説明

作業機械の油圧回路システム

【課題】走行時に走行装置以外の被駆動部材を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、作業機械の走行直線性を保つことができるようにする。
【解決手段】第1コントロールバルブ群102Aに第1左走行モータ用及び第1右走行モータ用コントロールバルブ68a,69aを含ませ、第2コントロールバルブ群102Bに第2左走行モータ用及び第2右走行モータ用コントロールバルブ68b,69bを含ませ、第1及び第2左走行モータ用油圧管路684a,685a;684b,685b、
第1及び第2右走行モータ用油圧管路694a,695a;694b,695b、左走行モータ用合流管路686,687、右走行モータ用合流管路696,697を設けて、左右の走行モータ210L,210Rともに、第1及び第2油圧ポンプ100A,100Bの吐出油により駆動される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物解体工事、廃棄物解体工事、道路工事、建設工事、土木工事等に使用される作業機械に係り、特に2台の多関節型の作業フロントを備えた作業機械の油圧回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物解体工事、廃棄物解体工事、土木建設工事等に使用される作業機械としては、走行体を備えた下部走行体に上部旋回体を旋回自在に取付け、この上部旋回体に多関節型の作業フロントを上下揺動自在に取付けたものが知られている。このような作業機械の一例として油圧ショベルがある。この油圧ショベルでは、上部旋回体にブーム・アームからなる作業フロントを上下揺動自在に連結し、アームの先端にバケットを上下揺動自在に取付け、掘削、積込み、地均し等の作業を行う。また、バケットの代わりにブレーカ、クラッシャ、グラップル等を装着して、構造物解体工事、廃棄物解体工事等の作業を行えるようにしている。
【0003】
また、近年では、構造物解体工事、廃棄物解体工事等の作業を効率的に行うことができるようにするため、2本の作業フロント(第1及び第2作業フロント)を有した双腕型の作業機械が実用化されており、その一例が特許文献1に記載されている。また、特許文献1には、双腕作業機械において、片側の作業フロントで複合動作を行うときの油量不足を抑制することができる油圧システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の双腕作業機械の油圧回路システムにおいては、次のような更に改善すべき点がある。
【0006】
特許文献1記載の双腕作業機械の油圧回路システムにおいては、2台の油圧ポンプの一方は左コントロールバルブ群に接続され、他方は右コントロールバルブ群に接続されている。また、左コントロールバルブ群に左作業フロントの駆動アクチュエータが接続されており、右コントロールバルブ群に右作業フロントを駆動するアクチュエータが接続されている。更に、左コントロールバルブ群に左走行モータが、右コントロールバルブ群に右走行モータが接続されている。
【0007】
ここで、左右の走行モータに同流量を供給して直進走行しながら、同時に走行装置以外の非駆動部材、例えば左作業フロントを駆動させた場合を想定する。この場合、一方の油圧ポンプから吐出され、左コントロールバルブ群を通過する圧油の一部が左作業フロントに供給されるため、左コントロールバルブ群から左走行モータに供給される流量が減少する。一方、右コントロールバルブ群から右走行モータへの供給流量は変化しない。したがって、左右の走行モータへの供給流量に差が生じ、速度差が発生し、作業機械が蛇行してしまう。
【0008】
このような問題は、双腕作業機械の油圧回路システムだけでなく、車体の前後に複数の作業機を取り付けたり、車体に種々の可動部を取り付けた走行式の作業機械の油圧回路システムにおいても同様に生じる。
【0009】
本発明の目的は、走行時に走行装置以外の被駆動部材を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、作業機械の走行直進性を保つことができる作業機械の油圧回路システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明は、左右の走行装置を備えた下部車体と、この下部車体の上部に設けられ運転室を備えた上部車体と、この上部車体に上下揺動自在に設けられた少なくとも1つの作業フロントを含む複数の被駆動部材とを備えた作業機械の油圧回路システムにおいて、第1油圧ポンプと、第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記左走行装置を駆動する左走行モータと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記右走行装置を駆動する右走行モータと、前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記複数の被駆動部材のうちの前記左右の走行装置以外のその他の被駆動体を駆動する複数のアクチュエータの一部を含む第1アクチュエータ群と、前記第2油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記複数の被駆動部材のうちの前記左右の走行装置以外のその他の被駆動体を駆動する複数のアクチュエータの他の一部を含む第2アクチュエータ群と、前記第1油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1左走行モータ用コントロールバルブ、前記第1油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第1油圧ポンプから前記第1アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第1コントロールバルブ群と、前記第2油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2左走行モータ用コントロールバルブ、前記第2油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第2油圧ポンプから前記第2アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第2コントロールバルブ群と、前記第1左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第1左走行モータ用油圧管路と、前記第1右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第1右走行モータ用油圧管路と、前記第2左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第2左走行モータ用油圧管路と、前記第2右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第2右走行モータ用油圧管路と、前記第1左走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2左走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記左走行モータに供給する左走行モータ用合流管路と、前記第1右走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2右走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記右走行モータに供給する右走行モータ用合流管路とを備えるものとする。
【0011】
このように本発明は、第1コントロールバルブ群に第1左走行モータ用コントロールバルブ及び第1右走行モータ用コントロールバルブを含ませ、第2コントロールバルブ群に第2左走行モータ用コントロールバルブ及び第2右走行モータ用コントロールバルブを含ませ、第1左走行モータ用油圧管路、第1右走行モータ用油圧管路、第2左走行モータ用油圧管路、第2右走行モータ用油圧管路、左走行モータ用合流管路、右走行モータ用合流管路を設けて、左右の走行モータともに、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される構成としたものであり、これにより走行時に走行装置以外の被駆動部材を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、左右の走行モータに対して同量の流量減少となることから、作業機械の走行直進性を保つことができる。
【0012】
(2)また、上記課題を解決するために、本発明は、左右の走行装置を備えた下部車体と、この下部車体の上部に設けられ運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部左右に上下揺動自在に設けられ、それぞれブーム、アーム及び作業具を含む第1及び第2作業フロントとを備えた作業機械の油圧回路システムにおいて、第1油圧ポンプと、第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記左走行装置を駆動する左走行モータと、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記右走行装置を駆動する右走行モータと、前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記第1作業フロントを駆動する複数のアクチュエータを含む第1アクチュエータ群と、前記第2油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記第2作業フロントを駆動する複数のアクチュエータを含む第2アクチュエータ群と、前記第1油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1左走行モータ用コントロールバルブ、前記第1油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第1油圧ポンプから前記第1アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第1コントロールバルブ群と、前記第2油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2左走行モータ用コントロールバルブ、前記第2油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第2油圧ポンプから前記第2アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第2コントロールバルブ群と、前記第1左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第1左走行モータ用油圧管路と、前記第1右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第1右走行モータ用油圧管路と、前記第2左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第2左走行モータ用油圧管路と、前記第2右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第2右走行モータ用油圧管路と、前記第1左走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2左走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記左走行モータに供給する左走行モータ用合流管路と、前記第1右走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2右走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記右走行モータに供給する右走行モータ用合流管路とを備えるものとする。
【0013】
このように構成した本発明においても、第1及び第2作業フロントとを備えた双腕の作業機械において、上記したのと同様の理由で、走行時に第1及び第2作業フロントの一方を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、左右の走行モータに対して同量の流量減少となることから、作業機械の走行直進性を保つことができる。
【0014】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記第1油圧ポンプから吐出された圧油を2系統に分流して前記第1コントロールバルブ群に供給する第1分流弁と、前記第2油圧ポンプから吐出された圧油を2系統に分流して前記第2コントロールバルブ群に供給する第2分流弁とを更に備え、前記第1コントロールバルブ群は、前記第1分流弁の2つの出力側に接続される2つのポンプポートと、前記2つのポンプポートにそれぞれ接続される2つのセンターバイパス油路と、前記2つのセンターバイパス油路にそれぞれ直列に接続された複数のオープンセンター型のバルブを含む2つのオープンセンター型バルブ群とを有し、前記第1左走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の一方に配置され、前記第1右走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の他方に配置され、前記第2コントロールバルブ群は、前記第2分流弁の2つの出力側に接続される2つのポンプポートと、前記2つのポンプポートにそれぞれ接続される2つのセンターバイパス油路と、前記2つのセンターバイパス油路にそれぞれ直列に接続された複数のオープンセンター型のバルブを含む2つのオープンセンター型バルブ群とを有し、前記第2左走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の一方に配置され、前記第2右走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の他方に配置されている。
【0015】
これにより第1及び第2油圧ポンプの2つのポンプを用いたオープン回路システムにおいて、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、作業機械の走行直進性を保つことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走行時に走行装置以外の被駆動部材を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプから左右の走行モータの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、左右の走行モータに対して同量の流量減少となることから、作業機械の走行直進性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態における油圧回路システムを備えた作業機械の一例である双腕作業機械の概略側面図である。
【図2】双腕作業機械の概略上面図である。
【図3】双腕作業機械における作業フロントの操作装置の概略斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における作業機械の油圧回路システムを示す概略図である。
【図5】油圧回路システムの制御装置を示す概略図である。
【図6A】操作装置の動作説明図である。
【図6B】作業機械の作業フロントの動作説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における作業機械の油圧回路システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
<作業機械>
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態における油圧回路システムを備える作業機械の一例を示す図である。図示の例では、作業機械は双腕作業機械200であり、双腕作業機械200には、クローラ方式の左右の走行装置1a,1bを備えた下部走行体1に上部旋回体3が旋回可能に取付けられ、その上部旋回体3の左右方向の中心線3c近傍に運転室4が取付けられている。中心線3cを境として運転室4の前方右側及び前方左側には左作業フロントAおよび右作業フロントBがそれぞれ設けられ、運転室4の側方および後部にはエンジン40やポンプ類(後述)が設けられている。走行装置1a,1bは、それぞれ、走行装置1a,1bのクローラを駆動する左右の走行モータ2a,2bを備えている。上部旋回体3は下部走行体1との連結部に旋回モータ16(図4参照)を備え、この旋回モータ16を駆動することにより下部走行体2上を旋回する。
【0019】
<左作業フロント>
左作業フロントAは、上部旋回体3の前方左側に左右方向に揺動自在に取付けられたスイングポスト7aと、このスイングポスト7aに上下方向に揺動自在に取付けられたブーム10aと、このブーム10aに上下方向に揺動自在に取付けられたアーム12aと、このアーム12aに上下方向に回動自在に取付けられた第1作業具であるグラップル14aと、スイングポスト7aと上部旋回体3とに連結され、スイングポスト7aを左右揺動させるスイングポストシリンダ9aと、スイングポスト7aとブーム10aとに連結され、ブーム10aを上下揺動させるブームシリンダ11aと、ブーム10aとアーム12aとに連結され、アーム12aを上下揺動させるアームシリンダ13aと、そのアーム12aと作業具14aとに連結され、作業具14aを上下回動させるバケットシリンダ15aとを有している。
【0020】
ここで、作業具14aは、作業機械の作業内容に応じて、図中で示したグラップルの他に、カッタ、ブレーカ、バケット、その他の作業具のいずれか1つに任意に交換可能である。
【0021】
<右作業フロント>
右作業フロントBは、上部旋回体3の前部右側に設けられている。これは、右作業フロントAと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
【0022】
<操作装置>
図3は、双腕作業機械200における作業フロントA,Bの操作装置を示す図である。運転室4内には運転席49が設置され、運転席49の左右両側には操作装置50a,50bが設けられている。
【0023】
操作装置50aは左作業フロントA用であり、操作装置50bは右作業フロントB用である。
【0024】
操作装置50aは、運転席49の左側に設けられた操作アームブラケット51aと、この操作アームブラケット51aに揺動中心軸線73a回りに左右揺動自在に取付けられ、スイングポスト7aの左右の揺動を指示する操作アーム52aと、この操作アーム52aの先端部分に上下前後に回動自在に取付けられ、ブーム10aと、アーム12aの動作を指示する横置きの操作レバー54aと、この操作レバー54aの周囲に、操作レバー54aの軸心回りに回動自在に取付けら、作業具14aの回動を指示する作業具回動レバー55aと、操作レバー54aの先端部に取り付けられ、作業具14aの始動・停止を指示する作業具操作スイッチ56aとを備えている。操作アーム52aの上部にはアームレスト53aが取り付けられ、アームレスト53aは、操作者の肘関節が位置することを想定した肘関節支持部77aを有している。肘関節支持部77aの中心は操作アーム52aの揺動中心軸線73a上に位置している。
【0025】
また、操作装置50aは、操作アームブラケット51aに設けられ、操作アーム52aの揺動変位量を検出して信号を発信する操作アーム用変位検出器57aと、操作アーム52aに設けられ、操作レバー54aの上下方向の変位量を検出して信号を発信する操作レバー用上下方向変位検出器581aと、これと同様に前後方向の変位量を検出して信号を発信する操作レバー用前後方向変位検出器582aと、操作レバー54aに設けられ、作業具回動レバー55aの回転変位量を検出して信号を発信する回動レバー用変位検出器59aと、作業具回動レバー55aに設けられ、作業具操作スイッチ56aの変位量を検出して信号を発信する操作スイッチ用変位検出器60aとを有している。
【0026】
操作装置50bは、運転席の右側に操作装置50aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
【0027】
また、運転室4内には上部旋回体3の旋回を指示する旋回操作装置213(図4参照)と、走行装置1a,1bの走行を指示する走行操作装置214(図4参照)とが設置されている。
【0028】
<油圧回路システムの概要>
図4は、本発明の第1の実施の形態における双腕型作業機械の油圧回路システムの要部を抽出して示す油圧回路図である。図4に示す油圧回路システムは、ロードセンシング型の油圧回路システムに本発明を適用したものである。
【0029】
図4において、作業機械200に備えられた油圧回路システムは、エンジン40などの原動機により駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプ100A,100Bと、固定容量型のパイロットポンプ105と、第1油圧ポンプ100Aから吐出される圧油により駆動される左フロントアクチュエータ群101A(第1アクチュエータ群)と、第2油圧ポンプ100Bから吐出される圧油により駆動される右フロントアクチュエータ群101B(第2アクチュエータ群)及び旋回モータ16と、第1油圧ポンプ100A及び第2油圧ポンプ100Bから吐出される圧油により駆動される上記の左走行モータ2a及び右走行モータ2bとを備えている。
【0030】
また、作業機械200に備えられた油圧回路システムは、第1油圧ポンプ100Aから左フロントアクチュエータ群101A、左走行モータ2a、右走行モータ2bに供給される圧油を制御する左コントロールバルブ群102A(第1コントロールバルブ群)と、第2油圧ポンプ100Bから右フロントアクチュエータ群101B、左走行モータ2a、右走行モータ2b、旋回モータ16に供給される圧油を制御する右コントロールバルブ群102B(第2コントロールバルブ群)と、作動油タンク212と、上述した上部旋回体3の旋回を指示する(すなわち旋回モータ16の回転を指示する)旋回操作装置213及び走行装置1a,1bの走行を指示する(すなわち走行モータ2a,2bの回転を指示する)走行操作装置214とを備えている。
【0031】
旋回操作装置213は指令パイロット圧SR,SLを生成する2つのリモコン弁を有している。走行操作装置214は左走行用の操作装置214aと右走行用の操作装置214bを有し、左走行用の操作装置214aは指令パイロット圧LF,LRを生成する2つのリモコン弁を有し、右走行用の操作装置214bは指令パイロット圧RF,RRを生成する2つのリモコン弁を有している。
【0032】
左フロントアクチュエータ群101Aは、第1作業フロントAの一部を構成するブームシリンダ11a、アームシリンダ13a及びバケットシリンダ15aを備えている。この左フロントアクチュエータ群101Aには、上記各シリンダ以外にスイングポストシリンダ9a(図1及び図2)、作業具14aの爪を開閉するアクチュエータ(図示せず)が含まれているが、図4では図示を省略する。
【0033】
右フロントアクチュエータ群101Bも、同様に、第2作業フロントBの一部を構成するブームシリンダ11b、アームシリンダ13b及びバケットシリンダ15bや、図4では図示を省略するスイングポストシリンダ9b、作業具14bの爪を開閉するアクチュエータ(図示せず)を備えている。
【0034】
また、図示はしないが、第1油圧ポンプ100Aはロードセンシング制御のレギュレータを備えており、このロードセンシング制御のレギュレータは、左コントロールバルブ群102におけるいずれかのコントロールバルブが操作されたとき、対応するアクチュエータの負荷圧(複数のコントロールバルブが操作されたときは最高負荷圧)よりも油圧ポンプの吐出圧が所定の値だけ高くなるように第1油圧ポンプ100Aの容量(傾転角)を制御する。第2油圧ポンプ100Bも同様のレギュレータを備えている。アクチュエータの負荷圧(或いは最高負荷圧)は後述するシャトル弁143a〜149b,143b〜149bにより検出される。
【0035】
<左コントロールバルブ群102Aの詳細>
左コントロールバルブ群102A(第1コントロールバルブ群)は、第1油圧ポンプ100Aから各アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブの集まりであり、前述の油圧シリンダ11a,13a,15a、左右走行モータ2a,2bへの圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ63a〜65a,68a,69a、その他のコントロールバルブ66aを備えている。その他のコントロールバルブ66aは、例えば、スイングポストシリンダ9aや爪開閉用の図示しないアクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブである。また、この他にも左作業フロントAの動作に関連するそれ以外のアクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブを含んでいる。
【0036】
コントロールバルブ68a(第1左走行モータ用コントロールバルブ)及びコントロールバルブ69a(第1右走行モータ用コントロールバルブ)は、第1油圧ポンプ100Aからそれぞれ、左走行モータ2aと右走行モータ2bとに供給される圧油の流れを制御するものであり、第1油圧ポンプ100Aから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)と、左右の走行モータ2a,2bに導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ68a,69aのそれぞれの位置は走行操作装置214からの制御信号(指令パイロット圧)LF,LR及びRF,RRにより制御され、制御信号の入力が無い場合はバネの付勢力により中立位置に復帰する。
【0037】
コントロールバルブ63a〜65aは、第1油圧ポンプ100Aからそれぞれ、ブームシリンダ11a、アームシリンダ13a、バケットシリンダ15aに供給される圧油の流れを制御するものであり、中立位置(圧油の流れを遮断する位置)と、2つの流通位置の3つの位置を有している。コントロールバルブ63a〜65aのそれぞれの位置は、前述した第1作業フロントA用の操作装置50aの操作に応じて切り換わる。また、コントロールバルブ63a〜65aは電磁弁215a〜217aが生成する指令パイロット圧により駆動されるパイロット駆動式であり、操作装置50aからの操作信号に対応した電気信号が電磁弁215a〜217aに入力され、この電気信号に応じて電磁弁215a〜217aは動作してパイロットポンプ105からコントロールバルブ63a〜65aのそれぞれの受圧部に供給される指令パイロット圧をそれぞれ制御し、これによりコントロールバルブ63a〜65aは2つの流通位置の一方に切り換わる。操作装置50aからの操作信号が無い時、バネの付勢力により中立位置に復帰する。コントロールバルブ66aについても同様である。
【0038】
左コントロールバルブ群102Aの各コントロールバルブ63a〜69aの上流側には、各コントロールバルブ63a〜69aの前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁123a〜129aが設けられている。また、複数のコントロールバルブ63a〜69aには自己負荷圧の検出ラインがそれぞれ設けられ、これら検出ラインで検出された負荷圧のうちの最高負荷圧がシャトル弁143a〜149aを介して検出され切換弁152aに付勢される。ここで、切換弁152aはアンサチュレーション弁で、最高負荷圧の作用しているアクチュエータのコントロールバルブの前後差圧を一定に保てない時に、圧力補償弁の設定圧を一様に下げる役割を果たしている。
【0039】
なお、第1油圧ポンプ100Aと圧力補償弁123a〜129aの間には、コントロールバルブ63a〜69a側から油圧ポンプ100A側への圧油の逆流を防止するロードチェック弁133a〜139aがそれぞれ設けられている。また、第1油圧ポンプ100Aの吐出管路の最高圧はリリーフ弁150aにより制限されている。リリーフ弁150aのリリーフ圧は、このリリーフ弁150aに設けられたバネにより設定される。アンロード弁151aは、第1油圧ポンプ100Aからの余剰油量を作動油タンク212へ戻す役割を果たしている。
【0040】
<右コントロールバルブ群102Bの詳細>
右コントロールバルブ群102B(第2コントロールバルブ群)は左コントロールバルブ群102Aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添付を「a」から「b」、「A」から「B」に変えて示すことにし、ここでは説明を一部省略する。
【0041】
また、右コントロールバルブ群102Bは、右アクチュエータ群101B(油圧シリンダ11b,13b,15b等)及び左右走行モータ2a,2bへの圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ63b〜65b,68b,69bに加えて、旋回モータ16への圧油の流れを制御するコントロールバルブ66bを備えている。
【0042】
コントロールバルブ68b(第2左走行モータ用コントロールバルブ)及びコントロールバルブ69b(第1右走行モータ用コントロールバルブ)は、第2油圧ポンプ100Bからそれぞれ、左走行モータ2aと右走行モータ2bとに供給される圧油の流れを制御するものであり、第2油圧ポンプ100Bから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)と、左右の走行モータ2a,2bに導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ68a,69aのそれぞれの位置は走行操作装置214からの制御信号(指令パイロット圧)LF,LR及びRF,RRにより制御され、制御信号の入力が無い場合はバネの付勢力により中立位置に復帰する。
【0043】
コントロールバルブ66bは、第2油圧ポンプ100Bから旋回モータ16に供給される圧油の流れを制御するものであり、第2油圧ポンプ100Bから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)と、旋回モータ16に導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ66bの位置は旋回操作レバー装置213からの制御信号(指令パイロット圧)SR,SLにより制御され、制御信号の入力が無い場合はバネの付勢力により中立位置に復帰する。
【0044】
<走行モータクロス接続>
ここで、左コントロールバルブ群102A内の左走行用コントロールバルブ68aの出力ポートは内部通路を介して左コントロールバルブ群102Aのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには左C/V左走行用油圧管路684a,685a(第1左走行モータ用油圧管路)が接続されている。右コントロールバルブ群102B内の左走行用コントロールバルブ68bの出力ポートは内部通路を介して右コントロールバルブ群102Bのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには右C/V左走行用油圧管路684b,685b(第2左走行モータ用油圧管路)が接続されている。左C/V左走行用油圧管路684a,685aと右C/V左走行用油圧管路684b,685bとは左走行モータ用合流油圧管路686,687(左走行モータ用合流管路)に接続され、左走行モータ用合流油圧管路686,687は左走行モータ2aに接続され、左C/V左走行用油圧管路684a,685aから供給された圧油と右C/V左走行用油圧管路684b,685bから供給された圧油を合流して左走行モータ2aに供給する。
【0045】
また、左コントロールバルブ群102A内の右走行用コントロールバルブ69aの出力ポートは内部通路を介して左コントロールバルブ群102Aのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには左C/V右走行用油圧管路694a,695a(第1右走行モータ用油圧管路)が接続されている。右コントロールバルブ群102B内の右走行用コントロールバルブ69bの出力ポートは内部通路を介して右コントロールバルブ群102Bのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには右C/V右走行用油圧管路694b,695b(第2右走行モータ用油圧管路)が接続されている。左C/V右走行用油圧管路694a,695aと右C/V右走行用油圧管路694b,695bとは右走行モータ用合流油圧管路696,697(右走行モータ用合流管路)に接続され、右走行モータ用合流油圧管路696,697は右走行モータ2bに接続され、左C/V右走行用油圧管路694a,695aから供給された圧油と右C/V右走行用油圧管路694b,695bから供給された圧油を合流して右走行モータ2bに供給する。
【0046】
<制御装置>
図5は、左作業フロントA及び第2作業フロントBの動作を制御する制御装置161の機能ブロック図である。なお、図において、右作業フロントBについては図中に括弧書きで符号を示している。
【0047】
図5の制御系は、大きく分類して、運転室4内の操作装置50a,50bに設けられた前述の各変位検出器からなる入力系と、これら入力系からの入力信号(操作信号、フロント選択信号)を基に所定の演算をして駆動信号(電気信号)を生成し出力する制御装置161と、制御装置161からの駆動信号を受け、第1作業フロントA及び第2作業フロントBの各部を動作させる電磁弁群からなる出力系とから構成されている。
【0048】
制御装置161の入力系としては、操作アーム52a,52bの揺動変位量をそれぞれ検出して信号を発信する操作アーム用変位検出器57a,57bと、操作レバー54a,54bの上下方向の変位量をそれぞれ検出して信号を発信する操作レバー用上下方向変位検出器581a,581bと、操作レバー54a,54bの前後方向の変位量をそれぞれ検出して信号を発信する操作レバー用前後方向変位検出器582a,582bと、作業具回動レバー55a,55bの回転変位量をそれぞれ検出して信号を発信する作業具回動レバー用変位検出器59a,59bと、作業具操作スイッチ56a,56bの変位量をそれぞれ検出して信号を発信する作業具操作スイッチ用変位検出器60a,60bとが設けられている。
【0049】
また、制御装置161の出力系としては、スイングポスト駆動用電磁弁218a,218bと、ブーム駆動用電磁弁215a,215bと、アーム駆動用電磁弁216a,216bと、バケット駆動用電磁弁217a,217bと、作業具駆動用電磁弁219a,219bとが設けられている。電磁弁215a,215b,216a,216b,217a,217bは図4に示した電磁弁215a〜217a,215b〜217bに対応する。
【0050】
<操作レバーによる動作>
図6A及び図6Bを用いて操作装置と作業機械の動作の関係について説明する。
【0051】
操作レバー54a,54bを上下方向(図6Aのy参照)に変位させると、操作レバー用上下方向変位検出器581a,581bは、制御装置161内の駆動信号生成部161Bへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けた駆動信号生成部161Bは、ブーム駆動用電磁弁215a,215bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号によってブームシリンダ用コントロールバルブ63a,63bが移動し、ブームシリンダ11a,11bを伸縮させる。これによりブーム10a,10bが揺動される(図6BのY参照)。
【0052】
このとき、ブーム10a,10bの揺動速度は、操作レバー54a,54bの変位量と単純増加の関係、例えば比例関係にあり、操作レバー54a,54bの変位は、ブーム10a,10bの揺動を速度制御する。
【0053】
同様に、操作レバー54a,54bを前後方向(図6Aのx参照)に変位させると、アーム12a,12bが揺動され(図6AのX参照)、作業具回動レバー55a,55bを回動中心軸線74a,74b回りに回動させる(図5のz参照)と、作業具14a,14bが作業具回動レバー55a,55bの回動方向と一致する方向に回動され(図6AのZ参照)、操作アーム52a,52bを前腕部で左右揺動させる(図5のw参照)と、スイングポスト7a,7bが操作アーム52a,52bの変位方向と一致する方向に揺動され(図6AのW参照)、作業具操作スイッチ56a,56bを変位させると、作業具14a,14bが開閉される。
【0054】
一方、走行装置1a,1bに関し、走行操作装置214の左走行用の操作レバー又はペダルを例えば前進方向に操作すると、左走行用の操作装置214aのリモコン弁は指令パイロット圧LFを生成し、コントロールバルブ68a,68bはこの指令パイロット圧LFにより移動し、左走行モータ2aを前進方向に回転駆動する。同様に、走行操作装置214の右走行用の操作レバー又はペダルを例えば前進方向に操作すると、右走行用の操作装置214bのリモコン弁は指令パイロット圧RFを生成し、コントロールバルブ69a,69bはこのパイロット信号RFにより移動し、右走行モータ2bを前進方向に回転駆動する。これにより左右の走行用の操作レバー又はペダルを前進方向に同時に操作すると走行装置1a,1bは前進する。このときの走行速度は、走行用の操作レバー又はペダルの操作量を調整することにより制御することができる。
【0055】
走行装置1a,1bを後進させる場合も同様であり、走行操作装置214の左右の走行用の操作レバー又はペダルを後進方向に同時に操作すると、左走行用の操作装置214aのリモコン弁及び右走行用の操作装置214bのリモコン弁はそれぞれパイロット信号LR,RRを生成し、コントロールバルブ68a,68b及びコントロールバルブ69a,69bは移動し、走行装置1a,1bを後進させることができる。
【0056】
<走行モータクロス回路の効果>
ここで、左右の走行用の操作レバー又はペダルを前進方向に、同時に同量操作して左右の走行モータ2b,210Lを回転させ直進走行している場合を想定する。
【0057】
第1油圧ポンプ100Aから左コントロールバルブ群102Aに流量QAが供給され、左コントロールバルブ群102A内の左右走行用コントロールバルブ68a,69aにて、QLaとQRaに分流される。ここで、第1油圧ポンプ100Aから右コントロールバルブ群102Aに供給される圧油の流量は、そのほぼ全てが走行モータに供給されることから、
QA=QLa+QRa ・・・(1)
であり、左右の走行モータに対する指令値(指令パイロット圧)はほぼ同等であることから、
QLa=QRa ・・・(2)
となる。同様に、第2油圧ポンプ100Bから右コントロールバルブ群102Bに流量QBが供給され、右コントロールバルブ群102B内の左右走行用コントロールバルブ68b,69bにて、QLbとQRbに分流される。ここで、第2油圧ポンプ100Bから右コントロールバルブ群102Bに供給される圧油の流量は、そのほぼ全てが走行モータに供給されることから、
QB=QLb+QRb ・・・(3)
であり、左右の走行モータに対する指令値(指令パイロット圧)はほぼ同等であることから、
QLb=QRb ・・・(4)
となる。左走行モータ2aに供給される圧油の流量は、左コントロールバルブ群102AからのQLaと、右コントロールバルブ群102BからのQLbの合流であることから、
QL=QLa+QLb ・・・(5)
となる。また、右走行モータ2bに供給される圧油の流量は、右コントロールバルブ群102BからのQRaと、右コントロールバルブ群102BからのQRbの合流であることから、
QR=QRa+QRb ・・・(6)
となる。ここで、(2)、(4)より、QLa=QRa、QLb=QRbであることから、
QL=QLa+QLb=QRa+QRb=QR ・・・(7)
となり、左右走行モータへの流量は同じとなる。

【0058】
ここで、前記直進走行中に、第2作業フロントBのブーム10bを駆動した場合を想定する。
【0059】
第2油圧ポンプ100Bから右コントロールバルブ群102Bに流量QBが供給されており、右コントロールバルブ群102B内の左右走行用およびブーム用コントロールバルブ68b,69b,63bにて、QLb’、QRb’、QBbに分流される。したがって、
QB=QLb’+QRb‘+QBb ・・・(8)
となる。また、左右の走行モータに対する指令値はほぼ同等であることから、
QLb’=QRb‘ ・・・(9)
となる。左走行モータ2aに供給される圧油の流量は、左コントロールバルブ群102AからのQLaと、右コントロールバルブ群102BからのQLb’の合流であることから、
QL’=QLa+QLb’ ・・・(10)
となる。右走行モータ2bに供給される圧油の流量は、右コントロールバルブ群102BからのQRaと、右コントロールバルブ群102BからのQRb’の合流であることから、
QR’=QRa+QRb’ ・・・(11)
となる。ここで、(2)、(9)より、QLa=QRa、QLb’=QRb’であることから、
QL’=QLa+QLb’=QRa+QRb’=QR’ ・・・(12)
となり、左右走行モータへの流量は同じとなる。
【0060】
上記の関係は、ブーム以外のアクチュエータを駆動させた時も同様に成り立つ。
【0061】
したがって、左右の走行モータ2a,2bに同流量を供給して直進走行中している時に、同時に他のアクチュエータを駆動させた場合も、左右の走行モータ2a,2bへの供給流量が同等であり、作業機械の走行直進性を保つことが可能となる。
【0062】
以上のように本実施の形態によれば、走行時に走行装置1a,1b以外の被駆動部材を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプ100A又は100Bから左右の走行モータ2a,2bの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、左右の走行モータ2a,2bに対して同量の流量減少となることから、作業機械の走行直進性を保つことができる。
[第2の実施の形態]
<油圧回路システムの概要>
図7は、本発明の第2の実施の形態における双腕型作業機械に備えられた油圧回路システムの要部を抽出して示す油圧回路図である。図4に示した油圧回路システムは、ロードセンシング型の油圧回路システムに本発明を適用したものであったのに対し、本実施の形態はオープンセンター型の油圧回路システムに本発明を適用したものである。本実施の形態は、第1の実施の形態に対して油圧回路のみ異なり、他の部分は同じであるため、油圧回路に限定して説明する。
【0063】
図7において、本実施の形態における双腕型作業機械に備えられた油圧回路システムは、エンジン40などの原動機により駆動される可変容量型の第1及び第2油圧ポンプ300A,300Bと、固定容量型のパイロットポンプ305を備えるとともに、第1の実施の形態と同様、第1油圧ポンプ300Aから吐出される圧油により駆動される左フロントアクチュエータ群101A(第1アクチュエータ群)と、第2油圧ポンプ300Bから吐出される圧油により駆動される右フロントアクチュエータ群101B(第2アクチュエータ群)及び旋回モータ16と、第1油圧ポンプ300A及び第2油圧ポンプ300Bから吐出される圧油により駆動される左走行モータ2a及び右走行モータ2bとを備えている。
【0064】
また、油圧回路システムは、第1油圧ポンプ300Aから左フロントアクチュエータ群101A、左走行モータ2a、右走行モータ2bに供給される圧油を制御する左コントロールバルブ群302A(第1コントロールバルブ群)と、第2油圧ポンプ300Bから右フロントアクチュエータ群101B、左走行モータ2a、右走行モータ2b、旋回モータ16に供給される圧油を制御する右コントロールバルブ群302B(第2コントロールバルブ群)と、第1油圧ポンプ100Aからの圧油を2系統に分流して左フロントアクチュエータ群101Aに供給する左分流弁303A(第1分流弁)と、第2油圧ポンプ100Bからの圧油を2系統に分流して右フロントアクチュエータ群101Bに供給する右分流弁303B(第2分流弁)と、作動油タンク312とを備えている。
【0065】
更に、油圧回路システムは、図4とは図示方法が異なるが、第1の実施の形態と同様、上部旋回体3の旋回を指示する(すなわち旋回モータ16の回転を指示する)旋回操作装置213と、走行装置1a,1bの走行を指示する(すなわち走行モータ2a,2bの回転を指示する)走行操作装置214a,214bと、左右のブーム駆動用の指令パイロット圧を生成するブーム駆動用電磁弁215a,215bと、左右のアーム駆動用の指令パイロットを生成するアーム駆動用電磁弁216a,216bと、左右のバケット用の指令パイロットを生成するバケット駆動用電磁弁217a,217bと、左右のスイングポスト用の指令パイロットを生成するスイングポスト駆動用電磁弁(図示せず)と、左右のスイングポスト用の指令パイロットを生成するスイングポスト駆動用電磁弁(図示せず)とを備えている。
【0066】
左フロントアクチュエータ群101Aは、前述したように、第1作業フロントAの一部を構成するブームシリンダ11a、アームシリンダ13a及びバケットシリンダ15aを備えている。この左フロントアクチュエータ群101Aには、上記各シリンダ以外にスイングポストシリンダ9a(図1及び図2)、作業具14aの爪を開閉するアクチュエータ(図示せず)が含まれているが、図7では図示を省略する。
【0067】
右フロントアクチュエータ群101Bも、同様に、第2作業フロントBの一部を構成するブームシリンダ11b、アームシリンダ13b及びバケットシリンダ15bや、図7では図示を省略するスイングポストシリンダ9b、作業具14bの爪を開閉するアクチュエータ(図示せず)を備えている。
【0068】
また、先に述べたように第1油圧ポンプ300Aと左コントロールバルブ群302Aとの間には、左分流弁303Aが設けてあり、左分流弁303Aの入力側にはポンプ出力用油圧管路336aが接続され、出力側には2つのC/V入力用油圧管路337a,338aが接続されている。ポンプ出力用油圧管路336aから分流弁303Aに供給された圧油は、分流弁303A内にて流量が1:1に分流され、2つのC/V入力用油圧管路337a,338aへと出力される。
【0069】
同様に第2油圧ポンプ300Bと右コントロールバルブ群302Bとの間には、右分流弁303Bが設けてあり、右分流弁303Bの入力側にはポンプ出力用油圧管路336bが接続され、出力側には2つのC/V入力用油圧管路337b,338bが接続されている。ポンプ出力用油圧管路336bから分流弁303Bに供給された圧油は、分流弁303B内にて流量が1:1に分流され、2つのC/V入力用油圧管路337b,338bへと出力される。
【0070】
また、図示はしないが、第1油圧ポンプ300Aはポジコン制御のレギュレータを備えており、このポジコン制御のレギュレータは、左コントロールバルブ群302におけるいずれかのコントロールバルブが操作されたとき、対応する操作装置或いは駆動用電磁弁の指令パイロット圧が導かれ、その指令パイロット圧が高くなるにしたがって吐出流量が増加するように第1油圧ポンプ300Aの容量(傾転角)を制御する。第2油圧ポンプ300Bも同様のレギュレータを備えている。
【0071】
<左コントロールバルブ群302Aの詳細>
左コントロールバルブ群302A(第1コントロールバルブ群)の内部は大きく2つに分かれており、圧油を入力する2つのポンプポート334a,335aを有している。一端が分流弁303Aに接続されている2つのC/V入力用油圧管路337a,338aの他端が、左コントロールバルブ群302Aの2つポンプポート334a,335aにそれぞれに接続されている。
【0072】
左コントロールバルブ群302Aは、第1油圧ポンプ300Aから各アクチュエータに供給される圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブの集まりであり、左作業フロントAの油圧シリンダ11a,13a,15a、左右走行モータ2a,2bへの圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ363a〜365a,368a,369a、その他のコントロールバルブ366aを備えている。その他のコントロールバルブ366aは、例えば、スイングポストシリンダ9aや爪開閉用の図示しないアクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブである。また、この他にも左作業フロントAの動作に関連するそれ以外のアクチュエータへの圧油の流れを制御するコントロールバルブを含んでいる。
【0073】
コントロールバルブ368a,369aは、第1油圧ポンプ300Aからそれぞれ、左走行モータ2aと、右走行モータ2bとに供給される圧油の流れを制御するものであり、第1油圧ポンプ300Aから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)、左右の走行モータ2a,2bに導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ368a,369aのそれぞれの位置は走行操作装置214a,214bからの制御信号(指令パイロット圧)により制御され、制御信号の入力が無い場合はバネの付勢力により中立位置に復帰する。
【0074】
コントロールバルブ363a〜365aは、第1油圧ポンプ300Aからそれぞれ、ブームシリンダ11a、アームシリンダ13a、バケットシリンダ15aに供給される圧油の流れを制御するものであり、第1油圧ポンプ300Aから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)と、各シリンダに導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ363a〜365aのそれぞれの位置は、前述した第1作業フロントA用の操作装置50aの操作に応じて切り換わる。また、操作装置50aからの操作信号に対応した電気信号が各シリンダの駆動用電磁弁215a〜217aに入力され、この電気信号に応じて電磁弁215a〜217aは動作してパイロットポンプ305からコントロールバルブ363a〜365aのそれぞれの受圧部に供給される指令パイロット圧をそれぞれ制御し、これによりコントロールバルブ363a〜365aは2つの流通位置の一方に切り換わる。操作装置50aからの操作信号がないとき、バネの付勢力により中立位置に復帰する。コントロールバルブ366aについても同様である。
【0075】
<センターバイパス>
左コントロールバルブ群302Aの内部には、2つのポンプポート334a,335aにそれぞれ繋がる2つのセンターバイパス油路352a,353aが形成されている。ここで、コントロールバルブ363a〜366a,368a,369aは、センターバイパス油路352aに直列に接続されたコントロールバルブ363a,364a,368aと、センターバイパス油路353aに直列に接続されたコントロールバルブ369a,365a,366aの2つのグループに分けられる。センターバイパス油路352aは上流部分でパラレル管路355aに接続されており、パラレル管路355aはコントロールバルブ363a,364a,368aに接続されている。センターバイパス油路353aは上流部分でパラレル管路356aに接続されており、パラレル管路356aはコントロールバルブ369a,365a,366aに接続されている。左走行用コントロールバルブ368aは走行連通管路354aによりもう一方のセンターバイパス油路353aにも接続されており、走行連通管路354aの途中に走行連通弁351aが設けられている。また、パラレル回路355a,356aは、安全弁としてのリリーフ弁350aを介してタンク312に接続されている。
【0076】
コントロールバルブ363a〜366a,368a,369aは、オープンセンター型であり、第1油圧ポンプ300Aから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)にあるときは、センターバイパス油路352a,353aを全開し、第1油圧ポンプ300Aから供給される圧油を各シリンダに導く位置(流通位置)にあるときは、センターバイパス油路352a,353aを、各バルブのストローク位置に応じて絞る或いは全閉する。
【0077】
<走行連通弁>
ブーム駆動用電磁弁215a及びアーム駆動用電磁弁216aにより発生した圧力信号のうちの最高圧力を選択するシャトル弁330a〜332aが設けられており、走行連通弁351aは、シャトル弁330a〜332aにより選択された圧力信号によって切り換えられ、ポンプポート335aに供給された圧油を左走行用コントロールバルブ368aにも供給する。シャトル弁43〜45により選択された圧力信号は、走行連通弁信号管路338aによって走行連通弁5の受圧部357aに導かれる。
【0078】
走行連通弁351aは、ブーム駆動用電磁弁215a,216aが動作せず、圧力信号を発生していないときは、受圧部357aがタンク321に連絡し、図示の遮断位置にあり、ポンプポート335aとコントロールバルブ368aの連絡を遮断する。ブーム駆動用電磁弁215a,216aのいずれかが動作し,圧力信号が発生すると、その圧力信号が受圧部357aに導かれ、図示の位置から開位置に切り換えられ、ポンプポート335aがコントロールバルブ368aに連絡し、ポンプポート335aから流入した圧油をコントロールバルブ368aにも供給する。
【0079】
<右コントロールバルブ群302Bの詳細>
右コントロールバルブ群302B(第2コントロールバルブ群)は左コントロールバルブ群302Aと同様に構成されており、同じ部材には符号の添付を「a」から「b」、「A」から「B」に変えて示すことにし、ここでは説明を一部省略する。
【0080】
また、右コントロールバルブ群302Bは、右アクチュエータ群101B(油圧シリンダ11b,13b,15b等)及び左右走行モータ2a,2bへの圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ363b〜365b,368b,369bに加えて、旋回モータ16への圧油の流れを制御するコントロールバルブ366bを備えている。
【0081】
コントロールバルブ366bは、第2油圧ポンプ300Bから旋回モータ16に供給される圧油の流れを制御するものであり、第2油圧ポンプ300Bから供給される圧油を遮断する位置(中立位置)と、旋回モータ16に導く2つの位置(流通位置)の3つの位置を有している。コントロールバルブ366bの位置は旋回操作レバー装置213からの制御信号(指令パイロット圧)により制御され、制御信号の入力が無い場合はバネの付勢力により中立位置に復帰する。
【0082】
<走行モータクロス接続>
ここで、左コントロールバルブ群302A内の左走行用コントロールバルブ368aの出力ポートは内部通路を介して左コントロールバルブ群302Aのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには左C/V左走行用油圧管路370a,371a(第1左走行モータ用油圧管路)が接続されている。右コントロールバルブ群302B内の左走行用コントロールバルブ368bの出力ポートは内部通路を介して右コントロールバルブ群302Bのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには右C/V左走行用油圧管路370b,371b(第2左走行モータ用油圧管路)が接続されている。左C/V左走行用油圧管路370a,371aと右C/V左走行用油圧管路370b,371bとは左走行モータ用合流油圧管路372,373(左走行モータ用合流管路)に接続され、左走行モータ用合流油圧管路372,373は左走行モータ2aに接続され、左C/V左走行用油圧管路370a,371aから供給された圧油と右C/V左走行用油圧管路370b,371bから供給された圧油を合流して左走行モータ2aに供給する。
【0083】
また、左コントロールバルブ群302A内の右走行用コントロールバルブ369aの出力ポートは内部通路を介して左コントロールバルブ群302Aのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには左C/V右走行用油圧管路373a,374a(第1右走行モータ用油圧管路)が接続されている。右コントロールバルブ群302B内の右走行用コントロールバルブ369bの出力ポートは内部通路を介して右コントロールバルブ群302Bのハウジングの出力ポートに接続され、ハウジングの出力ポートには右C/V右走行用油圧管路373b,374b(第2右走行モータ用油圧管路)が接続されている。左C/V右走行用油圧管路373a,374aと右C/V右走行用油圧管路373b,374bとは右走行モータ用合流油圧管路375,376(右走行モータ用合流管路)に接続され、右走行モータ用合流油圧管路375,376は右走行モータ2bに接続され、左C/V右走行用油圧管路373a,374aから供給された圧油と右C/V右走行用油圧管路373b,374bから供給された圧油を合流して右走行モータ2bに供給する。
【0084】
<走行モータクロス回路の効果>
ここで、左右の走行モータ2a,2bに同指令を与えて直進走行している場合を想定する。
【0085】
第1油圧ポンプ300Aから分流弁303Aに流量QAが供給され、分流弁303A内にて、Qa1とQa2に分流される。ここで、分流弁303Aの分流比は1:1であるから、
Qa1=Qa2 ・・・(13)
となる。分流された流量Qa1はポンプポート334a、左走行モータ用コントロールバルブ368aを経由して左走行モータ2aにQLaとして供給される。同様に、分流されたQa2はポンプポート335a、右走行モータ用コントロールバルブ369aを経由して右走行モータ2bにQRaとして供給される。
【0086】
ここで、左右の走行モータ2a,2bに同指令を与えて直進動作のみを行っていることから、左右の走行コントロールバルブ368a,369aへの供給流量がそのまま走行モータ2a,2bに供給され、
Qa1=QLa ・・・(14)
Qa2=QRa ・・・(15)
となる。したがって(14)(15)より
QLa=QRa ・・・(16)
となる。同様に、第2油圧ポンプ300Bから分流弁303Bに流量QBが供給され、分流弁303B内にて、Qb1とQb2に分流される。ここで、分流弁303Bの分流比は1:1であるから、
Qb1=Qb2 ・・・(17)
となる。分流された流量Qb1はポンプポート334b、左走行モータ用コントロールバルブ368bを経由して左走行モータ2aにQLbとして供給される。同様に、分流されたQb2はポンプポート335b、右走行モータ用コントロールバルブ369bを経由して右走行モータ2bにQRbとして供給される。
【0087】
ここで、左右の走行モータ2a,2bに同指令を与えて直進動作のみを行っていることから、左右の走行コントロールバルブ368b,369bへの供給流量がそのまま走行モータ2a,2bに供給され、
Qb1=QLb ・・・(18)
Qb2=QRb ・・・(19)
となる。したがって(14)(15)より
QLb=QRb ・・・(20)
となる。ここで(16)(20)より、QLa=QRa、QLb=QRbであることから、
QL=QLa+QLb=QRa+QRb=QR ・・・(21)
となり、左右走行モータへの流量は同じとなる。

【0088】
ここで、前記直進走行中に、例えば第2作業フロントBのブーム10bを駆動した場合を想定する。
【0089】
第2油圧ポンプ300Bから分流弁303Bに流量QBが供給され、分流弁303B内にて、Qb1とQb2に分流される。ここで、分流弁303Bの分流比は1:1であるから、先ほどと同様に
Qb1=Qb2 ・・・(22)
となる。ここで、ブーム10bが駆動中であることから、分流された流量Qb1はポンプポート334bから、右ブーム用コントロールバルブ363bを経由してブームシリンダ11bにQBbとして供給される。また、ブーム10bが駆動中であることから、ブーム駆動用電磁弁215bで発生した圧力信号が、シャトル弁330b,332b、走行連通弁信号管路338bを介して走行連通弁351bの受圧部357bに導かれ、走行連通弁351bが切り換わる。その結果、ポンプポート335bから流入した流量Qb2が左走行モータ用コントロールバルブ368bを経由して左走行モータ2aにQLb‘として供給され、さらに、右走行モータ用コントロールバルブ369bを経由して左走行モータにQRb’として供給される。ここで、左右の走行モータ2a,2bに同指令(指令パイロット圧)を与えて直進動作を行っていることから、左右走行モータ用コントロールバルブ368b,369bの開口面積は等しく、左右走行モータ用コントロールバルブ通過流量も等しくなり、
QLb‘=QRb’ ・・・(23)
となる。また、左走行モータ2aに供給される圧油の流量は、左コントロールバルブ群302AからのQLaと、右コントロールバルブ群302BからのQLb’の合流であることから、
QL’=QLa+QLb’ ・・・(24)
となる。右走行モータ2bに供給される圧油の流量は、左コントロールバルブ群302AからのQRaと、右コントロールバルブ群302BからのQRb’の合流であることから、
QR’=QRa+QRb’ ・・・(25)
となる。ここで、(2)、(9)より、QLa=QRa、QLb’=QRb’であることから、
QL’=QLa+QLb’=QRa+QRb’=QR’ ・・・(26)
となり、左右走行モータへの流量は同じとなる。
【0090】
上記の関係は、第2作業フロントBのブーム10bを駆動させた場合のものであるが、第1作業フロンAのブーム10aを駆動させた場合にも同様に成り立つ。また、第1作業フロントAのアーム12a或いは第2作業フロントBの12bを駆動させた場合にも同様に成り立つ。
【0091】
したがって、左右の走行モータ2a,2bに同流量を供給して直進走行中している時に、同時に他のアクチュエータであるブームシリンダ11a,11b、アームシリンダ13a,13bのいずれかを駆動させた場合も、左右の走行モータ2a,2bへの供給流量が同等であり、作業機械の走行直進性を保つことが可能となる。
【0092】
ここで、走行時に複合動作させる被駆動部材は、通常、ブーム10a,10b、アーム12a,12bのいずれかである場合が多い。
【0093】
したがって、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、走行時に走行装置1a,1b以外の被駆動部材(ブーム10a,10b、アーム12a,12bのいずれか)を複合動作させることによって、一方の油圧ポンプ300A又は300Bから左右の走行モータ2a,2bの一方に供給される圧油の流量が減少する場合でも、左右の走行モータ2a,2bに対して同量の流量減少となることから、作業機械の走行直進性を保つことができる。
【0094】
なお、図7に示した油圧回路システムにおいて、ブームとアーム以外の被駆動部材の駆動用電磁弁或いは操作装置のリモコン弁(例えば作業具(バケット)14a,14bの駆動用電磁部217a,217b、旋回操作装置212のリモコン弁、或いはブームとアームを含め全ての被駆動部材の駆動用電磁弁、リモコン弁)に対してもシャトル弁を設け、それらの圧力信号の差高圧を選択し、走行連通弁351a,351bを切り換えるようにしてもよい。これにより発生頻度は少ないが、そのような被駆動部材との走行複合動作において、上記と同様の作用により走行直進性を保つことができ利便性が向上する。
【0095】
また、図7に示した油圧回路システムでは、第1及び第2油圧ポンプ300A,300Bに対して分流弁303A,303Bを設け、左コントロールバルブ群302A及び右コントロールバルブ群302B内のそれぞれの2つのセンターバイパス油路352a,353a及び352b,353bに等量の圧油を供給するようにしたが、第1油圧ポンプ300Aの代わりに2つの容量の等しい油圧ポンプを設け、この2つの油圧ポンプを左コントロールバルブ群302A内の2つのセンターバイパス油路352a,353aに接続し、同様に第2油圧ポンプ300Bの代わりに2つの容量の等しい油圧ポンプを設け、この2つの油圧ポンプを右コントロールバルブ群302B内の2つのセンターバイパス油路352b,353bに接続し、4つの油圧ポンプからセンターバイパス油路352a,353a及び352b,353bに等量の圧油を供給するようにしてもよい。
<その他の実施の形態>
以上の実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、双腕作業機械の油圧回路システムに本発明を適用した場合について説明したが、車体の前後に複数の作業機を取り付けたり、車体に種々の可動部を取り付けた走行式の作業機械の油圧回路システムに本発明を適用してもよく、その場合であっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0096】
[第1の実施の形態]
A 左作業フロント
B 右作業フロント
1 下部走行体
1a,1b 左右の走行装置
2a,2b 左右の走行モータ
3 上部旋回体
3c 前後方向中心線
4 運転室
7a,7b スイングポスト
9a,9b スイングポストシリンダ
10a,10b ブーム
11a,11b ブームシリンダ
12a,12b アーム
13a,13b アームシリンダ
14a,14b 作業具
15a,15b バケットシリンダ
16 旋回モータ
40 エンジン
49 運転席
50a,50b 操作装置
51a,51b 操作アームブラケット
52a,52b 操作アーム
53a,53b アームレスト
54a,54b 操作レバー
55a,55b 作業具回動レバー
56a,56b 作業具操作スイッチ
57a,57b 操作アーム用変位検出器
581a,581b 操作レバー用上下方向変位検出器
582a,582b 操作レバー用前後方向変位検出器
59a,59b 作業具回動レバー用変位検出器
60a,60b 作業具操作スイッチ用変位検出器
63a,63b ブームシリンダ用コントロールバルブ
64a,64b アームシリンダ用コントロールバルブ
65a,65b バケットシリンダ用コントロールバルブ
66b 旋回モータ用コントロールバルブ
68a 左走行用コントロールバルブ(第1左走行モータ用コントロールバルブ)
68b 左走行用コントロールバルブ(第2左走行モータ用コントロールバルブ)
684a,685a 左C/V左走行用油圧管路(第1左走行モータ用油圧管路)
684b,685b 右C/V左走行用油圧管路(第2左走行モータ用油圧管路)
686,687 左走行用合流管路(左走行モータ用合流管路)
69a 右走行用コントロールバルブ(第1右走行モータ用コントロールバルブ)
69b 右走行用コントロールバルブ(第2右走行モータ用コントロールバルブ)
694a,695a 左C/V右走行用油圧管路(第1右走行モータ用油圧管路)
694b,695b 右C/V右走行用油圧管路(第2右走行モータ用油圧管路)
696,697 右走行用合流管路(右走行モータ用合流管路)
73a,73b 揺動中心軸線(操作アーム)
77a,77b 肘関節支持部
100A 第1油圧ポンプ
100B 第2油圧ポンプ
101A 左フロントアクチュエータ群(第1アクチュエータ群)
101B 右フロントアクチュエータ群(第2アクチュエータ群)
102A 左コントロールバルブ群(第1コントロールバルブ群)
102B 右コントロールバルブ群(第2コントロールバルブ群)
105 パイロットポンプ
123a〜129a,123b〜129b 圧力補償弁
143a〜148a,143b〜148b シャトル弁
150a,150b リリーフ弁
151a,151b アンロード弁
152a,152b アンチサチレーション弁
161 制御装置
161A 駆動信号生成部(スイングポスト系)
161B 駆動信号生成部(ブーム系)
161C 駆動信号生成部(アーム系)
161D 駆動信号生成部(バケット系)
161E 駆動信号生成部(作業具駆動系)
200 双腕作業機械
212 作動油タンク
213 旋回操作装置
214 走行操作装置
214a,214b 左右の走行操作装置
215a,215b ブーム駆動用電磁弁
216a,216b アーム駆動用電磁弁
217a,217b バケット駆動用電磁弁
218a,218b スイングポスト駆動用電磁弁
219a,219b 作業具駆動用電磁弁

[第2の実施の形態]
300A,300B 第1、第2油圧ポンプ
302A 左コントロールバルブ群(第1コントロールバルブ群)
302B 右コントロールバルブ群(第2コントロールバルブ群)
303A 左分流弁(第1分流弁)
303B 右分流弁(第2分流弁)
305 パイロットポンプ
330a〜332a,330b〜332bシャトル弁
334a,334b,335a,335b ポンプポート
336a,336b ポンプ出力用油圧管路
337a,337b,338a,338b C/V入力用油圧管路
338a,338b 走行連通弁信号管路
350a,350b リリーフ弁
351a,351b 走行連通弁
352a,352b,353a,353b センターバイパス油路
354a,353b 走行連通管路
355a,355b,356a,356b パラレル管路
357a,357b (走行連通弁)受圧部
363a,363b ブームシリンダ用コントロールバルブ
364a,364b アームシリンダ用コントロールバルブ
365a,365b バケットシリンダ用コントロールバルブ
366b 旋回用コントロールバルブ
368a,368b 左走行用コントロールバルブ
369a,369b 右走行用コントロールバルブ
370a,371a 左C/V左走行用油圧管路(第1左走行モータ用油圧管路)
370b,371b 右C/V左走行用油圧管路(第2左走行モータ用油圧管路)
372,373 左走行用合流管路(左走行モータ用合流管路)
373a,374a 左C/V右走行用油圧管路(第1右走行モータ用油圧管路)
373b,374b 右C/V右走行用油圧管路(第2右走行モータ用油圧管路)
375,376 右走行用合流管路(右走行モータ用合流管路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行装置を備えた下部車体と、この下部車体の上部に設けられ運転室を備えた上部車体と、この上部車体に上下揺動自在に設けられた少なくとも1つの作業フロントを含む複数の被駆動部材とを備えた作業機械の油圧回路システムにおいて、
第1油圧ポンプと、
第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記左走行装置を駆動する左走行モータと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記右走行装置を駆動する右走行モータと、
前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記複数の被駆動部材のうちの前記左右の走行装置以外のその他の被駆動体を駆動する複数のアクチュエータの一部を含む第1アクチュエータ群と、
前記第2油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記複数の被駆動部材のうちの前記左右の走行装置以外のその他の被駆動体を駆動する複数のアクチュエータの他の一部を含む第2アクチュエータ群と、
前記第1油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1左走行モータ用コントロールバルブ、前記第1油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第1油圧ポンプから前記第1アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第1コントロールバルブ群と、
前記第2油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2左走行モータ用コントロールバルブ、前記第2油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第2油圧ポンプから前記第2アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第2コントロールバルブ群と、
前記第1左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第1左走行モータ用油圧管路と、
前記第1右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第1右走行モータ用油圧管路と、
前記第2左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第2左走行モータ用油圧管路と、
前記第2右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第2右走行モータ用油圧管路と、
前記第1左走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2左走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記左走行モータに供給する左走行モータ用合流管路と、
前記第1右走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2右走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記右走行モータに供給する右走行モータ用合流管路とを備えることを特徴とする作業機械の油圧回路システム。
【請求項2】
左右の走行装置を備えた下部車体と、この下部車体の上部に設けられ運転室を備えた上部車体と、この上部車体の前部左右に上下揺動自在に設けられ、それぞれブーム、アーム及び作業具を含む第1及び第2作業フロントとを備えた作業機械の油圧回路システムにおいて、
第1油圧ポンプと、
第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記左走行装置を駆動する左走行モータと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプから吐出された圧油により駆動され、前記右走行装置を駆動する右走行モータと、
前記第1油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記第1作業フロントを駆動する複数のアクチュエータを含む第1アクチュエータ群と、
前記第2油圧ポンプから吐出される圧油により駆動され、前記第2作業フロントを駆動する複数のアクチュエータを含む第2アクチュエータ群と、
前記第1油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1左走行モータ用コントロールバルブ、前記第1油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第1右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第1油圧ポンプから前記第1アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第1コントロールバルブ群と、
前記第2油圧ポンプから前記左走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2左走行モータ用コントロールバルブ、前記第2油圧ポンプから前記右走行モータに供給される圧油の流れを制御する第2右走行モータ用コントロールバルブ、及び前記第2油圧ポンプから前記第2アクチュエータ群に供給される圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブを含む第2コントロールバルブ群と、
前記第1左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第1左走行モータ用油圧管路と、
前記第1右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第1右走行モータ用油圧管路と、
前記第2左走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記左走行モータに供給する第2左走行モータ用油圧管路と、
前記第2右走行モータ用コントロールバルブを経由した圧油を前記右走行モータに供給する第2右走行モータ用油圧管路と、
前記第1左走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2左走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記左走行モータに供給する左走行モータ用合流管路と、
前記第1右走行モータ用油圧管路から供給された圧油と前記第2右走行モータ用油圧管路から供給された圧油を合流して前記右走行モータに供給する右走行モータ用合流管路とを備えることを特徴とする作業機械の油圧回路システム。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械の油圧回路システムにおいて、
前記第1油圧ポンプから吐出された圧油を2系統に分流して前記第1コントロールバルブ群に供給する第1分流弁と、
前記第2油圧ポンプから吐出された圧油を2系統に分流して前記第2コントロールバルブ群に供給する第2分流弁とを更に備え、
前記第1コントロールバルブ群は、
前記第1分流弁の2つの出力側に接続される2つのポンプポートと、
前記2つのポンプポートにそれぞれ接続される2つのセンターバイパス油路と、
前記2つのセンターバイパス油路にそれぞれ直列に接続された複数のオープンセンター型のバルブを含む2つのオープンセンター型バルブ群とを有し、
前記第1左走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の一方に配置され、
前記第1右走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の他方に配置され、
前記第2コントロールバルブ群は、
前記第2分流弁の2つの出力側に接続される2つのポンプポートと、
前記2つのポンプポートにそれぞれ接続される2つのセンターバイパス油路と、
前記2つのセンターバイパス油路にそれぞれ直列に接続された複数のオープンセンター型のバルブを含む2つのオープンセンター型バルブ群とを有し、
前記第2左走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の一方に配置され、
前記第2右走行モータ用コントロールバルブは前記2つのオープンセンター型バルブ群の他方に配置されていることを特徴とする作業機械の油圧回路システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149672(P2012−149672A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7140(P2011−7140)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】