説明

低融点ガラス分散ペースト、及び、プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる低融点ガラス分散ペースト、及び、該低融点ガラス分散ペーストを用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】水酸基価が40mol%以上のポリビニルアセタール樹脂と、ガラス粉末と、誘電率が25以上、比重が0.95以上1.35未満、かつ、沸点が150℃以上300℃未満の溶剤とを含有する低融点ガラス分散ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる低融点ガラス分散ペースト、及び、該低融点ガラス分散ペーストを用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)は、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電させ、放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内の蛍光体に当てることにより発光を得るものである。
背面ガラス基板にはプラズマから電極を保護する目的で電極上に誘電体層が形成され、更にその表面に蛍光体層を塗工するガラスリブが形成されている。また、蛍光体層の表面積を稼ぐために、ガラスリブは、サンドブラストを用いて凹型ストライプ状に成形されている。背面ガラス基板表面に誘電体層とガラスリブとが形成されたものを背面板という。
【0003】
従来、PDPの生産プロセスでは、特許文献1に開示されているように、背面ガラス基板の表面にエチルセルロース樹脂をバインダーとする誘電体層用ペーストを塗工、乾燥した後、加熱して脱脂・焼成を行うことで誘電体層を形成し、更に誘電体層の表面に、アクリル樹脂やエチルセルロース樹脂等をバインダー樹脂とし、低融点ガラスを分散させ、溶剤を含有させたペーストを塗工し、乾燥後、サンドブラストを用いて凹型ストライプ状に成形した後、加熱して脱脂・焼成を行うことでガラスリブを形成していた。このプロセスでは加熱して脱脂・焼成する工程が複数回必要となるため、熱エネルギーや製造タクト時間がかかるという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、背面ガラス基板表面に誘電体前駆層とガラスリブ前駆体とを形成した後にまとめて加熱することにより、1度のみの脱脂・焼成にて誘電体層及びガラスリブを製造することが検討されている。しかしながら、脱脂・焼成を行っていない誘電体前駆層の表面に従来のガラスリブ形成用ペーストを塗工すると、ペーストに含有される溶剤が誘電体層を膨潤させたり、亀裂を発生させたりする現象(シートアタック)が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−133947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる低融点ガラス分散ペースト、及び、該低融点ガラス分散ペーストを用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水酸基価が40mol%以上のポリビニルアセタール樹脂と、ガラス粉末と、誘電率が25以上、比重が0.95以上1.35未満、かつ、沸点が150℃以上300℃未満の溶剤とを含有する低融点ガラス分散ペーストである。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、低融点ガラス分散ペーストにおいて、一定以上の水酸基価を有する樹脂をバインダー樹脂とし、誘電率と比重と沸点とが一定の範囲の溶剤を用いることにより、従来のようにプラズマディスプレイパネルを作製する際に誘電体前駆層の乾燥後とサンドブラストにて凹型形状形成後とに、それぞれ脱脂・焼成を行わなくても特にエチルセルロースを用いてなる誘電体前駆層に対してシートアタックを生じることがないため、脱脂・焼成を減らすことができることから、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の低融点ガラス分散ペーストは、水酸基価が40mol%以上のポリビニルアセタール樹脂を含有する。
水酸基価が40mol%未満であると、エチルセルロースを用いてなる誘電体前駆層を破壊しない溶媒との相溶性が悪くなり、ペースト化できなくなる。
なお、上記水酸基価は、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することで得られるために、13C−NMR評価にてアセタール化度を評価することで求めることができる。
【0009】
上記ポリビニルアセタール樹脂のポリスチレン換算による重量平均分子量としては特に限定されないが、好ましい下限は5000、好ましい上限は10万である。5000未満であると、本発明の低融点ガラス分散ペーストに充分な粘度が得られず、10万を超えると、樹脂の凝集力が高く、サンドブラストにて成形しにくくなったり、塗工時に延糸が発生したり、脱媒性が悪くなるなどハンドリング性に悪影響がでる。より好ましい上限は3万、更に好ましい上限は2万である。
また、重量平均分子量が1万〜2万であると、サンドブラスト性も良好であり、塗工、乾燥後の表面特性、及び、糸曳性も良好である。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804を用いてGPC測定を行うことで得ることができる。
また、本発明の低融点ガラス分散ペーストに用いるバインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂合成反応の後の反応溶液をそのまま用いる場合には、重合溶液にモノマーやオリゴマー等の低分子量成分が含まれないことが好ましい。
【0010】
本発明の低融点ガラス分散ペーストにおける上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は8重量%である。1重量%未満であると、ガラス粉末を充分に分散させることができず、表面性が悪くなる場合があり、8重量%を超えると、サンドブラスト性に悪影響を及ぼすことがある。
【0011】
本発明の低融点ガラス分散ペーストは、ガラス粉末を含有する。
上記ガラス粉末の組成としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の各種ガラスが挙げられる。特に、融点が600℃以下の低融点ガラスであることが好ましい。
【0012】
また、上記ガラス粉末に対して、ガラス以外の無機微粒子を併用してもよい。無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、金属錯体等が挙げられる。
【0013】
本発明の低融点ガラス分散ペーストにおける上記ガラス粉末及び無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%である。20重量%未満であると、粘度が充分に得られないことがあったり、ガラス粉末及び無機微粒子に対して樹脂が多いためにサンドブラスト性が悪くなったりすることがある。80重量%を超えると、ガラス粉末及び無機微粒子を分散させることが困難となることがある。
【0014】
本発明の低融点ガラス分散ペーストは、誘電率が25以上、比重が0.95以上1.35未満、かつ、沸点が150℃以上300℃未満の溶剤を含有する。
【0015】
上記溶剤は、誘電率が25以上である。誘電率が25未満であると、誘電体前駆層に用いるエチルセルロース樹脂を溶解させてしまう。好ましくは30以上である。
【0016】
上記溶剤は、比重が0.95以上、1.35未満である。0.95未満であると、エチルセルロースを用いてなる誘電体前駆層への浸透性が高くなり、誘電体前駆層を破壊しやすくなる。1.35を超えると、溶媒の脱媒性が極端に悪くなる。ここで比重とは、4℃における水の密度と20℃におけるその溶剤の密度との比を意味する(溶剤ハンドブック参照)。
下記に例示として挙げられている溶剤のなかには、従来公知のものも挙げられるが、実際に脱脂・焼成工程を考慮すると、比重が0.95以上、1.35未満の溶剤はガラス粉末に対して一般的でなく、また、蒸発しにくいため用いられていないのが現状であった。しかし、本発明者らはこのような比重かつ沸点の溶剤をあえて用いることにより、シートアタックを防ぐことができるということを初めて見出した。
【0017】
上記溶剤は、沸点が150℃以上、300℃未満である。沸点が150℃未満であると、本発明の低融点ガラス分散ペーストを塗工する際に溶剤が揮発してしまうため、粘度が変わり安定した塗工ができず、300℃以上であると、塗工後、ペースト中の溶剤を乾燥させる段階で多大な時間や熱エネルギーが必要となる。好ましくは280℃以下である。
【0018】
上記誘電率が25以上、比重が0.95以上1.35未満、かつ、沸点が150℃以上300℃未満の溶剤としては特に限定されず、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド等が挙げられる。なかでも、ポリビニルブチラール樹脂の溶解性に優れていることから、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオールが好適である。
なお、これらの溶剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
本発明の低融点ガラス分散ペーストは、塗工後のレベリングを促進させる目的でノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
【0020】
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が6以上16以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)とする等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたものが好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると低融点ガラス分散ペーストの熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
また、本発明の低融点ガラス分散ペーストは、ガラス基板との密着性を向上させるために、ポリビニルアルコールを混合して使用することができる。
【0021】
本発明の低融点ガラス分散ペーストの作製方法としては特に限定されず、従来公知の攪拌方法が挙げられ、具体的には例えば、各物質を3本ロールミル等で攪拌する方法等が挙げられる。
【0022】
本発明の低融点ガラス分散ペーストの応用として、分散させるガラス粉末の代わりに、セラミック粉末を用いたときのセラミックペースト組成物、蛍光体粉末を用いたときの蛍光体ペースト組成物、導電性粉末を用いたときの導電ペースト組成物、ガラス粉末又はセラミックス粉末を用いたときのグリーンシートとして用いることもできる。このような用途で用いることにより、エチルセルロースをバインダー樹脂として用いたグリーンシートと重ね合わせて同時に脱脂・焼成することができる。
すなわち、シートアタックを生じないという特徴を活かし、今まで個別に焼結プロセスが必要であったグリーンシート上に導電ペーストでパターンを描く工程、電極シート上に誘電体ペーストをカバーする工程、リブシート上に蛍光体ペーストをスクリーン印刷する工程等を簡略化することが可能である。
また、未焼結リブ上にインクジェットで蛍光体を印刷したり、オフセット印刷で電極を印刷した上に誘電体前駆層をスクリーン印刷したりする等、異なる印刷法を組み合わせるときにも応用することができる。例えば、サンドブラストレジストパターンをフォトリソ工程で描く工程をスクリーン印刷に置き換える等である。
【0023】
本発明の低融点ガラス分散ペーストを用いることにより、プラズマディスプレイパネルを作製する際に、背面ガラス基板表面に誘電体前駆層とガラスリブ前駆体とを形成した後にまとめて脱脂・焼成を行ってもシートアタックを生じないため、従来のように熱エネルギーや製造タクト時間がかかるという問題がない。特に、本発明の低融点ガラス分散ペーストは、エチルセルロースをバインダー主成分とする誘電体前駆層に対して、本発明の低融点ガラス分散ペーストからなるガラスリブ前駆体としてポリビニルブチラール樹脂を用いたときにシートアタックを生じない効果が著しく得られる。
背面ガラス基板にエチルセルロースをバインダー主成分とする誘電体層用ペーストを塗工し、乾燥させることにより誘電体前駆層を形成させる誘電体前駆層形成工程と、脱脂工程を行わずに上記誘電体前駆層の表面に本発明の低融点ガラス分散ペーストを塗工し、乾燥させることによりガラスリブ前駆体を形成させるガラスリブ前駆体形成工程と、サンドブラストにより上記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる凹型形状形成工程と、上記誘電体前駆層及び上記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する脱脂・焼成工程とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法もまた、本発明の1つである。
また、背面ガラス基板に本発明の低融点ガラス分散ペーストを塗工し、乾燥させることにより誘電体前駆層を形成させる誘電体前駆層形成工程と、脱脂工程を行わずに上記誘電体前駆層の表面にエチルセルロースをバインダー主成分とするガラスリブ用ペーストを塗工し、乾燥させることによりガラスリブ前駆体を形成させるガラスリブ前駆体形成工程と、サンドブラストにより上記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる凹型形状形成工程と、上記誘電体前駆層及び上記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する脱脂・焼成工程とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法もまた、本発明の1つである。
【0024】
本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、上述したように特定の溶剤を含有する本発明の低融点ガラス分散ペーストを用いることにより、従来のようにプラズマディスプレイパネルを作製する際に誘電体前駆層の乾燥後とサンドブラストにて凹型形状形成後とに、それぞれ脱脂・焼成工程を行わなくても誘電体層の破壊を生じることがないため、脱脂・焼成工程を減らすことができることから、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる。
なお、各工程については、本発明の低融点ガラス分散ペーストを用いることと、脱脂工程を減らすこと以外は、従来のプラズマディスプレイパネルの製造方法と同様の操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる低融点ガラス分散ペースト、及び、該低融点ガラス分散ペーストを用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
重合度360、けん化度98mol%のポリビニルアルコール180gを純水3000mLに加え、90℃で約2時間攪拌し、溶解させた。この溶液を28℃まで冷却し、35重量%の塩酸200gとn−ブチルアルデヒド110gとを添加し、液温を15℃に下げ、この温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃に5時間保持して反応を完了させ、中和、水洗、及び、乾燥を経てポリビニルアセタール樹脂の白色の粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度(ブチラール化度)を測定したところ、ブチラール化度は38mol%であった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂について、用いたポリビニルアルコール樹脂の水酸基価は98mol%であるためアセタール化反応後の残された水酸基価は60mol%である。
得られた樹脂に対して、ノニオン系界面活性剤としてBL−9EX(日光ケミカル社製)、ガラス粉末として低融点ガラス微粒子ABX−169F(東罐マテリアルテクノロジー社製)80%とシリカ粒子20%の混合物、表1に示した溶剤をそれぞれ表1に記載した組成比になるよう添加し、高速攪拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、低融点ガラス分散ペーストを作製した。
【0028】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
n−ブチルアルデヒドの添加量、反応温度、反応時間を調整し、実施例1と同様に反応−中和−乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂を得た。用いたポリビニルアルコールのけん化度はいずれも98mol%であり、重合度は表1のとおりであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂の水酸基価は表1のとおりであった。得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にして低融点ガラス分散ペーストを作製した。
【0029】
(比較例3)
エチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)をテルピネオールに10重量%になるように溶解させ、エチルセルロースビヒクルを作製した。表1の組成比になるように各成分を調整し、実施例1と同様にして低融点ガラス分散ペーストを作製した。
【0030】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた低融点ガラス分散ペーストについて、以下の評価を行った。結果を表2、表3に示した。
【0031】
(1)耐シートアタック性
エチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)をテルピネオールに10重量%になるように溶解させ、エチルセルロースビヒクルを作製した。エチルセルロースビヒクルに1:1の割合で低融点ガラス微粒子ABX−169Fとシリカ微粒子(8:2)混合物を添加し、高速攪拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行うことにより得られたペーストを10ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板上に塗工した。120℃オーブンで30分養生し、ペーストに含まれるテルピネオールを蒸発させることにより、エチルセルロースをバインダー主成分とする誘電体前駆層を形成した。厚みは10ミクロンで緻密で表面平滑性は良好であった。
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた低融点ガラス微粒子及びシリカ粒子を含まないビヒクル組成物を誘電体前駆層上に塗工後、120℃オーブンで30時間乾燥させ顕微鏡にてビヒクル塗布面のガラス粒子層(誘電体前駆層)の形状を観察し、層に穴が見られたものを×、変化がなかったものを○とした。
【0032】
(2)リブ表面性、サンドブラスト性
エチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)をテルピネオールに10重量%になるように溶解させ、エチルセルロースビヒクルを作製した。エチルセルロースビヒクルに1:1の割合で低融点ガラス微粒子ABX−169Fとシリカ粒子の(8:2)混合物を添加し、高速攪拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行うことにより得られたペーストを7ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板上に塗工した。120℃オーブンで30分養生してペーストに含まれるテルピネオールを蒸発させ、エチルセルロースをバインダー主成分とする誘電体前駆層を形成した。厚みは50ミクロンで緻密で表面平滑性は良好であった。
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた低融点ガラス分散ペーストを誘電体前駆層上に塗工後、ナイフコーターで400ミクロンの厚みに成形し、120℃オーブンで1時間乾燥させ、厚み180ミクロンのガラスリブ前駆体を形成した。
ガラスリブ前駆体上にサンドブラスト用ドライフィルムレジスト(東京応化工業社製、BF603)を50℃でラミネート後、露光マスクをセットし、300mJ/cmで露光した。0.2%炭酸ナトリウム水溶液で現像し、幅100ミクロンのライン&スペースのパターンを形成した。
リブ上へのレジストフィルムの密着が良好なものを表面性○とし、細かな気泡が抜けなかったものを表面性×とした。
パターンを形成した面に不二製作所社製サンドブラスト機(ニューマブラスターSCM−1ADE−NE−401)を用い、研磨剤(不二製作所社製S4#1000)を噴出圧力0.15MPaで吹き付けし、サンドブラスト処理を行った。
誘電体前駆層まで切削が進んだものを○、底まで切削が進まなかったものを×とした。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

実施例1〜4において耐シートアタック性、レジストフィルム密着性、並びに、サンドブラスト性評価についていずれも良好であったのに対し、比較例1ではポリビニルアセタール樹脂が溶媒に溶解せず、ペースト化することができなかった。また、比較例2では用いたテルピネオール溶剤が、誘電体前駆層を膨潤させ、ガラスリブ前駆体へ移行したため、ガラスリブ前駆体の底部の樹脂量が多くなり、サンドブラストにて切削することができなかった。
【0035】
(3)耐シートアタック性
実施例1、4及び比較例3で作成した低融点ガラス分散ペーストを10ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板上に塗工した。120℃オーブンで30分養生してペーストに含まれる溶剤を蒸発させ、誘電体前駆層を形成した。厚みは10ミクロンで緻密で表面平滑性は良好であった。
エチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)をブチルカルビトールアセテートに樹脂分10重量%になるよう作成したビヒクル組成物を5ミルに設定したアプリケーターを用いて誘電体前駆層上に塗工した。120℃オーブンで30分養生して溶剤成分を蒸発させ誘電体前駆層の状態を顕微鏡観察して確認した。誘電体前駆層に穴が見られたものを×、変化がなかったものを○とした。
【0036】
(4)リブ表面性、サンドブラスト性
実施例1、4及び比較例3で作成した低融点ガラス分散ペーストを10ミルに設定したアプリケーターを用いてガラス基板上に塗工した。120℃オーブンで30分養生してペーストに含まれる溶剤を蒸発させ、誘電体前駆層を形成した。厚みは10ミクロンで緻密で表面平滑性は良好であった。
エチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)をブチルカルビトールアセテートに樹脂分10重量%になるよう作成したビヒクル組成物に、実施例1のポリビニルアセタール樹脂をエチルセルロース(STD46、アルドリッチ社製)に、溶剤をブチルカルビトールアセテートに変更した以外は同じ組成比及び方法で作成したガラスペースト組成物を誘電体前駆層上に塗工後、ナイフコーターで400ミクロンの厚みに成形し、120℃オーブンで1時間乾燥させ厚み180ミクロンのガラスリブ前駆体を成形した。
ガラスリブ前駆体上にサンドブラスト用ドライフィルムレジスト(東京応化工業社製、BF603)を50℃でラミネート後、露光マスクをセットし、300mJ/cmで露光した。0.2%炭酸ナトリウム水溶液で現像し、幅100ミクロン幅のライン&スペースのパターンを形成した。
リブ上へのレジストフィルムの密着が良好なものを表面性○とし、レジストフィルムの剥がれや細かな気泡が抜けなかったものを表面性×とした。
パターンを形成した面に不二製作所社製サンドブラスト機(ニューマブラスターSCM−1ADE−NE−401)を用い、研磨剤(不二製作所製S4#1000)を噴出圧力0.15MPaで吹き付けし、サンドブラスト処理を行った。
誘電体前駆層まで切削が進んだものを○、底まで切削が進まなかったものを×とした。
【0037】
【表3】

【0038】
ポリビニルアセタール樹脂を用いた低融点ガラス分散ペーストを用いてなる誘電体前駆層に、ガラスリブ前駆体となるブチルカルビトールアセテート溶媒のペーストを塗布してもシートアタック性に問題なかった。また、誘電体前駆層とガラスリブ前駆体との間に溶剤の移行がないため、ガラスリブ前駆体にエチルセルロースを用いてもサンドブラスト性は良好であった。
誘電体前駆層、ガラスリブ前駆体にエチルセルロースを用い、溶媒にそれぞれテルピネオール、ブチルカルビトールアセテートを用いた比較例3では、耐シートアタック性評価では、誘電体前駆層の亀裂が見られ、リブ表面性評価ではガラス基板とガラスリブ前駆体との界面にレジストフィルム現像、洗浄中に部分的に剥がれが見られ、またレジストフィルムも部分的に剥がれる現象が見られた。サンドブラスト性評価では、用いたブチルカルビトールアセテート溶剤が、誘電体前駆層を膨潤させ、ガラスリブ前駆体へ移行したため、ガラスリブ前駆体の底部の樹脂量が多くなり、サンドブラストにて切削することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、効率よくプラズマディスプレイパネルを製造することができる低融点ガラス分散ペースト、及び、該低融点ガラス分散ペーストを用いてなるプラズマディスプレイパネルの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が40mol%以上のポリビニルアセタール樹脂と、ガラス粉末と、誘電率が25以上、比重が0.95以上1.35未満、かつ、沸点が150℃以上300℃未満の溶剤とを含有することを特徴とする低融点ガラス分散ペースト。
【請求項2】
更に、ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1記載の低融点ガラス分散ペースト。
【請求項3】
溶剤は、エタンジオール、プロパンジオール、及び、ブタンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の低融点ガラス分散ペースト。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が5000〜100000であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の低融点ガラス分散ペースト。
【請求項5】
背面ガラス基板にエチルセルロースをバインダー主成分とする誘電体層用ペーストを塗工し、乾燥させることにより誘電体前駆層を形成させる誘電体前駆層形成工程と、脱脂工程を行わずに前記誘電体前駆層の表面に請求項1、2、3又は4記載の低融点ガラス分散ペーストを塗工し、乾燥させることによりガラスリブ前駆体を形成させるガラスリブ前駆体形成工程と、サンドブラストにより前記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる凹型形状形成工程と、前記誘電体前駆層及び前記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する脱脂・焼成工程とを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
背面ガラス基板に請求項1、2、3又は4記載の低融点ガラス分散ペーストを塗工し、乾燥させることにより誘電体前駆層を形成させる誘電体前駆層形成工程と、脱脂工程を行わずに前記誘電体前駆層の表面にエチルセルロースをバインダー主成分とするガラスリブ用ペーストを塗工し、乾燥させることによりガラスリブ前駆体を形成させるガラスリブ前駆体形成工程と、サンドブラストにより前記ガラスリブ前駆体に凹型形状を形成させる凹型形状形成工程と、前記誘電体前駆層及び前記ガラスリブ前駆体を加熱して脱脂・焼成する脱脂・焼成工程とを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。


【公開番号】特開2008−156385(P2008−156385A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343417(P2006−343417)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】