位相制御装置、バッテリ充電装置、及び位相制御方法
【課題】3相交流発電機のいずれの相にも磁石位置検出機器やサブコイルを設けることなく、交流発電機の三相の交流出力に同期した各相同期信号を生成して進角/遅角制御を行う。
【解決手段】基準信号生成回路7は、三交流発電機1のロータ4の回転により発生するロータ4aの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、交流出力電圧の周期と同じ周期の基準三角波Ptrg1,2を生成し、基準三角波Ptrg1,2の半周期に含まれる交流発電機1の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、基準三角波Ptrg1,2と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
【解決手段】基準信号生成回路7は、三交流発電機1のロータ4の回転により発生するロータ4aの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、交流出力電圧の周期と同じ周期の基準三角波Ptrg1,2を生成し、基準三角波Ptrg1,2の半周期に含まれる交流発電機1の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、基準三角波Ptrg1,2と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御装置、バッテリ充電装置、及び位相制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車等に用いられるバッテリ充電装置は、エンジン側から回転駆動される三相交流発電機(以下、単に「交流発電機」ともいう)が出力する三相交流出力電圧を、順変換(交流/直流変換)して直流出力電圧とし、この直流出力電圧によりバッテリに充電電流を流す。この場合、バッテリ充電を効率良く行うために、交流発電機の発電量を制御するため、順変換を行う整流回路における通電タイミングの進角/遅角制御が行われている。
【0003】
進角/遅角制御は、交流発電機の交流出力電圧の位相に対して、バッテリ充電装置内の整流部を構成するスイッチング素子の通電タイミングを進角側、又は遅角側に移動させることにより、交流発電機の発電量を制御するものである。この進角/遅角制御では、バッテリの電圧が基準電圧よりも低くバッテリ充電を必要とする場合、バッテリ充電装置を遅角制御(バッテリ充電状態)し、バッテリの電圧が基準電圧よりも高く充電を必要としない場合、バッテリ充電装置を進角制御(バッテリから交流発電機へエネルギーを放電する状態)とする。
【0004】
この進角/遅角制御において、従来の三相交流磁石式の三相交流発電機と組み合わせるバッテリ充電装置では、進角/遅角制御に必要な各相の出力電圧の位相検出を、磁界を電流に変換する素子(ホール素子等)又は各相巻線と並列に巻かれたサブコイル(交流出力電圧検出用の補助巻線)からの信号を用いて行い、スイッチング素子(Field Effect TransistorもしくはSilicon Controlled Rectifier)の通電タイミングの制御を行っていた。そのため各相に各々磁石位置検出機器(ロータの磁界の検出器)を設けるか、又はサブコイルを設ける必要があった。
例えば、特許文献1においては、交流発電機のU相にサブコイルを設け、U,V,W相電圧検出回路によりU相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成し、この同期信号を基準にして、制御回路により、スイッチング素子(FET)Q1〜Q6の通電タイミングを制御することにより、進角/遅角制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO2007/114272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、進角/遅角制御を行うために、交流発電機のいずれかの相にサブコイルを設けるか、或いは磁石位置検出機器を設ける必要があるため、交流発電機は大型かつ複雑になり、結果として高価になっていた。また、ホール素子等の磁石位置検出機器を設ける場合、制御回路の電源とは別に電源供給回路が必要となり、また電源供給回路を制御する回路も必要となり、更に大型化、複雑化することになる。また、位相制御を行わないバッテリ充電装置を、位相制御を行う構成を有するバッテリ充電装置に変更する場合、ホール素子等の磁石位置検出機器を後から取り付けることとなるため、大幅な改良が必要となり交流発電機の大型化、複雑化を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みなされたもので、その目的は、交流発電機に接続され、交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進角/遅角制御を行う位相制御装置において、サブコイル或いは磁石位置検出機器を設けることなく、U相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成する位相制御装置を提供することにある。また、本発明の目的は、位相制御装置で三相交流発電機の進角/遅角制御を行う場合に、交流発電機の構造を簡単化、かつ小型化し、コストの低減を図ることができる、位相制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明は、U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置であって、前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記基準信号生成手段によって生成されたタイミング信号と基準信号とに基づいて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手段と、前記進角/遅角算出手段により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手段と、を備えることを特徴とする位相制御装置である。
【0009】
(2)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の半周期に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、前記半周期の間に検出された前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定めることを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の半周期と同じ時間幅の三角波を、該タイミング信号の立ち上がり立ち下がりに同期させて生成し、前記生成した三角波の時間幅に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定めることを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の周期が示す変化点から、予め定められる所定の範囲の位相幅において、前記各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定めることを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明は、上記発明において、前記進角/遅角算出手段は、前記整流部によって清流された出力電圧と所定の目標電圧との差分電圧の信号と、前記基準信号生成手段によって生成された基準信号に基づいて前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求めることを特徴とする。
【0013】
(6)また、本発明は、上記発明において、前記タイミング信号は、第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示すことを特徴とする。
【0014】
(7)また、本発明は、上記発明において、前記タイミング信号と、前記基準信号とに基づいて、前記U,V,W相からなる三相の同期信号を生成するU,V,W相電圧生成手段と、を備え、前記基準信号生成手段は、前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した三角波の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した基準信号を生成し、前記進角/遅角算出手段は、前記整流部の直流電力側の出力電圧と所定の目標との差分電圧の信号と、前記U,V,W相電圧生成手段により出力される各相の同期信号とに基づき、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求めることを特徴とする。
【0015】
(8)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記基準交流電圧と同期した第1のパルス信号を生成する基準方形波生成回路と、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同期した第2のパルス信号を生成する相コイル電圧生成回路と、前記第1のパルス信号に同期した前記同期信号を生成するタイミング信号生成回路と、前記タイミング信号として、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同一周期の複数の三角波を発生する基準三角波生成回路と、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出回路と、前記検出されたゼロクロス点に応じた前記複数の三角波の電圧値を、前記複数の三角波各々に対して読み取るゼロクロス点読み取り回路と、前記三相交流発電機の稼動開始時に、前記ゼロクロス点読み取り回路が読み取った電圧の内から、予め定められた判定基準により選択された前記ゼロクロス点に応じた前記三角波の電圧値を記憶するゼロクロス点記憶回路と、を備え、前記記憶した三角波の電圧値を前記基準信号とすることを特徴とする。
【0016】
(9)また、本発明は、上記発明において、前記進角/遅角算出手段は、前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成する同期三角波発生回路と、前記バッテリの電圧と所定の目標電圧とを比較し誤差信号を出力する誤差アンプと、前記同期三角波発生回路から出力される三角波と誤差アンプの出力とを比較することにより進角/遅角量を求める比較回路と、を備え、前記同期三角波発生回路は、前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成して前記比較回路に出力するとともに、生成したU,V,W各相に対応する三角波(それぞれ第2U相三角波、第2V相三角波、第2W相三角波とする)を、180°位相シフトさせた第1U相三角波、第1V相三角波、第1W相三角波をそれぞれ生成して前記比較回路に出力し、前記比較回路は、前記進角/遅角量を求める場合、前記U相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される前記第1U相三角波及び前記第2U相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、前記V相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1V相三角波及び前記第2V相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、前記W相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1W相三角波及び前記第2W相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求める、ことを特徴とする。
【0017】
(10)また、本発明は、上記発明において、前記比較回路は、前記第1U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、前記第1V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、前記第1W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求める、ことを特徴とする。
【0018】
(11)また、本発明は、上記いずれかの発明に記載の位相制御装置と、前記位相制御装置により通電タイミングを制御される整流部と、を備え、前記整流部の直流電力側の出力電圧に接続されたバッテリを充電することを特徴とするバッテリ充電装置である。
【0019】
(12)また、本発明は、U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置における位相制御方法であって、前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記基準交流電圧に同期し、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差を調整する基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手順と、前記基準信号生成手順によって生成された基準信号を前記交流出力電圧との位相差を調整する制御目標として用いて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手順と、前記進角/遅角算出手順により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手順と、を含むことを特徴とする位相制御方法である。
【発明の効果】
【0020】
この本発明によれば、基準信号発生手段は、三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成する。そして、基準信号発生手段は、そのタイミング信号の半周期に含まれる三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、タイミング信号と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
これにより、サブコイル或いは磁石位置検出機器を設けず、U相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成する位相制御装置を提供することができ、位相制御装置を備えたバッテリ充電装置等において、装置を簡単化、かつ小型化できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における位相制御装置を用いたバッテリ充電装置の基本構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における図1に示す基準信号生成回路及び三相同期方形波生成回路の基本構成例を示す回路図である。
【図3】本実施形態における図2に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【図4】本実施形態における図1に示された発電機のU相の交流電圧波形に同期した矩形波を示す波形図である。
【図5】本発明の実施例において、三角波を生成するメカニズムについて説明するための図である。
【図6】本実施形態における基準信号生成回路7における基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の発生を説明するために用いるタイミングチャートである。
【図7】本実施形態における交流発電機のいずれか1相の同期信号を生成する回路の構成例を示す図である。
【図8】本実施形態におけるU,V,W相電圧生成回路におけるV相の他の相同期信号を生成するメカニズムについて説明するための図である。
【図9】本実施形態における各相電圧生成回路の構成を説明するための図である。
【図10】第2実施形態における交流発電機の回転数が急に変化している場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】第3実施形態における基準信号生成回路の構成を示す図である。
【図12】本実施形態における各相の交流出力電圧のゼロクロス点が、同期三角波の両端に位置する場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図13】本実施形態における基準信号生成回路及び三相同期方形波生成回路の動作説明に用いるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による位相制御装置を用いたバッテリ充電装置の基本構成例を示すブロック図であり、永久磁石式の三相交流発電機(以下、交流発電機1とする)の交流出力電圧を全波整流して、その出力でバッテリ2を充電するバッテリ充電装置3の例である。
このバッテリ充電装置3では、交流発電機1からの三相交流出力を整流する全波整流回路3bを、Nチャネル型パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)であるスイッチング素子Q1〜Q6の三相ブリッジ構成としている。そして、位相制御装置3aは、各スイッチング素子のスイッチング動作のタイミング(通電タイミング)を、交流発電機1の交流出力電圧に対して位相を遅らせる遅角制御、又は進ませる進角制御を行うことにより、すなわち、交流発電機1の出力する交流波形の位相制御を行うことにより、バッテリ2の充電状態(または放電状態)を制御している。
【0023】
このバッテリ充電装置3の位相制御装置3aにおいて、基準信号生成回路7が、交流発電機1の回転周期により生成した基準信号を基に、三相同期方形波生成回路11において、U相、V相、W相の各相に同期した信号を生成する。
この基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の構成と動作の詳細については後述する。以下、図1に示すバッテリ充電装置3の全体構成の概要について説明する。
【0024】
三相交流発電機1は、エンジン(内燃機関)のクランク軸に取り付けられたロータ4と、エンジンのケースなどに固定されたステータ5とからなっている。
ロータ4は、鉄等の強磁性材料によりカップ状に形成されたロータヨーク(不図示)と、このロータヨークにおける周壁部の内周に取り付けられた複数の永久磁石(不図示)を備え、永久磁石により界磁を構成した周知のものである。また、図示していないが、ロータヨークの底壁部の中央にはボスが設けられ、このボスがエンジンのクランク軸に取り付けられている。
また、ステータ5は、ロータ4の磁極に対向する磁極部を有する電機子鉄心(不図示)と、この電機子鉄心に巻回された電機子巻線とからなっている。電機子巻線はスター結線されたU、V、W相各々に対応する三つの相巻線を有し、それぞれの相巻線の中性点と反対側の端部からそれぞれ三相の出力が導出されている。また、導出された三相の出力は、それぞれスイッチング素子Q1〜Q6からなる全波整流回路3bと接続されている。
【0025】
一般に、エンジンは、その点火時期を制御したり、燃料の噴射を制御したりするために、クランク角の情報や、回転速度の情報を必要とする。これらの情報を得るため、ロータ4は、外周部に信号発生用のリラクタ(誘導子)と呼ばれる突起部4aを備えている。
パルサコイル6(点火用コイル)は、突起部4a(リラクタ)に対向する磁極部を備えた鉄心(不図示)と、その鉄心に巻かれたパルサコイルと、鉄心に磁気結合された永久磁石とを備える。パルサコイル6は、エンジンのクランク軸の回転に伴って、突起部4aがパルサコイル6の鉄心の磁極部との対向を開始する際、及び突起部4aが磁極部との対向を終了する際にそれぞれパルス信号(基準交流電圧)を出力する。すなわち、パルサコイル6は、交流発電機1のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示すパルス信号(基準交流電圧)を出力する。
【0026】
基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)に同期し、交流発電機1からの三相の出力の出力交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号である基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2を生成する。
また、基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、後述するように、交流発電機1の三相各相それぞれと同一周期の矩形波の信号を生成する。
【0027】
そして、基準信号生成回路7は、そのタイミング信号の半周期に含まれる交流発電機1の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、タイミング信号と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
基準位相を定める際に、基準信号生成回路7は、タイミング信号の半周期に含まれる各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、半周期の間に検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、タイミング信号の半周期において検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って基準位相を定める。
また、基準信号生成回路7は、タイミング信号として、タイミング信号の半周期と同じ時間幅の基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2を生成し、生成した基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の時間幅に含まれる各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定める。
また、基準信号生成回路7は、タイミング信号の周期の中で予め定められる所定の期間において、各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、タイミング信号の半周期において、検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って基準位相を定める。
【0028】
基準信号生成回路7は、前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した信号を生成するための基準信号を出力する。
三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成手段)は、基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2(タイミング信号)と基準信号とを基準にして、交流発電機1のいずれか一相に同期した矩形波の信号を生成するとともに、他の二相の同期信号を生成し、三相同期三角波生成回路12に出力する。
【0029】
三相同期三角波生成回路12は、三相同期方形波生成回路11から出力される矩形波信号から、これらの信号に同期した三角波(複数の三角波A,A’,B,B’,C,C’)を生成する。この三角波は矩形波のパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。
【0030】
誤差アンプ13は、実際のバッテリ電圧Vbatからのフィードバック信号Vfbと、バッテリ充電電圧の設定値(目標値)Vrefとを比較して、その差の信号を増幅し誤差アンプ出力Vcとして出力する。なお、誤差アンプ出力Vcは、バッテリ電圧Vbatが低く、「Vfb<Vref」の場合に、「Vc>0」となり、バッテリ電圧Vbatが高く、「Vfb>Vref」の場合に、「Vc<0」となる。「Vc>0」の場合には、バッテリ2への充電(遅角制御)が行われ、「Vc<0」の場合には、バッテリ2からの放電(進角制御)が行われる。
【0031】
比較回路(進角/遅角算出手段)14は、三相同期三角波生成回路12から出力される複数の三角波A,A’,B,B’,C,C’と誤差アンプ13の出力Vcとを比較し、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチングタイミング(進角/遅角量θ)を決定し、該進角/遅角量θの信号を制御回路20に出力する。
【0032】
制御回路20中の進角又は遅角制御回路21(進角/遅角制御手段)は、比較回路14から通電タイミング(進角/遅角量θ)の信号を受け取り、スイッチング素子Q1〜Q6のON又はOFF信号を生成しFET駆動信号生成回路22に出力する。なお、この際に、遅角制御回路21は、遅角量が所定の遅角リミット値以上にならないように制限する。
【0033】
FET駆動信号生成回路22は、進角又は遅角制御回路21から、スイッチング素子Q1〜Q6のON又はOFF信号を受け取り、スイッチング素子Q1〜Q6をON又はOFFするための駆動信号(ゲートドライブ信号)を生成する。
【0034】
全波整流回路3bは、FET(Field Effect Transistor)の3相ブリッジで構成されるスイッチング素子Q1〜Q6から構成される。スイッチング素子Q1は、直流電源となるバッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のU相出力との間に接続され、スイッチング素子Q2は、バッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のV相出力との間に接続され、スイッチング素子Q3は、バッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のW相出力との間に接続されている。
また、スイッチング素子Q4は、交流発電機1のU相出力とバッテリ2の接地電源(接地極)との間に接続され、スイッチング素子Q5は、交流発電機1のV相出力とバッテリ2の接地電源との間に接続され、スイッチング素子Q6は、交流発電機1のW相出力とバッテリ2の接地電源との間に接続されている。
これらのスイッチング素子Q1〜Q6は、FET駆動信号生成回路22から出力されるゲートドライブ信号により駆動される。
【0035】
(基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11についての説明)
次に、基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の構成と動作について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は、図1に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の基本構成例を示す回路図である。また、図3は、図2に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【0036】
この基準信号生成回路7においては、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)と、交流発電機1のステータ5からの三相の出力の各相の出力(各相の交流出力電圧)とに基づいて、全波整流回路3bを駆動するタイミングを制御するためのタイミング信号と基準信号とを生成する。
まず、基準信号生成回路7は、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)から、交流発電機1の回転状態を常時検出し、交流発電機1の回転に同期したPLL同期信号を生成する。基準信号生成回路7は、生成したPLL同期信号にから基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2(基準タイミング)を生成する。
また、基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、交流発電機1のステータ5からの三相の出力の各相の出力から、交流発電機1の三相各相それぞれと同一周期の矩形波の信号を生成するとともに、各相の電圧が0Vとなるタイミングを検出する。
また、基準信号生成回路7は、交流発電機1の稼動直後の所定期間において、各相の電圧が0Vとなるタイミングに基づいて、後段の三相同期方形波生成回路11において各相の同期信号を生成する際に用いられる閾値電圧VthH及びVthLを決定する。
三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成手段)は、基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2と、閾値電圧VthH及びVthLとに基づいて、閾値電圧VthH及びVthLを決定したタイミングを導いた相の同期信号を生成するとともに、他の二相の同期信号を生成する。すなわち、三相同期方形波生成回路11は、交流発電機1の三相各相に同期した矩形波の信号(U相同期信号Ru、V相同期信号Rv、W相同期信号Rw)を生成し、三相同期三角波生成回路12に出力する回路である。
ここで、同期した信号とは、位相及び周波数が一致する信号をいう。また、以下の説明において信号Aの立ち上がり又は立ち下がりをとらえて、信号Bを立ち上げ、又は立ち下げるとき、立ち上がり又は立ち下がりに同期させるというように、「同期」を使用する場合もある。
【0037】
図2に示される基準信号生成回路7は、基準方形波生成回路71、相コイル電圧生成回路72、位相調整回路73、同期判定回路74、基準三角波生成回路75、及び位相検出回路8(ゼロクロス読み取り回路81、ゼロクロス点記憶回路82)から構成される。
基準方形波生成回路71は、図2に示すようにNPN型のバイポーラトランジスタ等を有し、パルサコイル6(図1)がエンジン(不図示)の回転に伴って発生するパルス信号(基準交流電圧、図3(a))を直流電圧であるパルス信号Pa(第1のパルス信号)に変換する。パルス信号Paは、パルス信号(基準交流電圧)と同期した信号である。
【0038】
また、基準方形波生成回路71は、図3に示す一周期Tpulserのパルス信号Paを位相調整回路73に対して出力する。
基準方形波生成回路71に入力されるパルス信号は、ロータ4(図1)における突起部4aが、例えばi個設けられている場合、エンジン一回転の周期Tの間に、ローレベル(Lレベル)からハイレベル(Hレベル)への変化、及びHレベルからLレベルの変化の組合せを、i回繰り返す信号となる。
ここで本実施形態においては、信号のハイレベル(Hレベル)及びローレベル(Lレベル)各々の期間を、それぞれ1パルスと呼ぶこととする。図3においては、i=1の場合を示している。すなわち、図3に示すパルス信号Paは、エンジン一回転の周期Tの間に、Hレベルのパルスが1個(i個)、Lレベルのパルスが1個(i個)からなる。
パルス信号Paは、エンジンの稼働中において、エンジンの回転数が変化した場合、エンジンの一周期Tに比例して一周期Tpulser(例えば、周期T1からT6)が変化する。以下の説明において、突起部4aはロータ4に1箇所設けられているものとし、パルス信号Paの周期Tpulserは、エンジン一回転の周期Tと同じであるとする。
【0039】
相コイル電圧生成回路72は、図2に示すようにNPN型のバイポーラトランジスタ等を各相に対応して有し、ステータ5からの各相の出力信号(各相の交流出力電圧)を直流電圧であるパルス信号Pb(第2のパルス信号、図3(c))に変換する。また、相コイル電圧生成回路72は、一周期Tphaseのパルス信号Pbを位相検出回路8と同期判定回路74とに対して出力する。パルス信号Pbは、U,V,W相の各相の出力信号(各相の交流出力電圧)と同期したU相ゼロクロス信号、V相ゼロクロス信号、W相ゼロクロス信号である。
【0040】
位相調整回路73(タイミング信号生成回路)は、基準方形波生成回路71からパルス信号Paが入力され、パルス信号に同期したPLL同期信号Pst(図3(d))を生成する。生成されるPLL同期信号は、交流発電機1の交流出力電圧(相電圧)の周期の変化に応じて変化する。位相調整回路73は、生成したPLL同期信号を同期判定回路74と基準三角波生成回路75とに対して出力する。
同期判定回路74は、相コイル電圧生成回路72から出力されるパルス信号Pbと、位相調整回路73から出力されるPLL同期信号Pstとの位相差を検出する。同期判定回路74は、位相調整回路73がパルス信号Paに対して安定に追従している状態に達しているか否かを判定ために、検出した位相差が予め定められた所定の値より小さいか否かを判定する。同期判定回路74は、判定結果を示す判定信号(ロック検出信号、図3(e))を位相検出回路8に対して出力する。
【0041】
基準三角波生成回路75は、位相調整回路73が生成したPLL同期信号Pstと同じ周期のタイミング信号であって、交流発電機1の回転に同期した信号を出力する。例えば、基準三角波生成回路75が出力するタイミング信号は、第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示す波形として示される。
また、位相検出回路8は、ゼロクロス読み取り回路81とゼロクロス点記憶回路82を備える。位相検出回路8は、同期判定回路74において判定された判定結果を示す判定信号によって、位相調整回路73がパルス信号Paに対して安定に追従している状態に達していると判定された状態になってから(時刻LIに達してから)、ゼロクロス読み取り回路81を機能させる。
【0042】
図3に示されるタイミングチャートにおいては、エンジン始動時の交流発電機1の状態を示す。図3には、パルサコイル6がエンジンの回転に伴って発生するパルス信号(図3(a))がエンジン一回転の周期T毎に1回発生し、ステータ5のU相の交流出力電圧(一相の交流出力電圧、図3(b))が、エンジン一回転の周期Tの間に、負電圧から正電圧の変化をj周期分繰り返す様子を示している。以下、U相の交流出力電圧は、各相の交流出力電圧の具体的な1例として示すものである。
パルス信号Pbは、ステータ5からのU相、V相、W相の交流出力電圧の変化を示す信号であって、それぞれU相ゼロクロス信号、V相ゼロクロス信号、W相ゼロクロス信号として示す。そのため、パルス信号Pbとして示されるそれぞれの信号において、エンジン一回転の周期Tの間に、LレベルからHレベルへの変化、及びHレベルからLレベルの変化の組合せを、j回繰り返す信号となる。図3においては、j=5の場合を示しており、パルス信号Pbは、エンジン一回転の周期Tの間に、Hレベルのパルスがパルス1、3、5、7、9の5個(j個)からなる。以下の説明において、パルス信号Pbの周期Tphaseは、エンジン一回転の周期Tの(1/j)倍であるとする。
【0043】
ここで、エンジン稼動直後及びエンジンの稼働中におけるパルス信号Paとパルス信号Pbとの関係(周波数及び位相)について説明する。
上述の通り、パルス信号Paの周期Tpulserは、エンジン一回転の周期Tの(1/i)倍であり、パルス信号Pb(U相ゼロクロス信号)の周期Tphaseは、エンジン一回転の周期Tの(1/j)倍である。また、パルス信号Pbの周波数はステータ5からのU相の出力信号の周波数と同一である。つまり、U相の出力信号の周波数のパルス信号Paの周波数に対する比率は(j/i)であり、この比率(j/i)は、エンジンの稼働中において変化しない一定の値である。従って、エンジン稼動中において、パルス信号Paを(j/i)に逓倍した逓倍信号を生成すれば、稼働中におけるステータ5からのU相の出力信号と同一周期の矩形波(U相同一周期信号)を生成し続けることが可能である。つまり、エンジン稼働中において、パルス信号Pbを用いることなく、パルス信号Paを用いるだけで、U相同一周期信号を生成することが可能である。
なお、エンジンの稼働中においては、ステータ5からのU相の出力信号は位相制御に用いるため、エンジン稼動直後における波形と比べて歪んだ波形となり、相コイル電圧生成回路72が出力するパルス信号Pbも稼動直後に比べて歪んだ波形とある。そのため、このパルス信号Pbを、上記逓倍信号の生成に使用することはできない。
【0044】
一方、位相については、パルス信号Paとパルス信号Pbとの間では、上述の通り周波数が異なるため、位相は一致せず、パルス信号Paの基準点に対して、パルス信号Pbの位相はΔθaずれている。また、パルス信号Pbは、上述の通り、エンジンの稼働中において使用することができない。従って、上記U相同一周期信号を、ステータ5からのU相の出力信号と位相も周波数も一致したU相同期信号Ruとするには、まず、エンジンの稼動直後において、上記U相同一周期信号から複数の三角波Ptrgを生成し、交流出力(U相)のゼロクロス点における複数の三角波Ptrg各々の電圧値を読み取り、これを記憶する。そして、予め設定された基準となる電圧範囲を基に、複数の三角波Ptrgのうちから基準となる第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を基準タイミングとして決定する。また、第1の基準三角波Ptrg1のゼロクロス点における電圧値及び第2の基準三角波Ptrg2のゼロクロス点における電圧値を、それぞれ閾値電圧VthH及びVthLと決定する。そして、第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルが閾値電圧VthHになったときに立ち下がり、第2の基準三角波Ptrg2の電圧レベルが閾値電圧VthLになったときに立ち上がる信号を生成することで、U相同期信号Ruを生成することができる。
以上に示した方法により、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwについても適用可能である。
【0045】
図3(d)に示されるPLL同期信号Pstは、位相調整回路73によって生成され、パルス信号Paの変化に追従して変化し、周期及び位相が異なる場合であっても、一致するように制御される。図3には、エンジン始動時であり、パルス信号Paに対して、PLL同期信号Pstが同期していない状態、すなわち、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期していない状態から始まり、時刻LIに達すると同期された状態に移行する。
また、図3(e)に示されるロック検出信号は、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとの同期状態を示し、時刻LIまでの期間では、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期していない状態(Lレベル)を示し、時刻LI以降の期間では、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期した状態(Hレベル)を示す。
なお、同期確立の判定に用いるパルス信号Pbは、各相のうちいずれか1相を予め定めておいともよく、或いは、各相に対して同期確立の検出を試み、最初に同期を確立したいずれかの相を選択してもよい。
【0046】
(三角波電圧の発生方法の説明)
また、基準三角波生成回路75は、PLL同期信号Pstに同期した基準三角波Ptrg1とPtrg2を生成する。
エンジンの稼働中においても、U相同一周期信号Rusp等のパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波を生成する必要がある。なぜなら、エンジンの回転に同期してパルサコイル6から発生するパルス信号(基準交流電圧)の周波数の変化に応じて、PLL同期信号Pstの周波数が変わるためである。つまり、エンジンの稼働中において周波数が負荷により変動した場合でも、位相を検出するため交流電圧のゼロクロス点における三角波の電圧値を取得する必要があるからである。ここで、図4及び図5を参照して、U相同一周期信号Ruspに同期したピーク電圧一定の三角波の発生メカニズムの一例について説明する。
【0047】
一般には交流発電機が出力する交流電圧の周波数は、急激に変化しないので、1サイクル前の波形と現在のサイクルの波形は同様と考えることができる。例えば、図4において、波形2が現在のサイクルの波形であるとすれば、波形2の半周期T2と、その1サイクル前の波形1の半周期T1とは同様である。また、交流発電機が出力する交流電圧に同期するPLL同期信号についても、急激に変化しないので、1サイクル前の波形と現在のサイクルの波形は同様と考えることができる。
【0048】
上述の特性を利用して、次の手順により三角波電圧VBを生成する。
(手順1)図4に示すように、波形1のサイクルにおいて、位相調整回路73から供給されるPLL同期信号Pstの周期を検出する。この波形1に対応するPLL同期信号Pstの半周期は、波形1のサイクルにおけるDUTY比50%のPLL同期信号Pstのパルス幅と一致する。
(手順2)続いて、PLL同期信号Pstの半周期TP1の時間をカウントする。
(手順3)続いて、半周期TP1の時間のカウント数を所定の分解能nで除算して、時間t1(=TP1/n)を得る。ここで、分解能nは、三角波電圧VBのスロープの滑らかさを規定する量であり、分解能nが高い程、三角波電圧VBのスロープが滑らかになる。
(手順4)続いて、三角波電圧VBのピーク電圧Vpを所定の分解能nで除算して、電圧v1(=Vp/n)を得る。
(手順5)続いて、図5に示すように、次のサイクルの波形2の立ち上がりタイミング(T2をカウントし始めるタイミング)で、上記電圧v1だけ三角波電圧VBを上昇させ、この三角波電圧VBを上記時間t1の間だけ維持する。
(手順6)同じ波形2のサイクルにおいて、上記時間t1が経過したタイミングで上記電圧v1だけ三角波電圧VBを更に上昇させ、これを全部でn回繰り返すと、図5に示すような階段状の波形が得られ、波形2のサイクルに対応する三角波電圧のスロープ部分に相当する階段状の波形が得られる。分解能nの値を大きくすれば、階段状の波形が滑らかになり、一層良好な三角波を得ることができる。
以上の手順により、1サイクル前のPLL同期信号Pstの波形を用いて、PLL同期信号Pstの各周期に対応した三角波電圧であって、ピーク電圧Vpが一定の三角波を生成することができる。
【0049】
(基準信号の生成法の説明)
基準三角波生成回路75によって生成された基準三角波Ptrg1及びPtrg2は、位相検出回路8に対して出力される。
位相検出回路8は、交流発電機1の稼動直後の所定期間において、基準三角波Ptrg1及びPtrg2において、各相の交流出力電圧のゼロクロス点から、所望のゼロクロス点を決定するとともに、後段の三相同期方形波生成回路11においてU相同期信号Ruを生成するに際して用いる閾値電圧Vtha及びVthbを決定する。次に、図6を用いて、この決定処理について説明する。
図6は、基準信号生成回路7における位相検出回路8が行う基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2に基づいて基準信号の生成を説明するために用いるタイミングチャートである。
【0050】
位相検出回路8は、ゼロクロス読み取り回路81とゼロクロス点記憶回路82から構成される。
ゼロクロス読み取り回路81は、エンジンの稼動直後において、パルス信号Pbの立ち上がり及び立ち上がりにおける、基準三角波Ptrg1、Ptrg2の電圧値を読み取る。パルス信号Pbの立ち上がり及び立ち上がりが示すタイミングは、各相の交流相電圧のゼロクロス点となるタイミングと一致する。ゼロクロス読み取り回路81は、基準三角波Ptrg1、Ptrg2の期間において、発生したゼロクロス点の数に応じて、ゼロクロス点を発生した相と、そのゼロクロス点とを選択する。ゼロクロス読み取り回路81は、選択されたゼロクロス点を発生した相の情報と、読み取った電圧値と、基準三角波Ptrg1、Ptrg2毎にゼロクロス点記憶回路82へ、記憶させる。
【0051】
また、ゼロクロス点記憶回路82は、「波形情報Nwv」、「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」からなる項目を記憶する記憶領域を有する。「波形情報Nwv」は、ゼロクロス点として選択された相を示す情報であり、この場合、U相、V相、W相のいずれかである。「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」は、ゼロクロス読み取り回路81が読み取った電圧値を示す。ゼロクロス点記憶回路82は、「波形情報Nwv」をキーとして、ゼロクロス読み取り回路81によって測定された電圧値を記憶する。また、基準三角波生成回路75は、「波形情報Nwv」をキーとして、ゼロクロス点記憶回路82に記憶された電圧値、及び、選択された相を示す情報を参照する。
【0052】
ゼロクロス読み取り回路81は、図6に示すように、パルス信号Pbの立ち上がり時刻t12において、基準三角波Ptrg1の電圧値(VthH)を読み取り、ゼロクロス点記憶回路82へ、基準三角波Ptrg1に対応させて記憶させる。また、ゼロクロス読み取り回路81は、パルス信号Pbの立ち下がり時刻t22において、基準三角波Ptrg2の電圧値(VthL)を読み取り、ゼロクロス点記憶回路82へ、基準三角波Ptrg2に対応させて記憶させる。ゼロクロス点記憶回路82は、記憶した「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」を三相同期方形波生成回路11に出力する。
【0053】
位相制御装置は、同期三角波の繰返し周期の半分の期間Thに、相電圧ゼロクロスの立ち上がり又は立ち下がりのエッジは、計3回発生する。最初のエッジを特定する手法は、PLL同期信号のHレベル,Lレベルを各相電圧ゼロクロス信号の立ち上がり立ち下がりタイミングで参照し、PLL同期信号が、HレベルからLレベルに変化、又は、HレベルからLレベルに変化したそのエッジは、その期間Thにおいて最初に検出されたエッジであり、そのエッジを#1エッジとする。次に発生する相電圧ゼロクロス信号は、PLL同期信号のレベル変化がない状態で#2エッジが検出され、続いて、PLL同期信号のレベル変化がない状態で#3エッジが検出される。
【0054】
各相のゼロクロス信号を再現するには、まず、#1エッジ、#2エッジ及び#3エッジの各エッジタイミングで同期三角波の電圧をそれぞれ変換する。
各エッジタイミングのうち、#1エッジと#3エッジでは、PLL同期信号のパルス幅の中央から離れており、同期三角波に対しても両端に位置するので、同期三角波のレベルを変換するタイミングにより、変換された同期三角波のレベルが不連続な値として検出される場合が起こりうる。そのため、PLL同期信号のパルス幅の中央に近く、同期三角波のレベルを変換するタイミングが変化しても、変換するタイミングの位相の変化に応じて同期三角波のレベルが線形に変化する範囲が広い#2エッジのタイミングを選択する。
変換タイミングが交流発電機1の回転に対して正常時に同期している状態の#2エッジのタイミングであれば、#2エッジのタイミングの同期三角波のレベルは、同期三角波の波高値の1/3から2/3の範囲になる。
【0055】
同期三角波Ptrg1に対して、#2立ち下りエッジ(時刻t12)のタイミングを示すフラグを設定する。同期三角波Ptrg2に対して、#2立ち上がりエッジ(時刻t22)のタイミングを示すフラグを設定する。そして、それぞれの同期三角波Ptrg1と同期三角波Ptrg2に対応させて、変換した同期三角波のレベルをゼロクロス点記憶回路82の記憶領域に記憶させる。
【0056】
本実施形態においては、位相検出回路8は、第1の基準三角波Ptrg1のパルス信号Pbの立ち上がりにおける電圧値を閾値VthHとし、第2の基準三角波Ptrg2のパルス信号Pbの立ち下がりにおける電圧値を閾値VthLと決定する。
以降、エンジンの駆動中において、基準三角波生成回路75は、決定した第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を発生し続け、三相同期方形波生成回路11に対して出力し続ける。
【0057】
(各相同期信号の発生についての説明)
三相同期方形波生成回路11は、入力される第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を用いて、いずれか1相の同期信号を生成する。
図7は、交流発電機1のいずれか1相の同期信号を生成する回路の構成例を示す図である。
また、図6に示されるタイミングチャートを参照し、三相同期方形波生成回路11におけるV相同期信号Rvの発生について説明する。
以下、図6及び図7を用いて動作を説明する。
図7において、比較器B1には、(+)入力端子に第1の基準三角波Ptrg1が入力され、(−)端子に閾値VthHが入力される。また、比較器B2には、(+)入力端子に第2の基準三角波Ptrg2が入力され、(−)端子に閾値VthLが入力される。また、SRフリップフロップSR1は、セット端子Sが比較器B1の出力に接続され、リセット端子Rが比較器B2の出力に接続される。SRフリップフロップSR1は、ノア回路NOR1とノア回路NOR2から構成される。ノア回路NOR1は、二入力の一入力端がリセット端子Rに接続され、他端がノア回路NOR2の出力端に接続され、出力がQバー端子に接続される。また、ノア回路NOR2は、二入力の一入力端がセット端子Sに接続され、他端がノア回路NOR1の出力端に接続され、出力がQ端子に接続される。
【0058】
この構成により、図6に示すように、比較器B1の出力(パルス(A))は、第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルがVthHからVpの間(時刻t31〜t21の間)、Hレベルとなる。また、比較器B2の出力(パルス(B))は、第2の基準三角波Ptrg2の電圧レベルがVthLからVpの間(時刻t41〜t12の間)、Hレベルとなる。
また、SRフリップフロップSR1の出力Q(バー)は、時刻t31〜t32の間、Hレベルとなり、時刻t32から、次に第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルがVthHとなって比較器B1の出力がHレベルとなる時刻t42の間(時刻t32〜t42の間)、Lレベルとなる。
【0059】
ここで、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を判定する閾値電圧として定められたゼロクロス点は、V相の交流出力電圧から導かれたものであるから、その周波数は交流発電機1のV相出力と同一周期の信号である。
また、定められたゼロクロス点から導かれた閾値電圧VthH及び閾値電圧VthLはいずれもエンジン稼動直後において、交流発電機1のV相出力と同期した信号であるパルス信号Pb(V相ゼロクロス信号)の立ち上がり又は立ち下がりで取得した電圧値であるから、閾値電圧VthHで立ち上がり、閾値電圧VthLで立ち下がる信号は、交流発電機1のV相出力と位相差のない信号である。すなわち、SRフリップフロップSR1の出力Q(バー)から取り出す信号は、交流発電機1のV相出力と位相及び周波数が一致する信号であるV相同期信号Rvである。
【0060】
例えば、エンジンの稼働中に、交流発電機1のステータ5からのU相の出力の周波数が2倍となれば、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)の周波数も2倍となり、パルス信号Paの周波数も2倍となる。これにより、PLL同期信号Pstの周波数も2倍となり、基準三角波生成回路75が生成する第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2の周波数も2倍となる。しかし、閾値VthH及び電圧値VbLは、エンジン稼働直後に取得した電圧であるので、エンジン稼働中において変化することはない。そのため、三相同期方形波生成回路11が生成するV相同期信号Rvの周波数も、交流発電機1のステータ5からのV相の出力の周波数が2倍になれば、2倍となる。
【0061】
このように、上述した基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11により、U,V,W相からなる三相の同期信号のうちの少なくともいずれか一相の同期信号(上記例ではV相同期信号Rv)を生成することが可能となる。
他の二相については、上記実施例と同様の方法で生成すれば、U相同期信号Ru、W相同期信号Rwについて生成することは可能となる。この場合、例えば、基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11を、U相及びW相についても設けることで対応すればよい。
或いは、次に説明するように、既に生成したV相同期信号Rvから、上述した三角波生成の手法を用いて、U相同期信号Ru、W相同期信号Rwを生成することが可能である。
【0062】
図8は、U,V,W相電圧生成回路の動作を説明するための図であり、U相同期信号Ruから、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwを生成する方法を説明するための図である。以下、図8を参照して、その手順について説明する。
【0063】
(手順1)最初に、U相同期信号Ruの“H(ハイ)”側に同期した三角波(e)を生成する。この三角波(e)はU相同期信号Ruに同期しており、位相幅が180°(0°〜180°)である。また、この三角波(e)はU相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。なお、U相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波の生成方法については上述した通りである。
【0064】
(手順2)同様にして、U相同期信号Ruの“L(ロー)”側に同期した三角波(f)を生成する。この三角波(f)はU相同期信号Ruに同期しており、位相幅が180°(180°〜360°)である。また、この三角波(f)についてもU相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。
【0065】
(手順3)次に、三角波(e)のピーク電圧Vpの1/3の高さの点X1と、2/3の高さの点X2を求める。これにより、点X0(三角波(e)の立ち上がり点)と点X1の間、点X1と点X2との間、及び点X2と点X3(三角波(e)の立ち下り点)との間は、それぞれ位相幅が60°となる。同様にして、三角波(f)のピーク電圧Vpの1/3の高さの点Y1、2/3の高さの点Y2を求める。
【0066】
(手順4)次に、点X2から点X3まで“H”となるパルスa1を生成し、また、点Y2から点Y3(三角波(f)の立ち下り点)まで“H”となるパルスb1を生成する。
(手順5)そして、パルスa1の立ち上がりエッジで“H”となり、パルスb1の立ち上がりエッジで“L”に戻る矩形波を生成し、これをV相同期信号Rvとする。
【0067】
(手順6)次に、点X1から点X3まで“H”となるパルスc1を生成し、また、点Y1から点Y3まで”H”となるパルスd1を生成する。
(手順7)そして、パルスd1の立ち上がりエッジで“H”となり、パルスc1の立ち上がりエッジで0に戻る矩形波を生成し、これをW相同期信号Rwとする。
【0068】
上述した手順により、U相に対して120°位相が遅れたV相同期信号Rv、U相に対して240°位相が遅れたW相同期信号Rwを生成することができる。
また、図9は、生成した相(V相)の矩形波と、その矩形波に同期した三角波(e)、(f)から、他の相(U相、W相)の矩形波を生成する回路の構成例を示す図である。以下、図9を参照して、その動作について説明する。
三角波のピーク電圧Vpは、直列に3本接続された抵抗Rにより分圧され、(1/3)×Vpの電圧が比較器A2、A4の(−)入力端子に基準電圧として入力され、(2/3)×Vpの電圧が比較器A1、A3の(−)入力端子に基準電圧として入力される。また、比較器A1、A2の(+)入力端子に三角波(e)が入力され、比較器A3、A4の(+)入力端子に三角波(f)が入力される。
従って、比較器A1の出力は、点X2から点X3まで“H”となり、パルスa1となる。比較器A2の出力は、点X1から点X3まで“H”となり、パルスc1となる。比較器A3の出力は、点Y2から点Y3まで“H”となり、パルスb1となる。比較器A4の出力は、点Y1から点Y3まで“H”となり、パルスd1となる。
【0069】
また、比較器A1及びA3の出力は、オア回路OR1を介して、DフリップフロップD1のクロック端子の入力となる。比較器A2及びA4の出力は、オア回路OR2を介して、DフリップフロップD2のクロック端子の入力となる。
従って、比較器A1の出力(パルスa1)の立ち上がりエッジが、DフリップフロップD1のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“H”であるので、DフリップフロップD1の出力Qは“H”になる。
また、比較器A3の出力(パルスb1)の立ち上がりエッジもDフリップフロップD1のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“L”であるので、出力Qは“L”になる。従って、DフリップフロップD1の出力Qは、パルスa1の立ち上がりエッジからパルスb1の立ち上がりエッジまで“H”となり、V相同期信号Rvが得られる。
【0070】
また、比較器A2の出力(パルスc1)の立ち上がりエッジが、DフリップフロップD2のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“H”であるので、DフリップフロップD2の出力Qは“H”、出力Qの反転出力(Qバー)は“L”になる。
また、比較器A4の出力(パルスd1)の立ち上がりエッジもDフリップフロップD2のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“L”であるので、出力Qは“L”になり、出力Qの反転出力(Qバー)は“H”になる。従って、DフリップフロップD2の反転出力(Qバー)は、パルス(d1)の立ち上がりエッジからパルス(c1)の立ち上がりエッジまで“H”となり、W相同期信号Rwとなる。
【0071】
このように、上述した基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11により、U相、V相、W相の各相に同期した矩形波であるU相同期信号Ru、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwを生成することが可能となる。すなわち、エンジンの回転に同期してパルサコイル6から発生するパルス信号(基準交流電圧)から生成したPLL同期信号Pstにより、U相、V相、W相に同期した矩形波の信号を生成できるため、これを通電タイミングの制御に利用することができる。これにより、サブコイルやホール素子等を設ける必要はなく、三相交流発電機の構造の簡略化と外形の小形化が可能となり、また、製造コストの低減を図ることができる。
【0072】
また、上記実施例においては、基準三角波生成回路75により、複数の三角波Ptrg(三角波a〜f)を生成し、ゼロクロス読み取り回路81により、U相の出力信号(一相の交流出力電圧)と同期したU相ゼロクロス信号であるパルス信号Pbの立ち上がり及び立ち下がりにおける複数の三角波Ptrgの電圧値を読み取ることとした。また、基準三角波生成回路75は、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2に基づいて基準信号を決定するとともに、三相同期方形波生成回路11でのU相同期信号Ru生成に用いる閾値VthH及び閾値VthLを決定する構成とした。これにより、三相同期方形波生成回路11は、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2と、閾値VthH及び閾値VthLを用いて、U相同期信号Ruを生成する。
【0073】
また、同期三角波Ptrg1のレベルを比較する比較器B1の立ち上がりエッジに同期して、再生するパルスをLレベルに変化させ、同期三角波Ptrg2のレベルを比較する比較器B2の立ち上がりエッジに同期して、再生するパルスをHレベルに変化させることにより、連続したパルスを生成することができ、その生成されたパルスは、相電圧2のゼロクロス信号を復元することができる。
交流発電機1の各相の相電圧の波形は、負荷や運転状態により大きく変化するが、復元したパルスであればその影響を受けることなく、相電圧2のゼロクロス信号として参照することができる。
【0074】
(各相同期信号に基づいたスイッチング素子の導通タイミングについての説明)
例えば、上記実施形態の説明で述べたように、スイッチング素子Q1〜Q6の通電タイミングを決めるため、U相、V相、W相の同期信号(Ru、Rv、Rw)各々から生成した三角波(B、C、A)、各三角波を180°位相シフトした三角波(B’、C’、A’)を使用する。各スイッチング素子にいずれの三角波を用いるかは、進角または遅角のどちらを重要視するかによって選定されるものである。
ところで、本願の発明者がスイッチング素子の通電タイミングについて、各相のスイッチング素子をオンさせる時刻を同期信号各相の立ち上がり(位相角基準)より前にする(進角側で制御する)場合のバッテリ2の充電量と、各相のスイッチング素子をオンさせる時刻を位相角基準より後にする(遅角側で制御する)場合のバッテリ2の充電量とを比較する実験を行った。この実験では、同一の充電量を得るための発電機1のトルクを測定し、進角側の方が遅角側よりトルク量が少ないという実験結果を得て、進角側で制御する方が遅角側で制御する方よりも、同一の充電量を得る際の交流発電機1にかかる負荷が軽くなり、発電機1の制御上好ましいことが判明した。
以下に、この通電タイミング決定の制御の実施例について説明する。
なお、位相角基準は、U相同期信号Ruの場合、立ち上がりを基準(進角0°)として、左側を進角、右側を遅角とする。同様に、V相同期信号Rv、W相同期信号Rwの位相角基準は、それぞれ立ち上がりを基準とし、左側を進角、右側を遅角とする。
【0075】
本実施例においても、誤差アンプ13の出力(誤差アンプ出力Vc)は、バッテリ電圧Vbatが低く、「Vfb<Vref」の場合に、「Vc>0」となり、バッテリ電圧Vbatが高く、「Vfb>Vref」の場合に、「Vc<0」となる。
また、比較回路14(進角/遅角算出手段)は、三相同期三角波生成回路12から出力される三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較し、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチングタイミング(進角/遅角量θ)を決定し、該進角/遅角量θの信号を制御回路20に出力する。
また、本実施例においても、三相同期三角波生成回路12は、三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成回路)から出力される各相の矩形波(それぞれ、U相同期信号Ru、V相同期信号Rv、W相同期信号Rw)に同期した三角波(それぞれ、三角波B、三角波A、三角波Cである)を生成する。また、三相同期三角波生成回路12は、生成したU,V,W各相に対応する三角波を、それぞれ180°位相シフトさせた三角波(それぞれ、三角波B’、三角波A’、三角波C’である)を生成する。
【0076】
ここで、本実施例では、上記実施例とは異なり、U相同期信号Ruに同期させて生成した三角波B(第2U相三角波)と、三角波Bを180°位相シフトさせた三角波B’(第1U相三角波)とを、U相に対応するスイッチング素子Q1及びQ4の通電タイミング決定に用いる。
また、同様に、V相同期信号Rvに同期させて生成した三角波C(第2V相三角波)と、三角波Cを180°位相シフトさせた三角波C’(第1V相三角波)とを、V相に対応するスイッチング素子Q2及びQ5の通電タイミング決定に用いる。
また、同様に、W相同期信号Rwに同期させて生成した三角波A(第2W相三角波)と、三角波Aを180°位相シフトさせた三角波A’(第1W相三角波)とを、W相に対応するスイッチング素子Q3及びQ6の通電タイミング決定に用いる。
【0077】
U相に対応するスイッチング素子Q1及びQ4の通電タイミング決定に三角波B、B’を用いる理由は、次の通りである。
三角波B’(第1U相三角波)を用いると、Vc>0(Vfb<Vref)の場合、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間において、進角または遅角量0°を示す電圧の線L0(Vc=0のレベルの線)よりもVcが高くなる。つまり、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間に、第1U相三角波(三角波B’)とVcとの交点ができる。これにより、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間において、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる位相角(進角/遅角量θ)を求めることができる。
また、三角波B’に対して180°位相差がある三角波B(第2U相三角波)を用いると、上記三角波B’とVc=0のレベルの線との交点より、180°遅角側に第2U相三角波(三角波B)とVcとの交点ができる。
つまり、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる時刻から、位相角にして180°遅れた時刻で、スイッチング素子Q1をオフさせ、スイッチング素子Q4をオンさせる。
このようにして、スイッチング素子Q1をオンさせた時刻からオフさせるまでの期間(位相角で180°の期間)トータルで、バッテリ2を充電することができる。
【0078】
一方、Vc<0(Vfb>Vref)の場合、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間において、進角/遅角量0°の線L0よりもVcが低くなる。つまり、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間に、第1U相三角波(三角波B’)とVcとの交点ができる。これにより、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間において、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる位相角(進角/遅角量θ)を求めることができる。
また、三角波B’に対して180°位相差がある三角波B(第2U相三角波)を用いて、スイッチング素子Q1をオフさせ、スイッチング素子Q4をオンさせる。このようにして、スイッチング素子Q1をオンさせた時刻からオフさせるまでの期間(位相角で180°の期間)トータルで、バッテリ2を放電することができる。
【0079】
以上の構成により、U相においては、U相同期信号Ruに同期した第1U相三角波(三角波B’)、及び第2U相三角波(三角波B)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q1、Q4のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
特に、第1U相三角波の高さの最大付近に交点ができる場合(進角0°に近づいた場合)、バッテリは充電量が少ない(Vcの絶対値が大きい)わけであるが、スイッチング素子Q1のオンしている期間とU相が正電圧にある期間とをほぼ一致させることができるので、交流発電機1のU相からバッテリ2への充電量を最大充電量とすることができる。
【0080】
同様にして、V相においては、V相同期信号Rvに同期した第1V相三角波(三角波C’)、及び第2V相三角波(三角波C)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q2、Q5のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
また、同様にして、W相においては、W相同期信号Rwに同期した第1W相三角波(三角波A’)、及び第2W相三角波(三角波A)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q3、Q6のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
【0081】
例えば、比較回路14によって、次のようにON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定することができる。
比較回路14は、第1U相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q1のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q4のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2U相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q1のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q4のオンタイミングを求める。
また、比較回路14は、第1V相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q2のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q4のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2V相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q2のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q5のオンタイミングを求める。
また、比較回路14は、第1W相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q3のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q6のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2W相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q3のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q6のオンタイミングを求める。
【0082】
以上述べた構成によりスイッチング素子の通電タイミングの制御を行い、つまり、各相について進角側で制御することにより、バッテリ2に充電する際に交流発電機1にかかる負荷を軽くすることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図1、図2を参照し、第2実施形態について示す。
図10は、交流発電機1の回転数が急に変化している場合の動作を示すタイミングチャートである。図6に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
【0084】
第1実施形態に示した図6のタイミングチャートでは、交流発電機1の回転数の変化に対して、位相調整回路73が充分に追従できる状態を示したものであった。
位相調整回路73の応答特性より交流発電機1の回転数の変化が急峻な場合には、位相調整回路73によって生成するPLL同期信号Pstを、交流発電機1の回転数の変化に追従させて同期させることが困難な場合が生じうる。
【0085】
例えば、エンジン始動時には、エンジン回転数Neが急に上昇することから、エンジン回転数変化量ΔNeは、大きな値を示す。そのような場合、エンジンから動力が供給される交流発電機1の回転数も急に上昇することから、交流発電機1から出力される交流電圧出力の1周期の長さが大きく変化する。
位相調整回路73は、交流発電機1の交流出力電圧の周期の変化に追従して同期するように作動するが、急な変化に対しては応答遅れの影響が生じる。つまり、エンジン回転数Neが急に上昇する場合では、交流発電機1の1周期が短くなるように変化する。位相調整回路73が追従しきれない場合には、位相調整回路73の周期は交流発電機1の周期より相対的に長くなる。
そのため、位相調整回路73が同期している状態では、半周期の間に交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)が3回発生するはずのところ、位相調整回路73が追従できない場合には、半周期の間に交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)1回多く4回検出されることが生じる場合がある。
【0086】
(#4エッジが検出され場合又は#3エッジが検出されない場合の処理)
この図10に示されるタイミングチャートの位相関係では、時刻S10から時刻S20までの期間において、#1エッジ、#2エッジ及び#3エッジに続き#4エッジ(時刻t14)が検出された状態が示される。一方、時刻S20から時刻S11までの期間において。#1エッジ(時刻t21)と#2エッジ(時刻t22)しか検出されない状態が示される。この時刻t21の#1エッジは、本来#2エッジとして検出されるべきものであり、時刻S10から時刻S20までの期間において、#4エッジ(時刻t14)が誤検出されたために誤判定されることになる。
そのため、半周期のうち2番目に検出されたエッジ(#2エッジ(時刻t22))を用いて相信号を復元すると、復元した相信号は、位相がずれて異常な波形となる。
従って、PLL同期信号の半周期に、4回以上のエッジが発生する場合(#4のエッジを検出した場合)、又は、2回以下のエッジしか発生しなかった場合(#3のエッジを検出しない場合)には、検出された同期三角波の電圧値を基準信号として採用しない。
このように、検出された同期三角波の電圧値を基準信号として採用しない場合には、次の周期において再度検出を行うことにより、条件を満足した基準信号を得ることが可能となる。
【0087】
このように、位相検出回路8のゼロクロス読み取り回路81において、検出された交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)を、上記に示したゼロクロス点の数に応じて選択する条件を設けることにより、その選択されたゼロクロス点(エッジ)に対応して検出される同期三角波の電圧値を基準信号として選択することができる。
【0088】
(第3実施形態)
図11を参照し、第3実施形態について示す。
図11は、本実施形態の基準信号生成回路の構成を示す図である。図2に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
基準信号生成回路7aは、基準方形波生成回路71、相コイル電圧生成回路72、位相調整回路73、同期判定回路74a、基準三角波生成回路75、及び位相検出回路8a(ゼロクロス読み取り回路81a、ゼロクロス点記憶回路82)から構成される。
同期判定回路74aは、第1実施形態に示した同期判定回路74に、パルス信号Paの周期を検出し、その周期の変化率が予め定められた値より大きいか否かを判定する機能が付加され、その判定結果を位相検出回路8aに出力する。
位相検出回路8aは、ゼロクロス読み取り回路81aとゼロクロス点記憶回路82を備える。
位相検出回路8aのゼロクロス読み取り回路81aは、第1実施形態に示した位相検出回路8のゼロクロス読み取り回路81に、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する機能が付加されている。
付加された第1の選択機能は、交流発電機1の各相の交流出力電圧の位相と、位相調整回路73のPLL同期信号の位相との関係により、検出されたエッジが同期三角波の両端から予め定められる所定の範囲に位置する場合に、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する。
また、付加された第2の選択機能は、同期判定回路74aによって検出されたパルス信号Paの周期の変化率が、予め定められる所定の値より大きい場合には、交流出力電圧のゼロクロス点を選択しない、すなわち、パルス信号Paの周期の変化率が、予め定められる所定の値より小さい場合には、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する、
【0089】
(#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合の処理)
交流発電機1の各相の交流出力電圧の位相と、位相調整回路73が生成したPLL同期信号Pstの位相との関係により、各相の交流出力電圧のゼロクロス点を示すパルス信号Pbとして検出されたエッジが、同期三角波の両端に位置する場合がある。
図12は、各相の交流出力電圧のゼロクロス点が、同期三角波の両端に位置する場合の動作を示すタイミングチャートである。図6に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合には、エンジン回転数Neの変動によって、#1エッジ又は#3エッジを誤判定することにより、#2エッジにおいて検出されるべき同期三角波の電圧値を検出されない場合が生じうる。そのような位相関係では、正しい基準信号を生成できない場合が生じうる。
この状態を回避するため、まず、パルスコイル6が出力するパルス信号から生成したパルス信号Paに基づいて、エンジン回転数Neが急上昇或いは、急下降中であるかを判定し、この場合には、検出された同期三角波の電圧値を採用しない。
エンジン回転数Neの変動が、予め定められた所定の範囲内にある場合には、#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合であっても、ゼロクロス読み取り回路81aは、#2エッジのタイミングを選択し、そのタイミングの基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の電圧値を基準信号として選択する。
【0090】
図13は、図11に示す基準信号生成回路7a及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるフローチャートである。
バッテリ電圧Vbattを検出する(ステップS1)。
同期判定回路74aは、位相調整回路73において同期が確立された状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2における判定の結果、同期が確立できる状態にないと判定された場合(ステップS2:No)には、ステップS2の判定を繰り返す。
【0091】
ステップS2における判定の結果、同期が確立できる状態にあると判定された場合(ステップS2:Yes)には、半周期の間のゼロクロス点の数を検出する(ステップS3)。
検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上であると判定された場合(ステップS4:Yes)には、ステップS3に戻る。
【0092】
ステップS4における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上でないと判定された場合(ステップS4:No)には、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合であるか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS5における判定の結果、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合であると判定された場合(ステップS5:Yes)には、検出されたゼロクロス点が示すタイミングのうち、2番目の#2エッジのタイミングを選択し、選択されたタイミングにおける同期三角波の電圧をゼロクロス点記憶回路82に記憶させ、基準信号の取得処理を終了する(ステップS10)。
【0093】
ステップS5における判定の結果、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合でないと判定された場合(ステップS5:No)には、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下であると判定された場合(ステップS6:Yes)には、ステップS3に戻る。
【0094】
ステップS6における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下でない、すなわち3個であると判定された場合(ステップS6:No)には、ステップ10の処理に進む。
【0095】
以上説明した工程により、交流発電機の交流出力電圧を初期状態の確定に用いるだけで、初期状態が確定した後に行う進角又は遅角制御において、交流発電機の交流出力電圧を用いることなく交流発電機の回転数の変化を検出し、その変化に応じて適切な進角又は遅角制御を行うことが可能となる。また、エンジン始動時などに発生しうる急峻な交流発電機の回転数の変化が生じる場合であっても、適切な基準信号を取得することができることから、安定に制御を行ことが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等も含まれる。
なお、これらの同期三角波のレベルの記憶は、図示されないエンジンのアイドリング回転時に行うことにより、標準状態を設定するのに安定な状態で行うことができる。
例えば、車両に搭載されたエンジンの動力によって駆動される交流発電機1であれば、車両の工場の調整工程において行うことも可能である。また、車両のユーザがエンジンを始動したタイミングに、それぞれ自動で実施させることも可能である。
なお、本実施形態において、バッテリ充電装置を例として示して説明したが、交流発電機からの電力を変換する電力変換装置に、本実施形態に示した位相制御装置を適用し、示した位相制御方法によって制御することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…交流発電機、2…バッテリ、3…バッテリ充電装置、3a…位相制御装置、
3b…全波整流回路、4…ロータ、4a…突起部、5…ステータ、6…パルサコイル、
7,7a…基準信号生成回路、8,8a…位相検出回路、11…三相同期方形波生成回路、
12…三相同期三角波生成回路、13…誤差アンプ、14…比較回路、
20…制御回路、21…進角又は遅角制御回路、22…FET駆動信号生成回路、
71…基準方形波生成回路、72…相コイル電圧生成回路、73…位相調整回路、
74,74a…同期判定回路、75…基準三角波生成回路、
81,81a…ゼロクロス読み取り回路、82…ゼロクロス点記憶回路、
Pa,Pb…パルス信号、Pst…PLL同期信号、
Ru…U相同期信号、Rv…V相同期信号、Rw…W相同期信号、
Ptrg1,Ptrg2,Psaw…基準三角波
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御装置、バッテリ充電装置、及び位相制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車等に用いられるバッテリ充電装置は、エンジン側から回転駆動される三相交流発電機(以下、単に「交流発電機」ともいう)が出力する三相交流出力電圧を、順変換(交流/直流変換)して直流出力電圧とし、この直流出力電圧によりバッテリに充電電流を流す。この場合、バッテリ充電を効率良く行うために、交流発電機の発電量を制御するため、順変換を行う整流回路における通電タイミングの進角/遅角制御が行われている。
【0003】
進角/遅角制御は、交流発電機の交流出力電圧の位相に対して、バッテリ充電装置内の整流部を構成するスイッチング素子の通電タイミングを進角側、又は遅角側に移動させることにより、交流発電機の発電量を制御するものである。この進角/遅角制御では、バッテリの電圧が基準電圧よりも低くバッテリ充電を必要とする場合、バッテリ充電装置を遅角制御(バッテリ充電状態)し、バッテリの電圧が基準電圧よりも高く充電を必要としない場合、バッテリ充電装置を進角制御(バッテリから交流発電機へエネルギーを放電する状態)とする。
【0004】
この進角/遅角制御において、従来の三相交流磁石式の三相交流発電機と組み合わせるバッテリ充電装置では、進角/遅角制御に必要な各相の出力電圧の位相検出を、磁界を電流に変換する素子(ホール素子等)又は各相巻線と並列に巻かれたサブコイル(交流出力電圧検出用の補助巻線)からの信号を用いて行い、スイッチング素子(Field Effect TransistorもしくはSilicon Controlled Rectifier)の通電タイミングの制御を行っていた。そのため各相に各々磁石位置検出機器(ロータの磁界の検出器)を設けるか、又はサブコイルを設ける必要があった。
例えば、特許文献1においては、交流発電機のU相にサブコイルを設け、U,V,W相電圧検出回路によりU相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成し、この同期信号を基準にして、制御回路により、スイッチング素子(FET)Q1〜Q6の通電タイミングを制御することにより、進角/遅角制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO2007/114272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、進角/遅角制御を行うために、交流発電機のいずれかの相にサブコイルを設けるか、或いは磁石位置検出機器を設ける必要があるため、交流発電機は大型かつ複雑になり、結果として高価になっていた。また、ホール素子等の磁石位置検出機器を設ける場合、制御回路の電源とは別に電源供給回路が必要となり、また電源供給回路を制御する回路も必要となり、更に大型化、複雑化することになる。また、位相制御を行わないバッテリ充電装置を、位相制御を行う構成を有するバッテリ充電装置に変更する場合、ホール素子等の磁石位置検出機器を後から取り付けることとなるため、大幅な改良が必要となり交流発電機の大型化、複雑化を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みなされたもので、その目的は、交流発電機に接続され、交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進角/遅角制御を行う位相制御装置において、サブコイル或いは磁石位置検出機器を設けることなく、U相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成する位相制御装置を提供することにある。また、本発明の目的は、位相制御装置で三相交流発電機の進角/遅角制御を行う場合に、交流発電機の構造を簡単化、かつ小型化し、コストの低減を図ることができる、位相制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するために、本発明は、U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置であって、前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手段と、前記基準信号生成手段によって生成されたタイミング信号と基準信号とに基づいて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手段と、前記進角/遅角算出手段により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手段と、を備えることを特徴とする位相制御装置である。
【0009】
(2)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の半周期に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、前記半周期の間に検出された前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定めることを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の半周期と同じ時間幅の三角波を、該タイミング信号の立ち上がり立ち下がりに同期させて生成し、前記生成した三角波の時間幅に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定めることを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記タイミング信号の周期が示す変化点から、予め定められる所定の範囲の位相幅において、前記各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定めることを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明は、上記発明において、前記進角/遅角算出手段は、前記整流部によって清流された出力電圧と所定の目標電圧との差分電圧の信号と、前記基準信号生成手段によって生成された基準信号に基づいて前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求めることを特徴とする。
【0013】
(6)また、本発明は、上記発明において、前記タイミング信号は、第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示すことを特徴とする。
【0014】
(7)また、本発明は、上記発明において、前記タイミング信号と、前記基準信号とに基づいて、前記U,V,W相からなる三相の同期信号を生成するU,V,W相電圧生成手段と、を備え、前記基準信号生成手段は、前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した三角波の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した基準信号を生成し、前記進角/遅角算出手段は、前記整流部の直流電力側の出力電圧と所定の目標との差分電圧の信号と、前記U,V,W相電圧生成手段により出力される各相の同期信号とに基づき、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求めることを特徴とする。
【0015】
(8)また、本発明は、上記発明において、前記基準信号生成手段は、前記基準交流電圧と同期した第1のパルス信号を生成する基準方形波生成回路と、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同期した第2のパルス信号を生成する相コイル電圧生成回路と、前記第1のパルス信号に同期した前記同期信号を生成するタイミング信号生成回路と、前記タイミング信号として、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同一周期の複数の三角波を発生する基準三角波生成回路と、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出回路と、前記検出されたゼロクロス点に応じた前記複数の三角波の電圧値を、前記複数の三角波各々に対して読み取るゼロクロス点読み取り回路と、前記三相交流発電機の稼動開始時に、前記ゼロクロス点読み取り回路が読み取った電圧の内から、予め定められた判定基準により選択された前記ゼロクロス点に応じた前記三角波の電圧値を記憶するゼロクロス点記憶回路と、を備え、前記記憶した三角波の電圧値を前記基準信号とすることを特徴とする。
【0016】
(9)また、本発明は、上記発明において、前記進角/遅角算出手段は、前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成する同期三角波発生回路と、前記バッテリの電圧と所定の目標電圧とを比較し誤差信号を出力する誤差アンプと、前記同期三角波発生回路から出力される三角波と誤差アンプの出力とを比較することにより進角/遅角量を求める比較回路と、を備え、前記同期三角波発生回路は、前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成して前記比較回路に出力するとともに、生成したU,V,W各相に対応する三角波(それぞれ第2U相三角波、第2V相三角波、第2W相三角波とする)を、180°位相シフトさせた第1U相三角波、第1V相三角波、第1W相三角波をそれぞれ生成して前記比較回路に出力し、前記比較回路は、前記進角/遅角量を求める場合、前記U相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される前記第1U相三角波及び前記第2U相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、前記V相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1V相三角波及び前記第2V相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、前記W相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1W相三角波及び前記第2W相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求める、ことを特徴とする。
【0017】
(10)また、本発明は、上記発明において、前記比較回路は、前記第1U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、前記第1V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、前記第1W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、前記第2W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求める、ことを特徴とする。
【0018】
(11)また、本発明は、上記いずれかの発明に記載の位相制御装置と、前記位相制御装置により通電タイミングを制御される整流部と、を備え、前記整流部の直流電力側の出力電圧に接続されたバッテリを充電することを特徴とするバッテリ充電装置である。
【0019】
(12)また、本発明は、U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置における位相制御方法であって、前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記基準交流電圧に同期し、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差を調整する基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手順と、前記基準信号生成手順によって生成された基準信号を前記交流出力電圧との位相差を調整する制御目標として用いて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手順と、前記進角/遅角算出手順により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手順と、を含むことを特徴とする位相制御方法である。
【発明の効果】
【0020】
この本発明によれば、基準信号発生手段は、三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成する。そして、基準信号発生手段は、そのタイミング信号の半周期に含まれる三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、タイミング信号と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
これにより、サブコイル或いは磁石位置検出機器を設けず、U相、V相、W相の各相の交流出力電圧に同期した信号を生成する位相制御装置を提供することができ、位相制御装置を備えたバッテリ充電装置等において、装置を簡単化、かつ小型化できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における位相制御装置を用いたバッテリ充電装置の基本構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における図1に示す基準信号生成回路及び三相同期方形波生成回路の基本構成例を示す回路図である。
【図3】本実施形態における図2に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【図4】本実施形態における図1に示された発電機のU相の交流電圧波形に同期した矩形波を示す波形図である。
【図5】本発明の実施例において、三角波を生成するメカニズムについて説明するための図である。
【図6】本実施形態における基準信号生成回路7における基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の発生を説明するために用いるタイミングチャートである。
【図7】本実施形態における交流発電機のいずれか1相の同期信号を生成する回路の構成例を示す図である。
【図8】本実施形態におけるU,V,W相電圧生成回路におけるV相の他の相同期信号を生成するメカニズムについて説明するための図である。
【図9】本実施形態における各相電圧生成回路の構成を説明するための図である。
【図10】第2実施形態における交流発電機の回転数が急に変化している場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】第3実施形態における基準信号生成回路の構成を示す図である。
【図12】本実施形態における各相の交流出力電圧のゼロクロス点が、同期三角波の両端に位置する場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図13】本実施形態における基準信号生成回路及び三相同期方形波生成回路の動作説明に用いるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による位相制御装置を用いたバッテリ充電装置の基本構成例を示すブロック図であり、永久磁石式の三相交流発電機(以下、交流発電機1とする)の交流出力電圧を全波整流して、その出力でバッテリ2を充電するバッテリ充電装置3の例である。
このバッテリ充電装置3では、交流発電機1からの三相交流出力を整流する全波整流回路3bを、Nチャネル型パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)であるスイッチング素子Q1〜Q6の三相ブリッジ構成としている。そして、位相制御装置3aは、各スイッチング素子のスイッチング動作のタイミング(通電タイミング)を、交流発電機1の交流出力電圧に対して位相を遅らせる遅角制御、又は進ませる進角制御を行うことにより、すなわち、交流発電機1の出力する交流波形の位相制御を行うことにより、バッテリ2の充電状態(または放電状態)を制御している。
【0023】
このバッテリ充電装置3の位相制御装置3aにおいて、基準信号生成回路7が、交流発電機1の回転周期により生成した基準信号を基に、三相同期方形波生成回路11において、U相、V相、W相の各相に同期した信号を生成する。
この基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の構成と動作の詳細については後述する。以下、図1に示すバッテリ充電装置3の全体構成の概要について説明する。
【0024】
三相交流発電機1は、エンジン(内燃機関)のクランク軸に取り付けられたロータ4と、エンジンのケースなどに固定されたステータ5とからなっている。
ロータ4は、鉄等の強磁性材料によりカップ状に形成されたロータヨーク(不図示)と、このロータヨークにおける周壁部の内周に取り付けられた複数の永久磁石(不図示)を備え、永久磁石により界磁を構成した周知のものである。また、図示していないが、ロータヨークの底壁部の中央にはボスが設けられ、このボスがエンジンのクランク軸に取り付けられている。
また、ステータ5は、ロータ4の磁極に対向する磁極部を有する電機子鉄心(不図示)と、この電機子鉄心に巻回された電機子巻線とからなっている。電機子巻線はスター結線されたU、V、W相各々に対応する三つの相巻線を有し、それぞれの相巻線の中性点と反対側の端部からそれぞれ三相の出力が導出されている。また、導出された三相の出力は、それぞれスイッチング素子Q1〜Q6からなる全波整流回路3bと接続されている。
【0025】
一般に、エンジンは、その点火時期を制御したり、燃料の噴射を制御したりするために、クランク角の情報や、回転速度の情報を必要とする。これらの情報を得るため、ロータ4は、外周部に信号発生用のリラクタ(誘導子)と呼ばれる突起部4aを備えている。
パルサコイル6(点火用コイル)は、突起部4a(リラクタ)に対向する磁極部を備えた鉄心(不図示)と、その鉄心に巻かれたパルサコイルと、鉄心に磁気結合された永久磁石とを備える。パルサコイル6は、エンジンのクランク軸の回転に伴って、突起部4aがパルサコイル6の鉄心の磁極部との対向を開始する際、及び突起部4aが磁極部との対向を終了する際にそれぞれパルス信号(基準交流電圧)を出力する。すなわち、パルサコイル6は、交流発電機1のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示すパルス信号(基準交流電圧)を出力する。
【0026】
基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)に同期し、交流発電機1からの三相の出力の出力交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号である基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2を生成する。
また、基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、後述するように、交流発電機1の三相各相それぞれと同一周期の矩形波の信号を生成する。
【0027】
そして、基準信号生成回路7は、そのタイミング信号の半周期に含まれる交流発電機1の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、タイミング信号と交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する。
基準位相を定める際に、基準信号生成回路7は、タイミング信号の半周期に含まれる各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、半周期の間に検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、タイミング信号の半周期において検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って基準位相を定める。
また、基準信号生成回路7は、タイミング信号として、タイミング信号の半周期と同じ時間幅の基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2を生成し、生成した基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の時間幅に含まれる各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定める。
また、基準信号生成回路7は、タイミング信号の周期の中で予め定められる所定の期間において、各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、タイミング信号の半周期において、検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って基準位相を定める。
【0028】
基準信号生成回路7は、前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した信号を生成するための基準信号を出力する。
三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成手段)は、基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2(タイミング信号)と基準信号とを基準にして、交流発電機1のいずれか一相に同期した矩形波の信号を生成するとともに、他の二相の同期信号を生成し、三相同期三角波生成回路12に出力する。
【0029】
三相同期三角波生成回路12は、三相同期方形波生成回路11から出力される矩形波信号から、これらの信号に同期した三角波(複数の三角波A,A’,B,B’,C,C’)を生成する。この三角波は矩形波のパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。
【0030】
誤差アンプ13は、実際のバッテリ電圧Vbatからのフィードバック信号Vfbと、バッテリ充電電圧の設定値(目標値)Vrefとを比較して、その差の信号を増幅し誤差アンプ出力Vcとして出力する。なお、誤差アンプ出力Vcは、バッテリ電圧Vbatが低く、「Vfb<Vref」の場合に、「Vc>0」となり、バッテリ電圧Vbatが高く、「Vfb>Vref」の場合に、「Vc<0」となる。「Vc>0」の場合には、バッテリ2への充電(遅角制御)が行われ、「Vc<0」の場合には、バッテリ2からの放電(進角制御)が行われる。
【0031】
比較回路(進角/遅角算出手段)14は、三相同期三角波生成回路12から出力される複数の三角波A,A’,B,B’,C,C’と誤差アンプ13の出力Vcとを比較し、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチングタイミング(進角/遅角量θ)を決定し、該進角/遅角量θの信号を制御回路20に出力する。
【0032】
制御回路20中の進角又は遅角制御回路21(進角/遅角制御手段)は、比較回路14から通電タイミング(進角/遅角量θ)の信号を受け取り、スイッチング素子Q1〜Q6のON又はOFF信号を生成しFET駆動信号生成回路22に出力する。なお、この際に、遅角制御回路21は、遅角量が所定の遅角リミット値以上にならないように制限する。
【0033】
FET駆動信号生成回路22は、進角又は遅角制御回路21から、スイッチング素子Q1〜Q6のON又はOFF信号を受け取り、スイッチング素子Q1〜Q6をON又はOFFするための駆動信号(ゲートドライブ信号)を生成する。
【0034】
全波整流回路3bは、FET(Field Effect Transistor)の3相ブリッジで構成されるスイッチング素子Q1〜Q6から構成される。スイッチング素子Q1は、直流電源となるバッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のU相出力との間に接続され、スイッチング素子Q2は、バッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のV相出力との間に接続され、スイッチング素子Q3は、バッテリ2のプラス側の電圧Vbatと交流発電機1のW相出力との間に接続されている。
また、スイッチング素子Q4は、交流発電機1のU相出力とバッテリ2の接地電源(接地極)との間に接続され、スイッチング素子Q5は、交流発電機1のV相出力とバッテリ2の接地電源との間に接続され、スイッチング素子Q6は、交流発電機1のW相出力とバッテリ2の接地電源との間に接続されている。
これらのスイッチング素子Q1〜Q6は、FET駆動信号生成回路22から出力されるゲートドライブ信号により駆動される。
【0035】
(基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11についての説明)
次に、基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の構成と動作について、図2及び図3を用いて説明する。
図2は、図1に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の基本構成例を示す回路図である。また、図3は、図2に示す基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるタイミングチャートである。
【0036】
この基準信号生成回路7においては、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)と、交流発電機1のステータ5からの三相の出力の各相の出力(各相の交流出力電圧)とに基づいて、全波整流回路3bを駆動するタイミングを制御するためのタイミング信号と基準信号とを生成する。
まず、基準信号生成回路7は、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)から、交流発電機1の回転状態を常時検出し、交流発電機1の回転に同期したPLL同期信号を生成する。基準信号生成回路7は、生成したPLL同期信号にから基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2(基準タイミング)を生成する。
また、基準信号生成回路7(基準信号生成手段)は、交流発電機1のステータ5からの三相の出力の各相の出力から、交流発電機1の三相各相それぞれと同一周期の矩形波の信号を生成するとともに、各相の電圧が0Vとなるタイミングを検出する。
また、基準信号生成回路7は、交流発電機1の稼動直後の所定期間において、各相の電圧が0Vとなるタイミングに基づいて、後段の三相同期方形波生成回路11において各相の同期信号を生成する際に用いられる閾値電圧VthH及びVthLを決定する。
三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成手段)は、基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2と、閾値電圧VthH及びVthLとに基づいて、閾値電圧VthH及びVthLを決定したタイミングを導いた相の同期信号を生成するとともに、他の二相の同期信号を生成する。すなわち、三相同期方形波生成回路11は、交流発電機1の三相各相に同期した矩形波の信号(U相同期信号Ru、V相同期信号Rv、W相同期信号Rw)を生成し、三相同期三角波生成回路12に出力する回路である。
ここで、同期した信号とは、位相及び周波数が一致する信号をいう。また、以下の説明において信号Aの立ち上がり又は立ち下がりをとらえて、信号Bを立ち上げ、又は立ち下げるとき、立ち上がり又は立ち下がりに同期させるというように、「同期」を使用する場合もある。
【0037】
図2に示される基準信号生成回路7は、基準方形波生成回路71、相コイル電圧生成回路72、位相調整回路73、同期判定回路74、基準三角波生成回路75、及び位相検出回路8(ゼロクロス読み取り回路81、ゼロクロス点記憶回路82)から構成される。
基準方形波生成回路71は、図2に示すようにNPN型のバイポーラトランジスタ等を有し、パルサコイル6(図1)がエンジン(不図示)の回転に伴って発生するパルス信号(基準交流電圧、図3(a))を直流電圧であるパルス信号Pa(第1のパルス信号)に変換する。パルス信号Paは、パルス信号(基準交流電圧)と同期した信号である。
【0038】
また、基準方形波生成回路71は、図3に示す一周期Tpulserのパルス信号Paを位相調整回路73に対して出力する。
基準方形波生成回路71に入力されるパルス信号は、ロータ4(図1)における突起部4aが、例えばi個設けられている場合、エンジン一回転の周期Tの間に、ローレベル(Lレベル)からハイレベル(Hレベル)への変化、及びHレベルからLレベルの変化の組合せを、i回繰り返す信号となる。
ここで本実施形態においては、信号のハイレベル(Hレベル)及びローレベル(Lレベル)各々の期間を、それぞれ1パルスと呼ぶこととする。図3においては、i=1の場合を示している。すなわち、図3に示すパルス信号Paは、エンジン一回転の周期Tの間に、Hレベルのパルスが1個(i個)、Lレベルのパルスが1個(i個)からなる。
パルス信号Paは、エンジンの稼働中において、エンジンの回転数が変化した場合、エンジンの一周期Tに比例して一周期Tpulser(例えば、周期T1からT6)が変化する。以下の説明において、突起部4aはロータ4に1箇所設けられているものとし、パルス信号Paの周期Tpulserは、エンジン一回転の周期Tと同じであるとする。
【0039】
相コイル電圧生成回路72は、図2に示すようにNPN型のバイポーラトランジスタ等を各相に対応して有し、ステータ5からの各相の出力信号(各相の交流出力電圧)を直流電圧であるパルス信号Pb(第2のパルス信号、図3(c))に変換する。また、相コイル電圧生成回路72は、一周期Tphaseのパルス信号Pbを位相検出回路8と同期判定回路74とに対して出力する。パルス信号Pbは、U,V,W相の各相の出力信号(各相の交流出力電圧)と同期したU相ゼロクロス信号、V相ゼロクロス信号、W相ゼロクロス信号である。
【0040】
位相調整回路73(タイミング信号生成回路)は、基準方形波生成回路71からパルス信号Paが入力され、パルス信号に同期したPLL同期信号Pst(図3(d))を生成する。生成されるPLL同期信号は、交流発電機1の交流出力電圧(相電圧)の周期の変化に応じて変化する。位相調整回路73は、生成したPLL同期信号を同期判定回路74と基準三角波生成回路75とに対して出力する。
同期判定回路74は、相コイル電圧生成回路72から出力されるパルス信号Pbと、位相調整回路73から出力されるPLL同期信号Pstとの位相差を検出する。同期判定回路74は、位相調整回路73がパルス信号Paに対して安定に追従している状態に達しているか否かを判定ために、検出した位相差が予め定められた所定の値より小さいか否かを判定する。同期判定回路74は、判定結果を示す判定信号(ロック検出信号、図3(e))を位相検出回路8に対して出力する。
【0041】
基準三角波生成回路75は、位相調整回路73が生成したPLL同期信号Pstと同じ周期のタイミング信号であって、交流発電機1の回転に同期した信号を出力する。例えば、基準三角波生成回路75が出力するタイミング信号は、第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示す波形として示される。
また、位相検出回路8は、ゼロクロス読み取り回路81とゼロクロス点記憶回路82を備える。位相検出回路8は、同期判定回路74において判定された判定結果を示す判定信号によって、位相調整回路73がパルス信号Paに対して安定に追従している状態に達していると判定された状態になってから(時刻LIに達してから)、ゼロクロス読み取り回路81を機能させる。
【0042】
図3に示されるタイミングチャートにおいては、エンジン始動時の交流発電機1の状態を示す。図3には、パルサコイル6がエンジンの回転に伴って発生するパルス信号(図3(a))がエンジン一回転の周期T毎に1回発生し、ステータ5のU相の交流出力電圧(一相の交流出力電圧、図3(b))が、エンジン一回転の周期Tの間に、負電圧から正電圧の変化をj周期分繰り返す様子を示している。以下、U相の交流出力電圧は、各相の交流出力電圧の具体的な1例として示すものである。
パルス信号Pbは、ステータ5からのU相、V相、W相の交流出力電圧の変化を示す信号であって、それぞれU相ゼロクロス信号、V相ゼロクロス信号、W相ゼロクロス信号として示す。そのため、パルス信号Pbとして示されるそれぞれの信号において、エンジン一回転の周期Tの間に、LレベルからHレベルへの変化、及びHレベルからLレベルの変化の組合せを、j回繰り返す信号となる。図3においては、j=5の場合を示しており、パルス信号Pbは、エンジン一回転の周期Tの間に、Hレベルのパルスがパルス1、3、5、7、9の5個(j個)からなる。以下の説明において、パルス信号Pbの周期Tphaseは、エンジン一回転の周期Tの(1/j)倍であるとする。
【0043】
ここで、エンジン稼動直後及びエンジンの稼働中におけるパルス信号Paとパルス信号Pbとの関係(周波数及び位相)について説明する。
上述の通り、パルス信号Paの周期Tpulserは、エンジン一回転の周期Tの(1/i)倍であり、パルス信号Pb(U相ゼロクロス信号)の周期Tphaseは、エンジン一回転の周期Tの(1/j)倍である。また、パルス信号Pbの周波数はステータ5からのU相の出力信号の周波数と同一である。つまり、U相の出力信号の周波数のパルス信号Paの周波数に対する比率は(j/i)であり、この比率(j/i)は、エンジンの稼働中において変化しない一定の値である。従って、エンジン稼動中において、パルス信号Paを(j/i)に逓倍した逓倍信号を生成すれば、稼働中におけるステータ5からのU相の出力信号と同一周期の矩形波(U相同一周期信号)を生成し続けることが可能である。つまり、エンジン稼働中において、パルス信号Pbを用いることなく、パルス信号Paを用いるだけで、U相同一周期信号を生成することが可能である。
なお、エンジンの稼働中においては、ステータ5からのU相の出力信号は位相制御に用いるため、エンジン稼動直後における波形と比べて歪んだ波形となり、相コイル電圧生成回路72が出力するパルス信号Pbも稼動直後に比べて歪んだ波形とある。そのため、このパルス信号Pbを、上記逓倍信号の生成に使用することはできない。
【0044】
一方、位相については、パルス信号Paとパルス信号Pbとの間では、上述の通り周波数が異なるため、位相は一致せず、パルス信号Paの基準点に対して、パルス信号Pbの位相はΔθaずれている。また、パルス信号Pbは、上述の通り、エンジンの稼働中において使用することができない。従って、上記U相同一周期信号を、ステータ5からのU相の出力信号と位相も周波数も一致したU相同期信号Ruとするには、まず、エンジンの稼動直後において、上記U相同一周期信号から複数の三角波Ptrgを生成し、交流出力(U相)のゼロクロス点における複数の三角波Ptrg各々の電圧値を読み取り、これを記憶する。そして、予め設定された基準となる電圧範囲を基に、複数の三角波Ptrgのうちから基準となる第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を基準タイミングとして決定する。また、第1の基準三角波Ptrg1のゼロクロス点における電圧値及び第2の基準三角波Ptrg2のゼロクロス点における電圧値を、それぞれ閾値電圧VthH及びVthLと決定する。そして、第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルが閾値電圧VthHになったときに立ち下がり、第2の基準三角波Ptrg2の電圧レベルが閾値電圧VthLになったときに立ち上がる信号を生成することで、U相同期信号Ruを生成することができる。
以上に示した方法により、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwについても適用可能である。
【0045】
図3(d)に示されるPLL同期信号Pstは、位相調整回路73によって生成され、パルス信号Paの変化に追従して変化し、周期及び位相が異なる場合であっても、一致するように制御される。図3には、エンジン始動時であり、パルス信号Paに対して、PLL同期信号Pstが同期していない状態、すなわち、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期していない状態から始まり、時刻LIに達すると同期された状態に移行する。
また、図3(e)に示されるロック検出信号は、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとの同期状態を示し、時刻LIまでの期間では、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期していない状態(Lレベル)を示し、時刻LI以降の期間では、パルス信号PbとPLL同期信号Pstとが同期した状態(Hレベル)を示す。
なお、同期確立の判定に用いるパルス信号Pbは、各相のうちいずれか1相を予め定めておいともよく、或いは、各相に対して同期確立の検出を試み、最初に同期を確立したいずれかの相を選択してもよい。
【0046】
(三角波電圧の発生方法の説明)
また、基準三角波生成回路75は、PLL同期信号Pstに同期した基準三角波Ptrg1とPtrg2を生成する。
エンジンの稼働中においても、U相同一周期信号Rusp等のパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波を生成する必要がある。なぜなら、エンジンの回転に同期してパルサコイル6から発生するパルス信号(基準交流電圧)の周波数の変化に応じて、PLL同期信号Pstの周波数が変わるためである。つまり、エンジンの稼働中において周波数が負荷により変動した場合でも、位相を検出するため交流電圧のゼロクロス点における三角波の電圧値を取得する必要があるからである。ここで、図4及び図5を参照して、U相同一周期信号Ruspに同期したピーク電圧一定の三角波の発生メカニズムの一例について説明する。
【0047】
一般には交流発電機が出力する交流電圧の周波数は、急激に変化しないので、1サイクル前の波形と現在のサイクルの波形は同様と考えることができる。例えば、図4において、波形2が現在のサイクルの波形であるとすれば、波形2の半周期T2と、その1サイクル前の波形1の半周期T1とは同様である。また、交流発電機が出力する交流電圧に同期するPLL同期信号についても、急激に変化しないので、1サイクル前の波形と現在のサイクルの波形は同様と考えることができる。
【0048】
上述の特性を利用して、次の手順により三角波電圧VBを生成する。
(手順1)図4に示すように、波形1のサイクルにおいて、位相調整回路73から供給されるPLL同期信号Pstの周期を検出する。この波形1に対応するPLL同期信号Pstの半周期は、波形1のサイクルにおけるDUTY比50%のPLL同期信号Pstのパルス幅と一致する。
(手順2)続いて、PLL同期信号Pstの半周期TP1の時間をカウントする。
(手順3)続いて、半周期TP1の時間のカウント数を所定の分解能nで除算して、時間t1(=TP1/n)を得る。ここで、分解能nは、三角波電圧VBのスロープの滑らかさを規定する量であり、分解能nが高い程、三角波電圧VBのスロープが滑らかになる。
(手順4)続いて、三角波電圧VBのピーク電圧Vpを所定の分解能nで除算して、電圧v1(=Vp/n)を得る。
(手順5)続いて、図5に示すように、次のサイクルの波形2の立ち上がりタイミング(T2をカウントし始めるタイミング)で、上記電圧v1だけ三角波電圧VBを上昇させ、この三角波電圧VBを上記時間t1の間だけ維持する。
(手順6)同じ波形2のサイクルにおいて、上記時間t1が経過したタイミングで上記電圧v1だけ三角波電圧VBを更に上昇させ、これを全部でn回繰り返すと、図5に示すような階段状の波形が得られ、波形2のサイクルに対応する三角波電圧のスロープ部分に相当する階段状の波形が得られる。分解能nの値を大きくすれば、階段状の波形が滑らかになり、一層良好な三角波を得ることができる。
以上の手順により、1サイクル前のPLL同期信号Pstの波形を用いて、PLL同期信号Pstの各周期に対応した三角波電圧であって、ピーク電圧Vpが一定の三角波を生成することができる。
【0049】
(基準信号の生成法の説明)
基準三角波生成回路75によって生成された基準三角波Ptrg1及びPtrg2は、位相検出回路8に対して出力される。
位相検出回路8は、交流発電機1の稼動直後の所定期間において、基準三角波Ptrg1及びPtrg2において、各相の交流出力電圧のゼロクロス点から、所望のゼロクロス点を決定するとともに、後段の三相同期方形波生成回路11においてU相同期信号Ruを生成するに際して用いる閾値電圧Vtha及びVthbを決定する。次に、図6を用いて、この決定処理について説明する。
図6は、基準信号生成回路7における位相検出回路8が行う基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2に基づいて基準信号の生成を説明するために用いるタイミングチャートである。
【0050】
位相検出回路8は、ゼロクロス読み取り回路81とゼロクロス点記憶回路82から構成される。
ゼロクロス読み取り回路81は、エンジンの稼動直後において、パルス信号Pbの立ち上がり及び立ち上がりにおける、基準三角波Ptrg1、Ptrg2の電圧値を読み取る。パルス信号Pbの立ち上がり及び立ち上がりが示すタイミングは、各相の交流相電圧のゼロクロス点となるタイミングと一致する。ゼロクロス読み取り回路81は、基準三角波Ptrg1、Ptrg2の期間において、発生したゼロクロス点の数に応じて、ゼロクロス点を発生した相と、そのゼロクロス点とを選択する。ゼロクロス読み取り回路81は、選択されたゼロクロス点を発生した相の情報と、読み取った電圧値と、基準三角波Ptrg1、Ptrg2毎にゼロクロス点記憶回路82へ、記憶させる。
【0051】
また、ゼロクロス点記憶回路82は、「波形情報Nwv」、「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」からなる項目を記憶する記憶領域を有する。「波形情報Nwv」は、ゼロクロス点として選択された相を示す情報であり、この場合、U相、V相、W相のいずれかである。「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」は、ゼロクロス読み取り回路81が読み取った電圧値を示す。ゼロクロス点記憶回路82は、「波形情報Nwv」をキーとして、ゼロクロス読み取り回路81によって測定された電圧値を記憶する。また、基準三角波生成回路75は、「波形情報Nwv」をキーとして、ゼロクロス点記憶回路82に記憶された電圧値、及び、選択された相を示す情報を参照する。
【0052】
ゼロクロス読み取り回路81は、図6に示すように、パルス信号Pbの立ち上がり時刻t12において、基準三角波Ptrg1の電圧値(VthH)を読み取り、ゼロクロス点記憶回路82へ、基準三角波Ptrg1に対応させて記憶させる。また、ゼロクロス読み取り回路81は、パルス信号Pbの立ち下がり時刻t22において、基準三角波Ptrg2の電圧値(VthL)を読み取り、ゼロクロス点記憶回路82へ、基準三角波Ptrg2に対応させて記憶させる。ゼロクロス点記憶回路82は、記憶した「閾値電圧値VthH」、「閾値電圧値VthL」を三相同期方形波生成回路11に出力する。
【0053】
位相制御装置は、同期三角波の繰返し周期の半分の期間Thに、相電圧ゼロクロスの立ち上がり又は立ち下がりのエッジは、計3回発生する。最初のエッジを特定する手法は、PLL同期信号のHレベル,Lレベルを各相電圧ゼロクロス信号の立ち上がり立ち下がりタイミングで参照し、PLL同期信号が、HレベルからLレベルに変化、又は、HレベルからLレベルに変化したそのエッジは、その期間Thにおいて最初に検出されたエッジであり、そのエッジを#1エッジとする。次に発生する相電圧ゼロクロス信号は、PLL同期信号のレベル変化がない状態で#2エッジが検出され、続いて、PLL同期信号のレベル変化がない状態で#3エッジが検出される。
【0054】
各相のゼロクロス信号を再現するには、まず、#1エッジ、#2エッジ及び#3エッジの各エッジタイミングで同期三角波の電圧をそれぞれ変換する。
各エッジタイミングのうち、#1エッジと#3エッジでは、PLL同期信号のパルス幅の中央から離れており、同期三角波に対しても両端に位置するので、同期三角波のレベルを変換するタイミングにより、変換された同期三角波のレベルが不連続な値として検出される場合が起こりうる。そのため、PLL同期信号のパルス幅の中央に近く、同期三角波のレベルを変換するタイミングが変化しても、変換するタイミングの位相の変化に応じて同期三角波のレベルが線形に変化する範囲が広い#2エッジのタイミングを選択する。
変換タイミングが交流発電機1の回転に対して正常時に同期している状態の#2エッジのタイミングであれば、#2エッジのタイミングの同期三角波のレベルは、同期三角波の波高値の1/3から2/3の範囲になる。
【0055】
同期三角波Ptrg1に対して、#2立ち下りエッジ(時刻t12)のタイミングを示すフラグを設定する。同期三角波Ptrg2に対して、#2立ち上がりエッジ(時刻t22)のタイミングを示すフラグを設定する。そして、それぞれの同期三角波Ptrg1と同期三角波Ptrg2に対応させて、変換した同期三角波のレベルをゼロクロス点記憶回路82の記憶領域に記憶させる。
【0056】
本実施形態においては、位相検出回路8は、第1の基準三角波Ptrg1のパルス信号Pbの立ち上がりにおける電圧値を閾値VthHとし、第2の基準三角波Ptrg2のパルス信号Pbの立ち下がりにおける電圧値を閾値VthLと決定する。
以降、エンジンの駆動中において、基準三角波生成回路75は、決定した第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を発生し続け、三相同期方形波生成回路11に対して出力し続ける。
【0057】
(各相同期信号の発生についての説明)
三相同期方形波生成回路11は、入力される第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を用いて、いずれか1相の同期信号を生成する。
図7は、交流発電機1のいずれか1相の同期信号を生成する回路の構成例を示す図である。
また、図6に示されるタイミングチャートを参照し、三相同期方形波生成回路11におけるV相同期信号Rvの発生について説明する。
以下、図6及び図7を用いて動作を説明する。
図7において、比較器B1には、(+)入力端子に第1の基準三角波Ptrg1が入力され、(−)端子に閾値VthHが入力される。また、比較器B2には、(+)入力端子に第2の基準三角波Ptrg2が入力され、(−)端子に閾値VthLが入力される。また、SRフリップフロップSR1は、セット端子Sが比較器B1の出力に接続され、リセット端子Rが比較器B2の出力に接続される。SRフリップフロップSR1は、ノア回路NOR1とノア回路NOR2から構成される。ノア回路NOR1は、二入力の一入力端がリセット端子Rに接続され、他端がノア回路NOR2の出力端に接続され、出力がQバー端子に接続される。また、ノア回路NOR2は、二入力の一入力端がセット端子Sに接続され、他端がノア回路NOR1の出力端に接続され、出力がQ端子に接続される。
【0058】
この構成により、図6に示すように、比較器B1の出力(パルス(A))は、第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルがVthHからVpの間(時刻t31〜t21の間)、Hレベルとなる。また、比較器B2の出力(パルス(B))は、第2の基準三角波Ptrg2の電圧レベルがVthLからVpの間(時刻t41〜t12の間)、Hレベルとなる。
また、SRフリップフロップSR1の出力Q(バー)は、時刻t31〜t32の間、Hレベルとなり、時刻t32から、次に第1の基準三角波Ptrg1の電圧レベルがVthHとなって比較器B1の出力がHレベルとなる時刻t42の間(時刻t32〜t42の間)、Lレベルとなる。
【0059】
ここで、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2を判定する閾値電圧として定められたゼロクロス点は、V相の交流出力電圧から導かれたものであるから、その周波数は交流発電機1のV相出力と同一周期の信号である。
また、定められたゼロクロス点から導かれた閾値電圧VthH及び閾値電圧VthLはいずれもエンジン稼動直後において、交流発電機1のV相出力と同期した信号であるパルス信号Pb(V相ゼロクロス信号)の立ち上がり又は立ち下がりで取得した電圧値であるから、閾値電圧VthHで立ち上がり、閾値電圧VthLで立ち下がる信号は、交流発電機1のV相出力と位相差のない信号である。すなわち、SRフリップフロップSR1の出力Q(バー)から取り出す信号は、交流発電機1のV相出力と位相及び周波数が一致する信号であるV相同期信号Rvである。
【0060】
例えば、エンジンの稼働中に、交流発電機1のステータ5からのU相の出力の周波数が2倍となれば、パルサコイル6からのパルス信号(基準交流電圧)の周波数も2倍となり、パルス信号Paの周波数も2倍となる。これにより、PLL同期信号Pstの周波数も2倍となり、基準三角波生成回路75が生成する第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2の周波数も2倍となる。しかし、閾値VthH及び電圧値VbLは、エンジン稼働直後に取得した電圧であるので、エンジン稼働中において変化することはない。そのため、三相同期方形波生成回路11が生成するV相同期信号Rvの周波数も、交流発電機1のステータ5からのV相の出力の周波数が2倍になれば、2倍となる。
【0061】
このように、上述した基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11により、U,V,W相からなる三相の同期信号のうちの少なくともいずれか一相の同期信号(上記例ではV相同期信号Rv)を生成することが可能となる。
他の二相については、上記実施例と同様の方法で生成すれば、U相同期信号Ru、W相同期信号Rwについて生成することは可能となる。この場合、例えば、基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11を、U相及びW相についても設けることで対応すればよい。
或いは、次に説明するように、既に生成したV相同期信号Rvから、上述した三角波生成の手法を用いて、U相同期信号Ru、W相同期信号Rwを生成することが可能である。
【0062】
図8は、U,V,W相電圧生成回路の動作を説明するための図であり、U相同期信号Ruから、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwを生成する方法を説明するための図である。以下、図8を参照して、その手順について説明する。
【0063】
(手順1)最初に、U相同期信号Ruの“H(ハイ)”側に同期した三角波(e)を生成する。この三角波(e)はU相同期信号Ruに同期しており、位相幅が180°(0°〜180°)である。また、この三角波(e)はU相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。なお、U相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波の生成方法については上述した通りである。
【0064】
(手順2)同様にして、U相同期信号Ruの“L(ロー)”側に同期した三角波(f)を生成する。この三角波(f)はU相同期信号Ruに同期しており、位相幅が180°(180°〜360°)である。また、この三角波(f)についてもU相同期信号Ruのパルス幅に無関係に、立ち上がり開始時における電圧値(最小電圧値)と立ち上がり終了時における電圧値(最大電圧値)が等しい(高さVp)三角波である。
【0065】
(手順3)次に、三角波(e)のピーク電圧Vpの1/3の高さの点X1と、2/3の高さの点X2を求める。これにより、点X0(三角波(e)の立ち上がり点)と点X1の間、点X1と点X2との間、及び点X2と点X3(三角波(e)の立ち下り点)との間は、それぞれ位相幅が60°となる。同様にして、三角波(f)のピーク電圧Vpの1/3の高さの点Y1、2/3の高さの点Y2を求める。
【0066】
(手順4)次に、点X2から点X3まで“H”となるパルスa1を生成し、また、点Y2から点Y3(三角波(f)の立ち下り点)まで“H”となるパルスb1を生成する。
(手順5)そして、パルスa1の立ち上がりエッジで“H”となり、パルスb1の立ち上がりエッジで“L”に戻る矩形波を生成し、これをV相同期信号Rvとする。
【0067】
(手順6)次に、点X1から点X3まで“H”となるパルスc1を生成し、また、点Y1から点Y3まで”H”となるパルスd1を生成する。
(手順7)そして、パルスd1の立ち上がりエッジで“H”となり、パルスc1の立ち上がりエッジで0に戻る矩形波を生成し、これをW相同期信号Rwとする。
【0068】
上述した手順により、U相に対して120°位相が遅れたV相同期信号Rv、U相に対して240°位相が遅れたW相同期信号Rwを生成することができる。
また、図9は、生成した相(V相)の矩形波と、その矩形波に同期した三角波(e)、(f)から、他の相(U相、W相)の矩形波を生成する回路の構成例を示す図である。以下、図9を参照して、その動作について説明する。
三角波のピーク電圧Vpは、直列に3本接続された抵抗Rにより分圧され、(1/3)×Vpの電圧が比較器A2、A4の(−)入力端子に基準電圧として入力され、(2/3)×Vpの電圧が比較器A1、A3の(−)入力端子に基準電圧として入力される。また、比較器A1、A2の(+)入力端子に三角波(e)が入力され、比較器A3、A4の(+)入力端子に三角波(f)が入力される。
従って、比較器A1の出力は、点X2から点X3まで“H”となり、パルスa1となる。比較器A2の出力は、点X1から点X3まで“H”となり、パルスc1となる。比較器A3の出力は、点Y2から点Y3まで“H”となり、パルスb1となる。比較器A4の出力は、点Y1から点Y3まで“H”となり、パルスd1となる。
【0069】
また、比較器A1及びA3の出力は、オア回路OR1を介して、DフリップフロップD1のクロック端子の入力となる。比較器A2及びA4の出力は、オア回路OR2を介して、DフリップフロップD2のクロック端子の入力となる。
従って、比較器A1の出力(パルスa1)の立ち上がりエッジが、DフリップフロップD1のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“H”であるので、DフリップフロップD1の出力Qは“H”になる。
また、比較器A3の出力(パルスb1)の立ち上がりエッジもDフリップフロップD1のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“L”であるので、出力Qは“L”になる。従って、DフリップフロップD1の出力Qは、パルスa1の立ち上がりエッジからパルスb1の立ち上がりエッジまで“H”となり、V相同期信号Rvが得られる。
【0070】
また、比較器A2の出力(パルスc1)の立ち上がりエッジが、DフリップフロップD2のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“H”であるので、DフリップフロップD2の出力Qは“H”、出力Qの反転出力(Qバー)は“L”になる。
また、比較器A4の出力(パルスd1)の立ち上がりエッジもDフリップフロップD2のクロック端子の入力となり、この時、D入力となるU相のレベルは“L”であるので、出力Qは“L”になり、出力Qの反転出力(Qバー)は“H”になる。従って、DフリップフロップD2の反転出力(Qバー)は、パルス(d1)の立ち上がりエッジからパルス(c1)の立ち上がりエッジまで“H”となり、W相同期信号Rwとなる。
【0071】
このように、上述した基準信号生成回路7及び三相同期方形波生成回路11により、U相、V相、W相の各相に同期した矩形波であるU相同期信号Ru、V相同期信号Rv及びW相同期信号Rwを生成することが可能となる。すなわち、エンジンの回転に同期してパルサコイル6から発生するパルス信号(基準交流電圧)から生成したPLL同期信号Pstにより、U相、V相、W相に同期した矩形波の信号を生成できるため、これを通電タイミングの制御に利用することができる。これにより、サブコイルやホール素子等を設ける必要はなく、三相交流発電機の構造の簡略化と外形の小形化が可能となり、また、製造コストの低減を図ることができる。
【0072】
また、上記実施例においては、基準三角波生成回路75により、複数の三角波Ptrg(三角波a〜f)を生成し、ゼロクロス読み取り回路81により、U相の出力信号(一相の交流出力電圧)と同期したU相ゼロクロス信号であるパルス信号Pbの立ち上がり及び立ち下がりにおける複数の三角波Ptrgの電圧値を読み取ることとした。また、基準三角波生成回路75は、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2に基づいて基準信号を決定するとともに、三相同期方形波生成回路11でのU相同期信号Ru生成に用いる閾値VthH及び閾値VthLを決定する構成とした。これにより、三相同期方形波生成回路11は、第1の基準三角波Ptrg1及び第2の基準三角波Ptrg2と、閾値VthH及び閾値VthLを用いて、U相同期信号Ruを生成する。
【0073】
また、同期三角波Ptrg1のレベルを比較する比較器B1の立ち上がりエッジに同期して、再生するパルスをLレベルに変化させ、同期三角波Ptrg2のレベルを比較する比較器B2の立ち上がりエッジに同期して、再生するパルスをHレベルに変化させることにより、連続したパルスを生成することができ、その生成されたパルスは、相電圧2のゼロクロス信号を復元することができる。
交流発電機1の各相の相電圧の波形は、負荷や運転状態により大きく変化するが、復元したパルスであればその影響を受けることなく、相電圧2のゼロクロス信号として参照することができる。
【0074】
(各相同期信号に基づいたスイッチング素子の導通タイミングについての説明)
例えば、上記実施形態の説明で述べたように、スイッチング素子Q1〜Q6の通電タイミングを決めるため、U相、V相、W相の同期信号(Ru、Rv、Rw)各々から生成した三角波(B、C、A)、各三角波を180°位相シフトした三角波(B’、C’、A’)を使用する。各スイッチング素子にいずれの三角波を用いるかは、進角または遅角のどちらを重要視するかによって選定されるものである。
ところで、本願の発明者がスイッチング素子の通電タイミングについて、各相のスイッチング素子をオンさせる時刻を同期信号各相の立ち上がり(位相角基準)より前にする(進角側で制御する)場合のバッテリ2の充電量と、各相のスイッチング素子をオンさせる時刻を位相角基準より後にする(遅角側で制御する)場合のバッテリ2の充電量とを比較する実験を行った。この実験では、同一の充電量を得るための発電機1のトルクを測定し、進角側の方が遅角側よりトルク量が少ないという実験結果を得て、進角側で制御する方が遅角側で制御する方よりも、同一の充電量を得る際の交流発電機1にかかる負荷が軽くなり、発電機1の制御上好ましいことが判明した。
以下に、この通電タイミング決定の制御の実施例について説明する。
なお、位相角基準は、U相同期信号Ruの場合、立ち上がりを基準(進角0°)として、左側を進角、右側を遅角とする。同様に、V相同期信号Rv、W相同期信号Rwの位相角基準は、それぞれ立ち上がりを基準とし、左側を進角、右側を遅角とする。
【0075】
本実施例においても、誤差アンプ13の出力(誤差アンプ出力Vc)は、バッテリ電圧Vbatが低く、「Vfb<Vref」の場合に、「Vc>0」となり、バッテリ電圧Vbatが高く、「Vfb>Vref」の場合に、「Vc<0」となる。
また、比較回路14(進角/遅角算出手段)は、三相同期三角波生成回路12から出力される三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較し、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチングタイミング(進角/遅角量θ)を決定し、該進角/遅角量θの信号を制御回路20に出力する。
また、本実施例においても、三相同期三角波生成回路12は、三相同期方形波生成回路11(U,V,W相電圧生成回路)から出力される各相の矩形波(それぞれ、U相同期信号Ru、V相同期信号Rv、W相同期信号Rw)に同期した三角波(それぞれ、三角波B、三角波A、三角波Cである)を生成する。また、三相同期三角波生成回路12は、生成したU,V,W各相に対応する三角波を、それぞれ180°位相シフトさせた三角波(それぞれ、三角波B’、三角波A’、三角波C’である)を生成する。
【0076】
ここで、本実施例では、上記実施例とは異なり、U相同期信号Ruに同期させて生成した三角波B(第2U相三角波)と、三角波Bを180°位相シフトさせた三角波B’(第1U相三角波)とを、U相に対応するスイッチング素子Q1及びQ4の通電タイミング決定に用いる。
また、同様に、V相同期信号Rvに同期させて生成した三角波C(第2V相三角波)と、三角波Cを180°位相シフトさせた三角波C’(第1V相三角波)とを、V相に対応するスイッチング素子Q2及びQ5の通電タイミング決定に用いる。
また、同様に、W相同期信号Rwに同期させて生成した三角波A(第2W相三角波)と、三角波Aを180°位相シフトさせた三角波A’(第1W相三角波)とを、W相に対応するスイッチング素子Q3及びQ6の通電タイミング決定に用いる。
【0077】
U相に対応するスイッチング素子Q1及びQ4の通電タイミング決定に三角波B、B’を用いる理由は、次の通りである。
三角波B’(第1U相三角波)を用いると、Vc>0(Vfb<Vref)の場合、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間において、進角または遅角量0°を示す電圧の線L0(Vc=0のレベルの線)よりもVcが高くなる。つまり、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間に、第1U相三角波(三角波B’)とVcとの交点ができる。これにより、U相の位相基準角から進角側へ0°〜90°の間において、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる位相角(進角/遅角量θ)を求めることができる。
また、三角波B’に対して180°位相差がある三角波B(第2U相三角波)を用いると、上記三角波B’とVc=0のレベルの線との交点より、180°遅角側に第2U相三角波(三角波B)とVcとの交点ができる。
つまり、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる時刻から、位相角にして180°遅れた時刻で、スイッチング素子Q1をオフさせ、スイッチング素子Q4をオンさせる。
このようにして、スイッチング素子Q1をオンさせた時刻からオフさせるまでの期間(位相角で180°の期間)トータルで、バッテリ2を充電することができる。
【0078】
一方、Vc<0(Vfb>Vref)の場合、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間において、進角/遅角量0°の線L0よりもVcが低くなる。つまり、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間に、第1U相三角波(三角波B’)とVcとの交点ができる。これにより、U相の位相基準角から進角側へ90°〜180°の間において、スイッチング素子Q1をオンさせ、スイッチング素子Q4をオフさせる位相角(進角/遅角量θ)を求めることができる。
また、三角波B’に対して180°位相差がある三角波B(第2U相三角波)を用いて、スイッチング素子Q1をオフさせ、スイッチング素子Q4をオンさせる。このようにして、スイッチング素子Q1をオンさせた時刻からオフさせるまでの期間(位相角で180°の期間)トータルで、バッテリ2を放電することができる。
【0079】
以上の構成により、U相においては、U相同期信号Ruに同期した第1U相三角波(三角波B’)、及び第2U相三角波(三角波B)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q1、Q4のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
特に、第1U相三角波の高さの最大付近に交点ができる場合(進角0°に近づいた場合)、バッテリは充電量が少ない(Vcの絶対値が大きい)わけであるが、スイッチング素子Q1のオンしている期間とU相が正電圧にある期間とをほぼ一致させることができるので、交流発電機1のU相からバッテリ2への充電量を最大充電量とすることができる。
【0080】
同様にして、V相においては、V相同期信号Rvに同期した第1V相三角波(三角波C’)、及び第2V相三角波(三角波C)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q2、Q5のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
また、同様にして、W相においては、W相同期信号Rwに同期した第1W相三角波(三角波A’)、及び第2W相三角波(三角波A)と、誤差アンプ出力Vcとをそれぞれ比較することにより、スイッチング素子Q3、Q6のON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定する。
【0081】
例えば、比較回路14によって、次のようにON、OFFタイミング(進角/遅角量θ)を決定することができる。
比較回路14は、第1U相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q1のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q4のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2U相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q1のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子Q4のオンタイミングを求める。
また、比較回路14は、第1V相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q2のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q4のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2V相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q2のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子Q5のオンタイミングを求める。
また、比較回路14は、第1W相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q3のオンタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q6のオフタイミングを求める。また、比較回路14は、第2W相三角波と誤差アンプ出力Vcとを比較して、全波整流回路3bの直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q3のオフタイミングを、全波整流回路3bの接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子Q6のオンタイミングを求める。
【0082】
以上述べた構成によりスイッチング素子の通電タイミングの制御を行い、つまり、各相について進角側で制御することにより、バッテリ2に充電する際に交流発電機1にかかる負荷を軽くすることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図1、図2を参照し、第2実施形態について示す。
図10は、交流発電機1の回転数が急に変化している場合の動作を示すタイミングチャートである。図6に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
【0084】
第1実施形態に示した図6のタイミングチャートでは、交流発電機1の回転数の変化に対して、位相調整回路73が充分に追従できる状態を示したものであった。
位相調整回路73の応答特性より交流発電機1の回転数の変化が急峻な場合には、位相調整回路73によって生成するPLL同期信号Pstを、交流発電機1の回転数の変化に追従させて同期させることが困難な場合が生じうる。
【0085】
例えば、エンジン始動時には、エンジン回転数Neが急に上昇することから、エンジン回転数変化量ΔNeは、大きな値を示す。そのような場合、エンジンから動力が供給される交流発電機1の回転数も急に上昇することから、交流発電機1から出力される交流電圧出力の1周期の長さが大きく変化する。
位相調整回路73は、交流発電機1の交流出力電圧の周期の変化に追従して同期するように作動するが、急な変化に対しては応答遅れの影響が生じる。つまり、エンジン回転数Neが急に上昇する場合では、交流発電機1の1周期が短くなるように変化する。位相調整回路73が追従しきれない場合には、位相調整回路73の周期は交流発電機1の周期より相対的に長くなる。
そのため、位相調整回路73が同期している状態では、半周期の間に交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)が3回発生するはずのところ、位相調整回路73が追従できない場合には、半周期の間に交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)1回多く4回検出されることが生じる場合がある。
【0086】
(#4エッジが検出され場合又は#3エッジが検出されない場合の処理)
この図10に示されるタイミングチャートの位相関係では、時刻S10から時刻S20までの期間において、#1エッジ、#2エッジ及び#3エッジに続き#4エッジ(時刻t14)が検出された状態が示される。一方、時刻S20から時刻S11までの期間において。#1エッジ(時刻t21)と#2エッジ(時刻t22)しか検出されない状態が示される。この時刻t21の#1エッジは、本来#2エッジとして検出されるべきものであり、時刻S10から時刻S20までの期間において、#4エッジ(時刻t14)が誤検出されたために誤判定されることになる。
そのため、半周期のうち2番目に検出されたエッジ(#2エッジ(時刻t22))を用いて相信号を復元すると、復元した相信号は、位相がずれて異常な波形となる。
従って、PLL同期信号の半周期に、4回以上のエッジが発生する場合(#4のエッジを検出した場合)、又は、2回以下のエッジしか発生しなかった場合(#3のエッジを検出しない場合)には、検出された同期三角波の電圧値を基準信号として採用しない。
このように、検出された同期三角波の電圧値を基準信号として採用しない場合には、次の周期において再度検出を行うことにより、条件を満足した基準信号を得ることが可能となる。
【0087】
このように、位相検出回路8のゼロクロス読み取り回路81において、検出された交流発電機1の各相のゼロクロス点(エッジ)を、上記に示したゼロクロス点の数に応じて選択する条件を設けることにより、その選択されたゼロクロス点(エッジ)に対応して検出される同期三角波の電圧値を基準信号として選択することができる。
【0088】
(第3実施形態)
図11を参照し、第3実施形態について示す。
図11は、本実施形態の基準信号生成回路の構成を示す図である。図2に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
基準信号生成回路7aは、基準方形波生成回路71、相コイル電圧生成回路72、位相調整回路73、同期判定回路74a、基準三角波生成回路75、及び位相検出回路8a(ゼロクロス読み取り回路81a、ゼロクロス点記憶回路82)から構成される。
同期判定回路74aは、第1実施形態に示した同期判定回路74に、パルス信号Paの周期を検出し、その周期の変化率が予め定められた値より大きいか否かを判定する機能が付加され、その判定結果を位相検出回路8aに出力する。
位相検出回路8aは、ゼロクロス読み取り回路81aとゼロクロス点記憶回路82を備える。
位相検出回路8aのゼロクロス読み取り回路81aは、第1実施形態に示した位相検出回路8のゼロクロス読み取り回路81に、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する機能が付加されている。
付加された第1の選択機能は、交流発電機1の各相の交流出力電圧の位相と、位相調整回路73のPLL同期信号の位相との関係により、検出されたエッジが同期三角波の両端から予め定められる所定の範囲に位置する場合に、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する。
また、付加された第2の選択機能は、同期判定回路74aによって検出されたパルス信号Paの周期の変化率が、予め定められる所定の値より大きい場合には、交流出力電圧のゼロクロス点を選択しない、すなわち、パルス信号Paの周期の変化率が、予め定められる所定の値より小さい場合には、交流出力電圧のゼロクロス点を選択する、
【0089】
(#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合の処理)
交流発電機1の各相の交流出力電圧の位相と、位相調整回路73が生成したPLL同期信号Pstの位相との関係により、各相の交流出力電圧のゼロクロス点を示すパルス信号Pbとして検出されたエッジが、同期三角波の両端に位置する場合がある。
図12は、各相の交流出力電圧のゼロクロス点が、同期三角波の両端に位置する場合の動作を示すタイミングチャートである。図6に示した構成と同じ構成には同じ符号を付す。
#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合には、エンジン回転数Neの変動によって、#1エッジ又は#3エッジを誤判定することにより、#2エッジにおいて検出されるべき同期三角波の電圧値を検出されない場合が生じうる。そのような位相関係では、正しい基準信号を生成できない場合が生じうる。
この状態を回避するため、まず、パルスコイル6が出力するパルス信号から生成したパルス信号Paに基づいて、エンジン回転数Neが急上昇或いは、急下降中であるかを判定し、この場合には、検出された同期三角波の電圧値を採用しない。
エンジン回転数Neの変動が、予め定められた所定の範囲内にある場合には、#1エッジ又は#3エッジが、同期三角波の両端に位置する場合であっても、ゼロクロス読み取り回路81aは、#2エッジのタイミングを選択し、そのタイミングの基準三角波Ptrg1及び基準三角波Ptrg2の電圧値を基準信号として選択する。
【0090】
図13は、図11に示す基準信号生成回路7a及び三相同期方形波生成回路11の動作説明に用いるフローチャートである。
バッテリ電圧Vbattを検出する(ステップS1)。
同期判定回路74aは、位相調整回路73において同期が確立された状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2における判定の結果、同期が確立できる状態にないと判定された場合(ステップS2:No)には、ステップS2の判定を繰り返す。
【0091】
ステップS2における判定の結果、同期が確立できる状態にあると判定された場合(ステップS2:Yes)には、半周期の間のゼロクロス点の数を検出する(ステップS3)。
検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上であると判定された場合(ステップS4:Yes)には、ステップS3に戻る。
【0092】
ステップS4における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、4個以上でないと判定された場合(ステップS4:No)には、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合であるか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS5における判定の結果、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合であると判定された場合(ステップS5:Yes)には、検出されたゼロクロス点が示すタイミングのうち、2番目の#2エッジのタイミングを選択し、選択されたタイミングにおける同期三角波の電圧をゼロクロス点記憶回路82に記憶させ、基準信号の取得処理を終了する(ステップS10)。
【0093】
ステップS5における判定の結果、検出されたゼロクロス点の位置が、同期三角波の両端に位置する場合でないと判定された場合(ステップS5:No)には、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下であると判定された場合(ステップS6:Yes)には、ステップS3に戻る。
【0094】
ステップS6における判定の結果、検出された半周期の間のゼロクロス点の数が、2個以下でない、すなわち3個であると判定された場合(ステップS6:No)には、ステップ10の処理に進む。
【0095】
以上説明した工程により、交流発電機の交流出力電圧を初期状態の確定に用いるだけで、初期状態が確定した後に行う進角又は遅角制御において、交流発電機の交流出力電圧を用いることなく交流発電機の回転数の変化を検出し、その変化に応じて適切な進角又は遅角制御を行うことが可能となる。また、エンジン始動時などに発生しうる急峻な交流発電機の回転数の変化が生じる場合であっても、適切な基準信号を取得することができることから、安定に制御を行ことが可能となる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等も含まれる。
なお、これらの同期三角波のレベルの記憶は、図示されないエンジンのアイドリング回転時に行うことにより、標準状態を設定するのに安定な状態で行うことができる。
例えば、車両に搭載されたエンジンの動力によって駆動される交流発電機1であれば、車両の工場の調整工程において行うことも可能である。また、車両のユーザがエンジンを始動したタイミングに、それぞれ自動で実施させることも可能である。
なお、本実施形態において、バッテリ充電装置を例として示して説明したが、交流発電機からの電力を変換する電力変換装置に、本実施形態に示した位相制御装置を適用し、示した位相制御方法によって制御することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…交流発電機、2…バッテリ、3…バッテリ充電装置、3a…位相制御装置、
3b…全波整流回路、4…ロータ、4a…突起部、5…ステータ、6…パルサコイル、
7,7a…基準信号生成回路、8,8a…位相検出回路、11…三相同期方形波生成回路、
12…三相同期三角波生成回路、13…誤差アンプ、14…比較回路、
20…制御回路、21…進角又は遅角制御回路、22…FET駆動信号生成回路、
71…基準方形波生成回路、72…相コイル電圧生成回路、73…位相調整回路、
74,74a…同期判定回路、75…基準三角波生成回路、
81,81a…ゼロクロス読み取り回路、82…ゼロクロス点記憶回路、
Pa,Pb…パルス信号、Pst…PLL同期信号、
Ru…U相同期信号、Rv…V相同期信号、Rw…W相同期信号、
Ptrg1,Ptrg2,Psaw…基準三角波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置であって、
前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手段と、
前記基準信号生成手段によって生成されたタイミング信号と基準信号とに基づいて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手段と、
前記進角/遅角算出手段により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手段と、
を備えることを特徴とする位相制御装置。
【請求項2】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の半周期に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、前記半周期の間に検出された前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定める
ことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項3】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の半周期と同じ時間幅の三角波を、該タイミング信号の立ち上がり立ち下がりに同期させて生成し、前記生成した三角波の時間幅に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定める
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位相制御装置。
【請求項4】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の周期が示す変化点から、予め定められる所定の範囲の位相幅において、前記各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定める
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項5】
前記進角/遅角算出手段は、
前記整流部によって清流された出力電圧と所定の目標電圧との差分電圧の信号と、前記基準信号生成手段によって生成された基準信号に基づいて前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項6】
前記タイミング信号は、
第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示す
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項7】
前記タイミング信号と、前記基準信号とに基づいて、前記U,V,W相からなる三相の同期信号を生成するU,V,W相電圧生成手段と、
を備え、
前記基準信号生成手段は、
前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した三角波の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した基準信号を生成し、
前記進角/遅角算出手段は、
前記整流部の直流電力側の出力電圧と所定の目標との差分電圧の信号と、前記U,V,W相電圧生成手段により出力される各相の同期信号とに基づき、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める
ことを特徴とする請求項3に記載の位相制御装置。
【請求項8】
前記基準信号生成手段は、
前記基準交流電圧と同期した第1のパルス信号を生成する基準方形波生成回路と、
前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同期した第2のパルス信号を生成する相コイル電圧生成回路と、
前記第1のパルス信号に同期した前記同期信号を生成するタイミング信号生成回路と、
前記タイミング信号として、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同一周期の複数の三角波を発生する基準三角波生成回路と、
前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出回路と、
前記検出されたゼロクロス点に応じた前記複数の三角波の電圧値を、前記複数の三角波各々に対して読み取るゼロクロス点読み取り回路と、
前記三相交流発電機の稼動開始時に、前記ゼロクロス点読み取り回路が読み取った電圧の内から、予め定められた判定基準により選択された前記ゼロクロス点に応じた前記三角波の電圧値を記憶するゼロクロス点記憶回路と、
を備え、
前記記憶した三角波の電圧値を前記基準信号とする
ことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項9】
前記進角/遅角算出手段は、
前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成する同期三角波発生回路と、
前記バッテリの電圧と所定の目標電圧とを比較し誤差信号を出力する誤差アンプと、
前記同期三角波発生回路から出力される三角波と誤差アンプの出力とを比較することにより進角/遅角量を求める比較回路と、を備え、
前記同期三角波発生回路は、
前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成して前記比較回路に出力するとともに、生成したU,V,W各相に対応する三角波(それぞれ第2U相三角波、第2V相三角波、第2W相三角波とする)を、180°位相シフトさせた第1U相三角波、第1V相三角波、第1W相三角波をそれぞれ生成して前記比較回路に出力し、
前記比較回路は、
前記進角/遅角量を求める場合、
前記U相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される前記第1U相三角波及び前記第2U相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、
前記V相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1V相三角波及び前記第2V相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、
前記W相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1W相三角波及び前記第2W相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項10】
前記比較回路は、
前記第1U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、
前記第1V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、
前記第1W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10いずれかに記載の位相制御装置と、
前記位相制御装置により通電タイミングを制御される整流部と、
を備え、
前記整流部の直流電力側の出力電圧に接続されたバッテリを充電する
ことを特徴とするバッテリ充電装置。
【請求項12】
U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置における位相制御方法であって、
前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記基準交流電圧に同期し、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差を調整する基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手順と、
前記基準信号生成手順によって生成された基準信号を前記交流出力電圧との位相差を調整する制御目標として用いて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手順と、
前記進角/遅角算出手順により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手順と、
を含むことを特徴とする位相制御方法。
【請求項1】
U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置であって、
前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差の基準とする基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手段と、
前記基準信号生成手段によって生成されたタイミング信号と基準信号とに基づいて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手段と、
前記進角/遅角算出手段により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手段と、
を備えることを特徴とする位相制御装置。
【請求項2】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の半周期に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が4つの場合には、前記半周期の間に検出された前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点に基づいて、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相とせず、前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数が3つの場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定める
ことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項3】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の半周期と同じ時間幅の三角波を、該タイミング信号の立ち上がり立ち下がりに同期させて生成し、前記生成した三角波の時間幅に含まれる前記各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうちから、前記タイミング信号との位相差を調整する基準位相を定める交流出力電圧のゼロクロス点を定める
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位相制御装置。
【請求項4】
前記基準信号生成手段は、
前記タイミング信号の周期が示す変化点から、予め定められる所定の範囲の位相幅において、前記各相の交流出力電圧のいずれかのゼロクロス点が検出された場合には、前記タイミング信号の半周期において前記検出された各相の交流出力電圧のゼロクロス点のうち2番目に検出された交流出力電圧のゼロクロス点に従って前記基準位相を定める
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項5】
前記進角/遅角算出手段は、
前記整流部によって清流された出力電圧と所定の目標電圧との差分電圧の信号と、前記基準信号生成手段によって生成された基準信号に基づいて前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項6】
前記タイミング信号は、
第1の半周期の間、単調に変化する三角波であり、前記第1の半周期と異なる第2の半周期は、予め定められた一定値を示す
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項7】
前記タイミング信号と、前記基準信号とに基づいて、前記U,V,W相からなる三相の同期信号を生成するU,V,W相電圧生成手段と、
を備え、
前記基準信号生成手段は、
前記定めた交流出力電圧のゼロクロス点における、前記生成した三角波の電圧値を記憶し、記憶した該電圧値に基づいて前記交流出力電圧に同期した基準信号を生成し、
前記進角/遅角算出手段は、
前記整流部の直流電力側の出力電圧と所定の目標との差分電圧の信号と、前記U,V,W相電圧生成手段により出力される各相の同期信号とに基づき、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める
ことを特徴とする請求項3に記載の位相制御装置。
【請求項8】
前記基準信号生成手段は、
前記基準交流電圧と同期した第1のパルス信号を生成する基準方形波生成回路と、
前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同期した第2のパルス信号を生成する相コイル電圧生成回路と、
前記第1のパルス信号に同期した前記同期信号を生成するタイミング信号生成回路と、
前記タイミング信号として、前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧と同一周期の複数の三角波を発生する基準三角波生成回路と、
前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出回路と、
前記検出されたゼロクロス点に応じた前記複数の三角波の電圧値を、前記複数の三角波各々に対して読み取るゼロクロス点読み取り回路と、
前記三相交流発電機の稼動開始時に、前記ゼロクロス点読み取り回路が読み取った電圧の内から、予め定められた判定基準により選択された前記ゼロクロス点に応じた前記三角波の電圧値を記憶するゼロクロス点記憶回路と、
を備え、
前記記憶した三角波の電圧値を前記基準信号とする
ことを特徴とする請求項1に記載の位相制御装置。
【請求項9】
前記進角/遅角算出手段は、
前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成する同期三角波発生回路と、
前記バッテリの電圧と所定の目標電圧とを比較し誤差信号を出力する誤差アンプと、
前記同期三角波発生回路から出力される三角波と誤差アンプの出力とを比較することにより進角/遅角量を求める比較回路と、を備え、
前記同期三角波発生回路は、
前記U,V,W相電圧生成回路から出力される各相の矩形波に同期した三角波を生成して前記比較回路に出力するとともに、生成したU,V,W各相に対応する三角波(それぞれ第2U相三角波、第2V相三角波、第2W相三角波とする)を、180°位相シフトさせた第1U相三角波、第1V相三角波、第1W相三角波をそれぞれ生成して前記比較回路に出力し、
前記比較回路は、
前記進角/遅角量を求める場合、
前記U相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される前記第1U相三角波及び前記第2U相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、
前記V相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1V相三角波及び前記第2V相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求め、
前記W相の進角/遅角量を、前記同期三角波発生回路から出力される第1W相三角波及び前記第2W相三角波と、前記誤差アンプ出力とを比較して求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項10】
前記比較回路は、
前記第1U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2U相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたU相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、
前記第1V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2V相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたV相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求め、
前記第1W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを求め、
前記第2W相三角波と前記誤差アンプ出力とを比較して、前記整流部の直流電力側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオフタイミングを、前記整流部の接地側に設けられたW相に対応するスイッチング素子のオンタイミングを求める、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の位相制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10いずれかに記載の位相制御装置と、
前記位相制御装置により通電タイミングを制御される整流部と、
を備え、
前記整流部の直流電力側の出力電圧に接続されたバッテリを充電する
ことを特徴とするバッテリ充電装置。
【請求項12】
U,V,W相からなる三相交流発電機から出力された交流電力を直流電力に変換するブリッジ構成された整流部のスイッチング素子の通電タイミングを、前記三相交流発電機の交流出力電圧の位相に対して進み又は遅らせることにより進角/遅角制御を行う位相制御装置における位相制御方法であって、
前記三相交流発電機のロータの回転により発生するロータの回転周波数を示す基準交流電圧に基づいて、前記基準交流電圧に同期し、前記交流出力電圧の周期と同じ周期のタイミング信号を生成し、該タイミング信号の半周期に含まれる前記三相交流発電機の各相の交流出力電圧のゼロクロス点の数に基づいて、前記タイミング信号と前記交流出力電圧との位相差を調整する基準位相を定める基準信号を生成する基準信号生成手順と、
前記基準信号生成手順によって生成された基準信号を前記交流出力電圧との位相差を調整する制御目標として用いて、前記スイッチング素子の通電タイミングの進角/遅角量を求める進角/遅角算出手順と、
前記進角/遅角算出手順により求めた進角/遅角量により前記スイッチング素子の進角/遅角制御を行う進角/遅角制御手順と、
を含むことを特徴とする位相制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−39817(P2012−39817A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179520(P2010−179520)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
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