説明

作業機械

【課題】原動機を始動させるスタータモータを備えたものにあって、特別な油圧機器を備えることなく、フロント作業機を駆動する油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くことができる作業機械の提供。
【解決手段】フロント作業機35を駆動するブームシリンダ34と、このブームシリンダ34に供給される圧油の流れを制御する流量制御弁8と、エンジン1によって駆動され、パイロット用油圧ポンプ10から吐出される圧油を一次圧として、流量制御弁8を切換えるパイロット操作信号を出力させるパイロット弁11とを備えると共に、エンジン1を駆動する燃料の供給停止制御を行なう燃料停止スイッチ31を備え、この燃料停止スイッチ31によるエンジン1の燃料の供給停止制御に応じて、エンジン1を始動させるスタータモータ2を駆動可能に保つスイッチ30を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機を始動させるスタータモータを備え、このスタータモータの駆動を利用して油圧アクチュエータにこもった圧油を排出する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
原動機を始動させるスタータモータを備えた従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、原動機すなわちエンジンと、このエンジンを始動させるスタータモータと、エンジンによって駆動される主油圧ポンプ及びパイロット用油圧ポンプと、主油圧ポンプから供給される圧油によって駆動する旋回モータ、すなわち油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向切換弁、すなわち流量制御弁と、パイロット用油圧ポンプから吐出される圧油を一次圧として、流量制御弁を切換えるパイロット操作信号を出力させるパイロット弁、すなわち操作装置とを備えている。
【0003】
また、パイロット用油圧ポンプとパイロット弁とを連絡する管路に、パイロット弁からのパイロット操作信号の出力を阻止する切換弁を備えている。この切換弁は、パイロット用油圧ポンプの一次圧をパイロット弁に供給可能な第1切換位置と、パイロット用油圧ポンプの一次圧のパイロット弁への供給を不能に保つと共に、パイロット弁をタンクに連通させる第2切換位置とを備えている。切換弁が第2切換位置に切換えられたときに、パイロット弁からのパイロット操作信号の出力が阻止されるようになっている。
【0004】
また、切換弁が上述した第2切換位置に切換えられているときに、スタータモータを駆動可能に保つリレーと、このリレーと電源との間に介設されたスイッチとを備えている。切換弁が、パイロット用油圧ポンプの一次圧のパイロット弁への供給を不能にする第2切換位置に切換えられているときに、上述のスイッチをオンにすると、スタータモータが駆動し、このスタータモータによってエンジンが始動するようになっている。
【0005】
上述した特許文献1においては明確に示されていないが、通常、スタータモータの駆動と同時にエンジンに燃料が供給され、このエンジンはスタータモータによる低速回転後に、上述の燃料の供給によって作業を実施するための油圧アクチュエータの駆動が可能となる回転数まで上昇するようになっている。すなわち、スタータモータの回転によるエンジンの低回転状態では、作業を実施する油圧アクチュエータの駆動は実現させることができないようになっている。
【0006】
また、上述のように切換弁が、パイロット用油圧ポンプの一次圧のパイロット弁への供給を不能に保つ第2切換位置に切換えられている状態では、パイロット弁が操作されても流量制御弁を切換えるパイロット操作信号が出力されることがなく、したがって流量制御弁は中立に維持され、油圧アクチュエータの不測の駆動を生じることがなく、安全が保たれる。オペレータが運転席から離れるときなどのように、油圧アクチュエータの不測の駆動を生じさせたくない場合に、上述の切換弁が第2切換位置に切換えられるようになっている。
【0007】
ところで、上述した従来技術が適用される作業機械、例えば図2に示す油圧ショベルにあっては、メンテナンス時にブーム等を含むフロント作業機35を駆動する油圧アクチュエータ、例えばブームシリンダ34にこもった圧油を抜く作業が一般に行われている。すなわち、図2に示すように、油圧ショベルのフロント作業機35が空中で停止している場合には、ブームシリンダ34のボトム側に圧力がこもった状態となっている。この状態で、ブームシリンダ34のボトム側に接続されているブームボトムホースをいきなり外してしまうと、油が噴出し、周囲を汚染させてしまうことになる。また、フロント作業機35が急激に落下するので危険である。このようなことから、ブームボトムホースを交換するなどのメンテナンス時には、あらかじめブームボトム圧、すなわちブームシリンダ34のボトム側の圧油を抜くことが必要になる。
【0008】
ブームシリンダ34のボトム側にこもった圧油を抜く作業は、空中に停止しているフロント作業機35を地面まで降下させることにより行なわれ、これによってブームシリンダ34にこもった相当量の圧油を抜くことができる。また、フロント作業機35を地面に接地させた状態で、操作装置の操作レバーを素早く正逆方向に交互に連続的に動かすことによってさらに、ブームシリンダ34にこもった圧油を抜くことができる。
【0009】
また、上述のように、油圧アクチュエータにこもった圧油を抜く技術として、従来、特許文献2に示される別の従来技術が提案されている。この別の従来技術は、油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くために、アキュムレータあるいは圧油排出弁等の特別な油圧機器を備えた構成にしてある。
【0010】
【特許文献1】特開平6−49867号公報
【特許文献2】特開平7−238902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、例えば特許文献1に示されるようなエンジンを始動するスタータモータを備えた作業機械にあって、メンテナンス時に油圧アクチュエータにこもった圧油を抜く技術として、特許文献2に示されるようなアキュムレータや圧油排出弁を設けようとする場合には、特別な油圧機器を備えることになるので、構造が複雑になり、これに伴って油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くための設備費用が高くなってしまう問題がある。
【0012】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、原動機を始動させるスタータモータを備えたものにあって、特別な油圧機器を備えることなく、フロント作業機を駆動する油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、フロント作業機と、原動機と、この原動機を始動させるスタータモータと、上記原動機によって駆動される主油圧ポンプ、及びパイロット用油圧ポンプと、上記主油圧ポンプの圧油が供給され、上記フロント作業機を駆動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する流量制御弁と、上記パイロット用油圧ポンプから吐出される圧油を一次圧として、上記流量制御弁を切換えるパイロット操作信号を出力させる操作装置とを備えた作業機械において、上記原動機を駆動する燃料の供給停止制御を行なう燃料停止手段を備えると共に、この燃料停止手段による上記原動機の上記燃料の供給停止制御に応じて上記スタータモータを駆動可能に保つ保持手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、例えばフロント作業機が空中に停止保持されている状態において、油圧アクチュエータにこもった圧油を抜く場合には、燃料停止手段を作動させて原動機に対する燃料の供給停止制御が実施される。この燃料停止手段による燃料の供給停止制御に応じて、保持手段によってスタータモータは駆動可能な状態に保たれる。この状態においてスタータモータを駆動させると、原動機はスタータモータによって低速で回転し始める。これに伴って主油圧ポンプ及びパイロット用油圧ポンプが駆動する。主油圧ポンプから吐出される流量は、上述した低速回転に応じて、作業の実施のために油圧アクチュエータを駆動可能とする流量とはならないものの、パイロット用油圧ポンプから吐出される流量すなわち一次圧は、流量制御弁を切換えるパイロット操作信号を生成させるに十分な圧とすることができる。
【0015】
したがって、このようにスタータモータのみによる低い回転数で原動機を回転させている状態において、操作装置を操作すると、パイロット用油圧ポンプから吐出される圧油に応じたパイロット操作信号が流量制御弁に出力され、この流量制御弁を切換えることができる。この流量制御弁の切換えにより、空中に停止しているフロント作業機は自重によって下降する。これに伴って、油圧アクチュエータにこもった圧油が排出される。また、フロント作業機を接地させた状態において操作装置を素早く正逆方向に交互に連続的に操作すると、油圧アクチュエータにこもった圧油をさらに排出させることができる。
【0016】
なお、上述した燃料停止手段による原動機の燃料の供給停止制御に応じてスタータモータを駆動可能に保つ保持手段は、スイッチ等によって簡単に構成することができる。
【0017】
このように本発明は、燃料停止手段による燃料の供給停止制御に応じてスタータモータを駆動可能に保つ保持手段を備えたことにより、アキュムレータや圧油排出弁等の特別な油圧機器を備えることなく、油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くことができる。
【0018】
また本発明は、上記発明において、上記操作装置が上記パイロット操作信号を出力するパイロット弁から成り、上記パイロット用油圧ポンプと上記パイロット弁とを連絡する管路に配置され、上記パイロット操作信号の出力を阻止する切換弁を備え、この切換弁によって上記パイロット操作信号の出力が阻止されているときに、上記スタータモータを駆動可能に保つことを特徴としている。
【0019】
このように構成した本発明は、切換弁によって流量制御弁を切換えるパイロット操作信号の出力が阻止されているときにスタータモータが駆動可能に保たれているので、この状態においてスタータモータを駆動させることにより原動機が始動する。このとき同時に原動機に燃料が供給されることによって、原動機の回転数がスタータモータによる回転数よりも上昇し、主油圧ポンプから作業の実施を可能とする流量が吐出されるようになる。
【0020】
この状態において、切換弁によるパイロット操作信号の出力の阻止を解除させた後、パイロット弁を操作すると、このパイロット弁から流量制御弁にパイロット操作信号が出力され、流量制御弁が切換えられ、主油圧ポンプから吐出される圧油が流量制御弁を介して油圧アクチュエータに供給される。これにより油圧アクチュエータが駆動し、フロント作業機を介して所望の作業を実施することができる。
【0021】
また、オペレータが運転席から離れる場合などにあっては、パイロット弁からのパイロット操作信号の出力が阻止されるように切換弁が切換えられる。これにより、流量制御弁は中立になり、主油圧ポンプから吐出される圧油は油圧アクチュエータに供給されなくなり、油圧アクチュエータは駆動不能に保たれる。すなわち、フロント作業機を停止保持する安全機能が確保される。
【0022】
また本発明は、上記発明において、上記切換弁がゲートロック弁から成ることを特徴としている。
【0023】
また本発明は、上記発明において、上記原動機を駆動する上記燃料の供給を制御するコントローラを備え、上記燃料停止手段が、上記コントローラの電源を切る燃料停止スイッチから成り、上記保持手段が、上記燃料停止スイッチと連動して上記スタータモータを駆動可能に保つスイッチから成ることを特徴としている。
【0024】
また本発明は、上記発明において、上記作業機械が油圧ショベルから成り、上記フロント作業機がブームを含み、上記油圧アクチュエータがブームシリンダから成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、燃料停止手段による原動機の燃料の供給停止制御に応じてスタータモータを駆動可能に保つ保持手段を備えたことから、フロント作業機が空中に停止している状態にあって油圧アクチュエータにこもった圧を抜く場合には、燃料停止手段によって原動機の燃料の供給停止制御を実施し、これに応じて保持手段によって駆動可能となるスタータモータを駆動させればよく、この状態において操作装置を操作することにより流量制御弁が切換えられ、従来のような特別な油圧機器を備えることなく油圧アクチュエータにこもった圧油をフロント作業機の自重を利用して抜くことができる。そして、保持手段はスイッチ等の簡単な構成にすることができる。したがって、油圧アクチュエータにこもった圧油を抜くために要する設備費用を従来に比べて安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下,本発明に係る作業機械を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態に係る作業機械は、例えば図2に示すような油圧ショベルであり、ブームを含むフロント作業機35と、このフロント作業機35に含まれるブームを駆動する油圧アクチュエータ、すなわちブームシリンダ34とを備えている。
【0028】
図1は本発明に係る作業機械の一実施形態を示す回路図である。本実施形態は、この図1に示すように、原動機すなわちエンジン1と、このエンジン1を始動させるスタータモータ2とを備えている。スタータモータ2は、リレー16及び配線3を介して電源4に接続されている。配線3中にはスタータモータ2を駆動させるスイッチ5を配置してある。
【0029】
また、エンジン1によって駆動される主油圧ポンプ6、及びパイロット用油圧ポンプ10と、主油圧ポンプ6から前述した油圧アクチュエータ、すなわちブームシリンダ34に主管路9を介して供給される圧油の流れを制御する流量制御弁8と、パイロット用油圧ポンプ10から吐出される圧油を一次圧として、流量制御弁8を切換えるパイロット操作信号を出力させる操作装置、例えばパイロット弁11とを備えている。
【0030】
パイロット弁11は、減圧弁11a,11bと、これらの減圧弁11a,11bを作動させる操作レバー11cとを備えている。減圧弁11aは、パイロット管路14aを介して流量制御弁8の第1パイロット室8aに接続され、減圧弁11bは、パイロット管路14bを介して流量制御弁8の第2パイロット室8bに接続されている。
【0031】
また、パイロット用油圧ポンプ10とパイロット弁11とを接続する管路13に、パイロット弁11からのパイロット操作信号の出力を阻止する切換弁15を備えている。この切換弁15は、例えば当該油圧ショベルの運転室内に配置され、運転席に座るオペレータによって操作される操作レバー15a、すなわちゲートロックレバーによって切換えられるゲートロック弁を構成している。また、この切換弁15は、パイロット用油圧ポンプ10の一次圧をパイロット弁11に供給可能な第1切換位置dと、パイロット用油圧ポンプ10の一次圧のパイロット弁11への供給を不能に保つと共に、パイロット弁11をタンクに連通させる第2切換位置cとを備えている。切換弁15が第2切換位置cに切換えられたときに、パイロット弁11からのパイロット操作信号の出力が阻止されるようになっている。
【0032】
また、切換弁15の操作レバー15aに関連して設けられ、操作レバー15aによって切換弁15が第1切換位置dに切換えられるとオンになり、第2切換位置cに切換えられるとオフとなるスイッチ18と、このスイッチ18と前述したリレー16とを接続する配線17とを備えている。同図1に示すようにスイッチ18がオフの状態では、リレー16は接続状態となり、スイッチ18がオンとなると、リレー16は励磁されて非接続状態となるように構成してある。
【0033】
そして特に、本実施形態は、エンジン1を駆動する燃料の供給停止制御を行なう燃料停止手段、例えば燃料停止スイッチ31を備えている。この燃料停止スイッチ31は、エンジン1を駆動する燃料を供給する燃料噴射ポンプ33を制御するコントローラ32と、電源4との間に配置してある。この燃料停止スイッチ31をオフにすると、コントローラ32の電源が切られ、燃料噴射ポンプ33の作動は停止し、エンジン1への燃料の供給が停止する。燃料停止スイッチ31をオンにすると、コントローラ32の電源が入り、このコントローラ32から出力される制御信号によって燃料噴射ポンプ33が駆動し、エンジン1へ燃料が供給される。
【0034】
さらに本実施形態は、上述した燃料停止スイッチ31による燃料の供給停止制御、すなわちオフ動作に応じて、例えば燃料停止スイッチ31と連動して、スタータモータ2を駆動可能に保つ保持手段を備えている。この保持手段は、例えばリレー16と並列に配置したスイッチ30から成っている。燃料停止スイッチ31がオフになると、これに連動してスイッチ30がオンとなり、スタータモータ2は駆動可能な状態となる。また、燃料停止スイッチ31がオンになると、これに連動してスイッチ30がオフとなるように構成してある。
【0035】
このように構成した本実施形態の動作は以下のとおりである。
【0036】
運転席に座っていたオペレータが運転室の外に出ようとするときには、例えばスイッチ5が切られ、ゲートロックレバーすなわち切換弁15の操作レバー15aが操作され、図1に示す切換弁15が第2切換位置cに切換えられる。これにより、パイロット用油圧ポンプ10からパイロット弁11に一次圧が供給されなくなる。したがって、パイロット弁11の操作レバー11cを操作しても、流量制御弁8の第1パイロット室8a、あるいは第2パイロット室8bにパイロット操作信号が出力されることがない。これに伴って流量制御弁8は中立となり、ブームシリンダ34は動かないように保持される。すなわち、例えば前述したオペレータ以外の者が不用意にパイロット弁11の操作レバー11cを操作することがあっても、フロント作業機35の降下等を生じることがなく安全が確保される。
【0037】
上述のように、切換弁15が第2切換位置cに切換えられると、スイッチ18がオフとなり、リレー16は接続状態となり、スタータモータ2はリレー16を介して駆動可能な状態に保持される。すなわち、エンジン1が始動可能な状態にに保持される。
【0038】
例えば、このような状態において、再び前述したオペレータが運転席に戻り、スイッチ5を入れると、スタータモータ2が駆動してエンジン1が始動する。このとき図1に示すように、燃料停止スイッチ31がオンに保持されていると燃料噴射ポンプ33はコントローラ32からの制御信号によりエンジン1に燃料を供給し、エンジン1はスタータモータ2による低速回転から作業が可能な所定の回転数まで上昇する。
【0039】
この状態において、ゲートロックレバーすなわち操作レバー15aが操作されて、切換弁15が第1切換位置dに切換えられると、パイロット用油圧ポンプ10が切換弁15を介してパイロット弁11に連通し、エンジン1によって駆動するパイロット用油圧ポンプ10から吐出される一次圧がパイロット弁11に供給される。また、上述した操作レバー15aの操作に伴ってスイッチ18がオンとなると、リレー16が励磁されて非接続状態となり、スタータモータ2の駆動が停止する。エンジン1は上述した燃料によって駆動を続ける状態となる。
【0040】
このような状態において、パイロット弁11の操作レバー11cを操作すると、減圧弁11a、あるいは減圧弁11bからパイロット管路14aあるいはパイロット管路14bにパイロット操作信号が出力され、このパイロット操作信号が流量制御弁8の第1パイロット室8aあるいは第2パイロット室8bに与えられ、流量制御弁8が切換えられる。これにより、主油圧ポンプ6から吐出される圧油が主管路9、及び流量制御弁8を介してブームシリンダ34に供給され、このブームシリンダ34が作動し、ブームが駆動する。すなわち、図2に示すフロント作業機35が駆動して所望の作業が実施される。
【0041】
また特に、メンテナンス時に例えば図2に示されるように、フロント作業機35が空中に停止保持されている状態において、ブームシリンダ34にこもった圧油を抜く場合には、燃料停止手段を作動させること、すなわち燃料停止スイッチ31をオフにすることが行なわれる。これにより、コントローラ32の電源が切られ、燃料噴射ポンプ33からのエンジン1への燃料の供給が停止される。上述した燃料停止スイッチ31のオフ動作に連動してスイッチ30がオンとなり、スタータモータ2の駆動が可能な状態となる。したがって、スイッチ5をオンにするとスタータモータ2が駆動し、エンジン1は燃料の供給によらないスタータモータ2の駆動のみによる低い回転数で回転を始める。例えばこのような状態において、操作レバー15aを操作して切換弁15を第1切換位置dに切換えると、パイロット用油圧ポンプ10からパイロット弁11に一次圧が供給される。
【0042】
この場合、エンジン1の駆動に伴って主油圧ポンプ6から吐出される流量は、エンジン1の回転数がスタータモータ2の駆動のみによる低回転数であるので、作業の実施のためにブームシリンダ34を駆動可能とする流量とはならない。しかしながら、パイロット用
油圧ポンプ10から吐出される流量である一次圧は、スタータモータ2によるエンジン1の駆動時の低回転数で、流量制御弁8を切換えるパイロット操作信号を生成させるに十分な圧とすることができる。
【0043】
したがって、このようにスタータモータ2のみの低回転数でエンジン1を回転させている状態において、パイロット弁11の操作レバー11cを図1のb方向に操作すると、パイロット用油圧ポンプ10から吐出される圧油に応じたパイロット操作信号が、パイロット弁11bからパイロット管路14bを介して流量制御弁8の第2パイロット室8bに与えられ、流量制御弁8は同図1の切換位置Yに切換えられる。これによりブームシリンダ34のボトム側がタンクに連通し、空中に停止しているフロント作業機35は自重によって下降する。これに伴ってブームシリンダ34が収縮し、ブームシリンダ34にこもった圧油が排出される。また、このようにしてフロント作業機35を接地させた状態において、パイロット弁11の操作レバー11cを図1の正逆方向、すなわちa方向、b方向に交互に素早く連続的に操作すると、ブームシリンダ34にこもった圧油をさらに排出させることができる。
【0044】
なお、燃料停止スイッチ31に連動して切換えられ、スタータモータ2を駆動可能に保つ保持手段をスイッチ30によって構成してあるので、この保持手段の構成が簡単である。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、燃料停止スイッチ31に連動してスタータモータ2を駆動可能に保つスイッチ30を備えたことにより、ブームシリンダ34にこもった圧油をアキュムレータや圧油排出弁等の特別な油圧機器を備えることなく抜くことができる。すなわち、簡単な構造のスイッチ30を設けることによってブームシリンダ34にこもった圧油を抜くことができ、メンテナンス時にこのブームシリンダ34にこもった圧油を抜くために要する設備費用を安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る作業機械の一実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の対象とする作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 エンジン(原動機)
2 スタータモータ
3 配線
4 電源
5 スイッチ
6 主油圧ポンプ
8 流量制御弁
8a 第1パイロット室
8b 第2パイロット室
9 主管路
10 パイロット用油圧ポンプ
11 パイロット弁(操作装置)
11a 減圧弁
11b 減圧弁
11c 操作レバー
13 管路
14a パイロット管路
14b パイロット管路
15 切換弁
15a 操作レバー
16 リレー
17 配線
18 スイッチ
30 スイッチ(保持手段)
31 燃料停止スイッチ(燃料停止手段)
32 コントローラ
33 燃料噴射ポンプ
34 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
35 フロント作業機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント作業機と、原動機と、この原動機を始動させるスタータモータと、上記原動機によって駆動される主油圧ポンプ、及びパイロット用油圧ポンプと、上記主油圧ポンプの圧油が供給され、上記フロント作業機を駆動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する流量制御弁と、上記パイロット用油圧ポンプから吐出される圧油を一次圧として、上記流量制御弁を切換えるパイロット操作信号を出力させる操作装置とを備えた作業機械において、
上記原動機を駆動する燃料の供給停止制御を行なう燃料停止手段を備えると共に、
この燃料停止手段による上記原動機の上記燃料の供給停止制御に応じて上記スタータモータを駆動可能に保つ保持手段を備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記操作装置が上記パイロット操作信号を出力するパイロット弁から成り、
上記パイロット用油圧ポンプと上記パイロット弁とを連絡する管路に配置され、上記パイロット操作信号の出力を阻止する切換弁を備え、
この切換弁によって上記パイロット操作信号の出力が阻止されているときに、上記スタータモータを駆動可能に保つことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
上記請求2記載の発明において、
上記切換弁がゲートロック弁から成ることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
上記請求1記載の発明において、
上記原動機を駆動する上記燃料の供給を制御するコントローラを備え、
上記燃料停止手段が、上記コントローラの電源を切る燃料停止スイッチから成り、
上記保持手段が、上記燃料停止スイッチと連動して上記スタータモータを駆動可能に保つスイッチから成ることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
上記請求1記載の発明において、
上記作業機械が油圧ショベルから成り、上記フロント作業機がブームを含み、上記油圧アクチュエータがブームシリンダから成ることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−77920(P2006−77920A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264242(P2004−264242)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】