位置検出装置及び位置検出方法
【課題】温度特性のバラツキを解消し、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにした位置検出装置及び位置検出方法を提供すること。
【解決手段】ホール素子(22a)のホール電圧Vhe1は、A・K・Bhe1(Aはプレアンプ(32)の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子が受ける磁束密度)になったとすると、PIレギュレータ(41)はフィードバック制御によってA・K・Bhe1+Vref=AGND(=0)になるように、PI出力のバイアス点を自動的に変化させる。増幅後のホール素子(22b)のホール電圧Vhe2はA・K・Bhe2となる。K=−Vref/A・Bhe1であるから、ホール素子のホール電圧Vhe2は、−Vref・Bhe2/Bhe1となる。ホール電圧は、磁束密度と比例するので、ホール素子(22a)とホール素子(22b)の出力電圧を割り算していることと等価である。
【解決手段】ホール素子(22a)のホール電圧Vhe1は、A・K・Bhe1(Aはプレアンプ(32)の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子が受ける磁束密度)になったとすると、PIレギュレータ(41)はフィードバック制御によってA・K・Bhe1+Vref=AGND(=0)になるように、PI出力のバイアス点を自動的に変化させる。増幅後のホール素子(22b)のホール電圧Vhe2はA・K・Bhe2となる。K=−Vref/A・Bhe1であるから、ホール素子のホール電圧Vhe2は、−Vref・Bhe2/Bhe1となる。ホール電圧は、磁束密度と比例するので、ホール素子(22a)とホール素子(22b)の出力電圧を割り算していることと等価である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置及び位置検出方法に関し、より詳細には、カメラのオートフォーカスやズーム位置の原点検出を行うための位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置検出用センサとしては、フォトインタラプタ(photo interrupter;透過型フォトセンサ)又はフォトリフレクタ(photo reflecter;反射型フォトセンサ)を用いたものが知られている。
【0003】
フォトインタラプタは、電気信号を光信号に変換する発光素子と、光信号を電気信号に変換する受光素子とを一定の間隔を隔てて対向させ、1つのハウジングに一体化した構造を有し、両素子間を通過することによって生じる光量変化により、物体の有無を検出するセンサである。
【0004】
また、フォトリフレクタは、電気信号を光信号に変換する発光素子と、光信号を電気信号に変換する受光素子とを同一方向に併設し、1つのハウジングに一体化した構造を有し、物体からの反射光の変化を検出するセンサである。
【0005】
例えば、特許文献1に記載のものは、位置検出用センサとしてフォトインタラプタを用いたもので、デジタルカメラなどのズーム機能やフォーカス機能を有するレンズ鏡筒には、光軸方向に駆動するズームレンズユニットやフォーカスレンズユニットの原点位置を検出するセンサが取付けられている。この原点位置の検出は、レンズユニットに取付けられた遮蔽部材とフォトインタラプタを用いて、レンズユニットをモータにより駆動し、このレンズユニットと共に移動される遮蔽部材がフォトセンサを横切ることにより光を遮蔽し、そのフォトセンサの出力レベルの監視を行うことで検出するようにしていた。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載のものは、位置検出用センサとしてフォトリフレクタを用いたもので、相対回動する一方の部材、例えば、固定環にフォトリフレクタを固定し、他方の部材、例えば、回転環に反射部材(反射シート)を接着固定している。フォトリフレクタと反射部材は、両部材の予め定めた位置に固定され、その結果、フォトリフレクタの出力が生じる位置で原点検出ができるようにしたものである。
【0007】
このように、位置検出用センサとしてフォトインタラプタやフォトリフレクタを用いたものは、温度特性的には安定性があるが、サイズが大きくなり、AF(オートフォーカス)ユニットの小型化を妨げているという問題があった。このような問題を解決するために、磁石と磁気センサを用いた位置検出センサが開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
図1及び図2は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、図1は、磁石とホール素子からなる位置検出センサを示す図で、図2は、図1に示した位置検出センサを組み込んだ位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【0009】
図1に示すように、位置検出センサは、1つの磁石(磁力発生体)1と、互いに離間して配置された2つのホール素子(例えば、1組のホール素子対(磁気センサ対))2a,2bとを備えている。磁石1は、円柱形状を有しており、その上面側および下面側がそれぞれN極およびS極に磁化されている。ホール素子対2a,2bは、装置本体などの固定側の物体(固定部材)に取り付けられ、磁石1は、固定部材に対して移動する移動側の物体(移動部材)に取り付けられている。そして、移動部材に取り付けられた磁石1は、固定部材に取り付けられたホール素子対2a,2bに対して図の矢印AR1方向(X方向)に移動可能である。なお、BDは磁束検出軸を示している。
【0010】
図2に示された信号処理回路3は、差動増幅部11a,11bと減算部13とローパスフィルタ15とを備えている。ホール素子2aの出力電位Va1,Va2の差であるホール起電力Vhaが、差動増幅部11aによって求められるとともに、ホール素子2bの出力電位Vb1,Vb2の差であるホール起電力Vhbが差動増幅部11bによって求められる。そして、この両者Vha,Vhbの差ΔV(=Vha−Vhb)が減算部13によって算出される。この減算部13からの出力値は、ローパスフィルタ15をさらに通過して磁石1の位置を表す出力(位置出力)として出力される。
【0011】
また、信号処理回路3は、加算部14と演算部16と電源制御部17とを備え、これらの各処理部14,16,17を用いて、各ホール素子2a,2bのそれぞれに対する各入力電圧Vinは、各出力電圧(ホール起電力)Vha,Vhbの加算値(和)が一定となるように制御されている。このように、信号処理回路3は、ホール素子対2a,2bの出力値の加算値(Vha+Vhb)が一定値Vctになるようにホール素子対2a,2bの入力値Vinを制御した上で、ホール素子対2a,2bの出力値の減算値ΔVを、位置出力として検出して出力するように構成されている。
【0012】
しかしながら、上述した磁石とホール素子からなる位置検出センサを組み込んだ位置検出装置は、一般的に移動機構のガタツキ(磁石の縦方向のガタツキ)があり、これが誤差要因となってしまうという問題があった。一方、フォトインタラプタは縦方向のガタツキを検出せず、横方向の位置を検出していた。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−58818号公報
【特許文献2】特開2004−132751号公報
【特許文献3】特開2005−331399号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、前記複数の磁気検出素子は前記磁石の前記相対移動方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、前記複数の磁気検出素子は前記磁石の着磁方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、前記磁気検出素子が、ホール素子であることを特徴とする。
【0018】
また、前記一方の磁気検出素子及び前記他方の磁気検出素子が検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作することを特徴とする。
【0019】
また、前記磁束発生体を着けたときに前記磁気検出素子の出力が0にならないように、かつ、前記磁束発生体を外したときに前記磁気検出素子の出力が0になるように、前記磁束発生体と前記磁気検出素子とを配置し、前記磁束発生体の脱着状態を、前記磁気検出素子による出力電圧の比の出力によって判定することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、この磁気検出素子に対して相対移動する磁束発生体と、磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備えたので、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を実現することができる。
【0021】
また、本発明は、割り算方式(比)を用いており、原点での出力は1(比)となり、磁石を外したときの出力は0になるので、磁石の着脱判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、磁石とホール素子からなる位置検出センサを示す図である。
【図2】図2は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、図1に示した位置検出センサを組み込んだ位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明に係る位置検出センサの一実施例を示す構成図で、従来の差分(和)方式を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、本発明に係る位置検出センサの一実施例を示す構成図で、本発明の割り算方式を説明するための図である。
【図4】図4は、差分(和)方式における磁石の移動距離(μm)に対するホール素子による差分磁束密度(mT)の関係を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明における割り算方式を説明するための図で、移動距離(mm)に対する磁束密度(mT)の関係を示している。
【図5B】図5Bは、本発明における割り算方式を説明するための図で、移動距離(μm)に対する磁束密度比の関係を示している。
【図6A】図6Aは、差分(和)方式における信号(差分/和)のGAP依存性示す図である。
【図6B】図6Bは、割り算方式における信号(比の絶対値)のGAP依存性を示す図である。
【図7】図7は、本発明の位置検出装置の一実施例を説明するための構成図で、図3Bに示した割り算方式による位置検出センサを用いた場合の位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【図8】図8は、本発明の位置検出方法の一実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
まず、本発明の位置検出装置に用いられる割り算方式の位置検出センサを説明するために、従来の差分(和)方式の位置検出センサとの比較を行なって説明する。
【0024】
図3A及び図3Bは、従来の差分(和)方式と本発明の割り算方式の位置検出センサの比較図である。図3Aは差分(和)方式、図3Bは割り算方式を説明するための図である。なお、図中符号21は磁石、22a,22bはホール素子HE1,HE2を示している。
【0025】
この位置検出センサは、1つの磁石21と、互いに離間して配置された2つのホール素子22a,22bとを備えている。この例では原点(0μm)から±500μm離れた位置にそれぞれのホール素子22a,22bの中心が配置されている。磁石21は、円板形状を有しており、その側部がそれぞれN極及びS極に磁化されている。ホール素子22a,22bは、装置本体などの固定側の物体(固定部材)に取り付けられ、磁石21は、固定部材に対して移動する移動側の物体(移動部材)に取り付けられている。そして、移動部材に取り付けられた磁石21は、固定部材に取り付けられたホール素子22a,22bに対して図中の矢印方向(X方向)に移動可能である。
【0026】
図3Aに示した差分(和)方式においては、原点での出力は0である。これに対して、図3Bに示した割り算方式においては、原点での出力の絶対値は1(比)、つまり、0でない値となる。
【0027】
図4は、差分(和)方式における磁石の移動距離(μm)に対するホール素子による差分磁束密度(mT)の関係を示す図である。原点近辺では、和分でみると磁場は0となる。原点から磁石が移動すると、和分でみる磁場の大きさは、右上がりに直線状に大きくなる。
【0028】
図5A及び図5Bは、本発明における割り算方式を説明するための図で、図5Aは移動距離(mm)に対する磁束密度(mT)の関係、図5Bは移動距離(μm)に対する磁束密度比の関係をそれぞれ示している。
【0029】
図5Aにおける移動距離(mm)と磁束密度(mT)との関係、つまり、移動距離が大きくなればそれにつれて磁束密度も大きくなるような関係を見ると、図5Bに示すように、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右下がりの特性になり、比の変化が捕らえられ、ON−OFFを検出できる。理想的には比の絶対値が1より大きいか小さいかをON−OFFで捕らえて原点を検出する。
【0030】
図6A及び図6Bは、従来の差分(和)方式と本発明の割り算方式の位置検出センサにおける出力信号のGAP依存性を示す図で、図6Aは差分(和)方式における信号(差分/和)のGAP依存性、図6Bは割り算方式における信号(比の絶対値)のGAP依存性を示す図である。
【0031】
ホール素子22a,22bの感磁部の中心間距離が1mmで、GAPを0.7mmから1.5mm変化させた場合の、移動距離(μm)と出力信号との関係を示している。図6Aにおいて、原点(0μm)から±100μmにおけるホール電圧の差分/和の出力は、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右下がりの直線特性になる。また、図6Bにおいて、原点(0μm)から±100μmにおけるホール電圧の比の出力は、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右上がりの特性になる。
【0032】
これらの図6A及び図6Bから明らかなように、従来の差分(和)方式では出力信号がGAPに依存して変化するのに対して、割り算方式においてはGAPに対して殆ど依存性がないことがわかる。すなわち、割り算方式では縦方向のガタツキに対して出力が殆ど変動しないという利点を有する。
【0033】
図7は、本発明の位置検出装置の一実施例を説明するための構成図で、図3Bに示した割り算方式による位置検出センサを用いた場合の位置検出装置の信号処理回路を示す図である。図中符号31はマルチプレクサ(MUX;選択回路)、32はプレアンプ(演算増幅器)、33はクロック信号発生回路(Clock)、34はサンプル・ホールド回路(S/H)、35はローパスフィルタ(LPF)、36はフィードバック用サンプル・ホールド回路(FBS/H)、41はPI(proportion integral;比例・積分)レギュレータ、42は基準電圧発生回路、43乃至45は抵抗、46はコンデンサ、47はオペアンプを示している。
【0034】
MUX31は、ホール素子22a(HE1)の信号成分か、ホール素子22b(HE2)の信号成分を選択する機能を有する選択回路である。プレアンプ32は、ホール素子22a,22bの出力電圧を増幅する演算増幅器である。サンプル・ホールド回路34は、MUX31からの信号に基づいてクロック信号発生回路33から発生されるクロック信号によりプレアンプ32からの信号をサンプリングする回路である。ローパスフィルタ35はサンプル・ホールド回路34に接続され、位置検出信号−Vref・B2/B1を出力する。また、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36は、プレアンプ32からの信号をPIレギュレータ41に入力する回路である。
【0035】
このPIレギュレータ41は、基準電圧発生回路42と抵抗43乃至45とコンデンサ46とオペアンプ47からなり、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36は、オペアンプ47の反転入力端子に抵抗44を介して接続されているとともに、この反転入力端子には抵抗43を介して基準電圧発生回路42と接続されている。また、オペアンプ47の非反転入力端子は接地されている。また、オペアンプ47の反転入力端子と出力端子間には、直列接続された抵抗45とコンデンサ46が接続されている。
【0036】
このPIレギュレータ41は、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36によってサンプリングされた信号を基準電圧Vrefの電圧レベルになるようにPI制御するレギュレータである。このPIレギュレータ41は、抵抗43とコンデンサ46とによって決定される時定数によってPI制御を行い、離散的にサンプリングされる信号を発振することなく制御することを可能にしている。クロック信号発生回路33は、サンプル・ホールド回路34及びフィードバック用のサンプル・ホールド回路36に取り込む信号を決定するクロック信号を生成する回路である。さらに、PIレギュレータ41は、ホール素子22a,22bのそれぞれに駆動電流を供給するものである。
【0037】
次に、この信号処理回路の動作について説明する。
【0038】
ホール素子22a(あるいは22b)から出力されたホール電圧Vhe1(Vhe2)は、クロック信号発生回路33によって発生されるクロック信号によりホール素子22a(22b)を選択したときに、MUX31を介してプレアンプ32に接続され、所定の増幅率Aによって増幅される。
【0039】
今仮に、プレアンプ32によって増幅された信号をフィードバック用のサンプル・ホールド回路36を介してPIレギュレータ41に取り込む信号をホール素子22aのホール電圧Vhe1とし、サンプル・ホールド回路34及びローパスフィルタ35を介して出力される信号をホール素子22bのホール電圧Vhe2とする。ホール素子22aのホール電圧Vhe1は、プレアンプ32で増幅され、A・K・Bhe1(Aはプレアンプ32の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子22aが受ける磁束密度)になったとすると、PIレギュレータ41はフィードバック制御によって
A・K・Bhe1+Vref=AGND(=0)・・・(1)
になるように、PI出力のバイアス点を自動的に変化させる。
【0040】
このとき、このPI出力と同じバイアス点にてホール素子22bを駆動することを考える。同じバイアス点で駆動されており、ホール素子22aと22bの磁気感度が良好なマッチングが取れていると仮定した場合、サンプル・ホールド回路34に取り込まれる増幅後のホール素子22bのホール電圧Vhe2はA・K・Bhe2となる。
【0041】
上記(1)式より、定数Kを求めると、K=−Vref/A・Bhe1であるから、ホール素子22bのホール電圧Vhe2は
−Vref・Bhe2/Bhe1・・・(2)
となる。この動作は、PIレギュレータ41のフィードバック制御することだけによって、ローパスフィルタ35から出力されるホール素子22bのホール電圧Vhe2は、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形で出力され、何ら演算手段を必要としないものである。
【0042】
すなわち、ホール素子22aのホール電圧Vhe1を一定電圧に制御し、同じ駆動電圧にてホール素子22bを駆動してその出力電圧を取ると、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形になっていることがわかる。ホール電圧は、磁束密度と比例するので、上記(2)式は、ホール素子22aとホール素子22bの出力電圧を割り算していることと等価であることがわかる。なお、本発明の位置検出装置は、ホール素子22a及びホール素子22bが検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作する。
【0043】
このように、磁界の温度係数が、Bhe1,Bhe2に対して同じであれば、ホール素子22bの出力電圧Vhe2は温度に対して一定となる。また、磁界の減衰がBhe1,Bhe2に対して同じであれば、ホール素子22bの出力電圧Vhe2には影響しない。
【0044】
図8は、本発明の位置検出方法の一実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0045】
まず、ホール素子22aの出力電圧(Vhe1=A・K・Bhe1;Aは増幅器の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子22aが受ける磁束密度)を、選択回路31及びプレアンプ32を介して得る(ステップ1)。
【0046】
次に、増幅されたホール素子22aの出力電圧をフィードバック用サンプル・ホールド回路36介してPIレギュレータ41に入力し、このPIレギュレータ41において、ホール素子22aの出力電圧(Vhe1)に基準電圧(Vref)を加算してその出力が一定値になるようにフィードバック制御する(ステップ2)。
【0047】
次に、フィードバック制御されたときのホール素子22aに供給する駆動電流と同じ駆動電流でホール素子22bを駆動する(ステップ3)。
【0048】
次に、ホール素子22bの出力電圧(Vhe2=A・K・Bhe2;Bhe2はホール素子22bが受ける磁束密度)を、選択回路31及びプレアンプ32を介して得る(ステップ4)。
【0049】
次に、増幅されたホール素子22bの出力電圧Vhe2を、サンプル・ホールド回路34及びローパスフィルタ35を介して、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形(Bhe2/Bhe1)で出力する(ステップ5)。
【0050】
上述したフィードバック制御するステップ2において、ホール素子22aの出力電圧を一定値(Vhe1=A・K・Bhe1+Vref=0)に制御することによって、ホール素子22bの出力電圧を出力するステップ5において、ホール素子22aが受ける磁束密度(Bhe1)とホール素子22bが受ける磁束密度(Bhe2)との比となる出力電圧(Vhe2=−Vref・Bhe2/Bhe1)を得ることができる。
【0051】
このようにして、ホール電圧は、磁束密度と比例するので、ホール素子22aとホール素子22bの出力電圧を割り算していることと等価であることがわかる。
【0052】
次に、本発明における割り算方式を用いることにより、従来不可能であった磁石の脱着判定について説明する。上述したように、図3Aに示した差分(和)方式においては、原点での出力の絶対値は0であり、磁石21を外したときの出力も0になる。したがって、この場合には磁石の着脱判定はできない。これに対して、図3Bに示した割り算方式においては、原点での出力の絶対値は1(比)、つまり、0でない値となり、磁石21を外したときの出力は0になる。したがって、この場合には磁石の着脱判定が可能である。
【0053】
以上は、一方のホール素子22aの出力電圧から定数Kを得て、他方のホール素子22bの出力電圧と定数Kとの関係から磁束密度Bhe2/Bhe1の比の出力を得たが、これとは逆に、他方のホール素子22bの出力電圧から定数Kを得て、一方のホール素子22aの出力電圧と定数Kとの関係から磁束密度Bhe1/Bhe2の比の出力を得るようにしてもよいことは明らかである。また、上述した実施例においては、ホール素子が2個の場合について説明したが、それ以上のホール素子を備えた位置検出にも適用できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、カメラのオートフォーカスやズーム位置の原点検出を行うための位置検出装置及び位置検出方法に関するもので、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を実現することができる。また、本発明は、割り算方式(比)を用いており、原点での出力は1(比)となり、磁石を外したときの出力は0になるので、磁石の着脱判定が可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置及び位置検出方法に関し、より詳細には、カメラのオートフォーカスやズーム位置の原点検出を行うための位置検出装置及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置検出用センサとしては、フォトインタラプタ(photo interrupter;透過型フォトセンサ)又はフォトリフレクタ(photo reflecter;反射型フォトセンサ)を用いたものが知られている。
【0003】
フォトインタラプタは、電気信号を光信号に変換する発光素子と、光信号を電気信号に変換する受光素子とを一定の間隔を隔てて対向させ、1つのハウジングに一体化した構造を有し、両素子間を通過することによって生じる光量変化により、物体の有無を検出するセンサである。
【0004】
また、フォトリフレクタは、電気信号を光信号に変換する発光素子と、光信号を電気信号に変換する受光素子とを同一方向に併設し、1つのハウジングに一体化した構造を有し、物体からの反射光の変化を検出するセンサである。
【0005】
例えば、特許文献1に記載のものは、位置検出用センサとしてフォトインタラプタを用いたもので、デジタルカメラなどのズーム機能やフォーカス機能を有するレンズ鏡筒には、光軸方向に駆動するズームレンズユニットやフォーカスレンズユニットの原点位置を検出するセンサが取付けられている。この原点位置の検出は、レンズユニットに取付けられた遮蔽部材とフォトインタラプタを用いて、レンズユニットをモータにより駆動し、このレンズユニットと共に移動される遮蔽部材がフォトセンサを横切ることにより光を遮蔽し、そのフォトセンサの出力レベルの監視を行うことで検出するようにしていた。
【0006】
また、例えば、特許文献2に記載のものは、位置検出用センサとしてフォトリフレクタを用いたもので、相対回動する一方の部材、例えば、固定環にフォトリフレクタを固定し、他方の部材、例えば、回転環に反射部材(反射シート)を接着固定している。フォトリフレクタと反射部材は、両部材の予め定めた位置に固定され、その結果、フォトリフレクタの出力が生じる位置で原点検出ができるようにしたものである。
【0007】
このように、位置検出用センサとしてフォトインタラプタやフォトリフレクタを用いたものは、温度特性的には安定性があるが、サイズが大きくなり、AF(オートフォーカス)ユニットの小型化を妨げているという問題があった。このような問題を解決するために、磁石と磁気センサを用いた位置検出センサが開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
図1及び図2は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、図1は、磁石とホール素子からなる位置検出センサを示す図で、図2は、図1に示した位置検出センサを組み込んだ位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【0009】
図1に示すように、位置検出センサは、1つの磁石(磁力発生体)1と、互いに離間して配置された2つのホール素子(例えば、1組のホール素子対(磁気センサ対))2a,2bとを備えている。磁石1は、円柱形状を有しており、その上面側および下面側がそれぞれN極およびS極に磁化されている。ホール素子対2a,2bは、装置本体などの固定側の物体(固定部材)に取り付けられ、磁石1は、固定部材に対して移動する移動側の物体(移動部材)に取り付けられている。そして、移動部材に取り付けられた磁石1は、固定部材に取り付けられたホール素子対2a,2bに対して図の矢印AR1方向(X方向)に移動可能である。なお、BDは磁束検出軸を示している。
【0010】
図2に示された信号処理回路3は、差動増幅部11a,11bと減算部13とローパスフィルタ15とを備えている。ホール素子2aの出力電位Va1,Va2の差であるホール起電力Vhaが、差動増幅部11aによって求められるとともに、ホール素子2bの出力電位Vb1,Vb2の差であるホール起電力Vhbが差動増幅部11bによって求められる。そして、この両者Vha,Vhbの差ΔV(=Vha−Vhb)が減算部13によって算出される。この減算部13からの出力値は、ローパスフィルタ15をさらに通過して磁石1の位置を表す出力(位置出力)として出力される。
【0011】
また、信号処理回路3は、加算部14と演算部16と電源制御部17とを備え、これらの各処理部14,16,17を用いて、各ホール素子2a,2bのそれぞれに対する各入力電圧Vinは、各出力電圧(ホール起電力)Vha,Vhbの加算値(和)が一定となるように制御されている。このように、信号処理回路3は、ホール素子対2a,2bの出力値の加算値(Vha+Vhb)が一定値Vctになるようにホール素子対2a,2bの入力値Vinを制御した上で、ホール素子対2a,2bの出力値の減算値ΔVを、位置出力として検出して出力するように構成されている。
【0012】
しかしながら、上述した磁石とホール素子からなる位置検出センサを組み込んだ位置検出装置は、一般的に移動機構のガタツキ(磁石の縦方向のガタツキ)があり、これが誤差要因となってしまうという問題があった。一方、フォトインタラプタは縦方向のガタツキを検出せず、横方向の位置を検出していた。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−58818号公報
【特許文献2】特開2004−132751号公報
【特許文献3】特開2005−331399号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、前記複数の磁気検出素子は前記磁石の前記相対移動方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0016】
また、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、前記複数の磁気検出素子は前記磁石の着磁方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、前記磁気検出素子が、ホール素子であることを特徴とする。
【0018】
また、前記一方の磁気検出素子及び前記他方の磁気検出素子が検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作することを特徴とする。
【0019】
また、前記磁束発生体を着けたときに前記磁気検出素子の出力が0にならないように、かつ、前記磁束発生体を外したときに前記磁気検出素子の出力が0になるように、前記磁束発生体と前記磁気検出素子とを配置し、前記磁束発生体の脱着状態を、前記磁気検出素子による出力電圧の比の出力によって判定することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、この磁気検出素子に対して相対移動する磁束発生体と、磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備えたので、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を実現することができる。
【0021】
また、本発明は、割り算方式(比)を用いており、原点での出力は1(比)となり、磁石を外したときの出力は0になるので、磁石の着脱判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、磁石とホール素子からなる位置検出センサを示す図である。
【図2】図2は、従来の磁気センサによる位置検出装置を説明するための構成図で、図1に示した位置検出センサを組み込んだ位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明に係る位置検出センサの一実施例を示す構成図で、従来の差分(和)方式を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、本発明に係る位置検出センサの一実施例を示す構成図で、本発明の割り算方式を説明するための図である。
【図4】図4は、差分(和)方式における磁石の移動距離(μm)に対するホール素子による差分磁束密度(mT)の関係を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明における割り算方式を説明するための図で、移動距離(mm)に対する磁束密度(mT)の関係を示している。
【図5B】図5Bは、本発明における割り算方式を説明するための図で、移動距離(μm)に対する磁束密度比の関係を示している。
【図6A】図6Aは、差分(和)方式における信号(差分/和)のGAP依存性示す図である。
【図6B】図6Bは、割り算方式における信号(比の絶対値)のGAP依存性を示す図である。
【図7】図7は、本発明の位置検出装置の一実施例を説明するための構成図で、図3Bに示した割り算方式による位置検出センサを用いた場合の位置検出装置の信号処理回路を示す図である。
【図8】図8は、本発明の位置検出方法の一実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
まず、本発明の位置検出装置に用いられる割り算方式の位置検出センサを説明するために、従来の差分(和)方式の位置検出センサとの比較を行なって説明する。
【0024】
図3A及び図3Bは、従来の差分(和)方式と本発明の割り算方式の位置検出センサの比較図である。図3Aは差分(和)方式、図3Bは割り算方式を説明するための図である。なお、図中符号21は磁石、22a,22bはホール素子HE1,HE2を示している。
【0025】
この位置検出センサは、1つの磁石21と、互いに離間して配置された2つのホール素子22a,22bとを備えている。この例では原点(0μm)から±500μm離れた位置にそれぞれのホール素子22a,22bの中心が配置されている。磁石21は、円板形状を有しており、その側部がそれぞれN極及びS極に磁化されている。ホール素子22a,22bは、装置本体などの固定側の物体(固定部材)に取り付けられ、磁石21は、固定部材に対して移動する移動側の物体(移動部材)に取り付けられている。そして、移動部材に取り付けられた磁石21は、固定部材に取り付けられたホール素子22a,22bに対して図中の矢印方向(X方向)に移動可能である。
【0026】
図3Aに示した差分(和)方式においては、原点での出力は0である。これに対して、図3Bに示した割り算方式においては、原点での出力の絶対値は1(比)、つまり、0でない値となる。
【0027】
図4は、差分(和)方式における磁石の移動距離(μm)に対するホール素子による差分磁束密度(mT)の関係を示す図である。原点近辺では、和分でみると磁場は0となる。原点から磁石が移動すると、和分でみる磁場の大きさは、右上がりに直線状に大きくなる。
【0028】
図5A及び図5Bは、本発明における割り算方式を説明するための図で、図5Aは移動距離(mm)に対する磁束密度(mT)の関係、図5Bは移動距離(μm)に対する磁束密度比の関係をそれぞれ示している。
【0029】
図5Aにおける移動距離(mm)と磁束密度(mT)との関係、つまり、移動距離が大きくなればそれにつれて磁束密度も大きくなるような関係を見ると、図5Bに示すように、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右下がりの特性になり、比の変化が捕らえられ、ON−OFFを検出できる。理想的には比の絶対値が1より大きいか小さいかをON−OFFで捕らえて原点を検出する。
【0030】
図6A及び図6Bは、従来の差分(和)方式と本発明の割り算方式の位置検出センサにおける出力信号のGAP依存性を示す図で、図6Aは差分(和)方式における信号(差分/和)のGAP依存性、図6Bは割り算方式における信号(比の絶対値)のGAP依存性を示す図である。
【0031】
ホール素子22a,22bの感磁部の中心間距離が1mmで、GAPを0.7mmから1.5mm変化させた場合の、移動距離(μm)と出力信号との関係を示している。図6Aにおいて、原点(0μm)から±100μmにおけるホール電圧の差分/和の出力は、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右下がりの直線特性になる。また、図6Bにおいて、原点(0μm)から±100μmにおけるホール電圧の比の出力は、マイナス側からプラス側に移動するにつれて右上がりの特性になる。
【0032】
これらの図6A及び図6Bから明らかなように、従来の差分(和)方式では出力信号がGAPに依存して変化するのに対して、割り算方式においてはGAPに対して殆ど依存性がないことがわかる。すなわち、割り算方式では縦方向のガタツキに対して出力が殆ど変動しないという利点を有する。
【0033】
図7は、本発明の位置検出装置の一実施例を説明するための構成図で、図3Bに示した割り算方式による位置検出センサを用いた場合の位置検出装置の信号処理回路を示す図である。図中符号31はマルチプレクサ(MUX;選択回路)、32はプレアンプ(演算増幅器)、33はクロック信号発生回路(Clock)、34はサンプル・ホールド回路(S/H)、35はローパスフィルタ(LPF)、36はフィードバック用サンプル・ホールド回路(FBS/H)、41はPI(proportion integral;比例・積分)レギュレータ、42は基準電圧発生回路、43乃至45は抵抗、46はコンデンサ、47はオペアンプを示している。
【0034】
MUX31は、ホール素子22a(HE1)の信号成分か、ホール素子22b(HE2)の信号成分を選択する機能を有する選択回路である。プレアンプ32は、ホール素子22a,22bの出力電圧を増幅する演算増幅器である。サンプル・ホールド回路34は、MUX31からの信号に基づいてクロック信号発生回路33から発生されるクロック信号によりプレアンプ32からの信号をサンプリングする回路である。ローパスフィルタ35はサンプル・ホールド回路34に接続され、位置検出信号−Vref・B2/B1を出力する。また、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36は、プレアンプ32からの信号をPIレギュレータ41に入力する回路である。
【0035】
このPIレギュレータ41は、基準電圧発生回路42と抵抗43乃至45とコンデンサ46とオペアンプ47からなり、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36は、オペアンプ47の反転入力端子に抵抗44を介して接続されているとともに、この反転入力端子には抵抗43を介して基準電圧発生回路42と接続されている。また、オペアンプ47の非反転入力端子は接地されている。また、オペアンプ47の反転入力端子と出力端子間には、直列接続された抵抗45とコンデンサ46が接続されている。
【0036】
このPIレギュレータ41は、フィードバック用のサンプル・ホールド回路36によってサンプリングされた信号を基準電圧Vrefの電圧レベルになるようにPI制御するレギュレータである。このPIレギュレータ41は、抵抗43とコンデンサ46とによって決定される時定数によってPI制御を行い、離散的にサンプリングされる信号を発振することなく制御することを可能にしている。クロック信号発生回路33は、サンプル・ホールド回路34及びフィードバック用のサンプル・ホールド回路36に取り込む信号を決定するクロック信号を生成する回路である。さらに、PIレギュレータ41は、ホール素子22a,22bのそれぞれに駆動電流を供給するものである。
【0037】
次に、この信号処理回路の動作について説明する。
【0038】
ホール素子22a(あるいは22b)から出力されたホール電圧Vhe1(Vhe2)は、クロック信号発生回路33によって発生されるクロック信号によりホール素子22a(22b)を選択したときに、MUX31を介してプレアンプ32に接続され、所定の増幅率Aによって増幅される。
【0039】
今仮に、プレアンプ32によって増幅された信号をフィードバック用のサンプル・ホールド回路36を介してPIレギュレータ41に取り込む信号をホール素子22aのホール電圧Vhe1とし、サンプル・ホールド回路34及びローパスフィルタ35を介して出力される信号をホール素子22bのホール電圧Vhe2とする。ホール素子22aのホール電圧Vhe1は、プレアンプ32で増幅され、A・K・Bhe1(Aはプレアンプ32の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子22aが受ける磁束密度)になったとすると、PIレギュレータ41はフィードバック制御によって
A・K・Bhe1+Vref=AGND(=0)・・・(1)
になるように、PI出力のバイアス点を自動的に変化させる。
【0040】
このとき、このPI出力と同じバイアス点にてホール素子22bを駆動することを考える。同じバイアス点で駆動されており、ホール素子22aと22bの磁気感度が良好なマッチングが取れていると仮定した場合、サンプル・ホールド回路34に取り込まれる増幅後のホール素子22bのホール電圧Vhe2はA・K・Bhe2となる。
【0041】
上記(1)式より、定数Kを求めると、K=−Vref/A・Bhe1であるから、ホール素子22bのホール電圧Vhe2は
−Vref・Bhe2/Bhe1・・・(2)
となる。この動作は、PIレギュレータ41のフィードバック制御することだけによって、ローパスフィルタ35から出力されるホール素子22bのホール電圧Vhe2は、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形で出力され、何ら演算手段を必要としないものである。
【0042】
すなわち、ホール素子22aのホール電圧Vhe1を一定電圧に制御し、同じ駆動電圧にてホール素子22bを駆動してその出力電圧を取ると、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形になっていることがわかる。ホール電圧は、磁束密度と比例するので、上記(2)式は、ホール素子22aとホール素子22bの出力電圧を割り算していることと等価であることがわかる。なお、本発明の位置検出装置は、ホール素子22a及びホール素子22bが検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作する。
【0043】
このように、磁界の温度係数が、Bhe1,Bhe2に対して同じであれば、ホール素子22bの出力電圧Vhe2は温度に対して一定となる。また、磁界の減衰がBhe1,Bhe2に対して同じであれば、ホール素子22bの出力電圧Vhe2には影響しない。
【0044】
図8は、本発明の位置検出方法の一実施例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【0045】
まず、ホール素子22aの出力電圧(Vhe1=A・K・Bhe1;Aは増幅器の増幅率、Kは定数、Bhe1はホール素子22aが受ける磁束密度)を、選択回路31及びプレアンプ32を介して得る(ステップ1)。
【0046】
次に、増幅されたホール素子22aの出力電圧をフィードバック用サンプル・ホールド回路36介してPIレギュレータ41に入力し、このPIレギュレータ41において、ホール素子22aの出力電圧(Vhe1)に基準電圧(Vref)を加算してその出力が一定値になるようにフィードバック制御する(ステップ2)。
【0047】
次に、フィードバック制御されたときのホール素子22aに供給する駆動電流と同じ駆動電流でホール素子22bを駆動する(ステップ3)。
【0048】
次に、ホール素子22bの出力電圧(Vhe2=A・K・Bhe2;Bhe2はホール素子22bが受ける磁束密度)を、選択回路31及びプレアンプ32を介して得る(ステップ4)。
【0049】
次に、増幅されたホール素子22bの出力電圧Vhe2を、サンプル・ホールド回路34及びローパスフィルタ35を介して、ホール素子22aとホール素子22bの受ける磁束密度を割り算した形(Bhe2/Bhe1)で出力する(ステップ5)。
【0050】
上述したフィードバック制御するステップ2において、ホール素子22aの出力電圧を一定値(Vhe1=A・K・Bhe1+Vref=0)に制御することによって、ホール素子22bの出力電圧を出力するステップ5において、ホール素子22aが受ける磁束密度(Bhe1)とホール素子22bが受ける磁束密度(Bhe2)との比となる出力電圧(Vhe2=−Vref・Bhe2/Bhe1)を得ることができる。
【0051】
このようにして、ホール電圧は、磁束密度と比例するので、ホール素子22aとホール素子22bの出力電圧を割り算していることと等価であることがわかる。
【0052】
次に、本発明における割り算方式を用いることにより、従来不可能であった磁石の脱着判定について説明する。上述したように、図3Aに示した差分(和)方式においては、原点での出力の絶対値は0であり、磁石21を外したときの出力も0になる。したがって、この場合には磁石の着脱判定はできない。これに対して、図3Bに示した割り算方式においては、原点での出力の絶対値は1(比)、つまり、0でない値となり、磁石21を外したときの出力は0になる。したがって、この場合には磁石の着脱判定が可能である。
【0053】
以上は、一方のホール素子22aの出力電圧から定数Kを得て、他方のホール素子22bの出力電圧と定数Kとの関係から磁束密度Bhe2/Bhe1の比の出力を得たが、これとは逆に、他方のホール素子22bの出力電圧から定数Kを得て、一方のホール素子22aの出力電圧と定数Kとの関係から磁束密度Bhe1/Bhe2の比の出力を得るようにしてもよいことは明らかである。また、上述した実施例においては、ホール素子が2個の場合について説明したが、それ以上のホール素子を備えた位置検出にも適用できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、カメラのオートフォーカスやズーム位置の原点検出を行うための位置検出装置及び位置検出方法に関するもので、複数のホール素子の出力電圧の比をとることにより、温度特性のバラツキを解消するとともに、縦方向のガタツキによる誤差をなくすようにし、かつ小型化を可能にした位置検出装置及び位置検出方法を実現することができる。また、本発明は、割り算方式(比)を用いており、原点での出力は1(比)となり、磁石を外したときの出力は0になるので、磁石の着脱判定が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、
前記複数の磁気検出素子は前記磁石の前記相対移動方向に沿って配置されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、
前記複数の磁気検出素子は前記磁石の着磁方向に沿って配置されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子が、ホール素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記一方の磁気検出素子及び前記他方の磁気検出素子が検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記磁束発生体を着けたときに前記磁気検出素子の出力が0にならないように、かつ、前記磁束発生体を外したときに前記磁気検出素子の出力が0になるように、前記磁束発生体と前記磁気検出素子とを配置し、前記磁束発生体の脱着状態を、前記磁気検出素子による出力電圧の比の出力によって判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項1】
互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、
前記複数の磁気検出素子は前記磁石の前記相対移動方向に沿って配置されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
互いに離間して配置された複数の磁気検出素子と、該磁気検出素子に対して相対移動する磁石と、前記磁気検出素子からの出力電圧の比の変化を用いて原点位置を決定する決定手段とを備え、
前記複数の磁気検出素子は前記磁石の着磁方向に沿って配置されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出素子が、ホール素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記一方の磁気検出素子及び前記他方の磁気検出素子が検出する磁束密度の絶対値が、ゼロを含まない所定値であることで動作することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記磁束発生体を着けたときに前記磁気検出素子の出力が0にならないように、かつ、前記磁束発生体を外したときに前記磁気検出素子の出力が0になるように、前記磁束発生体と前記磁気検出素子とを配置し、前記磁束発生体の脱着状態を、前記磁気検出素子による出力電圧の比の出力によって判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−189613(P2012−189613A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143434(P2012−143434)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2008−513274(P2008−513274)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2008−513274(P2008−513274)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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