説明

作業車両

【課題】作業者に負担を掛けないで、ブレーキペダルの連結と非連結を容易に切り替え可能であり、作業条件に合わせた操作が行える作業車両の提供である。
【解決手段】エンジンと前輪と後輪と苗植付部と左右のサイドクラッチと左右のサイドブレーキと左右のサイドクラッチ及び左右のサイドブレーキを操作可能な左右のブレーキペダル130と副変速レバーと副変速レバーセンサとを設けた走行車両に、左右のブレーキペダル130を連結又は非連結に切り替える切替装置140と、副変速レバーが高速時に切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130を連結させる制御装置とを設ける。高速の直進走行時には、左右のブレーキペダル130が連結するため、停止操作が容易に行える。一方、低速時には、左右のブレーキペダル130が連結しないため、作業条件に合わせた操作が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや苗移植機などの作業車両のブレーキ操作機構に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタなどの作業車両のブレーキ操作機構として、駐車ブレーキの制動操作並びに駐車ブレーキペダルの踏み方に関係なく、駐車ブレーキペダルの踏み面を踏むだけで制動操作が行え、制動解除するときも制動状態にある駐車ブレーキペダルを再度踏み込み操作した後、戻すだけで制動解除できる構成がある(下記特許文献1)。
【0003】
具体的には、左右のサイドブレーキが制動解除されている状態で駐車ブレーキペダルの踏み面を下方に踏み込み操作すると左右のサイドブレーキが制動状態となり、このサイドブレーキの制動状態から駐車ブレーキペダルの踏み面を再度踏み込み操作することで制動状態にあるサイドブレーキが制動解除される機構を備えている。左右のサイドブレーキペダルは係合ロック部材で係合し、左右双方のサイドブレーキペダルを同時に踏み込み操作することで左右のサイドブレーキを同時に制動状態に操作できる。
【0004】
また、苗移植機などの作業車両では、左右の操向用ブレーキペダルを連動杆で連結し一体的にして、走行停止のブレーキとして使用している(下記特許文献2)。
そして、特許文献1及び特許文献2に示す農作業機の作業車両は、左右のサイドクラッチ及びサイドブレーキを操作する左右のブレーキペダルを設けており、作業条件に応じて左右のサイドブレーキペダルの連結と非連結を切り替えて左右連動及び左右独立した操作が可能な構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−268747号公報
【特許文献2】特開2009−190616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、農作業機などの作業車両が路上等の高速で走行する場合や、圃場の出入口、輸送車両への積込経路等の傾斜地を走行する場合に、左右のブレーキペダルの連結を忘れて左右独立して操作できる状態であると、左右どちらかのブレーキペダルを踏んだ際に左又は右方向に機体が急旋回してしまい、作業者の意図しない方向に機体が走行してしまうという問題がある。
【0007】
また、圃場で作業を行う際に、左右のブレーキペダルの連結を解除することを忘れていると、作業車両が圃場端で旋回する際に左右どちらかのブレーキペダルを踏むと走行が停止してしまい、作業者が意図した旋回動作ができず、圃場端を荒らしてしまったり、旋回の終了位置が作業者の意図した位置から離れてしまったりするという問題がある。
左右のブレーキペダルの連結は、作業状態に合わせて作業者が手作業で行うため、忘れられることが多い。
【0008】
本発明の課題は、作業者に負担を掛けないで、左右のブレーキペダルの連結と非連結を容易に切り替え可能であり、作業条件に合わせた操作が行える作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する左右一対の走行装置(10,11)と、該走行装置(10,11)を備えた車体(2)と、該車体(2)の後部に上下動自在に設けられ、圃場に苗を植え付ける作業部(4)と、前記エンジン(20)から前記走行車体(2)への伝動を入り切りする左右のサイドクラッチ(I,I)と、前記走行車体(2)の左右のサイドブレーキ(J,J)と、前記左右のサイドクラッチ(I,I)及び前記左右のサイドブレーキ(J,J)を操作可能な左右のブレーキペダル(130,130)と、前記走行装置(10,11)の速度を高速側と低速側の複数の変速位置に操作可能な変速レバー(16)と、該変速レバー(16)の操作位置を検出する変速レバー検出手段(165)とを設けた走行車両において、前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結して連動させる連結状態と連動させない非連結状態とに切り替える切替装置(140)と、前記変速レバー検出手段(165)により検出される位置が高速側の場合に前記切替装置(140)を作動して左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする変速レバー切替機能を有する制御装置(100)とを設けた走行車両である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記左右のブレーキペダル(130,130)に、左右のブレーキペダル(130,130)間の距離を検出するブレーキペダル位置検出手段(133)を設け、前記制御装置(100)は、前記ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値以下の場合は、前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にするブレーキペダル切替機能を有する請求項1記載の作業車両である。
【0011】
請求項3記載の発明は、聴覚又は視覚によって報知可能な報知手段(145,147)を設け、前記制御装置(100)は、前記ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値を超えており、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合は、ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値以下となるまで前記報知手段(145,147)を作動させる報知機能を有する請求項2記載の作業車両である。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記車体(2)に、圃場の水平面に対する車体(2)の前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜検出手段(151)を設け、前記制御装置(100)は、前記前後傾斜検出手段(151)により検出される傾斜角度が所定角度以上になると、前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする前後傾斜切替機能を有する請求項1又は2記載の作業車両である。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記走行装置(10,11)は左右一対の前輪(10,10)と左右一対の後輪(11,11)からなり、該左右一対の後輪(11,11)の回転数を検出する後輪回転数検出手段(153)を設け、前記制御装置(100)は、前記後輪回転数検出手段(153)により検出される所定時間の回転数から走行速度を算出し、該算出される走行速度が所定速度以上になると前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする走行速度切替機能を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の作業車両である。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記車体(2)上に走行装置(10,11)の操向手段(34)を設け、該操向手段(34)による操向角度を検出する操向角度検出手段(157)を設け、前記制御装置(100)は、操向角度検出手段(157)により検出される操向角度が所定角度未満の場合は、作業車両が直進状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする一方、操向角度検出手段(157)により検出される操向角度が所定角度以上の場合は、作業車両が旋回状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を非連結状態にする操向角度切替機能を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の作業車両である。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記作業部(4)の作業状態における最下げ位置からの高さを検出する高さ検出手段(160)を設け、前記走行装置(10,11)に走行距離を検出する走行距離検出手段(153)を設け、前記高さ検出手段(160)により前記作業部(4)の高さが所定高さ以上であることが検出され、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合、又は前記高さ検出手段(160)により前記作業部(4)の高さが所定高さ以上であることが検出され、前記走行距離検出手段(153)によって走行距離が所定距離以上であることが検出された場合は、前記制御装置(100)は、前記作業部(4)が非作業状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする作業部切替機能を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の作業車両である。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記切替装置(140)を前記左右のブレーキペダル(130,130)に設けた電磁石(142)によって構成し、前記制御装置(100)は、前記電磁石(142)に通電することで前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする一方、前記電磁石(142)への通電を停止することで前記左右のブレーキペダル(130,130)を非連結状態にする電磁石切替機能を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の作業車両である。
なお、本明細書では作業車両の前進方向に向かって左右の方向をそれぞれ左、右という。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、変速レバー(16)の操作位置が高速側に操作されると切替装置(140)によって左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態となることにより、作業車両が高速で直進走行する際に、左右のブレーキペダル(130,130)のどちらを踏んでも左右のサイドブレーキ(J,J)及びサイドクラッチ(I,I)が操作されるので、機体が右方向又は左方向に急旋回することが防止され、機体の停止操作が容易に行える。
【0018】
また、変速レバー(16)の操作位置が高速側に操作されない場合は、切替装置(140)によって左右のブレーキペダル(130,130)が非連結状態となることにより、作業車両が圃場端で旋回するときに左右どちらかのブレーキペダル(130)を踏んで左右どちらかのサイドブレーキ(J,J)及びサイドクラッチ(I,I)を操作することで、旋回距離や旋回軌跡を変更することができる。したがって、圃場の形状や土質などの作業条件に合わせた操作が行えるため、旋回後の作業開始位置を隣接条に合わせやすく、作業精度が向上する。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値以下の場合、すなわち左右のブレーキペダル(130,130)が隣り合っていることを検出すると左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態になることにより、左右どちらか一方のブレーキペダル(130)が操作されたままの状態で左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態になることを防止できるので、作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、操作性が向上する。
【0020】
そして、左右のブレーキペダル(130,130)の隣接が検出され、変速レバー(16)の操作位置が高速側に操作されると左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態になる。したがって、左右のブレーキペダル(130,130)が隣り合っている場合は左右のブレーキペダル(130,130)のどちらを踏んでも左右のサイドクラッチ(I,I)及びサイドブレーキ(J,J)を操作することができるので、機体の停止操作が容易且つ確実に行える。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値を超えており、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合は、報知手段(145,147)が作動することで、左右のブレーキペダル(130,130)のどちらか一方が操作された状態になっていることを作業者に確実に気付かせることができる。したがって、作業車両の路上走行前に作業者が左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にし忘れることが防止される。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、前後傾斜検出手段(151)により車体(2)の所定角度以上の前後方向の傾斜が検出されると、左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態に切り替えられることにより、作業車両が圃場の出入口を移動する際や輸送車両に積み込む際に左右のブレーキペダル(130,130)を確実に連結しておくことができるので、前後に傾斜している状態における左右のブレーキペダル(130,130)の誤操作が防止され、作業能率が向上する。
【0023】
圃場作業において、大幅に車体(2)が前後に傾斜するのは圃場の出入口の坂道や、トラックの荷台に積み込むための搬送ステップなどで走行するときであるが、このときは基本的に直進走行しかしない。したがって、左右のブレーキペダル(130,130)が別々に操作できてしまうと、左右どちらかに旋回してしまうが、このようなことを防止できる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、作業車両の走行速度が所定速度以上になると左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態に切り替えられることにより、高速走行中は左右のブレーキペダル(130,130)を確実に連動させることができるので、作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、作業車両の操作性が向上する。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項1から5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、操向手段(34)による操向角度が所定角度未満(直進状態)であれば左右のブレーキペダル(130,130)が連結状態になる一方、操向手段(34)による操向角度が所定角度以上(旋回状態)であれば左右のブレーキペダル(130,130)が非連結状態になることで、作業車両が直進しながら作業を行うときに左右のブレーキペダル(130,130)を踏んでも作業者が意図しない旋回動作をすることを防止できるので、機体の走行が略直線状になり、作業精度が向上する。
【0026】
また、作業車両の旋回中では、制御装置(100)は左右のブレーキペダル(130,130)の操作をそれぞれ独立して受け付けるため、作業者による左右のブレーキペダル(130,130)の操作によって作業車両が圃場端で旋回する際の旋回距離や旋回軌跡を変更することができる。したがって、圃場の形状や土質などの作業条件に合わせた操作が行え、旋回後の作業開始位置を隣接条に合わせやすくなり、作業精度が向上する。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、上記請求項1から6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、作業部(4)が所定高さ以上に上昇した状態で所定時間が経過した場合、又は作業部(4)が所定高さ以上に上昇した状態で作業車両が所定距離を走行した場合は、制御装置(100)によって非作業状態(植付を行なわない状態)であると判断して左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態に切り替えるため、作業部(4)が上昇した状態で作業車両が走行する際に左右のブレーキペダル(130,130)を確実に連動させることができるので、作業車両の非作業状態において作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、作業車両の操作性が向上する。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、上記請求項1から7のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、制御装置(100)からの電磁石(142)への電気信号で左右のブレーキペダル(130,130)の連結及び非連結を切り替えることができるので、左右のブレーキペダル(130,130)の連結操作が自動化され、作業能率が向上する。
【0029】
また、作業者が手作業で左右のブレーキペダル(130,130)を連結する連結部材を操作する必要がないため、作業者の労力が軽減されると共に、左右のブレーキペダル(130,130)を連結し忘れることや連結を解除し忘れることが防止され、作業車両の操作性や作業精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の乗用型苗移植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型苗移植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型苗移植機の伝動機構図である。
【図4】図1の乗用型苗移植機のミッションケースのサイドクラッチとサイドブレーキ部分の断面図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】図1の乗用型苗移植機の左右のブレーキペダルの平面図(図6(a))と図6(a)のS−S線矢視図(図6(b)、図6(c))である。
【図7】図1の乗用型苗移植機の制御装置のブロック図である。
【図8】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図9】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図10】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図11】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図12】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図13】図1の乗用型苗移植機の制御装置によるフローの一例を示した図である。
【図14】図1の乗用型苗移植機の操縦席の側面図である。
【図15】図1の乗用型苗移植機の操縦席の側面図の他の例である。
【図16】図1の乗用型苗移植機の操縦席の側面図及び背面図の他の例である。
【図17】図1の乗用型苗移植機の操縦席の側面図及び背面図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は作業車両の一実施例形態である乗用型苗移植機の側面図及び平面図である。この乗用型苗移植機1は、車体フレーム2の後側に昇降リンク装置3を介して作業部としての苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0032】
この乗用型苗移植機1は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸10a,10aに左右前輪10,10が各々取り付けられている。
また、車体フレーム2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、車体フレーム2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0033】
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギアケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11a,11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0034】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内の主変速装置及び副変速装置により変速された後、走行動力と外部取り出し軸に分離して取り出される。
【0035】
エンジン20からHST23を介して走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、車体フレーム2の後部に設けた植付クラッチケース(図示せず)に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0036】
エンジン20の上部には操縦席31が設置されており、操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリアステップ36となっている。
また、車体フレーム2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38を設けても良い。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。
【0037】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0038】
左右一対の線引きマーカ苗植付部4は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト54,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次工程における機体の進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0039】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロート傾斜角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0040】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。整地ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0041】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0042】
図3には、図1の乗用型苗移植機1の伝動機構図を示し、図4には、図1に示す乗用型苗移植機1のミッションケース12のサイドクラッチとサイドブレーキ部分の断面図を示す。また、図5には図4の一部拡大図を示す。
【0043】
エンジン20の回転動力は油圧式無段変速装置(HST)23から主変速装置(図示せず)、副変速装置(図示せず)等の変速装置に伝達される。
【0044】
そして、ミッションケース12内の後部には、リアアクスル105、105(図3)とフロントアクスル107,107が支承されている。HST23の出力軸に軸着された出力ギアBに副変速ギア機構Cを構成するギアの一つが噛み合い、副変速ギア機構Cと伝動ギアDが噛み合い、この伝動ギアDがフロントアクスル107,107に軸着された入力ギアEと噛み合うことにより、フロントアクスル107,107を介して前輪車軸10a,10aが回転し、前輪10,10が回転する。
【0045】
そして、フロントアクスル107,107には左右の出力ベベルギアが軸着されており、この出力ベベルギアと噛み合う入力ベベルギアを、サイドクラッチ軸76,76に軸着している。さらに、サイドクラッチ軸76,76後端部のリア出力軸109,109を左右の後輪入力軸103,103の前端部に接続している。また、後輪駆動軸103,103の後端部には後部出力ベベルギアが装着されており、この後部出力ベベルギアに、リアアクスル105,105の一側に装着した後部入力ベベルギアを噛み合わせ、他側に出力スパーギアを装着し、この出力スパーギアに後輪車軸11a,11aに装着した入力スパーギアを噛み合わせることにより、後輪11,11に駆動力が伝動される。
【0046】
サイドクラッチ軸76、76からはリア出力軸109,109にサイドクラッチI,Iを介して伝動される。サイドクラッチIは多板クラッチであり、摩擦板111を備えている。板ばね113によって摩擦板111を押し付ける方向に付勢されており(バネ113によってクラッチ・ブレーキケース116が機体前側に押されることにより、摩擦板111が押される構造)、常時はサイドクラッチIが入った状態(動力が伝わる状態)となっている。
【0047】
クラッチ側のシム115が矢印X方向に移動すると、クラッチ・ブレーキケース116も矢印X方向に移動するが、サイドクラッチIと板ばね113との間に設けた固定板114(不動である)の位置はそのままであるため、板ばね113は固定部材により圧縮される。一方、摩擦板111は板ばね113による圧着が解かれ、係合が解かれてサイドクラッチIが切れる(動力が遮断した状態)。
【0048】
更に、リア出力軸109,109にはサイドブレーキJ,Jが設けられている。サイドブレーキJは、リア出力軸109に取り付けたディスク118を押し付けて制動するものであり、この作動はブレーキ側のシム117が作動することで行われる。すなわち、常時はサイドクラッチIが入で、サイドブレーキJが掛かっていない(切り)状態であり、クラッチ側のシム115が矢印X方向に移動して板ばね113を圧縮させるとサイドクラッチIが切れ、更にブレーキ側のシム117がディスク118に当たりディスク118を押すことでサイドブレーキJが掛かる(入りになる)。
【0049】
そして、サイドクラッチI,IとサイドブレーキJ,Jの入り切り操作は、フロアステップ35上に設けた左右のブレーキペダル130(図1)によって行う。
ブレーキペダル130を踏んでいない通常の走行時には、設定された走行速度で機体は走行する。
【0050】
そして、ブレーキペダル130を踏むとブレーキペダル130に連結するブレーキアーム120が作動する。なお、ブレーキアーム120は図6に示すブレーキペダルアーム132とは異なる部材で、ブレーキペダル130から位置が離れている。ブレーキペダル130からブレーキアーム120までの連結機構は複雑なため図示を省略している。
【0051】
ブレーキペダル130を踏み込んで、ブレーキアーム120がA段階まで操作され機体前側に回動すると半月状のブレーキアーム軸122も回転してブレーキアーム軸122の平面部がシム115の左右一側を押してX方向(機体後側)に移動させることで(基準点Oから点線A1まで移動)、サイドクラッチIが切れる。サイドクラッチIが切れることで後輪11に駆動力が伝わらなくなり、左右どちらか一方のサイドクラッチIだけが切りであれば旋回走行となり、両方のサイドクラッチI,Iが同時に切りであれば慣性駆動の後に停止する。乗用型苗移植機1の場合は、低速で走行するため、比較的短い距離で止まるが、このときサイドブレーキJは切りであるため、サイドブレーキJによる制動作用はない。
【0052】
更にブレーキペダル130を踏み込んでブレーキアーム120がB段階まで操作されると、クラッチ側のシム115が点線B1まで移動して、ブレーキ側のシム117がディスク118を押すことでサイドブレーキJが掛かる。このときサイドクラッチIは切り、サイドブレーキJは入りとなって、後輪11の回転が強制的に停止することから、左右どちらか一方のサイドブレーキJを操作した場合は、より機体の急旋回が可能となり、両方のサイドブレーキJ,Jが同時に入りであればほぼその場で停止する。
【0053】
図6(a)には、左右のブレーキペダル130,130の平面図(操縦席31に座って上から見た場合の図)を示す。また、図6(b)及び図6(c)には図6(a)の矢印S−S線矢視図を示し、図7には、乗用型苗移植機1の制御装置(CPU)100のブロック図を示す。なお、図6(c)の停止位置とはブレーキペダル130を踏んで車両が停止するときのペダル130の位置であり、この図では右側のブレーキペダル130が踏まれており、左側のブレーキペダル130を踏んで左右位置を合わせる必要がある状態を示している。
【0054】
そして、本実施形態の乗用型苗移植機1は、左右のブレーキペダル130を連結して連動させる連結状態と左右のブレーキペダル130が連動しない非連結状態とに切り替える切替装置140を設けている。
この切替装置140は左右のブレーキペダル130,130に設けた電磁石142によって構成されており、具体的には電磁石142は左右のブレーキペダルアーム132,132のいずれかに、ピン135などの固定具によって取り付けられている。
【0055】
制御装置(CPU)100は、電磁石142に通電して左右のブレーキペダル130,130が隣り合って連動する連結状態にする一方、電磁石142への通電を停止して左右のブレーキペダル130,130が離れて連動しない非連結状態にする電磁石切替機能を有する。
【0056】
図6に示すように、左のブレーキペダルアーム132,132の右側に電磁石142を取り付ける。ピン135の先端部は左のブレーキペダルアーム132を突き抜けて電磁石142に嵌入している。制御装置100によって電磁石142に通電されると、電磁石142は右のブレーキペダルアーム132に接着する。図示例では、左のブレーキペダルアーム132に電磁石142を取り付けた場合を示しているが、右のブレーキペダルアーム132に取り付けても良い。
【0057】
通常、左右のブレーキペダル130,130はプレートなどのブレーキ連結部材によって連結されており、作業者がプレートを取り付けたり外したりすることによって左右のブレーキペダル130,130を連結状態又は非連結状態にしている。しかし、作業者がこのプレートの操作を忘れることがある。
【0058】
プレートを連結する操作を忘れていた場合に、乗用型苗移植機1の路上走行(非作業走行)時において、左右一方のブレーキペダル130を踏むと(片ブレーキとも言う)、機体が左又は右方向に急旋回する場合があり、作業者の意図しない方向に機体が走行してしまうという問題がある。
【0059】
また、圃場で作業を行う際にブレーキペダル130の連結を解除する(非連結とする)ことを忘れていると、乗用型苗移植機1が圃場端で旋回する際に左右のブレーキペダル130,130を踏むと走行が停止してしまい、作業者が意図した旋回動作ができず、圃場端を荒らしてしまったり、旋回の終了位置が作業者の意図した位置から離れてしまったりするという問題がある。
【0060】
しかし、本構成によれば、左右のブレーキペダル130,130の切替装置140が電磁石142により構成されることから、制御装置100からの電磁石142への電気信号で左右のブレーキペダル130,130の連結及び非連結を切り替えることができるので、左右のブレーキペダル130,130の連結操作が自動化され、作業能率が向上する。
【0061】
したがって、作業者に負担を掛けないで、左右のブレーキペダル130,130の連結と非連結を容易に切り替え可能であり、作業条件に合わせた操作が行える。
なお、作業車両の例としては、トラクタ(耕耘機)、管理機(防除機、薬剤散布機)、田植機などが挙げられる。作業走行や路上走行に適した左右のブレーキペダル130,130の連結と非連結の切り替えが自動的に、且つ容易に行うことができる。
【0062】
操縦席31の近傍には、副変速レバー16(図1)が設けられ、副変速レバー16はレバーガイド(図示せず)に沿って回動操作することにより、副変速装置が「路上走行速」、「高速」、「中立」、「低速」の何れかに手動で切り換わるように構成されている。なお、路上走行速、高速、低速の順に速度が低下する。そして、副変速レバー16の基部側に設けた副変速レバーセンサ(レバーの操作角度を検出するポテンショメータなど)165によって副変速レバー12の操作位置を検出することができる。
【0063】
例えば、副変速レバーセンサ165により検出される操作位置が高速側の路上走行速の場合に、切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする副変速レバー切替機能を制御装置100に設けると良い。
【0064】
図8には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
副変速レバー16の操作位置が路上走行速に操作されると左右のブレーキペダル130,130が連結状態となることにより、乗用型苗移植機1が高速で直進走行する際に、左右のブレーキペダル130,130のどちらを踏んでも左右のサイドブレーキJ,J及び左右のサイドクラッチI,Iが操作されるので、機体が右方向又は左方向に急旋回することが防止され、機体の停止操作が容易に行える。
【0065】
また、副変速レバー16の操作位置が路上走行速でない場合、即ち圃場内で苗を植え付けながら走行する作業走行速である場合は、直進走行操作の微調整や、圃場端での旋回操作時の微調整に左右のブレーキペダル130,130を独立して使用する頻度が高いため、切替装置140が作動して左右のブレーキペダル130,130を非連結状態とすることにより、乗用型苗移植機1が圃場端で旋回するときに左右どちらかのブレーキペダル130を踏んで左右どちらかのサイドブレーキJ及びサイドクラッチIを操作することで、旋回距離や旋回軌跡を変更することができる。したがって、圃場の形状や土質などの作業条件に合わせた操作が行えるため、旋回後の作業開始位置を隣接条に合わせやすく作業精度が向上する。
【0066】
なお、副変速レバー16の操作位置が高速と路上走行速の場合に左右のブレーキペダル130,130を連結状態とし、副変速レバー16の操作位置が低速の場合に左右のブレーキペダル130,130を非連結状態としても良い。作業者によっては路上走行の場合でも路上走行速にせず、作業走行速の高速で操作する場合もある。また、このように左右のブレーキペダル130,130を連結(又は非連結)とする操作位置の基準、境界を選択可能とすると、作業者が好む操作の範囲が広がるため、操作性が向上する。
【0067】
また、左右のブレーキペダル130,130の下部に左右のブレーキペダル130,130間の距離を検出する接近センサ133(ブレーキペダル位置検出手段)を設け、接近センサ133により検出される距離が所定値以下の場合、すなわち左右のブレーキペダル130,130が同位置にある時(隣り合っている場合)に接近センサ133が感知して左右のブレーキペダル130,130を連結するブレーキペダル切替機能を制御装置100に設けても良い。
【0068】
接近センサ133によって左右のブレーキペダル130,130が隣り合っていることを検出すると、制御装置100は切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態とする。
本構成により、左右どちらか一方のブレーキペダル130が操作されたままの状態で左右のブレーキペダル130,130が連結状態になることを防止できるので、作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、操作性が向上する。
【0069】
田植を終えて圃場から出てくる場合、作業走行速から路上走行速に走行を停止することなく変更操作することは、普通はしないため、一旦圃場から出た位置で停止し、路上走行速に切り替えて発進する際に、左右どちらかのブレーキペダル130がサイドブレーキJを利かせて、機体が左又は右に旋回することを防止する。
【0070】
接近センサ133は僅かのずれでも検出するため、接近センサ133によって左右のブレーキペダル130,130の隣接が検出されないということは、左右のブレーキペダル130,130の位置が多少ずれており、その場合ブレーキペダル130,130は連結せず、サイドブレーキJが効き得る。したがって、左右のサイドブレーキの効き具合がまったく同じになるポジションでのみ、左右のブレーキペダル130,130が連結する。作業者は、接近センサ133によって左右のブレーキペダル130,130の隣接が検出されない場合、走行を停止した上で左右のブレーキペダル130,130を軽く踏んで左右の位置を揃える必要がある。
【0071】
また、左右のブレーキペダル130,130が隣り合っている場合は左右のブレーキペダル130,130のどちらを踏んでも左右のサイドクラッチI,I及びサイドブレーキJ,Jを操作することができるので、機体の停止操作が容易且つ確実に行える。
【0072】
そして、接近センサ133により検出される距離が所定値を超えていると左右のブレーキペダル130,130は非連結状態であるが、その非連結状態が所定時間(例えば、20秒など)を超えて継続している場合は聴覚又は視覚によって報知可能な報知手段が作動する報知機能を制御装置100に設けても良い。
【0073】
なお、所定時間を超えて、作業中に左右どちらか一方のブレーキペダル130が利き続けるという事態はあまりなく、そうなる場合として考えられるのは、作業者が左右のブレーキペダル130,130が連結状態であると思い込んでブレーキペダル130を踏んでいるのか(実際にはごく僅かにずれていて、左右どちらかに微妙にずれて前進している)、ブレーキペダル130,130が故障している場合である。このような異常な状態であることを報知するために、警告ブザー145を設ける。
【0074】
報知手段としては、警告ブザー145などの音声によるものでも良いし、モニター147等に表示させるものでも良い。また、これらを併用しても良い。例えば、図7には、警告ブザー145のマークやモニター147の表示例(四角が左右のブレーキペダルを示しており、バツはそれらが非連結である状態を示す)を示している。
【0075】
接近センサ133により検出される左右のブレーキペダル130,130間の距離が所定値を超えており、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合は、警告ブザー145などの報知手段が作動することで、左右のブレーキペダル130,130のどちらか一方が操作された状態になっていることを作業者に確実に気付かせることができる。したがって、乗用型苗移植機1の路上走行前に左右のブレーキペダル130,130を連結状態にし忘れることが防止される。
【0076】
そして、接近センサ133により検出される距離が所定値以下となるまで警告ブザー145などの報知手段を作動させることで、左右のブレーキペダル130,130が調整不良である場合、又は作業者が左右一方のブレーキペダル130を踏み続けた場合に自動的に連結状態になることを防止できる。
【0077】
図9には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
接近センサ133により検出される左右のブレーキペダル130,130間の距離が所定値以下でない場合は、左右のブレーキペダル130,130の連結状態が無効となり(非連結状態)、その状態が所定時間を超えて継続している場合は、制御装置100によって警告ブザー145が作動する。そして、接近センサ133により検出される左右のブレーキペダル130,130間の距離が所定値以下になると、警告ブザー145が鳴り止む。
【0078】
本構成により、作業者は左右のブレーキペダル130,130が隣り合っていないことを即座に判断できるため、乗用型苗移植機1の路上走行前に左右のブレーキペダル130,130を連結状態にし忘れることはない。したがって、作業性や安全性が向上する。
【0079】
また、車体フレーム2に、圃場の水平面(水準器による水平)に対する前後方向の傾斜角度を検出するピッチングセンサ151(前後傾斜検出手段)を設け、ピッチングセンサ151により検出される傾斜角度が所定角度以上になると、切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする前後傾斜切替機能を制御装置100に設けても良い。
【0080】
ピッチングセンサ151により機体の所定角度以上の前後方向の傾斜が検出されると、制御装置100により左右のブレーキペダル130,130が連結状態になることで、乗用型苗移植機1が圃場の出入口を移動する際や輸送車両に積み込む際に左右のブレーキペダル130,130を確実に連結しておくことができる。したがって、前後に傾斜している状態における左右のブレーキペダル130,130の誤操作が防止され、作業能率が向上する。
【0081】
傾斜地で左右のブレーキペダル130,130のうち一方だけが操作されると、直進走行の姿勢が乱れてしまい、傾斜地を上る時間がいっそうかかってしまう。特に、圃場から出る場合は、圃場に入る際に通った箇所の轍を参考に移動することが多いが、ブレーキペダル130,130の左右どちらか一方が効いてしまうと、この轍から離れてしまい、上りにくくなる。
【0082】
図10には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
例えば、ピッチングセンサ151により車体フレーム2が5度(±5度)以上の傾斜を感知すると、制御装置100によって自動的に左右のブレーキペダル130,130が連結する。
【0083】
乗用型苗移植機1を輸送車両に積み込む時や降ろす時などに、左右のブレーキペダル130,130を確実に連結しておくことで、安全性が向上する。また、ピッチングセンサ151により検出される車体フレーム2の前後方向傾斜角度が所定角度未満である場合は、左右のブレーキペダル130,130が非連結状態であるため、乗用型苗移植機1の旋回時に機体が傾くことのない角度で制御できる。したがって、圃場や路上状態に適した操作が可能となる。
【0084】
また、後輪11,11の回転数(rpm)を検出する後輪回転数センサ153(後輪回転数検出手段)を後輪ギアケース18,18に駆動力を伝動する後輪入力軸103,103の前側部103a(図1、図2)に設け、後輪回転数センサ153により検出される所定時間の回転数から走行速度を算出し、この算出される走行速度が所定速度以上になると切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする走行速度切替機能を制御装置100に設けても良い。
【0085】
図11には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
例えば、乗用型苗移植機1の走行速度が8.6km/h以上である場合に、左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする。この場合に後輪回転数センサ153により、乗用型苗移植機1の走行速度が10km/hであることが検出されると、この速度は8.6km/h以上であるため、制御装置100によって左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする。
【0086】
乗用型苗移植機1の走行速度が一定以上の場合は、圃場で走行不可な速度である場合が考えられることから、制御装置100によって路上走行であると認識し、左右のブレーキペダル130,130を連結させる。
本構成により、乗用型苗移植機1の高速走行中は左右のブレーキペダル130,130を確実に連動させることができるので、作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、乗用型苗移植機1の操作性が向上する。
【0087】
また、運転席11近傍の各種スイッチ類の中に、切替装置スイッチ155を設け、このスイッチ操作によって切替装置140を作動させても良い。
【0088】
切替装置スイッチ155は、湿田で作業をする際に作業者が操作できるスイッチである。切替装置スイッチ155を押すと電磁石142への通電が行われず磁力を失われ、切替装置スイッチ155を切ると電磁石142への通電が行われて帯磁される。湿田の場合、泥が車輪にまとわり付くため、ハンドル34による操舵が妨げられやすく、直進操作が行いにくくなる。このため、左右のブレーキペダル130,130の連結を切り、サイドブレーキJの入切により微調整を行う必要がある。
【0089】
一方、ぬかるみにくい土質の圃場では、ハンドル34による操舵をほぼそのままに受け付けるので、左右のブレーキペダル130,130を連結しておき、停止する際に間違って若干左か右に旋回してしまうことを防止する。
なお、湿田であるか否かの判断は機体に設けたセンサ等で行うのではなく、作業者が行う。作業者は大抵自分の持っている圃場の性質を把握しているので、操作を任せることができる。
【0090】
本構成により、スイッチ操作によって左右のブレーキペダル130,130の連結と非連結を切り替えることができるため、作業者が手作業で切り替えを行う必要がなく、作業者の負担が軽減される。
【0091】
また、前輪10,10を操向操作するハンドル34の操向角度を検出する切れ角センサ157(操向角度検出手段)を設け、この切れ角センサ157により検出される操向角度が所定角度(例えば90〜150度)未満の場合は、乗用型苗移植機1が直進状態(非旋回状態)であると判断して切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にすると共に、切れ角センサ157により検出される操向角度が所定角度以上の場合は、乗用型苗移植機1が旋回状態であると判断して切替装置140を作動して左右のブレーキペダルを非連結状態にする操向角度切替機能を制御装置100に設けても良い。
切れ角センサ157は、ハンドル34の中心線からの角度を検知するものであり、ポテンショメータ等で良い。
【0092】
図12には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
ハンドル34の操向角度が所定角度未満(直進状態)であれば左右のブレーキペダル130,130が連結状態になる一方、ハンドル34による操向角度が所定角度以上(旋回状態)であれば左右のブレーキペダル130,130が非連結状態になることで、乗用型苗移植機1が直進しながら作業を行うときに左右一方のブレーキペダル130を踏んでも作業者が意図しない旋回動作をすることを防止できるので、機体の走行軌跡が略直線状になり、作業精度が向上する。
【0093】
また、乗用型苗移植機1の旋回中は作業者が左右のブレーキペダル130,130をそれぞれ操作するため、この場合に制御装置100によって左右のブレーキペダル130,130の操作をそれぞれ独立して受け付けるような構成にすると良い。このようにすることで、作業者による左右のブレーキペダル130,130の操作によって乗用型苗移植機1が圃場端で旋回する際の旋回距離や旋回軌跡を変更することができる。したがって、圃場の形状や土質などの作業条件に合わせた操作が行え、旋回後の作業開始位置を隣接条に合わせやすくなり、作業精度が向上する。
【0094】
また、苗植付部4の高さを検出する昇降リンクセンサ160(高さ検出手段)を昇降リンク装置3の上リンク40とリンクベースフレーム42との間に設け、昇降リンクセンサ160により苗植付部4の高さが所定高さ(例えば、30〜50cm、ただし圃場や機種によって異なる)以上であることが検出され、且つその状態が所定時間(例えば、60秒)を超えて継続している場合、又は昇降リンクセンサ160により苗植付部4の高さが所定高さ以上であることが検出され、乗用型苗移植機1の走行距離が所定距離以上であることが検出された場合は、苗植付部4が非作業状態であると判断して切替装置140を作動して左右のブレーキペダル130,130を連結状態にする作業部切替機能を制御装置100に設けても良い。
【0095】
上記の場合、60秒までは許容し、61秒目で連結状態とする。但し、制御装置100の設定を変更し、0.1秒単位で判定しても構わない。
また、苗植付部4の高さは、作業を行う場合の最下げ位置からの高さであり、苗植付部4の場合は植付位置まで下げた状態を基準(ゼロ)とする。
【0096】
図13には、図1の乗用型苗移植機1の制御装置100によるフローの一例を示す。
乗用型苗移植機1の走行距離は、後輪回転数センサ153により検出される回転数から算出される。したがって、後輪回転数センサ153は走行距離検出手段としても機能する。
【0097】
苗植付部4が所定高さ以上に上昇した状態で所定時間が経過した場合、又は苗植付部4が所定高さ以上に上昇した状態で乗用型苗移植機1が所定距離を走行した場合は、制御装置100によって非作業状態(植付を行なわない状態)であると判断して左右のブレーキペダル130,130を連結状態に切り替えるため、苗植付部4が上昇した状態で乗用型苗移植機1が走行する際に左右のブレーキペダル130,130を確実に連動させることができるので、乗用型苗移植機1の非作業状態において作業者が意図しない旋回動作を始めることがなく、乗用型苗移植機1の操作性が向上する。
なお、乗用型苗移植機1に限らず、例えば苗植付部4以外の芝刈り機、除雪機、清掃機、耕耘機、防除機、薬剤散布機などの作業部を設けた作業車両の場合でも同様である。
【0098】
また、切替装置140の電磁石142の接着面の両端142a,142aをテーパ状とすると、左右のブレーキペダル130,130の連結時に、電磁石142の接着面が接着相手である左又は右のブレーキペダルアーム132に傷をつけることを防止できる。切替装置140の電磁石142の接着面の両端142a,142aに角があると、左右のブレーキペダル130,130の連結時にこの角部でブレーキペダルアーム132に傷をつけることが考えられるが、そのような問題は生じない。
【0099】
そして、電磁石142が接着相手である右のブレーキペダルアーム132側に移動できるように、ピン135の頭部と左のブレーキアーム132との間には隙間W1(図6)を設けている。また、電磁石142と右のブレーキアーム132との間には、電磁石142が勢いよく右のブレーキアーム132の左側面に当たることを防止するための隙間W2を設けている。
【0100】
電磁石142が制御装置100の通電により右のブレーキアーム132側に移動して、ピン135の頭部が左のブレーキペダルアーム132に当たると電磁石142の移動が停止する。隙間W2よりも隙間W1が小さいと、すなわち電磁石142と右のブレーキペダルアーム132との間の隙間が大きいと、電磁石142が右のブレーキペダルアーム132の左側面に接着できなくなる。
【0101】
しかし、この隙間W2よりも隙間W1を大きくする又は同じにすることで(W1≧W2)、確実に電磁石142が右のブレーキペダルアーム132に接着する。したがって、確実に左右のブレーキペダル130,130を連結できる。一方、図6(c)の片ブレーキ操作時の状態図に示すように、電磁石142の接着面の両端をテーパ状とすることで、電磁石142の接着面とブレーキペダルアーム132が接触した場合でも、電磁石142が矢印D方向に移動するため、電磁石142とブレーキペダルアーム132が噛み合って動かなくなることが防止されて、スムーズに左右一方のブレーキペダル130を踏む操作が可能となる。
【0102】
電磁石142にテーパ部を形成していない場合は、電磁石142をD方向に動く構成としていても、角形状の電磁石142とブレーキペダルアーム132の角部同士が噛み合ってしまい、矢印D方向に動きにくくなる可能性がある。しかしながら、テーパ部を形成することで、電磁石142とブレーキペダルアーム132が接触しても噛み合いにくくなるので、電磁石142が矢印D方向に退避しやすくなり、操作したい側の片方のサイドブレーキJが効きやすくなる。また、ブレーキペダルアーム132を角の無いパイプ形状とすると、より効果が高まる。
【0103】
更に、電磁石142が接着するブレーキペダルアーム132の接着面の両端132a,132aをテーパ状にすると(図6(c))、電磁石142の接着面の両端142a,142aをテーパ状とした場合と同様に、電磁石142の接着面とブレーキペダルアーム132が接触した場合でも、スムーズに左右一方のブレーキペダル130を踏む操作が可能となる。
また、電磁石142の接着面の両端142a,142aとブレーキペダルアーム132の接着面の両端132a,132aの双方をテーパ状にしても良い。
【0104】
一方、この乗用型苗移植機1を、操縦席31が前後方向に移動(スライド)可能な構成としても良い。図14(a)には、操縦席31の側面図を示し、図14(b)には、S1−S1線断面矢視図を示す。
例えば、操縦席31の前方下部の取り付け片31aとエンジンカバー30に立設する支持片161との取り付け位置を変えることで、操縦席31が前後方向にスライド可能となる。取り付け片31aの支持片161への取り付けは、固定具(ボルトやナットなど)などで容易に行うことができる。
【0105】
図14には、3段階にスライドする場合を示している。操縦席31の位置が標準時(中央)よりも後方時の場合、後方に傾くような(リクライニング)構成とする。例えば、操縦席31下部のエンジンカバー30の形状を工夫することで、容易にリクライニングが可能となる。
【0106】
図14に示すように、エンジンカバー30の側面形状を階段状にして、この段差部分に凹部30aを設ける。操縦席31を後方にスライドすると、凹部30aに操縦席31の後方の脚部31bがはまることで、後方に傾いて操縦席31がリクライニングシートになる。
【0107】
このように特別な機構を設けることなく、エンジンカバー30の形状を工夫することで容易にリクライニングが可能となる。
例えば、大柄な作業者が操縦席31を後方に下げた場合に、操縦席31が標準時よりも後方にリクライニングされ、操縦席31とハンドル34との間にゆとりが生じる。したがって、作業者の居住性が確保され、快適に操作ができる。
【0108】
また、図15には、操縦席31の他の例の側面図を示す。図15(a)には、通常の操縦席31の状態を示し、図15(b)には、給油時の操縦席31の状態を示し、図15(b)の丸枠部分Zには、S2方向から見た取付けプレート163の図を示している。
操縦席31下部のエンジンカバー30の下には燃料タンク24が設けられている。
【0109】
操縦席31の下部に断面L字型の取付けプレート163を設け、この取付けプレート163の前方に燃料タンク24への給油ホース167の挿入口を設けても良い。
【0110】
取付けプレート163は、ボルトやナットなどの固定具159によりL字の一方の面(図示例では大きい方の面)が操縦席31の下部に取り付けられており、L字の他方の面(図示例では小さい方の面)が操縦席31の脚部となっている。そして、エンジンカバー30に立設する支柱168が下方からL字の大きい方の面に当接し、操縦席31を支えている。
【0111】
L字の小さい方の面には、丸枠部分Zに示すように、燃料タンク24の給油ホース167が貫通できる開口部163aを設けている。そして、燃料タンク24に給油するときには給油ホース167を取付けプレート163の開口部163aに挿入する。操縦席31の前方下部の取り付け片31aは支持片161に回動自在に連結しており、この連結部を支点として操縦席31を前方に倒すことで、取付けプレート163がエンジンカバー30から離れ、給油ホース167を取付けプレート163の開口部163aに挿入できる。
【0112】
給油ホース167が取付けプレート163によって固定されるため、給油ホース167が安定することで、給油時に作業者が給油ホース167を支えることなく給油が可能である。通常、給油時には作業者が給油ホース167を片手で支え、他方の手で給油タンク(図示せず)を持つ場合が多い。しかし、本構成によれば、作業者が両手で給油タンクを持って燃料タンク24に給油できるため、安定した状態で給油できる。したがって、作業性や安全性が向上する。
【0113】
更に、図16には、操縦席の他の例の側面図(図16(a))及び背面図(図16(b))を示す。
この取付けプレート163は、断面I型のもので、エンジンカバー30に立設する支柱168が下方から当接し、操縦席31を支えている。
操縦席31を前方に倒すことで、取付けプレート163を外して付け替えて、右利きの人でも左利きの人でも使用できるようにドリンクホルダ169の位置を左右で変えることができる。
【0114】
更に、図17には、操縦席の他の例の側面図(図17(a)))及び背面図(図17(b))を示す。
この取付けプレート163も、断面I型のもので、エンジンカバー30に立設する支柱が下方から当接し、操縦席31を支えている。
取付けプレート163側に固着した脚部170がエンジンカバー30側に固着した支持部172上に当接している。操縦席31の脚部170は弾性体(ゴムなど)で構成されており、操縦席31を勢いよく作業位置に戻した際に衝撃を吸収する。支持部172はエンジンカバー30と同じく樹脂で構成(一体成型する)されているが、接触面(上面)に、脚部170の下部と同じ形状の凹部(図示せず)を形成しておくと、脚部170と支持部172が前後左右にぶれにくくなり、操縦席31が揺れにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、苗植付部を搭載した乗用型苗移植機に限らず、他の作業車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 施肥装置付き乗用型苗移植機 2 車体フレーム
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 11a 後輪駆動軸
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 16 副変速レバー
18 後輪ギアケース 18a 伝動シャフト
20 エンジン
23 静油圧式無段変速装置(HST)
24 燃料タンク 26 植付伝動軸
27(27a,27b) 整地ロータ
30 エンジンカバー 31 操縦席
32 フロントカバー 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リアステップ
37 ロータカバー 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 46 昇降用油圧シリンダ
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 54 苗送りベルト
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 64 作溝体
76 サイドクラッチ軸
100 制御装置(コントローラ)103 後輪入力軸
105 リアアクスル 107 フロントアクスル
109 リア出力軸 111 摩擦板
113 板ばね 114 固定板
115,117 シム
116 クラッチ・ブレーキケース
118 ディスク 120 ブレーキアーム
122 ブレーキアーム軸 130 ブレーキペダル
132 ブレーキペダルアーム 133 接近センサ
135 ピン 140 切替装置
142 電磁石 145 警告ブザー
147 モニター 151 ピッチングセンサ
153 後輪回転数センサ 155 湿田スイッチ
157 切れ角センサ 159 固定具
160 昇降リンクセンサ 163 取付けプレート
165 副変速レバーセンサ 167 給油ホース
168 支柱 169 ドリンクホルダ
170 脚部 172 支持部
I サイドクラッチ J サイドブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)と、該エンジン(20)の駆動力で圃場を走行する左右一対の走行装置(10,11)と、該走行装置(10,11)を備えた車体(2)と、該車体(2)の後部に上下動自在に設けられ、圃場に苗を植え付ける作業部(4)と、前記エンジン(20)から前記走行車体(2)への伝動を入り切りする左右のサイドクラッチ(I,I)と、前記走行車体(2)の左右のサイドブレーキ(J,J)と、前記左右のサイドクラッチ(I,I)及び前記左右のサイドブレーキ(J,J)を操作可能な左右のブレーキペダル(130,130)と、前記走行装置(10,11)の速度を高速側と低速側の複数の変速位置に操作可能な変速レバー(16)と、該変速レバー(16)の操作位置を検出する変速レバー検出手段(165)とを設けた走行車両において、
前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結して連動させる連結状態と連動させない非連結状態とに切り替える切替装置(140)と、
前記変速レバー検出手段(165)により検出される位置が高速側の場合に前記切替装置(140)を作動して左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする変速レバー切替機能を有する制御装置(100)と
を設けたことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記左右のブレーキペダル(130,130)に、左右のブレーキペダル(130,130)間の距離を検出するブレーキペダル位置検出手段(133)を設け、
前記制御装置(100)は、前記ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値以下の場合は、前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にするブレーキペダル切替機能を有することを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
聴覚又は視覚によって報知可能な報知手段(145,147)を設け、
前記制御装置(100)は、前記ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値を超えており、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合は、ブレーキペダル位置検出手段(133)により検出される距離が所定値以下となるまで前記報知手段(145,147)を作動させる報知機能を有することを特徴とする請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
前記車体(2)に、圃場の水平面に対する車体(2)の前後方向の傾斜角度を検出する前後傾斜検出手段(151)を設け、
前記制御装置(100)は、前記前後傾斜検出手段(151)により検出される傾斜角度が所定角度以上になると、前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする前後傾斜切替機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の作業車両。
【請求項5】
前記走行装置(10,11)は左右一対の前輪(10,10)と左右一対の後輪(11,11)からなり、
該左右一対の後輪(11,11)の回転数を検出する後輪回転数検出手段(153)を設け、
前記制御装置(100)は、前記後輪回転数検出手段(153)により検出される所定時間の回転数から走行速度を算出し、該算出される走行速度が所定速度以上になると前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする走行速度切替機能を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記車体(2)上に走行装置(10,11)の操向手段(34)を設け、
該操向手段(34)による操向角度を検出する操向角度検出手段(157)を設け、
前記制御装置(100)は、操向角度検出手段(157)により検出される操向角度が所定角度未満の場合は、作業車両が直進状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする一方、操向角度検出手段(157)により検出される操向角度が所定角度以上の場合は、作業車両が旋回状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を非連結状態にする操向角度切替機能を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記作業部(4)の作業状態における最下げ位置からの高さを検出する高さ検出手段(160)を設け、
前記走行装置(10,11)に走行距離を検出する走行距離検出手段(153)を設け、
前記高さ検出手段(160)により前記作業部(4)の高さが所定高さ以上であることが検出され、且つその状態が所定時間を超えて継続している場合、又は
前記高さ検出手段(160)により前記作業部(4)の高さが所定高さ以上であることが検出され、前記走行距離検出手段(153)によって走行距離が所定距離以上であることが検出された場合は、
前記制御装置(100)は、前記作業部(4)が非作業状態であると判断して前記切替装置(140)を作動して前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする作業部切替機能を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項8】
前記切替装置(140)を前記左右のブレーキペダル(130,130)に設けた電磁石(142)によって構成し、
前記制御装置(100)は、前記電磁石(142)に通電することで前記左右のブレーキペダル(130,130)を連結状態にする一方、前記電磁石(142)への通電を停止することで前記左右のブレーキペダル(130,130)を非連結状態にする電磁石切替機能を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−245962(P2012−245962A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121847(P2011−121847)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】