説明

保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法

【課題】コストが安価で製造が容易な、フィルムコンデンサに異常が生じた際に保安機能を発揮し、通常は電極として作用する保安機能予備連続部を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを提供する。
【解決手段】帯状の誘電体フィルム2の少なくとも一面に導電性金属膜3を蒸着して金属蒸着フィルムを形成する工程と、金属蒸着フィルムを所定の幅寸法に切断する切断工程と、切断された金属蒸着フィルム1をリールにて巻取る巻き取り工程とを有し、切断工程、或いは、巻き取り工程において、金属蒸着フィルムの導電性金属膜面に、深さ方向にて誘電体フィルムにまで到達していない保安機能予備連続部4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘電体フィルム上に導電性金属を蒸着した金属蒸着フィルムを所定の幅に裁断した保安機能予備連続部を有する金属蒸着フィルムの製造方法に関し、更には、
その製造方法により製造された金属蒸着フィルム、及び、その金属蒸着フィルムを使用して製造された保安機能付きフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に金属蒸着フィルムコンデンサは異常電圧の進入などにより、絶縁破壊が生じ、異常部分に過電流が流れて発煙・発火するのを防止するために、コンデンサ素子に電流ヒューズ部を設け、また、ケースの変形を利用して、リード線を引きちぎる保安装置を設けている。しかし、これら保安装置を有するコンデンサは乾式化、小型化が困難であり、このため、これに代わるものとして、使用する金属蒸着フィルムそのものにその機能を持たせている。JIS C 4908では、コンデンサ素子に電流ヒューズ部を設け、また、ケースの変形を利用してリード線を引きちぎる保安装置を設けているコンデンサは、保安装置内蔵コンデンサとしている。金属蒸着フィルムそのものにその機能を持たせて金属蒸着フィルムの異常部分を切り離すことができるコンデンサは、保安機構付コンデンサとしている。
【0003】
この様な保安機構付金属蒸着フィルムコンデンには、通常、金属蒸着電極を横マージンによって長手方向に複数個に分割し、分割された個々の分割電極のメタリコン側に近い個所に、縦マージンによるヒューズ部を形成した保安機構マージンを有する金属蒸着フィルムが少なくとも一枚は用いられる。保安機構マージン付きフィルムコンデンサは、異常電圧が進入するとヒューズ部の金属蒸着電極が発熱し、ヒューズ部が溶断する。このため分割電極内で絶縁破壊が起こる前に、分割電極は他の金属蒸着電極から絶縁される。この作用によって、発煙・発火を防止できる。
この様な保安機構マージンパターンは、基体となる誘電体フィルム上への金属の蒸着前にオイルをパターン付着させ蒸着金属を付着させない方式、または、金属の蒸着後にYAGレーザーにより蒸着膜の一部をパターン除去する方式で形成されている。
【0004】
この様な保安機構マージンパターンを有する金属蒸着フィルムコンデンサとして、特許文献1には、加工性が良好で、かつ耐電圧が高く信頼性が高いコンデンサ用金属蒸着フィルム、および金属化フィルムコンデンサであり、コンデンサ用金属蒸着フィルムは、高分子フィルムの少なくとも片面に金属蒸着層を有するコンデンサ用金属蒸着フィルムにおいて、蒸着金属層が非蒸着スリットで細分化され、複数の分割電極とそれらを接続するヒューズ部で構成されており、高分子フィルムの金属蒸着層を形成する側の面の表面粗さが金属蒸着層を形成しない側の表面粗さよりも大きいものであり、金属化フィルムコンデンサは、かかるコンデンサ用金属蒸着フィルムを用いて構成されていることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、保安機能付き金属蒸着フィルムコンデンサであり、 ベースフィルムの一方の側縁に長さ方向に連続して形成されている金属蒸着領域にヒューズ部を介して連通しており、周囲を非蒸着絶縁部で囲まれている金属蒸着電極区画がフィルムの長さ方向に分割して形成されている、Tマージン型金属蒸着フィルムであり、該ヒューズ部の電流が流れる方向の長さLとそれと直角方向の長さ(巾)Bの比L/Bが0.5〜3.0で、かつ巾Bが0.3mm〜2.0mmの範囲である金属蒸着フィルムを使用した金属蒸着フィルムコンデンサが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、耐電圧性が良好でかつ素子巻き性の良いコンデンサ用金属蒸着フィルム及びそれを用いたコンデンサであり、高分子フィルムの少なくとも片面に金属が蒸着されている蒸着フィルムにおいて、該金属蒸着面の平均表面粗さRa(nm)が10以上70以下であり、かつ該フィルムのすべり荷重がフィルム幅当たり2g/mm以下であることを特徴とするコンデンサ用蒸着フィルム、その製造方法、該コンデンサ用蒸着フィルムからなるコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−957号公報
【特許文献2】特開2000−114089号公報
【特許文献3】特開2004−111774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2、3に開示される金属蒸着フィルム上に保安機構マージンを形成する方法では、オイルを使用することによる蒸着工程後の後工程での作業性の低下、高価で取り扱いの面倒なレーザー装置を使用することによる製造コストのアップ、更に、保安機構マージン部の形成にての電極面積の減少によるフィルムコンデンサ自体の小型化の困難性等の問題点を有していた。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであり、コストが安価で製造が容易な、フィルムコンデンサに異常が生じた際に保安機能を発揮し、通常は電極として作用する保安機能予備連続部を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムとその製造方法、また、この金属蒸着フィルムを使用して製造された保安機能付フィルムコンデンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究の結果、誘電体基体フィルムへの金属未蒸着部の形成により、保安機能連続マージン部、所謂、T型マージン部を形成するのではなく、金属蒸着膜に、深さ方向にて、誘電体基体フィルムにまで到達しておらず、異常が生じた際に、保安機能を発揮する適切なパターンを有する保安機能予備連続部を、金属蒸着工程後の切断工程、或いは、巻き取り工程において、適切な方法にて形成することにより、課題を解決できることを見出した。
即ち、誘電体基体フィルム上に形成された金属未蒸着の保安機能連続マージン部ではなく、金属蒸着膜に深さ方向で誘電体基体フィルムにまで到達していない適切なパターンの保安機能予備連続部を形成しておき、この保安機能予備連続部を有するコンデンサ用金属蒸着フィルムを使用して製造されたフィルムコンデンサの一部に欠陥が生じ、短絡などの異常事態が生じて過電流が流れた際、その衝撃にて、金属蒸着膜に形成されている保安機能予備連続部が、誘電体基体フィルムに到達し、金属未蒸着の保安機能連続マージン部を形成すると共に、過負荷部分の金属蒸着膜が破壊されることにより、フィルムコンデンサとしての保安機能を発揮させるのである。
【0011】
また、金属蒸着膜に深さ方向にて誘電体基体フィルムにまで到達していない適切なパターンの保安機能予備連続部は、通常時は電極部分として作用しており、電極面積が稼げ、保安機能付フィルムコンデンサの小型化及び製造コストの低減に繋がる。
更に、金属蒸着膜に深さ方向にて誘電体基体フィルムにまで到達していない適切なパターンの保安機能予備連続部を、蒸着工程ではなく、後工程となる切断工程、或いは、巻き取り工程において、複雑な装置を使用せずに、誘電体基体フィルム面へのパターン形成ロールの押圧、或いは、パターン形成プレス板の押圧により形成するので、面倒なオイル処理や高価なレーザー加工を使用することがなく、製造も容易になり、コストも低下することとなる。
【0012】
本発明の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、帯状の誘電体フィルムの少なくとも一面に導電性金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成する工程と、前記形成された金属蒸着フィルムを所定の幅寸法に切断する切断工程と、前記切断された金属蒸着フィルムをリールにて巻取る巻き取り工程とを有する保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法において、前記切断工程、或いは、前記巻き取り工程において、前記金属蒸着フィルムの導電性金属膜面に、深さ方向にて前記誘電体フィルムにまで到達していない保安機能予備連続部を形成することを特徴とする。
この保安機能予備連続部は通常は電極部として作用しているが、前記保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを使用して製造されたフィルムコンデンサの一部に欠陥が生じ、短絡などの異常事態が生じて過電流が流れた際、その衝撃にて、基体フィルムに到達して金属未蒸着の保安機能連続マージン部を形成すると共に、過負荷部分の金属蒸着膜を破壊することにより、フィルムコンデンサとしての保安機能を発揮させるのである。
【0013】
また、本発明の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、前記保安機能予備連続部の表面抵抗値が前記導電性金属膜の表面抵抗値の20〜150倍で、前記保安機能予備連続部の平均幅が0.2〜0.5mmであることを特徴とする。
保安機能予備連続部の表面抵抗値が導電性金属膜の表面抵抗値の20倍未満では、フィルムコンデンサの衝撃時に必要となる保安機能性が充分に発揮されず、150倍を超えると、電極としての役割が不安定となる。
保安機能予備連続部の平均幅が0.2mm未満では金属電極としての役割が不安定であり、平均幅が0.5mm以上ではコンデンサの衝撃時に必要となる保安機能性が充分に発揮されない。
【0014】
また、本発明の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、前記切断工程時、或いは、前記巻き取り工程時に、前記金属蒸着フィルムの誘電体フィルム面に凸版のパターン形成ロールを押圧し、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面に前記保安機能予備連続部を形成することを特徴とする。
誘電体フィルム面と金属蒸着面では引張り強度、収縮率が異なり、フレキシビリチィの大きい、切断或いは巻取り走行中の誘電体フィルム面に凸版のパターン形成ロールを押圧するのみで、割れ目に近い形で容易に保安機能予備連続部を形成することが出来る。
凸版のパターン形成ロールの押圧は、基体フィルムの厚さ、金属蒸着厚みに応じて最適に設定すれば良く、パターンとしてはT型マージン部を有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法は、前記切断工程時、或いは、前記巻き取り工程時に、前記金属蒸着フィルムの誘電体フィルム面にパターン形成プレス板を押圧し、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面に前記保安機能予備連続部を形成することを特徴とする。
パターン形成プレス板の押圧は、基体フィルムの厚さ、金属蒸着厚みに応じて最適に設定すれば良く、パターンとしてはT型マージン部を有することが好ましい。
【0016】
更に、本発明の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムは、前記製造方法により製造されたことを特徴とする。
更に、本発明の保安機能付フィルムコンデンサは、前記保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを使用して製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コストが安価で製造が容易な保安機能予備連続部を有する保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム及びその製造方法、また、その金属蒸着フィルムを使用して製造された保安機能付フィルムコンデンサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを示し、(a)が全体平面図、(b)が(a)のA−A線に沿う保安機能予備連続部の詳細断面図である。
【図2】図1のフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを製造する際に用いられる真空蒸着機の概略構成図である。
【図3】図1のフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを製造する途中の切断及び保安機能予備連続部の形成装置を示す全体概略図である。
【図4】図3で用いられている保安機能予備連続部形成用ロールを示し、(a)が斜視図、(b)が保安機能予備連続部を形成している状態の拡大断面図である。
【図5】保安機能予備連続部形成用プレス板を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照に説明する。
図1に示す様に、本発明の保安機能予備連続部を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム1は、基体である誘電体フィルム2の表面に蒸着された導電性金属膜3とからなり、導電性金属膜3には、基体である誘電体フィルム2の表面にまで達していない保安機能予備連続部4が形成されている。
本発明の基体となる誘電体フィルム2の種類は特に限定されないが、耐電圧性、セルフヒーリング性(自己回復性)の点から、2軸延伸された高分子フィルムが好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリプロピレンフィルムが耐電圧性の点から好ましい。また、フィルム厚みも特に限定されないが、近年のフィルムコンデンサ小型化により、12μm以下が好ましい。
【0020】
本発明にて基体である誘電体フィルム2の表面に蒸着される導電性金属としては、Al、Zn、Cu、Ag、Au 、Sn、Niあるいはこれらの合金など、導電性を有するものであれば特に限定されないが、Al、Zn、CuおよびSnなどが、フィルムコンデンサの電気特性や生産性の面から好ましい。
【0021】
本発明にて使用される保安機能予備連続部4のパターンとしては特に限定されないが、導電性金属膜3の表面に、深さ方向にて誘電体基体フィルム2にまで到達しておらず、その表面抵抗値が保安機能予備連続部4以外の部分の導電性金属膜3の表面抵抗値の20〜150倍で、平均幅が0.2〜0.5mmである保安機能予備連続部4を有することが重要である。保安機能予備連続部4以外の導電性金属膜3の表面抵抗値は1〜300Ω/□とされる。これに対して、保安機能予備連続部4の表面抵抗値が導電性金属膜3の表面抵抗値の20倍未満では、コンデンサの過電流等による衝撃時に必要とされる保安機能性が充分に発揮されず、150倍を超えると、金属電極としての役割が不安定となる。同様に、平均幅が0.5mmを超えると、コンデンサの過電流等の衝撃時に必要とされる保安機能性が充分に発揮されず、平均幅が0.2mm未満以上では、金属電極としての役割が不安定となる。この保安機能予備連続部4が、この保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム1を使用して製造されたフィルムコンデンサの一部に欠陥が生じ、短絡などの異常事態が生じて過電流が流れた際に、その衝撃にて、基体フィルム2に到達して導電性金属膜3が分断された保安機能連続マージン部を形成すると共に、過負荷部分の導電性金属膜3を破壊することにより、フィルムコンデンサとしての保安機能を発揮させる。
【0022】
また、この保安機能予備連続部4のパターンは、図1(a)に示す様な、所謂、T型パターンを有していることが好ましく、衝撃時に効果的に反応良く保安機能を発揮することが可能となる。そのT型パターンの保安機能予備連続部4の間が過電流発生時の過負荷部分となるヒューズ部5である。
なお、図1(a)において符号6は導電性金属膜3が形成されない余白部、同図(b)において符号7はメタリコン電極を示している。
【0023】
以上のように構成される保安機能予備連続部を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム1の製造方法は、帯状の誘電体フィルム2の少なくとも一面に導電性金属膜3を蒸着して金属蒸着フィルム10を形成する工程と、形成された金属蒸着フィルム10を所定の幅寸法に切断する工程と、切断された金属蒸着フィルム10をリールにて巻取る工程とを有しており、切断工程、或いは、巻き取り工程において、金属蒸着フィルム10の導電性金属膜3面に、深さ方向にて誘電体フィルム2にまで到達していない保安機能予備連続部4を形成する。
本発明にて、帯状の誘電体フィルム2の少なくとも一面に導電性金属膜3を蒸着して金属蒸着フィルム10を形成する方法としては特に限定されないが、生産性の点から真空蒸着による方法を使用することがより好ましい。
【0024】
図2に示すように、真空蒸着装置11内においてロール12から誘電体フィルム2が第二ロール13上へと巻き出され、第二ロール13上で抵抗加熱されたボード14からの金属が蒸着速度を制御されながら、余白部6を除くフィルム部全幅にわたって蒸着され、金属蒸着された誘電体フィルム(金属蒸着フィルム10)は巻き取りロール15により巻き取られる。金属は、Al、Zn、CuおよびSnであることが好ましく、蒸着厚みtは特に限定はされないが、膜抵抗にして、1〜300Ω/□であることが好ましい。余白部6は、フィルムコンデンサとしての使用時にメタリコンとの間で必要となるマージン部であり、本明細書中での保安機能連続部(後述するように保安機能予備連続部が破壊することにより形成される)、或いは、保安機能予備連続部4とは、意味合いが異なり、役割も全く異なる。この金属非蒸着の余白部6は、相当する誘電体フィルム2にオイルマージン法、或いは、テープマージン法により形成される。
【0025】
次に、この巻き取られた金属蒸着フィルム10をロール15から繰り出しながら、切断機16により適切な幅に切断して(切断工程)、細幅となった金属蒸着フィルムをそれぞれリール17に巻き取る(巻き取り工程)。その際に、金属蒸着フィルム10の誘電体フィルム2面に、図2に示す、深さ方向にて誘電体基体フィルム2にまで到達していない保安機能予備連続部4を、図4に示す凸版のパターン形成ロール18を押圧することにより形成する。このパターン形成ロール18は図4に示すように、ロールの表面に図示例ではT型パターンで突起19が設けられ、この突起を金属蒸着フィルム10の誘電体フィルム2面に押圧することにより、金属蒸着膜3に引張り力を作用させて、保安機能予備連続部4を形成するものである。このパターン形成ロール18に代えて、図5に示すパターン形成プレス板21を押圧することにより、保安機能予備連続部4を形成するようにしてもよい。
誘電体フィルム2面と金属蒸着膜3面では引張り強度、収縮率が異なり、フレキシビリチィの大きい、切断或いは巻取り走行中の誘電体フィルム2面に凸版のパターン形成ロール18、或いは、パターン形成プレス板21を押圧するのみで、割れ目に近い形で容易に保安機能予備連続部4を形成することが出来る。
【0026】
切断方法はリール状に整えられるものであれば特に限定されないが、金属蒸着後のフィルムを長手方向に連続的に所定幅に切断するスリッターを用いることが、フィルム幅の均一性、端面形状から望ましい。また、フィルム幅はフィルムの長手軸方向のカット端面形状は上面(金属蒸着面側から基材面を透かす、或いはその逆の方向)から見て直線である必要はなく、一定周期で、連続的な波形であっても構わない。この適当な寸法に切断され、保安機能予備連続部4が形成された金属蒸着フィルム1をリール17にて巻き取り、本発明の保安機能予備連続部4を有するフィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム1が製造される。
【0027】
図3では、切断機(スリッター)16による適切な幅に切断した後の、巻取り走行中の金属蒸着フィルム10の誘電体フィルム2面に、図1(b)に示す、深さ方向にて前記誘電体フィルム2にまで到達していない保安機能予備連続部4を形成したが、切断機16と同軸に図4に示す凸版のパターン形成ロール18を配置して、切断と同時に保安機能予備連続部4を形成するようにしてもよい。或いは、切断機16よりも上流位置にパターン形成ロール18を配置して、保安機能予備連続部4を形成した後に切断するようにしてもよい。図5に示すパターン形成プレス板21の場合も同様であり、切断機16と並べて配置する、或いは切断機16より上流位置に配置することにより、保安機能予備連続部4を形成することができる。
【実施例】
【0028】
誘電体基体フィルム2として幅300mm、厚み3.0μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、金属蒸着される面に金属の密着強度を高める目的にて空気中でコロナ処理を実施し、真空蒸着装置11内にて、テープマージン部(余白部6)を除く、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの全幅にわたって、Alを膜抵抗にして、100Ω/□の厚みにて蒸着し、巻き取りロール15に巻き取った。
この巻き取られた金属蒸着フィルム10を縦方向に切断機16にて50mm幅に切断し、切断され巻き取りリール17へ走行中の金属蒸着フィルム10の誘電体フィルム2面に図4に示す凸版のパターン形成ロール18を0.2〜1.0kg/cmの圧力で押しあて、深さ方向にて誘電体基体フィルム2にまで到達していない8500Ω/□の厚みで平均幅が0.4mmである保安機能予備連続部4を形成し、保安機能予備連続部4が形成された金属蒸着フィルム1を巻き取りリール17にて巻き取った。
【0029】
次に、この保安機能予備連続部4が形成された金属蒸着フィルム1を使用して素子巻きを実施し、静電容量60μF、フィルム幅50mmの円筒形の巻回型フィルムコンデンサを作製した。
この巻回型フィルムコンデンサに可変直流電源を接続し、常温にて電圧を段階的に上げ、各ステップで1分間保持した。開始負荷電圧を700Vとし、10Vずつのステップアップとし、各ステップの終了毎にLCRメータで静電容量を測定した。容量測定は安藤電気株式会社製LCRメータAG−4311を用いて1V、1kHzの条件で測定した。
負荷電圧が750Vとなった時に、瞬時に負荷電圧を800Vまで上昇させて5秒間維持し、再度負荷電圧を750Vに戻したところ、フィルムコンデンサに異常が起きたが、コンデンサとしての特性には大きな変化は見られず、金属蒸着フィルムに形成された保安機能予備連続部4が作動して、この保安機能予備連続部4の作動により形成される保安機能連続部間の過負荷部分(ヒューズ部)の金属蒸着膜のみが破壊され、保安機能が充分に発揮出来たことが確認された。
【0030】
また、比較として、実施例と同様の製造方法にて作製された、1000Ω/□の厚みで平均幅が0.6mmである保安機能予備連続部を有する金属蒸着フィルムを使用して作製された円筒形の巻回型フィルムコンデンサを実施例と同様の試験をしたところ、金属蒸着フィルムの保安機能予備連続部が作動せずに、コンデンサとして機能が失われることを確認した。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム
2 誘電体フィルム
3 金属蒸着膜
4 保安機能予備連続部
5 ヒューズ部
6 余白部
7 メタリコン電極
10 金属蒸着フィルム
11 真空蒸着機
12 ロール
13 第二ロール
14 ボード
15 巻き取りロール
16 切断機
17 リール
18 パターン形成ロール
19 突起
21 パターン形成プレス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の誘電体フィルムの少なくとも一面に導電性金属膜を蒸着して金属蒸着フィルムを形成する工程と、前記金属蒸着フィルムを所定の幅寸法に切断する切断工程と、前記切断された金属蒸着フィルムをリールにて巻取る巻き取り工程とを有する保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法において、前記切断工程、或いは、前記巻き取り工程において、前記金属蒸着フィルムの導電性金属膜面に、深さ方向にて前記誘電体フィルムにまで到達していない保安機能予備連続部を形成することを特徴とする保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記保安機能予備連続部の表面抵抗値が前記導電性金属膜の表面抵抗値の20〜150倍で、前記保安機能予備連続部の平均幅が0.2〜0.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記切断工程時、或いは、前記巻き取り工程時に、前記金属蒸着フィルムの誘電体フィルム面に凸版のパターン形成ロールを押圧し、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面に前記保安機能予備連続部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記切断工程時、或いは、前記巻き取り工程時に、前記金属蒸着フィルムの誘電体フィルム面にパターン形成プレス板を押圧し、前記金属蒸着フィルムの金属蒸着面に前記保安機能予備連続部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により製造された保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の保安機能付フィルムコンデンサ用金属蒸着フィルムを使用して製造された保安機能付フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−165742(P2011−165742A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24109(P2010−24109)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】