説明

作業車両

【課題】 給油補助枠を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、乗降時に給油補助枠が不測に回動することを防止し、作業車両の乗降性を高める。
【解決手段】 燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠10を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、この給油補助枠10を横向き姿勢と縦向き姿勢とに回動変姿させるトラクタであって、給油補助枠10を各姿勢に保持する姿勢保持機構を備え、該姿勢保持機構は、給油補助枠10をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧することにより、給油補助枠10の姿勢保持を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に関し、特に、燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠を乗降用グリップとしても機能させる作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタなどの作業車両では、燃料タンクに燃料を補給する際、給油口の近傍に、ポリタンクなどの燃料補給用タンクを置き、手動式又は電動式のポンプを用いて給油している。しかしながら、機体上部(例えば、ボンネット上部)に給油口があり、かつ、燃料補給用タンクの載置スペースが確保されていない作業車両では、燃料補給用タンクを機体上部に置いて給油を行っているため、燃料補給用タンクを安定的に支持することが難しいだけでなく、ボンネットなどに傷が付くという不都合がある。
【0003】
そこで、給油口の近傍に、燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように構成されたものでは、給油時に燃料補給用タンクを安定良く支持できるので、給油時の作業性が向上するだけでなく、ボンネットなどが傷つく不都合を回避できる。
【特許文献1】実開昭61−3123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示される給油補助枠は、フートカバーとしても機能させるために、横向き姿勢と縦向き姿勢とに回動変姿可能に構成されると共に、常時は姿勢保持機構によって縦向き姿勢に保持されるようになっている。しかしながら、特許文献1に示される姿勢保持機構は、グリップ状のストッパを機体外方へ引っ張ることにより、給油補助枠の姿勢保持を解除するように構成されているため、オペレータが乗降用グリップと誤認してストッパを引張り、給油補助枠が不測に回動する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、この給油補助枠を横向き姿勢と縦向き姿勢とに回動変姿させる作業車両であって、前記給油補助枠を前記各姿勢に保持する姿勢保持機構を備え、該姿勢保持機構は、前記給油補助枠をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧することにより、前記給油補助枠の姿勢保持を解除することを特徴とする。このようにすると、給油補助枠を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、乗降時に給油補助枠が不測に回動することを防止し、作業車両の乗降性を高めることができる。
また、前記姿勢保持機構は、係合孔に対して係合ピンを差し込むことにより前記給油補助枠の姿勢を保持するものであり、前記係合ピンは、前記係合孔の周縁部に当接して前記給油補助枠のガタ取りをするテーパ部と、該テーパ部よりも先端側に形成される非テーパ小径軸部とを有することを特徴とする。このようにすると、テーパ部によって給油補助枠のガタ取りを行うにあたり、係合ピンがテーパ部によって抜け方向にガイドされても、非テーパ小径軸部で係合ピンの抜けを規制し、給油補助枠の意図しない回動を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタの走行機体であって、該走行機体1の前部には、エンジン搭載部2が構成され、その後方には、オペレータの乗車スペースである操作部3が構成されている。
【0007】
エンジン搭載部2は、エンジン(図示せず)などが配置されるエンジンルーム(図示せず)と、エンジンルームの前部を覆うフロントグリル4と、エンジンルームの左右両側部を覆うサイドカバー5と、エンジンルームの上部を覆う開閉自在なボンネット6とを備えて構成されている。
【0008】
図2〜図4に示すように、エンジンルームの後端部には、仕切り壁7で仕切られた燃料タンク配置室(図示せず)が形成され、ここに燃料タンク8が配置されている。燃料タンク8は、上部に給油口(キャップ)8aを有しており、ここから燃料補給が行われる。尚、仕切り壁7は、機体フレーム(図示せず)で支持される正面視冂型の仕切りフレーム7aと、その内側に設けられる仕切りプレート7bとで構成されている。
【0009】
操作部3の左右両側部には、乗降用ステップ9が設けられている。オペレータは、乗降用ステップ9を踏み台として、機体に対する乗り降りを行う。乗降用ステップ9の前端部は、上方に立ち上がるように形成され、仕切りフレーム7aに突設したブラケット7cに固定されている。
【0010】
走行機体1は、給油口8aの近傍で、かつ、乗降用ステップ9の近傍となる位置に、給油補助枠10を備えている。この給油補助枠10は、燃料タンク8に給油を行う際に、燃料補給用タンクを載置するために設けられるが、本発明に係る給油補助枠10は、横向き姿勢(タンク載置姿勢)から縦向き姿勢(グリップ姿勢)に回動変姿させると、機体への乗り降りを補助する乗降用グリップとしても機能するようになっており、以下、給油補助枠10の回動支持部及び姿勢保持機構について詳細に説明する。
【0011】
図5〜図7に示すように、給油補助枠10自体は、左右方向を向く回動軸10aと、回動軸10aの先端部に設けられる補助枠部材10bとを一体的に備え、回動軸10aを中心とする回動により、補助枠部材10bが縦向き姿勢と横向き姿勢とに変姿するようにしてある。そして、補助枠部材10bは、縦向き姿勢のとき乗降用グリップとして機能し、かつ、横向き姿勢のとき給油補助枠として機能するように、例えばコ字状のパイプ材を用いて構成される。
【0012】
給油補助枠10の回動支持部は、ベース11、ボス12及び弾機13を用いて構成されている。ベース11は、仕切りフレーム7aの内側に固設されるプレート部材であり、ボス12を一体的に備えている。ボス12は、給油補助枠10の回動軸10aを回動自在に支持する筒部材であり、回動軸10aの左右スライドも許容している。弾機13は、回動軸10aに形成される段差部とボス12の外端面との間に介設される圧縮コイルバネであり、給油補助枠10を機体外側に向けて付勢している。
【0013】
給油補助枠10の姿勢保持機構は、ベース11とアーム14との間で構成される。アーム14は、回動軸10aの基端部に一体的に固定されるプレート部材であり、その先端部には、機体外側に向かって突出する係合ピン15が設けられている。係合ピン15は、ベース11に形成される二つの係合孔11aに対し、機体内側から選択的に差し込まれることにより、給油補助枠10の位置出し及び姿勢保持を行う。また、給油補助枠10の姿勢保持を解除する場合は、弾機13の付勢力に抗して、給油補助枠10をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧する。このようにすれば、給油補助枠10を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、乗降時に引張力が作用しても給油補助枠10が不測に回動することを防止できる。
【0014】
また、本実施形態では、係合ピン15の先端部に、先端側ほど小径になるテーパ部15aを形成している。このテーパ部15aは、係合ピン15が係合孔11aに係合するとき、係合孔11aの周縁部に当接して給油補助枠10のガタ取りを行う。これにより、給油補助枠10をガタ無く姿勢保持し、乗降用グリップとしての使い勝手を高めることができる。
【0015】
また、本実施形態では、係合ピン15の先端部にテーパ部15aを形成するにあたり、テーパ部15aよりも先端側に非テーパ小径軸部15bを突設している。このようにすると、テーパ部15aによって給油補助枠10のガタ取りを行うにあたり、係合ピン15がテーパ部15aによって抜け方向にガイドされても、非テーパ小径軸部15bが係合孔11aの周縁に係合することにより、係合ピン15の抜けが規制されるので、給油補助枠10の意図しない回動を防止することができる。
【0016】
次に、給油補助枠10の使用方法について、図8〜図11を参照して説明する。給油補助枠10は、通常、縦向き姿勢に保持し、乗降用グリップとして使用される。このとき、給油補助枠10の姿勢保持は、弾機13の付勢力によって、係合ピン15が機体内側からベース11の係合孔11aに係合することによりなされるので、乗降時にオペレータが給油補助枠10をグリップとして使用しても、引張力で姿勢保持が解除されることはない。
【0017】
給油補助枠10に燃料補給タンクを載置する場合は、まず、縦向き姿勢の給油補助枠10をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧する。すると、係合ピン15が係合孔11aから抜け、給油補助枠10の回動が許容されるので、給油補助枠10を略90°回動操作し、係合ピン15を他方の係合孔11aに係合させる。これにより、給油補助枠10が横向き姿勢に保持され、燃料補給用タンクを載置することが可能になる。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠10を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、この給油補助枠10を横向き姿勢と縦向き姿勢とに回動変姿させるトラクタであって、給油補助枠10を各姿勢に保持する姿勢保持機構を備え、該姿勢保持機構は、給油補助枠10をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧することにより、給油補助枠10の姿勢保持を解除するので、給油補助枠10を乗降用グリップとして機能させても、乗降時に給油補助枠10が不測に回動することを防止し、トラクタの乗降性を高めることができる。
【0019】
また、給油補助枠10の姿勢保持機構は、係合孔11aに対して係合ピン15を差し込むことにより給油補助枠10の姿勢を保持するものであり、係合ピン15は、係合孔11aの周縁部に当接して給油補助枠10のガタ取りをするテーパ部15aと、該テーパ部15aよりも先端側に形成される非テーパ小径軸部15bとを有するので、テーパ部15aによって給油補助枠10のガタ取りを行うにあたり、係合ピン15がテーパ部15aによって抜け方向にガイドされても、非テーパ小径軸部15bで係合ピン15の抜けを規制し、給油補助枠10の意図しない回動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】前輪を省略したトラクタの斜視図である。
【図2】仕切壁及び給油補助枠を示す正面図である。
【図3】仕切壁及び給油補助枠を右前方から見た斜視図である。
【図4】仕切壁及び給油補助枠を左前方から見た斜視図である。
【図5】給油補助枠の回動支持構造及び姿勢保持機構を示す斜視図である。
【図6】給油補助枠の斜視図である。
【図7】アーム及び係合ピンを示す側面図である。
【図8】縦向き姿勢の給油補助枠を示す外観斜視図である。
【図9】縦向き姿勢の給油補助枠を示す内観斜視図である。
【図10】横向き姿勢の給油補助枠を示す外観斜視図である。
【図11】横向き姿勢の給油補助枠を示す内観斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 走行機体
8 燃料タンク
8a 給油口
10 給油補助枠
10a 回動軸
10b 補助枠部材
11 ベース
11a 係合孔
12 ボス
13 弾機
14 アーム
15 係合ピン
15a テーパ部
15b 非テーパ小径軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料補給用タンクを載置可能な給油補助枠を乗降用グリップとしても機能させるにあたり、この給油補助枠を横向き姿勢と縦向き姿勢とに回動変姿させる作業車両であって、
前記給油補助枠を前記各姿勢に保持する姿勢保持機構を備え、該姿勢保持機構は、前記給油補助枠をその回動軸心に沿って機体内側に向かって押圧することにより、前記給油補助枠の姿勢保持を解除することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記姿勢保持機構は、係合孔に対して係合ピンを差し込むことにより前記給油補助枠の姿勢を保持するものであり、前記係合ピンは、前記係合孔の周縁部に当接して前記給油補助枠のガタ取りをするテーパ部と、該テーパ部よりも先端側に形成される非テーパ小径軸部とを有することを特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−347301(P2006−347301A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174631(P2005−174631)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】