5.5体積%、好ましくは約1.5〜4.5体積%の、又は約4.0〜4.5体積%を含んでもよい。チャンバの雰囲気15は、大気圧で及び約23.9℃〜60.0℃(75°F〜140°Fの)、好ましくは約37.8℃〜60.0℃(100°F〜140°F)の温度で、循環冷媒(図示せず)のジャケットの使用を介して、あるいは噴霧ガスを熱交換器に通過させ、冷却されたガスをチャンバ14に戻して再循環させて維持され得る。この方法で製造される亜鉛又は亜鉛合金粉末生成物35は、回収され、チャンバ14から出口シュート30を通って移動されてもよい。亜鉛粉末は、レーザー散乱法で決定されるとき、典型的に約80〜150マイクロメートルの中央粒径D50を有する。
【0039】
約1〜6体積%、好ましくは約1.5〜5.5体積%、例えば約1.5〜4.5体積%の酸素含有量を備える噴霧チャンバ15内で、約10,000〜15,000rpm、好ましくは約12,000〜14,000rpmの速度で回転されるディスク100の実施形態(図2〜3B)は、望ましくは約80〜150マイクロメートルの範囲の中央粒径D50を有する亜鉛粉末を製造することができる。製造される亜鉛粉末は、約14〜510マイクロメートルの亜鉛粒径分布を有することができ、少なくとも一部の亜鉛粒子は、14マイクロメートル以下の粒径を有し、亜鉛粒子の1重量%未満は510マイクロメートル超の粒径を有する。製造される亜鉛粉末は、典型的に約30〜510マイクロメートルの亜鉛粒径分布を有することができ、亜鉛粒子の少なくとも一部は、30マイクロメートル以下の粒径を有し、亜鉛粒子の1重量%未満は510マイクロメートル超の粒径を有する。
【0040】
本発明の方法によって作られた亜鉛粉末を用いるAAアルカリ電池の性能
代表的な図4に示されるように、AAサイズの円筒型アルカリ一次電池(50×14mm)が、粒子状の亜鉛を含むアノードと、粒子状の二酸化マンガンを含むカソードとを用いて調製された。AA電池610は、内側及び外側表面上をニッケルでめっきされている鋼鉄で形成された電池ケーシング620を用いて調製される。ケーシングの内側表面は、導電性材料、例えば炭素でコーティングされてもよい。
【0041】
電池内のカソード612は望ましくは、以下の組成物を有した:
電解二酸化マンガン(80〜90重量%)、グラファイト(3〜10重量%)、及び7〜10規定(Normal)(「約30〜40重量%のKOH濃度のKOH水溶液」)(5〜7重量%)。実験で使用される試験用AA電池及び比較用AA電池は、同等のカソード組成物及びカソード荷重、すなわち、同じ量のカソード材料を電池内に有した。カソードは、上記の範囲内の同一の組成物値で、カソード構成成分のそれぞれと組成物において類似であった。
【0042】
各場合におけるアノード材料615は、亜鉛合金粉末62〜72重量%(99.9重量%のインジウム含有亜鉛)、(32〜36重量%のKOH及び約2重量%のZnO)を含むKOH水溶液;CARBOPOL C940(B.F.Goodrich)架橋アクリル酸ポリマーゲル化剤(0.5〜2重量%)、及びWaterlock A−221(Grain Processing Co.)加水分解ポリアクリロニトリルグラフト化デンプン主鎖(0.01〜0.5重量%;RM−510(Rhodia)ジオニルフェノールホスフェートエーテル(dionyl phenol phosphate ester)界面活性剤(50ppm);インジウムトリクロリド(100〜200ppm)を含む。アノード材料615は添加水銀及び添加鉛を含有しなかった。したがって、アノード内の水銀含有量及び鉛含有量は、水銀約100ppm未満及び鉛約100ppm未満であった。
【0043】
本明細書の実験で使用される試験用AA電池及び比較用AA電池のバッチは、同一のアノード組成物及び荷重、並びに同一の電解質を有した。すなわち、アノードは、上記の範囲内の同一の特定値で、アノードの組成物のそれぞれと組成物において同一であった。しかしながら、電池の試験用バッチ及び電池の比較用バッチのそれぞれにおける亜鉛粒子は、粒径分布において異なり、また物理的特性(形状及表面特徴)がいくらか異なっており、これはアノード内の亜鉛粒子が本発明の遠心噴霧方法の実施において異なるプロセスパラメータを用いて実施されたためである。
【0044】
試験用AA電池及び比較用AA電池のバッチのための亜鉛粒子の調製において、図2に示されるような回転ディスクの形体100が試験の全てにおいて用いられた。図2に示されるように、ディスク100のこの実施形態は、カップ空洞50内に延びるバッフルを1つも有さなかった。ディスク100の形体(図2)はこのように、試験用電池及び比較用AA電池のための亜鉛粒子を作るのに使用された。図2に示されるようなディスクの形体100が、噴霧チャンバ14内の酸素含有量、約1〜6体積%、好ましくは約1.5〜5.5体積%と組み合わせて、本発明によって用いられた高速回転、すなわち約10,000〜14,000rpm、好ましくは12,000〜14,000rpm(回転数毎分)の範囲にわたって、最も安定した結果を出すようであった。図2A〜3Bにおいて示されるように、バッフルをその中に備える代替のディスク設計は、約10,000〜14,000rpm、好ましくは約12,000〜14,000rpmの所望の高いディスク回転速度で動作可能の実施形態となるモデリングに基づいている。これらのディスクの実施形態は、アルカリ電池内のアノード材料としての使用に有効な特性を備える亜鉛粉末を製造することができる。しかしながら、図2に示されるディスク100の設計が望ましく、なぜならばそれは、より単純な設計であり、約10,000〜14,000rpm、好ましくは約12,000〜14,000rpmの高いディスク回転速度を含む、本発明の噴霧方法条件で、改善された放電特性を備える亜鉛生成物の優れた安定性を与えるからである。
【0045】
高いディスク回転速度、好ましくは約12,000〜14,000rpm、及びチャンバの酸素含有量、好ましくは約1.5〜5.5体積%を用いる、本発明の噴霧方法で用いられる図2に示されるようなディスク設計100は特に、より小さな粒径の亜鉛粒子を有する亜鉛粉末生成物を生じ、これはアルカリ電池において改善された放電特性を達成するのを助ける。結果として、アルカリ電池、特にこのような亜鉛生成物を用いるZn/MnOアルカリ電池は、デジタルカメラによって要求される特に高パルスドレインで、より長い耐用年数を呈するようである。本発明の噴霧方法によって製造されるような亜鉛生成物は、約200メッシュサイズ(75マイクロメートル)未満の、好ましくは325メッシュサイズ(45マイクロメートル)未満の亜鉛微粉と更に混合されて、亜鉛粉末の放電特性を向上させることができるということが理解される。(例えば、米国特許第6,284,410(B1)号を参照)。したがって、本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末の性能は、アルカリ電池アノード内で使用するための総亜鉛粒子が、少なくとも10重量%、例えば約10〜50重量%の200メッシュ(75マイクロメートル)以下の亜鉛粒子の粒径を構成するように、このような亜鉛粉末を亜鉛微粉と混合することによって更に向上される。あるいは、アルカリ電池で使用するための総亜鉛粒子が、少なくとも10重量%、例えば約10〜50重量%の325メッシュ(45マイクロメートル)以下の亜鉛粒子の粒径を構成するように、亜鉛微粉は、本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末に添加されてもよい。
【0046】
試験用電池及び比較用電池の基本的な形体を反映するために、代表的なアルカリ電池が図4に示される。アルカリ電池610(AAサイズ)は、閉鎖端部614及び開口端部616を有する、円筒形の鋼鉄のケーシング620を含む。電池は、MnOを含むカソード612、及び亜鉛粒子を含むアノード615、並びに電解質で充填される。電解質は、KOH、ZnO、及びゲル化剤の従来の混合物を含む。カソード612は、一連の圧縮された環状ブロック612aの形体で供給される。アノード及びカソードは、不織布セルロース系の繊維材料に積層されたセロハンを含む、従来型のイオン多孔質セパレータ690によって分離される。電池610を充填した後、絶縁プラグ660を開口端部616に挿入する。絶縁プラグ660は、ポリプロピレン、タルク充填ポリプロピレン、スルホン酸化ポリエチレン又はナイロン製であってよい。試験用電池及び比較用電池で使用された絶縁プラグ660は、本明細書でナイロン製である。プラグ660は、好ましくは、プラグが適所で開口端部616内に係止するように、図4に示すように円周ステップ618の周りにスナップ嵌めされる。ケーシング620の周辺縁部627は、絶縁プラグ660の上部の上に圧着される。紙絶縁ワッシャ680が、ケーシング620の圧着された周辺縁部627に被せて適用される。絶縁ワッシャ680は、ポリエチレン被覆紙ワッシャであってよい。端子エンドキャップ630は、集電体640のヘッドに溶接される。続いて、絶縁プラグ660の開口644に細長い集電体640を挿入(圧力嵌め)し、エンドキャップ630が絶縁ワッシャ680と接する位置で止まるようにする。集電体640は、例えば黄銅、スズめっき黄銅、青銅、銅又はインジウムめっき黄銅など、集電体材として有用なことが知られている既知の様々な導電性金属から選択することができる。試験用電池で及び比較用電池で使用された集電体640はスズめっきされたシリコン青銅(siliconbronze)だった。集電体640を開口644に挿入する前に、従来型のアスファルト封止材を集電体640の周囲に事前配置してもよい。フィルムラベル670は、ケーシング620の周辺で適用することができる。端子エンドキャップ630は、アルカリ電池610の負端子になり、ケーシング520の閉鎖端のピップ625は正端子になる。電池は、従来の方式で、MnOのミリアンペア−時間の容量(MnOグラム当たり370ミリアンペア−時間に基づく)を亜鉛合金のミリアンペア−時間の容量(亜鉛合金グラム当たり822ミリアンペア−時間に基づく)で除した値が約1になるように、全て平衡化された。
【0047】
試験用電池のアノード内の亜鉛が、本発明の特定のプロセスパラメータを用いて、本明細書に記載の噴霧方法によって作られたことを除いては、同一のAAサイズの試験用電池及び比較用電池が、同じアノード及びカソード組成物、同じアルカリKOH電解質、並びに同じ電池構成要素及び電池構造体を備えて上記のように作られた。比較用AA電池で使用された亜鉛は、約140〜900マイクロメートルの亜鉛を有し、約290マイクロメートルの中央粒径D50を備える従来型の亜鉛粉末混合物を有した。試験用電池及び比較用電池のアノードで使用された亜鉛粉末は、同じ量のインジウム、約150ppmと合金化された。試験用電池及び比較用電池内のアノードは添加鉛及び添加水銀を含有しなかった。
【0048】
デジタルカメラ試験プロトコル
未放電のAA試験用電池(本発明の噴霧方法によって作られた亜鉛粉末を含有した)及び比較用AA電池(上記の従来型の電池等級の亜鉛粉末を用いた)がデジカム(Digicam)放電プロトコルに供された。デジカム(デジタルカメラ放電プロトコル)は、従来のデジタルカメラで画像を撮影し、閲覧するのに必要とされる動力を模倣する傾向にある。デジカムプロトコルは、一連のパルス放電サイクルであり、各サイクルは2秒間1.5Wでの放電、続いて28秒間0.65Wでの放電から構成される。これらのサイクルを10回繰り返した後、55分間休止する。次いで、終止電圧1.05に到達するまでこのサイクルを繰り返す。終始電圧に到達するのに必要とされるパルスサイクルの合計数(1.5Wパルスの数に相当する)が、比較用電池のそれぞれ及び試験用電池のそれぞれで記録された。試験された電池のそれぞれに関して、相対的なデジカムの結果が表1に表示される(比較用電池の結果は100と定義される)。
【0049】
表1における試験結果
表1では、AA試験用電池のバッチ(バッチA〜E)のそれぞれで使用された亜鉛粉末の製造となる主要な製造パラメータが表示される。具体的に、噴霧チャンバ15内で用いられた酸素含有率と共に、ディスク100(図2)の高い回転速度が表1で示され、これらは試験用電池のバッチ(A〜E)のそれぞれ用の亜鉛粉末を製造するのに使用された。試験用電池のバッチ(A〜E)用に作製され、使用された、得られる亜鉛粉末の特定の物理特性が表1で示される。これらの特性は、亜鉛粉末の中央粒径D50、並びに亜鉛粉末のD1、D10及びD25粒径を含む。(例えば、60マイクロメートルのD10表記は、試料中に60マイクロメートル未満の亜鉛粒子が10重量%未満あるということを示す。)また、表1には、製造された亜鉛粉末の見掛け密度(嵩密度)、g/cm、及びそれらの平均の、BET比表面積、cm/gが含まれる。
【0050】
興味深いことに、比較用AA電池で使用された従来の電池等級の亜鉛粉末は、約125〜900マイクロメートルの粒径分布を有した。一方、本発明の特定のプロセスパラメータを用いる噴霧方法で製造された亜鉛粉末は、表1に示されるように、約50又は60マイクロメートルから約510マイクロメートルまでの粒径分布を有する亜鉛粉末となった。1パーセント未満の亜鉛粒子が約510マイクロメートル超の粒径を有し、少なくとも一部の粒子は60又は50マイクロメートル以下の粒径を有した。重要なことに、本発明のプロセスパラメータを用いる噴霧方法によって作られた亜鉛生成物のD25値では、生成物中の典型的に約25重量%の亜鉛粒子は100マイクロメートル未満の粒径を有する。表1に示されるD25値の大部分は、約90マイクロメートルの値以下であり、これは本発明の噴霧方法で作製された亜鉛粉末の大部分の25重量%が、約90マイクロメートル未満の粒径を有するということを示す。したがって、比較用AAアルカリ電池で使用された、市販の電池等級の亜鉛粉末と比較して、本発明の噴霧方法により製造された亜鉛粉末中には、より小さな亜鉛粒子がより多く、より大きな亜鉛粒子がより少なく存在する。これは、より良好な高速性能を達成するために、アルカリ電池のアノードにおいて、より大きな割合のより小さな粒径の亜鉛粒子を用いることの価値を強調する。これは本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,284,410(B1)号にも示されているが、本発明のプロセスパラメータを用いる本明細書に記載の噴霧方法は、それによって亜鉛粉末がその中に、望ましい、より小さな粒径の亜鉛粒子を、より大きな割合で製造できる特定の方法を反映する。
【0051】
これは、100マイクロメートル未満の粒径、例えば約30〜100マイクロメートル粒径、の亜鉛粒子(亜鉛微粉)などのより小さな亜鉛粒子をより大きな割合で有する亜鉛粉末が、1つの方法、すなわち本明細書に記載の噴霧方法で作ることができるということを意味する。亜鉛粉末のバッチは、したがって、約90〜135マイクロメートルの中央粒径D50の亜鉛粒径を備える本発明の噴霧方法によって製造することができる。結果として、改善された放電特性を有する亜鉛粉末は、アルカリ電池のアノード内で使用されるとき、他の方法で製造された亜鉛微粉を添加する追加費用を被ることなく製造することができる。いくつかの他の源からの亜鉛微粉(200メッシュ以下、又は325メッシュ以下)の追加が望まれる場合、必要とされるこれらの亜鉛微粉はより少なく、したがってアルカリ電池での使用するための最終的な亜鉛粉末の製造コストを削減する。
【0052】
アルカリ電池に亜鉛粉末を用いる効果を示す表1は以下の通りである(ここで亜鉛粉末は本発明の噴霧方法で作られる):
【表1】

注:
1.試験アルカリ電池A〜Eで使用された亜鉛粉末は、本発明の改善された噴霧方法のみによって作られた。試験用電池A〜Eで使用されたようなこの亜鉛粉末は、1重量パーセント未満の約510マイクロメートル超の粒径を有した亜鉛粒子を含有し、示されるように、亜鉛粒子の少なくとも一部は60マイクロメートル以下、又は50マイクロメートル以下、又は30マイクロメートル以下の粒径を有した。(例えば、試験用電池Aにおける20マイクロメートルのD1表記は、本発明の方法によって作られた亜鉛粒子の1重量パーセント未満が、20マイクロメートル未満の粒径を有したということを示す。)
表1から見ることができるように、チャンバ内の1.5〜5.5体積%の酸素含有量と組み合わせると、ディスク(図2)の回転速度は、約12,000〜13,500rpmのレベルまで上昇されたとき、改善されたアルカリ電池性能をもたらす亜鉛粉末を製造した。上記のチャンバ内の約1.5〜5.5体積%の酸素含有量と組み合わせると、より速いディスクの速度は、約290マイクロメートルの粒径のより大きな中央粒径D50を有した従来の電池等級の亜鉛粉末と比べて、より小さな中央粒径D50の粒径の亜鉛粉末を製造した。本発明の改善された方法からもたらされる第2の亜鉛特性は、より小さな粒径に加えて、それ自体が改善されたアルカリ電池の性能に寄与し得るということである。亜鉛生成物のこのような第2の特性には、例えば粒子の形状分布、平均BET比表面領域(cm/g)、並びに粒子の表面質感及び表面モルホロジーなどの要因を挙げることができる。
【0053】
結論
約12,000〜14,000rpmのより高いレベルのディスク回転速度を、約1.5〜5.5体積%のチャンバ内の酸素と組み合わせて用いる本発明の噴霧方法は、より低値の中央粒径D50の亜鉛粉末となる。このような亜鉛粉末は、約5200rpmの、より低いディスク回転速度で作られた亜鉛粉末を使用する同一の電池と比較して、より良好なアルカリ電池の高速放電性能を生み出した。
【0054】
試験の結果はAAサイズの円筒形アルカリ電池に関してだが、本発明はこの電池サイズに限るということは意図されていないということが理解される。図4に示される電池610は、AA電池又は同様に他のサイズの電池であってもよい。したがって、図4に示されるアルカリ電池は、例示的なものであり、いずれか特定のサイズに限られるということは意図されていない。電池形状は、通常は円筒状であるが、例えば、実質的に平坦な1つ以上の側部を有する、他の形状であってもよい。ゆえに、一例として、電池は、角柱形状又は長方形(直平行六面体)形状を有してよい。円筒状アルカリ電池サイズは、通常、標準AAAA(42×8mm)、AAA(44×10mm)、AA(50×14mm)、C(49×25mm)、及びD(58×32mm)サイズであってよい。本発明の噴霧方法によって製造される亜鉛粉末は、アルカリ電池のアノード、特に亜鉛を含むアノードと、MnOを含むカソードとを有するアルカリ電池、の使用に好適である。本発明の噴霧方法によって製造された亜鉛粉末はまた、他のアルカリ電池、例えば、亜鉛を含むアノードと、オキシ水酸化ニッケルを含むカソードとを有するアルカリ電池、でも効果的に使用することができる。
【0055】
本発明は、特定の実施形態を参照して記載されるが、本発明の要旨から逸脱することなく、他の実施形態も可能であることを理解されたい。したがって、本発明は特定の実施形態に限定することを意図せず、むしろ、その範囲は請求項及びその等価物により反映される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融亜鉛から亜鉛粉末を製造するための遠心噴霧方法であって、
a)実質的に閉鎖されたチャンバ内で、毎分約10,000〜15,000回転の速度で回転するディスクの表面上に、前記溶融亜鉛の流れを噴射する工程であって、前記チャンバが、約1〜6体積%の酸素含有量を有する雰囲気をその中に有し、前記溶融亜鉛の塊が、前記回転ディスクの表面上にフィルムとして形成される、工程と、
b)前記回転ディスクによって生じた遠心力の作用によって、前記回転ディスクから前記溶融亜鉛の前記フィルムを放出し、その後すぐに前記溶融亜鉛の液滴が前記チャンバ内に形成される、工程と、
c)前記溶融亜鉛の前記液滴を前記チャンバ内で冷却することによって、粒子状の亜鉛粉末を形成する工程と、
を含む、遠心噴霧方法。
【請求項2】
前記ディスクがカップ形状の空洞をその中に有し、前記空洞が、開口端部及び対向する閉鎖端部、並びにそれらの間の一体型側壁によって囲まれており、前記ディスクの側壁から延び、かつ前記空洞内へ突き出るバッフルがない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ディスクがカップ形状の空洞をその中に有し、前記空洞が、開口端部及び対向する閉鎖端部、並びにそれらの間の一体型側壁によって囲まれており、前記ディスクの側壁から延び、かつ前記空洞内へ突き出る複数のバッフルがある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ディスクが実質的に円筒形状を有し、前記バッフルが前記ディスクの一体部分である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ディスクの前記一体型側壁が、前記ディスクの内部を向く内側側面、及び外部環境を向く外側側面を有し、前記ディスクの前記内側側面が、前記空洞の前記側壁を形成し、前記ディスクの前記開口端部と前記空洞の前記開口端部が一致する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ディスクが、前記ディスクの内側側面と前記ディスクの外側側面との間の前記ディスクの前記開口端部で上縁部面を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ディスクが毎分約12,000〜14,000回転の速度で回転する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記雰囲気が、約1.5〜5.5体積%の酸素含有量を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融亜鉛が添加水銀及び添加鉛を含有せず、それによってその中の前記水銀含有量及び鉛含有量がそれぞれ、100万重量部の亜鉛当たり約100重量部未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記亜鉛粉末が、毎分約5000回転の、より低いディスク回転速度で得られる亜鉛粉末と比較して、減少された中央粒径D50という性質を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記亜鉛粉末が、約60〜510マイクロメートルの粒径分布を有し、前記亜鉛粒子の少なくとも一部が、60マイクロメートル以下の粒径を有し、前記亜鉛粒子の1重量%未満が510マイクロメートル超の粒径を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記亜鉛粉末が、約30〜510マイクロメートルの粒径分布を有し、前記亜鉛粒子の少なくとも一部が、30マイクロメートル以下の粒径を有し、前記亜鉛粒子の1重量%未満が510マイクロメートル超の粒径を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
200メッシュサイズ以下の十分な亜鉛微粉を前記工程(c)からの前記亜鉛粉末に添加して、200メッシュサイズ以下の亜鉛粒子を約10〜50重量パーセント有する最終亜鉛粉末を製造する工程(d)を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
325メッシュサイズ以下の十分な亜鉛微粉を前記工程(c)からの前記亜鉛粉末に添加して、325メッシュサイズ以下の亜鉛粒子を約10〜50重量パーセント有する最終亜鉛粉末を製造する工程(d)を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
亜鉛粒子を含むアノードと、二酸化マンガンを含むカソードと、水酸化カリウム水溶液を含む電解質と、を含む電気化学電池であって、前記アノード中の前記亜鉛粒子の少なくとも一部が、請求項1に記載の方法によって作られる、電気化学電池。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−522112(P2011−522112A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506358(P2011−506358)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040463
【国際公開番号】WO2009/131872
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】