説明

低メチル化剤及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む薬学的組成物

一種類の低メチル化剤と、一種類のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤("HDAC阻害剤")とを有する、導入療法のための薬学的組成物であって、低メチル化剤が、クラドリビンのような、一種類のDNA及びヒストンメチル化阻害剤であり、HDAC阻害剤が、例えば、エンチノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、及び/またはロミデプシンである、組成物、さらに低メチル化剤及びHDAC阻害剤が、たとえば、少なくとも一つの貯蔵所または複数の貯蔵所を備える経皮パッチ、経口、固定用量の経口の組み合わせ、静注、及びそれらの組み合わせのような継続的送達システムを含む、種々の投与のための製剤において組み合される、組成物を提供する。導入療法のためのこの薬学的組成物は、種々のがん、肉腫、及び他の悪性腫瘍の治療におけるモノクローナル抗体と共に用いられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は、2010年4月1日に出願された米国特許仮出願第61/320,083号及び2010年2月5日に出願された米国特許仮出願第61/301,956及び2009年12月2日に出願された米国仮出願第61/283,305の優先権を主張するものであり、それらの開示のすべては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
合衆国連邦政府による資金援助を受けた研究開発においてなされた発明に対する権利の表明
適応なし。
【0003】
技術分野
本発明の態様は、種々のがん、肉腫、及び他の悪性腫瘍のモノクローナル抗体治療で用いられる導入療法のための、低メチル化剤及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を含む薬学的組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
がんのような、細胞異常増殖に関する疾患の治療法の発展は、臨床治療のための治療薬において多くの選択肢を提供してきた。現在までに、何千もの可能性のある抗がん剤が評価されてきたが、治療の主力は、いぜんとして合併症及び毒性副作用をかかえたままである。現在の治療薬は、6つの一般的なグループに分類される。アルキル化剤、抗生剤、代謝拮抗薬、ホルモン剤、植物由来の薬剤、及び、生物学的薬剤である。これらの薬剤の完全な記載は、米国特許第6,905,669号(特許文献1)参照のこと。
【0005】
モノクローナル抗体("mAB")薬は、がん治療に用いられる生物学的薬剤において、比較的最近もたらされた革新技術である。モノクローナル抗体は、特定のがん細胞に付着するようにデザインされた、実験室で生み出された分子である。mAB治療の例のいくつかは以下を含む。慢性リンパ性白血病及び非ホジキンリンパ腫のためのリツキシマブ;ある種の急性骨髄性白血病のためのゲムツズマブ;頭、首、及び大腸のがんのためのセツキシマブ;T細胞白血病及びリンパ腫のためのアレムツズマブ。がんの治療として有望ではあるが、独立した治療としてのmABの使用は、期待に応えられてこなかった。したがって、モノクローナル抗体は、ほとんどの場合、患者の生存率を向上させるために、非常に毒性の高い化学療法や、放射線療法の使用に補われて使われている。比較的無毒で特異的方法でのがんの治療のための、より効果的な薬剤系及び投与計画に対する必要性は、未だ明らかに存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,905,669号
【発明の概要】
【0007】
開示の概要
本開示は、種々のがん、肉腫、及び他の悪性腫瘍のmAB治療のための前治療("導入療法")を提供するための、低メチル化剤、特に、DNA及びヒストンメチル化阻害剤を、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤("HDAC阻害剤"または"HDACi")と組み合わせた、比較的無毒の薬学的組成物の態様に関する。組成物の態様は、低メチル化剤(例えば、クラドリビン)及びHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット、パノビノスタット、及びボリノスタット)を組み合わせる。低メチル化剤及びHDAC阻害剤は、種々の投与方法、例えば、少なくとも一つの貯蔵所または複数の貯蔵所の経皮吸収パッチのような連続的送達系、経口、一定用量の経口の組み合わせ、静注、及びそれらの組み合わせのための製剤において、組み合されうる。低メチル化剤及びHDAC阻害剤を組み合わせた導入療法は、がん、肉腫、及び種々の他の悪性腫瘍のmAB治療において、予想されなかった劇的な効果の増加をもたらした。本発明のこれらの及び他の長所は、当業者によって、下記の記載、特許請求の範囲及び添付された図面を参照することにより、さらに理解され、評価されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の態様は、添付された図面と関連する下記の詳細な記載によって、容易に理解されるであろう。
【図1】一体化したパッチ構造を、横から見た図を表す。
【図2】一貯蔵所("ラビオリ")パッチ構造を、横から見た図を表す。
【図3】二貯蔵所パッチを、上から見た図を表す。
【図4】四つ組み貯蔵所パッチを、上から見た図を表す。
【図5】インビトロでのクラドリビンの経皮送達の動態学的プロフィールを表す。
【図6】インビトロでのエンチノスタットの経皮送達の動態学的プロフィールを表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された態様の詳細な説明
下記の詳細な説明において、本明細書の一部を構成し、本発明が実行されうる態様を示す添付の図面が参照される。本記載は、"一つの態様において"、または、"複数の態様において"なる語句を用いうるが、これらは、それぞれ、一つまたはそれ以上の同じまたは異なる態様をさしうる。さらに、種々の操作が、複数の別々の操作として順番に記載され得、それらは、本発明の態様を理解するのに有益であり得る。しかし、記載の順序は、これらの操作が順序に依存するものであることを意味すると解釈されるべきではない。他の複数の態様が使用され得、本発明の範囲から離れることなく構造的または論理的変更がなされうると理解されるべきである。したがって、下記の詳細な説明は、限定することを意図したものではない。
【0010】
エピジェネティクスは、基礎をなすDNA配列における変化以外のメカニズムによって起こる表現型または遺伝子発現における遺伝性の変化の研究である。これらの変化は、細胞分裂を通しその細胞のその後の一生にわたって残り得、また、複数世代続きうる。しかし、生体の基礎をなすDNA配列においては変化はなく、代わりに非遺伝的要因が、生体の遺伝子を、異なったようにふるまい表現させる。
【0011】
DNAメチル化は、遺伝子の転写をサイレンシングするために重要なシトシンのエピジェネティック修飾である。遺伝子のメチル化のパターンは、成人では一般的に安定であるが、人間のほとんどの腫瘍においては、大いに変化する(Smet, C.D.; et al., DNA hypomethylation in cancer: Epigenetic scars of a neoplastic journey, Epigenetics, 5(3):206-13 (2010))。さらに、エピジェネティクスは、B細胞悪性腫瘍における、実証された重要な役割を有する(Debatin, K., et al. Chronic lymphocytic leukemia: keeping cell death at bay, Cell, 129(5):853-5, (2007); Martin-Subero, J., Towards Defining the lymphoma methylome. Leukemia, 20(10): 1658-60. (2006))。
【0012】
2CdAとしても知られるクラドリビンは、DNA低メチル化剤として作用する(Wyczechowaska, D. et al., The effects of cladribine and fludarabine on DNA methylation in K562 cells, Biochem Pharmacol, 65:219-225 (2003); Yu, M., et al., Epigenetics and chronic lymphocytic leukemia, Am J Hematol., 81(11):864-9(2006))。さらに特定すると、クラドリビンは、プリン環の2位において水素原子を塩素へ置換したデオキシアデノシン類似体である。他のプリン類似体は、フルダラビン、ペントスタチン、及びクラファラビンを含む。フルダラビン、ペントスタチン、及びクラファラビンと同様に、クラドリビンは、リンパ球及び単球に対する選択毒性を有する、プリンヌクレオシド類似体代謝拮抗薬である。そのリンホトキシン効果によって、クラドリビンは、血液性腫瘍、主にリンパ系腫瘍、及び炎症状態の治療用に開発された。現在クラドリビンは、ヘアリーセル白血病の治療用に、FDAによって認可されている。
【0013】
他のプリンヌクレオシド類似体とは異なり、DNA合成及び修復を妨げるクラドリビンの能力は、静止しているリンパ球及び分裂しているリンパ球の両方に対する細胞障害性を提供する。低悪性度リンパ球腫瘍は、その大部分の細胞が細胞周期のG0期、例えば、静止期にあることによって性格づけられる以上、クラドリビンは、これらの悪性腫瘍を治療することに、治療学的な可能性を示してきた。
【0014】
素晴らしい臨床活性が、タンパク質CD20に対するmABであるクラドリビン及びリツキシマブのマントル細胞リンパ腫に対する併用療法で観察されている。例えば、完全寛解率52%、22か月の中間における完全寛解では80%、が観察されている(Inwards, D.J. et al., Long-term results of the treatment of patients with mantle cell lymphoma with cladribine (2-CDA) alone (95-80-53) or 2-CDA and rituximab (N0189) in the North Central Cancer Treatment Group. Cancer, 113(1):108-16 (2008))。別の進行中の研究において、結果は、完全寛解率60%、25か月の中間における完全寛解では93%が示されている(Oregon Health and Science University: 臨床試験−投稿準備中)。この原稿は、レトロスペクティブな、IRBが承認した、1998年からクラドリビン、リツキシマブの組み合わせで治療した患者のレビューである。さらに、リツキシマブと組み合わせたクラドリビンは、WO2008/116163及びWO2007/067695に開示されたように、慢性リンパ性白血病("CLL")及びマントル細胞白血病("MCL")を治療しうる。それらの開示のすべては、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0015】
また、新しく発見された、クラドリビンの作用の第二のメカニズムがある。すなわちクラドリビンは、ヒストンメチル化を阻害することが示されている(Spurgeon, S. et al., Cladribine: not just another purine analogue? Expert Opin. Investig. Drugs, 18(8): 1169-1181, (2009); Epner, E., The epigenetics of mantle cell lymphoma, Abstract, 2010 Mantle Cell Lymphoma Workshop, Lymhoma Research Foundation, March (2010))。DNAメチル化とヒストンメチル化が関連するという証拠も存在し、両方のプロセスの阻害が、がん細胞での遺伝子発現抑制の、効果的持続的反転に必要でありうる(Cedar, H. et al., Linking DNA methylation and histone modification: patterns and paradigms, Nature Reviews Genetics 10:295-304(2009))。したがって、クラドリビンは、DNAとヒストンの両方のメチル化を阻害する低メチル化剤である。
【0016】
DNA低メチル化が加わったHDAC阻害剤は、種々のがん及び他の悪性腫瘍の成功した治療において相加的に作用し得る可能性がある(Cameron, E.E. et al., Synergy of demethylation and histon deacetylase inhibition in the re-expression of genes silenced in cancer, Nat Genet, (1999); Gracia-Manero, G., et al. Phase 1/2 study of the combination of 5-aza-2'-deoxycytidine with valproic acid in patients with leukemia, Blood, Nov 15; 108(10): 3271-9 (2006))。HDACiと、アザシチジン、デオキシアザシチジン、及びプリン類似体との組み合わせが、種々の悪性腫瘍、特に骨髄異形成("MDS")及び急性骨髄性白血病("AML")に対し、インビトロ及び臨床試験において研究されてきた(Bouzar A.B., et al., Valproate synergizes with purine nucleoside analogues to induce apoptosis of B-chronic lymphocytic leukaemia cells, Br. J. Haematol., 144(1):41-52(2009); Gore S.D., et al., Combination DNA methyltransferase and histone deacetylase inhibition in the treatment of myeloid neoplasms, Cancer Res., 66:6361-9 (2006); Soriano A., et al., Safety and clinical activity of the combination of 5-azacytidine, valproic acid, and all-trans retinoic acid in acute myeloid leukemia and myelodysplastic syndrome, Blood. 110:2302-8 (2007))。少なくとも一種類のHDAC阻害剤、ボリノスタットの追加的な洞察は、マントル細胞リンパ腫において、サイクリンD1の翻訳が阻害されていることを示している(Kawamata, N. et al., Suberoylanilide hydroxamic acid (SAHA; vorinostat) suppresses translation of cyclin D1 in mantle cell lymphoma cells, Blood, 110(7): 2667-73(2007))。
【0017】
2CdA及びHDAC阻害剤の最も一般的な投与方法は、静注である。2CdA及びHDACi両方の継続的投与が、しばしば最適である。クラドリビン及び他のエピジェネティック薬の継続的送達に関して、最大の薬効を達成するための科学的及び臨床的理論的根拠が存在する(Huynh, E. et al., Cladribine in the treatment of hairy cell leukemia: initial and subsequent results, Leukemia & Lymphoma, 50(s1): 12-17 (2009)。結果として、2CdA及びHDACiのどちらかまたは両方の投与はしばしば、5〜6日の長期入院を周期的に繰り返すことを必要とする。周期は、処方された治療プロトコール及び患者の健康によっては、6〜8か月間にわたり毎月1回になることもありうる。長期入院の費用及び不便さを克服するために、新しく開発された態様は、例えば経皮パッチを通じた、継続的送達システムを企図する。さらに、治療的効果と、がんにおける遺伝子サイレンシングの持続的反転は、ヒストンメチル化、DNAメチル化、及びヒストンアセチル化を標的にしたエピジェネティック薬の継続的注入により、最適に達成されうる。
【0018】
経皮装置の構造選択肢
mAB治療に先立つ2CdA及びHDACiの経皮送達は、薬の静注送達のように患者を病院に拘束せず、また、患者を固定することなく薬を継続的に投与するメカニズムを提供するので、魅力的である。概して言うと、経皮パッチの主要部は以下のとおりである:保管の間パッチを保護するライナー‐このライナーは、使用に先だって取り除かれる;放出ライナーに直接接触している組成物または薬の溶液;パッチの各部分を一緒に接着し、パッチを皮膚に接着する粘着剤;一つの貯蔵所及び/または多層パッチからの薬の放出をコントロールする膜;及び外部環境からパッチを保護する支持体。経皮装置の構造選択の態様は、下記の実施例を含むがこれに限られるべきものではない。
【0019】
一体型(薬剤含有粘着剤(drug-in-adhesive))パッチ(1)(図1)は、放出ライナー(10)と;皮膚接触粘着剤基質(12)であって、例えば、薬剤、薬剤溶解剤、皮膚浸透促進剤、抗皮膚刺激薬、結晶化抑制剤;("経皮組成物")を含む、粘着剤基質と;密封用支持体フィルム(14)とを含む。いずれの場合においても、経皮組成物の浸透は、マイクロニードルによる穴の形成、角質層のこすり落とし、超音波処理、レーザー処理、イオン泳動、組成物の極性変化の誘導、及び空気にさらされた時にパッチが温かくなるようにする発熱反応のような、種々の形の皮膚の前処理によっても促進されうる。別の態様(図には示されない)は多層経皮パッチであり、例えば膜またはヒートシールによってそれぞれの層が別の層から分離しており上下に層をなす薬剤含有粘着剤の多層基質を有する。多層経皮パッチにおいては、それぞれの基質層には経皮組成物を放出する能力がある。
【0020】
別の態様は、一貯蔵所パッチ(「ラビオリパッチ」)(2)として図2に示されており、放出ライナー(10)と、皮膚接触粘着剤(16)と、密封用支持体フィルム(14)と、貯蔵所(20)に流体連通し、かつ経皮組成物を含む貯蔵所(20)の一部を形成する薬剤浸透性膜(18)であって、貯蔵所(20)からの経皮組成物の放出を制御する浸透性膜(18)とを含む。薬剤浸透性膜(18)の例として、9%EVA、律速膜、または、微孔性膜などがあげられる。微孔性膜は、直径が、約0.05〜約10マイクロメーター(μm)、好ましくは、約0.1〜約6.0μmの範囲の孔を有しうる。
【0021】
図3は、放出ライナー(10)、二つの貯蔵所、すなわち貯蔵所A(22)及び貯蔵所B(24)、ならびに、ヒートシール(26)を有する環状構造の二貯蔵所パッチ(3)の態様を、上から見た図を示している。ヒートシール(26)は、膜、ならびに貯蔵所及びそれらの分離のために必要な封入を提供する密封用支持体の、耐久性シールである。他の複数の態様では、二貯蔵所パッチ(3)は、方形または同心円状に配置された貯蔵所(22及び24)を有しうる。貯蔵所は、好ましい投与量比率に必要な薬剤のタイプ及び量に基づいて、所望の貯蔵所配置に形成してもよく、異なる容量を持ち得る。
【0022】
別の態様において、図4は、放出ライナー(10)、四つの貯蔵所、すなわち貯蔵所A(28)、貯蔵所B(39)、貯蔵所C(32)及び貯蔵所D(34)、ならびにヒートシール(26)を有する、四つの経皮組成物の同時経皮送達のための四つ組貯蔵所パッチ(4)を、上から見た図を示している。
【0023】
別の態様(図には示されない)において、図2〜4に示されている貯蔵所の上に伸び、貯蔵所の境界を数センチメートル越える、図1及び図2にあるような密封用支持体(14)を、パッチは有しうる。貯蔵所を越える密封用支持体(14)の目的は、以下に記載するように、1〜5日パッチに必要でありうるよう、パッチを長期間皮膚に固定することである。
【実施例】
【0024】
2CdA及びHDACiの実現可能性調査
クラドリビン及びHDAC阻害剤の経皮送達の実現可能性の調査は、フランツセル法を用いて行われた。進行中の調査の目的は、導入療法における継続的経皮送達をもたらすために、クラドリビン及び複数のHDAC阻害剤の受動的経皮拡散速度(受動灌流(passive perfusion))を決定することである。
【0025】
背景として、皮膚は、三つの主要な層により構成されている:外層角質層、基底生存表皮(underlying viable epidermis)、及びその次の真皮である。経皮薬剤送達において、薬剤または拡散分子を保有する経皮組成物は、皮膚の角質層と密着し、経皮組成物から分子を角質層に通過させなければならない。拡散分子は、パッチ膜の拡散抵抗、及び経皮組成物と角質層とを仕切る熱力学を克服しなければならない。拡散は、分子のサイズによっても左右され、Kowは、両者が密着している場合に一つの媒体から他の媒体へ移行する分子の「能力」を示す。Kow値が高ければ高いほど、分子は、より親油性である。
【0026】
log Kow値が1〜3の範囲の分子は、ハイドロゲルのような親水性の低い基質から皮膚に分配されるのに最も好ましい。log Kow値が3を超える高い値の分子は、親水性である表皮に対する溶解性が非常に低いので、典型的には、より遅い経皮速度を示す。一方、極性分子またはイオン化された分子のような、log Kowが1未満の非常に低い値の分子は、角質層に事実上不溶性であり、したがって、いかなる基質からであっても皮膚への分配が非常に低く、非常に低い経皮流束になると予測される。しかし、非常に親油性構造の角質を開き、極性分子をあまり大きくない抵抗で通過させるように角質層の構造に影響を与える物質を使用することにより、角質層における極性分子の溶解性を増加させることは可能である。
【0027】
実験作業
三段階の調査が実行された。クラドリビン及びHDAC阻害剤エンチノスタットを、第一に試験した。クラドリビンは、log Kowが0を超え1未満、エンチノスタットは、log Kowが2である。クラドリビンの目標全身経皮投与量は、一日当たり1〜2mgであった。エンチノスタットの目標全身経皮投与量は、一日当たり2〜3mgである。
【0028】
クラドリビンは、クラドリビン組成物を増粘するセルロース成分を含む、約2%濃度の増粘剤と混合した。これは、エンチノスタットについても繰り返された。チキソトロピック組成物の増粘剤は、約1%〜約5%の範囲である。他の増粘剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ヒドロキシエチルセルロース、及び/または、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み得る。クラドリビン及びエンチノスタットは、それらが完全に溶解するまでエタノール/水及び他のエタノールベースの溶液に混合され、その後ヒドロキシメチルセルロースが添加され、溶液は、均一なチキソトロピック混合物になるまで混合された。
【0029】
すべての試験は、インキュベーターの中で、32℃で行われた。用いられた多孔性膜は、膜全体にわたって均等に間隔の空いた直径6.0μmの孔を有した。クラドリビンまたはエンチノスタットを含む下記の液体系が、飽和濃度で試験された。これらは貯蔵所‐パッチ構造の使用のためのサンプル態様を提供する。
【0030】
実施例1
エンチノスタット 50mg
エタノール 1mL
水 0.5mL
ヒドロキシメチルセルロース 15mg
【0031】
実施例2
クラドリビン 23.9mg
エタノール 0.5mg
水 0.5mg
ヒドロキシメチルセルロース 10mg
【0032】
第二に、追加のインビトロ試験が、二つの促進剤:ジメチルスルホキシド("DMSO")及びオレイン酸を用いた、経皮流束での皮膚浸透促進の適用の効果を決定するために行われた。
【0033】
実施例3
クラドリビン 23.9mg
エタノール 0.7mL
水 0.7mL
ヒドロキシメチルセルロース 10mg
【0034】
実施例4
クラドリビン 19.4mg
エタノール 0.5mL
DMSO 0.5mL
ヒドロキシメチルセルロース 10mg
【0035】
第三に、フランツセル拡散法によって、人間の死体の表皮を用いてインビトロ経皮流束を試験した。貯蔵所パッチは0.6μmの微孔性膜で構成され、クラドリビンまたはエンチノスタットを飽和濃度で含む経皮組成物は貯蔵所の中におかれ、ヒートシールされた。人間の死体の表皮の丸い破片が切り出された。パッチは皮膚の上におかれ、フランツセルにおいて、セルのドナーコンパートメントとレシーバーコンパートメントの間に乗せられた。この二つのコンパートメントは、ねじ式ピンチクランプで一体に固定された。セルは、32℃のインキュベーターに置かれ、人間の死体の表皮を24時間の間通過するクラドリビンまたはエンチノスタットの濃度に関して、フランツセルの受け入れるリン酸緩衝液食塩水("PBS")が試験された。
【0036】
経皮流束の結果を、時間の関数としてグラフに表した(図5、6)。図5のグラフに示されたように、クラドリビンの最適な経皮流束は、170μg/cm2/日で、エタノール/DMSO(50/50)中に飽和したクラドリビンを含むパッチから得られた。10時間のラグタイムの後、クラドリビンの経皮送達が維持された。図6に示されたように、エンチノスタットの最適な経皮流束は、29μg/cm2/日で、エタノール/水(2/1)中に飽和したエンチノスタットを含むパッチから得られた。3時間のラグタイムの後、経皮送達が維持された。
【0037】
様々な処方の組成物を、経皮パッチに使用することができるであろう。下記は、経皮パッチ送達系の提案された処方の例である。
【0038】
実施例#5
クラドリビンまたはHDACi 1〜20mg
シリコン粘着剤 80〜99mg(Bio PSA 7-3402)
ポリビニルピロリドン("PVP") 1〜10mg(結晶化阻害剤)
【0039】
実施例#6
クラドリビンまたはHDACi 1〜40mg
Duro-Tak 87-2677 60〜99mg(及び他のアクリル粘着剤)
PVP 1〜10mg
オレイン酸(促進剤) 1〜10mg(または他の促進剤)
1,2プロピレングリコール 10〜20mg(薬剤可溶化剤)
(グリコールまたはポリグリコールなどのような追加の可溶化剤が使用されうる)
【0040】
実施例#7
クラドリビンまたはHDACi 1〜40mg
ポリイソブチレン(PIB) 60〜99mg
PVP 1〜10mg
オレイン酸(促進剤) 1〜10mg
1,2プロピレングリコール(薬剤可溶化剤) 10〜20mg
【0041】
上記実施例7におけるPIBは、他の任意のゴムまたはアクリル混合粘着剤とも置換しうる。
【0042】
これらの結果に基づくと、一貯蔵所パッチまたは複数貯蔵所パッチの立体構造において、経皮組成物は、低メチル化剤またはHDAC阻害剤のどちらかの単一の薬剤ベースの組成物であってもよい。他の複数の態様において、低メチル化剤及びHDAC阻害剤は、混合物を形成するように混合されてもよい。一つの態様において、二貯蔵所パッチ(3)は、例えば、第一の貯蔵所(22)にクラドリビンを含み、第二の貯蔵所(24)にエンチノスタットを含みうる。別の態様において、一貯蔵所パッチ(2)は、例えば、単一貯蔵所(20)にクラドリビン及びエンチノスタットを含みうる。
【0043】
別の態様において、複数の低メチル化剤及び複数のHDACiが使用されうる。図3または4に示されるような複数貯蔵所パッチを用いる場合には、クラドリビン及びHDACiの単独または組み合わせでの性能を促進するために、他の薬剤が添加されてもよい。別の態様において、図1に示されたような一体型薬剤含有粘着剤パッチを用いる場合に、一つは低メチル化剤を含み、一つはHDACiを含む、二つの別のパッチが使用されてもよい。
【0044】
クラドリビン及びいくつかのHDACiの飽和水溶液からの、あらかじめ決められた経皮投与量は、下記の表に要約されている。

【0045】
皮膚浸透率係数Kp、水への溶解性及び経皮投与量は、米国環境保護庁及びSyracuse Research Corporationによって開発されたプログラムを用いて計算された。
【0046】
一つの態様では、個人に提供されるそれぞれの薬剤の送達される投与量は、確定された安全で治療上有効な用量、及び患者の体の大きさ、年齢、健康等を含む種々の要因に基づいて変更されうる。したがって、送達される薬剤それぞれの有効量は、治療される個人に依存する。「有効量」とは、望まれる効果を生ずる最低用量であると考えられうる(W.K. Rasheed et al., Histone deacetylase inhibitors in cancer therapy, Expert Op. Invest. Drugs, 16(5): 659-78(2007))。
【0047】
患者は、特定のがん、肉腫、または他の悪性腫瘍に対する一つまたは複数のサイクルのmAB治療のための導入療法として、DNA及びヒストン低メチル化剤をHDACiと組み合わせて治療されうる。ここで、mABは、標的のがん、肉腫、及び/または悪性腫瘍に特異的である。導入療法期間の投与及び期間は、mAB治療のサイクルに必要とされるように調節されうる。一つの態様では、好適なmABサイクルの期間は20〜30日、例えば28日でありうる。一つの治療プロトコールでは、10サイクルのmABサイクルが実行されうる。別の治療プロトコールでは、4〜6サイクルのmABサイクルが実行されうる。
【0048】
現在のところ、クラドリビンが、DNAのメチル化とヒストンのメチル化の両方を阻害する唯一の公知の分子である。他の低メチル化剤が発見されると、それらは、本明細書に述べられた処方におけるクラドリビンに置換しうる。
【0049】
1日パッチ
クラドリビンのような低メチル化剤及びエンチノスタットのようなHDACiの有効量が、2ゾーンまたは複数貯蔵所経皮パッチで送達されうる。ここで、クラドリビンの濃度は約5〜約15mg/m2であり、エンチノスタットは、約10〜約20mg/m2である。この用量において、経皮パッチは1日パッチを構成し得、mAB治療のサイクルに先立って5〜7日間毎日投与されうる。1日パッチの別の態様において、クラドリビンの濃度は約5〜約15mg/m2であり、HDAC阻害剤、ロミデプシン、またはパノビノスタットは、同じ濃度である約10〜約20mg/m2でエンチノスタットと置換されうる。
【0050】
5日パッチ
別の態様において、クラドリビンのような低メチル化剤及びエンチノスタットのようなHDACiの有効量が、2ゾーンまたは複数貯蔵所経皮5日パッチで送達されうる。ここで、クラドリビンの濃度は約20〜約100mg/m2であり、エンチノスタットは、パッチあたり約40〜約80mg/パッチである。この用量において、経皮パッチは、mAB治療のサイクルに先立って一回投与され、5日後に取り外される。5日パッチの別の態様において、クラドリビンの濃度は約20〜約100mg/m2であり、HDAC阻害剤、ロミデプシン、またはパノビノスタットは、約40〜約80mg/m2でエンチノスタットと置換されうる。
【0051】
静注
別の態様において、クラドリビンのような低メチル化剤及びロミデプシンのようなHDACiの有効量が、静脈内("iv")に送達される。ここで、クラドリビンの濃度は約2〜約5mg/m2であり、ロミデプシンは約8〜約20mg/m2である。本明細書で述べられる各静脈内投与では、低メチル化剤及びHDACiは、別々にまたは混合物として投与されうると考えられる。静脈内導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、この用量で1日1回、5日間投与される。
【0052】
別の態様において、クラドリビンのような低メチル化剤及びパルプロ酸のようなHDACiの有効量が、静脈内に送達される。ここで、クラドリビンの濃度は約2〜約5mg/m2であり、パルプロ酸は約250〜約1000mg/m2である。静脈内導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、この用量で1日1回、5日間投与される。
【0053】
別の態様において、クラドリビンのような低メチル化剤及びベリノスタットのようなHDACiの有効量が、静脈内に送達される。ここで、クラドリビンの濃度は約2〜約5mg/m2であり、ベリノスタットは約500〜約1200mg/m2である。静脈内導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、この用量で1日1回、5日間投与される。
【0054】
経口組成物
別の態様において、クラドリビンのような低メチル化剤及びボリノスタットのようなHDACiの有効量が、約5〜約20mg/m2濃度のクラドリビン及び約200〜約400mg濃度のボリノスタットを含む経口組成物で送達される。本明細書で述べる各経口投与では、低メチル化剤及びHDACiは、別々に、または組み合わせた経口投与形態、例えば一定用量の組み合わせ("FDC")として投与されうると考えられる。FDCは、低メチル化剤及びHDACiが、一つの剤形中に組み合わされたような、しかしこれに限定されるべきでない、二つまたはそれを超える活性成分の製剤である。本明細書で明らかにされたパラメータ内で異なる用量の調製が使用可能である。導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、このFDCで1日1回、5日間経口で投与されうる。
【0055】
別の態様では、クラドリビンのような低メチル化剤及びパルプロ酸のようなHDACiの有効量が、約5〜約20mg/m2濃度のクラドリビン及び約250mg〜約500mg濃度のバルプロ酸を含む経口組成物で送達される。導入療法における薬剤のこの組み合わせを用いて、mAB治療の必要なサイクルに先立ち、経口バルプロ酸が1日3回で5日間、及び、クラドリビンが1日1回で5日間、投与されうる。
【0056】
別の態様では、クラドリビンのような低メチル化剤及びエンチノスタットのようなHDACiの有効量が、約5〜約20mg/m2濃度のクラドリビン及び約5〜約10mg濃度のエンチノスタットを含む経口組成物で送達される。導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、この形態及びこの服用量で1日1回、5日間、経口で投与される。
【0057】
別の態様では、クラドリビンのような低メチル化剤及びパノビノスタットのようなHDACiの有効量が、約5〜約20mg/m2濃度のクラドリビン及び約10〜約20mg濃度のパノビノスタットを含む経口組成物で送達される。導入療法では、mAB治療のサイクルに先立って、このFDCで1日1回、5日間経口で投与される。
【0058】
下記の表は、本発明の態様の服用の組み合わせを要約してあらわしている。

【0059】
クラドリビンは、局所的、経口、及び静注の製剤で、すぐに利用できる。ロミデプシンは、局所的及び静注の製剤で、すぐに利用できる。ボリノスタットは、経口製剤ですぐに利用できる。バルプロ酸は、経口及び静注の製剤ですぐに利用できる。エンチノスタットは、局所的及び経口の製剤ですぐに利用できる。ベリノスタットは、静注製剤ですぐに利用できる。パノビノスタットは、局所的及び経口の製剤ですぐに利用できる。
【0060】
提示された低メチル化剤及びHDAC阻害剤の組み合わせは、単なる例に過ぎない。当業者であれば、低メチル化剤及びHDAC阻害剤の追加的組み合わせを、個人及び/または治療プロトコールの要件に合うように生み出せることがわかるであろう。加えて、上記で説明した導入療法は、一種または複数種の追加的薬剤、例えば、ボルテゾミブのようなプロテアソーム阻害剤、及びmTOR(哺乳類のラパマイシン標的タンパク質)阻害剤、が治療計画に含まれることによって、さらに促進されうる。
【0061】
本明細書で使用される「投与」及びまたは「投与される」という用語は、例えば、局所的、経皮的、非経口的、膣内、直腸内、点眼、経粘膜的、鼻腔内、及び静脈内投与を含む。「局所的」という用語は、皮内送達を意味する。「経皮的」という用語は、皮膚を通過することによる全身送達を意味する。本明細書で使用される「非経口的」なる用語は、例えば、皮下注射、静脈内、筋肉内、大槽内注射または点滴技術を含む。「静脈内」は、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、くも膜下腔内、眼球後、及び/または肺内注射を意味する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、いかなるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤等を含む。薬学的活性成分のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当業者に周知である。
【0062】
経皮組成物は、クリーム、膏薬、皮膚軟化薬、フォーム、ローション、液体スプレー、コラーゲン調剤薬、ゲル、半固体ゲル、または、軟膏として調剤されうる。いくつかの態様において、経皮組成物は、そのままの状態で使用されるか、または、ポリウレタンまたは不織材または経皮パッチのような通気性フィルム、または皮膚パッチ上に含浸されうる。他の複数の態様では、経皮組成物は、薬剤の可溶化によって、及び/または、経皮的に通過させる皮膚の生物学的構造に影響を与えることによって、薬剤の皮膚に浸透する能力を増加させる物質と組み合わされる。典型的な浸透促進剤は、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸アルコール、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸イソプロピル、脂肪酸のエステル、DMSOである。
【0063】
本発明の複数の態様において、組成物は酸または塩基の構成成分を含みうる。本明細書で使用される「構成成分」という用語は、特定された天然由来化合物及び分子と同様に、これに限定されるわけではないが、それらの薬学的に許容された塩、エステル、及びそれらの組み合わせとして処方された化合物及び分子を含むことを意味する。例えば、-COOHのような酸性置換基が存在するとき、それのアンモニア、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が、生物学的ホストへの投与可能な態様として考えられる。アミノのような塩基性基または、ピリジルのような塩基性ヘテロアリールラジカルが存在するとき、それらの塩酸塩、臭酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、パルモエート(palmoate)、リン酸塩、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性塩が、生物学的ホストへの投与の可能な形態として考えられる。
【0064】
同様に、酸性基が存在するとき、例えば、メチル、tert-ブチル、ピバロイルオキシメチル、サクシニル等の、薬学的に許容される化合物のエステルが、化合物の可能な形態として考えられる。このようなエステルは、徐放またはプロドラッグの製剤として使用するために、溶解度及び/または加水分解の性質を変えるためのものとして当業界で周知である。さらに、いくつかの構成成分は、水または共通の有機溶媒で溶媒和化合物を形成しうる。そのような溶媒和化合物も本発明の一部として考えられる。
【0065】
水性懸濁液は、構成成分または活性化合物を、水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合して含みうる。このような賦形剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴム等の懸濁剤である。分散剤または湿潤剤は、天然由来のリン脂質、例えばレシチン、または、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチル‐エネオキシセタノール、または、エチレンオキシドと、脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトールとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸エステル、または、エチレンオキシドと、脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトール無水物との縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレイン酸エステルでありうる。水性懸濁液はまた、一種または複数種の保存剤、例えばエチルまたはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエート、一種または複数種の着色剤、及び一種また複数種の薬剤、例えばショ糖を含みうる。
【0066】
油性懸濁液は、構成成分を、落花生油、オリーブオイル、ごま油、またはココナッツオイル等の植物油中、もしくは鉱油中、もしくは液体パラフィンのような担体中に懸濁させて調整されうる。油性懸濁液は、みつろう、固形パラフィン、またはアセチルアルコール等の増粘剤を含みうる。他の増粘剤は、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ヒドロキシエチルセルロース、及び/または、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含みうる。
【0067】
水の添加による水性懸濁液の調製に好適な分散性の粉末及び顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、及び一種または複数種の保存剤と共に、活性成分混合物を提供する。好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤は、すでに述べたように上記に例示されている。
【0068】
組成物の一つの態様はまた、水中油のエマルジョンの形態でありうる。油相は、オリーブ油または落花生油等の植物油、もしくは液体パラフィン等の鉱油、もしくはこれらの混合物でありうる。好適な乳化剤は、天然由来のゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然由来のリン脂質、例えば大豆レシチン、及び脂肪酸由来のエステルまたは部分エステル、及びヘキシトール無水物、例えばソルビタンモノオレイン酸エステル、及び前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、でありうる。
【0069】
組成物の一つの態様はまた、組成物の直腸内投与のための坐薬の形態でありうる。これらの組成物は、例えば、組成物を、常温では固体であるが直腸内温度では液体であり、これによって直腸内で溶けて薬剤を放出する好適な非刺激性の賦形剤と混合することによって調整することができる。このような材料は、例えばココアバター及びポリエチレングリコールである。
【0070】
本発明を行うのに有用な組成物の製剤は、望ましい程度の純度を有する選択された組成物を、任意の生理学的な薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤と混合することによって、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で保管用に調製されうる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company (1990))。
【0071】
組成物の複数の態様は、無菌でありうる。これは、凍結乾燥及び再構成に先立ってまたはその後に、無菌ろ過膜を通したろ過によって達成される。非経口投与のための組成物の一つの態様は、通常、凍結乾燥された形態または溶液で保管される。
【0072】
組成物の複数の態様は、例えば、静脈用溶液バッグ、または、皮下注射針により穴が開けられるストッパーを有する小瓶のような、無菌のアクセスポートを有する容器内に置かれうる。組成物の投与の経路は、例えば、局所または、徐放性システムまたはイムトリーション装置(imtreeation device)によって、等、周知の方法による。
【0073】
徐放用調製の好適な実施例は、フィルムまたはマイクロカプセル等の造形物の形態の半透性ポリマーマトリックスを含む。徐放マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919、EP58,481)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidman, et al., Biopolymers, 22:547-556(1983))、ポリ(メタクリル酸‐2-ヒドロキシエチル)(Langer, et al., J.Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981) 及びLanger, Chem. Tech., 12:98-105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langer, et al., supra)またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)を含む。徐放組成物はまた、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれによっても調整することができるリポソームを含みうる(例えば、DE 3,218,121; Epstein, et al., Proc natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692 (1985); Hwang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034 (1980); EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EP 143,949)。
【0074】
あるいくつかの態様が本明細書中で説明され述べられてきたが、同じ目的を達成すると予想される広い種類の代替及び/または等価の態様または実行が、本発明の範囲から逸脱することなく、図示され述べられている態様に置換しうることが、当業者によって認識されるだろう。当業者は、本発明による態様が非常に広い範囲の種々の方法で実行されうることを容易に認識するであろう。この出願は、本明細書で議論された態様のいかなる適応または変更をもカバーすることを意図している。したがって、本発明による態様は、特許請求の範囲またはそれと等価なものによってのみ限定されることが、明らかに意図されている。
【0075】
本明細書に含まれるすべての引用は、その全体が参照によって組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体治療と共に用いられる導入療法のための経皮組成物であって、
治療上有効量の
一種類のDNA及びヒストン低メチル化剤と、
一種類のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤("HDACi")と
を含む、経皮組成物。
【請求項2】
低メチル化剤がクラドリビンである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
HDACiがロミデプシン、エンチノスタット、ボリノスタット、バルプロ酸、ベリノスタット、パノビノスタット、またはそれらの組み合わせを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
HDACiがエンチノスタットである、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
経皮パッチを通して患者に投与されるように調製されている、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
クラドリビンが約20〜100mg/m2含まれる、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
HDACiが約40〜80mg/m2含まれる、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
クラドリビンが約5〜15mg/m2含まれる、請求項2記載の組成物。
【請求項9】
HDACiが約10〜20mg/m2含まれる、請求項9記載の組成物。
【請求項10】
logKow値が1〜3である分子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
モノクローナル抗体治療と共に用いられる導入療法のための経皮パッチであって、
該経皮パッチが、
第一の構成成分を含むための第一の貯蔵所;
第一の空隙率を有し、第一の貯蔵所と流体連通している第一の微孔性膜;
第二の構成成分を含むための第二の貯蔵所;
第二の空隙率を有し、第一の貯蔵所と流体連通している第二の微孔性膜;
を含み、
第一の構成成分が、第一の経皮組成物中に一種類のDNA及びヒストン低メチル化剤を含み、かつ第二の構成成分が、第二の経皮組成物中に一種類のHDACiを含み、ならびに、
有効量の該DNA及びヒストン低メチル化剤が、第一の所望の時間範囲にわたって第一の膜を通るように第一の空隙率及び第一の経皮組成物が選択されており、かつ有効量のHDACiが、第二の所望の時間範囲にわたって第二の膜を通るように第二の空隙率及び第二の経皮組成物が選択されている、経皮パッチ。
【請求項12】
第一の空隙率及び第二の空隙率が実質的に同じである、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項13】
第一の所望の時間範囲及び第二の所望の時間範囲が実質的に同じである、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項14】
第一の貯蔵所を第二の貯蔵所から分離する不透過性の膜を更に含む、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項15】
第一及び第二の微孔性膜が直径約0.1〜約10μmの複数の穴を画定し、第一及び第二の空隙率が形成される、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項16】
前記DNA及びヒストン低メチル化剤が約5〜15mg/m2のクラドリビンを含む、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項17】
HDACiが約10〜20mg/m2含まれる、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項18】
HDACiがエンチノスタットであり、かつ約10〜20mg/m2含まれる、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項19】
前記DNA及びヒストン低メチル化剤が約20〜100mg/m2のクラドリビンを含む、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項20】
HDACiが約40〜80mg/m2含まれる、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項21】
HDACiがエンチノスタットであり、かつ約40〜80mg/m2含まれる、請求項11記載の経皮パッチ。
【請求項22】
治療が必要とされる患者の治療において、モノクローナル抗体と共に用いられる導入療法の方法であって、治療上有効量の一種類のDNA及びヒストン低メチル化剤及び一種類のHDACiを患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
前記低メチル化剤及びHDACiが経皮パッチを通して投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記低メチル化剤が経口投与され、かつHDACiが経皮パッチを通して投与される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記低メチル化剤がクラドリビンである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
HDACiがロミデプシン、エンチノスタット、ボリノスタット、バルプロ酸、ベリノスタット、パノビノスタット、またはそれらの組み合わせを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
クラドリビンが約5〜20mg/m2の量で投与される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
HDACiが約10〜80mg/m2の量で投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
クラドリビンが約5〜100mg/m2の量で投与され、かつHDACiが約10〜80mg/m2の量で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記低メチル化剤が経皮パッチを通して投与され、かつHDACiが経口投与される、請求項22記載の方法。
【請求項31】
前記低メチル化剤が約5〜100mg/m2の量で投与されるクラドリビンであり、かつHDACiが約5〜10mgの量で投与されるエンチノスタットである、請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−512898(P2013−512898A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541988(P2012−541988)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/001287
【国際公開番号】WO2011/068522
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144575)ニンブル エピテック リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】