説明

保護膜形成用材料及びレジストパターン形成方法

【課題】保護膜のアルカリ溶解性の低下を抑えながら、撥水性を向上させることが可能な保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】式(A−1)で表されるモノマーに由来す構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料。


式中、Rは式(a−1)又は式(a−2)で表される基、Qは単結合又はフッ素原子を有していてもよい2価の連結基、Rはフッ素原子を有していてもよい有機基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、新たなリソグラフィー技術として、液浸露光プロセスが注目されている(非特許文献1〜3参照)。この液浸露光プロセスによれば、従来の露光光路空間を、いわゆる液浸露光用液体(純水等)で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より高解像度で焦点深度にも優れるレジストパターンを形成することができる。
【0003】
この液浸露光プロセスでは、レジスト膜上に液浸露光用液体を介在させた状態で露光を行うことから、当然のことながら、液浸露光用液体によるレジスト膜の変質、レジスト膜からの溶出成分による液浸露光用液体自体の変質に伴う屈折率変動等が懸念される。
【0004】
このような状況下、レジスト膜上にフッ素含有樹脂を用いた保護膜を形成し、この保護膜上に液浸露光用液体を介在させることによって、液浸露光用液体によるレジスト膜の変質、液浸露光用液体自体の変質に伴う屈折率変動を同時に防止することを目的とした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、レジストパターン形成工程の簡略化、製造効率の向上等の観点から、アルカリ可溶性ポリマーを用いた保護膜を用いることによって、液浸露光後のアルカリ現像時に、保護膜の除去と不要なレジスト膜の除去とを同時に行ってレジストパターンを得る技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/074937号パンフレット
【特許文献2】特開2005−157259号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・アンド・テクノロジー B(Journal of Vacuum Science & Technology B)」、(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
【非特許文献3】「プロシーディングス・オブ・エスピーアイイー(Proceedings of SPIE)」、(米国)、2002年、第4691巻、459−465頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、高速で走査させる露光用レンズと、レジスト膜上に保護膜を形成した基板との間のみを液浸露光用液体で満たす局所液浸露光プロセスが検討されている。局所液浸露光プロセスでは、例えば、保護膜/レジスト膜を形成した基板をウェーハステージ上に載置し、保護膜の上方に所定間隔を空けて露光用レンズを配置し、露光用レンズを高速でスキャニング移動させながら、液浸露光用液体を一方のノズルから保護膜上に連続滴下すると同時に他方のノズルから吸引して露光する。
【0009】
この局所液浸露光プロセスにおいては、スキャニング移動する露光用レンズに液浸露光用液体が追従する必要がある。このため、保護膜には高い撥水性が要求される。特に最近は、スループット向上のために液浸露光機のスキャン速度が年々高速化しているため、より撥水性の高い保護膜が求められている。
【0010】
しかしながら、アルカリ可溶性ポリマーを用いた保護膜の場合、撥水性とアルカリ溶解性とがトレードオフの関係にあるため、撥水性を向上させるとアルカリ溶解性が低下してしまうという問題があった。この原因の1つとしては、アルカリ可溶性ポリマーの構成単位のうち主として撥水性に寄与する構成単位の、アルカリ溶解性に与える影響が大きいことが挙げられる。したがって、この構成単位のアルカリ溶解性に与える影響を下げることができれば、保護膜のアルカリ溶解性の低下を抑えながら、撥水性を向上させることができると考えられるが、そのような保護膜形成用材料はこれまで知られていないのが現状であった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保護膜のアルカリ溶解性の低下を抑えながら、撥水性を向上させることが可能な保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その結果、特定の構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを保護膜形成用材料に含有させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
本発明の第一の態様は、レジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、下記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料である。
【化1】

[式中、Rは下記式(a−1)又は式(a−2)で表される基を示し、Qはフッ素原子を有していてもよい2価の連結基を示し、Rはフッ素原子を有していてもよい有機基を示し、nは0又は1を示す。
【化2】

(式中、R01は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示し、R02は水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示し、Zは炭素数1若しくは2のアルキレン基又は酸素原子を示し、mは0〜3の整数を示す。)]
【0014】
なお、本件出願において「構成単位」とは、高分子化合物(重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
また、連結基又は有機基が「フッ素原子を有していてもよい」とは、当該連結基又は有機基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよいことを意味する。
【0015】
本発明の第二の態様は、液浸露光プロセスを用いたレジストパターン形成方法であって、基板上にレジスト膜を設ける工程と、このレジスト膜上に本発明に係る保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、上記基板の少なくとも上記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び上記保護膜を介して、上記レジスト膜を選択的に露光する工程と、現像液により上記保護膜を除去して、露光後の上記レジスト膜を現像する現像工程と、を有するレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保護膜のアルカリ溶解性の低下を抑えながら、撥水性を向上させることが可能な保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたレジストパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪保護膜形成用材料≫
本発明に係る保護膜形成用材料は、特定の構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有している。以下、本発明に係る保護膜形成用材料に含有される各成分について説明する。
【0018】
<(a)アルカリ可溶性ポリマー>
[式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位]
アルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも下記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有する。アルカリ可溶性ポリマーがこのような構成単位を有することにより、形成される保護膜のアルカリ溶解性の低下を抑えながら、撥水性を向上させることができる。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(A−1)中、Rは下記式(a−1)又は式(a−2)で表される基を示す。
【0021】
【化4】

【0022】
上記式(a−1)中、R01は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示す。
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、上記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
このR01は、水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはフッ素化アルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0023】
上記式(a−2)中、R02は水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示す。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基としては、上記炭素数1〜6のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。該ハロゲン化アルキル基としては、撥水性向上の観点から、水素原子の全部がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。
このR02は、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基若しくはフッ素化アルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0024】
上記式(a−2)中、Zは炭素数1若しくは2のアルキレン基又は酸素原子を示し、メチレン基が好ましい。
mは0〜3の整数を示し、m=0が好ましい。
【0025】
上記式(A−1)中、Qはフッ素原子を有していてもよい2価の連結基を示す。
2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、その両方を含む基であってもよい。
【0026】
脂肪族炭化水素基は、飽和、不飽和のいずれであってもよいが、飽和であることが好ましい。より具体的には、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜12であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCHCH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルプロピレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルブチレン基;等のアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
鎖状の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0027】
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から2個の水素原子を除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が上記の鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、単環式基、多環式基のいずれであってもよい。
単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとして具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0028】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等の、1価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素の核からさらに1個の水素原子を除いた2価の芳香族炭化水素基;該2価の芳香族炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等で、かつ、その芳香族炭化水素の核からさらに1個の水素原子を除いた芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0029】
で示される2価の連結基は、ヘテロ原子を含む2価の基を含んでいてもよい。該2価の基として具体的には、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NH−、−NR−、−NH−C(=O)−、=N−、−S−、−S(=O)、−S(=O)−O−等が挙げられる。上記Rは、アルキル基、アシル基等の置換基である。該置換基は、炭素数1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
【0030】
上記式(A−1)中、Rはフッ素原子を有していてもよい有機基を示す。
有機基の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
有機基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
この有機基は、撥水性向上の観点から、フッ素化率が25%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。「フッ素化率」は、該有機基における(水素原子及びフッ素原子の合計数)に対する(フッ素原子数)の割合(%)である。
【0031】
としては、メチル基、エチル基、置換基を有していてもよいフッ素化炭化水素基が好ましく挙げられる。
【0032】
置換基を有していてもよいフッ素化炭化水素基について、炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和、不飽和のいずれであってもよいが、飽和であることが好ましい。すなわち、Rとしては、フッ素化飽和炭化水素基又はフッ素化不飽和炭化水素基であることがより好ましく、フッ素化飽和炭化水素基、すなわちフッ素化アルキル基であることがさらに好ましい。
フッ素化アルキル基としては、下記に挙げる無置換のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0033】
無置換のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基と環状のアルキル基との組み合わせであってもよい。
無置換の直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等が挙げられる。
無置換の分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜8であることが好ましい。分岐鎖状のアルキル基としては、第3級アルキル基が好ましい。
無置換の環状のアルキル基としては、例えば、モノシクロアルカン、又はビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のモノシクロアルキル基;アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等のポリシクロアルキル基等が挙げられる。
無置換の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基と環状のアルキル基との組み合わせとしては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基に置換基として環状のアルキル基が結合した基、環状のアルキル基に置換基として直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が結合した基等が挙げられる。
【0034】
フッ化炭化水素基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
【0035】
において、フッ素化アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。特に、下記式(a−3)又は式(a−4)で表される基が好ましく、中でも式(a−3)で表される基が好ましい。
【0036】
【化5】

【0037】
上記式(a−3)中、R12は無置換の炭素数1〜9のアルキレン基を示し、R13は炭素数1〜9のフッ素化アルキル基を示す。ただし、R12とR13との炭素数の合計は10以下である。また、上記式(a−4)中、R14〜R16はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基を示し、R14〜R16の少なくとも1つはフッ素原子を有するアルキル基である。
【0038】
上記式(a−3)中、R12のアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。また、その炭素数は1〜5が好ましい。R12としては、特に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
上記式(a−3)中、R13としては、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のフッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。中でも、−CF、−CH、−Cが好ましい。
上記式(a−4)中、R14〜R16のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R14〜R16のアルキル基のうち、いずれか1つがフッ素化アルキル基であればよく、全てがフッ素化アルキル基であってもよい。
【0039】
上記式(A−1)中、nは0又は1を示す。
n=0である場合、上記式(A−1)で表されるモノマーとしては、Rがメチル基又はエチル基であるものが好ましい。
n=1である場合、上記式(A−1)で表されるモノマーとしては、下記式(A−1−1)で表されるモノマー、又は後述の式(A−1−2)で表されるモノマーが好ましい。
【0040】
・式(A−1−1)で表されるモノマー
【化6】

【0041】
上記式(A−1−1)中、Rは上記式(A−1)と同義であり、Q01はフッ素原子を有さない2価の連結基を示し、R11はフッ素原子を有する有機基を示す。Q01としては、上記式(A−1)におけるQのうち、フッ素原子を有さないものが挙げられる。また、R11としては、上記式(A−1)におけるRのうち、フッ素原子を有するものが挙げられる。
【0042】
上記式(A−1−1)で表されるモノマーのうち好適なものとしては、下記式(A−1−11)〜(A−1−16)で表されるモノマーが挙げられる。
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
上記式(A−1−11)〜(A−1−16)中、Rは上記式(A−1)と同義であり、R11は上記式(A−1−1)と同義である。R50は置換基を示し、R51,R52はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を示し、R53,R54はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。a1〜a3,a5,a7はそれぞれ独立して1〜5の整数を示し、a4,a6,a8はそれぞれ独立して0〜5の整数を示す。d1〜d3はそれぞれ独立して0又は1を示し、eは0〜2の整数を示し、Aは炭素数3〜20の環状のアルキレン基を示す。
【0046】
上記式(A−1−11)中、a1は1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
上記式(A−1−12)中、a2,a3はそれぞれ独立して1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
d1は0であることが好ましい。
【0047】
上記式(A−1−13)中、a4は0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
a5は1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
50の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
eとしては0又は1であることが好ましく、特に工業上、0であることが好ましい。
d2は0であることが好ましい。
【0048】
上記式(A−1−14)中、a6は0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
a7は1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
d3は0であることが好ましい。
50及びeは上記式(A−1−13)と同義である。
【0049】
上記式(A−1−15)中、a8は0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
51,R52はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状、又は環状の炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
53,R54はそれぞれ独立して水素原子、又は直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状の炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。R53,R54における直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状の炭素数1〜10のアルキル基は、上記R51,R52と同様である。
【0050】
上記式(A−1−16)中、Aは炭素数3〜12の環状のアルキレン基が好ましい。
環状のアルキレン基は単環式基、多環式基のいずれであってもよい。
単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとして具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状のアルキレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0051】
以下、上記式(A−1−11)〜(A−1−16)で表されるモノマーの具体例を示す。なお、Rは上記式(A−1)と同義である。
【0052】
【化9】

【0053】
【化10】

【0054】
上記式(A−1−1)で表されるモノマーとしては、上記式(A−1−11)〜(A−1−16)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種が好ましく、上記式(A−1−11)〜(A−1−14)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種がより好ましく、上記式(A−1−11)〜(A−1−13)で表されるモノマーから選択される少なくとも1種がさらに好ましく、上記式(A−1−11)で表されるモノマーが特に好ましい。
【0055】
・式(A−1−2)で表されるモノマー
【化11】

【0056】
上記式(A−1−2)中、R,Rは上記式(A−1)と同義であり、Q02はフッ素原子を有する2価の連結基を示す。Q02としては、上記式(A−1)におけるQのうち、フッ素原子を有するものが挙げられる。
【0057】
上記式(A−1−2)で表されるモノマーのうち好適なものとしては、下記式(A−1−21),(A−1−22)で表されるモノマーが挙げられる。
【0058】
【化12】

【0059】
上記式(A−1−21),(A−1−22)中、Rは上記式(A−1)と同義である。
60,R61はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、又はフッ素化アルキル基を示し、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0060】
60,R61におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
環状のアルキル基の場合、炭素数は4〜15であることが好ましく、4〜12であることがより好ましく、5〜10であることがさらに好ましい。具体的には、モノシクロアルカン、又はビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のモノシクロアルキル基;アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等のポリシクロアルキル基;等が挙げられる。中でもアダマンチル基が好ましい。
【0061】
60,R61におけるフッ素化アルキル基は、上記のアルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている基である。
【0062】
60,R61は互いに結合して環を形成していてもよい。このような環としては、上記モノシクロアルカン又はポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いたものが挙げられる。この環は4〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることがより好ましい。
【0063】
上記の中でも、R60,R61は水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0064】
上記式(A−1−21),(A−1−22)中、R62はフッ素原子又はフッ素化アルキル基を示す。
62におけるフッ素化アルキル基において、フッ素原子で置換されていない状態のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の場合、炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
フッ素化アルキル基においては、撥水性向上の観点から、フッ素化率が30〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましい。
【0065】
上記式(A−1−21)中、R17はフッ素原子を有する有機基を示し、上記式(A−1)におけるRのうち、フッ素原子を有するものが挙げられる。
17としてはフッ素化炭化水素基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。具体的には、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基がさらに好ましく、−CH−CF、−CH−CF−CF、−CH(CF、−CH−CF−CF−CFが特に好ましく、−CH−CFが最も好ましい。
【0066】
上記式(A−1−22)中、R18はアルキル基を示す。
18におけるアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、中でもメチル基又はエチル基が好ましい。
【0067】
以下、上記式(A−1−21),(A−1−22)で表されるモノマーの具体例を示す。なお、Rは上記式(A−1)と同義である。
【0068】
【化13】

【0069】
上記式(A−1)で表されるモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
上記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位の割合は、アルカリ可溶性ポリマー中、5〜70モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、15〜25モル%がさらに好ましい。上記範囲内であることにより、形成される保護膜の撥水性とアルカリ溶解性とを両立させることができる。
【0071】
[式(A−2)で表されるモノマーに由来する構成単位]
アルカリ可溶性ポリマーは、下記式(A−2)で表されるモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。アルカリ可溶性ポリマーがこのような構成単位を有することにより、形成される保護膜のアルカリ溶解性を向上させることができる。
【0072】
【化14】

【0073】
上記式(A−2)中、Rは上記式(A−1)と同義である。
はフッ素原子を有していてもよい2価の連結基を示す。Qとしては、上記式(A−1)におけるQと同様の基が挙げられる。
【0074】
上記式(A−2)中、R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基又はフッ素化アルキル基(ただし、アルキル基又はフッ素化アルキル基はエーテル結合が介在していてもよく、さらにはアルキル基又はフッ素化アルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)を示し、かつ、R,Rの少なくとも一方はフッ素化アルキル基を示す。
【0075】
,Rにおける炭素数1〜15のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、n−ペンタデシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;等が挙げられる。
炭素数1〜15のフッ素化アルキル基としては、上記炭素数1〜15のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
なお、R,Rの少なくとも一方はフッ素化アルキル基であり、R,Rがともにフッ素化アルキル基であるものが好ましい。
【0076】
上記式(A−2)で表されるモノマーのうち好適なものとしては、下記式(A−2−1),(A−2−2)で表されるモノマーが挙げられる。
【0077】
【化15】

【0078】
上記式(A−2−1),(A−2−2)中、R01,R02,Z,mは上記式(a−1),(a−2)と同義である。また、R,Rは上記式(A−2)と同義である。
上記式(A−2−1)中、R70は炭素数1〜10のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。
70における炭素数1〜10のアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。R70としては、特に、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が好ましい。
炭素数1〜10のフッ素化アルキル基としては、上記炭素数1〜10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
【0079】
上記式(A−2−2)中、R71は炭素数1〜10のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。アルキレン基又はフッ素化アルキレン基としては、上記R70と同様の基が挙げられる。このアルキル基又はフッ素化アルキル基は、エーテル結合が介在していてもよい。
【0080】
上記式(A−2−2)で表されるモノマーのうち好適なものとしては、下記式(A−2−21)で表されるモノマーが挙げられる。
【0081】
【化16】

【0082】
上記式(A−2−21)中、R02,Z,mは上記式(a−2)と同義であり、R,Rは上記式(A−2)と同義である。
上記式(A−2−21)中、R72〜R74はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基を示す。R72〜R74の炭素数の合計は2〜10が好ましい。
上記式(A−2−21)中、mは0又は1であり、0であることが好ましい。
【0083】
上記式(A−2)で表されるモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
上記式(A−2)で表されるモノマーに由来する構成単位の割合は、アルカリ可溶性ポリマー中、30〜95モル%が好ましく、50〜90モル%がより好ましく、75〜85モル%がさらに好ましい。
【0085】
[その他のモノマーに由来する構成単位]
アルカリ可溶性ポリマーは、上記式(A−1),(A−2)で表されるモノマーに由来する構成単位のほかに、従来公知のアルカリ可溶性ポリマーに用いられるモノマーに由来する構成単位を、本発明の効果に影響を与えない範囲で有していてもよい。このようなその他のモノマーに由来する構成単位の割合は、アルカリ可溶性ポリマー中、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。このような割合にすることで、本発明の効果を損なわず、保護膜形成用材料を所望の特性に調整することができる。
その他のモノマーとしては、例えば、下記式(A−3−1)〜(A−3−3)で表されるモノマーが挙げられる。
【化17】

【0086】
上記式(A−3−1)〜(A−3−3)中、Rは上記式(A−1)と同義であり、R80は単結合又はエステル結合を示し、R81は単結合、又は炭素数1〜6のアルキレン基若しくはフルオロアルキレン基を示し、R82は炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基(ただし、アルキル基の一部がエーテル結合を介してもよく、さらにはアルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)を示す。
【0087】
以上説明したアルカリ可溶性ポリマーは、単一のポリマーとして用いてもよく、複数のポリマーを混合して用いてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーと、上記式(A−1)で表されるモノマー由来する構成単位を有さないアルカリ可溶性ポリマーとを混合して用いてもよい。
【0088】
このようなアルカリ可溶性ポリマーは、公知の方法によって合成することができる。また、このアルカリ可溶性ポリマーのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、2000〜80000であることが好ましく、3000〜50000であることがより好ましく、3000〜30000であることがさらに好ましい。
【0089】
アルカリ可溶性ポリマーの配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1〜20質量%程度とすることが好ましく、0.3〜10質量%とすることがより好ましい。
【0090】
<(b)溶剤>
本発明に係る保護膜形成用材料は、アルカリ可溶性ポリマーを溶解させる溶剤を含有することが好ましい。この溶剤としては、例えば(b−1)アルキルアルコール類、(b−2)水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフッ素化アルキルアルコール類、(b−3)エーテル類、(b−4)水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフッ素化アルキルエーテル類及びフッ素化アルキルエステル類、等が挙げられる。
【0091】
上記(b−1)アルキルアルコール類としては、炭素数が1〜10であることが好ましい。具体的には、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−オクタノール等が挙げられる。中でも、イソブタノール、4−メチル−2−ペンタノールが好ましい。
【0092】
上記(b−2)水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキルアルコール類としては、炭素数が4〜12であることが好ましい。具体的には、CCHCHOH、CCHOHが好ましい。
【0093】
上記(b−3)エーテル類としては、アルキルエーテル類、多価アルコールのモノアルキルエーテル類、エーテル結合を有するテルペン系溶剤等を用いることができる。
アルキルエーテル類は炭素数が2〜10であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。このようなアルキルエーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル等が挙げられる。中でも、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテルが好ましい。
多価アルコールのモノアルキルエーテル類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等が挙げられる。中でも、プロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
エーテル結合を有するテルペン系溶剤としては、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ピネンオキサイド等が挙げられる。中でも、1,4−シネオール、1,8−シネオールが、工業的な入手の容易さ等から好ましい。
【0094】
上記(b−4)水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキルエーテル類及びフッ素化アルキルエステル類としては、炭素数が3〜15であるものが好ましく用いられる。
【0095】
上記フッ素化アルキルエーテル類は、ROR(R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を示し、両アルキル基の炭素数の合計が3〜15であり、少なくともその水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されている。)で表されるフッ素化アルキルエーテルの中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0096】
上記フッ素化アルキルエステル類は、RCOOR(R及びRはそれぞれ独立にアルキル基を示し、両アルキル基の炭素数の合計が3〜15であり、少なくともその水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されている。)で表されるフッ素化アルキルエステル類の中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0097】
上記フッ素化アルキルエーテルの好適例としては、下記式(B−1)で表される化合物が挙げられる。また、上記フッ素化アルキルエステルの好適例としては、下記式(B−2),(B−3)で表される化合物等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0098】
【化18】

【0099】
これらの溶剤は、単独又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲において、n−ヘプタン等のパラフィン系溶剤、フルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素系溶剤と組み合わせて用いることも可能である。
【0100】
<(c)架橋剤>
本発明に係る保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに架橋剤を含有していてもよい。この架橋剤としては、水素原子がヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたアミノ基を有する含窒素化合物、及び水素原子がヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたイミノ基を有する含窒素化合物、の中から選ばれる少なくとも1種の含窒素化合物を用いることができる。
【0101】
これら含窒素化合物としては、例えばアミノ基の水素原子がメチロール基及び/又はアルコシキメチル基で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、スクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体、エチレン尿素系誘導体等が挙げられる。
【0102】
これらの含窒素化合物は、例えば、上述の含窒素化合物を沸騰水中においてホルマリンと反応させてメチロール化することにより、或いはこれにさらに低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を反応させてアルコキシル化することにより得られる。中でも好適な架橋剤は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルである。
【0103】
さらに、架橋剤として、水酸基及びアルコキシ基の中から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換された炭化水素化合物と、モノヒドロキシモノカルボン酸化合物と、の縮合反応物も好適に用いることができる。上記モノヒドロキシモノカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基とが、同一の炭素原子、又は隣接する2つの炭素原子のそれぞれに結合しているものが好ましい。
【0104】
架橋剤を配合する場合、その配合量は、アルカリ可溶性ポリマーの配合量に対して0.5〜10質量%程度とすることが好ましい。
【0105】
<(d)酸性化合物>
本発明に係る保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに酸性化合物を配合していてもよい。この酸性化合物を添加することにより、レジストパターンの形状改善の効果が得られ、さらには液浸露光を行った後、現像する前にレジスト膜が微量のアミンを含有する雰囲気中に曝された場合であっても(露光後の引き置き)、保護膜の介在によってアミンによる悪影響を効果的に抑制することができる。これにより、その後の現像によって得られるレジストパターンの寸法に大きな狂いを生じることを未然に防止することができる。
【0106】
このような酸性化合物としては、例えば下記式(D−1),(D−2),(D−3),(D−4)の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0107】
【化19】

【0108】
上記式(D−1),(D−2),(D−3),(D−4)中、sは1〜5の整数を示し、tは10〜15の整数を示し、uは2又は3を示し、vはそれぞれ独立に2又は3を示し、Rd1はそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基又はフッ素化アルキル基(水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、又はアミノ基により置換されていてもよい。)を示す。
【0109】
このような酸性化合物は、いずれも重要新規利用規則(SNUR)の対象となっておらず、人体に対する悪影響がないとされている。
【0110】
上記式(D−1)で表される酸性化合物としては、具体的には、(CSONH、(CSONH等が好ましく、上記式(D−2)で表される酸性化合物としては、具体的には、C1021COOH等が好ましい。
【0111】
また、上記式(D−3),(D−4)で表される酸性化合物としては、具体的には、それぞれ下記式(D−5),(D−6)で表される化合物が好ましい。
【0112】
【化20】

【0113】
酸性化合物を配合する場合、その配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1〜10質量%程度とすることが好ましく、0.1〜3.0質量%程度とすることがより好ましい。
【0114】
<(e)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤>
本発明に係る保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに酸発生補助剤を配合してもよい。この酸発生補助剤とは、単独で酸を発生する機能はないものの、酸の存在化で酸を発生させるものをいう。これにより、レジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が保護膜に拡散した場合であっても、この酸により保護膜中の酸発生補助剤から発生した酸が、レジスト膜中の酸の不足分を補填し、レジストパターンの解像性の劣化や、焦点深度幅の低下を抑制することが可能となり、より微細なレジストパターン形成が可能となる。
【0115】
このような酸発生補助剤は、分子内にカルボニル基及びスルフォニル基を共に有する脂環式炭化水素化合物であることが好ましい。
【0116】
このような酸発生補助剤は、具体的には、下記式(E−1),(E−2)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0117】
【化21】

【0118】
上記式(E−1),(E−2)中、Re1,Re2,Re3,Re4は、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基を示し、Xはスルフォニル基を有する求電子基を示す。
【0119】
ここで、「炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等の直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0120】
また、Xは、「スルフォニル基を有する求電子基」である。ここで、「スルフォニル基を有する求電子基」は、−O−SO−Yであることが好ましい。Yは、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基である。中でも、Yがフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0121】
上記式(E−1),(E−2)で表される化合物としては、具体的には、下記式(E−3)〜(E−10)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【化22】

【0123】
酸発生補助剤を配合する場合、その配合量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、0.1〜50質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましい。このような範囲とすることにより、塗布むらを発生することなく、レジスト膜から溶出した酸に対して効果的に酸を発生させ、レジストパターン形状を改善することが可能となる。
【0124】
<(f)その他>
本発明に係る保護膜形成用材料は、必要に応じて、さらに界面活性剤を配合してもよい。この界面活性剤としては、「XR−104」(商品名:大日本インキ化学工業社製)等が挙げられるが、これに限定されるものでない。このような界面活性剤を配合することにより、塗膜性や溶出物の抑制能をより一層向上させることができる。
【0125】
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して0.001質量部から10質量部とすることが好ましい。
【0126】
(保護膜の水に対する接触角)
本発明に係る保護膜形成用材料を用いて得られる保護膜の撥水性は、水に対する接触角、例えば静的接触角(水平状態のレジスト膜上の水滴表面とレジスト膜表面とのなす角度)、動的接触角(レジスト膜を傾斜させていった際に水滴が転落し始めたときの接触角。水滴の転落方向前方の端点における接触角(前進角)、転落方向後方の端点における接触角(後退角)とがある。)、転落角(レジスト膜を傾斜させていった際に水滴が転落し始めたときのレジスト膜の傾斜角度)、動的後退接触角(レジスト膜を水平に等速移動した際の、水滴の移動方向後方の端点における接触角)等を測定することにより評価できる。例えば保護膜の撥水性が高いほど、静的接触角、前進角、後退角、及び動的後退接触角は大きくなり、一方、転落角は小さくなる。
【0127】
動的接触角及び静的接触角は、所望の条件で形成した保護膜に対して、DROP MASTER−700(製品名、協和界面科学社製)、AUTO SLIDING ANGLE:SA−30DM(製品名、協和界面科学社製)、AUTO DISPENSER:AD−31(製品名、協和界面科学社製)等の市販の測定装置を用いることにより測定することができる。また、動的後退接触角は動的後退接触角測定器を用いることにより測定することができる。
【0128】
露光及び現像を行う前の保護膜の前進角の測定値は、100度以下であることが好ましく、70〜100度であることがより好ましく、80〜95度であることがさらに好ましい。前進角が100度以下であると、露光時に高速でスキャンを行った際に生じ、現像後のレジストパターンのディフェクトの要因となるバブルの巻き込みを抑制することができ、リソグラフィー特性等が良好である。
【0129】
露光及び現像を行う前の保護膜の表面の後退角の測定値は60度以上であることが好ましく、60〜150度であることがより好ましく、70〜130度であることがさらに好ましく、70〜100度であることが特に好ましい。後退角が下限値以上であると、液浸露光用液体のレンズ追随性が向上し、露光時に高速でスキャンを行っても液浸露光用液体の基板上の液滴の残留等が低減されるとともに、液浸露光時の物質溶出抑制効果が向上する。また、後退角が上限値以下であると、リソグラフィー特性が良好である。
【0130】
露光及び現像を行う前の保護膜の転落角の測定値は、30度以下であることが好ましく、0.1〜30度であることがより好ましく、0.1〜20度であることがさらに好ましく、0.1〜10度であることが特に好ましい。転落角が上限値以下であると、液浸露光時の物質溶出抑制効果が向上する。また、転落角が下限値以上であると、リソグラフィー特性等が良好である。
【0131】
露光及び現像を行う前の保護膜の静的接触角の測定値は70度以上であることが好ましく、70〜100度であることがより好ましく、75〜100度であることがさらに好ましい。静的接触角が70度以上であると、液浸露光時の保護膜からの物質溶出抑制効果が向上する。
【0132】
露光及び現像を行う前の保護膜の動的後退接触角の測定値は、60度以上であることが好ましく、60〜90度であることがより好ましく、65〜90度であることが特に好ましい。動的後退接触角が60度以上であると、リソグラフィー特性が良好である。
【0133】
上述の各種角度(静的接触角、動的接触角(前進角、後退角)、転落角、動的後退接触角)の大きさは、保護膜形成用材料の組成、例えばアルカリ可溶性ポリマーにおける上記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位の種類や含有量、式(A−1)で表されるモノマーと共重合させるモノマーの種類や含有量等を調整することにより調整できる。
【0134】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明に係るレジストパターン形成方法は、基板上にレジスト膜を設ける工程と、このレジスト膜上に本発明に係る保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び保護膜を介して、レジスト膜を選択的に露光する工程と、現像液により上記保護膜を除去して、露光後のレジスト膜を現像する現像工程と、を有する。
【0135】
まず、基板上にレジスト膜を設ける。具体的には、シリコンウェーハ等の基板に、公知のレジスト組成物を、スピンナー等の公知の方法を用いて塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行ってレジスト膜を形成する。なお、基板上に有機系又は無機系の反射防止膜(下層反射防止膜)を設けてからレジスト膜を形成してもよい。
【0136】
レジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型レジスト組成物を含めて、アルカリ水溶液で現像可能なレジスト組成物を任意に使用できる。
このようなレジスト組成物としては、(i)ナフトキノンジアジド化合物及びノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、(ii)露光により酸を発生する酸発生剤、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、(iii)露光により酸を発生する酸発生剤、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物、並びに(iv)露光により酸を発生する酸発生剤、架橋剤、及びアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
次に、レジスト膜上に本発明に係る保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する。具体的には、レジスト膜の表面に、本発明に係る保護膜形成用材料を上述と同様の方法で均一に塗布し、ベークして硬化させることにより保護膜を形成する。
【0138】
次に、基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置する。液浸露光用液体は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、使用されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば、特に限定されるものでない。このような液浸露光用液体としては、水(純水、脱イオン水)、フッ素系不活性液体等が挙げられるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸露光用液体も使用可能である。フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題、及び汎用性の観点からは、水(純水、脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光(例えばFエキシマレーザー等)を用いる場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
【0139】
次に、液浸露光用液体及び保護膜を介して、レジスト膜を選択的に露光する。このとき、レジスト膜は、保護膜によって液浸露光用液体から遮断されているため、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸露光用液体中に成分を溶出させて液浸露光用液体自体の屈折率等の光学的特性が変化してしまうことが防止される。
【0140】
露光に用いる波長は、特に限定されるものではなく、レジスト膜の特性によって適宜選択される。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0141】
なお、保護膜上への液浸露光用液体の配置とレジスト膜の露光とは、同時に行うことが好ましい。すなわち、露光用レンズを高速でスキャニング移動させながら、液浸露光用液体を一方のノズルから保護膜上に連続滴下すると同時に他方のノズルから吸引して露光することが好ましい。
【0142】
液浸状態での露光が完了したら、レジスト膜上に保護膜を積層したまま、レジスト膜に対してポストベーク(PEB処理)を行うことが好ましい。
【0143】
次に、アルカリ現像液により保護膜を除去して、露光後のレジスト膜を現像する。アルカリ現像液は公知の現像液を適宜選択して用いることができる。このアルカリ現像処理により、保護膜はレジスト膜の可溶部分と同時に溶解除去される。
【0144】
最後に、純水等を用いてリンスを行う。このリンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下又は噴霧して、基板上の現像液、及びこの現像液によって溶解した保護膜成分とレジスト組成物とを洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0146】
<実施例1>
溶剤としてプロピレングリコールモノブチルエーテルを用いて、下記式(X−1)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量:8900、分散度:1.8)の含有量が1.6質量%、下記式(Y−1)で表される酸性化合物(株式会社ジェムコ製、EF−N301)の含有量が0.5質量%となるようにそれぞれ溶解させて、保護膜形成用材料を調製した。
【0147】
【化23】

【0148】
【化24】

【0149】
次に、有機系反射防止膜組成物「ARC−95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて300mmシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。該反射防止膜上に、アクリル系樹脂を含有するレジスト組成物であるTArF−6a−554(東京応化工業社製)を塗布し、110℃にて60秒間加熱し、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0150】
上記レジスト膜上に、上記で調製した保護膜形成用材料を、スピンナーを用いて塗布した後に、90℃で60秒間加熱し、膜厚35nmの保護膜を形成した。
【0151】
上記保護膜表面上に水50μLを滴下し、協和界面科学株式会社製DROP MASTER−700を用いて、静的接触角、転落角、前進角、及び後退角を測定し、下記評価基準により評価した。
静的接触角:○(70.0度以上)、×(70.0度未満)
転落角:◎(10.0度未満)、○(10.0度以上30.0度以下)、×(30.0度超)
前進角:○(100.0度以下)、×(100.0度超)
後退角:○(60.0度以上)、×(60.0度未満)
また、上記保護膜表面上に水50μLを盛り、上記保護膜が形成されたシリコンウェーハを水平に等速移動させ、動的後退接触角測定器を用いて動的後退接触角を測定し、下記評価基準により評価した。
動的後退接触角:◎(65.0度以上)、○(60.0度以上65.0度未満)、×(60.0度未満)
なお、本実施例においては、静的接触角、転落角、前進角、後退角、及び動的後退接触角をまとめて接触角等ということがある。
【0152】
また、参考例として、上記保護膜を設けない状態のレジスト積層体表面、つまりレジスト膜表面の接触角等を、上記と同様にして測定した。
【0153】
さらに、保護膜を有する基板を2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に60秒間接触させ、アルカリ現像液に対する溶解性を評価した。評価はアルカリ現像液接触による保護膜溶解速度を測定することにより、下記評価基準により行った。
保護膜溶解速度:◎(20.0mm/秒以上)、○(1.0mm/秒以上20.0mm/秒未満)、×(1.0mm/秒未満)
接触角等及び保護膜溶解速度の評価結果及び測定値を表1に示す。
【0154】
<実施例2>
上記式(X−1)で表されるアルカリ可溶性ポリマーを下記式(X−2)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量:12600、分散度:2.0)に変更したほかは実施例1と同様にして、保護膜形成用材料を調製した。さらに、実施例1と同様に接触角等及び保護膜溶解速度を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0155】
【化25】

【0156】
<比較例1>
上記式(X−1)で表されるアルカリ可溶性ポリマーを下記式(X−3)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量:14900、分散度:1.7)に変更したほかは実施例1と同様にして、保護膜形成用材料を調製した。さらに、実施例1と同様に接触角等及び保護膜溶解速度を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0157】
【化26】

【0158】
<比較例2>
上記式(X−1)で表されるアルカリ可溶性ポリマーを下記式(X−4)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量:8200、分散度:1.6)に変更したほかは実施例1と同様にして、保護膜形成用材料を調製した。さらに、実施例1と同様に接触角等及び保護膜溶解速度を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0159】
【化27】

<実施例3>
溶剤としてジイソアミルエーテルを用いて、下記式(X−5)で表されるアルカリ可溶性ポリマー(質量平均分子量:4600、分散度:1.4)の含有量が2.4質量%、上記式(Y−1)で表される酸性化合物(株式会社ジェムコ製、EF−N301)の含有量が0.7質量%となるようにそれぞれ溶解させて、保護膜形成用材料を調製した。さらに、実施例1と同様に接触角等及び保護膜溶解速度を測定し、評価した。結果を表1に示す。
【0160】
【化28】

【0161】
【表1】

【0162】
表1から分かるように、式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有さないアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料を用いた比較例1は、動的後退接触角が良好である一方、保護膜溶解速度が不良であった。また、比較例1における保護膜溶解速度を向上させるために、アルカリ可溶性ポリマー中のアルカリ易溶性モノマーの構成比を上げた比較例2は、保護膜溶解速度が良好である一方、動的接触後退角が不良であった。このことから、動的後退接触角及び保護膜溶解速度をいずれも良好に保つことは困難であることが理解される。
これに対して、式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料を用いた実施例1〜3は、比較例1,2と比べて、動的後退接触角及び保護膜溶解速度がいずれも良好であった。特に、式(A−1)中、Rが式(a−2)で表される基であるモノマーに由来する構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料を用いた実施例3は、保護膜溶解速度が非常に良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、
下記式(A−1)で表されるモノマーに由来する構成単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを含有する保護膜形成用材料。
【化1】

[式中、Rは下記式(a−1)又は式(a−2)で表される基を示し、Qはフッ素原子を有していてもよい2価の連結基を示し、Rはフッ素原子を有していてもよい有機基を示し、nは0又は1を示す。
【化2】

(式中、R01は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示し、R02は水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示し、Zは炭素数1若しくは2のアルキレン基又は酸素原子を示し、mは0〜3の整数を示す。)]
【請求項2】
前記式(A−1)で表されるモノマーが、下記式(A−1−1)又は式(A−1−2)で表されるモノマーである請求項1記載の保護膜形成用材料。
【化3】

[式中、Rは前記式(A−1)と同義であり、Q01はフッ素原子を有さない2価の連結基を示し、R11はフッ素原子を有する有機基を示す。]
【化4】

[式中、R,Rは前記式(A−1)と同義であり、Q02はフッ素原子を有する2価の連結基を示す。]
【請求項3】
前記Rが下記式(a−3)又は式(a−4)で表される基である請求項1又は2記載の保護膜形成用材料。
【化5】

[式中、R12は無置換の炭素数1〜9のアルキレン基を示し、R13は炭素数1〜9のフッ素化アルキル基を示す。ただし、R12とR13との炭素数の合計は10以下である。R14〜R16はそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基を示し、R14〜R16の少なくとも1つはフッ素原子を有するアルキル基である。]
【請求項4】
前記アルカリ可溶性ポリマーが、下記式(A−2)で表されるモノマーに由来する構成単位をさらに有する請求項1から3のいずれか1項記載の保護膜形成用材料。
【化6】

[式中、Rは前記式(A−1)と同義であり、Qはフッ素原子を有していてもよい2価の連結基を示し、R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基又はフッ素化アルキル基(ただし、アルキル基又はフッ素化アルキル基はエーテル結合が介在していてもよく、さらにはアルキル基又はフッ素化アルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。)を示し、かつ、R,Rの少なくとも一方はフッ素化アルキル基を示す。]
【請求項5】
液浸露光プロセスに用いられるものである請求項1から4のいずれか1項記載の保護膜形成用材料。
【請求項6】
液浸露光プロセスを用いたレジストパターン形成方法であって、
基板上にレジスト膜を設ける工程と、
このレジスト膜上に請求項1から5のいずれか1項記載の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、
前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び前記保護膜を介して、前記レジスト膜を選択的に露光する工程と、
現像液により前記保護膜を除去して、露光後の前記レジスト膜を現像する現像工程と、
を有するレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−227290(P2011−227290A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96930(P2010−96930)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】