説明

作業車両

【課題】本発明の課題は、排気ガス処理装置を備える作業車両において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることにある。
【解決手段】作業車両において、エンジン室8は、運転室7の前方に配置される。排気ガス処理装置33は、エンジン室8内においてエンジン31の上方に配置される。ラジエータ35は、エンジン室8内において排気ガス処理装置33の前方に配置される。送風装置37は、ラジエータ35の後方からラジエータ35の前方へとラジエータ35を通る空気の流れを生成する。排気ガス処理装置33は、排気ガス処理装置33とラジエータ35との間の距離が第1側面部13側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置されている。また、第1側面部13には、排気ガス処理装置33とラジエータ35との間の空間に面して吸気口24,25が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、運転室の前方にエンジン室を備えるものがある。エンジン室には、エンジン、ラジエータ、送風装置などの装置が収容されている。例えば、特許文献1に示されているように、エンジンには、マフラーを介して排気管が接続され、排気管はエンジン室の上面から突出して設けられる。ラジエータは、エンジンの前方に配置されている。送風装置は、ラジエータを流れる冷却液を冷却するために、ラジエータを通る空気の流れを生成する。また、エンジン室の側面には、多数の通気穴が設けられている。ここで、作業車両には、例えばブルドーザのように車体前部に設けられたブレードなどの作業機によって各種の作業を行うものがある。この種の作業車両では、車体前面から土埃などの異物がエンジン室内に侵入し易い。このため、この種の作業車両では、送風装置は、ラジエータの後方からラジエータの前方へ向けてラジエータを通過する空気の流れを生成する。これにより、空気がエンジン室の側面の通気穴からエンジン室内に吸込まれる。そして、空気は、エンジンとラジエータとの間の空間を通り、ラジエータを通過して、車体前面から吹出される。このように、ラジエータを通った空気が車体前方へと吹き出されることにより、異物が車体前面からエンジン室内に侵入することが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−113715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自然環境保護の観点から、作業車両に対して排気ガスをさらに清浄化することが求められている。このため、作業車両に、排気ガスを清浄化するための排気ガス処理装置が搭載されるようになっている。排気ガス処理装置は、例えば、窒素酸化物(NOx)を低減する装置、一酸化炭素(CO)を低減する装置、或いは、粒子状物質を低減する装置などである。
【0005】
ここで、排気ガス処理装置は、排気ガスを処理するための触媒やフィルターを備えているため、上述したマフラーよりも大型の装置である。このため、上述したような、作業車両のエンジン室に排気ガス処理装置が収容されると、エンジン室内の空間を狭めてしまう。この場合、ラジエータへと送られる空気の通風抵抗が増大し、その結果、ラジエータの冷却効率が低下する恐れがある。
【0006】
本発明の課題は、排気ガス処理装置を備える作業車両において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る作業車両は、運転室と、エンジン室と、エンジンと、排気ガス処理装置と、ラジエータと、送風装置とを備える。エンジン室は、車幅方向に互いに離間して配置される第1側面部及び第2側面部を有する。エンジン室は、運転室の前方に配置される。エンジンは、エンジン室内に配置される。排気ガス処理装置は、エンジン室内においてエンジンの上方に配置される。ラジエータは、エンジン室内において排気ガス処理装置の前方に配置される。送風装置は、ラジエータの後方からラジエータの前方へとラジエータを通る空気の流れを生成する。排気ガス処理装置は、排気ガス処理装置とラジエータとの間の距離が第1側面部側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置されている。また、第1側面部には、排気ガス処理装置とラジエータとの間の空間に面して吸気口が設けられる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る作業車両は、第1の態様の作業車両であって、エアクリーナをさらに備える。エアクリーナは、エンジン室内において排気ガス処理装置の後方に配置される。エアクリーナは、排気ガス処理装置と同じ方向に車幅方向に対して傾斜して配置される。
【0009】
本発明の第3の態様に係る作業車両は、第2の態様の作業車両であって、排気管と吸気管とをさらに備える。排気管は、排気ガス処理装置に接続され、エンジン室の上面から上方に突出して配置される。吸気管は、エアクリーナに接続され、エンジン室の上面から上方に突出して配置される。また、運転室は、一対の前ピラーを有する。一対の前ピラーは、運転室の前面において車幅方向に距離を隔てて配置される。上面視において前ピラーの一方と、排気管と、吸気管とは、一直線上に並んで配置される。
【0010】
本発明の第4の態様に係る作業車両は、第1から第3の態様のいずれかの作業車両であって、接続配管をさらに備える。接続配管は、エンジンと排気ガス処理装置とを接続する。接続配管は、排気ガス処理装置のうち第1側面部よりも第2側面部に近い部分に接続される。
【0011】
本発明の第5の態様に係る作業車両は、第4の態様の作業車両であって、接続配管は、排気ガス処理装置の前部に接続される。
【0012】
本発明の第6の態様に係る作業車両は、第4又は第5の態様の作業車両であって、接続配管は、エンジンのうち第2側面部よりも第1側面部に近い部分に接続される。
【0013】
本発明の第7の態様に係る作業車両は、第6の態様の作業車両であって、接続配管は、振動を吸収する振動吸収部を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様に係る作業車両では、排気ガス処理装置は、排気ガス処理装置とラジエータとの間の距離が第1側面部側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置される。このため、第1側面部の吸気口からエンジン室内へ吸込まれる空気の通路が大きく確保される。また、逆に言えば、排気ガス処理装置は、排気ガス処理装置とラジエータとの間の距離が第2側面部側ほど狭くなるように、車幅方向に対して傾斜して配置される。従って、第1側面部の吸気口からエンジン室内へ吸込まれた空気は、排気ガス処理装置に沿って流れることにより、ラジエータへ向けて案内される。このため、ラジエータへと送られる空気の通風抵抗が低減される。これにより、排気ガス処理装置を備える作業車両において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る作業車両では、エアクリーナが、排気ガス処理装置と同じ方向に車幅方向に対して傾斜して配置される。このため、エアクリーナと排気ガス処理装置との間の距離を確保することができる。これにより、エアクリーナが排気ガス処理装置から受ける熱の影響を低減することができる。
【0016】
本発明の第3の態様に係る作業車両では、前ピラーと排気管と吸気管とが、運転室の前方において一直線上に並んで配置される。このため、運転室からの前方への視界性が向上する。
【0017】
本発明の第4の態様に係る作業車両では、接続配管は、排気ガス処理装置のうち第1側面部よりも第2側面部に近い部分に接続される。このため、接続配管が、第1側面部の吸気口からエンジン室内へ吸込まれる空気の流れを阻害することを抑えられる。
【0018】
本発明の第5の態様に係る作業車両では、接続配管は、排気ガス処理装置の前部に接続される。このため、接続配管が排気ガス処理装置の下部に接続される場合と比べて、排気ガス処理装置とエンジンとの間の距離を小さくすることができる。これにより、エンジン室が高さ方向に大型化することが抑えられ、作業車両に必要な前方視界が確保される。また、接続配管が排気ガス処理装置の側部に接続される場合と比べて、排気ガス処理装置とエンジン室の第1側面部との間の距離、或いは、排気ガス処理装置とエンジン室の第2側面部との間の距離を小さくすることができる。これにより、エンジン室が幅方向に大型化することが抑えられ、作業車両に必要な前側方視界が確保される。
【0019】
本発明の第6の態様に係る作業車両では、接続配管は、エンジンのうち第2側面部よりも第1側面部に近い部分に接続される。すなわち、接続配管の一端は、エンジンのうち第2側面部よりも第1側面部に近い部分に接続される。また、接続配管の他端は、排気ガス処理装置のうち第1側面部よりも第2側面部に近い部分に接続される。このため、接続配管の長さを大きく確保することができる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る作業車両では、振動吸収部において接続配管に伝わった振動を吸収することができる。一般的に作業車両には大きな振動が発生するが、本発明では、接続配管自体が振動の吸収能力を有することにより、配管接続の信頼性を確保することができる。また、上述したように、接続配管の長さを大きく確保することができるので、接続配管の長さが短くなる構造に比べて、振動吸収部を接続配管に容易に設けることができる。接続配管の長さが短くなる構造とは、例えば、エンジンの上側で第2側面部に近い位置から直線的に排気ガス処理装置の下側で第2側面部に近い位置に配管を接続する構造である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】作業車両の左側面図。
【図2】作業車両の一部を示す上面図。
【図3】作業車両の一部を示す右側面図。
【図4】第1前カバーと第1後カバーとが取り外された状態での作業車両の一部を示す右側面図。
【図5】エンジン室の内部の構成を示す上面図。
【図6】エンジン室の内部での空気の流れを模式的に示す上面図。
【図7】運転室の内部から前方を見たときの視界を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る作業車両1を図1に示す。この作業車両1はブルドーザであり、図1は、作業車両1の左側面図である。なお、以下の説明において、左右とは、運転室7内から前方を見た状態での左右の方向を意味するものとする。作業車両1は、作業機2と、走行装置3と、車両本体4とを備える。作業機2は、ブレード5と油圧シリンダ6とを有する。ブレード5は、車両本体4の前方に配置される。油圧シリンダ6は、図示しない油圧ポンプで発生した油圧によって駆動され、ブレード5を上下に移動させる。走行装置3は、履帯式の走行装置であり、車両本体4に取り付けられる。車両本体4は、運転室7と、エンジン室8とを有する。
【0023】
運転室7には、図示しないシートや操作装置が内装されている。図2は、作業車両1の一部を示す上面図である。図2に示すように、運転室7の前面は、第1前面部71と第2前面部72と第3前面部73とを有する。上面視において、第1前面部71と第2前面部72とは、前側ほど車幅方向における互いの間隔が小さくなるように前後方向に対して傾斜して配置されている。第3前面部73は、第1前面部71の前端と第2前面部72の前端との間に配置されている。第3前面部73は、上面視において、車幅方向に沿って配置されている。また、運転室7は、一対の前ピラー74,75(以下、「第1前ピラー74」及び「第2前ピラー75」と呼ぶ)を有している。第1前ピラー74と第2前ピラー75とは、運転室7の前面において車幅方向に距離を隔てて配置されている。第1前ピラー74と第2前ピラー75とは、第3前面部73の左右の縁部に沿って上下方向に延びている(図7参照)。
【0024】
エンジン室8は、運転室7の前方に配置されている。エンジン室8は、上面部11と、前面部12と、第1側面部13と、第2側面部14とを有する。上面部11は、概ね平坦な形状を有している。上面部11の後部は、後側ほど車幅方向における幅が小さくなるように先細りの形状を有する。上面部11の後端は、運転室7の前面に対向している。図3に示すように、上面部11は、上下方向において運転室7の前面の上端と下端との間に位置している。図3は、作業車両1の一部の右側面図である。前面部12は、側面視において、概ね上下方向に沿って配置されている。
【0025】
図2に示すように、第1側面部13及び第2側面部14は、車幅方向に互いに離間して配置されている。第1側面部13は、第1斜面部15を有する。第1斜面部15は、第1側面部13において後上部に位置する。第1斜面部15は、運転室7の前方に位置しており、より具体的には、運転室7の第1前面部71の前方に位置している。第1斜面部15は、後側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、前後方向に対して傾斜して配置されている。また、第1斜面部15は、上側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、上下方向に対して傾斜して配置されている。第1側面部13の他の部分は、概ね上下方向及び前後方向に沿って配置されている。
【0026】
第2側面部14は、作業車両1の前後方向に沿った中心線に対して第1側面部13と概ね左右対称な形状を有する。第2側面部14は第2斜面部16を有する。第2斜面部16は、第2側面部14において後上部に位置する。第2斜面部16は、運転室7の前方に位置しており、より具体的には、運転室7の第2前面部72の前方に位置している。第2斜面部16は、上側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、上下方向に対して傾斜して配置されている。また、第2斜面部16は、後側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、前後方向に対して傾斜して配置されている。第2側面部14の他の部分は、概ね上下方向及び前後方向に沿って配置されている。
【0027】
第1斜面部15、及び、第2斜面部16は、それぞれ運転室7の第1前面部71と第2前面部72とに対向して配置されている。従って、第1斜面部15、及び、第2斜面部16が上記のように傾斜していることにより、運転室7からの前方への視界性が向上されている。
【0028】
また、図3に示すように、第1側面部13は、第1前カバー21と第1後カバー22とを有する。第1前カバー21と第1後カバー22とは、第1側面部13に設けられた開口23(図4参照)を開閉可能に設けられている。図4は、第1前カバー21と第1後カバー22とが取り外された状態での作業車両1の一部を示す右側面図である。第1前カバー21は、概ね前後方向及に沿って配置されている。また、第1前カバー21は、概ね上下方向及に沿って配置されている。第1後カバー22は、第1前カバー21の後方に配置されている。図2に示すように、第1後カバー22は、上述した第1斜面部15に含まれる。従って、第1後カバー22は、上側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、上下方向に対して傾斜して配置されている。また、第1後カバー22は、後側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、前後方向に対して傾斜して配置されている。図3に示すように、第1前カバー21には、エンジン室8内に連通する吸気口24が設けられている。また、第1後カバー22には、エンジン室8内に連通する吸気口25が設けられている。吸気口24,25は、それぞれ複数の孔から構成されている。
【0029】
図2に示すように、第2側面部14は、第2前カバー26と第2後カバー27とを有する。第2前カバー26と第2後カバー27とは、第2側面部14に設けられた開口(図示せず)を開閉可能に設けられている。第2前カバー26は、概ね前後方向及び上下方向に沿って配置されている。第2後カバー27は、第2前カバー26の後方に配置されている。第2後カバー27は、上述した第2斜面部16に含まれる。従って、第2後カバー27は、上側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、上下方向に対して傾斜して配置されている。また、第2後カバー27は、後側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、前後方向に対して傾斜して配置されている。第2後カバー27は、第1後カバー22よりも前後方向に長い形状を有する。第2後カバー27の後端は、第1後カバー22の後端よりも後方に位置している。第2前カバー26及び第2後カバー27には、第1前カバー21及び第1後カバー22と同様に、エンジン室8内に連通する吸気口(図示せず)が設けられている。吸気口は、複数の孔から構成されている。
【0030】
図5に示すように、エンジン室8内には、エンジン31と、ラジエータ組立体32と、排気ガス処理装置33と、エアクリーナ34とが収容されている。図5は、エンジン室8内の構成を示す上面図である。エンジン31は、例えばディーゼルエンジン31であり、上述した油圧ポンプ及び走行装置3を駆動する駆動源となる。
【0031】
ラジエータ組立体32は、エンジン室8内においてエンジン31及び排気ガス処理装置33の前方に配置されている。ラジエータ組立体32は、ラジエータ35と、チャージエアクーラー(Charge Air Cooler)36と、送風装置37とを有する。ラジエータ35は、エンジン31との間で循環する冷却液を冷却する装置である。ラジエータ35は、前後方向に空気が通過可能に構成されている。ラジエータ35は、前面と後面とが車幅方向に概ね沿って配置されている。ラジエータ35は、第1前カバー21及び第2前カバー26よりも前方に位置している。ラジエータ35は、冷却液管57を介してエンジン31と接続されている。
【0032】
チャージエアクーラー36(以下、「CAC36」と呼ぶ)は、後述する過給器46からエンジン31の吸気側に送られる排気を冷却する装置である。CAC36は、ラジエータ35の後方に配置されており、概ねラジエータ35の後面に沿って配置されている。CAC36は、前後方向に空気が通過可能に構成されている。
【0033】
送風装置37は、ラジエータ組立体32の後方からラジエータ組立体32の前方へとラジエータ組立体32を通る空気の流れを生成する(図6の矢印A1−A4参照)。すなわち、送風装置37は、ラジエータ35の後方からラジエータ35の前方へとラジエータ35を通る空気の流れを生成する。送風装置37は、冷却ファン38と、ファンモータ39とを有する。冷却ファン38は、ラジエータ35の前方に配置されている。冷却ファン38は、前後方向に延びる回転軸周りに回転することにより、上記のような空気の流れを生成する。ファンモータ39は、冷却ファン38の前方に配置されており、冷却ファン38を回転駆動する。
【0034】
排気ガス処理装置33は、エンジン31からの排気ガスを処理する装置であって、ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter)方式の処理装置である。排気ガス処理装置33は、排気ガス中に含まれる粒子状物質をフィルターによって捕集し、捕集した粒子状物質をフィルターに付設されたヒータによって焼却する。排気ガス処理装置33は、エンジン室8内においてエンジン31の上方に配置されている。排気ガス処理装置33は、ラジエータ組立体32に対して距離を隔てて配置されており、ラジエータ組立体32の後方に位置する。排気ガス処理装置33は、概ね円管状の形状を有している。排気ガス処理装置33は、軸線AX1が車幅方向に対して傾斜するように配置されている。
【0035】
排気ガス処理装置33は、第1管部41と第2管部42と中間管部43とを有する。第1管部41と第2管部42と中間管部43とは、排気ガス処理装置33の軸方向に並んで配置されている。第1管部41は、排気ガス処理装置33の軸方向における一方の端部を構成する。第2管部42は、排気ガス処理装置33の軸方向における他方の端部を構成する。第1管部41は、排気ガス処理装置33のうち第2側面部14よりも第1側面部13に近い部分であり、第1側面部13に近接して配置されている。第2管部42は、排気ガス処理装置33のうち第1側面部13よりも第2側面部14に近い部分であり、第2側面部14に近接して配置されている。中間管部43は、排気ガス処理装置33の軸方向において、第1管部41と第2管部42との間に位置している。
【0036】
排気ガス処理装置33は、排気ガス処理装置33とラジエータ組立体32との間の距離が第1側面部13側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置されている。すなわち、排気ガス処理装置33は、排気ガス処理装置33とラジエータ組立体32との間の距離が第1管部41側ほど広くなるように、傾斜して配置されている。このため、第1管部41とラジエータ組立体32と間の距離は、第2管部42とラジエータ組立体32と間の距離よりも広い。図4に示すように、第1管部41は、上述した第1側面部13の開口23に対向して配置されている。より詳細には、図5に示すように、第1管部41は、第1後カバー22に対向して配置されている。また、第2管部42は、上述した第2側面部14の開口に対向して配置されている。より詳細には、第2管部42は、第2前カバー26及び第2後カバー27に対向して配置されている。
【0037】
また、エンジン室8内には、エンジン31と排気ガス処理装置33とを接続する接続配管45が収容されている。接続配管45は、排気ガス処理装置33のうち第1側面部13よりも第2側面部14に近い部分に接続されている。また、接続配管45は、ラジエータ35の後面に対向する排気ガス処理装置33の前部に接続されている。具体的には、接続配管45の一端は、第2管部42の前部に接続されている。接続配管45の他端は、エンジン31のうち第2側面部14よりも第1側面部13に近い部分に接続されている。具体的には、接続配管45は、過給器46を介してエンジン31に接続されている。過給器46は、すなわち、接続配管45とエンジン31との接続部分は、排気ガス処理装置33よりも下方に位置している。接続配管45は、上面視において、接続配管45とラジエータ35との間の距離が第1側面部13側ほど広くなるように、車幅方向に対して傾斜して配置されている。また、接続配管45は、蛇腹状の部分47を含む。蛇腹状の部分47は、接続配管45に伝達された振動を吸収する振動吸収部として機能する。この蛇腹状の部分47により、エンジン31と排気ガス処理装置33との間の振動の差が吸収され、接続配管45に過剰な負荷が掛からないようにされている。
【0038】
また、エンジン室8内には、CAC36に接続される第1配管51と第2配管52とが収容されている。第1配管51の一端は、過給器46に接続されている。第1配管51の他端は、車幅方向において第1側面部13側に位置するCAC36の側端部に接続されている。図4に示すように、第1配管51は、第1側面部13の開口23よりも下方を通るように配置されている。第2配管52の一端は、エンジン31の吸気口に接続されている。第2配管52の他端は、車幅方向において第2側面部14側に位置するCAC36の側端部に接続されている。第2配管52は、CAC36の接続部分から後方へ延び、CAC36の後方において下方へ向けて屈曲している。
【0039】
図5に示すように、エアクリーナ34は、エンジン室8内において排気ガス処理装置33の後方に配置されている。エアクリーナ34は、排気ガス処理装置33に対して距離を隔てて配置されている。エアクリーナ34は、排気ガス処理装置33と同じ方向に車幅方向に対して傾斜して配置されている。すなわち、エアクリーナ34は、エアクリーナ34とラジエータ組立体32との間の距離が第1側面部13側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置されている。エアクリーナ34は、排気ガス処理装置33と概ね平行に配置されている。すなわち、エアクリーナ34の軸線AX2は、排気ガス処理装置33の軸線AX1と概ね平行である。また、図4に示すように、エアクリーナ34の頂上部は、排気ガス処理装置33の頂上部よりも下方に位置しているが、排気ガス処理装置33の底部よりも上方に位置している。エアクリーナ34の底部は、排気ガス処理装置33の底部よりも下方に位置している。
【0040】
なお、エアクリーナ34と排気ガス処理装置33とは、配管55を介して接続されている。配管55は、エアクリーナ34で捕集されたダストを排気ガス処理装置33での排気ガスの吐出による負圧を利用してエアクリーナ34から排出するための配管である。
【0041】
また、図3に示すように、エンジン室8の上面部11からは、排気管53と吸気管54とが上方に突出して配置されている。排気管53は、排気ガス処理装置33に接続されている。具体的には、排気管53の下方管内に、第1管部41の上部から突出する排気口が非接触で嵌入されている。これにより、排気管53が排気ガス処理装置33に接続されており、排気管53は第1管部41の上方へ突出している。排気管53と排気ガス処理装置33の排気口との接続部では、排気口の先端の径が排気管53の内径よりも小さくなっており、オリフィスとして機能する。これにより、排気に伴う負圧によって、エンジン室8内の上方の空気を、排気ガス及びダストと共に排気管53を通って外部に排出するようにされている。吸気管54は、エアクリーナ34に接続されている。図2に示すように、排気管53と吸気管54とは、エンジン室8の上面部11において車幅方向において同じ側に偏心して配置されている。具体的には、排気管53と吸気管54とは、エンジン室8の上面部11において車幅方向における中心よりも第1側面部13側に偏心して配置されている。上面視において、上述した第1前ピラー74と、排気管53と、吸気管54とは、一直線上に並んで配置されている。
【0042】
本実施形態に係る作業車両1は、以下の特徴を有する。
【0043】
作業車両1では、排気ガス処理装置33の第1側面部13側の端部とラジエータ35との間の距離が大きく確保されている。このため、空気が第1側面部13の吸気口24,25からエンジン室8内へ流入し易くなっている。また、排気ガス処理装置33は、排気ガス処理装置33とラジエータ35との間の距離が第2側面部14側ほど狭くなるように、車幅方向に対して傾斜して配置される。従って、図6において、矢印A1,A2で示すように、第1側面部13の吸気口24,25からエンジン室8内へ吸込まれた空気は、排気ガス処理装置33に沿って流れることにより、ラジエータ35へ向けて案内される。以上のような構造により、作業車両1では、ラジエータ35へと送られる空気の通風抵抗が低減されている。これにより、従来のマフラーよりも大型の排気ガス処理装置33がエンジン室8内に配置されても、ラジエータ35の冷却効率の低下を抑えることができる。なお、第2側面部14においても、第1側面部13と同様に吸気口が設けられている。このため、図6において矢印A3,A4で示すように、第2側面部14からもエンジン室8内へと空気が吸込まれる。
【0044】
排気ガス処理装置33は、車幅方向に対して斜めに配置される。このため、排気ガス処理装置33が車幅方向に沿って配置される場合と比べて、大容量の排気ガス処理装置33をエンジン室8内に配置することができる。
【0045】
エアクリーナ34は、排気ガス処理装置33と平行に配置されている。このため、エアクリーナ34と排気ガス処理装置33との間の距離を確保することができ、エアクリーナ34の一端が排気ガス処理装置33に過度に近接することが防止される。これにより、エアクリーナ34が排気ガス処理装置33から受ける熱の影響を低減することができる。従って、エアクリーナ34の部品として例えば樹脂製の部品が使用されても、エアクリーナ34が熱の影響を受けることが防止される。
【0046】
第1前ピラー74と排気管53と吸気管54とが、運転室7の前方において一直線上に並んで配置される。このため、図7に示すように、運転室7からは、排気管53と吸気管54とが第1前ピラー74と重なって見える。図7は、運転室7内から前方を見たときの視界を示す図である。これにより、排気管53と吸気管54とによって運転室7からの視界が狭められることが抑えられる。従って、運転室7からの前方への視界性が向上する。
【0047】
接続配管45は、排気ガス処理装置33のうち第1側面部13よりも第2側面部14に近い部分に接続されている。このため、接続配管45が、第1側面部13の吸気口24,25からエンジン室8内へ吸込まれる空気の流れを阻害することを抑えられる。
【0048】
接続配管45は、排気ガス処理装置33の前部に接続される。このため、接続配管45が排気ガス処理装置33の下部に接続される場合と比べて、排気ガス処理装置33とエンジン31との間の距離を小さくすることができる。これにより、エンジン室8が高さ方向に大型化することが抑えられる。また、接続配管45が排気ガス処理装置33の側部に接続される場合と比べて、排気ガス処理装置33とエンジン室8の第1側面部13との間の距離、或いは、排気ガス処理装置33と第2側面部14との間の距離を小さくすることができる。これにより、エンジン室8が幅方向に大型化することを抑えることができる。
【0049】
接続配管45の一端は、エンジン31のうち第2側面部14よりも第1側面部13に近い部分に接続される。また、接続配管45の他端は、排気ガス処理装置33のうち第1側面部13よりも第2側面部14に近い部分に接続される。このため、接続配管45の長さを大きく確保することができる。これにより、上述したような蛇腹状の部分47を接続配管45に設けることが容易となる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えばブルドーザ以外の作業車両に対しても本発明を適用することができる。
【0051】
排気ガス処理装置33として上述した排気ガス処理装置33とは異なる方式の装置が用いられてもよい。例えば、選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction)方式の装置、OC(酸化触媒)方式の装置、或いは、LNT(NOx吸蔵触媒)方式の装置が用いられてもよい。
【0052】
吸込口は必ずしも第2側面部14に設けられなくてもよく、少なくとも第1側面部13に設けられればよい。ただし、第1側面部13の吸気口24,25と比べて空気の流入量は少ないが、第2側面部14の吸気口からもエンジン室8内へ空気を吸込むことができる(図6の矢印A3,A4参照)。このため、上記の実施形態のように、第2側面部14にも吸気口が設けられることが好ましい。
【0053】
上記の実施形態では、第1側面部13が車体の右側に設けられ、第2側面部14が車体の左側に設けられている。しかし、逆に、第1側面部13が車体の左側に設けられ、第2側面部14が車体の右側に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、排気ガス処理装置を備える作業車両において、ラジエータの冷却効率の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0055】
7 運転室
8 エンジン室
13 第1側面部
14 第2側面部
24,25 吸気口
31 エンジン
33 排気ガス処理装置
34 エアクリーナ
35 ラジエータ
37 送風装置
45 接続配管
47 蛇腹状の部分(振動吸収部)
53 排気管
54 吸気管
74 第1前ピラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室と、
車幅方向に互いに離間して配置される第1側面部及び第2側面部を有し、前記運転室の前方に配置されるエンジン室と、
前記エンジン室内に配置されるエンジンと、
前記エンジン室内において前記エンジンの上方に配置される排気ガス処理装置と、
前記エンジン室内において前記排気ガス処理装置の前方に配置されるラジエータと、
前記ラジエータの後方から前記ラジエータの前方へと前記ラジエータを通る空気の流れを生成する送風装置と、
を備え、
前記排気ガス処理装置は、前記排気ガス処理装置と前記ラジエータとの間の距離が前記第1側面部側ほど広がるように、車幅方向に対して傾斜して配置されており、
前記第1側面部には、前記排気ガス処理装置と前記ラジエータとの間の空間に面して吸気口が設けられる、
作業車両。
【請求項2】
前記エンジン室内において前記排気ガス処理装置の後方に配置され、前記排気ガス処理装置と同じ方向に車幅方向に対して傾斜して配置されるエアクリーナをさらに備える、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記排気ガス処理装置に接続され、前記エンジン室の上面から上方に突出して配置される排気管と、
前記エアクリーナに接続され、前記エンジン室の上面から上方に突出して配置される吸気管と、
をさらに備え、
前記運転室は、前記運転室の前面において車幅方向に距離を隔てて配置される一対の前ピラーを有し、
上面視において前記前ピラーの一方と、前記排気管と、前記吸気管とは、一直線上に並んで配置される、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記エンジンと前記排気ガス処理装置とを接続する接続配管をさらに備え、
前記接続配管は、前記排気ガス処理装置のうち前記第1側面部よりも前記第2側面部に近い部分に接続される、
請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記接続配管は、前記排気ガス処理装置の前部に接続される、
請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記接続配管は、前記エンジンのうち前記第2側面部よりも前記第1側面部に近い部分に接続される、
請求項4又は5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記接続配管は、振動を吸収する振動吸収部を有する、
請求項6に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30736(P2012−30736A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173376(P2010−173376)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】