位置推定装置、方法及びコンピュータ・プログラム
【課題】通信が制約される環境についても端末が操作された位置を推定する。
【解決手段】所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備える。ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【解決手段】所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備える。ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末の位置推定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCに代表される移動情報端末(本出願において単に「端末」とも呼ぶ)の位置情報を活かした各種サービスが発達している。端末の位置を取得する代表的な技術はGPSであるが、GPS機能を備えない端末やGPS衛星を見通せない場所で端末の位置を得る技術として、近くにある他の端末など周囲の電波源からの電界強度やそれら電波源の位置情報から、自端末の位置を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術でも、駅間の地下鉄車内など通信が制約される環境では、位置推定の基準とする電波が遮断されるため、位置の把握が不可能という問題があった。特に、ソーシャルメディアの活用などにより、地下鉄車内など含めてどこでも誰でもいつでも、端末を操作して容易に事件報告など情報の共有や交換ができるサービスを検討する場合、通信が制約される環境のため報告された位置という肝心な情報がないと、有用性に限界が生じる。
【0005】
上記の課題に対し、本発明の目的は、通信が制約される環境についても端末が操作された位置を推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様(6)は、上記態様を端末装置のカテゴリで捉えたもので、所定の操作が与えられた位置を推定する端末において、前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様(7)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、所定の操作が端末に与えられた位置をコンピュータが推定する位置推定方法において、コンピュータが、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させる処理と、コンピュータが、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させる処理と、コンピュータが、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定処理と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様(8)は、上記態様をコンピュータ・プログラムのカテゴリで捉えたもので、コンピュータを用いた端末を制御することにより、所定の操作が与えられた位置を推定させるコンピュータ・プログラムにおいて、そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させ、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させ、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定させることを特徴とする。
【0010】
このように、ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【0011】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記位置推定手段は、前記アクション時刻の前に取得された前記端末の位置情報を前位置、この前位置に対応する時刻情報を前時刻とし、前記アクション時刻の後に取得された前記端末の位置情報を後位置、この後位置に対応する時刻情報を後時刻とし、前記前時刻から前記アクション時刻までの経過時間を第一経過時間、前記アクション時刻から前記後時刻までの経過時間を第二経過時間としたとき、前記前位置と前記後位置の間の線分を、前記第一経過時間と前記第二経過時間の比で内分する点の位置を前記端末位置と推定することを特徴とする。
【0012】
このように、アクション時刻の前の位置と後の位置を結ぶ線分上を端末がユーザと共に一定速度で移動したものとモデル化し、それら前の位置での時刻から後の位置での時刻までの経過時間の中でアクション時刻が該当する割合に応じた内分点まで移動したときに、操作が行われたと推定することにより、簡明な計算処理で実用的精度の端末位置を迅速に推定することが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を記憶している特徴情報記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の前記位置情報及び前記時刻情報と、前記特徴情報記憶手段に記憶されている前記特徴情報と、に基づいて前記移動手段を判定する判定手段を備え、前記位置推定手段は、判定された前記移動手段の前記特徴情報と、前記位置情報及び前記時刻情報と、を用いて前記アクション時刻における前記端末位置を推定することを特徴とする。
【0014】
このように、徒歩や地下鉄などユーザの移動手段ごとに、速度の範囲や、線路、道路、航路など通る位置の範囲を表す特徴情報を用いて、移動手段を優れた精度で判定したうえ、その移動手段の特徴情報と、アクション時刻前後の位置と時刻の情報を用いることで、操作時の端末位置をより高精度に推定が可能となる。
【0015】
本発明の他の態様(4)は、上記いずれかの態様において、定時運行公共交通機関である前記移動手段について、路線ごとの運行ダイヤ情報を記憶しているダイヤ記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報と、前記路線の前記運行ダイヤ情報と、に基づいて、前記アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する便特定手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
このように、地下鉄、バス等の定時運行公共交通機関について、運行ダイヤ情報に基づき、端末の操作に対応する路線における運行便すなわち何時の列車やバスだったかを特定することにより、操作で発信された報告などの客観的情報価値を高めることができる。
【0017】
本発明の他の態様(5)は、上記いずれかの態様において、前記定時運行公共交通機関の前記路線と対応付けて、前記端末への前記操作により報告された事象の情報を記憶する事象情報記憶手段と、端末から受信した経路検索要求に応じた経路探索結果をその端末へ送信する経路探索手段と、送信しようとする前記経路探索結果に、前記事象情報記憶手段に記憶されている前記路線が含まれているとき、その路線に対応する前記事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する注意付加手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このように、端末操作で報告された痴漢被害などの事象の情報を路線と対応付けて記憶し、他のユーザなどが経路検索をした際にその地下鉄等の路線が経路に含まれていた場合、アラート等の注意喚起情報を付加することにより、実際に現場を利用しているユーザ間できめ細かい情報の共有や交換が実現でき、効果的被害防止などの情報活用を図ることができる。
【0019】
なお、上記の各態様は、明記しない他のカテゴリ(方法、プログラム、システムなど)としても把握することができ、方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、「処理」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は本出願に直接明記するものに限定されず、処理順序を変更したり、一部の処理をまとめてもしくは随時一部分ずつ実行するなど、変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理やステップを実行するサーバや端末などのコンピュータは共通でもよいし、処理ごとにもしくはタイミングごとに異なってもよい。加えて、本発明は、後述するさらに具体的な各態様を含むものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信が制約される環境についても端末が操作された位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態について構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(アクションのデータ)。
【図3】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(前後位置時刻)。
【図4】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(端末位置の推定)。
【図5】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(投稿の画面)。
【図6】本発明の実施形態における位置の推定を示す概念図(直線の場合)。
【図7】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(特徴情報)。
【図8】本発明の実施形態における位置の推定を示す概念図(屈曲の場合)。
【図9】本発明の実施形態における運行ダイヤグラムを例示する概念図。
【図10】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(注意喚起の付加)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って例示する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項は適宜省略する。
【0023】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1の構成図に示すように、投稿を受け付けるウェブサーバ装置として実現された位置推定装置1(以下「本装置1」「本装置」「サーバ」とも呼ぶ)と、ユーザが用いる端末Tと、を通信ネットワークN(例えば、携帯電話、PHS、公衆無線LANなどの移動通信網、インターネットなど)を介して組み合わせた情報処理システムに関するものである。
【0024】
このうち、本装置1は、クライアントシステムである端末Tとの通信ネットワークNを介した通信により、ユーザが体験した事件などの事象について投稿を受け付け、その投稿内容を他のユーザにも提供する他、そのような投稿のための所定の操作が端末Tに与えられた位置を推定する装置である。この本装置1は、コンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークNとの通信手段8(移動通信網との通信回路、通信ゲートウェイ装置、無線LANアダプタなど)と、を有する。
【0025】
また、端末Tは、本装置1と通信ネットワークを介して通信することで、操作データなどの送信や表示データの受信などを行う情報処理装置で、具体的には、スマートフォン、携帯電話端末、タブレットPCなどのモバイル情報端末や、その他のパーソナルコンピュータなどである。端末Tは、模式的な図1に拘らず、実際はユーザ数に応じ多数存在し、上記のようなコンピュータの構成に加え、図示はしないが、液晶表示パネル、タッチパネル、キーボードやマウスなどの入出力部と、ウェブブラウザ等の関連要素を有する。
【0026】
本装置1では、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,15ほか)を実現する。それら要素のうち情報の記憶手段は、記憶装置7上のファイルなど任意のデータ形式で実現できるほか、ネットワークコンピューティング(クラウド)によるリモート記憶でもよい。また、記憶手段は、データの格納領域だけでなく、データの入出力や管理などの機能を含んでもよい。また、本出願に示す記憶手段の単位は説明上の便宜によるもので、適宜、構成を分けたり一体化できるほか、明示する記憶手段以外にも、各手段の処理データや処理結果などを記憶する記憶手段を適宜用いるものとする。
【0027】
上記のような記憶手段のうち、事象情報記憶手段11は、前記事象について操作により投稿された内容を記憶する記憶手段で、図2に例示するように、端末Tに前記操作が与えられた時刻をアクション時刻TXとして記憶する時刻記憶手段を兼ねる。この図2に例示するように、より具体的には事象情報記憶手段11は、アクション時刻における操作で入力された情報の趣旨を表すアクション属性や、具体的なアクション内容(例えば、文字入力された内容や選択された選択肢の情報など)などの情報をアクション時刻TXと対応付けて記憶し、また、本実施形態により推定された端末位置もアクション位置PXとして記憶されている。但し、例えばアクションID「02589」については、アクション位置PXがまだ推定されておらず空欄となっている。本実施形態は、このようなアクション位置PXの推定に係るものである。
【0028】
また、前後位置記憶手段13は、アクション時刻の前及び後に取得された端末Tの位置情報及び対応する時刻情報(以下「前後位置時刻」とも呼ぶこととする)を記憶する手段であり、一例を図3に示す。ここで、アクション時刻TXの前に取得された端末Tの位置情報を前位置P1、この前位置P1に対応する時刻情報を前時刻T1と呼ぶこととする。また、アクション時刻の後に取得された端末Tの位置情報を後位置P2、この後位置P2に対応する時刻情報を後時刻T2と呼ぶこととする。図3の例では、アクションID「02589」について、前位置P1及び対応する前時刻T1、ならびに後位置P2及び対応する後時刻T2を記憶している。
【0029】
なお、図中(例えば図1)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用(例えば図4)を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0030】
〔2.作用効果の概要〕
上記のように構成された本装置1は、痴漢や粗暴犯に代表される犯罪や迷惑行為などの事象について、体験したり見聞したユーザからスマートフォンのアプリ(アプリケーション・プログラム)などの端末Tを通じた投稿を受け付け、投稿された事象の情報を他のユーザの端末Tにも提供するサービスを提供する。例えば、図5は、端末Tの前記アプリが投稿を受け付ける画面Gの例であり、ユーザが指Fにより、ドラムを回すように選択肢を切換えるピッカーやその他の適宜な画面パーツPで投稿内容をタッチ操作などで選び、「次へ」ボタンBをタップすると本装置1への投稿内容の送信へ処理が進む。
【0031】
この場合、投稿に用いる上記アプリの操作は、地下鉄の駅間などスマートフォンの通信回線電波やGPS衛星電波などが無いために端末位置がリアルタイムに確認すなわち測位できない場所でも行うことが可能であり、その時刻(「アクション時刻」)はスマートフォンの内蔵時計機能により正確に記録できる。しかし、時刻ではなく操作が行われた時点の端末位置については、上記のように電波が無いなどの場合は操作時点では特定できず、その場合、本装置1は位置推定装置として、その操作が行われた場所、すなわちそのアクション時刻における端末位置を推定する。この推定に関する処理手順を図4のフローチャートに示す。
【0032】
その要点は、位置推定手段15が、前後位置記憶手段13に記憶されている前後位置時刻に基づいて、事象情報記憶手段11に記憶されているアクション時刻における端末位置を推定することである(ステップS22)。この推定に用いるアクション時刻と前後位置時刻については、事象を報告するタップ操作など所定の操作(「アクション」と呼んでおく」)を受け付けた端末Tのアプリが(ステップS11)、取得して記憶しておき(ステップS12)、次に端末Tが通信回線電波圏内に到達したときに(ステップS13)、通信回線を介して本装置1へ、投稿情報すなわちアクション情報の一部として送信する(ステップS14)。
【0033】
このように送信されたアクション時刻及び前後位置時刻は、投稿受付手段10がアクション情報の一部として受信する(ステップS21)。そして、アクション時刻は事象情報記憶手段11に、前後位置時刻については前後位置記憶手段13に記憶させ、位置推定手段15が、これら前後位置時刻に基づいて前記アクション時刻における端末位置を推定する(ステップS22)。なお、前後位置時刻についてはアクション時刻の前後のものだけを選択的に記憶させる以外にも、端末Tの移動経路として位置と時刻の情報を継続的に収集し、そのなかからアクション時刻の前後のものだけを前後位置時刻として抽出し端末位置の推定に利用してもよい。
【0034】
また、これらアクション時刻及び前後位置時刻を用いて位置推定手段15が端末位置を推定する手法は自由であるが、典型的には、アクション時刻前後の位置情報を結ぶ線分を、アクション時刻を基に内分することで求めることができる。
【0035】
より具体的には、図6に示すように、時間経過を破線矢印で示し、前時刻T1からアクション時刻TXまでの経過時間を第一経過時間ta、アクション時刻TXから後時刻T2までの経過時間を第二経過時間tbと呼ぶこととする。このとき、位置推定手段15は、前位置P1と後位置P2の間の線分L(実線矢印で示す)を、第一経過時間taと第二経過時間tbの比で内分する点の位置を端末位置であるアクション位置PXと推定する。
【0036】
図6の例では、説明のため単純化した例として、前位置P1の平面座標を(0,0)、後位置P2の平面座標を(5,10)とし、前時刻を午前7時55分、後時刻を午前8時00分とし、アクション時刻TXを午前7時58分とする。この場合、P1−P2間の線分Lを、第一経過時間ta(2分間)と第二経過時間tb(3分間)の比で内分する点の位置である平面座標(2,4)を端末位置であるアクション位置PXと推定する。
【0037】
このように、ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【0038】
特に、本実施形態では、アクション時刻の前の位置と後の位置を結ぶ線分上を端末がユーザと共に一定速度で移動したものとモデル化し、それら前の位置での時刻から後の位置での時刻までの経過時間の中でアクション時刻が該当する割合に応じた内分点まで移動したときに、操作が行われたと推定することにより(例えば図6)、簡明な計算処理で実用的精度の端末位置を迅速に推定することが可能となる。
【0039】
なお、上記のように端末位置を推定する処理は、事象の詳細情報について登録を受け付けた後に限定する必要はなく、各処理の具体的タイミングは自由である。例えば、ユーザから、タップ操作など何らかの所定のアクションを受け付けてそのアクション時刻やそのアクション時刻から推定した端末位置を先に本装置1などで記録し、報告内容など具体的な事象の内容については後ほど改めて詳細登録を受け付けるなど、任意のタイミングで別途入力を受け付けるようにしてもよい。このようにすれば、現場では咄嗟の対応としてその時刻や場所だけを記録し、詳細については駅到着後や後で追い付いて時間を取れるときなどに落ち着いて入力できるので、気軽な操作による投稿の増大や、投稿される情報の質的改善を図ることができる。
【0040】
〔3.特徴情報に基づく位置の推定〕
さらに、アクション時刻における端末位置の推定は、徒歩又は地下鉄といった移動手段ごとの通る位置や速度の情報を用いれば、さらに高精度化できる。この場合、図7に例示するように、移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を、特徴情報記憶手段31に予め記憶させておく。例えば、図7に示す「地下鉄○○線」の位置の範囲は、曲線を含む実際の路線を、屈曲点と直線の集合とみなし、屈曲点の緯度経度を順に接続したデータとして表している。
【0041】
なお、位置の範囲を表す特徴情報として、例えば、鉄道路線の位置を点列で表したデータを用いれば、前位置P1や後位置P2とその点列との一致を判断することで、道路や河川が隣接しているような場合も、移動手段が鉄道か否かを高精度に判定できる。また、地下鉄A駅構内に設置された携帯電話用アンテナ基地局と交信後、次に交信したのが、隣接駅である地下鉄B駅構内に設置された携帯電話アンテナ基地局であることをもって、A駅とB駅との間を地下鉄で移動したと判断することもできる。また、位置の範囲を表す特徴情報として、例えば、水上や航空における航路の範囲をポリゴンで表したデータを用いれば、航路に幅がある移動手段についても判定が可能となる。
【0042】
〔3−1.移動手段の判定〕
そして、図7に例示したような特徴情報と前後位置時刻を照合比較し、該当する特徴情報があれば(図4のステップS23:「YES」)、判定手段33が、前後位置時刻と、特徴情報記憶手段31に記憶されているその特徴情報と、に基づいて移動手段を判定する(ステップS24)。この際、移動手段の判定基準とする特徴情報は、位置の範囲または速度の範囲の一方でもよいし双方でもよい。一方とすれば特徴情報のデータと判定処理が単純で済むし、双方の併用とすれば高精度に判定できる。
【0043】
例えば、図7に例示するように、前後位置情報に基づく端末の位置の範囲が水上であれば(例えば、地図データ中の水面位置と所定時間継続して一致しているなど)それだけで移動手段は船舶と判断できるし、また、移動速度が時速400km程度を超えれば、移動手段は航空機と判定できる。別の例として、同じように端末の位置が地図データ中の道路位置と所定時間継続して一致している場合でも、時速7km程度までなら徒歩、時速30km〜100km程度なら自動車といった判定も可能である。
【0044】
〔3−2.端末位置の推定〕
また、位置推定手段15は、判定された移動手段の特徴情報と、前後位置時刻と、を用いてアクション時刻TXにおける端末位置であるアクション位置PXを推定する(図4のステップS25)。例えば、図8に例示するように、前位置P1と後位置P2とを結ぶ鉄道路線や道路の位置の範囲を表す特徴情報が、直線状ではなく折れ曲がった屈曲線L2であったりカーブしていたりすることを表す、点列データや円弧その他のデータ表現態様である場合が考えられる。
【0045】
この場合、位置推定手段15は、前位置P1と後位置P2の間の屈曲線L2(図8中の実線矢印)や曲線路の全長を基準に、それを第一経過時間taと第二経過時間tbの比で内分する点の位置を端末位置PXと推定すれば、図6のような直線とみなして内分点を端末位置と推定するよりも優れた精度で端末位置が推定できる。
【0046】
このように、徒歩や地下鉄などユーザの移動手段ごとに、速度の範囲や、線路、道路、航路など通る位置の範囲を表す特徴情報(例えば図7)を用いて、移動手段を優れた精度で判定したうえ、その移動手段の特徴情報と、アクション時刻前後の位置と時刻の情報を用いることで、操作時の端末位置をより高精度に推定が可能となる。
【0047】
〔4.ダイヤに基づく位置の推定〕
さらに、端末が操作された運行便を運行ダイヤグラムから特定すれば、操作で発信された報告などの価値を高めることができる。この場合、定時運行公共交通機関である移動手段について、路線ごとの運行ダイヤグラムを表す運行ダイヤ情報を、ダイヤ記憶手段41に予め記憶しておく。運行ダイヤ情報の形式は自由であるが、一例として、便番号等の識別情報ごとに、走行の方向や発着地、駅等での停車時間、駅間での平均速度や速度遷移をグラフや、グラフを表す数値などで表したものが考えられる(例えば図9)。
【0048】
そして、移動手段として判定された定時運行公共交通機関について運行ダイヤ情報がダイヤ記憶手段41に記憶されている場合(ステップS26:「YES」)、便特定手段43が、前後位置記憶手段13に記憶されている位置情報及び対応する時刻情報(すなわち前後位置時刻)と、路線の運行ダイヤ情報と、に基づいて、アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する(ステップS27)。例えば、図9に例示するダイヤグラムにおいて、星印X1で示すアクション時刻及び端末位置は、A駅からB駅へ向かう下り02列車の時刻に応じた位置よりも、B駅からA駅へ向かう上り01列車の時刻に応じた位置に近いので、対応する運行便は上り01列車と特定できる。
【0049】
さらに、上記のように特定された運行便における例えば鉄道線路上などにおける移動経路と一致するように、例えばナビゲーション分野におけるマップマッチング技術と同様に位置を補正するなどして端末位置を推定すれば、端末位置推定の精度が一層改善できる。
【0050】
なお、便特定手段43が第一次的に、アクション時刻及び推定された端末位置と、運行ダイヤ情報と、に基づいて前記運行便を特定し、アクション時刻及び推定された端末位置に該当する運行便が、例えば星印X2で示すアクション時刻及び端末位置のように、上り01列車と下り02列車のように複数存在する場合に限り、前後位置時刻から端末Tの移動方向を判定することにより運行便を特定するようにしてもよい。このようにすれば、アクション時刻及び推定された端末位置に該当する運行便が運行ダイヤ情報から一つに限られる場合は、前後位置時刻を用いて端末Tの移動方向を判定するまでもないため、処理が単純で済み、処理負荷の軽減や処理の迅速化が可能となる。
【0051】
このように、地下鉄、バス等の定時運行公共交通機関について、運行ダイヤ情報に基づき、端末の操作に対応する路線における運行便すなわち何時の列車やバスだったかを特定することにより、操作で発信された報告などの客観的情報価値を高めることができる。
【0052】
〔5.注意喚起の付加〕
上記のように報告された事象の情報を基に、経路探索結果に注意喚起情報を付加するようにすれば、ユーザ間の情報活用が促進できる。この場合、事象情報記憶手段11に、定時運行公共交通機関の路線と対応付けて、端末Tへの操作により報告された事象の情報を記憶させておく。また、ダイクストラ法その他による経路探索に用いる経路探索情報を、経路探索情報記憶手段51に予め記憶させておく。この経路探索情報は、具体的には自由であるが、一般的ないわゆる地図情報データベースなどの他、交通経路として公共交通機関の乗換駅等のネットワーク構造や区間所要時間などをデータ化した情報などでもよい。
【0053】
そして、図10のフローチャートに示すように、経路探索手段53は、端末Tから受信した経路検索要求に応じ(ステップS31,S41)、経路探索情報記憶手段51に記憶されている経路探索情報を用いた経路探索(ステップS42)の結果をその端末Tへ送信する(ステップS45)。この際、注意付加手段55が、送信しようとする経路探索結果に、事象情報記憶手段11に記憶されている路線が含まれているとき(ステップS43:「YES」)、その路線に対応する事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する(ステップS44)。
【0054】
このように、端末操作で報告された痴漢被害などの事象の情報を路線と対応付けて記憶し、他のユーザなどが経路検索をした際にその地下鉄等の路線が経路に含まれていた場合、アラート等の注意喚起情報を付加することにより、実際に現場を利用しているユーザ間できめ細かい情報の共有や交換が実現でき、効果的被害防止などの情報活用を図ることができる。
【0055】
〔6.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。一例として、アクションで報告する事象の内容は自由であり、痴漢その他の被害以外にも、遅延など運行支障の情報、地下鉄車外に見えた広告や、地下鉄構内の施設や店舗などに関する利便や評価等の情報や、乗り物の種類を問わず乗り心地や景色その他の情報でもよい。
【0056】
また、位置推定の機能は、上記実施形態で例示したようにサーバ装置として実現する以外にも、スマートフォンのアプリなどが実現する端末における装置、方法やプログラムとして実現することもできる。例えば、上記実施形態に準じ、位置推定装置である端末において、図1に示した各手段(例えば、事象情報記憶手段、前後位置記憶手段、位置推定手段など)を実現する。
【0057】
また、本装置1を構成する個々の手段を、さらにそれぞれ独立した装置で実現する構成も一般的である。同様に、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出すことで、上記実施形態で示した各手段を実現するなど、本発明の構成は柔軟に変更できる。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 位置推定装置(本装置)
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
10 投稿受付手段
11 事象情報記憶手段
13 前後位置記憶手段
15 位置推定手段
31 特徴情報記憶手段
33 判定手段
41 ダイヤ記憶手段
43 便特定手段
51 経路探索情報記憶手段
53 経路探索手段
55 注意付加手段
B ボタン
F 指
G 画面
L 線分
L2 屈曲線
N 通信ネットワーク
P 画面パーツ
P1 前位置
P2 後位置
PX アクション位置
T 端末
T1 前時刻
T2 後時刻
ta 第一経過時間
tb 第二経過時間
TX アクション時刻
X1 星印
X2 星印
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末の位置推定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCに代表される移動情報端末(本出願において単に「端末」とも呼ぶ)の位置情報を活かした各種サービスが発達している。端末の位置を取得する代表的な技術はGPSであるが、GPS機能を備えない端末やGPS衛星を見通せない場所で端末の位置を得る技術として、近くにある他の端末など周囲の電波源からの電界強度やそれら電波源の位置情報から、自端末の位置を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術でも、駅間の地下鉄車内など通信が制約される環境では、位置推定の基準とする電波が遮断されるため、位置の把握が不可能という問題があった。特に、ソーシャルメディアの活用などにより、地下鉄車内など含めてどこでも誰でもいつでも、端末を操作して容易に事件報告など情報の共有や交換ができるサービスを検討する場合、通信が制約される環境のため報告された位置という肝心な情報がないと、有用性に限界が生じる。
【0005】
上記の課題に対し、本発明の目的は、通信が制約される環境についても端末が操作された位置を推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様(6)は、上記態様を端末装置のカテゴリで捉えたもので、所定の操作が与えられた位置を推定する端末において、前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様(7)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、所定の操作が端末に与えられた位置をコンピュータが推定する位置推定方法において、コンピュータが、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させる処理と、コンピュータが、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させる処理と、コンピュータが、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定処理と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様(8)は、上記態様をコンピュータ・プログラムのカテゴリで捉えたもので、コンピュータを用いた端末を制御することにより、所定の操作が与えられた位置を推定させるコンピュータ・プログラムにおいて、そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させ、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させ、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定させることを特徴とする。
【0010】
このように、ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【0011】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記位置推定手段は、前記アクション時刻の前に取得された前記端末の位置情報を前位置、この前位置に対応する時刻情報を前時刻とし、前記アクション時刻の後に取得された前記端末の位置情報を後位置、この後位置に対応する時刻情報を後時刻とし、前記前時刻から前記アクション時刻までの経過時間を第一経過時間、前記アクション時刻から前記後時刻までの経過時間を第二経過時間としたとき、前記前位置と前記後位置の間の線分を、前記第一経過時間と前記第二経過時間の比で内分する点の位置を前記端末位置と推定することを特徴とする。
【0012】
このように、アクション時刻の前の位置と後の位置を結ぶ線分上を端末がユーザと共に一定速度で移動したものとモデル化し、それら前の位置での時刻から後の位置での時刻までの経過時間の中でアクション時刻が該当する割合に応じた内分点まで移動したときに、操作が行われたと推定することにより、簡明な計算処理で実用的精度の端末位置を迅速に推定することが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を記憶している特徴情報記憶手段と、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の前記位置情報及び前記時刻情報と、前記特徴情報記憶手段に記憶されている前記特徴情報と、に基づいて前記移動手段を判定する判定手段を備え、前記位置推定手段は、判定された前記移動手段の前記特徴情報と、前記位置情報及び前記時刻情報と、を用いて前記アクション時刻における前記端末位置を推定することを特徴とする。
【0014】
このように、徒歩や地下鉄などユーザの移動手段ごとに、速度の範囲や、線路、道路、航路など通る位置の範囲を表す特徴情報を用いて、移動手段を優れた精度で判定したうえ、その移動手段の特徴情報と、アクション時刻前後の位置と時刻の情報を用いることで、操作時の端末位置をより高精度に推定が可能となる。
【0015】
本発明の他の態様(4)は、上記いずれかの態様において、定時運行公共交通機関である前記移動手段について、路線ごとの運行ダイヤ情報を記憶しているダイヤ記憶手段と、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報と、前記路線の前記運行ダイヤ情報と、に基づいて、前記アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する便特定手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
このように、地下鉄、バス等の定時運行公共交通機関について、運行ダイヤ情報に基づき、端末の操作に対応する路線における運行便すなわち何時の列車やバスだったかを特定することにより、操作で発信された報告などの客観的情報価値を高めることができる。
【0017】
本発明の他の態様(5)は、上記いずれかの態様において、前記定時運行公共交通機関の前記路線と対応付けて、前記端末への前記操作により報告された事象の情報を記憶する事象情報記憶手段と、端末から受信した経路検索要求に応じた経路探索結果をその端末へ送信する経路探索手段と、送信しようとする前記経路探索結果に、前記事象情報記憶手段に記憶されている前記路線が含まれているとき、その路線に対応する前記事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する注意付加手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このように、端末操作で報告された痴漢被害などの事象の情報を路線と対応付けて記憶し、他のユーザなどが経路検索をした際にその地下鉄等の路線が経路に含まれていた場合、アラート等の注意喚起情報を付加することにより、実際に現場を利用しているユーザ間できめ細かい情報の共有や交換が実現でき、効果的被害防止などの情報活用を図ることができる。
【0019】
なお、上記の各態様は、明記しない他のカテゴリ(方法、プログラム、システムなど)としても把握することができ、方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、「処理」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は本出願に直接明記するものに限定されず、処理順序を変更したり、一部の処理をまとめてもしくは随時一部分ずつ実行するなど、変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理やステップを実行するサーバや端末などのコンピュータは共通でもよいし、処理ごとにもしくはタイミングごとに異なってもよい。加えて、本発明は、後述するさらに具体的な各態様を含むものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信が制約される環境についても端末が操作された位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態について構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(アクションのデータ)。
【図3】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(前後位置時刻)。
【図4】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(端末位置の推定)。
【図5】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(投稿の画面)。
【図6】本発明の実施形態における位置の推定を示す概念図(直線の場合)。
【図7】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(特徴情報)。
【図8】本発明の実施形態における位置の推定を示す概念図(屈曲の場合)。
【図9】本発明の実施形態における運行ダイヤグラムを例示する概念図。
【図10】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート(注意喚起の付加)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って例示する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項は適宜省略する。
【0023】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1の構成図に示すように、投稿を受け付けるウェブサーバ装置として実現された位置推定装置1(以下「本装置1」「本装置」「サーバ」とも呼ぶ)と、ユーザが用いる端末Tと、を通信ネットワークN(例えば、携帯電話、PHS、公衆無線LANなどの移動通信網、インターネットなど)を介して組み合わせた情報処理システムに関するものである。
【0024】
このうち、本装置1は、クライアントシステムである端末Tとの通信ネットワークNを介した通信により、ユーザが体験した事件などの事象について投稿を受け付け、その投稿内容を他のユーザにも提供する他、そのような投稿のための所定の操作が端末Tに与えられた位置を推定する装置である。この本装置1は、コンピュータの構成として少なくとも、CPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークNとの通信手段8(移動通信網との通信回路、通信ゲートウェイ装置、無線LANアダプタなど)と、を有する。
【0025】
また、端末Tは、本装置1と通信ネットワークを介して通信することで、操作データなどの送信や表示データの受信などを行う情報処理装置で、具体的には、スマートフォン、携帯電話端末、タブレットPCなどのモバイル情報端末や、その他のパーソナルコンピュータなどである。端末Tは、模式的な図1に拘らず、実際はユーザ数に応じ多数存在し、上記のようなコンピュータの構成に加え、図示はしないが、液晶表示パネル、タッチパネル、キーボードやマウスなどの入出力部と、ウェブブラウザ等の関連要素を有する。
【0026】
本装置1では、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,15ほか)を実現する。それら要素のうち情報の記憶手段は、記憶装置7上のファイルなど任意のデータ形式で実現できるほか、ネットワークコンピューティング(クラウド)によるリモート記憶でもよい。また、記憶手段は、データの格納領域だけでなく、データの入出力や管理などの機能を含んでもよい。また、本出願に示す記憶手段の単位は説明上の便宜によるもので、適宜、構成を分けたり一体化できるほか、明示する記憶手段以外にも、各手段の処理データや処理結果などを記憶する記憶手段を適宜用いるものとする。
【0027】
上記のような記憶手段のうち、事象情報記憶手段11は、前記事象について操作により投稿された内容を記憶する記憶手段で、図2に例示するように、端末Tに前記操作が与えられた時刻をアクション時刻TXとして記憶する時刻記憶手段を兼ねる。この図2に例示するように、より具体的には事象情報記憶手段11は、アクション時刻における操作で入力された情報の趣旨を表すアクション属性や、具体的なアクション内容(例えば、文字入力された内容や選択された選択肢の情報など)などの情報をアクション時刻TXと対応付けて記憶し、また、本実施形態により推定された端末位置もアクション位置PXとして記憶されている。但し、例えばアクションID「02589」については、アクション位置PXがまだ推定されておらず空欄となっている。本実施形態は、このようなアクション位置PXの推定に係るものである。
【0028】
また、前後位置記憶手段13は、アクション時刻の前及び後に取得された端末Tの位置情報及び対応する時刻情報(以下「前後位置時刻」とも呼ぶこととする)を記憶する手段であり、一例を図3に示す。ここで、アクション時刻TXの前に取得された端末Tの位置情報を前位置P1、この前位置P1に対応する時刻情報を前時刻T1と呼ぶこととする。また、アクション時刻の後に取得された端末Tの位置情報を後位置P2、この後位置P2に対応する時刻情報を後時刻T2と呼ぶこととする。図3の例では、アクションID「02589」について、前位置P1及び対応する前時刻T1、ならびに後位置P2及び対応する後時刻T2を記憶している。
【0029】
なお、図中(例えば図1)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用(例えば図4)を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0030】
〔2.作用効果の概要〕
上記のように構成された本装置1は、痴漢や粗暴犯に代表される犯罪や迷惑行為などの事象について、体験したり見聞したユーザからスマートフォンのアプリ(アプリケーション・プログラム)などの端末Tを通じた投稿を受け付け、投稿された事象の情報を他のユーザの端末Tにも提供するサービスを提供する。例えば、図5は、端末Tの前記アプリが投稿を受け付ける画面Gの例であり、ユーザが指Fにより、ドラムを回すように選択肢を切換えるピッカーやその他の適宜な画面パーツPで投稿内容をタッチ操作などで選び、「次へ」ボタンBをタップすると本装置1への投稿内容の送信へ処理が進む。
【0031】
この場合、投稿に用いる上記アプリの操作は、地下鉄の駅間などスマートフォンの通信回線電波やGPS衛星電波などが無いために端末位置がリアルタイムに確認すなわち測位できない場所でも行うことが可能であり、その時刻(「アクション時刻」)はスマートフォンの内蔵時計機能により正確に記録できる。しかし、時刻ではなく操作が行われた時点の端末位置については、上記のように電波が無いなどの場合は操作時点では特定できず、その場合、本装置1は位置推定装置として、その操作が行われた場所、すなわちそのアクション時刻における端末位置を推定する。この推定に関する処理手順を図4のフローチャートに示す。
【0032】
その要点は、位置推定手段15が、前後位置記憶手段13に記憶されている前後位置時刻に基づいて、事象情報記憶手段11に記憶されているアクション時刻における端末位置を推定することである(ステップS22)。この推定に用いるアクション時刻と前後位置時刻については、事象を報告するタップ操作など所定の操作(「アクション」と呼んでおく」)を受け付けた端末Tのアプリが(ステップS11)、取得して記憶しておき(ステップS12)、次に端末Tが通信回線電波圏内に到達したときに(ステップS13)、通信回線を介して本装置1へ、投稿情報すなわちアクション情報の一部として送信する(ステップS14)。
【0033】
このように送信されたアクション時刻及び前後位置時刻は、投稿受付手段10がアクション情報の一部として受信する(ステップS21)。そして、アクション時刻は事象情報記憶手段11に、前後位置時刻については前後位置記憶手段13に記憶させ、位置推定手段15が、これら前後位置時刻に基づいて前記アクション時刻における端末位置を推定する(ステップS22)。なお、前後位置時刻についてはアクション時刻の前後のものだけを選択的に記憶させる以外にも、端末Tの移動経路として位置と時刻の情報を継続的に収集し、そのなかからアクション時刻の前後のものだけを前後位置時刻として抽出し端末位置の推定に利用してもよい。
【0034】
また、これらアクション時刻及び前後位置時刻を用いて位置推定手段15が端末位置を推定する手法は自由であるが、典型的には、アクション時刻前後の位置情報を結ぶ線分を、アクション時刻を基に内分することで求めることができる。
【0035】
より具体的には、図6に示すように、時間経過を破線矢印で示し、前時刻T1からアクション時刻TXまでの経過時間を第一経過時間ta、アクション時刻TXから後時刻T2までの経過時間を第二経過時間tbと呼ぶこととする。このとき、位置推定手段15は、前位置P1と後位置P2の間の線分L(実線矢印で示す)を、第一経過時間taと第二経過時間tbの比で内分する点の位置を端末位置であるアクション位置PXと推定する。
【0036】
図6の例では、説明のため単純化した例として、前位置P1の平面座標を(0,0)、後位置P2の平面座標を(5,10)とし、前時刻を午前7時55分、後時刻を午前8時00分とし、アクション時刻TXを午前7時58分とする。この場合、P1−P2間の線分Lを、第一経過時間ta(2分間)と第二経過時間tb(3分間)の比で内分する点の位置である平面座標(2,4)を端末位置であるアクション位置PXと推定する。
【0037】
このように、ある操作をユーザが端末で行ったアクション時刻を記憶し、その前後に取得した端末の位置及び時刻と組み合わせることにより、操作時点で電波通信圏外など通信が制約される環境のため位置が把握できなかったとしても、それぞれの位置と時刻の関係から、端末が操作されたときの端末位置を推定することができる。
【0038】
特に、本実施形態では、アクション時刻の前の位置と後の位置を結ぶ線分上を端末がユーザと共に一定速度で移動したものとモデル化し、それら前の位置での時刻から後の位置での時刻までの経過時間の中でアクション時刻が該当する割合に応じた内分点まで移動したときに、操作が行われたと推定することにより(例えば図6)、簡明な計算処理で実用的精度の端末位置を迅速に推定することが可能となる。
【0039】
なお、上記のように端末位置を推定する処理は、事象の詳細情報について登録を受け付けた後に限定する必要はなく、各処理の具体的タイミングは自由である。例えば、ユーザから、タップ操作など何らかの所定のアクションを受け付けてそのアクション時刻やそのアクション時刻から推定した端末位置を先に本装置1などで記録し、報告内容など具体的な事象の内容については後ほど改めて詳細登録を受け付けるなど、任意のタイミングで別途入力を受け付けるようにしてもよい。このようにすれば、現場では咄嗟の対応としてその時刻や場所だけを記録し、詳細については駅到着後や後で追い付いて時間を取れるときなどに落ち着いて入力できるので、気軽な操作による投稿の増大や、投稿される情報の質的改善を図ることができる。
【0040】
〔3.特徴情報に基づく位置の推定〕
さらに、アクション時刻における端末位置の推定は、徒歩又は地下鉄といった移動手段ごとの通る位置や速度の情報を用いれば、さらに高精度化できる。この場合、図7に例示するように、移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を、特徴情報記憶手段31に予め記憶させておく。例えば、図7に示す「地下鉄○○線」の位置の範囲は、曲線を含む実際の路線を、屈曲点と直線の集合とみなし、屈曲点の緯度経度を順に接続したデータとして表している。
【0041】
なお、位置の範囲を表す特徴情報として、例えば、鉄道路線の位置を点列で表したデータを用いれば、前位置P1や後位置P2とその点列との一致を判断することで、道路や河川が隣接しているような場合も、移動手段が鉄道か否かを高精度に判定できる。また、地下鉄A駅構内に設置された携帯電話用アンテナ基地局と交信後、次に交信したのが、隣接駅である地下鉄B駅構内に設置された携帯電話アンテナ基地局であることをもって、A駅とB駅との間を地下鉄で移動したと判断することもできる。また、位置の範囲を表す特徴情報として、例えば、水上や航空における航路の範囲をポリゴンで表したデータを用いれば、航路に幅がある移動手段についても判定が可能となる。
【0042】
〔3−1.移動手段の判定〕
そして、図7に例示したような特徴情報と前後位置時刻を照合比較し、該当する特徴情報があれば(図4のステップS23:「YES」)、判定手段33が、前後位置時刻と、特徴情報記憶手段31に記憶されているその特徴情報と、に基づいて移動手段を判定する(ステップS24)。この際、移動手段の判定基準とする特徴情報は、位置の範囲または速度の範囲の一方でもよいし双方でもよい。一方とすれば特徴情報のデータと判定処理が単純で済むし、双方の併用とすれば高精度に判定できる。
【0043】
例えば、図7に例示するように、前後位置情報に基づく端末の位置の範囲が水上であれば(例えば、地図データ中の水面位置と所定時間継続して一致しているなど)それだけで移動手段は船舶と判断できるし、また、移動速度が時速400km程度を超えれば、移動手段は航空機と判定できる。別の例として、同じように端末の位置が地図データ中の道路位置と所定時間継続して一致している場合でも、時速7km程度までなら徒歩、時速30km〜100km程度なら自動車といった判定も可能である。
【0044】
〔3−2.端末位置の推定〕
また、位置推定手段15は、判定された移動手段の特徴情報と、前後位置時刻と、を用いてアクション時刻TXにおける端末位置であるアクション位置PXを推定する(図4のステップS25)。例えば、図8に例示するように、前位置P1と後位置P2とを結ぶ鉄道路線や道路の位置の範囲を表す特徴情報が、直線状ではなく折れ曲がった屈曲線L2であったりカーブしていたりすることを表す、点列データや円弧その他のデータ表現態様である場合が考えられる。
【0045】
この場合、位置推定手段15は、前位置P1と後位置P2の間の屈曲線L2(図8中の実線矢印)や曲線路の全長を基準に、それを第一経過時間taと第二経過時間tbの比で内分する点の位置を端末位置PXと推定すれば、図6のような直線とみなして内分点を端末位置と推定するよりも優れた精度で端末位置が推定できる。
【0046】
このように、徒歩や地下鉄などユーザの移動手段ごとに、速度の範囲や、線路、道路、航路など通る位置の範囲を表す特徴情報(例えば図7)を用いて、移動手段を優れた精度で判定したうえ、その移動手段の特徴情報と、アクション時刻前後の位置と時刻の情報を用いることで、操作時の端末位置をより高精度に推定が可能となる。
【0047】
〔4.ダイヤに基づく位置の推定〕
さらに、端末が操作された運行便を運行ダイヤグラムから特定すれば、操作で発信された報告などの価値を高めることができる。この場合、定時運行公共交通機関である移動手段について、路線ごとの運行ダイヤグラムを表す運行ダイヤ情報を、ダイヤ記憶手段41に予め記憶しておく。運行ダイヤ情報の形式は自由であるが、一例として、便番号等の識別情報ごとに、走行の方向や発着地、駅等での停車時間、駅間での平均速度や速度遷移をグラフや、グラフを表す数値などで表したものが考えられる(例えば図9)。
【0048】
そして、移動手段として判定された定時運行公共交通機関について運行ダイヤ情報がダイヤ記憶手段41に記憶されている場合(ステップS26:「YES」)、便特定手段43が、前後位置記憶手段13に記憶されている位置情報及び対応する時刻情報(すなわち前後位置時刻)と、路線の運行ダイヤ情報と、に基づいて、アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する(ステップS27)。例えば、図9に例示するダイヤグラムにおいて、星印X1で示すアクション時刻及び端末位置は、A駅からB駅へ向かう下り02列車の時刻に応じた位置よりも、B駅からA駅へ向かう上り01列車の時刻に応じた位置に近いので、対応する運行便は上り01列車と特定できる。
【0049】
さらに、上記のように特定された運行便における例えば鉄道線路上などにおける移動経路と一致するように、例えばナビゲーション分野におけるマップマッチング技術と同様に位置を補正するなどして端末位置を推定すれば、端末位置推定の精度が一層改善できる。
【0050】
なお、便特定手段43が第一次的に、アクション時刻及び推定された端末位置と、運行ダイヤ情報と、に基づいて前記運行便を特定し、アクション時刻及び推定された端末位置に該当する運行便が、例えば星印X2で示すアクション時刻及び端末位置のように、上り01列車と下り02列車のように複数存在する場合に限り、前後位置時刻から端末Tの移動方向を判定することにより運行便を特定するようにしてもよい。このようにすれば、アクション時刻及び推定された端末位置に該当する運行便が運行ダイヤ情報から一つに限られる場合は、前後位置時刻を用いて端末Tの移動方向を判定するまでもないため、処理が単純で済み、処理負荷の軽減や処理の迅速化が可能となる。
【0051】
このように、地下鉄、バス等の定時運行公共交通機関について、運行ダイヤ情報に基づき、端末の操作に対応する路線における運行便すなわち何時の列車やバスだったかを特定することにより、操作で発信された報告などの客観的情報価値を高めることができる。
【0052】
〔5.注意喚起の付加〕
上記のように報告された事象の情報を基に、経路探索結果に注意喚起情報を付加するようにすれば、ユーザ間の情報活用が促進できる。この場合、事象情報記憶手段11に、定時運行公共交通機関の路線と対応付けて、端末Tへの操作により報告された事象の情報を記憶させておく。また、ダイクストラ法その他による経路探索に用いる経路探索情報を、経路探索情報記憶手段51に予め記憶させておく。この経路探索情報は、具体的には自由であるが、一般的ないわゆる地図情報データベースなどの他、交通経路として公共交通機関の乗換駅等のネットワーク構造や区間所要時間などをデータ化した情報などでもよい。
【0053】
そして、図10のフローチャートに示すように、経路探索手段53は、端末Tから受信した経路検索要求に応じ(ステップS31,S41)、経路探索情報記憶手段51に記憶されている経路探索情報を用いた経路探索(ステップS42)の結果をその端末Tへ送信する(ステップS45)。この際、注意付加手段55が、送信しようとする経路探索結果に、事象情報記憶手段11に記憶されている路線が含まれているとき(ステップS43:「YES」)、その路線に対応する事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する(ステップS44)。
【0054】
このように、端末操作で報告された痴漢被害などの事象の情報を路線と対応付けて記憶し、他のユーザなどが経路検索をした際にその地下鉄等の路線が経路に含まれていた場合、アラート等の注意喚起情報を付加することにより、実際に現場を利用しているユーザ間できめ細かい情報の共有や交換が実現でき、効果的被害防止などの情報活用を図ることができる。
【0055】
〔6.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。一例として、アクションで報告する事象の内容は自由であり、痴漢その他の被害以外にも、遅延など運行支障の情報、地下鉄車外に見えた広告や、地下鉄構内の施設や店舗などに関する利便や評価等の情報や、乗り物の種類を問わず乗り心地や景色その他の情報でもよい。
【0056】
また、位置推定の機能は、上記実施形態で例示したようにサーバ装置として実現する以外にも、スマートフォンのアプリなどが実現する端末における装置、方法やプログラムとして実現することもできる。例えば、上記実施形態に準じ、位置推定装置である端末において、図1に示した各手段(例えば、事象情報記憶手段、前後位置記憶手段、位置推定手段など)を実現する。
【0057】
また、本装置1を構成する個々の手段を、さらにそれぞれ独立した装置で実現する構成も一般的である。同様に、外部のプラットフォーム等をAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)やネットワークコンピューティング(いわゆるクラウドなど)で呼び出すことで、上記実施形態で示した各手段を実現するなど、本発明の構成は柔軟に変更できる。さらに、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 位置推定装置(本装置)
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
10 投稿受付手段
11 事象情報記憶手段
13 前後位置記憶手段
15 位置推定手段
31 特徴情報記憶手段
33 判定手段
41 ダイヤ記憶手段
43 便特定手段
51 経路探索情報記憶手段
53 経路探索手段
55 注意付加手段
B ボタン
F 指
G 画面
L 線分
L2 屈曲線
N 通信ネットワーク
P 画面パーツ
P1 前位置
P2 後位置
PX アクション位置
T 端末
T1 前時刻
T2 後時刻
ta 第一経過時間
tb 第二経過時間
TX アクション時刻
X1 星印
X2 星印
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、
端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
前記位置推定手段は、
前記アクション時刻の前に取得された前記端末の位置情報を前位置、この前位置に対応する時刻情報を前時刻とし、
前記アクション時刻の後に取得された前記端末の位置情報を後位置、この後位置に対応する時刻情報を後時刻とし、
前記前時刻から前記アクション時刻までの経過時間を第一経過時間、前記アクション時刻から前記後時刻までの経過時間を第二経過時間としたとき、
前記前位置と前記後位置の間の線分を、前記第一経過時間と前記第二経過時間の比で内分する点の位置を前記端末位置と推定することを特徴とする請求項1記載の位置推定装置。
【請求項3】
移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を記憶している特徴情報記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の前記位置情報及び前記時刻情報と、前記特徴情報記憶手段に記憶されている前記特徴情報と、に基づいて前記移動手段を判定する判定手段を備え、
前記位置推定手段は、判定された前記移動手段の前記特徴情報と、前記位置情報及び前記時刻情報と、を用いて前記アクション時刻における前記端末位置を推定することを特徴とする請求項1又は2記載の位置推定装置。
【請求項4】
定時運行公共交通機関である前記移動手段について、路線ごとの運行ダイヤ情報を記憶しているダイヤ記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報と、前記路線の前記運行ダイヤ情報と、に基づいて、前記アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する便特定手段と、
を有することを特徴とする請求項3記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記定時運行公共交通機関の前記路線と対応付けて、前記端末への前記操作により報告された事象の情報を記憶する事象情報記憶手段と、
端末から受信した経路検索要求に応じた経路探索結果をその端末へ送信する経路探索手段と、
送信しようとする前記経路探索結果に、前記事象情報記憶手段に記憶されている前記路線が含まれているとき、その路線に対応する前記事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する注意付加手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の位置推定装置。
【請求項6】
所定の操作が与えられた位置を推定する端末において、
前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする端末。
【請求項7】
所定の操作が端末に与えられた位置をコンピュータが推定する位置推定方法において、
コンピュータが、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させる処理と、
コンピュータが、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させる処理と、
コンピュータが、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定処理と、
を含むことを特徴とする位置推定方法。
【請求項8】
コンピュータを用いた端末を制御することにより、所定の操作が与えられた位置を推定させるコンピュータ・プログラムにおいて、
そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、
前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させ、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させ、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定させる
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項1】
所定の操作が端末に与えられた位置を推定する位置推定装置において、
端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
前記位置推定手段は、
前記アクション時刻の前に取得された前記端末の位置情報を前位置、この前位置に対応する時刻情報を前時刻とし、
前記アクション時刻の後に取得された前記端末の位置情報を後位置、この後位置に対応する時刻情報を後時刻とし、
前記前時刻から前記アクション時刻までの経過時間を第一経過時間、前記アクション時刻から前記後時刻までの経過時間を第二経過時間としたとき、
前記前位置と前記後位置の間の線分を、前記第一経過時間と前記第二経過時間の比で内分する点の位置を前記端末位置と推定することを特徴とする請求項1記載の位置推定装置。
【請求項3】
移動手段ごとの位置の範囲及び速度の範囲の少なくとも一方を表す特徴情報を記憶している特徴情報記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の前記位置情報及び前記時刻情報と、前記特徴情報記憶手段に記憶されている前記特徴情報と、に基づいて前記移動手段を判定する判定手段を備え、
前記位置推定手段は、判定された前記移動手段の前記特徴情報と、前記位置情報及び前記時刻情報と、を用いて前記アクション時刻における前記端末位置を推定することを特徴とする請求項1又は2記載の位置推定装置。
【請求項4】
定時運行公共交通機関である前記移動手段について、路線ごとの運行ダイヤ情報を記憶しているダイヤ記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報と、前記路線の前記運行ダイヤ情報と、に基づいて、前記アクション時刻における端末位置に対応する運行便を特定する便特定手段と、
を有することを特徴とする請求項3記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記定時運行公共交通機関の前記路線と対応付けて、前記端末への前記操作により報告された事象の情報を記憶する事象情報記憶手段と、
端末から受信した経路検索要求に応じた経路探索結果をその端末へ送信する経路探索手段と、
送信しようとする前記経路探索結果に、前記事象情報記憶手段に記憶されている前記路線が含まれているとき、その路線に対応する前記事象の情報に基づく注意喚起情報をその経路探索結果に付加する注意付加手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の位置推定装置。
【請求項6】
所定の操作が与えられた位置を推定する端末において、
前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として記憶する時刻記憶手段と、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を記憶する前後位置記憶手段と、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする端末。
【請求項7】
所定の操作が端末に与えられた位置をコンピュータが推定する位置推定方法において、
コンピュータが、端末に前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させる処理と、
コンピュータが、前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させる処理と、
コンピュータが、前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定する位置推定処理と、
を含むことを特徴とする位置推定方法。
【請求項8】
コンピュータを用いた端末を制御することにより、所定の操作が与えられた位置を推定させるコンピュータ・プログラムにおいて、
そのプログラムは前記コンピュータを制御することにより、
前記操作が与えられた時刻をアクション時刻として所定の時刻記憶手段に記憶させ、
前記アクション時刻の前及び後に取得された前記端末の位置情報及び対応する時刻情報を所定の前後位置記憶手段に記憶させ、
前記前後位置記憶手段に記憶されている前記位置情報及び対応する時刻情報に基づいて、前記アクション時刻における端末位置を推定させる
ことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−54002(P2013−54002A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194171(P2011−194171)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】
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