説明

位相制御方法及び位相制御発振装置、送信用アレーアンテナ

【課題】 マイクロ波帯域用の移相器を用いることなく、VCOの出力するマイクロ波帯域の出力信号の位相を制御すること。
【解決手段】 VCO10の出力信号FOUTの位相を制御するために、第1基準信号FRef1を用いて出力信号FOUTをダウンコンバートし、調整対象信号SCOを生成する一方、調整対象信号SCOと同一周波数を有する第2基準信号FRef2を所望とする移相量を示す移相信号SPSに従って移相して第3基準信号FRef3を生成し、調整対象信号SPSの位相と第3基準信号FRef3の位相を一致させるようにしてVCO10を制御するPLLを形成する。これにより、出力信号FOUTよりも低い周波数の信号の位相制御をもって出力信号FOUTの位相制御を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移相器を用いて位相制御可能なPLL(Phase-Locked Loop)−VCO(Voltage-Controlled Oscillator:電圧制御発振器)装置、すなわち位相制御発振装置、ならびに送信用アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マイクロ波帯域の無線通信に用いられる送信用アレーアンテナの指向性パターンを適切なものとするためには、アレーアンテナを構成するすべてのアンテナの信号源の位相を個別に且つ正確に制御する必要がある。
【0003】
従来、上記の制御のため、直接的な信号源としてはマイクロ波帯域の出力信号を生成するVCOを含むPLL回路に対して、出力信号と同一周波数を有する基準信号をアンテナ毎に所望とする移相量だけ移相して得られる信号をアンテナ別基準信号として入力し、そのアンテナ別基準信号と出力信号の位相を一致させるようにして、出力信号の位相制御を行っていた。
【0004】
すなわち、従来、基準信号からアンテナ別基準信号を生成するために用いられていた移相器はマイクロ波帯域用のものであり、且つ、PLL回路もマイクロ波帯域ベースのものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロ波帯域用の移相器は取り扱いが不便であるなど、使用上種々の問題があった。マイクロ波帯域用の移相器には、導波管タイプのものと電子回路タイプのものがある。このうち、導波管タイプの移相器は、重量・寸法が嵩むという問題を有し、また、制御速度や位相可変範囲などの点で電子回路タイプの移相器に劣る。一方、電子回路タイプの移相器の場合も、対象周波数が高すぎることから、温度変化の影響を受けやすく安定した温度特性下で動作させることが困難であり、また、制御電圧と位相変化量との関係がリニアでないことから取り扱いが不便であるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題を生じさせることなく、マイクロ波のような高い周波数の信号の位相制御を行うことのできる位相制御方法及びそれに用いることの可能な位相制御発振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器における前記出力信号の位相を制御する位相制御方法を提供する。この方法は、前記所定周波数と異なる第1周波数であって前記所定周波数と前記第1周波数との差が前記所定周波数よりも小さくなるようにして選定された前記第1周波数を有する第1基準信号を用いて前記出力信号をダウンコンバートし、前記所定周波数及び前記第1周波数より小さい第2周波数を有する調整対象信号を生成する一方、前記第2周波数と同一周波数を有する第2基準信号を所望とする移相量に従って移相して第3基準信号を生成し、前記調整対象信号と前記第3基準信号の位相を一致させるようにして前記電圧制御発振器を制御するPLLを形成することにより、前記所定周波数よりも相対的に低い第2周波数の位相制御をもって前記出力信号の位相制御を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明は、また、所定周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、前記出力信号と前記所定周波数とは異なる第1周波数の第1基準信号を受け取って、前記所定周波数と前記第1周波数との差の整数分の1(1/1を含む)の周波数である第2周波数の調整対象信号を生成する調整対象信号生成手段と、移相量をDC電圧で示す移相信号に従って、前記第2周波数と同一周波数の第2基準信号の位相をシフトさせ、第3基準信号を生成する移相器と、前記調整対象信号と前記第3基準信号とを比較して当該比較結果に応じた誤差調整信号を生成し、当該誤差調整信号を前記電圧制御発振器に入力することにより、前記出力信号の制御を行う誤差調整手段とを備えた位相制御発振装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の位相制御方法によれば、例えば、マイクロ波よりも遥かに低い周波数の信号(第2基準信号)を直接的な移相対象とし、その結果をマイクロ波帯域の出力信号の位相制御に反映させるといったことが可能となる。従って、マイクロ波帯域の信号を直接的な移相対象とした場合に問題となっていた温度依存性は問題とならない。
【0010】
また、直接的な移相対象の周波数と出力信号の周波数との差がある程度大きければ、低い周波数の信号の線形性の良い部分(例えば、正弦波の0±π付近の部分)を出力信号の一周期分又はそれ以上に対応させることができる。この場合、低い周波数の信号の移相用の信号と、その移相結果に応じて制御される出力信号の位相とはリニアに対応することとなる。従って、位相制御が容易となり、正確なビームパターンを形成することが可能となる。
【0011】
本発明の位相制御発振装置によれば、第1周波数及び第2周波数を適切に設定することにより、上述した本発明の位相制御方法における効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。
本実施の形態は、複数のアンテナと、各アンテナの信号源としての複数の位相制御発振装置と、各位相制御発振装置の動作を制御する制御部とを備えた送信用アレーアンテナに関するものである。位相制御発振装置の詳細については、以下、図面を参照して説明する。これらの位相制御発振装置は、互いに同一構成を有し、概略、制御部(図示せず)から配信される第1基準信号及び第2基準信号並びに移相信号に応じて出力信号の位相制御を可能とするものである。このうち、第1基準信号は位相制御発振装置の出力信号の周波数(「所定周波数」とする)に近い周波数(但し、所定周波数とは異なる)である第1周波数の信号であり、第2基準信号は所定周波数や第1周波数よりも遥かに低い周波数である第2周波数の信号である。
【0013】
すなわち、第1周波数及び第2周波数は、所定周波数と第1周波数との差が所定周波数と第2周波数との差よりも遥かに小さくなるようにして選定されている。詳しくは、本実施の形態における第2周波数は、所定周波数と第1周波数との差をN分の1(Nは2以上の整数)に分周して得られる周波数である。但し、本発明はこれに制限されるものではなく、第2周波数は例えば所定周波数と第1周波数との差の周波数であっても良い。また、移相信号は第2基準信号を移相する際における移相量をDC電圧で示してなる信号である。
【0014】
本実施の形態による位相制御発振装置は、図1に示されるように、電圧制御発振器(VCO)10、方向性結合器20、調整対象信号生成部30、移相器40、及び誤差調整部50を備えている。
【0015】
電圧制御発振器(VCO)10は、所定周波数の出力信号FOUTを生成するものである。この電圧制御発振器(VCO)10は電力増幅器を含むようにして構成されていても良い。方向性結合器20は、出力信号FOUTをアンテナに送ると共に調整対象信号生成部30に送出するものである。調整対象信号生成部30は、出力信号FOUTと第1基準信号FRef1を受け取って、第2周波数を有する調整対象信号SCOを生成するものである。移相器40は、移相信号SPSに従って、第2基準信号FRef2の位相をシフトさせ、第3基準信号FRef3を生成するものである。誤差調整部50は、調整対象信号SCOと第3基準信号FRef3を比較して、その比較結果に応じた誤差調整信号SCTLを生成し、誤差調整信号SCTLを電圧制御発振器(VCO)10に入力することにより、出力信号FOUTの制御を行うものである。
【0016】
このような構成を備える位相制御発振装置においては、第2周波数が所定周波数と第1周波数との差をN分の1(Nは2以上の整数)に分周して得られる周波数としたことから、第3基準信号FRef3に加えられた移相量をφとした場合、制御される出力信号FOUTの位相変化はφ*Nとなる。すなわち、FOUTの位相を2π変化させるためには第3基準信号FRef3の移相量を2π/Nとすればよい。
【0017】
調整対象信号生成部30は、図2に示されるように、周波数変換器31とN分周器(1/N)33を備えている。周波数変換器31は、例えばミキサからなり、出力信号FOUTと第1基準信号FRef1を受け取って、所定周波数と第1周波数との差の周波数を有する中間周波数信号±(FOUT−FRef1)を生成するものである。N分周器(1/N)は、中間周波数信号±(FOUT−FRef1)を1/N(Nは2以上の整数)に分周して調整対象信号SCOを生成するものである。
【0018】
誤差調整部50は図3に示されるように、位相−周波数比較器(Phase-Frequency Comparator)51と、積分増幅器53とを備えている。位相−周波数比較器(Phase-Frequency Comparator)51は、調整対象信号SCOと第3基準信号FRef3との位相比較を行って位相差信号SPDを生成するものである。なお、位相−周波数比較器51は、位相のみならず周波数が異なる場合には周波数比較器としても動作するものであるが、条件によっては通常の位相比較器を用いることもできる。積分増幅器53は、位相差信号SPDを積分して誤差調整信号SCTLを生成し、誤差調整信号SCTLを電圧制御発振器(VCO)10に出力するものである。
【0019】
移相器40は、図4に示されるように、移相器用電圧制御発振器(移相器用VCO)41、移相器用位相比較器43及び移相器用調整器45を備えている。移相器用電圧制御発振器(移相器用VCO)41は、第3基準信号FRef3を生成するものである。移相器用位相比較器43は、第3基準信号FRef3の位相と第2基準信号FRef2の位相とを比較して、位相差に応じたDC電圧を有する移相器内位相差信号SPSPDを生成するものである。移相器用調整器45は、移相器内位相差信号SPSPDと移相信号SPSを比較して、それらの差分に応じた調整信号SPSCOを生成し、調整信号SPSCOを移相器用電圧制御発振器(移相器用VCO)41に入力することにより、第3基準信号FRef3の制御を行うものである。具体的には、本実施の形態における移相器用調整器45は、移相信号SPSを正相入力に入力されると共に移相器内位相差信号SPSPDを逆相入力に入力された積分増幅器を備えており、移相器内位相差信号SPSPDと移相信号SPSの差の電圧を積分して積分結果を調整信号SPSCOとして出力する。
【0020】
詳しくは、移相器用位相比較器43は、図5に示されるように、第1二値化器411、第2二値化器412、エッジ位相比較器413及び移相器内位相差信号生成器414を備えている。第1二値化器411は、第2基準信号FRef2から第1二値化信号SB1を生成する。この第1二値化信号SB1は、第2基準信号FRef2を第2基準信号FRef2の平均値と比較し、その平均値に対する第2基準信号FRef2の大小に応じた二値信号である。第2二値化器412は、第3基準信号FRef3から第2二値化信号SB2を生成する。この第2二値化信号SB2は、第3基準信号FRef3を第3基準信号FRef3の平均値と比較し、その平均値に対する第3基準信号FRef3の大小に応じた二値信号である。エッジ位相比較器413は、第1二値化信号SB1と第2二値化信号SB2とを受け取って、エッジ位相比較結果信号SPSRを生成する。エッジ位相比較結果信号SPSRは、第2二値化信号SB2の立ち上がりエッジに応じて立ち上がり且つ第1二値化信号SB1の立ち上がりエッジに応じて立ち下がる信号である。移相器内位相差信号生成器414は、エッジ位相比較結果信号SPSRを受け取って、エッジ位相比較結果信号SPSRのハイレベルを示している時間に比例したDC電圧を有する移相器内位相差信号SPSPDを生成する。
【0021】
図5を参照すると、本実施の形態におけるエッジ位相比較器413は、第1乃至第4の2入力NAND回路413a〜413dを備えている。第1のNAND回路413aの一方の入力端子は第1二値化器411に接続されており、第1二値化信号SB1を入力される。第2のNAND回路413bの一方の入力端子は第2二値化器412に接続されており、第2二値化信号SB2を入力される。第1のNAND回路413aの出力端子は、第3のNAND回路413cの一方の入力端子に接続されており、第2のNAND回路413bの出力端子は、第4のNAND回路413dの一方の入力端子に接続されている。第3のNAND回路413cの出力端子は、第2の他方の入力端子413bと第4のNAND回路413dの他方の入力端子とに共通に接続されており、第4のNAND回路413dの出力端子は、第1のNAND回路413aの他方の入力端子と第3のNAND回路413cの他方の入力端子とに共通に接続されている。このようにして構成されたエッジ位相比較器413においては、第4のNAND回路413dの出力が、エッジ位相比較器413の出力、すなわち、エッジ位相比較結果信号SPSRとなる。
【0022】
エッジ位相比較器413の構成を上記のようにしたことにより、位相比較ができない期間はゲートICの信号伝達時間のみとなり、実用上問題を生じない。例えば、2つのNAND回路(図5における413c及び413d)のみを用いてフリップフロップを構成し、それをもって位相比較を行った場合と比較すると、正確な位相比較を行うことができ、また、フリップフロップの入力段にCR時定数を利用したエッジ取出し手段を設けた場合と比較すると、正確な位相比較を行うことのできない時間を極力減らすことができる。
【0023】
本実施の形態における移相器内位相差信号生成器414は、図6に示されるように、第1パルス信号生成器414a、第2パルス信号生成器414b、反転増幅器414c、積分回路414d及びサンプルホールド回路(S/H)414eを備えている。
【0024】
第1パルス信号生成器414aは、エッジ位相比較結果信号SPSRの立ち下がりエッジに応じて立ち上がり、所定期間経過の後、自動的に立ち下がる第1パルス信号SP1を生成する。
【0025】
第2パルス信号生成器414bは、第1パルス信号SP1の立ち下がりエッジに応じて立ち上がり、エッジ位相比較結果信号SPSRの立ち上がりエッジに応じて立ち下がる第2パルス信号SP2を生成する。
【0026】
反転増幅器414cは、抵抗R1及び抵抗R2とオペアンプに加えて、抵抗R2に対して並列に挿入されたツェナーダイオードZDを更に備えたものであり、出力電圧が所定の負電圧以下にならないようにして構成されている。この反転増幅器414cは、エッジ位相比較結果信号SPSRを受け取って、反転増幅信号SA1を生成する。
【0027】
積分回路414dは、抵抗R3及び容量Cとオペアンプに加えて、容量Cに並列に挿入されたスイッチSWを更に備えたものである。スイッチSWは、第2パルス信号生成器414bの出力する第2パルス信号SP2に応じてオン・オフするものである。この積分回路414dは、反転増幅信号SA1を受け取って、第2パルス信号SP2がローレベルを示している間はスイッチSWをオフにすることにより容量Cにて反転増幅信号SA1を積分する一方、第2パルス信号SP2がハイレベルを示している間はスイッチSWをオンとして積分処理をリセットすることにより、積分結果信号SA2を生成する。例えばLPFを採用した場合にはパルス幅変化への応答が悪くならざるを得ないが、上記のような構成を採用したことにより、本実施の形態においては、図7に示されるように、積分結果信号SAの値であるV1やV2は、それぞれ、直前のエッジ位相比較結果信号SPSRがハイレベルである期間T1やT2に比例しており、その応答も速くなっている。
【0028】
サンプルホールド回路(S/H)414eは、積分結果信号SA2を受け取って、第1パルス信号SP1がハイレベルを示しているときに積分結果信号SA2をサンプルする一方、第1パルス信号SP1がローレベルを示しているときにはサンプルの結果をホールドすることにより、移相器内位相差信号SPSPDを生成する。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態による位相制御発振装置においては、第1周波数を有する第1基準信号FRef1を用いて出力信号FOUTをダウンコンバートして第2周波数を有する調整対象信号SCOを生成する一方、第2周波数と同一周波数を有する第2基準信号FRef2を移相信号SPSに従って移相して第3基準信号FRef3を生成し、調整対象信号SCOと第3基準信号FRef3の位相を一致させるようにして電圧制御発振器(VCO)10を制御するPLLを形成することにより、所定周波数よりも相対的に低い第2周波数を有する第2基準信号FRef2の位相制御をもって出力信号FOUTの位相制御を行うことができる。この際、第2周波数を適切に選択すれば、第2基準信号FRef2の線形性の良い部分のみを利用して出力信号FOUTの位相制御を行うことができる。すなわち、移相信号SPSによる移相量と出力信号FOUTの位相とをリニアに対応させることができ、位相制御を容易に行うことができる。
【0030】
また、本実施の形態による送信用アレーアンテナにおける制御部は、位相制御発振装置に対して共通の第1基準信号FRef1及び前記第2基準信号FRef2を出力する一方、各位相制御発振装置に対して固有の移相量を示す移相信号SPSを出力する。これにより、各位相制御発振器の位相制御を個別に行うことができる。
【0031】
なお、上述した実施の形態においては、移相信号SPSをアナログ信号として説明してきたが、例えば、制御部から所望とする移相量を示すデジタル信号を出力させる一方、各位相制御発振装置の内部又は各位相制御発振装置の移相器40の近傍にD/A変換器を更に設けることとして、そのD/A変換器で制御部から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を移相信号SPSとすることとしても良い。このような構成とすれば、発振器間の電圧差異による誤差混入を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による送信用アレーアンテナは、例えば、ある地点で発電した電力を他の地点に無線伝送する無線電力伝送技術、特にマイクロ波送電技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態による位相制御発振装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示される調整対象信号生成部の構成を示すブロック図。
【図3】図1に示される誤差調整部の構成を示すブロック図。
【図4】図1に示される移相器の構成を示すブロック図。
【図5】図4に示される移相器用位相比較器の構成を示すブロック図。
【図6】図5に示される移相器内位相差信号生成器の構成を示すブロック図。
【図7】図6に示される移相器内位相差信号生成器の動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0034】
10 電圧制御発振器(VCO)
20 方向性結合器
30 調整対象信号生成部
31 周波数変換器
33 N分周器
40 移相器
41 移相器用電圧制御発振器(移相器用VCO)
411 第1二値化器
412 第2二値化器
413 エッジ位相比較器
413a〜413d NAND回路
414 移相器内位相差信号生成器
414a 第1パルス信号生成器
414b 第2パルス信号生成器
414c 反転増幅器
414d 積分回路
414e サンプルホールド回路(S/H)
43 移相器用位相比較器
45 移相器用調整器
50 誤差調整部
51 位相−周波数比較器
53 積分増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器における前記出力信号の位相を制御する位相制御方法であって、
前記所定周波数と異なる第1周波数であって前記所定周波数と前記第1周波数との差が前記所定周波数よりも小さくなるようにして選定された前記第1周波数を有する第1基準信号を用いて前記出力信号をダウンコンバートし、前記所定周波数及び前記第1周波数より小さい第2周波数を有する調整対象信号を生成する一方、前記第2周波数と同一周波数を有する第2基準信号を所望とする移相量に従って移相して第3基準信号を生成し、前記調整対象信号と前記第3基準信号の位相を一致させるようにして前記電圧制御発振器を制御するPLLを形成することにより、前記所定周波数よりも相対的に低い第2周波数の位相制御をもって前記出力信号の位相制御を行うことを特徴とする、
位相制御方法。
【請求項2】
所定周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、
前記出力信号と前記所定周波数とは異なる第1周波数の第1基準信号を受け取って、前記所定周波数と前記第1周波数との差の整数分の1(1/1を含む)の周波数である第2周波数の調整対象信号を生成する調整対象信号生成手段と、
移相量をDC電圧で示す移相信号に従って、前記第2周波数と同一周波数の第2基準信号の位相をシフトさせ、第3基準信号を生成する移相器と、
前記調整対象信号と前記第3基準信号とを比較して当該比較結果に応じた誤差調整信号を生成し、当該誤差調整信号を前記電圧制御発振器に入力することにより、前記出力信号の制御を行う誤差調整手段と
を備えることを特徴とする位相制御発振装置。
【請求項3】
前記調整対象信号生成手段は、
前記出力信号と前記第1基準信号を受け取って、前記所定周波数と前記第1周波数との差の周波数を有する中間周波数信号を生成する周波数変換器と、
前記中間周波数信号を1/N(Nは2以上の整数)に分周して前記調整対象信号を生成するN分周器とを備えることを特徴とする、
請求項2記載の位相制御発振装置。
【請求項4】
前記移相器は、
前記第3基準信号を生成する移相器用電圧制御発振器と、
前記第3基準信号の位相と前記第2基準信号の位相とを比較して、位相差に応じたDC電圧を有する移相器内位相差信号を生成する移相器用位相比較器と、
該移相器内位相差信号と前記移相信号を比較して、それらの差分に応じた調整信号を生成し、当該調整信号を前記移相器用電圧制御発振器に入力することにより、前記第3基準信号の制御を行う移相器用調整手段とを備えることを特徴とする、
請求項2又は3記載の位相制御発振装置。
【請求項5】
前記移相器用位相比較器は、
前記第2基準信号を当該第2基準信号の平均値と比較し、当該平均値に対する前記第2基準信号の大小に応じた二値信号である第1二値化信号を生成する第1二値化器と、
前記第3基準信号を当該第3基準信号の平均値と比較し、当該平均値に対する前記第3基準信号の大小に応じた二値信号である第2二値化信号を生成する第2二値化器と、
前記第1二値化信号と前記第2二値化信号とを受け取って、前記第2二値化信号の立ち上がりエッジに応じて立ち上がり且つ前記第1二値化信号の立ち上がりエッジに応じて立ち下がるエッジ位相比較結果信号を生成するエッジ位相比較器と、
エッジ位相比較結果信号を受け取って、当該エッジ位相比較結果信号のハイレベルを示している時間に比例したDC電圧を有する前記移相器内位相差信号を生成する移相器内位相差信号生成器とを備えることを特徴とする、
請求項4記載の位相制御発振装置。
【請求項6】
前記エッジ位相比較器は、第1乃至第4の2入力NAND回路を備えており、
前記第1のNAND回路の一方の入力端子には前記第1二値化信号が入力され、
前記第2のNAND回路の一方の入力端子には前記第2二値化信号が入力され、
前記第1のNAND回路の出力端子は、前記第3のNAND回路の一方の入力端子に接続され、
前記第2のNAND回路の出力端子は、前記第4のNAND回路の一方の入力端子に接続され、
前記第3のNAND回路の出力端子は、前記第2のNAND回路の他方の入力端子と前記第4のNAND回路の他方の入力端子とに共通に接続され、
前記第4のNAND回路の出力端子は、前記第1のNAND回路の他方の入力端子と前記第3のNAND回路の他方の入力端子とに共通に接続され、
前記第4のNAND回路の出力端子からは、前記エッジ位相比較結果信号が出力されることを特徴とする、請求項5記載の位相制御発振装置。
【請求項7】
前記移相器内位相差信号生成器は、
前記エッジ位相比較結果信号の立ち下がりエッジに応じて立ち上がり、所定期間経過の後、自動的に立ち下がる第1パルス信号を生成する第1パルス信号生成器と、
該第1パルス信号の立ち下がりエッジに応じて立ち上がり、前記エッジ位相比較結果信号の立ち上がりエッジに応じて立ち下がる第2パルス信号を生成する第2パルス信号生成器と、
帰還路の抵抗に対してツェナーダイオードを並列に挿入され、出力電圧が所定の負電圧以下にならないようにして構成された反転増幅器であって、前記エッジ位相比較結果信号を受け取って反転増幅信号を生成する反転増幅器と、
前記第2パルス信号に応じてオン・オフするスイッチを帰還路の容量に対して並列に挿入されて構成された積分回路であって、前記反転増幅信号を受け取って、前記第2パルス信号がローレベルを示している間は前記容量にて前記反転増幅信号を積分する一方、前記第2パルス信号がハイレベルを示している間は当該積分処理をリセットすることにより、積分結果信号を生成する積分回路と、
前記積分結果信号を受け取って、前記第1パルス信号がハイレベルを示しているときに前記積分結果信号をサンプルする一方、前記第1パルス信号がローレベルを示しているときには前記サンプルの結果をホールドすることにより、前記移相器内位相差信号を生成するサンプルホールド回路とを備えていることを特徴とする、
請求項5又は6記載の位相制御発振装置。
【請求項8】
前記移相器用調整手段は、前記移相器内位相差信号と前記移相信号の差異を積分する積分増幅器を備えていることを特徴とする、
請求項4乃至7のいずれかに記載の位相制御発振装置。
【請求項9】
前記誤差調整手段は、
前記調整対象信号と前記第3基準信号との位相比較を行って位相差信号を生成する位相比較器と、
該位相差信号を積分して前記誤差調整信号を生成し、前記電圧制御発振器に出力する積分増幅器とを備えていることを特徴とする、
請求項2乃至8のいずれかに記載の位相制御発振装置。
【請求項10】
前記位相比較器は、位相のみならず周波数が異なる場合には周波数比較器としても動作する位相−周波数比較器であることを特徴とする、
請求項9記載の位相制御発振装置。
【請求項11】
請求項2乃至10のいずれかに記載された複数の位相制御発振装置と、
該複数の位相制御発振装置の夫々に接続された複数のアンテナと、
前記位相制御発振装置に対して前記第1基準信号及び前記第2基準信号並びに前記移相信号を出力し、前記出力信号の位相を制御する制御部とを備えた
送信用アレーアンテナ。
【請求項12】
前記制御部は、すべての前記位相制御発振装置に対して共通の前記第1基準信号及び前記第2基準信号を出力する一方、前記位相制御発振装置の夫々に対して固有の前記移相量を示す前記移相信号を出力するものであることを特徴とする、
請求項11記載の送信用アレーアンテナ。
【請求項13】
前記位相制御発振装置の夫々の内部又は近傍にD/A変換器を更に備えており、
前記制御部は、前記位相制御発振装置の夫々に対して前記移相量を示す前記移相信号を直接出力することに代えて、前記移相量に対応するデジタル信号を出力するものであり、
前記D/A変換器の夫々は、前記デジタル信号を受け取って、D/A変換し、対応する前記位相制御発振装置の前記移相器に対して前記移相信号としてのアナログ信号を出力するものであることを特徴とする、
請求項11又は12記載の送信用アレーアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−27942(P2007−27942A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204129(P2005−204129)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【出願人】(500302552)株式会社アイ・エイチ・アイ・エアロスペース (298)
【Fターム(参考)】