説明

作業車の電力供給システム及び作業車

【課題】停止中の車両バッテリから車両電気回路への給電を遮断する作業車の電力供給システムを提供する。
【解決手段】エンジン制御装置20を有する車両電気回路21と、エンジン停止始動司令手段19aを有して作業機8,9を制御する作業制御装置19と、エンジン1と車両電気回路21とに給電する車両バッテリ4と、を備える作業車の電力供給システムSである。
そして、車両電気回路21と車両バッテリと4を接続する回路には、回路を開閉する開閉手段22が設けられるとともに、開閉手段22はエンジン停止始動司令手段19aにより開閉制御されて、エンジン停止始動司令手段19aは、エンジン制御装置20によってエンジン1を停止させるとともに開閉手段22を開かせ、エンジン制御装置20によって開閉手段22を閉じさせるとともにエンジン1を始動させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の電力供給システムと作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンや高所作業車などの作業車では、伸縮ブームや旋回装置などの作業機を、油圧ポンプなどの動力発生装置によって駆動させている。
【0003】
この動力発生装置は、通常はエンジンの回転動力を利用するエンジンPTOによって作動させるが、エンジンが故障した際などにはエンジン始動用の車両バッテリを用いた非常用電動ポンプによって作動させていた。
【0004】
一方、近年では、夜間や住宅地などの騒音や排ガスを嫌う環境において作業車によって作業する場合、エンジンを停止した状態で作業を行う必要性が増大している。
【0005】
しかし、上記したような電力供給システムでは、エンジンを停止した状態で車両バッテリを用いて長時間の作業を行うと、車両バッテリが消耗してエンジンを始動できなくなるという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、車両バッテリからの電源供給先を、エンジンメインテナンス回路部とその他電源供給先回路部とに分け、エンジンを始動する際にはエンジン始動回路とエンジンメインテナンス回路部とに供給し、エンジンの回転中にはエンジンメインテナンス回路部とその他電源供給先回路部とに供給する電源供給回路が開示されている。
【0007】
このような構成とすることで、エンジンを停止させている際には、車両バッテリからの電気は、エンジンメインテナンス回路部とその他電源供給先回路部に供給されないため、車両バッテリの放電を防止できる。
【特許文献1】実用新案登録第2551239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記した特許文献1では、PTO駆動による油圧ポンプをいつでも始動させて連続的に使用するために、エンジン停止中であってもエンジン始動回路には常時給電しておく必要があった。
【0009】
このため、エンジン始動回路への給電によって車両バッテリが消耗する可能性があった。
【0010】
そこで、本発明は、エンジン停止中の車両バッテリから車両電気回路への給電を遮断する作業車の電力供給システムと、この作業車の電力供給システムを備える作業車と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の作業車の電力供給システムは、エンジンを制御するエンジン制御装置を少なくとも有する車両電気回路と、少なくともエンジン停止始動司令手段を有して作業機を制御する作業制御装置と、前記エンジンと前記車両電気回路とに給電する車両バッテリと、を備える作業車の電力供給システムであって、前記車両電気回路と前記車両バッテリとを接続する回路には、前記回路間を開閉する開閉手段が設けられるとともに、前記開閉手段は前記エンジン停止始動司令手段により開閉制御されて、前記エンジン停止始動司令手段は、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを停止させるとともに前記開閉手段を開かせ、前記開閉手段を閉じさせるとともに前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させることを特徴とする。
【0012】
そして、前記エンジン停止始動司令手段を有する前記作業制御装置は、前記作業機に給電する作業バッテリから給電される構成とすることができる。
【0013】
また、前記作業制御装置の前記エンジン停止始動司令手段は、前記作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、前記開閉手段を閉じさせ、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させる構成とすることができる。
【0014】
さらに、前記作業制御装置は、前記作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、前記開閉手段を閉じさせるとともに、前記作業バッテリによって前記作業機を駆動させ、前記操作レバーが操作されて所定時間が経過すると、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させて、前記エンジンの動力によって前記作業機を駆動させる構成とすることができる。
【0015】
そして、本発明の作業車は、上記したいずれかの作業車の電力供給システムを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明の作業車の電力供給システムは、車両電気回路と車両バッテリとを接続する回路間に開閉手段が設けられるとともに、開閉手段はエンジン停止始動司令手段により開閉制御されて、エンジン停止始動司令手段は、エンジン制御装置によってエンジンを停止させるとともに開閉手段を開かせ、開閉手段を閉じさせるとともにエンジン制御装置によってエンジンを始動させる。
【0017】
したがって、車両側の回路間に設けた開閉手段を、エンジン停止始動司令手段によって制御することで、エンジン停止中の車両バッテリから車両電気回路への給電を遮断して、車両バッテリの消耗を防止できる。
【0018】
そして、エンジン停止始動司令手段を有する作業制御装置は、作業機に給電する作業バッテリから給電されることで、車両バッテリを用いることなく開閉手段を制御できる。
【0019】
また、エンジン停止始動司令手段は、作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、開閉手段を閉じさせ、エンジン制御装置によってエンジンを始動させることで、車両バッテリと車両電気回路とを必要なタイミングで接続して車両バッテリの消耗を防止できる。
【0020】
さらに、作業制御装置は、作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、開閉手段を閉じさせるとともに、作業バッテリによって作業機を駆動させ、操作レバーが操作されて所定時間が経過すると、エンジン制御装置によってエンジンを始動させて、エンジンの動力によって作業機を駆動させることで、車両バッテリの消耗を防止しつつ、安定した動力源によって作業機を安定して駆動させることができる。
【0021】
そして、本発明の作業車は、上記したいずれかの作業車の電力供給システムを備えることで、エンジン停止中の車両バッテリの消耗を抑えた安定性の高い作業車となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
まず、図2を用いて、作業車としての高所作業車Cの全体構成を説明する。ここにおいて、本発明における作業車とは、高所作業車Cに限定されるものではなく、クレーンなど作業用の機械を装備したものであればどのような車両であってもよい。
【0024】
本実施の形態の高所作業車Cは、走行機能を有する車両の本体部分となる車体31と、この車体31に水平旋回可能に取り付けられた作業機としての旋回台32と、この旋回台32に固定されたブラケット33と、このブラケット33に取り付けられた作業機としての伸縮ブーム34と、車体31の四隅に設けられた作業機としてのアウトリガ39,・・・と、を備えている。
【0025】
旋回台32は、旋回用モータの動力を伝達されるピニオンギヤを有しており、このピニオンギヤが車体31に設けた円形状のギヤに噛み合うことで旋回軸を中心に回動する。
【0026】
また、伸縮ブーム34は、基端ブーム341と中間ブーム342と先端ブーム343とによって入れ子式に構成されており、作業機としての油圧シリンダ(不図示)によって伸縮できるようになっている。
【0027】
この基端ブーム341は、ブラケット33に水平に設置された支持軸35によって基端部がブラケット33に取り付けられており、上下に起伏できるようになっている。
【0028】
そして、ブラケット33と基端ブーム341の先端近傍との間には作業機としての起伏シリンダ(油圧シリンダ)36が架け渡されており、この起伏シリンダ36を伸縮することで伸縮ブーム34を起伏することができる。
【0029】
また、先端ブーム343の先端には、作業者が高所作業を行う作業台としてのバケット37が上下左右に回動自在に取り付けられている。
【0030】
さらにバケット37には、作業者がバケット37に乗った状態でブーム34の旋回・起伏・伸縮操作とバケット37の首ふり操作ができるように、操作レバーや操作選択スイッチなどを有する上部操作装置38が設けられている。
【0031】
また、車体31の後部には操作装置収納部40が設けられており、内部に上部操作装置38と略同様な操作を行うことができる下部操作装置41が設置されている。
【0032】
さらに、アウトリガ39は、高所作業車Cの転倒を防止するものであり、車体31のフロント側とリヤ側の左右に設けられ、油圧によって張出・接地がおこなわれる。
【0033】
次に、主に車体31に内蔵された作業車の電力供給システムSの構成について、図1を用いて説明する。
【0034】
本実施の形態の作業車の電力供給システムSは、走行のための原動機となるエンジン1と、エンジン1を始動するセルモータ1aに給電する車両バッテリ4と、エンジン1の回転動力を取り出すPTO(パワーテイクオフ)2と、PTO2に連結されるメイン油圧ポンプ3と、メイン油圧ポンプ3によって駆動される作業機としての油圧アクチュエータ8,9と、エンジン1の停止時に油圧アクチュエータ8,9を駆動させるサブ油圧ポンプ7と、サブ油圧ポンプ7に連結される電動モータ6と、電動モータ6に給電する作業バッテリ5と、を備えている。
【0035】
エンジン1は、エンジン1を始動させるセルモータ1aと、車両バッテリ4や作業バッテリ5を充電するための電気を発電するオルタネータ1bと、エンジン1の燃料噴射ポンプ制御装置1cと、を備えている。
【0036】
このオルタネータ1bによって発電された電気は、充電コントローラ14を介して優先的に車両バッテリ4に充電され、車両バッテリ4が十分に充電されたときに作業バッテリ5に分配されて充電される。
【0037】
また、メイン油圧ポンプ3は、トランスミッション(不図示)に結合されるPTO2に接続されることで、回転しているエンジン1の動力を直接的に取り出して油圧に変換できるようになっている。
【0038】
さらに、作業機としての油圧アクチュエータ8,9は、上記したように、走行機能を有する車体31以外の作業のために発生した油圧により、図2に示す旋回台32や伸縮ブーム34、起伏シリンダ36、バケット37、アウトリガ39などを駆動させる。
【0039】
そして、この油圧アクチュエータ8,9は、作業者が手動で操作するための操作レバー12,13と、この操作レバー12,13が操作されることによって開閉される制御弁10,11と、操作レバー12,13が操作されたことを感知してコントローラ19に通知する操作検出器12a,13aと、を備えている。
【0040】
また、サブ油圧ポンプ7は、作業バッテリ5から給電される電動モータ6の回転動力によって油圧を発生させる。
【0041】
さらに、車両バッテリ4は、セルモータ1aや燃料噴射ポンプ制御装置1cやECU20を有する車両電気回路21などに給電して作動させるもので、一般的に鉛蓄電池が用いられる。
【0042】
同様に、作業バッテリ5は、サブ油圧ポンプ7に連結される電動モータ6やエンジン制御装置としてのコントローラ19などに給電して作動させるもので、一般的に鉛蓄電池が用いられる。
【0043】
なお、これらの車両バッテリ4や作業バッテリ5は、鉛蓄電池などの二次電池でなくてもよく、燃料電池など電気を取り出すことができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0044】
そして、本実施の形態の作業車の電力供給システムSは、エンジン制御装置としてのECU20と、ECU20を包含する車両電気回路21と、車両電気回路21と車両バッテリ4との間の回路を開閉する開閉手段としての電気回路リレー22と、電気回路リレー22を制御する作業制御装置としてのコントローラ19と、を備えている。
【0045】
このECU20は、電子回路によってエンジン1を制御するマイクロコントローラであり、エンジン1と車両バッテリ4との間に接続されて車両バッテリ4から給電されている。
【0046】
また、車両電気回路21は、車両に設けられた電装機器を有する回路であり、ECU20の他にも、その他のエンジン1関係の電装品やエアーコンディショナーやオーディオ機器なども含むものであり、車両バッテリ4から給電されている。
【0047】
さらに、スタータリレー15は、車両バッテリ4とセルモータ1aとの接続を開閉する電磁継電器であり、電動モータ駆動リレー16は、作業バッテリ5と電動モータ6との接続を開閉する電磁継電器である。
【0048】
そして、電気回路リレー22は、車両バッテリ4とECU20を有する車両電気回路21との接続を開閉する電磁継電器であり、通電していない状態で回路を閉じて接続し、通電した状態で回路を開いて遮断する、いわゆる常時閉のリレーである。
【0049】
なお、この電気回路リレー22は、電磁石を用いた電磁継電器でなくてもよく、半導体を用いた半導体リレーなどであってもよい。
【0050】
また、作業制御装置としてのコントローラ19は、作業機の動作や安全装置などを制御する制御装置と一体に構成されるもので、集積回路を有して構成されるマイクロコントローラである。
【0051】
さらに、このコントローラ19には、後述するように、エンジン1の停止や始動を司令する機能を有するエンジン停止始動司令手段19aが組み込まれている。
【0052】
そして、このコントローラ19は、作業バッテリ5から給電されており、操作検出器12a,13aなどから通知を受けて、スタータリレー15や電動モータ駆動リレー16や電気回路リレー22に司令を通知してこれらを開閉するタイミングを調整している。
【0053】
次に、本実施の形態の作業車の電力供給システムSを用いて、コントローラ19のエンジン停止始動司令手段19aが作業機を駆動させる駆動処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
まず、作業者がエンジン停止スイッチ(不図示)を操作することによって、エンジン1を停止させる(ステップS1)。なお、このエンジン停止は、停車を検知してエンジンを自動的に停止するいわゆるアイドリングストップ機構によるものであってもよい。
【0055】
エンジン1の停止をECU20から通知されると、電気回路リレー22を開かせて、車両電気回路21と車両バッテリ4とを電気的に遮断させる(ステップS2)。
【0056】
そして、操作検出器12a,13aから操作レバー12,13が操作されたことを通知されたかどうか判断する(ステップS3)。
【0057】
操作レバー12,13が操作された通知を受けていない場合には、作業機の駆動操作を終了する(ステップS3のNO)。
【0058】
操作レバー12,13が操作された通知を受けている場合には(ステップS3のYES)、電気回路リレー22を閉じて、車両電気回路21と車両バッテリ4とを電気的に接続させる(ステップS4)。
【0059】
つづいて、電動モータ駆動リレー16を閉じて電動モータ6を回転させることでサブ油圧ポンプ7によって油圧を発生させ、作業機としての油圧アクチュエータ8,9を駆動させる(ステップS5)。
【0060】
次に、操作レバー12,13が操作されてから経過した時間を読み込む(ステップS6)。
【0061】
そして、操作レバー12,13が操作されてから経過した時間と、あらかじめ設定された所定時間とを比較し、所定時間が経過したかどうか判断する(ステップS7)。
【0062】
所定時間が経過していない場合には(ステップS7のNO)、時間の読み込みを繰り返す(ステップS6〜ステップS7)。
【0063】
所定時間が経過している場合には(ステップS7のYES)、ECU20によってエンジン1を始動させる(ステップS8)。
【0064】
つづいて、エンジン1の動力をPTO2によって取り出して油圧を発生させ、作業機としての油圧アクチュエータ8,9を駆動させる(ステップS9)。
【0065】
次に、回転している電動モータ6を停止させて(ステップS9)、駆動処理を終了する。
【0066】
そして、操作レバー12,13が中立に戻されていること等によって、エンジン1の回転を継続するかどうかを判断する(ステップS11)。
【0067】
エンジン1の回転を継続する場合には(ステップS11のYES)、エンジン1の回転を継続し(ステップS12)、エンジン1の回転を継続しない場合には(ステップS11のNO)、ステップS1に戻って上述の処理を繰り返す。
【0068】
なお、上記において、所定時間は、電動モータ6は駆動によって発熱するため長時間の駆動ができないこと、電動モータ6を長時間駆動させると作業バッテリ5が急激な放電によって劣化することなどを考慮して決定される時間である。
【0069】
次に、本実施の形態の作業車の電力供給システムSの作用について説明する。
【0070】
このように、本実施の形態の作業車の電力供給システムSは、車両電気回路21と車両バッテリ4とを接続する回路に開閉手段としての電気回路リレー22が設けられるとともに、電気回路リレー22はコントローラ19のエンジン停止始動司令手段19aによって開閉制御される。
【0071】
そして、エンジン停止始動司令手段19aは、エンジン制御装置としてのECU20によってエンジン1を停止させるとともに電気回路リレー22を開かせ、電気回路リレー22を閉じさせるとともにECU20によってエンジンを始動させる。
【0072】
したがって、車両側の回路間に設けた電気回路リレー22を、エンジン停止始動司令手段19aによって制御することで、エンジン1停止中の車両バッテリ4から車両電気回路21への給電を遮断して、車両バッテリ4の消耗を防止できる。
【0073】
つまり、エンジン1を停止している際には、車両バッテリ4と車両電気回路21とは電気的に遮断されているため、車両電気回路21に流れる待機電流によって車両バッテリ4が消耗することはない。ここにおいて、エンジン停止始動司令手段19aにも待機電流は流れているが、きわめて微量なものであるため、問題となることは少ない。
【0074】
そして、エンジン停止始動司令手段19aを有する作業制御装置19は、作業機に給電する作業バッテリ5から給電されることで、車両バッテリ4を用いることなく電気回路リレー22を制御できる。
【0075】
すなわち、車両バッテリ4と車両電気回路21とを接続する回路間に設けられる電気回路リレー22は、車両バッテリ4とは別個に設けた作業バッテリ5から給電されているため、車両バッテリ4が消耗してエンジン1が始動できなくなることを防止できる。
【0076】
加えて、この作業バッテリ5は、一般に車両バッテリ4よりも大容量に構成されているため、エンジン停止始動司令手段19aによる微量な待機電流によって作業バッテリ5が容量不足となることはほとんどない。
【0077】
また、作業制御装置19は、油圧アクチュエータ8,9の操作レバー12,13が操作された通知を操作検出器12a,13aから受けると、電気回路リレー22を閉じさせ、ECU20によってエンジン1を始動させることで、車両バッテリ4と車両電気回路21とを必要なタイミングで接続して車両バッテリ4の消耗を防止できる。
【0078】
すなわち、操作レバー12,13が操作されない場合には自動的に電気回路リレー22を開いた状態にし、操作される場合には自動的に電気回路リレー22を閉じた状態にすることで、車両バッテリ4が必要以上に消費されることを防止できる。
【0079】
さらに、作業制御装置19は、油圧アクチュエータ8,9の操作レバー12,13が操作された通知を操作検出器12a,13aから受けると、エンジン停止始動司令手段19aが電気回路リレー22を閉じさせるとともに、作業バッテリ5によって電動モータ6を回転させて油圧アクチュエータ8,9を駆動させる。
【0080】
そして、操作レバー12,13が操作されて所定時間が経過すると、ECU20によってエンジン1を始動させて、エンジン1の動力によって油圧アクチュエータ8,9を駆動させる。
【0081】
したがって、車両バッテリ4の消耗を防止しつつ、安定した動力源によって油圧アクチュエータ8,9を安定して駆動させることができる。
【0082】
つまり、従来、電動モータ6は作動に伴って発熱するため長時間の駆動ができないうえに、作業バッテリ5は長時間の駆動によって急激に放電されるため劣化することが問題であった。
【0083】
そこで、電動モータ6を回転させて所定時間が経過した後には、エンジン1を始動させてPTO2によって油圧アクチュエータ8,9を駆動させることで、電動モータ6の発熱や作業バッテリ5の劣化を防止して、安定して動作させることができる。
【0084】
さらに、上記した処理を、操作レバー12,13の操作に基づいて連続的に自動実行することによって、電動モータ6からPTO2へと動力源を切り替え忘れになることを防止できる。
【0085】
そして、本実施の形態の作業車としての高所作業車Cは、上記したような作業車の電力供給システムSを備えることで、エンジン1停止中の車両バッテリ4の消耗を抑えた安定性の高い作業車となる。
【0086】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0087】
例えば、前記実施の形態では、エンジン停止始動司令手段19aを有する作業制御装置としてのコントローラ19には作業バッテリ5から給電される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両バッテリ4から給電されるものであってもよいし、専用のバッテリを有するものであってもよい。
【0088】
また、前記実施の形態では、動力源としてエンジン1を搭載した高所作業車Cについて説明したが、これに限定されるものではなく、動力源として電動モータを用いる電動の作業車にも使用できる。
【0089】
そして、前記実施の形態では、コントローラ19は、作業機を制御する制御装置と一体に構成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、エンジン停止始動司令手段を有する別体として構成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の最良の実施の形態の作業車の電力供給システムの構成を説明する回路図である。
【図2】高所作業車の構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の作業車の電力供給システムを用いて作業機を駆動する駆動処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
C 高所作業車(作業車)
S 電力供給システム
1 エンジン
2 PTO
3 メイン油圧ポンプ
4 車両バッテリ
5 作業バッテリ
6 電動モータ
7 サブ油圧ポンプ
8,9 油圧アクチュエータ(作業機)
12,13 操作レバー
12a,13a 操作検出器
19 コントローラ(作業制御装置)
19a エンジン停止始動司令手段
20 ECU(エンジン制御装置)
21 車両電気回路
22 電気回路リレー(開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを制御するエンジン制御装置を少なくとも有する車両電気回路と、少なくともエンジン停止始動司令手段を有して作業機を制御する作業制御装置と、前記エンジンと前記車両電気回路とに給電する車両バッテリと、を備える作業車の電力供給システムであって、
前記車両電気回路と前記車両バッテリとを接続する回路には、前記回路間を開閉する開閉手段が設けられるとともに、前記開閉手段は前記エンジン停止始動司令手段により開閉制御されて、
前記エンジン停止始動司令手段は、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを停止させるとともに前記開閉手段を開かせ、前記開閉手段を閉じさせるとともに前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させることを特徴とする作業車の電力供給システム。
【請求項2】
前記エンジン停止始動司令手段を有する前記作業制御装置は、前記作業機に給電する作業バッテリから給電されることを特徴とする請求項1に記載の作業車の電力供給システム。
【請求項3】
前記作業制御装置の前記エンジン停止始動司令手段は、前記作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、前記開閉手段を閉じさせ、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車の電力供給システム。
【請求項4】
前記作業制御装置は、前記作業機の操作レバーが操作された通知を受けると、前記開閉手段を閉じさせるとともに、前記作業バッテリによって前記作業機を駆動させ、
前記操作レバーが操作されて所定時間が経過すると、前記エンジン制御装置によって前記エンジンを始動させて、前記エンジンの動力によって前記作業機を駆動させることを特徴とする請求項3に記載の作業車の電力供給システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の作業車の電力供給システムを備えることを特徴とする作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−209760(P2009−209760A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53184(P2008−53184)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】