説明

作用物質の存在を検出する装置及び方法

【課題】作用物質を検出する装置及び方法を提供すること。
【解決手段】作用物質を検出する装置及び方法は、基板と、基板上の導波路と、光源と、光検出器と、基板上の光カプラと、プロセッサとを利用する。光源は導波路に光を放射するように構成されている。光検出器は光を検出するように構成されている。光カプラは、導波路から伝播する光の第1の部分を光検出器に向けて方向付け、導波路から伝播する光の第2の部分を導波路に戻る向きに方向付けるように構成されている。導波路及び光カプラは少なくとも部分的に共振器を形成している。物質は、導波路に埋め込まれているか、導波路に隣接しているかの少なくともどちらか一方である。物質は作用物質に反応する。プロセッサは、作用物質に対する物質の反応によって生じる、共振器の共振線形の変化を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に環境感知又は環境検出に関し、より詳細には、或る特定の物質、検体、又は作用物質の存在を検出する光ベースのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な物質を検出できる装置の用途が急激に増えている。特に、国民に対する様々な脅威の検出を含む国土防衛がより重要視されるようになってきている。生物学的又は化学的作用物質、及び放射線源などの、環境中の望ましくない有害物質の存在を検出又は感知することが優先事項になってきている。これらの有害物質は、輸送コンテナ、建造物、空港、又はその他の場所で発見される虞があり、民間人並びに軍の犠牲者を出すことを目的とするものである虞がある。このため、広範な種類の有害物質を正確に検出できる小型で手頃な価格の装置を提供する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、生物学的作用物質、化学的作用物質、及び/又は放射性物質を検出できるセンサを提供することが望ましい。さらに、複数の異なる危険物の存在を検出するセンサを提供しつつ、センサのパッケージサイズ及び製造原価を最小にすることが望ましい。さらに、本発明の他の望ましい特徴及び特性は、添付図面及び本発明の背景技術と併せれば、次に続く本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、作用物質を検出する装置が提供される。装置は基板と、基板上の導波路と、導波路に結合し、導波路に光を放射するように構成されている光源と、導波路に結合し、光を検出するように構成されている光検出器と、基板上にあり、導波路から伝播する光の第1の部分を光検出器に向けて方向付け、導波路から伝播する光の第2の部分を第2の導波路に方向付けるように構成されている光カプラであって、第2の導波路と光カプラが共振器を形成する光カプラと、導波路に埋め込まれているか、導波路に隣接しているかの少なくともどちらか一方である物質であって、作用物質に反応する物質と、光検出器と動作可能に通信し、作用物質に対する物質の前記反応により生じる、共振器の共振線形の変化を検出するプロセッサとを含む。
【0005】
別の実施形態では、作用物質を検出する装置が提供される。装置は基板と、基板上にある、第1及び第2の両側の端部を有する導波路と、導波路に光を放射する働きをする基板上の光源と、光を捕捉するように配置され、捕捉した光を表す信号を生成するように構成されている基板上の第1及び第2の光検出器と、基板上にある第1及び第2の光カプラであって、第1の光カプラは、導波路の第1の端部から伝播する光の少なくとも一部を第1の光検出器に向けて方向付け、導波路の第1の端部から伝播する光の少なくとも一部を導波路に戻る向きに方向付けるように配置されており、第2の光カプラは、導波路の第2の端部から伝播する光の少なくとも一部を第2の光検出器に向けて方向付け、導波路の第2の端部から伝播する光の少なくとも一部を導波路に戻る向きに方向付けるように配置されており、導波路と第1及び第2の光カプラは少なくとも部分的に共振器を形成している第1及び第2の光カプラと、埋め込まれた物質を有する導波路の少なくとも一部に埋め込まれているか、隣接しているかの少なくともどちらか一方である材料であって、物質は作用物質に反応し、作用物質は生物学的作用物質、化学的作用物質、及び生化学的作用物質の内の1つである材料と、基板上にあり、第1及び第2の光検出器と動作可能に通信し、作用物質に対する物質の前記反応によって生じる、共振器の共振線形の変化を検出するように構成されているプロセッサとを含む。
【0006】
別の実施形態では、作用物質を検出する方法が提供される。第1及び第2の両側の端部を有する導波路が基板上に形成される。物質が導波路内と導波路隣接部の少なくともどちらか一方に配置される。物質は作用物質に反応する。光が導波路の第1の端部に方向付けられる。光は導波路を通り、導波路の第2の端部から伝播する。導波路の第2の端部から伝播する光の第1の部分が、導波路の第1の端部から放射されるように導波路に戻る向きに方向付けられる。導波路の第2の端部から伝播する光の第2の部分が捕捉される。導波路の第1の端部から伝播する光の第1の部分は、導波路に戻る向きに、導波路の第2の端部に向けて方向付けられ、導波路は少なくとも部分的に共振器を形成している。導波路の第1の端部から伝播する光の第2の部分が捕捉される。作用物質に対する物質の前記反応によって生じる、共振器の共振線形の変化を表す信号が生成される。
【0007】
本発明を次の図面と併せて以下に説明する。図面において、同様の番号は同様の構成要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の本発明の詳細な説明は、本質的に単なる例示に過ぎず、本発明すなわち本願と、本発明の用途とを限定するものではない。さらに、前述した本発明の背景技術又は後述する本発明の詳細な説明に提示される如何なる理論によっても制約されるものではない。図1から図5は単に説明するためのものであり、原寸比で描かれていないことがあることにも留意されたい。
【0009】
環境中の有害物質などの作用物質(たとえば、生物学的作用物質、化学的作用物質、及び生化学的作用物質)を検出するための装置及び方法が提供される。装置は基板と、基板上(又は基板内)の導波路と、導波路の第1及び第2の端部又はその近くに形成された第1及び第2の反射板と、導波路に結合された光源及び光検出器と、導波路に隣接した(又は導波路の近くの)材料とを含む。一実施形態では、反射板が導波路の両端部又はその近くに形成される。可変波長光源は、双方の反射板から光を複数回反射させる導波路に光を放射するように構成されており、光共振器を形成している。光検出器は反射板の1つを通り抜けて導波路から流出する光を検出するように構成されている。物質が材料内に埋め込まれている。物質は作用物質に反応し、材料が作用物質にさらされると光共振器の共振線形及び/又は自由スペクトル領域(FSR)が変化する。FSR又は線形の変化は、レーザの波長を変化させること、および光検出器を監視することによって測定される。或いは、材料が省かれて、物質が導波路に埋め込まれている。物質は作用物質に反応し、導波路が作用物質にさらされると、光共振器の共振線形及び/又は自由スペクトル領域(FSR)が変化する。FSRの変化は、レーザの波長を変化させること、および光検出器を監視することによって測定される。レーザ波長が空洞共振器のFSRにわたって掃引されると、光検出器によって検出される光の強度が変化する。基板上に導波路を形成することによって、たとえば光ファイバの利用とは対照的に、より小型で、より安価で信頼性のあるセンサを提供することができる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による、或る特定の物質又は作用物質の存在を検出するセンサ10を示す。センサ10は基板12を含み、基板上には、光源14と、導波路16と、第1及び第2の光検出器18及び20と、制御部22と、送信器24とが形成されている。
【0011】
一実施形態では、基板12は実質的に正方形(又は矩形)であり、一辺の長さ26は、たとえば4cm未満、又は1cmから3cmの間である。図2を見ると、基板12は下部(第1の)シリコン層28と、絶縁層30と、上部(第2の)シリコン層32とを含む。基板12は、たとえば約400ミクロンの厚さ34を有してもよく、その厚さの大部分が第1のシリコン層28の厚さによるものであってもよい。絶縁層30は、二酸化ケイ素(SiO)などの絶縁材料で作ることができ、下部シリコン層28上に形成することができる。絶縁層30は、たとえば1ミクロンから5ミクロンの間の厚さ36であってもよい。上部シリコン層32の厚さは絶縁層30の厚さと同等とすることができる。したがって一般に理解されるように、基板12はシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板の形状とすることができる。当業者には理解されるように、図2に示される基板12及び/又は基板内の様々な層は、たとえば化学蒸着(CVD)、接着、及び熱成長プロセス、又はそれらの組み合わせを用いて形成することができる。
【0012】
再び図1を参照すると、図示した実施形態では、光源14が基板12の隅近くに配置されており、基板12の隣の隅に方向が合わせられている、すなわち「向けられている」。一実施形態では、光源14は、基板12の上に部分的に形成された、又は完全に取り付けられたレーザダイオード又はレーザダイオードアセンブリである。レーザダイオードは別に製造され、基板12に取り付けることができる。実際に図示していないが、一般に理解されるように、光源14は外部共振器型半導体レーザ内にあってもよく、共振器長変調構造を含み、そこから放射されたレーザ光の周波数を合わせ、且つ/又は調整することができる。さらに、1つ又は複数のレンズなどの他の構成要素が光源14に含まれることがあり、それらはレーザ共振器に取り付けられる、又はその外部に形成されてレーザ光を成形又は平行にする。
【0013】
引き続き図1を参照すると、導波路16は基板12上に形成され、基板12上の、光源14、制御部22、及び送信器24とは反対の側を占める。図1に示されるように、導波路16は、光源14との位置合わせがなされている第1の端部38と、基板12の中央部近くに配置されている第2の端部40とを含む。導波路16は螺旋状に配置されており、したがって第1及び第2の両側の端部38及び40の間に複数の巻回を含む。再び図2を参照すると、導波路16は主として、比較的屈折率の高いシリコン領域すなわち基板12の上部シリコン層32から形成される「コア」領域42と、それを取り囲んでいる屈折率がより低い領域とから成る。一般に理解されるように、コア部42は、パターニングやエッチングなどの既知の半導体加工技術を用いて上部シリコン層32から形成することができる。引き続き図2を参照すると、一実施形態では、埋め込まれた指示物質46を有する透過性高分子材料44が、導波路16のコア部42を覆って形成される。高分子材料44はアクリレートポリマーとすることができ、指示物質すなわち試薬46は、生物学的作用物質、化学的作用物質、及び生化学的作用物質などの1つ又は複数の「作用物質」すなわち検体に反応する化学物質又は他の物質とすることができる。例として生物学的作用物質及び化学的作用物質、又は化合物(たとえば、一酸化炭素、シアン化物、塩素、神経ガス、セリンなど)が挙げられる。指示物質46は、反応する作用物質にさらされると、光学特性、たとえば色、損失、屈折率などを変える(又は指示物質が埋め込まれている材料が光学特性を変えるようにする)ことができる。当業者には理解されるように、指示物質46は、高分子材料44の形成中に、高分子材料44に埋め込むことができる。明確に図示していないが、導波路16の第1及び第2の端部38及び40は、それぞれ反射面すなわち反射板39及び41を含むように形成され、線形の光共振器又は空洞共振器がそれらの間に形成される。反射板39及び41は光カプラすなわちサーキュレータとして働き、光を共振器に導く(又は方向付ける)ことを可能にし(又は、導かさせて)、光を、共振器を通って戻るように方向付けること(すなわち「再循環させること」)を可能にし(又は戻らせ)、且つ/又は、検出されるように、光を共振器の外へ方向付けることを可能にする(又は方向付けさせる)。光源14の波長は空洞共振器の自由スペクトル領域(FSR)にわたって合わせることができる。
【0014】
第1及び第2の光検出器18及び20は基板12上の中央部近くに配置される。好ましい実施形態では、第1及び第2の光検出器18及び20は各々、基板12上に形成された、ゲルマニウムをドープした領域を有するフォトダイオードを含む。他の実施形態では、光検出器18及び20は、たとえばシリコン、ゲルマニウム、又はインジウムガリウム砒素リン(InGaAsP)から成る個別の光検出器チップを含む。図1に示されるように、第2の光検出器20は導波路16の第2の端部40との位置合わせがなされている。
【0015】
一実施形態では、制御部22(又は処理サブシステム)は、基板12の上又は中に形成され、当業者には理解されるように、様々な回路及び/又はエッチングされた回路(たとえば、マイクロプロセッサ及び電源)を含む電子部品を含むことができ、たとえば、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又は以下に記載の方法及び処理を実行するためにマイクロプロセッサによって実行されるコンピュータ可読媒体に保存された命令などを含むことができる。図示したように、制御部22は、光源と、第1及び第2の光検出器18及び20と、送信器24と動作可能に通信し、且つ/又は電気的に接続されている。一般に理解されるように、送信器24は基板12上に形成され、たとえば無線周波数(RF)送信器を含む。
【0016】
引き続き図1を参照すると、一般に理解されるように、基板12は「シリコン光学ベンチ」とすることができ、その上に一連のトレンチ(又は導波路)48と、反射板(又は導波路カプラ)50と、レンズ52とを含むことができる。トレンチ48は光源14と、導波路16の第1の端部38と、第1のフォトダイオード18とを相互接続する。反射板50(又はビームスプリッタ)は光源14と導波路16の第1の端部38との間に配置され、導波路の第1の端部38からの光の少なくとも一部を第1の光検出器18に向けて反射するような向きに合わせられている。レンズ52は、反射板50と導波路16の第1の端部38の間に配置され、光源14からの光を導波路16の第1の端部38に集束させるような形状になっている。
【0017】
動作中、センサ10は、或る特定の作用物質(すなわち特定の指示物質が反応する作用物質)の検出が要望される環境(たとえば輸送コンテナ、建造物、兵士の身体など)に置かれる。制御部22は光源14を起動し、レーザ光を反射板50に向けて放射する。光源14から放射された光の一部は反射板50を透過し、レンズ52によって集束されて、導波路16の第1の端部38に入射する。図2と組み合わせて図1を参照すると、導波路16のコア部42及び高分子材料44、並びに基板12の絶縁層30の屈折率の違いによって、光のかなりの部分が導波路16を通って伝播し、導波路16のコア部42によって導かれる。光は導波路16を通り、その螺旋構造を回って伝播し、光の一部が導波路16の第2の端部40から放射され、そこで第2の光検出器20によって捕捉される。光の他の部分は反射板41によって反射される。光の反射した部分は逆向きに導波路16を通って第1の端部38及び第1の反射板39に向かって伝播する。反射した光の一部は導波路の第1の端部38を通過し、一方他の部分はさらに反射され、第2の端部40に向かって戻る。
【0018】
センサ10又はより詳細には高分子材料44が、指示物質46が反応する特定の作用物質にさらされると、指示物質46が化学変化を起こし、高分子材料44の有効屈折率又は高分子材料44の光損失が変わる。したがって、空洞共振器のFSR及び/又はフィネスが変わる。空洞共振器のFSR及び/又はフィネスは、空洞共振器のFSRより広い領域にわたってレーザの波長を掃引すること、およびフォトダイオードの出力を監視することによって測定される。
【0019】
一実施形態では、特定の作用物質に高分子材料44がさらされると、高分子材料44の屈折率又は損失が変化(たとえば、増大)し、高分子材料44にまで及ぶエバネッセント波の結合が変化して、導波路16の光損失が増大、又は低減する。したがって、空洞共振器のフィネスが変わる。空洞共振器のFSR及びフィネスは、空洞共振器のFSRにわたってレーザ波長を掃引すること、および第2の光検出器20を用いて導波路16の第2の端部40から放射された光出力を監視することによって確定することができる。2つの隣接するピーク強度の周波数分離を決定すると、空洞共振器のFSRが得られる。光出力のピーク幅を測定すると、共振ピークのFWHMが得られ、そこから空洞共振器のフィネスが計算される。制御部22又はその中のプロセッサは空洞共振器のFSR及びフィネスを監視し、比較する。FSR又はフィネスが所定量変化すると、制御部22は警告信号を生成する。警告信号は送信器24に送られ、そこで電波を介して、ユーザ又はセンサ10を監視しているコンピュータシステムに送信され得る。
【0020】
図3は、本発明の他の実施形態による、特定の作用物質を検出するセンサ60を示し、リング共振器の構成を含む。センサ60は基板62を含み、この基板は、前述した基板12と同様とすることができる。基板62上に、光源64と、第1の導波路66と、第2の導波路68と、第3の導波路70と、第1及び第2のエバネッセントカプラ72及び74と、第1及び第2の光検出器76及び78と、制御部80と、送信器82とがある。第1の導波路66はリング状であり、第2及び第3の導波路68及び70は、第1の導波路66の両側にあり、第1の導波路66に隣接している。第1のエバネッセントカプラ72は第1及び第2の導波路66及び68から(且つ、それらの間に)形成されており、第2のエバネッセントカプラ74は第1及び第3の導波路66及び70から形成されている。
【0021】
図3に示した実施形態では、光源64は実質上基板62の隅に配置され、第2の導波路68の第1の端部に結合される。前述した実施形態のように、光源64は、たとえば図1に関して記載したように、基板62の上に部分的に形成された又は取り付けられたレーザダイオードアセンブリであってもよい。
【0022】
図4及び図5は基板62と導波路の1つ(たとえば68)の一部をより詳細に示している。特に図5を参照すると、基板62は第1の(すなわち下部の)シリコン層88と、絶縁層90と、第2の(すなわち上部の)シリコン層92と、指示物質層94とを含む。このように、図3、図4、及び図5に示した基板62も、前述したものと同様のSOI基板とすることができる。第2のシリコン層92は絶縁層90を覆って形成され、指示物質層94は埋め込まれた指示物質95を含む。指示物質層94及び指示物質95は、前述し、図2に示した高分子材料44及び指示物質46と同様とすることができる。したがって、図3に示した実施形態では、埋め込まれた指示物質を有する透過性高分子材料は導波路68を覆って形成される。指示物質層94はアクリレートポリマーを含むことができ、指示物質すなわち試薬95は、生物学的作用物質、化学的作用物質、及び生化学的作用物質などの1つ又は複数の「作用物質」すなわち検体(たとえば、前述した生物学的作用物質及び化学的作用物質、又はそれらの混合物)に反応する化学物質又は他の物質とすることができる。指示物質95は、反応する作用物質にさらされると、たとえば色、屈折率、損失などの光学特性を変えることができる(又は指示物質が埋め込まれている材料が光学特性を変えるようにする)。指示物質95は、指示物質層94の形成中に、指示物質層94に埋め込むことができる。図5に示した実施形態では、指示物質層94は、導波路68によって占有される基板62の部分よりも遥かに広い部分を覆う。
【0023】
図4及び図5に示されているように、図示した実施形態では、基板62は、水平方向にフォトニック結晶構造又はフォトニックバンドギャップ周期構造を形成する層90及び92を通る複数の空孔部96も含む。一般に理解されるように、空孔部96は、たとえばフルオロカーボン放出に基づいたドライエッチング処理を用いて形成することができる。基板62上の領域すなわち範囲98は空孔部96によって占有されず、導波路68を画定する。図4及び図5に示される導波路68において、垂直方向における指数(すなわち屈折率)の違いと水平方向におけるフォトニックバンドギャップ効果とによって、光は実質的に、第2のシリコン層92内で単一固有モードに閉じ込められることに留意すべきである。
【0024】
再び図3を参照すると、一般に理解されるように、第1のエバネッセントカプラ72は、第2の導波路68内に伝播している光の少なくとも一部が第1の導波路66に結合されるように形成されている(すなわち、第1のカプラ72内で導波路66及び68の一部が近接している)。同様に、第2のエバネッセントカプラ74は、第1の導波路66からの光が第3の導波路70に結合され、光検出器78に方向付けられるように形成されている。当業者には理解されるように、第1及び第2のカプラ72及び74は、それぞれ光を共振空洞66に結合させる働きと、共振空洞66から結合させる働きをするため、リング共振器は、第1の導波路66と、第1及び第2のカプラ72及び74とによって形成される。制御部80及び送信器82は前述したものと同様とすることができる。制御部80は、光源64と、第1及び第2の光検出器76及び78と、送信器82と動作可能に通信する。
【0025】
動作中、センサ60は、特定の作用物質の検出が要望されている環境に置かれる。図3を参照すると、制御部80は光源64を起動し、光源64は、レーザ光(たとえば、約532、633、830、1330、及び/又は1550nmの波長を有する)などの光を第2の導波路68に放射する。レーザ光は第1のエバネッセントカプラ72によって第1の導波路66に結合される。第1の導波路66内の光は、第1及び第2のカプラ72及び74における複数の結合を可能にしながらリング内で循環する。第1の導波路66から第3の導波路70に結合された光は第2の光検出器78に方向付けられる。その結果得られる信号が監視され、制御部80によって処理される。シリコン内の可視光線の損失が高いため、532nmの光及び632nmの光を用いる場合、中空導波路(すぐ下の層(不図示)と空孔部を有する領域)範囲68を囲むために、シリカ、二酸化ケイ素、又は他の材料などの代わりの材料が用いられてもよいことに留意されたい。
【0026】
伝送波(すなわち、第2の光検出器78によって捕捉される光)は、第2の導波路すなわち共振器68内の再循環光波のほんの一部であり、その再循環光波から生じる。光の周波数が共振器68の共振から離調されると、伝送される部分は極わずかとなり、反射される部分のみが第1の光検出器76に当たり、弱め合う干渉が極めて小さくなり、最大の強度を示す。光の周波数が共振器の共振の中心を通して走査されると、伝送波は共振器68に対して最大となり、反射波との最大の弱め合う干渉が生じ、したがって、共振の中心を示す最小値を有する共振ディップがもたらされる。
【0027】
共振器68の共振中心周波数を観測するために、第1の光検出器76又は第2の光検出器78のどちらか一方での強度が測定されるか、又は標準的な同期検波技術が用いられることができる。同期検波の場合、入力光線は正弦波状に位相変調され、そのため、周波数は周波数(f)で変調され、光検出器76及び78によって測定される共振線形全体にわたって入力光線の周波数をディザリングする。たとえば、制御部(又は電子回路)80は、循環光線の光出力によって示される共振の中心を測定するために、第2の光検出器78の出力をfで復調することができる。共振線形の線の中心、すなわち共振中心において、光検出器76及び78は基本の検出周波数fで最小出力を検出し、線形の傾斜が最大となる辺りの線形の両側で最大値を検出する。
【0028】
共振器68が共振から外れている場合、強度信号の最大値が検出器76で観測されるが、fでの信号は実質的にゼロとなる。共振線形の線幅を観測するために、光源64の周波数は単調に走査され、第2の光検出器78における光強度信号は、少なくとも半値の後に最大値、次に別の半値という一連の観測がなされる。
【0029】
或いは、線形幅の第2の測定は、光源64の周波数が単調に走査される場合、fで復調された信号の最大値間の周波数差を監視することによって測定することができる。この場合、最大傾斜点の間の共振の周波数幅の測定値は共振器の線幅に比例し、したがって共振器68の損失に比例する。(たとえば、最大傾斜点の間の)半値から半値までの光源64の周波数の変移は共振器の線幅であり(すなわち、共振器の線幅に比例し)、この線幅は導波路68内の損失及び有害物質の存在の測定を示す。線幅が広くなることは、特定の指示物質95(図5)が反応するような作用物質又は有害物質が存在することを表す。
【0030】
図3を参照すると、エバネッセントカプラ72及び76などの、基板62上の様々な光学部品が10ミクロン程の小さい形状を有することができ、したがって嵩高い光学部品類を排除することができる。光学部品及び制御部80を基板62上にエッチングして形成し、配置することによって、非常に小型で安価なシリコン光学センサを製造することができ、大量生産に有利となる。基板及び材料系はシリコンが好ましいが、適切な特性を有する他の材料(たとえば、アルミナ、窒化物、III−V族元素、他の耐火物など)を基板に利用してもよい。
【0031】
1つの利点は、従来の半導体加工技術を用いて、回路及び光学部品が単一の基板上に形成されるため、小型で比較的安価な有害物質センサが提供されることである。他の利点は、導波路が他の部品と共に基板自体の上に形成されるため、装置の全体的な寸法をより一層低減しつつ、耐久性及び信頼性を向上させることができることである。
【0032】
他の実施形態では、アルファ粒子、ベータ粒子、ガンマ粒子の内の少なくとも1つに反応するリン(P)又はホウ素(B)などの、放射性に反応するドーパントを利用することができ、導波路自体(すなわち、図2のコア部42及び図5の層92の中)に埋め込むことができる。このようにして、放射性粒子は導波路自体の光学特性を変えるため、このような放射性粒子を検出することができる。
【0033】
様々な方法で形成される導波路(たとえば、ガラス上に形成された導波路、LiNbOに埋め込まれた導波路、及びエタロンなどの空洞共振器から形成された導波路)を利用して、様々な種類の光学共振器を用いることができることを理解されたい。一般に理解されるように、使用される空洞共振器は、たとえば、(たとえば空洞共振器の端部を反射させることによって形成された)線形共振器又は定在波共振器、及びリング共振器であってもよい。
【0034】
簡単に上述したとおり、フィネスは、レーザ波長を掃引すること、および空洞共振器から「漏れる」光出力を監視する(すなわち、第2の光検出器からの信号を見る)ことによって測定することができる。レーザ周波数が空洞共振器の或るFSRを超えて掃引された後、空洞共振器の出力のピーク間の周波数ギャップ(Δλ)が監視される。共振ピークの線幅を測定するためにレーザが掃引されてもよい。使用される線幅はピーク(δλ)の全幅半値(FWHM)(すなわちピークの最大振幅の半分におけるピークの周波数幅)であってもよい。フィネスはΔλ/δλ比を取ることによって計算することができる。このように、光損失及び/又は屈折率の変化により線幅及びFSRを変更することができ、したがってフィネスを変更することができる。
【0035】
指示物質は、導波路に隣接した材料内など、導波路の外側にあってもよい。指示物質をこのように使用すると、導かれた光波のエバネッセント結合に影響を及ぼし、空洞共振器内の損失を増加し、ひいては空洞共振器のフィネスを変化させることができる。指示物質が導波路に埋め込まれている場合、指示物質が検体にさらされると、導波路内の屈折率は、さらなる損失を生じることなく変化することが予想される。この実施形態では、FSRが変化してもよく、フィネスの測定は必要でない場合もある。
【0036】
少なくとも1つの例示的な実施形態を、前述した本発明の詳細な説明において提示してきたが、数多くの変更形態が存在することを理解されたい。この又はこれらの例示的な実施形態は単なる例に過ぎず、如何なる形でも、本発明の範囲、適用可能性、又は構成を限定するものではないことも理解されたい。むしろ、前述した詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供するであろう。添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態において記載した構成要素の機能及び配置に様々な変更を加えてもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の例示の実施形態による、作用物質を検出する装置の平面図である。
【図2】図1に示した装置上の導波路の線2−2に沿った断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による、作用物質を検出する装置の平面図である。
【図4】図3の装置の一部の平面図である。
【図5】図4に示した装置の一部の線5−5に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10、60 センサ
12、62 基板
14、64 光源
16 導波路
18、76 第1の光検出器
20、78 第2の光検出器
22、80 制御部
24、82 送信器
26 一辺の長さ
28 下部シリコン層
30、90 絶縁層
32 上部シリコン層
34 基板の厚さ
36 絶縁層の厚さ
38 第1の端部
39 反射板
40 第2の端部
41 反射板
42 コア部
44 高分子材料
46、95 指示物質
48 トレンチ
50 反射板
52 レンズ
66 第1の導波路
68 第2の導波路
70 第3の導波路
72 第1のエバネッセントカプラ
74 第2のエバネッセントカプラ
88 第1のシリコン層
92 第2のシリコン層
94 指示物質層
96 空孔部
98 空孔部を有さない基板上の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用物質を検出する装置(10)であって、
基板(12)と、
前記基板上にある、第1及び第2の両側の端部(38、40)を有する導波路(16)と、
前記導波路に光を放射する働きをする、前記基板上の光源(14)と、
光を捕捉するように配置され、捕捉した光を表す信号を生成するように構成されている、前記基板上の第1及び第2の光検出器(18、20)と、
前記基板上にある第1及び第2の光カプラ(39、41)であって、前記第1の光カプラは、前記導波路の前記第1の端部から伝播する光の少なくとも一部を前記第1の光検出器に向けて方向付け、前記導波路の前記第1の端部から伝播する光の少なくとも一部を前記導波路に戻る向きに方向付けるように配置されており、前記第2の光カプラは、前記導波路の前記第2の端部から伝播する光の少なくとも一部を前記第2の光検出器に向けて方向付け、前記導波路の前記第2の端部から伝播する光の少なくとも一部を前記導波路に戻る向きに方向付けるように配置されており、前記導波路と前記第1及び第2の光カプラは少なくとも部分的に共振器を形成している第1及び第2の光カプラと、
埋め込まれた物質(46)を有する前記導波路の少なくとも一部に埋め込まれているか、隣接しているかの少なくともどちらか一方である材料(44)であって、前記物質は前記作用物質に反応し、前記作用物質は生物学的作用物質、化学的作用物質、及び生化学的作用物質の内の1つである材料と、
前記基板上にあり、前記第1及び第2の光検出器と動作可能に通信し、前記作用物質に対する前記物質の前記反応によって生じる、前記共振器の共振線形の変化を検出するように構成されているプロセッサ(22)とを備える装置。
【請求項2】
前記共振器が線形共振器であり、前記第1及び第2の光カプラ(39、41)のそれぞれが反射面を備える、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
作用物質を検出する方法であって、
第1及び第2の両側の端部(38、40)を有する導波路(16)を基板(12)上に形成するステップと、
物質(46)を有する材料(44)を前記導波路内と前記導波路隣接部の少なくともどちらか一方に配置するステップであって、前記物質は前記作用物質に反応する、ステップと、
光を前記導波路の前記第1の端部に方向付けるステップであって、前記光は前記導波路を通り、前記導波路の前記第2の端部から伝播する、ステップと、
前記導波路の前記第2の端部から伝播する前記光の第1の部分を、前記導波路の前記第1の端部から放射されるように前記導波路に戻る向きに方向付ける、ステップと、
前記導波路の前記第2の端部から伝播する前記光の第2の部分を捕捉するステップと、
前記導波路の前記第1の端部から伝播する前記光の第1の部分を、前記導波路に戻る向きに、前記導波路の前記第2の端部に向けて方向付けるステップであって、前記導波路は少なくとも部分的に共振器を形成している、ステップと、
前記導波路の前記第1の端部から伝播する前記光の第2の部分を捕捉するステップと、
前記作用物質に対する前記物質の前記反応によって生じる、前記共振器の共振線形の変化を表す信号を生成するステップとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−104135(P2009−104135A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−271052(P2008−271052)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】