説明

位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システム

【課題】 構成が簡素で、かつ、安価な位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システムを提供する。
【解決手段】 GPS測定値の更新前後における変化量が跳躍判定量を超えると、制御部は、跳躍と判断する。そして、制御部は、その跳躍が発生した時点から1サンプル前と2サンプル前との距離差から移動速度を導出し、その移動速度を維持するものとして、跳躍発生時における現在位置を推定する。同時に、制御部は、跳躍発生時の現在位置を示す値とGPS測定値との差を第1の補正値とする。さらに、制御部は、跳躍発生以降のGPS測定値に対して、演算された第1の補正値を用いて補正を行い、現在位置を算出する。
その後、跳躍が再度生じた場合には、制御部は、第1の補正量を再度算出し、同様の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システムに関し、測定信号に含まれる誤差を補正して現在位置を算出する位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶同士の衝突や座礁が生じる危険性の高い狭水路や輻輳海域においては、通常航行時と比較してより高い安全航行が求められる。特に、タンカーなどの大型船は、船体の慣性が大きいため、高度な操船技術が要求される。このような高度な操船技術は、操船者や水先案内人の経験とカンによるところが大きい。さらに、大型船の離接岸時においては、操船者は、岸壁を目視することができないため、監視者の目視のもとに操船を行わざるを得ない。
【0003】
そこで、船舶の位置や速度などの情報を操船者や水先案内人などに表示し、より安全に操船できるように支援する操船支援システムの導入が進められている。
【0004】
特許文献1には、ミリ波レーダー装置からなる自己完結型測位センサを船舶の所定の位置に取付け、対象物との距離を測定する離着桟支援装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、少なくとも3個のカメラを備え、それぞれのカメラで撮影された情報に基づいて、舷側ラインと岸壁の接岸用ラインとの相対的位置関係を演算する離接岸用操船支援装置が開示されている。
【0006】
また、GPS(Global Positioning System)を利用した操船支援システムも考案されている。
【0007】
GPSは、高度約2万メートルの上空を周回している約20個の衛星のうち、最適な3〜4個の衛星を選択し、その選択した衛星との間で信号の授受を行うことで、現在位置を測定する。そのため、選択する衛星を切換える場合などには、GPSからの測定信号が数10cm〜数mの範囲で急激に変化する「跳躍」が生じる。
【0008】
そのため、GPSからの測定信号だけでは精度の高い現在位置を得られない。そこで、地上側の基準点に配置された別のGPSからの測定信号を受けて補正する、RTK−GPS(Real Time Kinematics GPS)方式が用いられることが多い。RTK−GPS方式では、数cm以内の精度で現在位置を得ることができる。
【特許文献1】特開2003−276677号公報
【特許文献2】特開2004−175187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような操船支援システムは、対象とする航路または水域に応じて製作され、当該航路または水域を航行する不特定の船舶に適用できる必要がある。
【0010】
そのため、水先案内人が当該航路または水域を航行する船舶に乗船する際に、操船支援システムを持ち込むのが望ましい。
【0011】
しかしながら、特許文献1および2に開示されている操船支援システムでは、船体にセンサまたはカメラを配置する必要があり、持ち運びは不可能である。
【0012】
また、RTK−GPS方式のGPSを利用した操船支援システムでは、GPSだけの場合に比較してさまざまな装置が必要であるため、システムが大型化し、持ち運びは困難である。さらに、RTK−GPS方式は、非常に高価であるといった問題もあった。
【0013】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、構成が簡素で、かつ、安価な位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明によれば、移動体に配置される位置測定手段と、位置測定手段から受けた測定信号に含まれる誤差を補正して移動体の現在位置を算出する位置算出装置とを備える位置測定システムであり、位置算出装置は、測定信号に移動体の移動速度に応じた所定量を超える急激な変化が生じたか否かを判断する判断手段と、判断手段において測定信号に急激な変化が生じると、急激な変化が生じる前の測定信号の変化量により導出される移動体の移動速度に基づいて現在位置を推定する推定手段と、推定された現在位置と測定信号によって示される位置との差から測定信号に含まれる誤差を補正するための第1の補正量を演算する第1の補正量演算手段と、測定信号に急激な変化が生じなければ、測定信号によって示される位置を現在位置とし、急激な変化が生じた後は、測定信号を第1の補正量で補正した値によって示される位置を現在位置とする第1の補正手段とを備える。
【0015】
好ましくは、位置算出装置は、第1の補正量に基づいて、測定信号に含まれる初期的な誤差および第1の補正手段における補正の過不足により蓄積される誤差を補正するための第2の補正量を演算する第2の補正量演算手段と、測定信号を第2の補正量でさらに補正した値によって示される位置を現在位置とする第2の補正手段とをさらに備える。
【0016】
好ましくは、第2の補正量演算手段は、第1の補正量演算手段における演算毎に第1の補正量を加算平均して第2の補正量とする手段を含み、第2の補正手段は、第2の補正量を所定の変化率の範囲内で測定信号に加算または減算する手段を含む。
【0017】
また、この発明によれば、上述の位置測定システムを備えた操船支援システムである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、誤差が含まれる位置測定手段からの測定信号に対して、測定対象である移動体の移動速度に応じた所定量を超える変化が生じたか否かに基づいて誤差発生の有無を判断し、さらに、誤差が発生した場合には、誤差が発生する直前の変化量から導出される移動速度に基づいてその補正量を演算する。そのため、外部から測定信号を補正するための信号が必要なく、また、そのための装置も必要としない。よって、構成が簡素化され、かつ、安価な位置測定システムおよびそれを備えた操船支援システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う位置測定システム100の概略構成図である。
【0021】
図1を参照して、位置測定システム100は、GPSアンテナ2と、GPS受信部4と、位置算出装置50とからなる。
【0022】
実施の形態1においては、GPSアンテナ2およびGPS受信部4が位置測定手段を実現する。
【0023】
GPSアンテナ2は、位置測定の対象となる移動体、たとえば船舶上の現在位置を測定する基準点となる場所に配置される。そして、GPSアンテナ2は、複数の衛星からの電波を受信して、その受信した電波をGPS受信部4へ出力する。
【0024】
GPS受信部4は、GPSアンテナ2を介して受信した電波に含まれる衛星からの位置信号および時刻信号に基づいて、現在位置を測定し、GPS測定値を位置算出装置50へ出力する。なお、GPS受信部4がGPS測定値を更新する周期は、1〜2秒程度である。
【0025】
ところで、GPS受信部4が、信号の授受を行う衛星を切換える場合などには、GPS受信部4からのGPS測定値に不定期に数10cm〜数m程度の誤差が生じる。このような誤差の発生は「跳躍」と称される。
【0026】
位置算出装置50は、インターフェイス(I/F)部6と、制御部8と、記憶部10と、表示部14と、内部バス12とからなる。
【0027】
実施の形態1においては、制御部8が判断手段、推定手段、第1の補正量演算手段および第1の補正手段を実現する。
【0028】
インターフェイス部6は、GPS受信部4と内部バス12とを接続し、GPS受信部4からGPS測定値を受けて、内部バス12上にそのGPS測定値を出力する。
【0029】
制御部8は、インターフェイス部6および内部バス12を介してGPS受信部4から受けたGPS測定値に対して、測定対象である移動体の移動速度に応じた所定量を超える変化が生じたか否かに基づいて跳躍発生の有無を判断し、さらに、跳躍が発生した場合には、跳躍が発生する直前の変化量から導出される移動速度に基づいて推定した現在位置から第1の補正量を演算する。そして、制御部8は、跳躍が発生しなければ、GPS測定値を現在位置とし、跳躍が発生した後は、その演算した第1の補正量で補正した値を現在位置とする。また、制御部8は、算出した現在位置を表示部14へ出力する。さらに、制御部8は、必要に応じて、記憶部10にデータを出力し、記憶部10からデータを受ける。
【0030】
記憶部10は、内部バス12を介してインターフェイス部6および制御部8から受けたデータを格納し、制御部8からの要求に応じて、格納しているデータを制御部8へ出力する。
【0031】
表示部14は、制御部8から受けた現在位置を操船者や水先案内人などのユーザに対して表示する。
【0032】
内部バス12は、インターフェイス部6、制御部8、記憶部10および表示部14を互いに接続し、データの授受を仲介する。
【0033】
(GPS測定値の補正)
測定の対象である、たとえば船舶などの移動体は慣性が大きいため、移動速度の変化量、すなわち加速度は小さい。したがって、GPS受信部4がGPS測定値を更新する周期(1〜2秒程度)内では、移動体は直前の速度のまま等速運動を行っているとみなすことができる。
【0034】
そこで、GPS受信部4からのGPS測定値が大きく変動した場合には、跳躍と判断し、GPS測定値に代えて、跳躍が生じる直前の移動速度を維持するとみなして現在位置を推定する。
【0035】
特に、1万トン以上の大型船を測定対象とするのが好ましい。
【0036】
図2は、GPS測定値に跳躍が発生した場合の時間データの一例である。なお、GPS受信部4は、緯度および経度の成分をもつ測定信号を出力するが、簡単化のため、緯度および経度の移動量を合成した1次元のデータとして説明する。
【0037】
図2を参照して、GPS測定値の更新前後における変化量が跳躍判定量を超えると、制御部8は、跳躍と判断する。そして、制御部8は、その跳躍が発生した時点から1サンプル前と2サンプル前との距離差から移動速度を導出し、その移動速度を維持するものとして跳躍発生時における現在位置を推定する。同時に、制御部8は、その推定された現在位置を示す値とGPS測定値との差を第1の補正値とする。さらに、制御部8は、跳躍発生以降のGPS測定値に対して、演算された第1の補正値を用いて補正を行い、現在位置を算出する。
【0038】
その後、跳躍が再度生じた場合には、制御部8は、第1の補正量を再度算出し、同様の補正を行う。
【0039】
なお、跳躍判定量は、対象となる移動体の移動速度に応じて決定される。その決定方法の一例としては、移動速度が設計上の最大加速度で変化した場合において、GPS測定値の更新周期内で移動体が移動できる距離とすることができる。
【0040】
図3は、実施の形態1に従う現在位置の算出処理を示すフローチャートである。
【0041】
図3を参照して、制御部8は、初期条件の設定として、第1の補正量A=0とする(ステップS100)。そして、制御部8は、最新の2サンプル分の現在位置L(n−1),L(n−2)をGPS測定値とする(ステップS102)。
【0042】
制御部8は、GPS測定値に第1の補正量Aを加えて、現在位置L(n)を算出する(ステップS104)。そして、制御部8は、現在位置L(n)と1サンプル前の現在位置L(n−1)との差が跳躍判定量εを超えているか否かを判断する(ステップS106)。
【0043】
跳躍判定量εを超えている場合(ステップS106においてYESの場合)、すなわち跳躍が発生していると判断される場合には、制御部8は、1サンプル前の現在位置L(n−1)と2サンプル前の現在位置L(n−2)との変化量から導出した移動速度を1サンプル前の現在位置L(n−1)に加えて現在位置L(n)を推定する(ステップS108)。さらに、制御部8は、推定した現在位置L(n)とGPS測定値との差から第1の補正量Aを演算する(ステップS110)。
【0044】
跳躍判定量εを超えていない場合(ステップS106においてNOの場合)、すなわち跳躍が発生していないと判断される場合、または第1の補正量Aを演算した後(ステップS110)には、制御部8は、ユーザから処理終了指令が与えられたか否かを判断する(ステップS112)。
【0045】
処理終了指令が与えられていない場合(ステップS112においてNOの場合)には、制御部8は、次のサンプルに対して、現在位置L(n)を算出する(ステップS104)。
【0046】
処理終了指令が与えられた場合(ステップS112においてYESの場合)には、制御部8は、処理を終了する。
【0047】
この発明の実施の形態1によれば、跳躍による誤差が含まれるGPS測定値に対して、測定対象である移動体の移動速度に応じた跳躍判定量を超える変化が生じたか否かに基づいて跳躍の有無を判断し、さらに、跳躍が発生した場合には、それが発生する直前の変化量から導出される移動速度に基づいて現在位置を推定し、その推定した現在位置から跳躍による誤差を補正するための第1の補正量を算出する。そして、跳躍発生後においては、GPS測定値をその第1の補正量で補正して現在位置とする。そのため、外部から跳躍による誤差を補正するための信号を取得する必要がなく、また、そのための装置も必要としない。よって、構成が簡素化され、かつ、安価な位置測定システムを実現できる。
【0048】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、GPS測定値に含まれる初期的な誤差および上述の実施の形態1における第1の補正量による蓄積誤差を補正するための機能をさらに備える位置測定システムについて説明する。
【0049】
実施の形態2に従う位置測定システムは、図1に示す実施の形態1に従う位置測定システム100と同様の構成であるので説明は繰返さない。
【0050】
実施の形態2においては、制御部8が判断手段、推定手段、第1の補正量演算手段、第1の補正手段、第2の補正量演算手段および第2の補正手段を実現する。
【0051】
図4は、初期誤差を伴っている場合の時間データの一例である。なお、測定対象の移動体は初期位置にとどまっている。
【0052】
図4(a)は、GPS測定値と制御部8が算出する現在位置の時間データである。
【0053】
図4(b)は、GPS測定値に対する補正量の時間データである。
【0054】
図4(a)を参照して、初期状態(0秒の場合)において、GPS測定値は、誤差を含んでいる。上述の実施の形態1における位置測定システム100においては、それ以降の跳躍発生に伴い生じる誤差は、第1の補正量により補正されるが、初期的な誤差は補正されない。そのため、初期的な誤差を含んだ値が現在位置として算出される場合がある。
【0055】
初期的な誤差が小さい場合には、問題は少ないが、より精度を向上させることが望ましい。そこで、制御部8は、第1の補正量に基づいてさらなる補正を行う。
【0056】
まず、制御部8が算出する現在位置を示す値には、真の位置を示す値と誤差とを含むと考えることができる。
【0057】
また、GPS測定値は、真の位置を示す値と跳躍による変動値およびその他の誤差とを含むと考えることができる。
【0058】
図4(a)に示すように、跳躍による変動値を正または負の符号をもつX1,X2,・・・,Xnとすると、十分に長い期間では、
【0059】
【数1】

【0060】
が成立するとみなすことができる。
【0061】
したがって、跳躍毎に現在位置を示す値とGPS測定値との差から求められる第1の補正量は、真の位置を示す値が打ち消されるため、現在位置を示す値に含まれる誤差と、GPS測定値に含まれる跳躍による変動値との合計となる。
【0062】
さらに、十分に長い期間において、第1の補正量を加算平均することにより、GPS測定値に含まれる跳躍による変動値をゼロに近づけることができるため、現在位置を示す値に含まれる誤差を求めることができる。
【0063】
このように、第1の補正量を加算平均することにより得られる値を第2の補正量とし、第2の補正量でさらに補正することにより、より真の位置に近い現在位置を得ることができる。第1の補正量および第2の補正量は、図4(b)に示すような時間データとなる。
【0064】
ここで、図4(b)に示す第2の補正量は、第1の補正量の変化に伴いステップ的に変化するので、GPS測定値をそのまま第2の変動量で補正すると、算出される現在位置が急激に変動することになる。そこで、第2の補正量による補正を一定の変化率に制限することが望ましい。その変化率は、たとえば跳躍の発生有無を判断する跳躍判定量より少ない値を選定する。第2の補正量を一定の変化率に制限した場合の時間データを図4(b)に示す。
【0065】
上述のように、第1の補正量による補正および変化率を制限した第2の補正量による補正を行った場合の現在位置の時間データを図4(a)に示す。
【0066】
なお、測定対象の移動体が移動している場合についても同様に適応できることは言うまでもない。
【0067】
図5は、実施の形態2に従う位置測定システムの時間データの一例である。
【0068】
図5(a)は、GPS測定値と制御部8が算出する現在位置の時間データである。
【0069】
図5(b)は、GPS測定値に対する補正量の時間データである。
【0070】
図5(a)を参照して、測定対象の移動体が真の位置に示されるように等速で移動している場合に、制御部8は、GPS測定値の跳躍発生毎に第1および第2の補正量を演算し、現在位置を算出する。「大数の法則」によると、加算平均の母数が多いほど精度が向上するので、跳躍の発生回数の増大に伴い第2の補正量による補正精度が向上する。
【0071】
図5(b)を参照して、第2の補正量は、図5(a)に示す初期時における現在位置と真の位置との誤差に近づいていく。すなわち、第2の補正量による初期誤差の補正が十分に行われることを示している。
【0072】
なお、上述の説明では、現在位置に含まれる初期的な誤差を補正する場合について述べたが、第2の補正量は真の位置と制御部8が算出した現在位置との誤差を補正するものであり、第1の補正量による補正の過不足で蓄積される誤差なども補正することができる。
【0073】
図6は、実施の形態2に従う現在位置の算出処理を示すフローチャートである。
【0074】
なお、図3に示す実施の形態1に従う現在位置の算出処理を示すフローチャートと同一の処理については、同一のステップ番号を付している。
【0075】
図6を参照して、制御部8は、初期条件の設定として、第1の補正量A=0,第2の補正量B=0,跳躍回数j=1および第2の補正量(変化率制限)δ=0とする(ステップS200)。そして、制御部8は、最新の2サンプル分の現在位置L(n−1),L(n−2)をGPS測定値とする(ステップS102)。
【0076】
制御部8は、GPS測定値に第1の補正量Aを加えて、現在位置L(n)を算出する(ステップS104)。そして、制御部8は、現在位置L(n)と1サンプル前の現在位置L(n−1)との差が跳躍判定量εを超えているか否かを判断する(ステップS106)。
【0077】
跳躍判定量εを超えている場合(ステップS106においてYESの場合)、すなわち跳躍が発生していると判断される場合には、制御部8は、図3に示すステップS108とステップS110と同様の処理を行う。さらに、制御部8は、跳躍回数jと第2の補正量Bとの積、すなわち前サンプルまでの第1の補正量Aの総和に、現サンプルにおける第1の補正量Aを加え、跳躍回数jに1を加算した値で除算して、第1の補正量の加算平均を算出する。そして、制御部8は、跳躍回数jに1を加算して更新する(ステップS202)。
【0078】
跳躍判定量εを超えていない場合(ステップS106においてNOの場合)、または跳躍回数を更新した後(ステップS202)には、制御部8は、第2の補正量Bと第2の補正量(変化率制限)δとの絶対値の差が変化率限度φを超えているか否かを判断する(ステップS204)。
【0079】
第2の補正量Bと第2の補正量(変化率制限)δとの差が変化率限度φを超えている場合(ステップS204においてYESの場合)には、第2の補正量Bと第2の補正量(変化率制限)δとの差に応じて、第2の補正量(変化率制限)δを第2の補正量Bに向けて変化率限度φの大きさだけ近づける(ステップS208)。
【0080】
第2の補正量Bと第2の補正量(変化率制限)δとの差が変化率限度φを超えていない場合(ステップS204においてNOの場合)には、第2の補正量(変化率制限)δに第2の補正量Bを代入する(ステップS206)。
【0081】
そして、制御部8は、現在位置L(n)から第2の補正量(変化率制限)δを減算して、現在位置L(n)とする(ステップS210)。さらに、制御部8は、ユーザから処理終了指令が与えられたか否かを判断する(ステップS112)。
【0082】
処理終了指令が与えられていない場合(ステップS112においてNOの場合)には、制御部8は、次のサンプルに対して、現在位置L(n)を算出する(ステップS104)。
【0083】
処理終了指令が与えられた場合(ステップS112においてYESの場合)には、制御部8は、処理を終了する。
【0084】
この発明の実施の形態2によれば、実施の形態1における効果に加えて、GPS測定値の跳躍発生毎に第1の補正量の加算平均を演算することにより、算出された現在位置と真の位置との差を補正するための第2の補正量を導出する。よって、導出された第2の補正量を用いてさらに算出された現在位置を補正することにより、現在位置の算出精度をより高めた位置測定システムを実現できる。
【0085】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3に従う操船支援システム200の概略構成図である。
【0086】
図7を参照して、操船支援システム200は、船上側装置60と、地上側装置70とからなる。
【0087】
船上側装置60は、操船対象の船舶に配置される。そして、地上側装置70から、気象・海象データを受けて、操船者に対してその情報を表示する。また、船上側装置60は、図1に示す位置測定システム100において、アンテナ部18および通信部16を加え、さらに、制御部8を制御部30に代えたものである。
【0088】
アンテナ部18は、通信部16と接続され、地上側装置70から送信される電波を受信して、通信部16へ出力する。
【0089】
通信部16は、アンテナ部18を介して、地上側装置70から送信される風向、風速および波高などの気象・海象データを受信する。
【0090】
制御部30は、実施の形態1または2に示す制御部8における機能に加えて、算出した現在位置、地上側装置70から受けた気象・海象データおよび記憶部10に格納される対象海域の地形データなどに基づいて、画像・映像などを介して操船支援を行うための情報を表示部14に表示させる。
【0091】
地上側装置70は、外部から受けた気象・海象データを、無線通信手段を介して船上側装置60へ送信する。また、地上側装置70は、制御部24と、通信部20と、アンテナ部22とからなる。
【0092】
制御部24は、外部から受けた気象・海象データを通信部20へ出力する。
【0093】
通信部20は、制御部24から受けた気象・海象データを無線信号に変換して、アンテナ部22を介して、送信する。
【0094】
アンテナ部22は、通信部20から受けた無線信号を空間を介して船上側装置60へ放射する。
【0095】
この発明の実施の形態3によれば、地上側装置から現在位置を補正するための信号を送信する必要がないので、構成が簡素化され、かつ、安価な操船支援システムを実現できる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態1に従う位置測定システムの概略構成図である。
【図2】GPS測定値に跳躍が発生した場合の時間データの一例である。
【図3】実施の形態1に従う現在位置の算出処理を示すフローチャートである
【図4】初期誤差を伴っている場合の時間データの一例である。
【図5】実施の形態2に従う位置測定システムの時間データの一例である。
【図6】実施の形態2に従う現在位置の算出処理を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態3に従う操船支援システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0098】
2 GPSアンテナ、4 GPS受信部、6 インターフェイス(I/F)部、8 制御部、10 記憶部、12 内部バス、14 表示部、16,20 通信部、18,22 アンテナ部、24,30 制御部、50 位置算出装置、60 船上側装置、70 地上側装置、100 位置測定システム、200 操船支援システム、A 第1の補正量、B 第2の補正量、L(n) 現在位置、X1,X2,・・・,n 変動値、j 跳躍回数、δ 第2の補正量(変化率制限)、ε 跳躍判定量、φ 変化率限度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置される位置測定手段と、
前記位置測定手段から受けた測定信号に含まれる誤差を補正して前記移動体の現在位置を算出する位置算出装置とを備え、
前記位置算出装置は、
前記測定信号に前記移動体の移動速度に応じた所定量を超える急激な変化が生じたか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段において前記測定信号に前記急激な変化が生じると、前記急激な変化が生じる前の前記測定信号の変化量により導出される前記移動体の移動速度に基づいて前記現在位置を推定する推定手段と、
前記推定された現在位置と前記測定信号によって示される位置との差から前記測定信号に含まれる誤差を補正するための第1の補正量を演算する第1の補正量演算手段と、
前記測定信号に前記急激な変化が生じなければ、前記測定信号によって示される位置を前記現在位置とし、前記急激な変化が生じた後は、前記測定信号を前記第1の補正量で補正した値によって示される位置を前記現在位置とする第1の補正手段とを備える、位置測定システム。
【請求項2】
前記位置算出装置は、
前記第1の補正量に基づいて、前記測定信号に含まれる初期的な誤差および前記第1の補正手段における補正の過不足により蓄積される誤差を補正するための第2の補正量を演算する第2の補正量演算手段と、
前記測定信号を前記第2の補正量でさらに補正した値によって示される位置を前記現在位置とする第2の補正手段とをさらに備える、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記第2の補正量演算手段は、前記第1の補正量演算手段における演算毎に前記第1の補正量を加算平均して前記第2の補正量とする手段を含み、
前記第2の補正手段は、前記第2の補正量を所定の変化率の範囲内で前記測定信号に加算または減算する手段を含む、請求項2に記載の位置測定システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置測定システムを備える、操船支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−162292(P2006−162292A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350182(P2004−350182)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(504444832)堺LNG株式会社 (2)
【Fターム(参考)】