説明

保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤

【課題】 本発明は、優れた保湿効果を示し、皮膚外用剤において安全性上でも問題のない新規保湿剤、およびそれを含有する保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤を提供することにある。
【解決手段】 ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)シオガマギク属(Pedicularis)、シソ科(Lamiaceae)独一味属(Lamiophlomis)またはドラコセファルム属(Dracocephalum)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)アレナリア属(Arenaria)、ラン科(Orchidaceae)テガタチドリ属(Gymnadenia)、ギョリュウ科(Tamaricaceae)水柏枝属(Myricaria)、バラ科(Rosaceae)キジムシロ属(Potentilla)、アブラナ科(Brassicaceae)ペガエオフィトン属(Pegaeophyton)、ハマビシ科(Zygophyllaceae)ニトラリア属(Nitraria)に属する植物から選ばれる1種または2種以上の抽出物からなる保湿剤、および、これらを含有する皮膚外用剤を提供することにより、上記課題を解決することを見いだしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な保湿剤およびこれを含有することにより、優れた保湿ならびに肌荒れ改善効果を発揮してなる保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤は皮膚に適用することにより、皮膚に対して特定の効果を発揮させることを意図した製剤であり、保湿効果や、肌荒れ改善効果はその特定の効果のひとつである。これらの効果を目的とした化粧料などの皮膚外用剤の有効成分としては、アミノ酸や多糖、多価アルコール(非特許文献1参照)、薬用植物などの抽出物(非特許文献2〜非特許文献5参照)などが従来から用いられている。特に、植物抽出物においては、現在も非常に活発な研究が成されている。例えば、保湿剤、肌荒れ改善剤に限っても、ラッカセイ(特許文献1参照)、サルナシ(特許文献2参照)、オオバコ(特許文献3参照)、ハマグルマ属植物(特許文献4参照)、サクラ属植物等(特許文献5参照)、アカテツ科植物(特許文献6参照)、レピディウム属植物(特許文献7参照)、アボカド等(特許文献8参照)、イヌカラマツ(特許文献9参照)、ウコギ科植物(特許文献10参照)、アスパラガス・ラセモサス等(特許文献11参照)、ホウセンカ(特許文献12参照)、ブナ(特許文献13参照)、ニシキギ属植物(特許文献14参照)、ココツヤシ(特許文献15参照)などの植物に関する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−145757号公報
【特許文献2】特開2002−145754号公報
【特許文献3】特開2002−145731号公報
【特許文献4】特開2002−20262号公報
【特許文献5】特開2002−20225号公報
【特許文献6】特開2001−122732号公報
【特許文献7】特開2001−39854号公報
【特許文献8】特開2001−39823号公報
【特許文献9】特開2000−226323号公報
【特許文献10】特開平11−158053号公報
【特許文献11】特開平11−92332号公報
【特許文献12】特開平10−287527号公報
【特許文献13】特開平9−227397号公報
【特許文献14】特開平7−126146号公報
【特許文献15】特開平6−72838号公報
【非特許文献1】光井武雄編、「新化粧品学」、第2版、南山堂、2001年1月18日、p.152−156、およびp.187−188
【非特許文献2】一丸貿易製造開発部、「薬用植物の応用とその効果について」、フレグランスジャーナル、フレグランスジャーナル社、1979年、臨時増刊1号、p.43−48
【非特許文献3】田口昌之、「ヨーロッパにおける生薬の化粧品への利用と安全性」、フレグランスジャーナル、フレグランスジャーナル社、1979年、臨時増刊1号、p.66−74
【非特許文献4】大津吉朗、「植物性抽出成分の化粧品への利用と課題」、フレグランスジャーナル、フレグランスジャーナル社、1979年、臨時増刊1号、p.84−87
【非特許文献5】「各社植物成分リスト」、フレグランスジャーナル、フレグランスジャーナル社、1986年、臨時増刊6号、p.324−349
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前項で説明したように、保湿効果または肌荒れ改善効果を有する有効成分については、数多くの検討が成されているものの、上記の有効成分を含有する皮膚外用剤は何れにおいても、その保湿効果、肌荒れ改善効果は必ずしも十分ではなく、より効果の優れた有効成分およびその成分を含有する皮膚外用剤の開発が望まれていた。また、保湿剤によっては、使用性、安全性、防腐等の面において皮膚外用剤に使用するためには問題があったりするものもある。
【0005】
上記事情を鑑み、本発明の課題は、効果に優れた保湿剤及びそれを含有する保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、当該課題を解決するため、優れた効果を発揮する保湿剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)シオガマギク属(Pedicularis),シソ科(Lamiaceae)独一味属(Lamiophlomis)またはドラコセファルム属(Dracocephalum),ナデシコ科(Caryophyllaceae)アレナリア属(Arenaria),ラン科(Orchidaceae)テガタチドリ属(Gymnadenia),ギョリュウ科(Tamaricaceae)水柏枝属(Myricaria),バラ科(Rosaceae)キジムシロ属(Potentilla),アブラナ科(Brassicaceae)ペガエオフィトン属(Pegaeophyton),ハマビシ科(Zygophyllaceae)ニトラリア属(Nitraria)に属する植物から選ばれる1種または2種以上の抽出物が、優れた保湿効果を有すると共に、安全性等の面においても皮膚外用剤に使用するのに問題がない保湿剤であること、そして、この保湿剤を外用剤に配合することにより、保湿性に優れ、肌荒れ改善・予防効果を有し、安全性等の面においても優れた皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れた保湿効果を有し、安全性が高い新規な保湿剤、および、優れた保湿効果および肌荒れ改善・予防効果を有し、安全性が高く、使用性等にも優れた保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
本発明に係るゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)シオガマギク属(Pedicularis)植物の例としては、長筒馬先蒿(Pedicularis longiflora Rudol-var.tubiformis)が挙げられる。長筒馬先蒿はチベット、四川、雲南などの中国に多く分布し、主に花が生薬として用いられてきた。高さ10〜20cm、開花期は5〜10月の低い草本で、高山の草原および渓流のそばに生える。中国では、清熱し湿を除く、肝炎、胆嚢炎、小便が膿血を帯びるものを治すとして知られている。
【0010】
シソ科(Lamiaceae)独一味属(Lamiophlomis)植物の例としては、独一味(Lamiophlomis rotata Benth. Kudo)が挙げられる。チベット、四川、甘粛などの中国高原地帯に多く分布する多年生の小型草本。開花期は5〜7月で、高山の極度に風化した砕石原や、高山の草地に生える。独一味は根および根茎、あるいは全草が生薬として知られている。
【0011】
シソ科(Lamiaceae)ドラコセファルム属(Dracocephalum)植物の例としては、唐古特青蘭(Dracocephalum tanguticum Maxim.)が挙げられる。タングートセイランともいう。チベット、四川、甘粛、青海など中国で多く分布する多年生草本。開花期は7〜8月で、山腹、渓流の周辺、畦などに生える。根を含めた全草が生薬として用いられ、胃炎、潰瘍病、肝炎、肝肥大を治すとして知られている。
【0012】
ナデシコ科(Caryophyllaceae)アレナリア属(Arenaria)植物の例としては、雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)が挙げられる。チベット、甘粛、青海、四川西部など中国で多く分布する多年生の矮小草本。石灰岩の高山の石の割れ目か、あるいは草原に生える。インフルエンザ、肺炎、黄疸、肋骨疼痛、淋痛を治すとして知られる。
【0013】
ラン科(Orchidaceae)テガタチドリ属(Gymnadenia)植物の例としては、手掌参(シュショウジン)が挙げられる。手掌参と言われるものには、手参(Gymnadenia conopsea R. Br.)、粗脈手参(Gymnadenia crassinervis Finet)の2種が挙げられる。手参(シュジン、和名:テガタチドリ)は中国の四川、華北、東北、西北などで多く分布し、陰陽草(インヨウソウ)ともいう。日本では、亜高山帯から高山帯の草原に生え、ユーラシア大陸の亜寒帯にも広く分布する多年生草本である。開花期は6〜7月で、結実期は7〜8月。川や谷、やぶに生えている。粗脈手参はチベットなどに多く分布する多年生草本。高山の草地あるいは林縁の湿った肥沃な場所に生える。手掌参は塊茎を生薬として利用し、中国では、津液を生じ止渇する効果があるとして知られる。
【0014】
ギョリュウ科(Tamaricaceae)水柏枝属(Myricaria)植物の例としては、水柏枝(Myricaria germanica (L.) Desv.)が挙げられる。チベット、四川、甘粛、青海、山西、雲南など中国で多く分布する落葉低木。水辺、川原に生える。若枝を生薬として利用し、麻疹不透、風湿卑痛、癬を治すとして知られる。
【0015】
バラ科(Rosaceae)キジムシロ属(Potentilla)植物の例としては、蕨麻(Potentilla anserina L.)が挙げられる。中国の東北、華北、西北および西南などに多く分布する多年草草本。道端、溝の縁、野原などの湿気の多いところに生える。蕨麻は生薬としては塊根を利用し、脾を健やかにし胃を益す、脾虚による下痢、病後の貧血、栄養不良を治すとして知られる。
【0016】
アブラナ科(Brassicaceae)ペガエオフィトン属(Pegaeophyton)植物の例としては、高山辣根菜(Pegaeophyton scapiflorum Hook.f. et Thoms. Marq. et Airy-Shaw)が挙げられる。ヒマラヤからチベット、中国の横断山脈、崑崙山脈などの海抜3700〜5500mの中央アジア高地に分布し、荒れた礫地などに生える小型の多年草。主に清肺熱(肺経の熱を除く)を治すとして知られる。
【0017】
ハマビシ科(Zygophyllaceae)ニトラリア属(Nitraria)植物の例としては、唐古特白刺(Nitraria tangutorum Bohr.)が挙げられる。チベットなどに多く分布する。花期は5〜6月、果期は7〜8月で赤い果実がなる。果実が胃の病気などに利用される。その他、消化不良、感冒などに効くとして知られている。
【0018】
しかしながら、本発明に係る植物抽出物の保湿剤としての有効性を見い出したこと、さらに皮膚外用剤に含有させることで、優れた保湿効果及び肌荒れ改善効果が発揮されることについては本発明者が始めて見出したものである。
【0019】
本発明にかかる抽出物は、本発明にかかる植物体の花穂、葉、茎、根等の何れの部分を用いても良く、それぞれの全草を用いて抽出しても良く、さらにはそれぞれの植物の全草および各部位から複数を選択、混合して抽出しても良い。また、その抽出方法は常法であればよく、各部位を生のまま、或いは乾燥・粉砕後に抽出することができる。
【0020】
本発明において使用する植物抽出物を調製する方法について、さらに述べるが、これらの抽出溶媒および抽出方法に限定されるものではない。抽出溶媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−オクチルアルコールなどのアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル等のエーテル類などの極性溶媒から選択される1種又は2種以上の混合溶媒が好適に使用でき、また、リン酸緩衝生理食塩水や尿素水溶液を用いることもできる。
【0021】
なお、上記溶媒のうち、水、アルコール及び多価アルコール又はその誘導体類(エタノール、メタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−オクチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等)およびそれらの混合溶媒については、その溶媒を留去せずに抽出液として用いることができる。
【0022】
或いは、石油エーテル、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ブタン、n−オクタン、シクロヘキサン、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエンなどの低極性もしくは無極性溶媒から選択される1種又は2種以上の混合溶媒も好適に使用することができる。
【0023】
なお、これらの低極性、無極性の溶媒のうち流動パラフィンやスクワランなどに関しては、その溶媒を留去せずに抽出物としても構わない。
【0024】
さらには、水や二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタノール、メタノール、アンモニアなどの1種または2種以上の超臨界流体や亜臨界流体も用いることができる。
【0025】
抽出方法としては、常圧、若しくは加圧,減圧下で、室温、冷却又は加熱した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留などの蒸留法を用いて抽出する方法等を用いることができ、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行うこともできる。
【0026】
このようにして得られた本発明に係る植物抽出物は、抽出物をそのまま用いることもできるが、その効果を失わない範囲で、脱臭、脱色、濃縮などの精製操作を加えたり、さらにはカラムクロマトグラフィーなどを用いて分画物として用いてもよい。これらの抽出物や、その精製物、分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、乾固物をさらに、アルコールなどの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で用いることもできる。
【0027】
本発明に係る植物抽出物からなる保湿剤の皮膚外用剤への配合量としては、乾燥質量換算で一般的には0.00001重量%〜7.0重量%で用いることができ、好ましくは、0.0001重量%〜6.0重量%、さらに好ましくは、0.001重量%〜5.0重量%である。
【0028】
本発明に係る保湿剤を配合し得る皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品として、皮膚(頭皮、毛髪を含む)に適用される組成物である。本発明に係る保湿剤を配合し得る皮膚外用剤の剤形は、可溶化系、乳化系、多層乳化系、油性系、分散系、水油二層系等の形態から選択することができる。具体的には、水中油型クリーム、油中水型クリーム、乳液、化粧水、ジェル状化粧料、石鹸、洗顔フォーム、ボディーシャンプー、パック剤、ファンデーション、リップクリーム、ヘアーローション等が挙げられる。
【0029】
その際、本発明の効果を損なわない範囲に於いて、皮膚外用剤に一般的に用いられる原料、すなわち油性成分、界面活性剤、本発明以外の保湿剤、顔料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料、防菌・防黴剤、キレート剤や、その他有効成分として用いられる皮膚細胞賦活剤、抗炎症剤、美白剤などを組み合わせることによっても、皮膚外用剤を提供することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明に係る保湿剤となる植物抽出物の調製例、さらにそれを配合した皮膚外用剤としての実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれによって何ら限定されるものではない。
【0031】
はじめに、本発明で用いた植物抽出物の調製方法を例示する。以下に示す抽出方法1および抽出方法2を用いて、本発明の保湿剤を調製した。その一覧を表1に示す。
<抽出方法1>
乾燥・粉砕した本発明に係る植物を、10倍量の50重量%エタノール水溶液に7日間室温にて浸漬し、これをろ過し、植物抽出物を得る。
<抽出方法2>
乾燥・粉砕した本発明に係る植物を、10倍量の50重量%1,3−ブチレングリコール水溶液に50℃にて3日間浸漬し、これをろ過し、植物抽出物を得る。
【0032】
【表1】

【0033】
[水分量測定による保湿効果評価]
表1の実施例の保湿剤について、保湿効果を評価する試験として、水分量の測定を行った。まず、試料をメンブランフィルター(Millipore Type JH, 0.45μm)に塗布(15mg/cm)し、10mL の蒸留水を入れたバイアルビン(容量13mL、開口部径12mm)に装着する。これを室温(20±3℃、相対湿度40±3%)で静置し、1時間後の試料塗布膜の水分量を測定した。水分量は光ファイバー式近赤外線(NIR)水分計 IR−MF200(チノー社製)を使用した。比較として、比較例1:精製水、比較例2:50重量%1,3−ブチレングリコール、比較例3:50重量%グリセリンを用いた。結果を、表2に示す。
【0034】
[水分蒸散量測定による保湿効果評価]
表1の実施例の保湿剤について、保湿効果を評価する別の試験として、水分蒸散量の測定を行った。水分蒸散量の測定は、口内径15mm、容量13mLのバイアルビンに保湿成分の1重量%水溶液2mLを入れ、蓋をせずに開放形にて、室温(20±3℃、相対湿度40±3%)で静置して24時間後の重量変化を測定した。水分蒸散量は、3サンプルの平均値をもって評価した。水分蒸散量測定に関しては、抽出方法1では抽出溶媒であるエタノールが影響してしまうことから、減圧乾燥してエタノールを除去した後用いた。こちらも同様に、比較として、比較例1:精製水、比較例2:50重量%1,3−ブチレングリコール、比較例3:50重量%グリセリンを用いた。同様に結果を、表2に示す。
【0035】
以下の判定基準にて保湿効果を評価した。
[水分量での判定基準]
◎:水分量が15%以上
○:水分量が10%以上〜15%未満
△:水分量が5%以上〜10%未満
×:水分蒸散量が5%未満
[水分蒸散量での判定基準]
◎:水分蒸散量が0.12g未満
○:水分蒸散量が0.12g以上〜0.13g未満
×:水分蒸散量が0.13g以上
【0036】
【表1】

【0037】
表2から明らかなように、実施例の保湿剤は、精製水及び従来の保湿剤に比べて、優れた保湿効果を有することが認められた。
【0038】
次に、表1に示した保湿剤の中から、実施例1,実施例3,実施例5,実施例7,実施例9,実施例11,実施例13,実施例15,実施例17の9種類の保湿剤について、使用試験を行い、本発明の効果を確認した。それぞれの保湿剤を精製水に溶解して、5重量%水溶液に調製したものを試験試料とした。使用試験は、乾燥,乾燥による小ジワ,肌荒れの症状を有する女性パネラー10名を一群とし、各群に上記9種類の実施例試料及び比較例1をそれぞれブラインドにて1日2回ずつ2ヶ月間使用させて行った。
【0039】
使用試験開始前及び終了後の皮膚の経皮水分蒸散量(TEWL),水分量,乾燥による小ジワ,肌荒れの状況を比較し、これらの改善状況について「改善」,「やや改善」,「変化無し」の3段階にて評価し、改善と評価されたパネラーの数が8名以上の場合を「◎」、5〜7名の場合を「○」、2〜4名の場合を「△」、0〜2名の場合を「×」として表4に示した。なおTEWLは、テヴァメーター(TEWAMETER TM210,日本代理店株式会社インテグラル)を、皮膚の水分量は、皮膚水分測定器(SKICON−200,IBS社製)を、それぞれ用いて、室温23℃,湿度55%の恒温恒湿室内にて測定した。乾燥による小ジワの状況と肌荒れの状況については、使用前後の肌状態を画像としてコンピュータに取り込み、目視により比較することにより評価を行った。結果を表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表3より明らかなように、使用試験の結果、本発明の実施例においては、表皮バリア機能の指標となるTEWLに明確な改善が認められ、水分量が上昇し肌の乾燥状態が改善されることが示された。さらに、乾燥による小ジワ,肌荒れ改善効果も認められていた。よって、表2の結果も併せて、本発明の保湿剤は優れた皮膚保湿と肌荒れ改善効果を有することが認められた。
【0042】
以下に、本発明の保湿剤を含む皮膚外用剤である本発明の実施例を示す。これら皮膚外用剤はいずれも、使用試験で行った皮膚の経皮水分蒸散量(TEWL),水分量,乾燥による小ジワ,肌荒れの状況において、「◎」もしくは「○」の改善と評価され、明らかな肌の状態の改善が認められた。このことからも、本発明の皮膚外用剤は優れた保湿効果を発揮することが認められた。なお、上記使用試験期間中に皮膚刺激性を訴えたパネラーは認められず、安全性においても良好であることが示された。さらに、上記使用試験期間中に含有成分の析出,分離,凝集,変臭,変色といった製剤の状態変化は全く見られなかった。
【0043】
[実施例19]化粧水
(1)dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50重量%水溶液) 0.5(重量%)
(2)クエン酸 0.1
(3)クエン酸ナトリウム 0.1
(4)乳酸ナトリウム 0.1
(5)1,3-ブチレングリコール 2.0
(6)濃グリセリン 4.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(8)エタノール 4.0
(9)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 10.0
(10)長筒馬先蒿抽出物(実施例1) 5.0
(11)精製水 残量
製法:(1)〜(6)の成分を混合溶解した後、(7)〜(11)の成分を順次添加して、溶解,均一化する。
【0044】
[実施例20] 乳液
(1)ステアリン酸 1.0(重量%)
(2)イソステアリン酸2-ヘキシルデシル 1.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリル 0.2
(4)サラシミツロウ 0.2
(5)d-δ-トコフェロール 0.01
(6)ベヘニルアルコール 0.1
(7)スクワラン 3.5
(8)1,3-ブチレングリコール 10.0
(9)水酸化カリウム 0.2
(10)ショ糖ステアリン酸エステル 0.1
(11)精製水 残量
(12)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 10.0
(13)N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.05
(14)L-アルギニン 0.03
(15)濃グリセリン 15.0
(16)エタノール 2.0
(17)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(18)雪霊芝抽出物(実施例7) 3.0
製法:(1)〜(7)の油相成分及び(8)〜(15)の水相成分をそれぞれ85℃に加熱溶解する。水相成分に油相成分を添加し、ホモミキサーを用いて乳化する。50℃まで冷却し(16)〜(18)の成分を順次添加して混合,均質化する。
【0045】
[実施例21] 水中油乳化型クリーム
(1)ステアリン酸 2.0(重量%)
(2)イソステアリン酸2-ヘキシルデシル 14.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
(4)ベヘニルアルコール 2.5
(5)サラシミツロウ 2.0
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
(7)d-δ-トコフェロール 0.05
(8)1,3-ブチレングリコール 3.0
(9)水酸化カリウム 0.3
(10)ショ糖ミリスチン酸エステル 0.8
(11)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 10.0
(12)N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.5
(13)精製水 残量
(14)クエン酸ナトリウム 1.0
(15)唐古特白刺抽出物(実施例17) 4.0
(16)香料 0.1
製法:(1)〜(7)の油相成分及び(8)〜(14)の水相成分をそれぞれ85℃に加熱溶解する。水相成分に油相成分を添加し、ホモミキサーを用いて乳化する。50℃まで冷却し(15)〜(16)の成分を順次添加して混合,均質化する。
【0046】
[実施例22] 油中水乳化型エモリエントクリーム
(1)流動パラフィン 35.0(重量%)
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)ワセリン 5.0
(4)有機ベントナイト 2.5
(5)ジグリセリンオレイン酸エステル 5.0
(6)L-セリン 0.4
(7)濃グリセリン 4.0
(8)1,3-ブチレングリコール 4.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)高山辣根菜抽出物(実施例16) 5.0
(11)精製水 残量
(12)香料 0.1
(13)エタノール 0.5
製法:(6)を(12)の一部に溶解して50℃とし、50℃に加熱した(5)に撹拌しながら徐々に添加する。これをあらかじめ混合し、70℃に加熱溶解した(1)〜(4)に均一に分散し、これに(7)〜(9)を(12)の残部に溶解して70℃に加熱したものを撹拌しながら添加し、ホモミキサーにて乳化する。冷却後、40℃にて(10)〜(13)の成分を添加,混合する。
【0047】
[実施例23] メイクアップベースクリーム
(1)ステアリン酸 12.0(重量%)
(2)セタノール 2.0
(3)グリセリントリ-2-エチルヘキサン酸エステル 2.5
(4)自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 2.0
(5)1,3-ブチレングリコール 11.0
(6)水酸化カリウム 0.3
(7)精製水 残量
(8)二酸化チタン 1.0
(9)ベンガラ 0.1
(10)黄酸化鉄 0.4
(11)香料 0.1
(12)独一味抽出物(実施例3) 3.5
製法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方、(5)〜(7)の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(8)〜(10)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に分散させる。この水相成分に前記油相成分を添加し、ホモミキサーにて乳化した後冷却し、40℃にて(11)〜(12)の成分を添加,混合する。
【0048】
[実施例24] 乳液状ファンデーション
(1)ステアリン酸 2.0(重量%)
(2)スクワラン 5.0
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0
(4)セタノール 1.0
(5)デカグリセリンモノイソパルミチン酸エステル 9.0
(6)マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 0.5
(7)1,3-ブチレングリコール 8.0
(8)水酸化カリウム 0.1
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 残量
(11)酸化チタン 9.0
(12)タルク 7.4
(13)ベンガラ 0.5
(14)黄酸化鉄 1.1
(15)黒酸化鉄 0.1
(16)香料 0.1
(17)唐古特白刺抽出物(実施例17) 4.0
製法:(1)〜(6)の油相成分を混合し、75℃に加熱して均一とする。一方、(7)〜(10)の水相成分を混合し、75℃に加熱,溶解して均一とし、これに(11)〜(15)の顔料を添加し、ホモミキサーにて均一に乳化した後冷却し、40℃にて(16)〜(17)の成分を添加,混合する。
【0049】
[実施例25] ハンドクリーム
(1)セタノール 4.0(重量%)
(2)ワセリン 2.0
(3)流動パラフィン 10.0
(4)グリセリンモノステアリン酸エステル 1.5
(5)ポリオキシエチレン(60EO)
グリセリンイソステアリン酸エステル 2.5
(6)酢酸トコフェロール 0.5
(7)大豆リン脂質 0.5
(8)グリセリン 20.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)精製水 残量
(11)水柏枝抽出物(実施例11) 3.0
製法:(1)〜(7)の油相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。一方、(8)〜(10)の水相成分を混合,溶解して75℃に加熱する。ついで、水相成分に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化して冷却し、40℃にて(11)の成分を添加,混合する。
【0050】
[実施例26] ヘアートニック
(1)95%エタノール 40.0(重量%)
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 1.0
(3)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(4)精製水 残量
(5)蕨麻抽出物(実施例14) 5.0
(6)香料 0.1
製法:(1)に(2)〜(3)及び(5)〜(6)を添加し、攪拌溶解した後、(4)を加えて混合して、ヘアートニックを得た。
【0051】
[実施例27] ヘアーローション
(1)95%エタノール 8.0(重量%)
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40EO) 0.2
(3)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(4)精製水 残量
(5)手掌参抽出物(実施例10) 4.0
(6)香料 0.1
製法:(1)に(2)〜(3)及び(5)〜(6)を添加し、攪拌溶解した後、(4)を加えて混合して、ヘアーローションを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)シオガマギク属(Pedicularis),シソ科(Lamiaceae)独一味属(Lamiophlomis)またはドラコセファルム属(Dracocephalum),ナデシコ科(Caryophyllaceae)アレナリア属(Arenaria),ラン科(Orchidaceae)テガタチドリ属(Gymnadenia),ギョリュウ科(Tamaricaceae)水柏枝属(Myricaria),バラ科(Rosaceae)キジムシロ属(Potentilla),アブラナ科(Brassicaceae)ペガエオフィトン属(Pegaeophyton),ハマビシ科(Zygophyllaceae)ニトラリア属(Nitraria)に属する植物から選ばれる1種または2種以上の抽出物からなる保湿剤。
【請求項2】
請求項1に記載された植物が、長筒馬先蒿(Pedicularis longiflora Rudol-var.tubiformis),独一味(Lamiophlomis rotata Benth. Kudo),唐古特青蘭(Dracocephalum tanguticum Maxim.),雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.),手掌参(Gymnadenia conopsea R. Br.),水柏枝(Myricaria germanica (L.) Desv.),蕨麻(Potentilla anserina L.),高山辣根菜(Pegaeophyton scapiflorum Hook.f.et Thoms. Marq. et Airy-Shaw),唐古特白刺(Nitraria tangutorum Bohr.)であることを特徴とする保湿剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の保湿剤を含有することを特徴とする保湿用又は肌荒れ改善用皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−77079(P2007−77079A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267415(P2005−267415)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【出願人】(502015577)株式会社アルラチベット医学センター (5)
【Fターム(参考)】