説明

偽造防止方法

【課題】 従来、偽造対象となる原稿を増やすと、非常に大量の記憶領域を必要とするので、ある程度特定の原稿(例えば紙幣や有価証券等)だけしか偽造防止の対象とできなかった。
【解決手段】 特定のロゴや、著作権等のマーク、特殊なフォントパターン、印章等のイメージを予めマルチファンクション装置に登録しておく事により、それらのイメージが含まれた書類、書籍や雑誌、新聞記事等を、特定のユーザのみ高品位な状態でコピー/プリントできなくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印章や著作権を示すマークが入っている原稿/書類をコピー/プリントする場合に、特定の権限を与えられたユーザのみその処理を実行出来るようにするなどして、重要な原稿、書類、書籍等の偽造防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチファンクション装置を使ったコピーやプリントにおける偽造防止は偽造されたくない原稿全体の画像データを装置に記憶しておいて、その画像データとコピー及びプリントする画像データを比較して、偽造防止を実行するものであった(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平10-154257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解像度や色再現性が高性能なコピーやプリンタでは原稿とコピーの差異が少なく造行為が簡単に出来てしまうという課題が以前からあった。この場合、例えば、書籍や雑誌、新聞記事等、著作権のある原稿や印章の入った書類などが偽造の対象となり得る。しかし、高性能なコピーやプリンタを使った作業を実際に行う人が全て信用できるとは限らないし、高品位の複製を作られたくない原稿のコピーを仕方なく誰かに依頼しなければならない場合もあるが、コピーやプリントを依頼した人が信用できるとは限らないし、直接依頼した人がコピーやプリントをしてくれるかも分からない。
【0004】
また、上記従来技術では、偽造対象となる原稿を増やすと、非常に大量の記憶領域を必要とするので、ある程度特定の原稿(例えば紙幣や有価証券等)だけしか偽造防止の対象とできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
高品位のコピーやプリントによって偽造されては困る原稿や書籍内に必ず入っているはずのイメージ。例えば会社のロゴ、著作権等のマーク(例えば"C"、"R"、"TM"等)、特定のフォント、印章等のイメージデータを、予めマルチファンクション装置に読み込んで(又はPC等から転送して)登録し記憶する手段。さらに該登録したイメージにそれを使用可能な対象者や管理レベルも設定する。
【0006】
マルチファンクション装置を使用する時、それを使用するユーザを識別する手段。例えばマルチファンクション装置を使用するユーザのユーザのID(人名コード等)や管理レベルをICカード等から入力してからコピー又はプリントを実行する様にしておく。
【0007】
コピーしたい原稿をスキャンしてイメージ化した時、またはマルチファンクション装置に転送した印刷データから最終的に出力するイメージに展開した時、出力しようとするイメージの中に、前記予め登録したイメージがあるかを判断する手段。
【0008】
該予め登録されているイメージがある場合は、次に使用しているユーザ(コピー又はプリントしているユーザ)のIDや管理レベルを確認し、マルチファンクション装置を使用しているユーザのIDや管理レベルが、該予め登録されているイメージに設定されている対象者と一致しなかったり、設定管理レベルより低い(許可されていない)場合は、最終的なプリントアウトを実行しない。または、プリントアウトを実行するが、より低い印刷品位とする等、明らかにプリントした物であることが分かる様にする手段を設ける。
【発明の効果】
【0009】
特定のロゴや、著作権等のマーク、特殊なフォントパターン、印章等のイメージを予めマルチファンクション装置に登録しておく事により、それらのイメージが含まれた、書類、書籍や雑誌、新聞記事等を、特定のユーザのみ高品位な状態でコピー/プリントできなくなるので、偽造の防止や、著作権が保護されるなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図等を参照して第1の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明が採用されたマルチファンクション装置100の全体構成構成を示している。
【0012】
101はUSBやイーサーネット等各種インターフェイスとの間でデータの送受信を行う送受信手段(イーサーネット等各種インターフェイスは図示していない)。102は後述するCPUやRAM、ROM等マルチファンクション装置100の各種構成要素同士を接続するシステムバス。103はマルチファンクション装置100の動作を制御するCPU。104はマルチファンクション装置100が実行する処理において一時的にデータ等を記憶しておく為のRAM。105はマルチファンクション装置100に必要なプログラム(=ファームウェア)や各種データを保存しておくROM(又はフラッシュROM)等の不揮発性記憶手段。106は送受信手段101から受け取った印刷データや、画像を読み込むことができるスキャナ108から読み取った画像データを、プリントエンジン107で印刷可能な形式のデータに変換する画像変換手段。109はハードディスク等の不揮発性記憶手段、ここにマルチファンクション装置のプログラムを格納しておき、RAM104等に転送してから実行する事も可能である。110はマルチファンクション装置100を使ってコピーや印刷を実行するユーザの管理レベルやIDが記憶されているICカード等のカードを読み取るカードリーダ。ここではカードリーダとしているが、ICカード以外にもメモリモジュールやCD、DVD等その他の記憶素子やメディアにユーザの管理レベルやID等の情報を記憶しておき、それを利用する(メモリモジュール読み取り装置やメディア読み取り装置を使う)ことも可能であり、本発明の効果に変わりは無い。111はマルチファンクション装置100を使用するユーザに対して各種情報(マルチファンクション装置の内部情報等)を表示するディスプレイや、ユーザが設定する設定値を入力するボタンやキーボード等を備えた操作パネルである。
【0013】
次に図2〜図4のフローチャート及び図5を用いて本発明の第1の実施例の動作を説明する。
【0014】
まず始めに、偽造防止に利用するイメージデータをマルチファンクション装置100のROM105又はハードディスク109等の不揮発性記憶手段に記憶させておく必要がある。その為、送受信手段101、カードリーダ110、スキャナ108等イメージデータを入力可能な手段を経由して上記不揮発性記憶手段に記憶(登録)する(S201)。さらに登録したイメージデータには、イメージの管理者、管理レベル、偽造防止の為の画像処理方法を設定しておく(S202)。イメージデータとそれに付随する情報を入力したら、さらに別のイメージを登録するか確認し(S203)、必要に応じて複数のイメージデータを記憶させる。尚上記特定のイメージデータをマルチファンクション装置100に記憶する時には、パスワードやICカードから読み出すユーザIDの確認を行う事は言うまでもない。
【0015】
S202において登録したイメージデータとそれに付随する情報の関係を表すテーブルを図5に示す。このテーブルは例えばイメージデータ名「印章1」は、管理者=Admin、管理レベル=1、偽造防止の為の画像処理方法=出力禁止となっている。同様にイメージデータ名「社名ロゴ2」は、管理者=user1、管理レベル=5、偽造防止の為の画像処理方法=解像度低下、と設定されていることを示している。尚管理レベルは1が高く数字が大きいほど低いものとする。
【0016】
次に実際にコピー又は印刷を実行する場合の動作について説明する。
【0017】
マルチファンクション装置100はS204でユーザがコピーや印刷を実行するまで待機している。ユーザがコピーや印刷を実行するべくマルチファンクション装置100に指示を与えるとS205に進み、マルチファンクション装置を操作しているユーザのIDやそのIDに付随する管理レベルがマルチファンクション装置に入力されるのを待つ。これらのIDや管理レベルの情報は主にカードリーダ110や図示しない指紋入力装置等から入力されるが、別の方法、例えば操作パネル111から、特定のパスワードと共に入力してもよい。ユーザID等の情報が入力されるとコピーや印刷を開始する(S206)。コピーならばスキャナ108にセットされている原稿を読み取り。印刷ならば送受信手段101からの入力される情報に従って、最終的に画像変換手段106を経由してプリンタエンジン107で出力(印刷)する為の印刷データ(画像イメージ)を作成する。
S206で画像イメージの作成が終了すると、S207に進み、S206で作成した画像イメージとS201で登録したイメージデータ(登録された全てのイメージデータ)を比較する。比較の結果S206で作成した画像イメージの一部又は全体がS201で登録したイメージデータと一致する(もしくはある程度の比率で一致する)と判断した場合はS208へ進むが、一致する部分がないと判断した場合はS212に進み印刷を実行する。次にS208ではS205で入力されたユーザIDに付随する管理レベル情報と図5のテーブルにある登録したイメージデータの管理レベルを比較して、図5のテーブルの管理レベルよりS205で入力されたユーザIDに付随する管理レベルの方が低い場合(例えばコピーする原稿(=S206で作成した画像イメージ)には「印章1」のイメージが含まれていて、かつコピーを実行したユーザのユーザIDに付随する管理レベルが2であった場合、「印章1」の管理レベルは1なので、ユーザIDに付随する管理レベルの方が低い、となる)、図5のテーブルに登録されている画像処理方法に従った処理を行う(S209又はS210)。
【0018】
上記の例(「印章1」)では「出力禁止」となっているので、S209でYESと判断し(3)を経由してS213に進み、操作パネル111にコピー(印刷)が出来ない旨のメッセージを表示し、コピー(印刷)を中止する。
【0019】
例えば「印章2」がコピーする原稿(=S206で作成した画像イメージ)に含まれていて、且つコピーを実行したユーザのユーザIDに付随する管理レベルが3であった場合は上記と同様にユーザIDに付随する管理レベルの方が低いが、図5のテーブルに登録されている「印章2」の場合の画像処理方法は「解像度低下」なので、S210に進み画像イメージ(S206で作成した画像イメージ)の解像度を低下させる処理を行う(=印刷品位を低くする)。さらにS211に進み、操作パネル111にコピー(印刷)の品位を落として出力される旨のメッセージを表示し。S212で実際の印刷処理を実行する(プリントエンジン107にデータを転送し印刷する)。
【0020】
尚、S208におけるユーザのユーザIDに付随する管理レベルと図5のテーブルにある登録したイメージデータの管理レベルを比較した結果、図5のテーブルの管理レベルよりS205で入力されたユーザIDに付随する管理レベルの方が高い場合(例えばユーザIDに付随する管理レベルが1の場合)はS208からS212に進み印刷処理を継続する。
【実施例2】
【0021】
前記第1の実施例ではS207でイメージの比較を実行する際にCPU103を使ってソフトウェアによって比較を行っているが、ソフトウェアを使わないで図示しない専用のイメージ比較用ハードウェアを利用しても発明の効果に変わりはない。
【実施例3】
【0022】
前記第1の実施例では、マルチファンクション装置100を使用するユーザの持つIDやそれに付随する管理レベルを、コピーや印刷処理を開始する前(S205)に入力させて記憶しておいたが、ユーザのIDやそれに付随する管理レベルを、印刷を行う直前(S208の直前)でユーザに入力させて、それから図5のテーブルにある登録したイメージデータの管理レベルとの比較を行っても本発明の効果に変わりはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を採用したマルチファンクション装置のコントローラ等の概略を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施例の動きを示すフローチャート1。
【図3】本発明の第1の実施例の動きを示すフローチャート2。
【図4】本発明の第1の実施例の動きを示すフローチャート3。
【図5】マルチファンクション装置に登録しておくイメージデータの持つ情報テーブル(のイメージ)。
【符号の説明】
【0024】
100 マルチファンクション装置
101 各種インターフェイスとの送受信を行う送受信手段
102 CPUと各種構成要素を接続するシステムバス
103 CPU
104 RAM
105 フラッシュROM等の不揮発性記憶手段
106 プリントエンジン対して画像を変換して出力する画像変換手段
107 印刷を行うプリントエンジン
108 画像イメージを読み込むスキャナ
109 HDD等の不揮発性記憶手段
110 ICカード等からデータを読み出すカードリーダー
111 ユーザが装置の状態を確認する為の表示器やユーザが操作可能なボタンを搭載した操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のイメージデータをマルチファンクション装置に登録する手段、該登録したイメージデータを記憶する記憶手段、該マルチファンクション装置を使用するユーザを識別するユーザ識別手段、原稿をスキャナで読み取った画像データや印刷データ内に、該マルチファンクション装置に予め登録/記憶されているイメージデータと同じイメージがあるか判断する判断手段を持ち、画像データをプリントする場合には、マルチファンクション装置を使用するユーザの管理レベルと該登録済みイメージデータに設定された管理レベルを比較し、その結果に従いプリント結果の一部又はプリント結果全体が明らかにプリントされた物であることが分かる様にすることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項2】
請求項1において、プリント結果の一部またはプリント結果全体の解像度を変更してプリントすることにより、明らかにマルチファンクション装置を使ってプリントされた物であることが分かる様にすることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項3】
請求項1において、プリント結果の一部またはプリント結果全体の色再現性を変更してプリントすることにより、明らかにマルチファンクション装置を使ってプリントされた物であることが分かる様にすることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項4】
請求項1において、プリント結果の一部またはプリント結果全体のスムージング処理を変更してプリントすることにより、明らかにマルチファンクション装置を使ってプリントされた物であることが分かる様にすることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項5】
請求項1において、プリント結果の一部またはプリント結果全体に別の画像を追加して印刷処理することにより、明らかにマルチファンクション装置を使ってプリントされた物であることが分かる様にすることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項6】
請求項1において、マルチファンクション装置を使用するユーザの管理レベルと該登録済みイメージデータに設定された管理レベルを比較し、その結果に従いプリント結果の一部またはプリント結果全体をプリントしない様に処理することを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項7】
請求項1において、マルチファンクション装置を使用するユーザの管理レベルと該登録済みイメージデータに設定された管理レベルを比較し、その結果に従いプリント動作そのものを実行しない事を特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項8】
請求項1〜7において、マルチファンクション装置に登録する特定のイメージデータは各種印章を表すデータであることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項9】
請求項1〜7において、マルチファンクション装置に登録する特定のイメージデータは著作権を示す各種マークであることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項10】
請求項1〜7において、マルチファンクション装置に登録する特定のイメージデータは企業ロゴ等のトレードマークであることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項11】
請求項1〜7において、マルチファンクション装置に登録する特定のイメージデータはある特定のフォントデータであることを特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項12】
請求項1〜11において、マルチファンクション装置に予め登録しておく特定のイメージデータは、マルチファンクション装置の外部から、各種インターフェイスを経由して入力することが可能である事を特徴とするマルチファンクション装置。
【請求項13】
請求項12において、各種インターフェイスを経由して入力し登録しておく特定のイメージデータは暗号化された状態でマルチファンクション装置に転送する事を特徴とするマルチファンクション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−173746(P2006−173746A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359931(P2004−359931)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】