説明

作業車両

【課題】副変速レバースイッチの異常を検出する異常検出手段を設け、制御部がレバースイッチの検出結果に基づいて副変速装置の変速状態を検知するとともに主変速装置の変速切換制御を行う。
【解決手段】レバースイッチの異常を検出した場合には異常検出前に検出されていたレバースイッチによる変速切換位置に基づき副変速装置の変速段数を想定するか又は予め定められた位置に副変速レバーが操作されているものとして副変速装置の変速段数を想定して主変速装置の変速切換を行い、その後、回転数検出手段による検出結果及び上記想定された変速段数から算出される車速と、車速検出手段により検出される車速とを比較して上記副変速装置の変速段数を車速検出手段の検出結果に基づいて再度想定しなおして、以後の主変速装置の変速切換制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁により入切される油圧クラッチによって走行変速切換が行われる主変速装置と、副変速レバーの揺動操作によって走行変速切換が行われる副変速装置とを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁により入切される油圧クラッチによって走行変速切換が行われる主変速装置と、副変速レバーの揺動操作によって走行変速切換が行われる副変速装置と、副変速レバーによる変速切換位置を検出するレバースイッチとを備え、レバースイッチの異常を検出する異常検出手段を設け、制御部がレバースイッチの検出結果に基づいて副変速装置の変速状態を検知するとともに電磁弁を介して主変速装置の変速切換を制御する作業車両が従来公知である。
【0003】
このような作業車両では、異常検出手段によりレバースイッチの異常が検出されると、車両の走行を停止させる制御を行うことが一般的であったが、作業効率の観点から、走行中に異常検出手段によってレバースイッチの異常を検出した場合には異常検出前に検出されていたレバースイッチの変速切換操作状態に基づき副変速装置の変速段数を想定するか又は予め定められた位置に副変速レバーが操作されているものとして副変速装置の変速段数を想定して主変速装置の変速切換を行い、車両の走行を続行する作業車両が開発され、公知になっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−333174号公報(第9−10頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の作業車両では、想定された副変速装置の変速段数が実際の変速段数と異なっている場合、それを是正する手段が無く、制御部が上記誤った変速段数で主変速装置の走行変速切換を行うと、種々の不具合が発生する可能性があるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、電磁弁により入切される油圧クラッチによって走行変速切換が行われる主変速装置と、副変速レバーの揺動操作によって走行変速切換が行われる副変速装置と、副変速レバーによる変速切換位置を検出するレバースイッチとを備え、レバースイッチの異常を検出する異常検出手段を設け、制御部がレバースイッチの検出結果に基づいて副変速装置の変速状態を検知するとともに電磁弁を介して主変速装置の変速切換制御を行う作業車両において、作業効率が良く、主変速装置の変速切換制御をより適切に行うことが可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の作業車両は、電磁弁64A,64B,64C,64D,69により入切される油圧クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bによって走行変速切換が行われる主変速装置13,17と、副変速レバー51の揺動操作によって走行変速切換が行われる副変速装置16と、副変速レバー51による変速切換位置を検出するレバースイッチ87N,87L,87M,87Hとを備え、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hの異常を検出する異常検出手段を設け、制御部83がレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの検出結果に基づいて副変速装置16の変速状態を検知するとともに電磁弁64A,64B,64C,64D,69を介して主変速装置13,17の変速切換を制御する作業車両において、エンジン6の回転数を検出する回転数検出手段93及び車速を検出する車速検出手段94を設け、走行中に異常検出手段によってレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの異常を検出した場合には異常検出前に検出されていたレバースイッチ87N,87L,87M,87Hによる変速切換位置に基づき副変速装置16の変速段数を想定するか又は予め定められた位置に副変速レバー51が操作されているものとして副変速装置51の変速段数を想定して主変速装置13,17の変速切換を行い、その後、回転数検出手段93による検出結果及び上記想定された変速段数から算出される車速と、車速検出手段94により検出される車速とを比較して両者に隔たりがある場合には、想定されていた上記副変速装置16の変速段数を車速検出手段94の検出結果に基づいて再度想定しなおして、以後の主変速装置13,17の変速切換制御を行うように制御部83を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の作業車両によれば、副変速レバーのレバースイッチに異常が生じた場合でも副変速装置の変速段数が自動的に想定され、主変速装置の変速切換制御を続行できるとともに、想定されている副変速装置の変速段数が誤っている場合には車速検出手段の検出結果に基づいて上記変速段数が再度想定しなおされるため、主変速装置の変速切換制御をより適切に行うことが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。
【図2】本トラクタの動力伝動構造を示すミッションケース内の展開図である。
【図3】本トラクタが搭載した油圧装置の油圧回路図である。
【図4】キャビン内の後半部の構成を示す要部平面図である。
【図5】(A)は、支持体のメータパネルの構成を示す要部背面図であり、(B)は、表示部及び表示部周辺の構成を示す背面図である。
【図6】本トラクタに搭載された制御装置のブロック図である。
【図7】(A)は、第1主変速装置の変速切換時における各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、(A)の要部を示すグラフである。
【図8】(A)は、副変速装置の低速時又は中速時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際の処理フロー図である。
【図9】(A)は、副変速装置の高速速時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際のフロー図である。
【図10】(A)は、前後進切換装置による前後進切換時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際のフロー図である。
【図11】(A)は、レバースイッチ異常検出手段の構成を示す状態遷移図であり、(B)は、各レバースイッチの正常時における状態を示す一覧表であり、(C)は、各レバースイッチの異常時における状態を示す一覧表である。
【図12】(A)は、シャトルスイッチ異常検出手段の構成を示す状態遷移図であり、(B)は、各シャトルスイッチの正常時における状態を示す一覧表であり、(C)は、各シャトルスイッチの異常時における状態を示す一覧表である。
【図13】制御部により行われる本トラクタの走行変速切換制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。本トラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2を有する走行機体3と、走行機体3後方に配置されて昇降リンク4によって走行機体3に昇降駆動可能に連結された作業機であるロータリ耕耘装置5とを備えている。
【0010】
走行機体3の前半部にはエンジン6(図5参照)を収容するボンネット7が設置され、走行機体3におけるボンネット7後方にはキャビン8が立設されている。このキャビン8内に乗り込んだオペレータの操作によって、本トラクタは、圃場を走行しながらロータリ耕耘装置5によって耕耘作業等の作業を行う。
【0011】
次に、本トラクタの動力伝動構成について説明する。
図2は、本トラクタの動力伝動構造を示すミッションケース内の展開図である。エンジン6の動力は、ミッションケース9内のトランスミッション11を介して、前後輪1,2及びロータリ耕耘装置5に変速伝動される。
【0012】
トランスミッション11は、走行伝動系への動力を断続させる主クラッチ12と、複数段(図示する例では4段)の走行変速切換を行う第1主変速装置(主変速装置)13と、前後進切換装置14と、複数段(図示する例では低速、中速、高速の3段)の走行変速切換を行う副変速装置16と、複数段(図示する例では2段)の走行変速切換を行う第2主変速装置(主変速装置)17と、前輪1への動力の断続及び変速を行う前輪伝動装置18と、ロータリ耕耘装置5に動力を出力するPTO軸19への動力を断続させる油圧クラッチである作業クラッチ21とを備えている。
【0013】
エンジン6の動力は、第1主変速装置13→前後進切換装置14→副変速装置16→第2主変速装置17の順に伝動される。第2主変速装置17に入力された動力は変速されて前後方向の走行駆動軸22に伝動される。この走行駆動軸22の動力は、後輪2に伝動される他、前輪伝動装置18を介して前輪1に伝動される。
【0014】
すなわち、第1主変速装置13と前後進切換装置14と副変速装置16と第2主変速装置17とは、エンジン6から前後進1,2への動力伝動経路で、直列的に配置されて4×3×2で計24段の走行変速切換を行うように構成されている。
【0015】
上記主クラッチ12は、エンジン6動力によって駆動されて作業クラッチ21側(作業伝動系)に動力を伝動する前後方向の伝動軸23の外周に軸回りに回転自在に軸支された筒状の走行伝動軸24へのエンジン6からの動力伝動を断続するように構成されている。オペレータは、キャビン8内の床面側に設置されたクラッチペダル26(図1参照)の踏込みによって主クラッチ12を切断操作する一方で、クラッチペダル26の踏込み解除によって主クラッチ12を接続操作する。
【0016】
上記第1主変速装置13は、走行伝動軸24に一体的に取付固定されて走行伝動軸24と一体回転する第1主変速装置13の変速段と同数の入力ギヤ27A,27B,27C,27Dと、対応する入力ギヤ27A,27B,27C,27Dと常時噛合う第1主変速装置13の変速段と同数の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dと、出力ギヤ28A,28B,28C,28Dのうちで最低速段ギヤ及び最高速段ギヤである1速出力ギヤ28A及4速出力ギヤ28Dを遊転状態で(回転自在に)支持する変速軸である第1変速軸29と、最高速段と最低速段との間の中間速段ギヤである2速出力ギヤ28B及び3速出力ギヤ28Cを遊転状態で支持する変速軸である第2変速軸31と、1速出力ギヤ28Aの動力を第1変速軸29に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである1速クラッチ(油圧クラッチ)32Aと、2速出力ギヤ28Bの動力を第2変速軸31に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである2速クラッチ(油圧クラッチ)32Bと、3速出力ギヤ28Cの動力を第2変速軸31に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである3速クラッチ(油圧クラッチ)32Cと、4速出力ギヤ28Dの動力を第1変速軸29に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである4速クラッチ(油圧クラッチ)32Dと、を備えている。ちなみに、第1変速軸29と第2変速軸31は左右に並列配置されている。
【0017】
本トラクタは、上記4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D内の何れか1つを入作動させて他の3つを切作動させることにより第1主変速装置13を1速から4速の何れかの変速段に切換える一方で、上記4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D全てを切作動させることによりエンジン動力の第1主変速装置13下流側への伝動を切断するように構成されている。ちなみに、変速段数が増加する程、第1主変速装置13下流側に高速で動力が伝動される。
【0018】
上記前後進切換装置14は、第1変速軸29と一体回転する第1前進入力ギヤ33及び後進入力ギヤ34と、第2変速軸31と一体回転する第2前進入力ギヤ36と、前後方向の前後進切換軸37と、前後進切換軸37に遊転状態で支持されて上記2つの前進入力ギヤ33,36と常時噛合う前進出力ギヤ38Aと、前後進切換軸37に遊転状態で支持された後進出力ギヤ38Bと、後進入力ギヤ34及び後進出力ギヤ38Bと常時噛合い後進入力ギヤ34から後進出力ギヤ38Bに逆転動力を伝動する反転ギヤ(図示しない)と、前進出力ギヤ38Aの動力を前後進切換軸37に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである前進クラッチ(油圧クラッチ)41Aと、後進出力ギヤ38Bの動力を前後進切換軸37に断続伝動する油圧作動式の変速クラッチである後進クラッチ(油圧クラッチ)41Bと、を備えている。
【0019】
本トラクタは、前進クラッチ41Aを接続作動させるとともに後進クラッチ41Bを切断作動させることにより前後進切換装置14(走行機体3)の「前進」状態への切換を行う一方で、前進クラッチ41Aを切断作動させるとともに後進クラッチ32を接続作動させることにより前後進切換装置14(走行機体3)の「後進」状態への切換を行う他、前進クラッチ41Aと後進クラッチ41Bを共に切作動させることによりエンジン動力の前後進切換装置14下流側への伝動を切断する「ニュートラル」状態への切換を行うように構成されている。
【0020】
すなわち、上記構成から、本トラクタは、上記第1主変速装置13によって前進走行時には1速と2速と3速と4速の計4段の変速切換を行う一方で、後進走行時には1速と4速の計2段の変速切換を行う。
【0021】
上記副変速装置16は、前後方向の副変速軸42と、副変速軸42に遊転状態で支持された変速ギヤである低速ギヤ43A及び中速ギヤ43Bと、前後進切換軸37に遊転状態で支持された変速ギヤである高速ギヤ43Cと、副変速軸42に軸方向に往復スライド可能に支持された常時噛合い式(コンスタントメッシュ)の変速クラッチである低中速クラッチ44と、前後進切換軸37に軸方向に往復スライド可能に支持されて前後進切換軸37から高速ギヤ43Cに動力を断続伝動する常時噛合い式の変速クラッチである高速クラッチ46と、前後進切換軸37と一体回転して中速ギヤ43Bと常時噛合うことにより前後進切換軸37から中速ギヤ43Bに動力を伝動する伝動ギヤ47と、複数のギヤの噛合いにより中速ギヤ43Bから低速ギヤ43Aに動力を伝動する伝動機構48と、副変速軸42と一体回転して高速ギヤ43Cと常時噛合うことにより高速ギヤ43Cの動力を副変速軸42に伝動する伝動ギヤ49と、を備えている。
【0022】
低中速クラッチ44は、低速ギヤ43A側位置である「低速位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動を接続状態且つ中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を切断状態にし、中速ギヤ43B側位置である「中速位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動を切断状態且つ中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を接続状態にし、低速ギヤ43Aと中速ギヤ43Bの中間位置である「ニュートラル位置」に微動スライド作動することにより、低速ギヤ43Aから副変速軸42への動力伝動及び中速ギヤ43Bから副変速軸42への動力伝動を共に切断状態にするように構成されている。
【0023】
高速クラッチ46は、高速ギヤ43C側位置である「高速位置」に微動スライド作動することにより、前後進切換軸37から高速ギヤ43Cへの動力伝動を接続状態にする一方で、高速ギヤ43Cから離間する側である「ニュートラル位置」に微動スライド作動することにより、前後進切換軸37から高速ギヤ43Cへの動力伝動を切断状態にするように構成されている。
【0024】
上述の2つの常時噛合い式の変速クラッチ44,46は、キャビン8内に設置された前後及び左右揺動操作可能な副変速レバー51(図3参照)の基端部と、リンクよりなる連動機構(図示しない)を介して機械的に連結されている。そして、副変速レバー51による前後及び左右揺動によって、この2つの変速クラッチ44,46のスライド位置が切換えられる走行変速切換操作が行われる。
【0025】
すなわち、低中速クラッチ44を低速位置に変位させ高速クラッチ46をニュートラル位置に変位させることにより、低速ギヤ43Aを介して副変速軸42に動力を低速伝動する「低速」に副変速装置16が切換えられ、低中速クラッチ44を中速位置に変位させ高速クラッチ46をニュートラル位置に変位させることにより、中速ギヤ43Bを介して副変速軸42に動力を中速伝動する「中速」に副変速装置16が切換えられ、低中速クラッチ44をニュートラル位置に変位させ高速クラッチ46を高速位置に変位させることにより、高速ギヤ43Cを介して副変速軸42に動力を高速伝動する「高速」に副変速装置16が切換えられ、2つの変速クラッチ44,46を共にニュートラル位置に切換えることによりエンジン動力の副変速装置16下流側への伝動を切断する「ニュートラル」に副変速装置16が切換えられる。
【0026】
上記第2主変速装置17は、副変速軸42と一体回転する低速入力ギヤ53A及び高速入力ギヤ53Bと、走行駆動軸22に遊転状態で支持されて低速入力ギヤ53Aと常時噛合う低速出力ギヤ54Aと、走行駆動軸22に遊転状態で支持されて高速入力ギヤ53Bと常時噛合う高速出力ギヤ54Bと、低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22に動力を断続伝動させる油圧作動式の変速クラッチである低速クラッチ(油圧クラッチ)56Aと、高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22に動力を断続伝動させる油圧作動式の変速クラッチである高速クラッチ(油圧クラッチ)56Bと、を備えている。
【0027】
本トラクタでは、低速クラッチ56Aを接続作動させるとともに高速クラッチ56Bを切断作動させることにより、走行駆動軸22に低速動力を伝動する一方で、低速クラッチ56Aを切断作動させるとともに高速クラッチ56Bを接続作動させることにより、走行駆動軸22に高速動力を伝動する他、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bを共に切断作動させることにより、エンジン動力の副変速装置17下流側への動力伝動を切断するように構成されている。
【0028】
以上、第1主変速装置13及び第2主変速装置17よりなる主変速装置13,17の計8段の走行変速切換は、上述した6つの油圧作動式の変速クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bの断続によって行われ、これらの変速クラッチ32A,32B,32C,32D,56A,56Bの断続は油圧装置(図4参照)57による圧油の排出・供給によって制御される。くわえて、前後進切換装置14の前後進切換も、上述の2つの油圧作動式の変速クラッチ41A,41Bの断続によって行われ、これらの変速クラッチ41A,41Bの断続も油圧装置57による圧油の排出・供給によって制御される。
【0029】
次に、図3に基づき、油圧装置57の構成について説明する。
図3は、本トラクタが搭載した油圧装置の油圧回路図である。この油圧装置57は、ミッションケース9内に形成された油圧タンク58内の圧油を圧送する油圧ポンプ59を備えている。この油圧ポンプ59はエンジン動力よって駆動される。
【0030】
油圧ポンプ59からの圧油は、まず、分流弁61によって、ステアリングハンドル62(図1参照)の操作により操向作動する油圧式操向装置であるステアリングユニット63への圧油と、上述の油圧式の変速クラッチ32A,32B,32C,32D,41A,41B,56A,56B側への圧油とに分流される。
【0031】
変速クラッチ32A,32B,32C,32D,41A,41B,56A,56B側に送られた圧油は、1速クラッチ32A、2速クラッチ32B、3速クラッチ32C及び4速クラッチ32D側と、前進クラッチ41A及び後進クラッチ41B側と、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側と、にそれぞれ各別に供給される。
【0032】
上述のようにして第1主変速装置13の4つの変速クラッチ32A,32B,32C,32D側に供給された圧油は、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより1速クラッチ32Aを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である1速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Aと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより2速クラッチ32Bを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である2速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Bと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより3速クラッチ32Cを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である3速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64Cと、開閉作動によって圧油の供給・排出を行うことにより4速クラッチ32Dを断続(入切)作動させる開度調整可能な電磁比例弁(電磁弁)である4速バルブ(主変速バルブ,変速バルブ)64D、にそれぞれ供給される。
【0033】
上記各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dは、断続制御対象の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを接続(入)作動させて動力伝動制御対象の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dの動力を上述した動力伝動対象の変速軸29,31に伝動するように、該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dに圧油を供給する流路を形成する「入位置」と、断続制御対象の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを切断(切)作動させて動力伝動制御対象の出力ギヤ28A,28B,28C,28Dから上述した動力伝動対象の変速軸29,31への動力伝動を切断するように、該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dから圧油を排出する流路を形成する「切位置」と、を有している。
【0034】
この各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dは、電気的な制御信号のデューティ比等に基づいて開度調整可能なように構成されているため、対応する変速クラッチ32A,32B,32C,32Dに徐々に圧油を供給して内部の圧力を次第に上昇させて変速切換時の変速ショックを低減させる昇圧制御を行うことができる。くわえて、各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dから対応する各変速クラッチ32A,32B,32C,32Dへの圧油流路には、変速クラッチ32A,32B,32C,32Dの接続作動側への圧油の流れのみを絞る一方向絞り弁66が設置されており、該4つの一方向絞り弁66によっても、上記各変速クラッチ32A,32B,32C,32Dの瞬時の接続作動が防止される。
【0035】
上述のようにして前進クラッチ41A及び後進クラッチ41B側に供給された圧油は、手動式の油圧バルブである前後進切換弁67に供給される。この前後進切換弁67は、内部への圧油供給により前進クラッチ41Aを接続(入)作動させて前進出力ギヤ38Aの動力を前後進切換軸37に伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により後進クラッチ41Bを切断(切)作動させて後進出力ギヤ38Bから前後進切換軸37への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「前進位置」と、油圧タンク58への圧油排出により前進クラッチ41Aを切断(切)作動させて前進出力ギヤ38Aから前後進切換軸37への動力伝動を切断するとともに内部への圧油供給により後進クラッチ41Bを接続(入)作動させて後進出力ギヤ38Bの動力を前後進切換軸37に伝動するように圧油流路を形成する「後進位置」と、油圧タンク58への圧油排出により前進クラッチ41A及び後進クラッチ41Bを切断作動させて前後進切換軸37への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「ニュートラル位置」と、を有している。
【0036】
上記3位置からなる前後進切換弁67は、ステアリングハンドル62の側方(図示する例では左側方)に前後揺動操作可能に支持された前後進レバー68(図1参照)と連係機構(図示しない)を介して機械的に連結され、この切換レバーの前後揺動操作によって、前進位置と、ニュートラルと、後進位置との切換が行われる。
【0037】
上述のようにして低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側に供給された圧油は、電磁方向切換弁(電磁弁)である走行変速バルブ(変速バルブ)69に供給される。この走行変速バルブ69は、内部への圧油供給により低速クラッチ56Aを接続(入)作動させて低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22に動力を伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により高速クラッチ56Bを切断(切)作動させて高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「低速位置」と、内部への圧油供給により高速クラッチ56Bを接続(入)作動させて高速出力ギヤ54Bから走行駆動軸22に動力を伝動するとともに油圧タンク58への圧油排出により低速クラッチ56Aを切断(切)作動させて低速出力ギヤ54Aから走行駆動軸22への動力伝動を切断するように圧油流路を形成する「高速位置」と、低速クラッチ56Aからの圧油の排出路と高速クラッチ56Bからの圧油の排出路とを合流させて油圧タンク58に排油する流路を形成して低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bを切断作動させて走行駆動軸22への動力伝動を切断する「ニュートラル位置」と、を有している。そして、3位置からなるこの走行変速バルブ73は、電気的な制御信号によって作動して低速位置、高速位置又はニュートラル位置の何れかに切換わり、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56Bの断続(入切)操作を行う。
【0038】
また、低速クラッチ56A及び高速クラッチ56B側に供給された圧油は、比例電磁弁である駆動制御切換弁71にも供給される。駆動制御切換弁71は、作業クラッチ21に圧油を供給して作業クラッチ21を接続作動させてPTO軸19を回転駆動させる流路を形成する「駆動位置」と、作業クラッチ21から油圧タンク58に圧油を排出して作業クラッチ21を切断作動させてPTO軸19を駆動停止させる流路を形成する「停止位置」と、を有している。そして、電気的な制御信号によって位置切換制御が行われる。
【0039】
次に、図1,4及び5に基づき、キャビン8内の構成について説明する。
図4は、キャビン内の後半部の構成を示す要部平面図である。キャビン8内の後部にはオペレータが着座する座席72が設置され、座席72の進行方向右(右)側方にはロータリ耕耘装置5の昇降操作を行う昇降レバー73が前後揺動自在に支持され、座席72の左側方には上述の副変速レバー51が前後及び左右揺動操作可能に設けられ、座席72の前方には上記ステアリングハンドル62及び前後進レバー68等が支持される支持体74(図1参照)が立設されている。
【0040】
上記副変速レバー51は、基端部である下端側が支持されて先端側半部にグリップ51aが形成され、副変速装置16の低中速クラッチ44及び高速クラッチ46をニュートラル位置に切換操作する「ニュートラルポジション」が前後中立位置になり、ニュートラル位置で副変速レバー51が左右揺動可能に支持されている。ニュートラル位置の副変速レバー51を左右の一方側(本例では左側)に傾斜揺動させる低中速姿勢に切換操作することにより前側及び後側に揺動操作可能な状態になり、ニュートラル位置の副変速レバー51を左右の他方側に傾斜揺動させる高速姿勢に切換操作することにより前側に揺動操作可能な状態になる。
【0041】
副変速レバー51は低中速姿勢状態で後方揺動操作することにより「低速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44が低速位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46がニュートラル位置に切換えられた状態になる。また、副変速レバー51は低中速姿勢状態で前方揺動操作することにより「中速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44が高速位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46がニュートラル位置に切換えられた状態になる。さらに、副変速レバー51は高速姿勢状態で前方揺動操作することにより「高速ポジション」位置に変位され、この際、前述の連動機構を介して、低中速クラッチ44がニュートラル位置に切換えられた状態になるとともに高速クラッチ46が高速位置に切換えられた状態になる。すなわち、低速ポジション、中速ポジション又は高速ポジションへの変速切換操作では、必ず一旦、ニュートラルポジションに切換操作されるように副変速レバー51が構成されている。
【0042】
なお、副変速レバー51のグリップ51aの上端部には主変速装置13,17の計8段の変速切換操作を行うシフト操作具76が前後回動操作可能に支持され、グリップ51aの側部には押し操作可能に高速発進スイッチ77が設置されている。シフト操作具76を前後の一方側に回動させることにより増速操作を行う一方で、前後の他方側に回動させることにより減速操作を行う。
【0043】
図5(A)は、支持体のメータパネル78の構成を示す要部背面図であり、(B)は、表示部及び表示部周辺の構成を示す背面図である。上記支持体74の上部且つステアリングハンドル62の前方には、メータパネル78が設置されている。メータパネル78内には、座席72に着座したオペレータから視認可能なように各種メータ類及び液晶の表示部であるLCD79が設けられている。
【0044】
LCD79には、副変速装置16のその時点での変速段数と、本トラクタの走行変速段数が表示される変速段数表示部79aが設けられている。くわえて、メータパネル78内のLCD79の下方には、報知手段である複数のLED81が左右並列状態で設置されている。
【0045】
本トラクタは、上記シフト操作具76の回動操作に基づいて変速バルブ64A,64B,64C,64D,69を介した主変速装置13,17の変速切換制御を行う制御装置82(図6参照)を備えている。くわえて、この制御装置82は、副変速装置16の変速状態を検知可能に構成されている。
【0046】
次に、図6乃至13に基づき本トラクタに搭載された制御装置82の構成について説明する。
図6は、本トラクタに搭載された制御装置のブロック図である。制御装置82は、主に、制御部83と、制御部83の入力側に接続された各種機器と、制御部83の出力側に接続された各種機器とにより構成されている。制御部83は、複数のマイコン等をCAN(Control Area Network)で接続することにより構成される。
【0047】
制御部83の出力側には、切位置に常時弾性的に付勢されている1速バルブ64Aを入位置に切換作動させる1速ソレノイド(変速ソレノイド)84Aと、切位置に常時弾性的に付勢されている2速バルブ64Bを入位置に切換作動させる2速ソレノイド(変速ソレノイド)84Bと、切位置に常時弾性的に付勢されている3速バルブ64Cを入位置に切換作動させる3速ソレノイド(変速ソレノイド)84Cと、切位置に常時弾性的に付勢されている4速バルブ64Dを入位置に切換作動させる4速ソレノイド(変速ソレノイド)84Dと、ニュートラル位置に常時弾性的に付勢されている走行変速バルブ69を低速位置に切換作動させる低速ソレノイド(変速ソレノイド)86Lと、走行変速バルブ69を高速位置に切換作動させる高速ソレノイド(変速ソレノイド)86Hと、上述のLCD79と、が接続されている。
【0048】
制御部83の入力側には、副変速レバー51の変速切換位置を検出する4つの変速切換検出手段であるレバースイッチ87N,87L,87M,87Hと、前後進レバー68による連係機構を介した前後進切換装置14の切換操作を検出する3つの前後進切換検出手段であるシャトルスイッチ88N,88R,88Fと、シフト操作具76の変速切換操作を検出する2つの変速操作検出手段である主変速スイッチ89D,89Uと、第2主変速装置17の動力伝動状態を検出する状態検出手段である圧力スイッチ91と、圧油の温度を検出することにより油圧装置57の状態を検出する油温センサ92と、エンジン回転数を検出するエンコーダ等によりなるエンジン回転数検出センサ(回転数検出手段)93と、本トラクタの走行速度である車速を検出する車速センサ(車速検出手段)94と、上述の高速発進スイッチ76と、が接続されている。
【0049】
上記4つの各レバースイッチ87N,87L,87M,87Hは、副変速レバー51の基端部側又は連動機構側に設置され、その内、副変速レバー51がニュートラルポジションに位置していることを入作動により検出するレバースイッチがニュートラル検出スイッチ87Nになり、副変速レバー51が低速ポジションに位置していることを入作動により検出するレバースイッチが低速検出スイッチ87Lになり、副変速レバー51が中速ポジションに位置していることを入作動により検出するレバースイッチが中速検出スイッチ87Mになり、副変速レバー51が高速ポジションに位置していることを入作動により検出するレバースイッチが高速検出スイッチ87Hになる。くわえて、制御部83には、この4つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの異常状態を検出するレバースイッチ異常検出手段(異常検出手段)が設けられている。
【0050】
上記3つの各シャトルスイッチ88N,88R,88Fは、前後進レバー66の基端部側又は連係機構側に設置され、その内、前後進切換装置14のニュートラル切換を入作動により検出するシャトルスイッチがニュートラル検出スイッチ88Nになり、前後進切換装置14の後進切換を入作動により検出するシャトルスイッチが後進検出スイッチ88Rになり、前後進切換装置14の前進切換を入作動により検出するシャトルスイッチが前進検出スイッチ88Fになる。くわえて、制御部83には、この3つのシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常状態を検出するシャトルスイッチ異常検出手段(異常検出手段)が設けられている。
【0051】
上記2つの各主変速スイッチ89D,89Uは、シフト操作具76と副変速レバー51の上端部との間に設けられ、その内、主変速装置13,17の減速側への変速切換操作を入作動によって検出する主変速スイッチが減速スイッチ89Dになり、主変速装置13,17の増速側への変速切換操作を入作動によって検出する主変速スイッチが増速スイッチ89Uになる。ちなみに、シフト操作具76は、両主変速スイッチ89D,89Uを共に非検出状態である切状態にする前後中立位置に常時弾性的に付勢されている。
【0052】
上記圧力スイッチ91は、走行変速バルブ69への圧油供給路に設置されており、第2主変速装置17の変速クラッチ56A,56Bを接続作動させる該圧油供給路内の圧力上昇を入作動によって検知することにより、第2主変速装置17が行う動力伝動の断続状態を検出可能に構成されている。
【0053】
上記車速センサ94は、後輪2への動力伝動経路における変速後の動力が伝動される走行駆動軸22等の伝動軸の回転数を検知するエンコーダ等よりなるピックアップセンサであり、該伝動軸の回転数を検知することにより車速を検出することができるように構成されている。
【0054】
この制御装置82は、2つの主変速スイッチ89D,89U及び4つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの入切を検出し、6つの変速ソレノイド84A,84B,84C,84D,86L,87Hに電気的な制御信号を出力することにより、主変速装置13,17の変速段数を1〜8速の間で切換える。
【0055】
具体的には、1速クラッチ32Aを接続作動させるとともにその他の変速クラッチ32B,32C,32Dを切断作動させることにより第1主変速装置13の変速段数が「1速」に変速切換され、2速クラッチ32Bを接続作動させるとともにその他の変速クラッチ32A,32C,32Dを切断作動させることにより第1主変速装置13の変速段数が「2速」に変速切換され、3速クラッチ32Cを接続作動させるとともにその他の変速クラッチ32A,32B,32Dを切断作動させることにより第1主変速装置13の変速段数が「3速」に変速切換され、4速クラッチ32Dを接続作動させるとともにその他の変速クラッチ32A,32B,32Cを切断作動させることにより第1主変速装置13の変速段数が「4速」に変速切換される。
【0056】
また、低速クラッチ56Aを接続作動させるとともに高速クラッチ56Bを切断作動させることにより第2主変速装置17の変速段数が「低速」に変速切換され、低速クラッチ56Aを切断作動させるとともに高速クラッチ56Bを接続作動させることにより第2主変速装置17の変速段数が「高速」に変速切換される。
【0057】
主変速装置13,17の変速段数を1速→2速→3速→4速の順に切換える場合、第2主変速装置17を低速に切換えた状態で、第1主変速装置13を1速→2速→3速→4速の順に切換える一方で、主変速装置13,17の変速段数を4速→3速→2速→1速の順に切換える場合、第2主変速装置17を低速に切換えた状態で、第1主変速装置13を4速→3速→2速→1速の順に切換える。
【0058】
また、主変速装置13,17の変速段数を4速から5速に切換える場合は、第2主変速装置17を低速から高速に切換えるとともに第1主変速装置13を4速から1速に切換える一方で、主変速装置の変速段数を5速から4速に切換える場合は、第2主変速装置17を高速から低速に切換えるとともに第1主変速装置13を1速から4速に切換える。
【0059】
さらに、主変速装置13,17の変速段数を5速→6速→7速→8速の順に切換える場合、第2主変速装置17を高速に切換えた状態で、第1主変速装置13を1速→2速→3速→4速の順に切換える一方で、主変速装置13,17の変速段数を8速→7速→6速→5速の順に切換える場合、第2主変速装置17を高速に切換えた状態で、第1主変速装置13を4速→3速→2速→1速の順に切換える。
【0060】
副変速レバー51による副変速装置16の変速切換操作は、変速クラッチ44,46が常時噛合い式であることから、走行機体3を一旦完全に停止させた状態で行う。
【0061】
具体的には、副変速装置16の低速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段数を1〜8速の間で切換え、副変速装置16の中速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段数を9〜16速の間で切換え、副変速装置16の高速切換時におけるシフト操作具76による主変速装置13,17の計8段の変速切換によって本トラクタの走行変速段数を17〜24速段の間で切換える。
【0062】
また、副変速レバー51により副変速装置16の増速操作が行われると主変速装置13,17が最低速段である1速に減速される一方で、副変速レバー51により副変速装置16の減速操作が行われると、主変速装置の最高速段である8速に増速される変速切換制御が制御装置82によって行われる。このため、副変速レバー51による走行変速切換時の車速差が最小限に抑制される。
【0063】
なお、上述の高速発進スイッチ77を押操作した入状態で副変速レバー51により副変速装置16を増速操作すると、主変速装置13,17が最低速段である1速には変速切換えされずに4速や5速等の予め定められた変速段数に切換えられる。これによって、副変速レバー51による走行変速切換時における車速差は大きくなるが、迅速な増速操作が可能になる。
【0064】
図7(A)は、第1主変速装置の変速切換時における各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、(A)の要部を示すグラフである。シフト操作具76による変速切換操作が主変速スイッチ89D,89Uによって検出されると、所定時間を経過後、切換前の変速段数である前段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを切位置に切換作動させて前段の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dから圧油を排出して該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを切断作動させる排出処理を制御部83が行うとともに、切換後の変速段数である次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを入位置に切換作動させて次段の変速クラッチ32A,32B,32C,32D内に圧油を充填する充填処理を制御部83が行う。
【0065】
所定時間(充填時間)が経過して充填処理が完了すると、この次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dの開度を全閉しない程度に一旦絞った後、次段の変速クラッチ32A,32B,32C,32Dが接続し始めるように所定時間(接続時間)待つ接続待機処理を制御部83が行う。この接続待機処理が終了すると、この次段の変速クラッチ32A,32B,32C,32D内の圧力を徐々に上昇させて該変速クラッチ32A,32B,32C,32Dが段階的に接続作動するように、この次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dの開度を徐々に大きくする上述の昇圧制御を行う。
【0066】
この昇圧制御中に、本トラクタが変速後の走行変速段数に対応した車速に達したことが車速センサ94を介して検出されると、制御部83は、この次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dの接続作動がより早く完了するように、該主変速バルブ64A,64B,64C,64Dの単位時間当たりの開度上昇値を増加させる急速接続処理を行う。この急速接続処理によって、主変速装置13,17の変速切換を迅速に行うことが可能になる。
【0067】
図8(A)は、副変速装置の低速時又は中速時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際の処理フロー図である。主変速装置13,17を1〜4速の間又は5〜8速の間で変速する場合には、図7の処理に従う一方で、副変速装置16の低速時又は中速時に主変速装置13,17を4速→5速又は5速→4速に変速する場合には、シフト操作具76による変速切換操作が主変速スイッチ89D,89Uによって検出されると、まず、各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを切位置に切換作動させるとともに、走行変速バルブ69をニュートラル位置に切換作動させる。
【0068】
走行変速バルブ69をニュートラル位置に切換後、圧力スイッチ91が切状態になる第2主変速装置17のニュートラル状態が検出されると、第2主変速装置17が変速後の変速段である次段に変速されるように、走行変速バルブ69の位置を切換作動させる。具体的には、主変速装置を4速から5速に変速させる際には走行変速バルブ69が高速位置に切換えられ、5速から4速に変速させる際には走行変速バルブ69が低速位置に切換えられる。
【0069】
その後、第2主変速装置17が高速又は低速に変速される動力伝動状態に切換わると、圧力スイッチ91が入作動する。この圧力スイッチ91の入状態が検出されると、上述したように、第1主変速装置13に対して、上述の充填処理、接続待機処理、昇圧制御及び急速接続処理が上記順序で行われ、本トラクタの走行変速段数が次段に切換えられる。このような処理によって、変速ショックを低減させることが可能になる。
【0070】
図9(A)は、副変速装置の高速速時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際のフロー図である。副変速装置16の高速時に主変速装置13,17を4速→5速又は5速→4速に変速する場合には、図9に示す処理に従う。
【0071】
詳細を説明すると、シフト操作具76による変速切換操作が主変速スイッチ89D,89Uによって検出されると、まず、各主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを切位置に切換作動させるとともに、走行変速バルブ69をニュートラル位置に切換作動させる。
【0072】
走行変速バルブ69をニュートラル位置に切換後、圧力スイッチ91が切状態になる第2主変速装置17のニュートラル状態が検出されると、第1主変速装置13に対して、変速切換後の走行変速段数である次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを入位置に切換作動させて次段の変速クラッチ32A,32B,32C,32D内に圧油を供給するワンショット出力処理を行う。続いて、第2主変速装置17が変速後の変速段数である次段に変速されるように、走行変速バルブ69の位置を切換作動させる。
【0073】
この走行変速バルブ69の位置を切換作動によって圧力スイッチ91が入状態になる前に、上記次段の主変速バルブ64A,64B,64C,64Dへの出力電流を低く且つ略一定にすることにより該主変速バルブ64A,64B,64C,64Dの開度を絞る低電力出力処理を行う。この際の開度は上述の接続待機処理時よりも小さくなる。その後、圧力スイッチ91の入状態が検出されると、上述した昇圧制御及び急速接続処理が上記順序で行われ、本トラクタの走行変速段数が次段に切換えられる。このような処理によって、高速走行時に特に大きくなる変速ショックを最小限に抑制することが可能になる。
【0074】
図10(A)は、前後進切換装置による前後進切換時に、主変速装置の変速切換によって走行変速切換を行う場合の各機器の作動状態を示すタイムチャート図であり、(B)は、その際のフロー図である。本トラクタの停止時に、前後進レバー68によって前後進切換操作が行われると、後進検出スイッチ88R又は前進検出スイッチ88Fの内で前後進レバー68の揺動側のシャトルスイッチ88R,88F(次シャトルスイッチ88R,88F)が入状態になるとともに前後進切換弁67が前進位置又は後進位置の内で前後進レバー68の揺動側の位置(次位置)に切換えられる。
【0075】
前後進切換弁67の上記切換によって、前後進レバー68の揺動側の変速クラッチ41A,41B(次変速クラッチ41A,41B)に圧油が供給されて該変速クラッチ41A,41Bが接続作動するが、この接続作動の開始から完了までの接続作動時間が経過すると、走行変速バルブ69によって第2主変速装置17が所定の変速段数(図示する例では高速)に切換作動される。この第2主変速装置17の変速切換の完了を圧力スイッチ91により検出すると、第1主変速装置13の対して所定の変速段数(図示する例では1速)で、上述した充填処理、接続待機処理、昇圧制御及び急速接続処理が上記順序で行われる。
【0076】
一方、前後進レバー68によって前後進切換装置14のニュートラル切換操作が行われると、後進検出スイッチ88Rと前進検出スイッチ88Fが共に切状態になる。該切状態を検出されると、制御部83は、主変速バルブ64A,64B,64C,64Dを介して、第1主変速装置13の全ての変速クラッチ32A,32B,32C,32Dを切断作動させ、予め定められた所定時間である接続保持時間の経過を待ち、接続保持時間中にシャトルスイッチ88R,88Fによる前後進レバー68の前後進切換操作が検出されない場合には、走行変速バルブ69をニュートラル位置に切換作動させ、圧力スイッチ91による第2主変速装置17のニュートラル状態を検出して処理を終了させる。
【0077】
また、接続保持時間中にシャトルスイッチ88R,88Fによる前後進レバー68の前後進切換操作が検出された場合には、上記接続作動時間の経過を待って、第1主変速装置13に対して、上記所定の変速段数で、上述した充填処理、接続待機処理、昇圧制御及び急速接続処理の作業を前述した順序で行う。
【0078】
図11(A)は、レバースイッチ異常検出手段の構成を示す状態遷移図であり、(B)は、各レバースイッチの正常時における状態を示す一覧表であり、(C)は、各レバースイッチの異常時における状態を示す一覧表である。レバースイッチ異常検出手段の構成について説明すると、各レバースイッチ87N,87L,87M,87Hの正常動作時には、低速検出スイッチ87L、中速検出スイッチ87M及び高速検出スイッチ87Hの3つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの内で2以上が同時に検出状態にならないように、この3つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hが配置されている。
【0079】
また、各レバースイッチ87N,87L,87M,87Hの正常動作時には、ニュートラル検出スイッチ87Nと、ニュートラル検出スイッチ87N以外の3つのレバースイッチ87L,87M,87Hの何れか1つとが同時に検出作動することがあるように、この3つのレバースイッチ87L,87M,87Hに対して、ニュートラル検出スイッチ87Nが配置されている。ちなみに、4つのレバースイッチ87N,87L,87M,87Hが全て非検出状態である切状態になると、制御部83は、副変速レバー51の変速切換位置を識別することができない。
【0080】
以上のように各レバースイッチ87N,87L,87M,87Hを配置することにより、レバースイッチ異常検出手段を構成している。すなわち、図11に示すように、ニュートラル検出スイッチ87N以外の3つのレバースイッチ87L,87M,87Hの内の2以上が、同時に入作動されて検出状態になる場合が、回路の短絡等が生じた異常状態になる。
【0081】
図12(A)は、シャトルスイッチ異常検出手段の構成を示す状態遷移図であり、(B)は、各シャトルスイッチの正常時における状態を示す一覧表であり、(C)は、各シャトルスイッチの異常時における状態を示す一覧表である。シャトルスイッチ異常検出手段の構成について説明すると、各シャトルスイッチ88N,88R,88Fの正常動作時には、前進検出スイッチ88Fと後進検出スイッチ88Rとが同時に検出状態にならないように両シャトルスイッチ88R,88Fが配置されている。
【0082】
また、各シャトルスイッチ88N,88R,88Fの正常動作時には、ニュートラル検出スイッチ88Nと、前進検出スイッチ88F又は後進検出スイッチ88Rの何れか一方とが同時に検出作動することがあるように、前進検出スイッチ88F及び後進検出スイッチ88Rに対してニュートラル検出スイッチ88Nが配置されている。ちなみに、3つのシャトルスイッチ88N,88R,88Fが全て非検出状態である切状態になると、制御部83は、前後進切換装置14の状態を識別することができない。
【0083】
以上のように各シャトルスイッチ88N,88R,88Fを配置することにより、シャトルスイッチ異常検出手段を構成している。すなわち、図12に示すように、ニュートラル検出スイッチ88N以外の2つのシャトルスイッチ88R,88Fが同時に入作動されて検出状態になる場合が、回路の短絡等が生じた異常状態になる。
【0084】
次に、制御部83による本トラクタの走行変速切換制御について説明する。
図13は、制御部により行われる本トラクタの走行変速切換制御のフロー図である。制御部83は、スイッチ異常処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、前述のレバースイッチ異常検出手段及びシャトルスイッチ異常検出手段によって、レバースイッチ87N,87L,87M,87H及びシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常判定を行い、ステップS2に進む。
【0085】
ステップS2では、ステップS1の判定の結果、シャトルスイッチ88N,88R,88Fに対して異常が判定されたか否かの識別を行い、シャトルスイッチ88N,88R,88Fに正常であれば、ステップS3に進み、シャトルスイッチ88N,88R,88Fが異常であればステップS4に進む。
【0086】
ステップS3では、シャトルスイッチ88N,88R,88Fの検出結果に基づき、上述の内容に従い、制御部83が、変速クラッチ64A,64B,64C,64D,69を介して、主変速装置13,17による走行変速切換処理を行い、ステップS5に進む。ステップS4では、前後進切換装置14が前進状態であると想定して、上述の内容に従い、制御部83が、変速クラッチ64A,64B,64C,64D,69を介して、主変速装置13,17による走行変速切換処理を行い、ステップS5に進む。ちなみに、前後進切換装置14ではニュートラル状態と後進状態と前進状態との内で前進状態になっていることが一番多いため、上記想定を行う。
【0087】
ステップS5では、ステップS1の判定の結果、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hに対して異常が判定されたか否かの識別を行い、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hに正常であればステップS6に進み、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hが異常であればステップS7に進む。
【0088】
ステップS6では、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hの検出結果に基づき、上述の内容に従い、制御部83が、変速クラッチ64A,64B,64C,64D,69を介して、主変速装置13,17による走行変速切換処理を行い、ステップS8に進む。ステップS7では、レバースイッチ87N,87L,87M,87Hの異常が検出される直前の正常動作時のレバースイッチ87N,87L,87M,87Hの検出結果に基づく変速段数を、現在の副変速装置16の変速段数と想定して、上述の内容に従い、制御部83が、変速クラッチ64A,64B,64C,64D,69を介して、主変速装置13,17による走行変速切換処理を行い、ステップS8に進む。なお、ステップS7においては、副変速装置16を予め定められた中速等の変速段数に変速されている状態であると想定して(予め定められた変速切換位置に副変速レバー51が操作されているものと想定して)、ステップS8に処理を進めてもよい。
【0089】
ステップS8では、レバースイッチ異常検出手段及びシャトルスイッチ異常検出手段によって、再度、レバースイッチ87N,87L,87M,87H及びシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常検出を行い、正常であればステップS1に処理を戻すか、このサブルーチンから制御部83が実行しているメインルーチンに処理を戻し、異常であればステップS9に進む。
【0090】
ステップS9では、車速センサ94によって、本トラクタが走行中であるか、停止しているかの検出を行い、走行中であれば、ステップS10に進む。ステップS10では、エンジン回転数検出センサ93を介して検知されたエンジン回転数と、ステップS4によって想定された副変速装置16の変速段数における変速比又はステップS7によって想定された前後進切換装置14の切換状態時の変速比と、から想定される想定車速を算出し、ステップS11に進む。
【0091】
ステップS11では、車速センサ94によって検知される実際の車速である実測車速と、想定車速との比較して、差がある場合にはステップS4又はステップS7の想定が誤っている可能性が高いためステップS12に進む。差が殆ど無い場合にはステップS4又はステップS7の想定が正しい可能性が高いためステップS13に進む。ちなみに、本トラクタでは、前後進切換装置14が前進状態時と後進状態時で、主変速装置13,17及び副変速装置16の変速段数が同一の場合でも、走行変速比が異なるため、上記手段によって、前後進切換装置14の想定切換状態の正誤判別も可能になる。
【0092】
ステップS12では、エンジン回転数検出センサ94から検出されるエンジン回転数及び車速センサ94から検出される車速に基づいて、前後進切換装置14の切換状態又は副変速装置16の変速段数を再度想定し、その再度想定された切換状態又は変速段数に基づき、上述の内容に従い、制御部83が、変速クラッチ64A,64B,64C,64D,69を介して、主変速装置13,17による走行変速切換処理を行い、ステップS13に進む。ちなみに、以後は、この再度想定した変速段数で主変速装置13,17の変速切換制御を行う。
【0093】
ステップS13では、LCD79の変速段数表示部79a及び複数のLED81を点滅させることにより、レバースイッチ87N,87L,87M,87H又はシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常状態をオペレータ等に報知し、ステップS1に処理を戻すか、このサブルーチンから制御部83が実行しているメインルーチンに処理を戻す。本トラクタでは、この報知によってオペレータがレバースイッチ87N,87L,87M,87Hやシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常状態を認識できる。
【0094】
なお、ステップS9において、本トラクタが停止していることが検出されると、ステップS13に処理が進めされる。
【0095】
以上のように構成される本トラクタでは、レバースイッチ87N,87L,87M,87H又はシャトルスイッチ88N,88R,88Fの異常時にも車両走行を続行可能にするために、制御部83によって、前後進切換装置14の切換状態及び副変速装置16の変速段数を想定するにあたり、前後進切換装置14の切換状態の想定及び副変速装置16の変速段数の想定が正しいか否かを、実際に測定された車速とエンジン回転数とを用いて評価し、正しくない場合には変速段数や切換状態を再想定する手段を設けたので、レバースイッチ87N,87L,87M,87H又はシャトルスイッチ88N,88R,88Fに異常が発生した場合でも、従来に比べてより正確に、前後進切換装置14の切換状態及び副変速装置16の変速段数を判別することが可能になる。
【0096】
このため、図7に示すような処理を行うにあたり、制御部83が実際よりも高い変速比に前後進切換装置14や副変速装置16を想定してしまい、本トラクタの車速が目標車速に到達せずに、主変速装置13,17の上述した変速切換処理の完了が遅れるという不具合が防止される。くわえて、副変速装置16が高速であるのに低速や中速に想定してしまい、変速ショックが大きくなってしまう不具合や、逆に、副変速装置16が低速や中速であるのに高速に想定してしまい、主変速装置13,17の変速切換処理の完了が遅くなるとうい不具合も防止できる。
【符号の説明】
【0097】
6 エンジン
13 第1主変速装置(主変速装置)
16 副変速装置
17 第2主変速装置(主変速装置)
32A 1速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
32B 2速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
32C 3速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
32D 4速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
51 副変速レバー
56A 低速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
56B 高速クラッチ(油圧クラッチ,変速クラッチ)
64A 1速バルブ(電磁弁,電磁比例弁,主変速バルブ,変速バルブ)
64B 2速バルブ(電磁弁,電磁比例弁,主変速バルブ,変速バルブ)
64C 3速バルブ(電磁弁,電磁比例弁,主変速バルブ,変速バルブ)
64D 4速バルブ(電磁弁,電磁比例弁,主変速バルブ,変速バルブ)
69 走行変速バルブ(電磁方向切換弁,電磁弁,変速バルブ)
87N ニュートラル検出スイッチ(レバースイッチ)
87L 低速検出スイッチ(レバースイッチ)
87M 中速検出スイッチ(レバースイッチ)
87H 高速検出スイッチ(レバースイッチ)
93 エンジン回転数検出センサ(回転数検出手段)
94 車速センサ(車速検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁(64A),(64B),(64C),(64D),(69)により入切される油圧クラッチ(32A),(32B),(32C),(32D),(56A),(56B)によって走行変速切換が行われる主変速装置(13),(17)と、副変速レバー(51)の揺動操作によって走行変速切換が行われる副変速装置(16)と、副変速レバー(51)による変速切換位置を検出するレバースイッチ(87N),(87L),(87M),(87H)とを備え、レバースイッチ(87N),(87L),(87M),(87H)の異常を検出する異常検出手段を設け、制御部(83)がレバースイッチ(87N),(87L),(87M),(87H)の検出結果に基づいて副変速装置(16)の変速状態を検知するとともに電磁弁(64A),(64B),(64C),(64D),(69)を介して主変速装置(13),(17)の変速切換を制御する作業車両において、エンジン(6)の回転数を検出する回転数検出手段(93)及び車速を検出する車速検出手段(94)を設け、走行中に異常検出手段によってレバースイッチ(87N),(87L),(87M),(87H)の異常を検出した場合には異常検出前に検出されていたレバースイッチ(87N),(87L),(87M),(87H)による変速切換位置に基づき副変速装置(16)の変速段数を想定するか又は予め定められた位置に副変速レバー(51)が操作されているものとして副変速装置(51)の変速段数を想定して主変速装置(13),(17)の変速切換を行い、その後、回転数検出手段(93)による検出結果及び上記想定された変速段数から算出される車速と、車速検出手段(94)により検出される車速とを比較して両者に隔たりがある場合には、想定されていた上記副変速装置(16)の変速段数を車速検出手段(94)の検出結果に基づいて再度想定しなおして、以後の主変速装置(13),(17)の変速切換制御を行うように制御部(83)を構成した作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−210053(P2010−210053A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58964(P2009−58964)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】