説明

低溶媒ヒドロキシ官能性分散体

本発明は、溶媒含有量が低い、ヒドロキシ官能性コポリマーに基づく水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体、このようなバインダーの製造方法、これらに基づくバインダーの組合せ、及びバインダーの塗料での使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒含有量が低い、ヒドロキシ官能性コポリマーに基づく水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体、このようなバインダーの製造方法、これらに基づくバインダーの組合せ、及びバインダーの塗料での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コポリマーベース水希釈性バインダーの塗料系への使用(Paint & Resin 12/83、34 頁以降、DE-A 3 209 421、EP-A 95 263、EP-A 105 293、EP-A 133 949、EP-A 288 763、DE-A 202 212 及びその中で引用されている文献)は、既知である。しかしながら一般に、これらの系は、安定化のための乳化剤、及び/又は比較的高割合の有機共溶媒を含む。
乳化剤は通常、例えば、耐水性、フィルム外観(光沢)、着色性のような塗料又は塗膜の特性に、不利に作用する。
比較的多量の有機溶媒の使用は、環境上望ましくない。しかしながら一般に、有機溶媒の使用は、ポリマー調製中の十分な撹拌及び反応混合物からの熱除去を確実にするため、そして反応器の最小充填レベルを確保するためにも、回避できない。そのうえ、有機溶媒は、水性塗料に、向上した貯蔵安定性、顔料濡れ性、フィルム外観及びレベリングのような有利な効果を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
加工に関連する理由から、その中に存在する溶媒をコポリマー又はコポリマー分散体から後に除去することは、多大なエネルギー消費及び装置の非常な複雑さ、従って高コストを必要とするので、調製における有機溶媒の使用を、作業特性を損なうことなくほとんど回避できる水性ポリマー分散体に対する必要性が存在する。
【0004】
化学反応、例えばアミノ樹脂、ブロックトポリイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応によって硬化される、コポリマー分散体は、一定量の反応性基、例えば OH 基を含まなければならない。反応性基は、一般に、共重合中に、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステルの使用によってコポリマーに組み込まれる。しかしながら、非官能性(メタ)アクリル酸エステル又はスチレンと比較すると、これらの原料は非常に高価である。そのうえ、比較的高い架橋密度によって塗膜の親水性を補うため、有機溶液中のコポリマーと比較して、比較的多量にこれら原材料を使用することがしばしば必要である。
【0005】
重合における溶媒の使用をほとんど回避する、ヒドロキシ官能性 2 級コポリマー分散体の 1 つ製造方法は、EP-A 0 758 007 に開示されている。同公報によれば、通常使用される溶媒を、全て又は一部、ヒドロキシ官能性ポリエーテルに置き換える。ヒドロキシ官能性ポリエーテルは、反応性希釈剤として 2 級分散体中に残り、続く架橋の際、それらもイソシアネート又はブロックトポリイソシアネートと反応してウレタンを形成する。従って、ヒドロキシ官能性ポリエーテルは、VOC に寄与しない。しかしながら、この生成物の欠点は、安定性が低いことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
反応性希釈剤として、所望により低分子量ポリオールと併せて、ラクトンを使用した場合に、ヒドロキシ官能性コポリマーに基づく、溶媒含有量が低く、塗膜での安定レベルが高い水性コポリマー分散体を調製し得ることが見出された。
【0007】
従って、本発明は、
A)a)OH 不含有(メタ)アクリル酸エステル及び/又はビニル芳香族化合物、
b)ヒドロキシ官能性ビニルモノマー及び/又はヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)ラジカル共重合できるイオン性及び/又は潜在イオン性モノマー、
d)所望により、成分 a)〜c)の化合物以外のラジカル共重合できる更なるモノマー
からなる、1 種以上のビニルモノマー混合物を、
e)少なくとも 1 種のラクトン基含有化合物、及び
f)所望により、62〜250 Da の数平均分子量を有する低分子量ポリオール
の存在下でラジカル重合し、次いで、得られたコポリマーを、
B)中和剤の添加前又は添加後に、
C)水に
分散させるコポリマー分散体の製造方法を提供する。
更に本発明は、上記方法によって得られる水性コポリマー分散体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
成分 a)のモノマーとして、エステル基のアルコール部分に 1〜18 個の炭素原子を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル(以下、(メタ)アクリル酸エステルと称する)を使用する。このアルコール部分は、直鎖脂肪族、分子脂肪族又は脂環式であり得る。
成分 a)の適当なモノマーの例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、異性体ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル又はシクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル及びイソボルニル(メタ)アクリレート又はスチレンを含む。
a)として、更に、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエーテル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、任意に置換されていてよいスチレン及びビニルトルエンを使用することができる。
同様に、成分 a)として、上記化合物の所望の混合物を使用することができる。
【0009】
成分 b)として、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのような OH 基含有重合性モノマー、例えば好ましくは、ヒドロキシアルキル基に 2〜12 個、好ましくは 2〜6 個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。
このような化合物の例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、異性体ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-、3-及び 4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び異性体ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートである。
同様に、成分 b)として、鎖延長された又はアルキレンオキシド変性された、3,000 g/mol 以下、好ましくは 500 g/mol 以下の数平均分子量を有する重合性ヒドロキシ官能性モノマーを使用することができる。この目的のために使用されるアルキレンオキシドは、好ましくは、エチレン、プロピレン又はブチレンオキシドを、単独で又は混合物として含む。
【0010】
ラジカル共重合できる成分 c)のイオン性及び/又は潜在イオン性モノマーとして、カルボン酸基又は無水カルボン酸基を含むオレフィン性不飽和モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、或いはモノアルキルマレエートのような二塩基酸のモノアルキルエステル又は無水物を使用することができ、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好ましい。
また、成分 c)の化合物として好ましいのは、例えば WO 00/39181(8 頁 13 行〜9 頁 19 行)に記載されているような、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基又はスルホネート基を含む不飽和のラジカル重合性化合物、特に 2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸である。
【0011】
任意に、成分 d)の化合物として、ラジカル共重合できる更なるモノマーを使用することができる。これらは、例えば、2 以上の官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はビニルモノマー、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンであり得る。また、非イオン的親水化効果を有する重合性化合物、例えば、ヒドロキシ官能性ポリアルキレンオキシドエーテルのアクリレートの添加も可能である。
好ましくは、コポリマーは、イオン基及び/又は潜在イオン基によってのみ親水化される。
【0012】
合成成分 a)〜d)の割合は、一般に、コポリマーに基づいて、12〜200 mg KOH/g、好ましくは 25〜150 mg KOH/g、より好ましくは 50〜150 mg KOH/g の OH 価、及び 0〜50 mg KOH/g、好ましくは 10〜30 KOH/g、より好ましくは 15〜25 mg KOH/g の酸価を与えるように選択される。
【0013】
好ましくはこの目的のために、OH 価及び酸価について上記範囲に適合するコポリマーを与えるように、コポリマーに基づいて、50〜85 重量%の成分 a)、15〜40 重量%の成分 b)、0.5〜5 重量%の成分 c)及び 0〜34.5 重量%の成分 d)が選択され、これらの合計は 100 重量%となる。
【0014】
ラクトン基を含む成分 e)の適当な化合物は、当業者に既知のラクトン全てを包含する。ブチロラクトン、バレロラクトン、ε-カプロラクトン及びそれらの任意の混合物が好ましい。e)としてε-カプロラクトンを使用することが特に好ましい。
【0015】
成分 f)の低分子量ポリオールは、62〜250 Da の分子量、及び好ましくは 1.5 超、より好ましくは 2〜4 の平均 OH 官能価を有する、当業者に既知のヒドロキシ官能性化合物である。
この種の低分子量ポリオールの例は、エタンジオール、ジ-、トリ-及びテトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジ-、トリ-及びテトラプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、オクタン-1,8-ジオール、デカン-1,10-ジオール、ドデカン-1,12-ジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びこれらの混合物である。
【0016】
不飽和モノマーの重合方法は、当業者によく知られている。一般に、この目的のために、反応性希釈剤として成分 e)及び f)を反応器に添加し、その中で、ラジカル開始剤を用いて不飽和モノマーを重合する。
【0017】
所望により、追加の有機溶媒を少量使用することができる。適当な補助溶媒は、塗料技術で既知のあらゆる溶媒であり、例えば、アルコール、エーテル、エーテル基含有アルコール、エステル、ケトン、N-メチルピロリドン又は無極性炭化水素及び/又はこれら溶媒の混合物である。溶媒は、最終分散体中の溶媒濃度が 0〜5 重量%となるような量で使用される。必要に応じて、使用される溶媒は、蒸留によって再び部分的に除去され得る。しかしながら、1 つの好ましい態様では、追加の有機溶媒を全く使用しない。
【0018】
共重合は、一般に、40〜200 ℃、好ましくは 60〜180 ℃、より好ましくは 80〜160 ℃で行われる。
【0019】
重合反応のための適当な開始剤は、ジ-t-ブチルペルオキシド又は t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートのような有機過酸化物、及びアゾジイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物を含む。使用される開始剤の量は、所望される分子量に依存する。操作信頼性及び取扱容易性の理由から、上記した種類の適当な有機溶媒を用いた溶液として、過酸化物開始剤を使用することもできる。
【0020】
本発明の方法の 1 つの好ましい態様では、希釈剤 e)及び f)の存在下、上記した種類の不飽和モノマーの 2 段階の添加及び重合を行う。この場合、第 1 工程(I)では、55〜90 重量%の成分 a)、2.5〜50 重量%の成分 b)、0〜6.5 重量%の成分 c)及び 0〜42.5 重量%の成分 d)からなる、12〜200 mg KOH/g 固体の OH 価及び 0〜50 mg KOH/g 固体の酸価を有するヒドロキシ官能性コポリマーを調製する。続く第 2 工程(II)では、工程(I)で得られた反応混合物を使用して、成分 a)〜d)のモノマーから更なるポリマーを調製する。このポリマーは、20〜200 mg KOH/g 固体の OH 価及び 50〜200 mg KOH/g 固体の酸価を有する。工程(II)で得られたポリマーは、45〜80 重量%の成分 a)、5〜50 重量%の成分 b)、6.5〜25 重量%の成分 c)及び 0〜43.5 重量%の成分 d)からなる。ポリマー組成のパーセントは、ポリマー毎に合計で 100 重量%となる。2 種のポリマー生成物のモノマー量は、工程(I)で得られたポリマーの工程(II)で得られたポリマーに対する質量比が 10:1〜1:2、好ましくは 6:1〜2:1 となるように選択される。
【0021】
多段階重合法に代えて、連続的に操作することも可能である(傾斜重合)。即ち、コポリマー A)の組成に従って変化する組成を有するモノマー混合物を添加する。この場合、成分 c)及び任意の d)に従う親水性モノマーの割合は、好ましくは、供給初期より終期の方が高い。
【0022】
本発明の方法によって得られるコポリマーは、500〜30,000 g/mol、好ましくは 1,000〜15,000 g/mol、より好ましくは 1,500〜10,000 g/mol の数平均分子量 Mn を有する。
【0023】
ヒドロキシ官能性コポリマー A)の水への分散(工程 C))の前、間又は後、存在する酸性基は、適当な中和剤を添加することによって(工程 B))塩状に少なくとも部分的に転化する。適当な中和剤は、有機アミン又は水溶性無機塩基、例えば、水溶性金属水酸化物、金属炭酸塩又は金属炭酸水素塩を含む。
【0024】
適当なアミンの例は、N-メチルモルホリン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブタノールアミン、モルホリン、2-アミノメチル-2-メチルプロパノール又はイソホロンジアミンである。混合物では、アンモニアをある割合で使用することもできる。トリエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン及びエチルジイソプロピルアミンが特に好ましい。
【0025】
工程 B)では、中和剤を、全体で、40〜150 %、好ましくは 60〜120 %の(酸性基の)理論中和度が存在するような量で添加する。従って、中和度は、工程 B)で添加される中和成分の塩基性基の、コポリマーの酸官能基に対する割合であると理解される。本発明の水性バインダー分散体の pH は、6〜10、好ましくは 6.5〜9 である。
【0026】
本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体は、25〜70 重量%、好ましくは 35〜60 重量%、より好ましくは 50〜59 重量%の固形分、及び 0〜12 重量%、好ましくは 1〜3.5 重量%の有機溶媒含有量を有する。
【0027】
本発明のバインダー分散体は、水性塗料に加工され得る。架橋剤と組み合わせることによって、反応性に依存して、又は必要に応じて架橋剤をブロックして、一液型塗料だけでなく二液型塗料を調製することが可能になる。本発明の目的のための一液型塗料は、バインダー成分及び架橋剤成分を一緒に、著しい程度まで又は続く塗布に有害な程度まで架橋反応が生じることなく貯蔵できる塗料組成物である。架橋剤が活性化された後、塗布時まで架橋反応は生じない。この活性化は、例えば温度上昇によって行い得る。本発明の目的のための二液型塗料は、高い反応性のため、バインダー成分及び架橋剤成分を別々の容器に貯蔵しなければならない塗料組成物である。2 成分が追加の活性化なしで一般に反応するとき、それらは塗布直前まで混合されない。しかしながら、架橋反応促進のため、触媒を使用するか又は比較的高温で行うこともできる。
【0028】
従って、本発明は、
i)1 種以上の請求項6に記載のコポリマー分散体、及び
ii)少なくとも 1 種のヒドロキシ官能性架橋剤
を少なくとも含む水性塗料組成物を提供する。
【0029】
適当な OH 反応性架橋剤の例は、ポリイソシアネート架橋剤、アミド及びアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルデヒド樹脂及びケトン樹脂、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、レゾール、フラン樹脂、ユリア樹脂、カルバミン酸エステル樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シアナミド樹脂及びアニリン樹脂であり、例えば、Lack-kunstharze、H. Wagner、H.F. Sarx、Carl Hanser Verlag Munich、1971 年に記載されている。
【0030】
使用される好ましい架橋剤は、ブロックト又は未ブロックトポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネートは、一般に、1 分子あたり 2 個以上の NCO 基を有し、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)メタン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、トリイソシアナトノナン、又は異性体 2,4-及び 2,6-TDI に基づき、ウレタン基、イソシアヌレート基及び/又はビウレット基を更に含んでもよい。
【0031】
脂肪族又は脂環式イソシアネートに基づく上記した種類の低粘度で任意に親水化されていてもよいポリイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0032】
架橋剤として使用されるポリイソシアネートは、一般に、23 ℃で 10〜5,000 mPas の粘度を有し、所望により、粘度調製のために、少量の不活性溶媒との混合物として使用され得る。
【0033】
本発明に必須のコポリマーは、一般に十分親水性であり、疎水性架橋樹脂でさえ、追加の乳化剤なしで分散させることが可能である。しかしながら、その理由によって、外部乳化剤の使用が禁止されることはない。
【0034】
水溶性又は分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基及び/又はポリエチレンオキシド基及び/又はポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基での変性によって得られる。ポリイソシアネートの親水化は、例えば、半化学量論的量の一価の親水性ポリエーテルアルコールとの反応によって可能である。この種の親水化ポリイソシアネートの調製は、例えば、EP-A 0 540 985(3 頁 55 行〜4 頁 5 行)に記載されている。
【0035】
EP-A 959 087(3 頁 39 行目〜51 行目)に記載されているような、アロファネート基含有ポリイソシアネートも非常に適しており、低モノマー含有ポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとの、アロファネート化条件下での反応によって調製される。トリイソシアナトノナンに基づき、DE-A 100 078 21(2 頁 66 行〜3 頁 5 行)に記載されている水分散性ポリイソシアネート混合物、及びイオン基(スルホン酸基、ホスホン酸基)で親水化され、例えば DE 100 24 624(3 頁 13 行〜33 行)に記載されているポリイソシアネートも適当である。
原則として、異なった架橋剤樹脂の混合物を使用することも当然可能である。
【0036】
本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体の調製前、調製中、又は調製後、塗料技術において一般的な助剤及び添加剤、例えば、消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤又は乳化剤を添加することができる。
これらの助剤及び添加剤は、本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体を含む塗料組成物に添加してもよい。
【0037】
本発明の水性ヒドロキシ官能性コポリマー分散体を含む水性塗料組成物は、フィルム安定性に課される厳しい要求のある水性塗料及びコーティング系が使用される全ての使用分野、例えば、建築材料の無機物表面のコーティング、木材及び木材由来材料のコーティング及びシーリング、金属表面のコーティング(金属コーティング)、アスファルト被覆又はビチューメン被覆のコーティング及び塗装、種々のプラスチック表面の塗装及びシーリング(プラスチックコーティング)、及び材料の高光沢コーティングに適している。
【0038】
本発明に必須のコポリマー分散体を含む塗料組成物は、非常に高いレベルの特性を有する塗膜を生じるので、好ましくは建築部門での無機基材上のクラックブリッジング塗膜の製造にも適している。
【0039】
本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体を含む水性塗料組成物は、例えば、工業塗料、自動車下塗塗装及び自動車修理塗装の分野において、個別塗布及び大量塗布で使用され得る、下塗、サーフェーサー、着色又は透明トップコート材料、クリヤコート材料及び高光沢塗料、一層塗材料の調製に使用される。
【0040】
無機物表面、木材及びプラスチックを被覆又は塗装するには、本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体を含む水性塗料組成物が好ましい。本発明の塗料組成物は、一般に、0〜140 ℃、好ましくは 18〜80 ℃の温度で硬化される。
これらの塗膜は、非常に良好なフィルム外観と、高レベルの耐溶媒性及び耐薬品性、良好な耐候性、高硬度及び速乾性とを併せ持つ。
【0041】
塗膜は、種々の吹付技術、例えば、一成分又は必要に応じて二成分吹付装置を用いた、圧縮空気吹付、無気吹付又は静電吹付の技術によって製造され得る。しかしながら、本発明の水性ヒドロキシ官能性バインダー分散体を含む塗料及び塗料組成物は、他の方法、例えば、はけ塗り、ロール塗り又はナイフ塗りによって塗布することもできる。
【実施例】
【0042】
特に記載がない限り、全てのパーセントは重量による。
粘度測定は、ドイツ国シュトゥットガルト在 Physica 製円錐平板粘度計 Viscolab LC3 ISO を用い、DIN 53019 に従って 40 s-1 の剪断速度で行った。
平均粒度を、レーザー相関分光法(ドイツ国ヘレンベルク在 Malvern Instruments 製 Zatasizer(登録商標)1000)によって測定した。
記載した OH 価は、使用したモノマーから計算した。
酸価:測定法は DIN ISO 3682 に従った。
Dowanol(登録商標)PnB:アメリカ合衆国ミッドランド在 Dow Chemicals 製プロピレングリコール n-ブチルエーテル。
Peroxan(登録商標)DB:ドイツ国ボホルト在 Pergan GmbH 製ジ-t-ブチルペルオキシド。
【0043】
実施例 1
撹拌機、冷却及び加熱装置を備えた 15 リットル容の反応容器に、321 g のトリメチロールプロパン及び 185 g の Dowanol(登録商標)PnB と共に 819 g のε-カプロラクトンを導入し、この初期導入物を 138 ℃まで加熱した。その温度で、14.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 14.5 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、20 分かけて添加した。次いで、256 g のスチレン、666 g のメチルメタクリレート、1245 g のヒドロキシエチルメタクリレート、613 g のブチルメタクリレート、658 g のイソボルニルメタクリレート及び 170 g のブチルアクリレートのモノマー混合物、並びに同時に 70.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 70.5 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、4.5 時間かけて一定速度で量り入れた。この温度を 20 分間維持した。その後、232.5 g のメチルメタクリレート、328.5 g のヒドロキシエチルメタクリレート、182.5 g のブチルアクリレート及び 109 g のアクリル酸のモノマー混合物、並びに同時に 14.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 30 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、1.5 時間かけて一定速度で量り入れた。続いて、これを 138 ℃で 1 時間撹拌し、100 ℃まで冷却し、143 g の N,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30 分間の均一化後、6080 g の水を用いて、80 ℃で 2 時間かけて分散を行った。これにより、下記データを有するコポリマー分散体を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例 2
撹拌機、冷却及び加熱装置を備えた 15 リットル容の反応容器に、844 g のトリメチロールプロパン及び 370 g の Dowanol(登録商標)PnB と共に 1436 g のε-カプロラクトンを導入し、この初期導入物を 138 ℃まで加熱した。その温度で、14.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 14.5 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、20 分かけて添加した。次いで、256 g のスチレン、666 g のメチルメタクリレート、1245 g のヒドロキシエチルメタクリレート、613 g のブチルメタクリレート、658 g のイソボルニルメタクリレート及び 170 g のブチルアクリレートのモノマー混合物、並びに同時に 70.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 70.5 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、4.5 時間かけて一定速度で量り入れた。この温度を 20 分間維持した。その後、232.5 g のメチルメタクリレート、328.5 g のヒドロキシエチルメタクリレート、182.5 g のブチルアクリレート及び 109 g のアクリル酸のモノマー混合物、並びに同時に 14.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 30 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、1.5 時間かけて一定速度で量り入れた。続いて、これを 138 ℃で 1 時間撹拌し、100 ℃まで冷却し、143 g の N,N-ジメチルエタノールアミンを添加した。30 分間の均一化後、6080 g の水を用いて、80 ℃で 2 時間かけて分散を行った。これにより、下記データを有するコポリマー分散体を得た。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例 3
撹拌機、冷却及び加熱装置を備えた 6 リットル容の反応容器に、275 g のトリメチロールプロパンと共に 325 g のε-カプロラクトンを導入し、この初期導入物を 148 ℃まで加熱した。その温度で、8.25 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 8.25 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、20 分かけて滴加した。次いで、365 g のメチルメタクリレート、854 g のヒドロキシエチルメタクリレート、600 g のブチルアクリレート及び 480 g のスチレンのモノマー混合物、並びに同時に 28.5 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 28.5 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、4.5 時間かけて一定速度で量り入れた。この温度を 20 分間維持した。その後、122.25 g のメチルメタクリレート、172.75 g のヒドロキシエチルメタクリレート、96 g のブチルアクリレート及び 84 g のアクリル酸のモノマー混合物、並びに同時に 8.25 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 20.75 g の Dowanol(登録商標)PnB 溶液を、1.5 時間かけて一定速度で量り入れた。続いて、これを 148 ℃で 1 時間撹拌し、100 ℃まで冷却し、174 g のトリエタノールアミンを添加した。30 分間の均一化後、2050 g の水を用いて、80 ℃で 2 時間かけて分散を行った。これにより、下記データを有するコポリマー分散体を得た。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例 4:比較例
(EP 0 758 007、実施例 1)
撹拌機、冷却及び加熱装置を備えた 6 リットル容の反応容器に、116 g のブチルグリコール及び 150 g のポリエーテル(ドイツ国レーフエルクーゼン在 Bayer AG 製 Desmophen(登録商標)V218:プロポキシル化グリセロール;OH 価 245 mg KOH/g)を導入し、この初期導入物を 155 ℃まで加熱した。その温度で、321 g のブチルアクリレート、366 g のスチレン及び 198 g のヒドロキシエチルメタクリレート、並びに同時に 17.1 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 28.6 g のブチルグリコール溶液を、2 時間かけて量り入れた。次いで、83 g のヒドロキシエチルメタクリレート、180 g のブチルアクリレート、139 g のスチレン及び 34 g のアクリル酸のモノマー混合物、並びに同時に 12.9 g のジ-t-ブチルペルオキシドの 21.4 g のブチルグリコール溶液を、1 時間かけて量り入れた。続いて、これを 150〜155 ℃で 2 時間撹拌し、100 ℃まで冷却し、50 g のジメチルエタノールアミンを添加した。30 分間の均一化後、1980 g の水を用いて、80 ℃で 2 時間かけて分散を行った。これにより、下記データを有するコポリマー分散体を得た。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例 5:耐性
耐性を測定するために、下記表のような塗料組成物(重量部で示した量)を、実施例 3 及び 4 の分散体、並びに架橋剤としての Bayhydur(登録商標)XP 2451(ドイツ国レーフエルクーゼン在 Bayer AG 製 HDI ベースの親水化ポリイソシアネート)から調製し、木製パネル(ブナ材)に手動ドクターブレートを用いて塗布し、室温で 24 時間硬化させた。
【0052】
【表5】

【0053】
耐薬品性を、DIN 68861 に従い、210 μm の湿潤フィルムを用いて評価した。
【表6】

本発明のバインダーは、攻撃的な媒体、特にエタノール及びイソプロパノールに対する耐性が著しく向上した塗膜を与えた。
【0054】
実施例 6:光沢
光沢性を評価するために、下記表のような塗料組成物(重量部で示した量)を、実施例 3 及び 4 の分散体、並びに架橋剤としての Bayhydur(登録商標)XP 2451(ドイツ国レーフエルクーゼン在 Bayer AG 製 HDI ベースの親水化ポリイソシアネート)から調製し、Leneta chart(ドイツ国ゲルスドルフ在 B. Schwegmann GmbH 製、DIN 53775 に従ったポリマーフィルム、艶消黒色、430 × 165 mm)に手動ドクターブレートを用いて塗布し、室温で 24 時間硬化させた。
【0055】
【表7】

【0056】
DIN 67530 に従いクリヤコート上の光沢を、200 μm の湿潤フィルムを用いて測定した。
【表8】

本発明のバインダーは、比較の従来のバインダーより実質上高い光沢を有する塗膜を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)a)OH 不含有(メタ)アクリル酸エステル及び/又はビニル芳香族化合物、
b)ヒドロキシ官能性ビニルモノマー及び/又はヒドロキシ官能性(メタ)アクリル酸エステル、
c)ラジカル共重合できるイオン性及び/又は潜在イオン性モノマー、
d)所望により、成分 a)〜c)の化合物以外のラジカル共重合できる更なるモノマー
からなる、1 種以上のビニルモノマー混合物を、
e)少なくとも 1 種のラクトン基含有化合物、及び
f)所望により、62〜250 Da の数平均分子量を有する低分子量ポリオール
の存在下でラジカル重合し、次いで、得られたコポリマーを、
B)中和剤の添加前又は添加後に、
C)水に
分散させるコポリマー分散体の製造方法。
【請求項2】
ビニルモノマー混合物 A)を、成分 e)及び f)の存在下でラジカル重合させることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー分散体の製造方法。
【請求項3】
A)で調製されたポリマーが、50〜150 mg KOH/g 固体の OH 価、15〜25 mg KOH/g 固体の酸価、及び 1,500〜10,000 g/mol の数平均分子量 Mn を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー分散体の製造方法。
【請求項4】
A)で調製されたポリマーが、50〜85 重量%の成分 a)、15〜40 重量%の成分 b)、0.5〜5 重量%の成分 c)、及び 0〜34.5 重量%の成分 d)からなり、該範囲の合計が 100 重量%となることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー分散体の製造方法。
【請求項5】
ε-カプロラクトンを成分 e)として使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のコポリマー分散体の製造方法。
【請求項6】
重合を 2 段階で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコポリマー分散体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって得られるコポリマー分散体。
【請求項8】
請求項7に記載のコポリマー分散体の塗膜製造における使用。
【請求項9】
i)1 種以上の請求項7に記載のコポリマー分散体、及び
ii)少なくとも 1 種の OH 反応性架橋剤
を少なくとも含む水性塗料組成物。
【請求項10】
請求項7に記載のコポリマー分散体から得られる塗膜。
【請求項11】
請求項10に記載の塗膜で被覆された基材。

【公表番号】特表2007−517097(P2007−517097A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545988(P2006−545988)
【出願日】平成16年12月11日(2004.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014194
【国際公開番号】WO2005/066226
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】